(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171924
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】多段状に基板部を内装するラック型装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20241205BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20241205BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241205BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20241205BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
F28D15/02 101H
F28D15/02 101M
F28D15/02 L
H05K7/20 P
H05K7/20 Q
H05K7/20 R
G06F1/20 A
G06F1/20 C
H01L23/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089287
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】船越 高志
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322DB10
5E322DB12
5E322EA05
5E322FA01
5E322FA04
5F136CB07
5F136CC14
5F136CC22
5F136DA33
5F136DA41
5F136EA41
(57)【要約】
【課題】ラックに対し基板部を挿脱する際に注水側チューブと排水側チューブを取り外し且つ再取付けすることにより生じる異物混入等のリスクを無くす。
【解決手段】基板部には冷却用の基板部冷却受体を一体的に形成しておく。一方、ラックの左右には冷却水を注入する注水側水路と前記冷却水を排水する排水側水路が配置され、前記注水側水路から注水側チューブを連結し、排水側水路には排水側チューブを連結する。そして注水側チューブと排水側チューブの間には水冷ジャケットが連結される。冷却水を流通させながら、前記水冷ジャケットを前記基板部冷却受体に面接触させて基板部冷却受体を冷却し、この冷却された基板部冷却受体により前記基板部が冷却される構成とする。従って、ラックに対し基板部を挿脱する際に、水冷ジャケットと一体連結された注水側チューブと排水側チューブを取り外す必要は無くなり、上記課題は達成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装空間を有するラックと、前記内装空間に多段状に内装された複数枚の基板部と、前記基板部を冷却する冷却機構とを有するラック型装置であって、
前記基板部は基板と該基板に一体化して形成された基板部冷却受体を有し、
前記冷却機構は前記基板部冷却受体に面接触して載置された水冷ジャケットと、前記水冷ジャケットに冷却水を注入する注水側チューブと、前記水冷ジャケットから冷却水を排水する排水側チューブとを有し、
前記注水側チューブと前記水冷ジャケットと前記排水側チューブとが連結された状態で前記水冷ジャケットを上動させて前記基板部を前記内装空間に対して挿入又は取り出しが出来るようにしたことを特徴とするラック型装置。
【請求項2】
前記基板部は前記基板の表面に配置された発熱素子を被覆する熱伝導性を有するベースプレートと、前記ベースプレートの上面と面接触して設けられた薄板状のベイパーチャンバとを有し、
前記ベイパーチャンバは前記基板の特定の端縁から延出する冷却用延出部が形成され、該冷却用延出部が前記基板部冷却受体である請求項1に記載のラック型装置。
【請求項3】
前記ベイパーチャンバはベイパーチャンバ下板にベイパーチャンバ上板を積層して内部に流体を密閉しており、前記ベイパーチャンバの内部には複数本の毛細管が並行状に配置された毛細管構造部と、複数の前記毛細管の間に複数本の突起状の柱が配列された柱構造部とを有し、前記毛細管の一方の端部側が前記冷却用延出部である請求項2に記載のラック型装置。
【請求項4】
前記基板部は前記基板の表面に配置された発熱素子を被覆する熱伝導性を有する受熱プレートと、前記受熱プレートに一方の端部が固定されたヒートパイプとを有し、
前記ヒートパイプのもう一方の端部に接続された放熱プレートが前記基板部冷却受体である請求項1に記載のラック型装置。
【請求項5】
前記基板部は前記基板の表面に配置された発熱素子を被覆する熱伝導性を有するベースプレートと、前記ベースプレートの上面と面接触して設けられた薄板状のベイパーチャンバ部とを有し、
前記ベイパーチャンバ部から延びるヒートパイプ部の端部に接続された放熱プレートが前記基板部冷却受体である請求項1に記載のラック型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の基板部の夫々を多段状に存在する一枚毎の基板部内装室に内装させて多段状態にして各基板部を同時的に冷却するラック型装置に関するものであり、この基板部は特に電子回路基板に関係するものである。特に、本発明は内装状態にある古い基板部を取り除いて新規な基板部を挿入する基板部の交換構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のラック型装置に関して、特開平6-216555号(特許文献1)が知られている。この装置においては、各基板部の発熱素子に面接触する冷却板が設けられており、当該冷却板は、金属製のケース内にヒートパイプを設け、当該ケースとヒートパイプの間をはんだで充填し、ヒートパイプの長手方向の一端に冷却手段として水冷ジャケットを設けて構成されている。
