(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171923
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像投影装置および画像投影方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20241205BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20241205BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20241205BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20241205BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N5/74 Z
G02B27/01
G09G5/00 550C
G09G5/00 510B
G09G5/38 100
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089286
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】一井 世界
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA14
2H199DA15
2H199DA17
2H199DA18
2H199DA27
2H199DA30
2H199DA46
3D344AA19
3D344AA21
3D344AA26
3D344AA27
3D344AC25
5C058BA35
5C058EA03
5C058EA26
5C058EA54
5C182AA03
5C182AA04
5C182AA05
5C182AB25
5C182AB31
5C182BA29
5C182CB42
5C182CC24
(57)【要約】
【課題】車両のピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能な画像投影装置および画像投影方法を提供する。
【解決手段】表示部を介して虚像を投影する画像投影装置(100)であって、虚像を形成するための画像を画像表示光として照射する画像照射部(140)と、車両に加わる加速度を取得する加速度取得部(110)と、車両の運転状態情報を取得する車両情報取得部(120)と、加速度および運転状態情報に基づいて画像の表示位置を補正する画像位置補正部(130)を備える画像投影装置(100)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を介して虚像を投影する画像投影装置であって、
前記虚像を形成するための画像を画像表示光として照射する画像照射部と、
車両に加わる加速度を取得する加速度取得部と、
前記車両の運転状態情報を取得する車両情報取得部と、
前記加速度および前記運転状態情報に基づいて前記画像の表示位置を補正する画像位置補正部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記運転状態情報は、前記車両の車速情報を含み、
前記画像位置補正部は、前記車速情報から算出される走行要因加速度に基づいて前記表示位置を補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像投影装置であって、
前記運転状態情報は、前記車両のステアリング角度情報を含み、
前記画像位置補正部は、前記車速情報および前記ステアリング角度情報から算出される遠心力に基づいて前記表示位置を補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像位置補正部は、前記加速度および前記運転状態情報に基づいて前記虚像の結像位置の変化量を算出し、前記変化量を相殺する方向に前記画像の前記表示位置を補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像は、前記表示部から所定距離で結像される近方画像と、前記近方画像よりも前記表示部から遠い距離で結像される遠方画像とを含み、
前記画像位置補正部は、少なくとも前記遠方画像の前記表示位置を補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像投影装置であって、
前記近方画像の前記表示位置を補正することを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像投影装置であって、
