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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171925
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】海上コンテナ昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/02 20060101AFI20241205BHJP
   B66C 1/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B66F7/02 F
B66C1/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089289
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】716004338
【氏名又は名称】黒木 正幸
(72)【発明者】
【氏名】黒木 正幸
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA24
3F004KB00
(57)【要約】
【課題】コンテナ船の運搬を前提に陸海陸輸送に使われている海上コンテナを、陸々輸送に使えるように、海上コンテナ昇降装置の簡素化による低コスト化に加えて、荷物の積み降ろしをする作業員や運送会社の運転手が特別な資格を必要とせず1人で操作できる昇降装置の実現を課題とする。
【解決手段】海上コンテナ用スプレッダを前後2つに分割することにより、前記スプレッダの簡素化と共に、海上コンテナの横移動や積み重ねの能力を省き、吊り上げ吊り下げの上下移動に限定し、さらに装置を前躯体と後躯体に分離した柱と梁と柱の下の土台で構成する門型土台構造に加え、前後躯体間を無線で接続して1箇所で操作できる構造で、上記の課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上コンテナ用スプレッダで、長手方向の部材を取り除き、前部分と後部分に2分割したスプレッダ構造を持ち、前記前部分と前記後部分毎に、柱と梁で門型を構成し、分割した前記スプレッダを前記梁方向へと持ち上げ持ち下げる前記門型構造を持ち、前記柱の下側に前後方向に土台を置き、前記柱に前記土台を固定し、前記柱の前後方向への転倒を防ぐ門型土台構造。
【請求項2】
請求項1で、上げる下げる等の操作ボタンの、前記前部分用と前記後部分用を一体に配置し、一人で操作できる配置とした構造。
【請求項3】
請求項2で、前記前部分用と前記後部分用の少なくとも片方を無線接続とし、前記前部分と前記後部分の間の信号配線を不要とした構造。
【請求項4】
請求項1で、前記スプレッダの両端に下向き配置するツイストロックの回転に給電するケーブルの上昇限界と下降限界のセンサー検出を使って、ワイヤー巻取ドラムの巻取限度と巻戻限度、すなわち前記スプレッダの最高上昇位置と最低下降位置、を制御する構造。
【請求項5】
請求項1および4で、前記ケーブルの配線途中に動滑車をぶら下げる事によって、伸縮ケーブルあるいはケーブル巻取ドラム等を使わずに、前記スプレッダの上昇下降による前記ケーブルの緩み張りを緩衝する構造。
【請求項6】
請求項1で、前記土台に直接キャスタやタイヤなどを取り付けて、あるいは加えた補助棒に前記キャスタや前記タイヤなどを取り付けて、手押しやハンドリフトやフォークリフトなどによって、前記前部分と前記後部分を個々に移動する構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸海陸輸送および陸々輸送に使う海上コンテナを昇降する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術の説明、その1として、海上コンテナの特質を説明する。