【0003】
また、従来のラック型装置に関して、特開2015-88172号(特許文献2)が知られている。この装置においては、複数の基板部を収納する筐体に冷媒(水)が循環する外冷却ループが設けられ、各基板部に作動流体(水)が循環する内冷却ループが設けられ、外冷却ループと内冷却ループは各基板部の水冷熱交換部において2つのフレキ管で接続されて、外冷却ループから内冷却ループに水が流入し、また、内冷却ループから外冷却ループへと水が流出するように構成されている。
【0004】
更に、従来のラック型装置として、一般的に
図12~
図14に示されるものが周知されている。
図12は従来のラック型装置31を示しており、ラック32には複数の基板部40が上下方向に多段状態に収納されている。各々の基板部40を収納するラック内部の空間領域を基板部内装室35と呼び、基板部40ごとに基板部内装室35がある。基板部内装室35としては、左右のレールに基板部40を載置するだけの部分隔離型もあれば、全面隔離板で隔離する全面隔離型等、種々の形式が存在する。
ラック32の正面側の左右に、円筒状の注水型水路33と排水側水路34が立設されている。注水側水路33から各基板部40の正面に略L字型の注水側チューブ36が連結され、排水側水路34から各基板部40の正面に略L字型の排水側チューブ37が連結されている。
従って、冷却水が注水側水路33から注水側チューブ36を通って基板部40の内部へ導入されて電子回路により発熱状態にある基板部40を冷却し、やや昇温した冷却水は排水側チューブ37を通って排水側水路34へと導かれ、排水されてゆくのである。勿論、この排水された冷却水は再度冷却されて注水側水路33へと帰還し、同じ冷却工程を反復する。
【0005】
図13は、従来の基板部40の一例を示している。(13A)では、基板部40を構成する基板41の後部に通信用の光モジュール42が配置され、基板41の中央部に発熱素子の一例であるIC43が散在状に配置されている。基板41の正面端には正面折返し片44が形成され、この正面折返し片44に注水側ジョイント45と排水側ジョイント46が設けられている。
(13B)では、発熱素子の一種である前記ICが水冷ジャケット47で被覆されている。そして、注水側ジョイント45に連結して水冷チューブ48が各水冷ジャケット47を連結するように配置され、最終的にこの水冷チューブ48は排水側ジョイント46に連結されている。従って、冷却水が注水側ジョイント45から注水されると、水冷チューブ48を流通して各水冷ジャケット47により発熱素子である各IC43を冷却しながら、流通する冷却水は排水側ジョイント46から排水されてゆくのである。
【0006】
図14は、従来のラック型装置における従来の基板部40の交換方法を示している。ラックの一番下から2段目の基板部内装室に基板部40が収納されている。全ての基板部内装室は左右のレール38により構成され、直ぐ上のレールは直ぐ上の基板部内装室を構成する。この基板部40においては、冷却水が注水側水路33から注水側チューブ36を通って基板部40の内部へ導入されて発熱状態にある基板部40を冷却し、少し昇温した冷却水が排水側チューブ37を通って排水側水路34へと導かれる。
この基板部40をラック32から取り外すために、まず注水側水路33、排水側水路34、注水側チューブ36、排水側チューブ3、水冷チューブ、水冷ジャケット47から水を抜く。水を抜いた状態で注水側チューブ36と排水側チューブ37を基板部40から取り外すことで基板部40は基板部内装室35から脱離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-216555号
【特許文献2】特開2015-88172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来例で上述したように、基板部40を交換する際には、水冷ジャケット等から水を抜いた状態で古い基板部40から注水側チューブ36と排水側チューブ37を取り外すことが行われていた。そのため、残存する水滴の飛散、水冷ジャケットや注水側チューブ36、排水側チューブ37への空気中に分散する粉粒体等の異物が入り込みが生じ、腐食の原因となるリスクが存在する。また基板上に設けられている水冷チューブが破断するリスクが存在する。
そこで本発明は上記した課題を解決するために為されたものであり、基板部の交換に伴うリスクを低減し、容易に基板部の交換が可能なラック型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、内装空間を有するラックと、前記内装空間に多段状に内装された複数枚の基板部と、前記基板部を冷却する冷却機構とを有するラック型装置であって、前記基板部は基板と該基板に一体化して形成された基板部冷却受体を有し、前記冷却機構は前記基板部冷却受体に面接触して載置された水冷ジャケットと、前記水冷ジャケットに冷却水を注入する注水側チューブと、前記水冷ジャケットから冷却水を排水する排水側チューブとを有し、前記注水側チューブと前記水冷ジャケットと前記排水側チューブとが連結された状態で前記水冷ジャケットを上動させて前記基板部を前記内装空間に対して挿入又は取り出しが出来るようにしたことを特徴とするラック型装置である。
【0010】