前記遠方画像における前記表示位置の補正量は、前記近方画像における前記表示位置の補正量よりも大きいことを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
表示部を介して虚像を投影する画像投影方法であって、
前記虚像を形成するための画像を画像表示光として照射する画像照射工程と、
車両に加わる加速度を取得する加速度取得工程と、
前記車両の運転状態情報を取得する車両情報取得工程と、
前記加速度および前記運転状態情報に基づいて前記画像の表示位置を補正する画像位置補正工程を備えることを特徴とする画像投影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置および画像投影方法に関し、特に虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置および画像投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の画像投影装置では、車両のウィンドシールド(表示部)に対して画像照射部から画像光を照射し、運転者はウィンドシールドで反射された画像光と車両前方の背景を重ね合わせて視認することができる。
図9は、画像投影装置による虚像の投影と、車両のピッチングによる虚像の揺れを説明する模式図である。
図9に実線で示したように、路面上を車両Cが走行している際に、画像投影装置が虚像Pをウィンドシールドを介して車両Cの先方に投影する。車両Cにピッチングが生じた場合には、
図9中に破線で示したように、車両Cの傾斜に伴って虚像P’の投影方向も変化する。
【0006】
図9に示したように、車両Cに搭載された画像投影装置は、ウィンドシールドの相対的な位置関係は変化しないため、積載物や路面の凹凸によって車両の前後方向への傾斜角度が変動しピッチングが生じた場合には、背景上での虚像の表示位置も変動してしまう。一般的に運転者の視線方向は、車両Cにピッチングが生じた場合でも大きく変化せず、背景の所定位置を視認し続ける傾向がある。これにより、運転者には虚像PがP’方向に振動しているように感じられるという問題が生じていた。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、車両のピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能な画像投影装置および画像投影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、表示部を介して虚像を投影する画像投影装置であって、前記虚像を形成するための画像を画像表示光として照射する画像照射部と、車両に加わる加速度を取得する加速度取得部と、前記車両の運転状態情報を取得する車両情報取得部と、前記加速度および前記運転状態情報に基づいて前記画像の表示位置を補正する画像位置補正部を備えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の画像投影装置では、画像位置補正部が加速度および運転状態情報に基づいて画像の表示位置を補正するため、車両のピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記運転状態情報は、前記車両の車速情報を含み、前記画像位置補正部は、前記車速情報から算出される走行要因加速度に基づいて前記表示位置を補正する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記運転状態情報は、前記車両のステアリング角度情報を含み、前記画像位置補正部は、前記車速情報および前記ステアリング角度情報から算出される遠心力に基づいて前記表示位置を補正する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記画像位置補正部は、前記加速度および前記運転状態情報に基づいて前記虚像の結像位置の変化量を算出し、前記変化量を相殺する方向に前記画像の前記表示位置を補正する。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記画像は、前記表示部から所定距離で結像される近方画像と、前記近方画像よりも前記表示部から遠い距離で結像される遠方画像とを含み、前記画像位置補正部は、少なくとも前記遠方画像の前記表示位置を補正する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記近方画像の前記表示位置を補正することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記遠方画像における前記表示位置の補正量は、前記近方画像における前記表示位置の補正量よりも大きい。