【0003】
箱としての海上コンテナは、以下に記述する特質により爆発的に普及することとなり、自動化機器を揃えた大規模工場で低コストに世界で年間300万TEU以上が生産され続けており、容易に安価に短納期で、購入、レンタル、リースできる。トラクタが牽引する海上コンテナを全世界の道路で日常的に目にするほど普及している。世間への知名度も高い。
【0004】
ある業種の需要が大きくなると、個別処理市場に、供給力を増やす手段として共通処理手法が登場する。A地点からB地点への輸送において、顧客が出す荷物内訳明細に運送会社が金額提示する個別処理市場に、荷物内訳明細を問わず運送会社が顧客に海上コンテナ輸送金額を提示する共通処理手法が登場する。
【0005】
顧客の出す荷物量の大小に合わせた金額の提示はないが、海上コンテナの内容積いっぱいに荷物を積込むと割安に輸送できる。毎回変動する輸送量毎に輸送金額を運送会社と交渉するより、毎回同額の海上コンテナ輸送金額で、コンテナ内に積める荷物量を工夫する方が顧客にとって使い勝手が良い。輸送費用も節約できる。
【0006】
輸送費には「規模の経済」が当て嵌まる。輸送費は原油タンカーで判るように大きい量で運んだ方が単価は安くなる。1口チョコを100万個輸送する場合に、1個単位、100個入の袋単位、100袋入りのダンボール箱単位、100箱入りの海上コンテナ1個、と後者ほど、積み下ろしが楽になり、計数管理が楽になり、輸送単価が安くなる。つまり荷物として海上コンテナを運ぶと単価は安くなる。
【0007】
海上コンテナの横幅、高さ、全長は、特別な許可を必要とせずに公道を運搬できる、ほぼ上限のサイズで規格化されており、荷主と運送会社が受け渡す荷物を海上コンテナにした場合に、単価は最も安くなる(ことになる)。運送会社がダンボール箱を開けて中味の物と数量を確認しないように、海上コンテナを開けて確認しない。中味は荷主の管轄範囲で運送会社は関知しない。
【0008】
海上コンテナは、船から見ると大きいほど輸送コストを低減できるが、陸海陸の一貫輸送が必須であり、道路を走行する必要から幅・高さ・長さの制約を受ける。幅8フィート(以降、Fと記す)、長さ20Fで高さ8.6F、長さ40Fで高さ8.6Fと9.6Fの計3種類が、世界の多くを占める。海上コンテナはISO規格で規定し、関連取扱機械を含め、全世界で互換性がある。
【0009】
海上コンテナは、鋳造した分厚く強固な隅金具を上下4隅の計8箇所に配し、梁と柱を隅金具に溶接で繋いだラーメン構造の強固な構造体である。隅金具は天井板や底板より少し出っ張っており、積み重ねても接触するのは隅金具同士であり、天井板や底板が接触する損傷を防いでいる。長持ちする。
【0010】
海上コンテナを積み重ねると、上下の隅金具が接触し、上に乗る海上コンテナの下4隅に付いた隅金具を通して伝わる重さを、下側の海上コンテナの4隅の柱と柱の上下に付いた隅金具で支え、上の海上コンテナの重さは下の海上コンテナの梁や鉄製外板や木板内壁や床板には伝わらない。
【0011】
海上コンテナはラーメン構造の強固な構造体で、中に重い荷物を入れて上4隅の隅金具で持ち上げできる。下4隅の隅金具で海上コンテナ用トレーラ(以降、シャーシと記す)に固定できる。陸上あるいは船上で多段に積み重ねできる。隅金具の上下の穴や横の穴を使って積み重ねた海上コンテナを上下に締結できる。隅金具の下穴を使って海上コンテナを床や船のデッキ等に固定できる。
【0012】