本発明の別の一形態は、前記基板部は前記基板の表面に配置された発熱素子を被覆する熱伝導性を有するベースプレートと、前記ベースプレートの上面と面接触して設けられた薄板状のベイパーチャンバとを有し、前記ベイパーチャンバは前記基板の特定の端縁から延出する冷却用延出部が形成され、該冷却用延出部が前記基板部冷却受体であるラック型装置である。本形態は、後述する実施例1に係る形態である。
【0011】
本発明の更に別の一形態は、前記ベイパーチャンバはベイパーチャンバ下板にベイパーチャンバ上板を積層して内部に流体を密閉しており、前記ベイパーチャンバの内部には複数本の毛細管が並行状に配置された毛細管構造部と、複数の前記毛細管の間に複数本の突起状の柱が配列された柱構造部とを有し、前記毛細管の一方の端部側が前記冷却用延出部であるラック型装置である。
【0012】
本発明の更に別の一形態は、前記基板部は前記基板の表面に配置された発熱素子を被覆する熱伝導性を有する受熱プレートと、前記受熱プレートに一方の端部が固定されたヒートパイプとを有し、前記ヒートパイプのもう一方の端部に接続された放熱プレートが前記基板部冷却受体であるラック型装置である。本形態は、後述する実施例2に係る形態である。
【0013】
本発明の更に別の一形態は、前記基板部は前記基板の表面に配置された発熱素子を被覆する熱伝導性を有するベースプレートと、前記ベースプレートの上面と面接触して設けられた薄板状のベイパーチャンバ部とを有し、前記ベイパーチャンバ部から延びるヒートパイプ部の端部に接続された放熱プレートが前記基板部冷却受体であるラック型装置である。本形態は、後述する実施例3に係る形態である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板部の交換に伴う諸々のリスクを低減し、かつ、容易に基板部の交換が可能な、冷却機構を具えたラック型装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るラック型装置の全体斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る基板部の第1実施例の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施例における発熱素子とベースプレートとベイパーチャンバの組立断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施例の基板部と水冷ジャケットの組立図である。
【
図5】
図5は、第1実施例の基板部をラックに内装した斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の基板部をラックに挿入脱離する工程図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る基板部の第2実施例の斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施例の基板部と水冷ジャケットの組立図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る基板部の第3実施例の斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明のベイパーチャンバの内部構成図である。
【
図11】
図11は、本発明で基板部の前方空間を広く開ける一例を示す配置図である。
【
図14】
図14は、従来基板部をラックに挿入脱離する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の形態は、複数枚の基板部を一枚毎に基板部内装室に内在させて多段状態に内装するラックが配置され、一枚毎の基板部には冷却用の基板部冷却受体が一体化して形成されており、この基板部冷却受体に面接触して基板部冷却受体を冷却して前記一枚の基板部の全体を冷却する水冷ジャケットが設けられており、前記ラックの左右には冷却水を注入する注水側水路と前記冷却水を排水する排水側水路が配置され、前記注水側水路から注水側チューブを介して水冷ジャケットへと冷却水が注水され、水冷ジャケットから排水側チューブを介して排水側水路へと冷却水が排水されるように構成され、注水側チューブと水冷ジャケットと排水側チューブを連結し、注水側チューブと水冷ジャケットと排水側チューブとが連結された状態で上動することにより水冷ジャケットを上動させて前記基板部の前方空間を広く開けて前記基板部を前記基板部内装室に対して挿入又は取り出しが出来るようにしたラック型装置である。
複数枚の基板部はラックの内装空間に多段状に収納され、各々の基板部は夫々、別々の基板部内装室に収納されており、ラックの内装空間は多段状に配置された複数の基板部内装室で構成されている。
基板部を基板部内装室から取り出す際には、水冷ジャケットを基板部冷却受体の上面に面接触して冷却しているゆえ、水冷ジャケットを基板部冷却受体の上方へ上動させればよい。
前記基板部には基板部冷却受体が一体化して形成されているが、基板部には注水側ジョイントや排水側ジョイントは形成されていない。注水側チューブと排水側チューブは水冷ジャケットに連結されており、この水冷ジャケットを基板部に一体化された基板部冷却受体に面接触させれば基板部は冷却されるし、水冷ジャケットを基板部冷却受体から離間させれば基板部は冷却されないのである。
また、水冷ジャケットは注水側チューブと排水側チューブの間に連結されているから、注水側チューブと排水側チューブを適当に動かせば、水冷ジャケットを基板部の前方位置に対して上下方向に自由に移動させることが可能になる。従って、水冷ジャケットを上動させて基板部の前方位置から遠ざければ、基板部内装室に対する基板部の挿入脱離は自在に行うことができる。