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明の画像投影方法は、表示部を介して虚像を投影する画像投影方法であって、前記虚像を形成するための画像を画像表示光として照射する画像照射工程と、車両に加わる加速度を取得する加速度取得工程と、前記車両の運転状態情報を取得する車両情報取得工程と、前記加速度および前記運転状態情報に基づいて前記画像の表示位置を補正する画像位置補正工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、車両のピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能な画像投影装置および画像投影方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置を用いた遠方画像と近方画像の投影を説明する模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示すブロック図である。
【
図3】加速度センサーによる加速度の測定と運転状態情報の関係を示すグラフであり、
図3(a)は平坦面での車両Cの静止状態を示し、
図3(b)は静止状態で車両Cが傾いた状態を示し、
図3(c)は加減速状態で車両Cが傾いた状態を示している。
【
図4】第1実施形態に係る画像投影方法の工程を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における画像の表示領域と補正を示す模式図であり、
図5(a)は平坦面での静止状態を示し、
図5(b)は車両Cが上向きに揺れた状態を示し、
図5(c)は車両Cが下向きに揺れた状態を示している。
【
図6】第2実施形態における画像の表示領域と補正を示す模式図であり、
図6(a)は平坦面での静止状態を示し、
図6(b)は車両Cが上向きに揺れた状態を示し、
図6(c)は車両Cが下向きに揺れた状態を示している。
【
図7】第3実施形態における画像の表示領域と補正を示す模式図であり、
図7(a)は平坦面での静止状態を示し、
図7(b)は車両Cが上向きに揺れた状態を示し、
図7(c)は車両Cが下向きに揺れた状態を示している。
【
図8】第4実施形態に係る画像投影方法の工程を示すフローチャートである。
【
図9】画像投影装置による虚像の投影と、車両のピッチングによる虚像の揺れを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置を用いた遠方画像と近方画像の投影を説明する模式図である。
図1に示すように、画像投影装置は、画像表示部1と、反射鏡2と、自由曲面ミラー3と、光分岐部4と、自由曲面ミラー5と、ウィンドシールド6を備えている。
【0020】
画像表示部1は、制御部からの画像情報に基づいて、画像を含んだ光照射する部分である。画像表示部1の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、レーザ光源と光変調素子の組み合わせ等の従来公知のものを用いることができる。
図1に示した例では、液晶表示装置の背面側から発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)により光を照射するものを用いている。後述するように、画像表示部1は、遠方画像と近方画像をそれぞれ表示する遠方表示領域と近方表示領域を含んで構成されている。遠方表示領域に表示される遠方画像としては、注意喚起の画像や緊急情報等の運転に関する補助的な情報が挙げられる。また、近方表示領域に表示される近方画像としては、速度と音量インジケータ、進行方向ガイド等が挙げられる。
【0021】
反射鏡2は、画像表示部1から照射された第2画像光が入射し、第1画像光を自由曲面ミラー3方向に反射する光学部材である。
図1に示した例では、反射鏡2として凸面形状のミラーを示しているが、第1画像光を虚像として投影するために必要な光学設計されたものを用いることができ、必要に応じて凹面鏡、平面鏡、自由曲面ミラー等を用いることができる。また、反射鏡2を省略して、画像表示部1からの第1画像光が自由曲面ミラー3に直接入射するとしてもよい。
【0022】
自由曲面ミラー3は、自由曲面ミラー5で反射された第1画像光および反射鏡2で反射された第2画像光が入射し、ウィンドシールド6方向に第2画像光を反射する凹面鏡である。自由曲面ミラー3の反射面は、ウィンドシールド6を介して虚像7.8として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0023】