海上コンテナは、立方体の箱の6面を鉄板で覆ってある。風雨から、盗難から、外部の飛来物から、中の荷物を保護する。開閉面は1面で、観音開きになっており、荷送人が閉めた扉に番号の刻印された封印シールをし、刻印番号と世界唯一の海上コンテナ番号を荷受人が照合し封印シールを専用工具で切断し扉を開けることによって、荷送人から荷受人までの運送途中で中の荷物が窃盗などで取り出されてないことを担保する。
【0013】
海上コンテナは、上側の4隅の隅金具に、クレーンのスプレッダの4隅から下に出ているツイストロックピンを落とし込み、ピンを90度回転する事で、海上コンテナをクレーンで持ち上げ、90度戻して切り離しできる。クレーンフックのように玉掛けも玉掛け作業員もいらない。吊り下げても回転しないスプレッダの構造により、フック吊り下げ時の荷物回転もないから回転を止める作業員もいらない。
【0014】
海上コンテナは、爆発物などの危険物、液漏れ品、法令の禁止物などの一部例外品を除き、木箱、金属製のドラム缶、麻袋、ダンボール、石、干草、各種車両、建設機械、などコンテナの箱に収まる物なら何でも運べる。また、タンクコンテナを使えば液体も運べる。リーファーコンテナを使えば冷蔵冷凍品も運べる。
【0015】
海上コンテナの種類は、標準型ドライ、通風機能を持つベンチレータ、衣類輸送のハンガー、保温のサーマル、冷蔵冷凍のリーファー、タンク、天板を持ち上げるハードトップ、天板のないオープントップ、天板側板のないフラットラック、柱もないフラットベッド、自動車輸送のカーラック、動物輸送のペン、穀類粉状粒状のバルクなど色々あるが、運送会社は1つのシャーシで対応でき都合が良い。リーファーはシャーシに発電機を付ける必要がある。
【0016】
背景技術の説明、その2として、陸海陸のコンテナ輸送を説明する。
【0017】
輸送改革に於けるこの半世紀の嚆矢は、20世紀最大の発明のひとつと言われる海上コンテナの出現である。出現によって、変革が変革を呼び、陸海陸輸送に於ける、機械化が進み、省力化が進み、作業簡素化が進み、輸送処理可能量が激増し、迅速化し、海上運賃が激安化し、アジアで生産し欧米で消費など世界システムを変革した。
【0018】
世界中の海を大中小の夥しい数のコンテナ船が走り、世界各地に沢山のコンテナ港があり、隣接するコンテナターミナル(以降、ターミナルと記す)に段積みした大量の海上コンテナがあり、海上コンテナを載せたシャーシをトラクタが牽引して世界中の道路を昼夜を問わず走っている。現在の人間社会は、海上コンテナで支えられていると言える。
【0019】
運ぶ1つの荷物となった海上コンテナによってコンテナ船は大型化が可能になり、コンテナ船は大きくすると安くなるという「規模の経済」が当て嵌まる。200TEU(40F海上コンテナ100個)積載できるコンテナ船100隻と20000TEU船1隻を比較して、建造費、燃料消費、船員費を含む総運行費は前者より後者が桁違いに低コストになる。
【0020】
このような海上コンテナによる国際物流の変革が成功した根本要因は、荷主の荷物を荷姿そのまま請け負う輸送形態を止め、海運会社が提供する海上コンテナという大きな箱を運ぶ輸送形態への移行にある。海上輸送の海運会社と陸上輸送の運送会社は、海上コンテナ内の荷物に関知せず、荷発地から荷受地まで海上コンテナを運ぶ。海上コンテナの中の、荷物の品目構成と各数量内訳、荷物損傷、数量不足、などに関知せず。
【0021】
陸海陸の輸送では、荷発地-発港-船-着港-荷受地、毎に荷物の積み降ろし作業が発生する。荷主の荷物を荷姿そのまま輸送なら、各工程毎に多くの積み降ろし作業が発生し、荷物の内訳数量の受渡確認が必要になり、破損や紛失や盗難等の発生区間特定と責任確定化と補償が発生する。海上コンテナなら、荷発地と荷受地以外(すなわちターミナル内と岸壁)の積み降ろし作業は、大きな箱としての海上コンテナを積み降ろす作業に簡素化する。
【0022】