更に、注水側チューブと排水側チューブは基板部に連結されていないから、基板部の内部に冷却水を循環させることは無く、基板部の内部に水冷チューブを配設する必要もなくなる。従って、基板部内に冷却水が漏出するといった事態も無くなる。
【0017】
本発明の第2の形態は、前記水冷ジャケットを上動させて前記基板部の前方空間を広く開ける場合において、その上動距離を大きくするために、前記基板部に配置される基板部冷却受体をより上側に配置する折り曲げ等の高さ調整構造を設けたラック型装置である。
一枚の基板部はラックの中の一つの基板部内装室に収納されているから、複数の基板部は多段に配置された複数の基板部内装室に夫々収納されている。基板部内装室を形成する部材がラックの左右に配置されたレールから構成される場合には、左右のレールの間には単なる空間が広がっているだけで何も存在しない。この場合には、基板部に一体化された基板部冷却受体は、基板部内装室内に配置しても良いし、基板部内装室の前方に突出配置しても良い。他方、基板部内装室を形成する部材が1枚の隔離板から構成される場合は、基板部に一体化された基板部冷却受体は、基板部内装室内に配置しても良いし、基板部内装室の前方に突出配置しても良いが、前記水冷ジャケットを上動させる際に前記基板部の前方空間をより広く開ける観点から、基板部冷却受体は基板部内装室から前方に突出配置されることがより好ましい。
基板部冷却受体を冷却するために水冷ジャケットを面接触させるのであるが、当該基板部を交換する際には水冷ジャケットを上動させて基板部内装室の前方を広く開けておく必要がある。しかし、一段上又は一段下の基板部収納室からも夫々の基板部冷却受体が突設されている。即ち、水冷ジャケットの上動の限界距離は、隣の基板部冷却受体に、上動させる水冷ジャケットが当接するまでの距離である。
従って、上動距離を長くするには、基板部冷却受体が基板部と連続した板状体であればその板状体を折り曲げてより上側に配置する必要がある。また、基板部冷却受体が基板部と別体であれば、基板部冷却受体と基板部を連結する線状体を上方に湾曲させるだけでよい。そのような折り曲げや湾曲などを本発明では高さ調整構造と呼んでいる。この高さ調整構造としては、基板部冷却受体と基板部との連結構造に依存しているから、折り曲げや湾曲などの最適な構造が採用されればよい。
【0018】
本発明の第3の形態は、前記注水側チューブは前記注水側水路に連結され、且つ前記排水側チューブは前記排水側水路に連結され、連結された前記注水側チューブと前記水冷ジャケットと前記排水側チューブの連結体の個数と配置位置は、一枚毎に前記基板部内装室に内装されている基板部の総枚数と内装位置に対応して設定されているラック型装置である。複数の基板部内装室が上下方向に多段に構成される場合には、注水側チューブと水冷ジャケットと排水側チューブの連結体が同数だけ用意され、この連結体が各基板部内装室の入口側の適所に配置されているのである。
【0019】
本発明の第4の形態は、前記基板部冷却受体に特徴を有する基板部であり、後述する第1実施例に係る形態である。基板部における基板の表面に配置された全て又は一部の発熱素子の上面に熱伝導性を有するベースプレートが設けられ、前記ベースプレートの上面に面接触して前記基板を被覆し且つ前記基板の特定の端縁から延出するように冷却用延出部が形成される。この冷却用延出部を上述した基板部冷却受体とする所定形状の薄板状のベイパーチャンバが形成される。このベイパーチャンバは特徴的な構成を有している。その内部には気化及び液化が生じる流体(例えばアルコールなど)が内在されており、前記発熱素子からの発熱を前記流体が気化により吸熱して前記基板部を冷却し、気化した流体は前記ベイパーチャンバの前記冷却用延出部に移動して水冷ジャケットの面接触で冷却されて液体に戻る性能を有している。しかも、ベイパーチャンバの中では、前記流体は全方向に流動するように構成され、基板部冷却受体である冷却用延出部が水冷ジャケットにより急速に冷却され、同時に基板部全体が急速に冷却される特徴を有する。
【0020】
本発明の第5の形態は、前記ベイパーチャンバの特性が明確に出現する構造が規定された基板部である。前記ベイパーチャンバはベイパーチャンバ下板にベイパーチャンバ上板を積層して密閉した構造を有し、前記ベイパーチャンバの内部構造は、複数本の毛細管が並行状に配置された毛細管構造部と、前記毛細管と毛細管の間に複数本の突起状の柱が配列された柱構造部を有し、前記ベイパーチャンバの内部に存在する流体が気化及び液化を繰り返しながら毛細管方向や毛細管直交方向などに流動してベイパーチャンバ内を全方向に流動するように構成されている。
【0021】
本発明の第6の形態は、前記発熱素子と前記ベースプレートの接合面及び前記ベースプレートと前記ベイパーチャンバの接合面に熱伝導材を介装することにより、前記発熱素子と前記ベイパーチャンバの間の熱伝導性を良好にした基板部である。
【0022】
本発明の第7の形態は、前記基板部冷却受体に特徴を有する基板部であり、後述する第2実施例に係る形態である。本形態では、基板部における基板の表面に配置された発熱素子の上面が熱伝導性を有する受熱プレートで被覆され、前記基板の特定の端縁側に放熱プレートを配置し、前記受熱プレートの上面から前記放熱プレートの下面又は上面に熱伝導用のヒートパイプを連結配置し、ヒートパイプは前記基板の上面に1点又は複数点又は連続点(線分)で固定された構造を有する。