光分岐部4は、画像表示部1から照射される画像の光を分岐する光学部材であり、少なくとも遠方表示領域で表示される第1画像を第1画像光とし、近方表示領域で表示される第2画像を第2画像光として分岐する。光分岐部4は光を分岐する光学部材であれば構造は限定されず、プリズムを用いるとしてもよく、反射鏡で光の入射角と反射角を異ならせる等の手法を用いるとしてもよい。
図1に示した例では光分岐部4としてプリズムを用い、プリズムを画像表示部1の遠方表示領域に重ねて配置している。したがって、遠方表示領域から照射された第1画像光は光分岐部4によって第2画像光とは異なる経路で自由曲面ミラー5で反射されて自由曲面ミラー3に到達する。また、近方表示領域から照射された第2画像光は反射鏡2で反射されて自由曲面ミラー3に到達する。
【0024】
ここで、光分岐部4を画像表示部1に重ねて配置するとは、平面視において光分岐部4を配置した領域が画像表示部1の画像表示領域と重複することを意味している。また、光分岐部4と画像表示部1が接触している場合も非接触の場合も重ねて配置に含まれるものとする。また、光分岐部4と画像表示部1の間に光を透過する光学部材や、両者の間隔を維持するための保持部材を介在させている場合も、重ねて配置に含まれる。
【0025】
自由曲面ミラー5は、光分岐部4を介して第1画像光が入射し、第1画像光を自由曲面ミラー3方向に反射する光学部材である。自由曲面ミラー5の反射面は、ウィンドシールド6を介して虚像8として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0026】
ウィンドシールド6は、車両Cの運転席前方に設けられて可視光を透過する部分である。ウィンドシールド6は、車両Cの内側面では自由曲面ミラー3から入射した第1画像光および第2画像光を視点方向に対して反射し、車両Cの外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。ここでは表示部としてウィンドシールド6を用いた例を示したが、ウィンドシールド6とは別に表示部としてコンバイナーを用意し、自由曲面ミラー3からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両Cの前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0027】
虚像7,8は、ウィンドシールド6で反射された第1画像光および第2画像光が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像7,8が結像される位置は、画像表示部1から照射された光が、反射鏡2、自由曲面ミラー3、自由曲面ミラー5およびウィンドシールド6で反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。
【0028】
図1に示した画像投影装置では、画像表示部1から照射された光の一部は光分岐部4で分岐されて自由曲面ミラー5、自由曲面ミラー3およびウィンドシールド6で反射されて運転者の視点に到達し、遠方に虚像8が結像される。画像表示部1から照射された光の他の一部は、反射鏡2、自由曲面ミラー3およびウィンドシールド6で反射されて運転者の視点に到達し、近方に虚像7が結像される。これにより画像投影装置では、水平方向から数度下方の遠方(
図1中では運転者から15m程度)に虚像8が投影され、運転者が運転支援情報を視認するための視線移動を小さくすることができる。また、さらに下方の近方(
図1中では運転者から3m程度)に虚像7が投影され、視線を移動することで車速表示等を良好に視認することができる。
【0029】
図1に示した例では、画像投影装置の投影光学系として、反射鏡2、自由曲面ミラー3、光分岐部4および自由曲面ミラー5を備えた例を示したが、さらに他の光学部材として反射鏡やレンズを備えるとしてもよい。また、
図1では遠方画像と近方画像をそれぞれ虚像7,8として異なる位置に投影した例を示したが、一つの画像を投影するものであってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示すブロック図である。
図2に示すように画像投影装置100は、加速度取得部110と、車両情報取得部120と、画像位置補正部130と、画像照射部140を備えている。また画像投影装置100は、加速度センサー200、車両制御部300および画像生成部400から情報を取得可能とされている。また、画像投影装置100は、各部と情報通信可能に接続されて、各部を制御する制御部を備えている(図示省略)。制御部の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御する。
【0031】
加速度センサー200は、車両Cに搭載されて車両Cに加わる加速度を検出する部分である。加速度センサー200が検出した加速度は、加速度取得部110に伝達される。加速度センサー200の具体的な構成は限定されず、車両Cに搭載された従来公知の9軸センサー装置等を用いることができる。また、