海上輸送を担当する海運会社から委託を受けた運送会社が、陸海陸輸送の陸上輸送を分担する。運送会社が所有するシャーシを同トラクタで引いてターミナルに行き、ターミナル運営会社が所有するトランスファークレーンやリーチスタッカーで、海運会社が所有する(空の)海上コンテナをシャーシに乗せてもらい、荷送人の所に行く。
【0023】
荷送人の所に着いたら、荷送人側の作業員に船で送る荷物を海上コンテナに積込み封印シールして頂いて、ターミナルに引返して、船に積込む海上コンテナの一時蔵置置場で、荷物を入れて貰って運んで来た海上コンテナを、ターミナル側の作業員にシャーシから取り降ろして頂く。まとめると、運送会社の運転手は海上コンテナの運搬に専念し、フォークリフトなどの荷役機器を操作する個々の荷物や海上コンテナの積み降ろし作業に携わらない。
【0024】
コンテナ船が接岸したら、ギャングという積み降ろし作業員の作業班が、一時蔵置置場から岸壁に海上コンテナを運び、船に積込む。全積込みが完了したら船は出港する。コンテナ船が運んで来た(荷物の入った)海上コンテナは、この逆の工程を辿って荷受人の所で海上コンテナ内に積込んである荷物を降ろす。
【0025】
陸海陸の輸送では、海上コンテナを積み降ろす作業は、荷主の所では発生せず、岸壁と岸壁に隣接するターミナルだけで発生する。しかも作業量は多く、船の出港を制約するから、コンテナ船と岸壁での海上コンテナ積み降ろし作業は、素早い積み降ろしが要求される。海上コンテナの最大積載総重量は約30.5トンで非常に重く、高速動作が必要で、積み降ろし機械は非常に大きく重く高価である。大きく重いから省力化の効果が大きいとも言える。
【0026】
背景技術の説明、その3として、陸々輸送でトラック輸送の問題点を説明する。
【0027】
陸々輸送でトラック輸送に以下の問題点がある。1;荷物が複数個で輸送費の見積提示と積み降ろしと数量管理と損傷確認や損傷補償が手間になる。2;マッチングに手間が多過ぎる。3;荷待ちが発生する。4;業務時間外の夜間早朝休日に積み降ろしができない。5;スイッチ輸送に不向き。
【0028】
1;の説明。荷物の個数が多い場合には色々と手間が発生する。荷物の荷姿種類と数量内訳で輸送に使うトラックを小型・中型・大型・超大型の選択、運送日の車両と運転手確保の確認がいる。荷物の積み降ろし作業が運送会社側か荷主側かの確認。積み降ろし時の荷物種類と各数量と損傷有無の相互確認および書類の受渡。など。
【0029】
2;の説明。個々の荷物輸送は輸送契約までに多くの手間が発生し、(日本では水屋と呼ぶ)仲介業者や別の運送会社が荷主と運送会社の間に介在する場合も多い。運搬する荷物が個々の荷物の集合である本質的な特性であり、陸海陸輸送が海上コンテナへの移行で解決した様に、陸々輸送を海上コンテナに移行するまで解決しない。
【0030】
3;の説明。荷送人荷受人は、出庫する荷物を取り出し車両に積込み、車両から荷物を降ろし格納する。荷送人荷受人側はこの作業を業務の始業から終業まで繁閑なく続けたいが、運送会社側の到着する車両には繁閑が生じる。車両が集中的に到着する時間帯に荷待ちは必然と言える。また積み降ろし作業中も荷待ちとなる。
【0031】
4;の説明。輸送車両は運送会社の所有物であり、運搬物は車両の中の荷物である。運送会社が荷物を輸送するためには、荷送人荷受人の業務時間内に、荷送人が荷物を積込む、荷受人が荷物を降ろす作業が必須である。荷送人荷受人の業務時間外の夜間早朝休日には、次の作業開始時間まで、荷物の受渡しができない。
【0032】
このため、夜間から早朝に到着した車両の積み降ろし作業が始業直後に集中するが、積み降ろし人員やバースには限りがあり、順に処理して行くしかなく、荷待ち渋滞が発生する。到着予定時刻が終業時刻に近いと、道路の混雑などで間に合わない場合に、夜を越して翌朝待ちとなる。あるいは、翌業務日の始業時刻着に合わせて出発を延期となる。