前記放熱プレートが基板部冷却受体として配置されており、前記ヒートパイプの内部には気化及び液化が生じる流体が内在されている。前記発熱素子からの発熱を前記流体が気化により吸熱して前記受熱プレートの冷却を介して前記基板部を冷却し、気化した流体は前記ヒートパイプ内を通過して前記放熱プレート側に移動し、前記放熱プレートが水冷ジャケットとの面接触で冷却されて前記ヒートパイプ内で気化した流体が液体に戻ることを特徴としている。
【0023】
本発明の第8の形態は、前記第7の形態において、前記ヒートパイプの周面は前記受熱プレートに対し半埋設状態で接合され、その接合面は接合材で接合されて強固に一体化されていることを特徴とする基板部である。
【0024】
本発明の第9の形態は、前記基板部冷却受体に特徴を有する基板部であり、後述する第3実施例に係る形態である。本形態では、基板部における基板の表面に配置された発熱素子の上面がベイパーチャンバ部で被覆され、前記基板の特定の端縁側に放熱プレートを配置し、前記ベイパーチャンバ部から前記放熱プレートの下面又は上面又は後端面にヒートパイプ部を連結配置している。
前記ベイパーチャンバ部と前記ヒートパイプ部とはヒートパイプ一体型ベイパーチャンバとして一体形成されているものである。前記ヒートパイプ部は前記基板の上面と固定されており、前記放熱プレートを基板部冷却受体としている。互いに連通する前記ベイパー
チャンバ部と前記ヒートパイプ部の内部には気化及び液化が生じる流体が内在されており、前記発熱素子からの発熱を前記ベイパーチャンバ部において前記流体が気化により吸熱して前記発熱素子の冷却を介して基板部を冷却し、気化した流体は前記ヒートパイプ部内を通過して前記放熱プレート側に移動し、前記放熱プレートが水冷ジャケットとの面接触で冷却されて、気化した流体が前記ヒートパイプ部内で液体に戻ることを特徴としている。
前記ベイパーチャンバ部はベイパーチャンバ下板にベイパーチャンバ上板を積層して密閉した構造を有し、前記ベイパーチャンバ部の内部構造は、複数本の毛細管が並行状に配置された毛細管構造部と、前記毛細管と毛細管の間に複数本の突起状の柱が配列された柱構造部を有し、前記ベイパーチャンバ部の内部に存在する流体が気化及び液化を繰り返しながら毛細管方向や毛細管直交方向などに流動してベイパーチャンバ部内を全方向に流動するように構成されている。
同様に、前記ヒートパイプ部内でも、流体が気化及び液化を繰り返しながら流動してヒートパイプ部内を全方向に流動するように構成されている。
結果として、前記流体が、前記ヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ内を気化及び液化を繰り返しながら全方向に流動するように構成されている。
【0025】
以下に、本発明に係る複数の基板部を内装するラック型装置及びその基板部の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一形態に係るラック型装置1の全体斜視図である。
ラック型装置1は、多数の基板部内装室5を多段状態に積層してなる内装空間Sを有するラック2と、後述する冷却機構とを具える。多段状態に配置された多数の基板部内装室5の夫々には1枚の基板部10が内装されている。当該ラック2の正面側の左右位置には注水側水路3と排水側水路4が配置されている。
多数の基板部内装室5の夫々には、注水側水路3から略L字型の注水側チューブ6が延出されており、同時に排水側水路4から略L字型の排水側チューブ7が延出されている。
図4で示されるように、注水側チューブ6と排水側チューブ7とは水冷ジャケット8の両端近傍に接続されており、基板部10には一切接続されていない。基板部10に一体に形成された基板部冷却受体(本形態における冷却用延出部16)に面接触状態で載置される水冷ジャケット8と、水冷ジャケット8に接続されている注水側チューブ6及び排水側チューブ7とは、基板部10を冷却するための冷却機構を構成している。
ラック2の左右の側板の内面側に、隔離板としてレールを左右に配置した構造の基板部内装室5であれば、左右の対向するレールの間は完全に開放領域であるから、前記水冷ジャケット8をこの開放領域に配置することができる。
図1ではこの状態が示されている。他方、上記隔離板が完全な1枚の板であれば開放領域は無いから、前記水冷ジャケット8は前記隔離板の前方にある空間領域に配置されることがより好ましい。
【0027】
図2は、本発明に係る基板部の第1実施例の斜視図であり、基板部10は、例えば、(2A)~(2C)に示されるように3段階の工程により製造される。
(2A)に図示されるように、初期の基板部10は、基板11と、基板11の後方に配置された光モジュール等の通信モジュール12と、基板11の中央領域に散在配置された発熱素子13から構成される。
(2B)では、発熱素子13の夫々の上面は熱伝導性の良いベースプレート14で被覆される。
(2C)では、全てのベースプレート14の上面に接合するようにベイパーチャンバ15が被覆配置される。しかもこのベイパーチャンバ15の前方部には基板11の前方端縁を超えた領域にベイパーチャンバ15の一部として冷却用延出部16が形成されている。この冷却用延出部16は水冷ジャケットを面接触させて基板10を冷却するための基板部冷却受体である。
【0028】
図3は、第1実施例における発熱素子とベースプレートとベイパーチャンバの組立断面図である。
(3A)に示される図は(2C)と完全に同一である。ベースプレート14位置での接合構造を説明するために再掲したものである。
(3B)では、発熱素子13とベースプレート14との接合面、並びにベースプレート14とベイパーチャンバ15との接合面の夫々に熱伝導材17を介装することによって、発熱素子13からベイパーチャンバ15への熱伝導性を強化している。
【0029】
図4は、第1実施例の基板部と水冷ジャケットの組立図である。