図2では加速度センサー200を画像投影装置100の外部に設けた例を示したが、画像投影装置100の内部に設けるとしてもよい。
【0032】
車両制御部300は、車両Cを構成する各部の動作状態を運転状態情報として取得する部分である。車両制御部300が取得した運転状態情報は、車両情報取得部120に伝達される。車両制御部300が取得する運転状態情報としては、例えば車両Cの移動速度である車速情報や、ステアリングの角度であるステアリング角度情報速度が挙げられる。車両制御部300の具体的構成は限定されず、例えば車両Cに搭載されたECU(Electrical Control Unit)を用いることができる。
【0033】
画像生成部400は、画像照射部140から照射する画像情報を生成する部分である。画像生成部400が生成した画像情報は、画像位置補正部130に伝達される。画像生成部400が生成する画像は、静止画であっても動画であってもよい。画像生成部400が生成する画像の内容は限定されないが、上述したように、注意喚起の画像や緊急情報等の運転に関する補助的な情報や、速度と音量インジケータ、進行方向ガイド等が挙げられる。
【0034】
加速度取得部110は、加速度センサー200から加速度を取得し、画像位置補正部130に加速度の情報を伝達する部分である。加速度取得部110は、画像投影装置100に設けられた制御部によって所定のプログラムが実行されることで実現される機能である。
図2に示した例では、加速度取得部110は画像投影装置100の外部に設けられた加速度センサー200から加速度を取得するとしたが、加速度センサー200と加速度取得部110を一体として画像投影装置100に設けるとしてもよい。
【0035】
車両情報取得部120は、車両制御部300から運転状態情報を取得し、画像位置補正部130に運転状態情報を伝達する部分である。車両情報取得部120は、画像投影装置100に設けられた制御部によって所定のプログラムが実行されることで実現される機能である。
図2に示した例では、車両情報取得部120は画像投影装置100の外部に設けられた車両制御部300から運転状態情報を取得するとしたが、車両制御部300と車両情報取得部120を一体として画像投影装置100に設けるとしてもよい。
【0036】
画像位置補正部130は、画像生成部400から画像情報を取得し、加速度取得部110から加速度を取得し、車両情報取得部120から運転状態情報を取得するとともに、加速度と運転状態情報に基づいて、画像照射部140から照射される画像光の補正を行う部分である。画像位置補正部130は、画像投影装置100に設けられた制御部によって所定のプログラムが実行されることで実現される機能である。
図2に示した例では、画像位置補正部130は画像投影装置100の外部に設けられた画像生成部400から画像情報を取得するとしたが、画像生成部400と画像位置補正部130を一体として画像投影装置100に設けるとしてもよい。また、画像位置補正部130の具体的な構成は限定されず、画像照射部140上での表示位置が変化するように、画像生成部400で生成された画像を所定量だけシフトさせるとしてもよく、投影光学系の角度を物理的に移動させるとしてもよい。
【0037】
画像照射部140は、画像情報に基づいて虚像7,8をウィンドシールド6を介して投影する部分である。
図1に示した例では、画像表示部1、反射鏡2、自由曲面ミラー3、光分岐部4、自由曲面ミラー5の組み合わせが、画像照射部140に相当している。
【0038】
図3は、加速度センサーによる加速度の測定と運転状態情報の関係を示すグラフであり、
図3(a)は平坦面での車両Cの静止状態を示し、
図3(b)は静止状態で車両Cが傾いた状態を示し、
図3(c)は加減速状態で車両Cが傾いた状態を示している。図中のX軸は地表面の水平方向を示しており、車両Cの前方に向かって図中右から左に向かって正方向とされている。また、図中のZ軸は地表面の重力方向を示しており、車両Cの上方に向かって図中下から上に向かって正方向とされている。ここで、加速度センサー200の車両Cの前後方向に加わる加速度をaxとし、車両Cの上下方向に加わる加速度をazとする。また、地表面の座標系であるX軸と、車両Cの座標系であるax軸との成す角(傾斜角度)をθとする。
【0039】
図3(a)では、車両Cが平坦面で静止しているため、車両Cに加わる加速度はZ軸の負方向に重力方向の1G(9.8m/s
2)である。また平坦面での静止状態であるため、X軸とax軸の傾斜角度θ=0であり、az=1.0、ax=0の加速度が検出される。
【0040】