【0033】
5;の説明。運送会社の運転業務の1日の上限時間を厳しくしつつある国がある。また運転手の側にも宿泊なしで当日に自宅へ帰宅したい要望もある。地域Aと地域C、地域Cと地域A、で同日に相互に荷物を運搬する場合に、中間地点Bでお互いの荷物を交換して、それぞれの出発地域に帰るスイッチ輸送が試みられた事がある。
【0034】
スイッチ輸送では、パターンA;お互いの車両を取り替える”ドライバー交換方式”は、車両事故や車両保険および運転室内の匂いや私物の移動などで不評。パターンB;トラクタのヘッド部分だけを交換する”トレーラ・トラクタ方式”は、シャーシと荷箱の部分が相手運送会社に渡り車両事故や車両保険の問題がある。パターンC;中の荷物を一旦出して入れ替える”貨物積替え方式”は、積み降ろし作業が重労働で不評。
【0035】
背景技術の説明、その4として、陸々輸送で海上コンテナが使われない理由を説明する。
【0036】
陸々輸送で海上コンテナが使われない理由は、1;必須でない、2;荷送人と荷受人の双方が上げ下げ装置を購入かつ操作する。3;上げ下げ装置が高額、4;建物の天井が低い、5;荷主側が海上コンテナを所有、6;荷主側で往復荷が必要、などである。以降、それぞれについて説明する。
【0037】
1;の説明。陸々輸送では運転室と荷台が一体となったトラックが主流である。海上コンテナに移行すると、運送会社が運ぶ荷物は海上コンテナそのものになり、個々の荷物に起因するコストが消えて、輸送コストの大幅な低減が期待できるが、現状では以降の項目で記述する問題で移行できず、かつ現状容認でも大きな支障はない。
【0038】
2;の説明。陸海陸輸送ではターミナル内で行う海上コンテナの移し替えはターミナル側の担当である。移し替えの荷役機器はターミナル側が用意している。荷主は荷物と荷物の積み降ろしの荷役機器を用意すれば良い。陸々輸送に海上コンテナを使う場合は、海上コンテナを昇降できる装置を荷送人側と荷受人側の双方が用意する必要がある。
【0039】
シャーシを引いたトラクタで運送会社がやって来て運ぶ荷物が海上コンテナそのものになると、荷送人と荷受人の双方が、大きくて重い海上コンテナをシャーシに載せる降ろす上げ下げ装置を高額購入して、重量装置を操作できる特別な技能者を雇い、実際の上げ下げ操作をすることになる。操作技能者がいないと業務が停止する。
【0040】
3;の説明。陸海陸輸送では3~30.5トンの重量となる海上コンテナを積み降ろしする。陸々輸送では数Kgから数百Kgの重量となる個々の荷物、あるいは、個々の荷物をパレットに載せて積み降ろしする。日本国内では、前者の荷役機器のリーチスタッカが高額で8千万円ほど、後者のフォークリフトが低額で3百万円ほどである。
【0041】
陸海陸輸送から陸々輸送の転用に最も近い上げ下げ装置はリーチスタッカである。リーチスタッカが高価になる要因は、横から持ち上げるから自重が70トンほど必要。海上コンテナと自重を横移動できる大きなエンジンが必要。海上コンテナの積み重ねでブームに伸縮機能が必要。重い海上コンテナを持ち上げる部分のスプレッダが、20Fと40F兼用の動力伸縮機能を持つ構造で、伸縮部の強度が必要になり、大きく重くなり、すごく高価になる。
【0042】
陸海陸輸送では海上コンテナの移し替え4回を含め最低計6回の荷渡しが発生するのに対し、拠点間の陸々輸送では荷渡しが出発時の荷積みと到着時の荷降ろしの2回で移し替え0回となる。移し替えの処理量が桁違いに多いコンテナ船の陸海陸輸送では、海上コンテナの高速な移し替え積み降ろし装置が超高額でも必須であるが、装置が必須でもなく移し替えのない陸々輸送では装置の低価格が重要になる。
【0043】