(4A)は、本発明に係る上述した第1実施例の基板部10と水冷ジャケット8とその他部材とを作動させるための組立状態図である。注水側水路3から注水側チューブ6が延出されて水冷ジャケット8の一端に連結されている。同時に、排水側水路4から排水側チューブ7が延出されて水冷ジャケット8の他端に連結されている。他方、基板部内装室に収納された基板部10は、基板11の後端に配置された通信モジュール12と、中央に配置されたベイパーチャンバ15と、基板11の先端縁から延出した冷却用延出部16から構成されている。
一番重要な事は、水冷ジャケット8は冷却用延出部16の上面に接触しているだけで一切連結はされていない。ただ接触することによって水冷ジャケット8が冷却用延出部16を冷却し、その冷却によって基板部10の全体が冷却されるのである。
(4B)に図示されるように、注水側チューブ6と水冷ジャケット8と排水側チューブ7とは相互に連結されているから、基板部10とは関係なく一体で動くものである。動かし方は、例えば、水冷ジャケット8を指などで上方向Aに上動又は下方向Bに下動させれば注入側チューブ6と排水側チューブ7も追従的に上動又は下動する。或いはまた、指などで注入側チューブ6と排水側チューブ7を上方向Aに上動又は下方向Bに下動させれば水冷ジャケット8も追従的に上動又は下動する。基板部10を基板部内装室から取り出す際には、(4A)では水冷ジャケット8が冷却用延出部16の上に載置されているから、水冷ジャケット8は上動させるのが通常である。逆に、水冷ジャケット8が冷却用延出部16の下面に接触している場合には、水冷ジャケット8は下動させるのが通常となる。
注水側チューブ6と排水側チューブ7の形状は、(4A)では略L字状であるが、(4B)では変形U字状である。その形状はこれに限定されるものではなく、その他形状も使用できるものであり、水冷ジャケット8の移動とともに形状が変化してもよい。
(4C)に図示されるように、注入側チューブ6と排水側チューブ7の上動又は下動により、実線で示す水冷ジャケット8は一点鎖線で示す上動水冷ジャケット8A又は下動水冷ジャケット8Bに移動し、その結果実線水冷ジャケット8は無くなる。従って、基板部10の前方空間は何も無い状態となる。つまり、基板部10の前方空間に何も無くなるから、古い基板部を抜いて取り外し新規な基板部を挿入するという基板部10の交換作業を容易に行うことができる。
【0030】
図5は、第1実施例の基板部をラックに内装した斜視図である。
図5には、ラックの内部(内装空間S)に多段状に設けられた基板部内装室の隔離板は左右に形成されたレール9、9であることが示されている。即ち、基板部10の基板11の左右端縁をレール9、9に載置するだけで、基板部内装室5に基板部10が収納された状態となるのである。基板部10は、基板11と通信モジュール12とベイパーチャンバ15からなり、冷却用延出部16は見えないが、その上面に面接触状態で水冷ジャケット8が載置されている。水冷ジャケット8には、注水側水路3と排水側水路4にそれぞれ連結された、注水側チューブ6と排水側チューブ7が連結されていることが分かる。
【0031】
図6は、本発明の基板部をラックに挿入脱離する工程を示す工程図である。
図6の工程図は、殆ど同じ図である(6A)~(6E)の5段階に分けて示されている
。従って、部材の符号は(6A)だけに示されているが、(6B)~(6E)にも完全に共通である。
(6A)において、左右に注水側水路3と排水側水路4が存在し、その内側にラック2として左右側壁が配置されている。ラック2の内面側にレール9、9が配置され、その上に基板部10を構成する基板11の左右両端縁が載置されている。基板部10の正面側には基板部冷却受体である冷却用延出部16が存在するがここでは図示されていない。基板部10の上に水冷ジャケット8が載置されている。水冷ジャケット8の右端に連結された注水側チューブ6が注水側水路3にまで連結されている。同様に、水冷ジャケット8の左端に連結された排水側チューブ7が排水側水路4まで連結されている。そして同様の構成で3枚の基板部10が第1段~第3段配置されている。
(6B)では、2段目の基板部10において、注水側チューブ6と排水側チューブ7を矢印のように上方へ移動操作しつつ2段目の水冷ジャケット8を上動させる。その結果、2段目の水冷ジャケット8は図中で一番上の3段目の基板11に当接する位置まで上動する。従って、2段目には基板部10だけが残される。
(6C)では、残された2段目の基板部10をその基板部内装室、即ちラック2から抜いて取り外す。その結果、2段目の基板部内装室には何も存在しない状態となる。
(6D)では、何も存在しない2段目の基板部内装室に新規な基板部10を挿入した状態が示されている。即ち、2段目の基板部内装室から古い基板部10を新規な基板部10と交換する作業が行われたのである。しかし、水冷ジャケット8はまだ上方に存在したままである。
(6E)では、2段目の注水側チューブ6と排水側チューブ7を矢印のように下動させて、水冷ジャケット8を下方へ移動させ、2段目の新規な基板部10の基板部冷却受体の上面に載置して初期状態に戻されている。従って、最初の(6A)の状態に復帰する。
【0032】
図7は、本発明に係る基板部の第2実施例の斜視図である。
(7A)では、後方端に通信モジュール12を配置した基板11の中央部に発熱素子13を散在配置している。
(7B)では、全ての発熱素子13の上面に熱伝導性の高い受熱プレート21を被覆させている。