図3(b)では、車両Cが傾斜面で静止しているため、車両Cに加わる加速度はZ軸の負方向に重力方向の1Gである。また、傾斜面での静止状態であるため、傾斜面に垂直な方向であるaz軸方向にaz=1.0×cosθ、傾斜面に平行な方向であるax軸方向にax=1.0×sinθの加速度が検出される。したがって、tanθ=(ax/az)の関係が成立し、θ=arctan(ax/az)となる。よって、加速度センサー200で検出された加速度のax成分とaz成分から傾斜面の傾斜角度θを算出することができる。
【0041】
図3(c)では、車両Cが傾斜面に沿って走行しているため、車両CにはZ軸の負方向に重力方向の1Gが加わるとともに、傾斜面に沿っての加減速から走行要因加速度αが加わる。ここで走行要因加速度αは、車両Cの加減速に伴って加わる加速度であるから、車両情報取得部120が取得した運転状態情報から算出することが可能である。一例としては、運転状態情報に含まれる車速情報を時間微分することで、車両Cの加減速に伴う走行要因加速度αを算出することができる。
【0042】
また、傾斜面での走行状態であるため、傾斜面に垂直な方向であるaz軸方向にaz=1.0×cosθ、傾斜面に平行な方向であるax軸方向にax=α+1.0×sinθの加速度が検出される。したがって、tanθ=((ax-α)/az)の関係が成立し、θ=arctan((ax-α)/az)となる。よって、加速度センサー200で検出された加速度のax成分とaz成分、および走行要因加速度αから、傾斜面の傾斜角度θを算出することができる。
【0043】
図4は、本実施形態に係る画像投影方法の工程を示すフローチャートである。
図4に示すように本実施形態の画像投影方法は、画像位置補正部130が加速度取得工程と、車両情報取得工程と、画像位置補正工程を実行し、画像照射部140での画像の表示位置を補正することで実現される。また、画像位置補正工程はさらに車速判定工程と、走行要因加速度算出工程と、加速度補正工程と、角度計算工程とを備えている。
【0044】
はじめにステップS1の加速度取得工程では、画像位置補正部130は加速度のデータを加速度取得部110から取得する。次にステップS2の車両情報取得工程では、画像位置補正部130は車速情報を含む運転状態情報を車両情報取得部120から取得する。ここでは加速度取得工程後に車両情報取得工程を実行する例を示したが、順番は限定されず逆であってもよく、両工程を同時に実行するとしてもよい。
【0045】
次にステップS3の車速判定工程では、画像位置補正部130は運転状態情報に含まれる車速がゼロか否かを判断し、ゼロである場合にはステップS6に移行し、ゼロでない場合にはステップS4に移行する。なお、車速判定工程を実行する例を示したが、車速判定工程を省略して車速に関わらずステップS4に移行するとしてもよい。
【0046】
次にステップS4の走行要因加速度算出工程では、画像位置補正部130は運転状態情報に含まれる車速から、走行要因加速度αを算出する。より具体的には、例えば時刻t1における車速v1と、時刻t2における車速v2から、α=(v2-v1)/(t2-t1)を求める。運転状態情報に車速だけではなく走行要因加速度αが含まれている場合には、走行要因加速度算出工程を省略することができる。また、車速判定工程を実施せず走行要因加速度算出工程を実行した場合には、車速v1、v2が0であるため走行要因加速度α=0となる。
【0047】
次にステップS5の加速度補正工程では、画像位置補正部130は加速度センサー200で検出した車両Cの座標軸における加速度のax成分から走行要因加速度αの差分をとり、傾斜により生じる加速度を(ax-α)とazに補正する。次にステップS6の角度計算工程では、画像位置補正部130は補正した加速度の(ax-α)とazから、θ=arctan((ax-α)/az)で傾斜角度θを算出する。ここで、加速度補正工程と角度計算工程を別工程として記述したが、両工程を一つの工程で実行するとしてもよい。また、車速判定工程で車速がゼロと判断された場合には、走行要因加速度α=0としてθ=arctan(ax/az)で傾斜角度θを算出する。
【0048】
次にステップS7の画像位置補正工程では、画像位置補正部130は角度計算工程で算出された傾斜角度θに基づいて、画像照射部140から照射される画像の表示位置を補正する。上述したように、傾斜角度θは加速度取得部110が取得した加速度と、車両情報取得部120が取得した運転状態情報に基づいて算出されたものであるから、画像の表示位置の補正は加速度および運転状態情報に基づいたものである。また、表示位置補正工程の後には、画像照射部140は画像照射工程を実行し、補正された画像の表示位置となるように画像表示光の投影を行う。具体的な表示位置の補正については後述する。表示位置補正工程が終了すると、再びステップS1に移行して画像投影方法を繰り返し実行する。