(7C)では、基板11の前方端縁の近傍に別体である放熱プレート20を配置し、受熱プレート21と放熱プレート20の間をヒートパイプ22により連結している。ヒートパイプ22の一端は受熱プレート21の上面に接合されており、ヒートパイプ22の他端は放熱プレート20の下面に接合されている。ヒートパイプ22の内部には気化及び液化が生じる流体が内在されているから、前記発熱素子からの発熱をまず受熱プレート21で受け取り、受熱プレート21に集まった熱をヒートパイプ22内の前記流体が気化により吸熱して前記受熱プレート21の冷却を介して基板部を冷却し、気化した流体は前記ヒートパイプ内を通過して前記放熱プレート20側に移動し、前記放熱プレート20が水冷ジャケット8との面接触で冷却されて前記ヒートパイプ22内で気化した流体が液体に戻ることを特徴としている。
(7D)では、受熱プレート21とヒートパイプ22の接合状態が示されている。ヒートパイプ22は受熱プレート21に半埋設状態で接合されており、その接合面は半田等の接合材23で強力に接合されている。従って、受熱プレート21とヒートパイプ22との熱伝導性は強化されている。
【0033】
図8は、第2実施例の基板部と水冷ジャケットの組立図である。
(8A)は、本発明に係る上述した第2実施例の基板部10と水冷ジャケット8とその他部材とを作動させるための組立状態図である。注水側水路3から注水側チューブ6が延出されて水冷ジャケット8の一端に連結されている。同時に、排水側水路4から排水側チューブ7が延出されて水冷ジャケット8の他端に連結されている。他方、基板部内装室に収納された基板部10は、基板11の後端に配置された通信モジュール12と、基板11の
中央部に配置された発熱素子を被覆する受熱プレート21とヒートパイプ22と、基板11の先端縁から延出した放熱プレート20から構成されている。
重要な事は、水冷ジャケット8は放熱プレート20の上面に接触しているだけで一切連結固定はされていない。ただ接触することによって水冷ジャケット8が放熱プレート20を冷却し、その冷却によって基板部10の全体が冷却されるのである。
(8B)に図示されるように、注水側チューブ6と水冷ジャケット8と排水側チューブ7とは相互に連結されているから、基板部10とは関係なく一体で動くものである。動かし方は、例えば、水冷ジャケット8を指などで上方向Aに上動又は下方向Bに下動させれば注入側チューブ6と排水側チューブ7も追従的に上動又は下動する。或いはまた、指などで注入側チューブ6と排水側チューブ7を上方向Aに上動又は下方向Bに下動させれば水冷ジャケット8も追従的に上動又は下動する。基板部10を基板部内装室から取り出す際には、(8A)では水冷ジャケット8が放熱プレート20の上に載置されているから、水冷ジャケット8は上動させるのが通常である。逆に、水冷ジャケット8が放熱プレート20の下面に接触している場合には、水冷ジャケット8は下動させるのが通常となる。
注水側チューブ6と排水側チューブ7の形状は、(8A)では略L字状であるが、(8B)では変形U字状である。その形状はこれに限定されるものではなく、その他形状も使用できるものであり、水冷ジャケット8の移動とともに形状が変化してもよい。
(8C)に図示されるように、注水側チューブ6と排水側チューブ7の上動又は下動とともに、実線で示す水冷ジャケット8は一点鎖線で示す上動水冷ジャケット8A又は下動水冷ジャケット8Bの位置に移動し、その結果実線水冷ジャケット8の位置には何も無くなる。従って、基板部10の前方空間は何も無い状態となる。つまり、基板部10の前方空間に何も無くなるから、古い基板部を抜いて取り外し新規な基板部を挿入するという基板部10の交換作業を容易に行うことができる。
【0034】
図9は、本発明に係る基板部の第3実施例の斜視図である。
(9A)では、基板部10を構成する基板11の後方端に通信モジュール12が配置され、基板11の中央部には発熱素子を個別に上面側から、ベースプレートを介装して被覆するベイパーチャンバ部24aが散在し、基板11の前方、例えば、前方端と離間した位置に別体である放熱プレート20が配置されている。ベイパーチャンバ部24aと放熱プレート20とはヒートパイプ部24bにより連結されている。ベイパーチャンバ部24aとヒートパイプ部24bを合わせてヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ24と称する。
当該ヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ24の内部には、例えばアルコールのような気化及び液化が生じる流体が内在されている。従って、発熱素子を被覆するベイパーチャンバ部では、発熱素子から発生した熱を吸熱して液体である流体が気化して発熱素子周辺を冷却する。次に気化した流体はヒートパイプ部24bの内部を流通して放熱プレート20側に移動する。放熱プレート20は面接触している水冷ジャケット8の冷却水により冷却されるから内部の流体も冷却され、流体は気体から液体に変化する。この液体は再びヒートパイプ部24bを流通してベイパーチャンバ部24aに戻る。これらの流通を繰り返して把持部10は冷却されるのである。
なお(9A)ではベイパーチャンバ部から一本のヒートパイプ部が延びているが、複数のヒートパイプ部が延びても良く、また放熱プレート側でヒートパイプ部同士を接続することでループヒートパイプの機能を持たせても良い。
(9B)では、ヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ24の内部構造が示されている。ヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ24はベイパーチャンバ部24aとヒートパイプ部24bを合わせた構造を有し、図示する如く方形空洞と半球空洞を合わせたような内部空洞を有する。この空洞の中に気化と液化を繰り返す流体が存在するのである。