【0049】
図5は、本実施形態における画像の表示領域と補正を示す模式図であり、
図5(a)は平坦面での静止状態を示し、
図5(b)は車両Cが上向きに揺れた状態を示し、
図5(c)は車両Cが下向きに揺れた状態を示している。図中に示した外枠は、画像照射部140において画像を表示することが可能な全域である全表示領域10を模式的に示している。全表示領域10の一部は遠方表示領域11であり、他の一部は近方表示領域12である。遠方表示領域11には第1画像(遠方画像)が表示され、近方表示領域12には第2画像(近方画像)が表示される。図中に破線で示した領域は、遠方表示領域11の基準の位置である。
【0050】
図5(a)に示した例は、平坦面での静止状態であり、全表示領域10の基準の位置に遠方表示領域11と近方表示領域12が設定されている。ここでは平坦面の静止状態を基準の位置としたが、角度計算工程で算出された傾斜角度θ=0の場合には、車両Cが一定速度で走行中であっても加減速中であっても遠方表示領域11と近方表示領域12を基準の位置に設定する。
【0051】
図5(b)に示した例は、車両Cが上向きの矢印方向に揺れて、背景に対して全表示領域10が上方に移動してしまう場合である。この場合には、遠方表示領域11は、全表示領域10の移動を相殺するために下向の矢印方向に補正して設定される。全表示領域10の変化量Δhは、角度計算工程で算出された傾斜角度θから算出することができるため、遠方表示領域11を全表示領域10に対してΔhだけ下方に移動させるように補正することが好ましい。
【0052】
図5(c)に示した例は、車両Cが下向きの矢印方向に揺れて、背景に対して全表示領域10が下方に移動してしまう場合である。この場合には、遠方表示領域11は、全表示領域10の移動を相殺するために上向の矢印方向に補正して設定される。全表示領域10の変化量Δhは、角度計算工程で算出された傾斜角度θから算出することができるため、遠方表示領域11を全表示領域10に対してΔhだけ上方に移動させるように補正することが好ましい。
【0053】
図5(b)(c)では、全表示領域10の変化量Δhと同じ量だけ遠方表示領域11を補正したが、Δhを相殺する方向に補正していれば変化量Δhよりも大きくても小さくてもよい。また、全表示領域10に変化量Δhが生じた際に、即時に遠方表示領域11の位置を補正するとしてもよく、所定の時定数を持たせて時間経過を伴って緩やかに位置を補正するとしてもよい。
【0054】
上述したように、本実施形態の画像投影装置100および画像投影方法では、画像位置補正部130が加速度および運転状態情報に基づいて画像の表示位置を補正するため、車両Cのピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能となる。また、虚像8は運転者の視点位置から結像位置までの距離が遠く、振動による結像位置のブレによって生じる背景とのずれが大きくなりやすい。したがって、遠方表示領域11の位置を補正することで、虚像8と背景との位置ずれを抑制して視認性を向上させる効果を高めることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、本実施形態における画像の表示領域と補正を示す模式図であり、
図6(a)は平坦面での静止状態を示し、
図6(b)は車両Cが上向きに揺れた状態を示し、
図6(c)は車両Cが下向きに揺れた状態を示している。第1実施形態では、遠方表示領域11の位置だけを補正したが、本実施形態では遠方表示領域11の位置と近方表示領域12の位置を同様に補正する。
【0056】
図6(a)に示した例は、平坦面での静止状態であり、全表示領域10の基準の位置に遠方表示領域11と近方表示領域12が設定されている。
図6(b)(c)に示した例は、車両Cが矢印方向に揺れて、背景に対して全表示領域10が上方または下方に移動してしまう場合である。この場合には、遠方表示領域11および近方表示領域12は、全表示領域10の移動を相殺する方向に補正して設定される。
【0057】
本実施形態の画像投影装置100および画像投影方法でも、画像位置補正部130が加速度および運転状態情報に基づいて画像の表示位置を補正するため、車両Cのピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能となる。また、遠方表示領域11と近方表示領域12の位置を補正することで、虚像7,8と背景との位置ずれを抑制して視認性を向上させる効果を高めることができる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、本実施形態における画像の表示領域と補正を示す模式図であり、
図7(a)は平坦面での静止状態を示し、
図7(b)は車両Cが上向きに揺れた状態を示し、
図7(c)は車両Cが下向きに揺れた状態を示している。第2実施形態では、遠方表示領域11と近方表示領域12の位置を同様に補正したが、本実施形態では遠方表示領域11と近方表示領域12の補正量を異ならせる。
【0059】
図7(a)に示した例は、平坦面での静止状態であり、全表示領域10の基準の位置に遠方表示領域11と近方表示領域12が設定されている。
図7(b)(c)に示した例は、車両Cが矢印方向に揺れて、背景に対して全表示領域10が上方または下方に移動してしまう場合である。この場合には、遠方表示領域11および近方表示領域12は、全表示領域10の移動を相殺する方向に補正して設定される。このとき、虚像8は運転者の視点位置から結像位置までの距離が遠く、振動による結像位置のブレによって生じる背景とのずれが大きくなりやすいため、遠方表示領域11の補正量を近方表示領域12の補正量よりも大きくすることが好ましい。
【0060】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図8を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る画像投影方法の工程を示すフローチャートである。
図8に示すように本実施形態の画像投影方法は、車両情報取得工程でステアリング角度を取得し、画像位置補正工程においてステアリング角度判断工程と遠心力算出工程を備えている。
【0061】
はじめにステップS11の加速度取得工程では、加速度のデータを加速度取得部110から取得する。次にステップS12の車両情報取得工程では、車速情報とステアリング角度情報を含む運転状態情報を車両情報取得部120から取得する。次にステップS13の車速判定工程では、運転状態情報に含まれる車速がゼロか否かを判断し、ゼロである場合にはステップS18に移行し、ゼロでない場合にはステップS14に移行する。次にステップS14の走行要因加速度算出工程では、運転状態情報に含まれる車速から、走行要因加速度αを算出する。
【0062】
次にステップS15のステアリング角度判断工程では、運転状態情報に含まれるステアリング角度がゼロか否かを判断し、ゼロである場合にはステップS17に移行し、ゼロでない場合にはステップS16に移行する。次にステップS16の遠心力算出工程では、運転状態情報に含まれるステアリング角度と車速から、車両Cに加わる遠心力を算出する。次にステップS17の加速度補正工程では、加速度センサー200で検出した車両Cの座標軸における加速度のax成分を走行要因加速度αと遠心力による加速度βで補正する。次にステップS18の角度計算工程では、補正した加速度から傾斜角度θを算出する。
【0063】
次にステップS19の画像位置補正工程では、画像位置補正部130は角度計算工程で算出された傾斜角度θに基づいて、画像照射部140から照射される画像の表示位置を補正する。
【0064】
上述したように、本実施形態の画像投影装置100および画像投影方法でも、画像位置補正部130が加速度および運転状態情報に基づいて画像の表示位置を補正するため、車両Cのピッチングによる画像の結像位置の変動を抑制して、画像の視認性を向上させることが可能となる。また、運転状態情報に車速情報とステアリング角度情報が含まれており、遠心力を算出して遠心力による影響も補正することで、より正確な傾斜角度θの算出と虚像7,8の揺れ防止を図ることができる。
【0065】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態から第3実施形態では、画像位置補正部130が全表示領域10における遠方表示領域11と近方表示領域12の位置を補正することで、傾斜角度θによって生じる虚像7,8の揺れを補正したが、本実施形態では投影光学系を機械的に駆動して補正する。
【0066】
一例としては、
図1において投影光学系を構成している反射鏡2、自由曲面ミラー3、光分岐部4または自由曲面ミラー5の傾斜角度を変更可能にする。また、画像位置補正部130はモータ装置等を駆動して、傾斜角度θを相殺する方向に反射鏡2、自由曲面ミラー3、光分岐部4または自由曲面ミラー5の向きを変更する。モータ装置を用いる場合には、回転角度を精密に制御することができるステッピングモータを用いることが好ましい。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
100…画像投影装置
110…加速度取得部
120…車両情報取得部
130…画像位置補正部
140…画像照射部
200…加速度センサー
300…車両制御部
400…画像生成部
1…画像表示部
2…反射鏡
3,5…自由曲面ミラー
4…光分岐部
6…ウィンドシールド
10…全表示領域
11…遠方表示領域
12…近方表示領域