【0035】
図10は、本発明のベイパーチャンバの内部構造図である。
図2のベイパーチャンバ15及び
図9のヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ24におけるベイパーチャンバ部24aの内部構造の一例を示している。
ベイパーチャンバ25はベイパーチャンバ下板25bにベイパーチャンバ上板25aを積層して密閉した構造を有している。前記ベイパーチャンバ下板25bの内部構造は、複数本の毛細管が並行状に配置された毛細管構造部25dと、前記毛細管と毛細管の間に複数本の突起状の柱が配列された柱構造部25cを有している。流体は液体又は気体として存在しており、液体状態においては毛細管方向に流動し、気体状態においては柱の隙間を経由して毛細管直交方向への移動も可能となっている。
【0036】
図11は、本発明において、基板部の前方空間を広く開ける方法の一例を示す配置図である。基板部10の前方空間を広く開ける理由は、古い基板部を新規な基板部と交換する場合に、古い基板部10を基板部内装室から前方空間に取り出し、新規な基板部10を前方空間から前記基板部内装室に挿入するために必要だからである。以下では、基板部内装室がラックに多段状に形成されているから、基板部内装室をラック各段と言い換えている。
(11A)では、2段のラック各段が図示され、ラック各段境界線が一点鎖線L-Lで示されている。基板部10としては第1実施例の場合で図示されている。基板部10の構成として、基板11の後方端に通信モジュール12が配置され、基板11の中央部にベースプレート14が散在し、これらのベースプレート14上にベイパーチャンバ14が板状に配置されている。ベイパーチャンバ14の前方端部は基板部冷却受体となる冷却用延出部16である。この冷却用延出部16の上面に水冷ジャケット8が載置されている。そして1枚目の基板部10が下段に内装されており、2枚目の基板部10が上段に内装された状態が図示されている。
(11B)に図示されるように、下段の基板部10を抜いて取り外す場合には、下段の水冷ジャケット8を上動させて、上段の冷却用延出部16の下面に接触するまで上動させることが必要になる。しかし、上動された水冷ジャケット8の下面はラック各段境界線L-L近くにあることが図示されている。この状態で下段の基板部10を抜いて取り外すと後方にある通信モジュール12が上動された水冷ジャケット8の下面に接触して傷が生じる危険性がある。場合によっては、通信モジュール12が水冷ジャケット8と激突する危険性も存在する。
(11C)に図示されるように、このような事故を事前に避けるために、ベイパーチャンバ15の前方端に存在する冷却用延出部16の手前側で、ベイパーチャンバ15を折り曲げて曲げ段差15aを配置し、この曲げ段差15aにより余裕段差ΔHが生まれるから下段の水冷ジャケット8をより上方へ上動でき、その結果上述したトラブルが発生しなくなることが分かった。このような曲げ段差15aを高さ調整構造という。このような高さ調整構造を適宜に設けることが好ましい。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上詳述したように、本発明に係るラック型装置は、ラックの中に多段状に複数の基板部内装室を設け、各基板部内装室に1枚の基板部を内装させ、この基板部には冷却用の基板部冷却受体を一体化して形成し、この基板部冷却受体の上面又は下面に別体である水冷ジャケットを面接触させてまず基板部冷却受体を冷却して基板部の全体を冷却するように構成し、ラックの左右に注水側水路と排水側水路を配置し、注水側水路から注水側チューブを介して水冷ジャケットへと冷却水を注水し、水冷ジャケットから排水側チューブを介して排水側水路へと冷却水を排水するように構成し、注水側チューブと水冷ジャケットと排水側チューブの一体物を複数の基板部の夫々の前方側に配置させて、前記注水側チューブと水冷ジャケットと排水側チューブとが連結された状態で上動することにより水冷ジャケットを上動させて前記基板部の前方空間を広く開けて前記基板部を前記基板部内装室に
対して挿入又は取り出しが容易に出来るようにしたラック型装置であり、基板部交換の際のユーザの利便性を向上させ、事故及び故障の可能性を減じるものである。
【符号の説明】
【0039】
<本願発明の
図1-11に使用する符号>
1 ラック型装置
2 ラック
3 注水側水路
4 排水側水路
5 基板部内装室
6 注水側チューブ
7 排水側チューブ
8 水冷ジャケット
8A 上動水冷ジャケット
8B 下動水冷ジャケット
9 レール
10 基板部
11 基板
12 通信モジュール
13 発熱素子
14 ベースプレート
15 ベイパーチャンバ
15a 曲げ段差
16 冷却用延出部
17 熱伝導材
20 放熱プレート
21 受熱プレート
22 ヒートパイプ
23 接合材
24 ヒートパイプ一体型ベイパーチャンバ
24a ベイパーチャンバ部
24b ヒートパイプ部
25 ベイパーチャンバ
25a ベイパーチャンバ上板
25b ベイパーチャンバ下板
25c 柱構造部
25d 毛細管構造部
A 上方向
B 下方向
L ラック各段境界線
ΔH 余裕段差
S 内装空間
<従来例の
図12-14に使用する符号>
31 ラック型装置
32 ラック
33 注水側水路
34 排水側水路
35 基板部内装室
36 注水側チューブ
37 排水側チューブ
38 レール
40 基板部
41 基板
42 光モジュール
43 IC
44 正面折返し片
45 注水側ジョイント
46 排水側ジョイント
47 水冷ジャケット
48 水冷チューブ