4;の説明。陸々輸送で荷物を積み降ろしする物流センターや工場の建物の天井は5.5mほど。ターミナルで使用する海上コンテナの上げ下げ装置は、露天多段蔵置を前提に設計されているので、天井につかえて使用できない。天井や庇のない場所、天井が凄く高い場所、に限定だと使い勝手が悪い。
【0044】
ターミナルで使われている海上コンテナの上げ下げ装置には、海上コンテナを持ち上げる部分のスプレッダが必ずあるが、20Fと40Fの両用とするために伸縮機構を備えている。40F用に伸ばした部分を20Fに縮めた部分で持ち上げる強度確保に伸縮機構は大きく重く高さも高くなる。スプレッダが天井との空間に収まらなくなる。
【0045】
5;の説明。陸々輸送に海上コンテナを使う場合は、運送会社側がトラクタとシャーシを所有し、荷主側が海上コンテナを所有するのが妥当である。車両が到着する前に荷積みができ、出て行った後に荷降ろしできる。業務時間外の夜間早朝休日にお届けや引取もできる。海上コンテナに荷物を入れたまま蔵置して倉庫代用できる。
【0046】
6;の説明。陸々輸送のトラックでは、車両と荷箱は運送会社の物、荷物は荷主の物、であるから、荷物を荷受人に渡した時点で輸送請負は終了する。つまり、輸送料金は荷送り場所から荷受け場所までの片道である。陸々輸送に海上コンテナを使う場合、運送会社は所有するトラクタとシャーシで、荷主所有の海上コンテナを運ぶ。片道輸送。送り先に移動した海上コンテナを荷主の元に戻す別の運送を、荷主は運送会社に依頼する必要がある。
【0047】
安価な海上コンテナの上げ下げ装置の登場によって、すぐに海上コンテナを使う陸々輸送が普及する訳ではない。宅配便の拠点間相互輸送、お互いが逆方向に荷物を輸送する2社が提携して往復輸送、など往復前提の輸送料金が嚆矢となり、徐々に普及して行き、市場拡大が生むマッチングサービスの登場により、片道前提の輸送料金の一般化が、海上コンテナを使う陸々輸送の普及を加速して行くと思われる。
【0048】
背景技術の説明、その5として、陸々輸送に海上コンテナを使う利点について説明する。
【0049】
陸々輸送に使える安価な海上コンテナの上げ下げ装置は無いが、もし有り、特別な技能なく誰でも簡単に操作できるなら、海上コンテナを使った輸送に次の利点がある。
【0050】
1;陸海陸の海上コンテナのクラスタを活用できる。2;海上コンテナの陸上運送会社の業務範囲拡大。3;輸送業務と荷役作業の完璧分離、4;マッチングの簡素化、5;車両到着待ち荷待ち解消、6;夜間休日の海上コンテナの持込持出、7;海上コンテナでの保管、8;荷物の最大化による輸送費の低下、9;日帰り折り返し運行、など。
【0051】
1;の説明。陸海陸の海上コンテナ輸送には全世界の多数の会社からなる巨大なクラスタが生まれている。海上コンテナは安く量も種類も沢山ある。輸送する運送会社は全世界の至る所にある。これらの低コストになった資源を活用できる。例えば、倉庫の一部に電源を配線し海上コンテナを置き、冷蔵冷凍品毎に最適な温度に設定し、冷蔵冷凍保管できる。A地点から最適な温度を保持しながら陸々輸送し、B地点の倉庫で引き続き冷蔵冷凍保管できる。
【0052】
2;の説明。陸海陸輸送の陸上輸送部分を海運会社から委託受けている運送会社は、現有の車両と運転手を使って海上コンテナの陸々輸送に参入し業務範囲を拡大できる。参入に車両購入や運転手訓練が不要。逆に言えば、海上コンテナを使った陸々輸送を始める荷主は、海上コンテナを運ぶ車両を持った運送会社を簡単に探せる。
【0053】
3;の説明。陸海陸輸送では荷主側が荷役作業として海上コンテナに荷物を積込み扉を締め封印シールし、運送会社側は輸送業務に徹し荷物に触らず関知しないルールが定着している。既に確定しているこのルールを陸々輸送に適用する事で、荷役+輸送の荷主要求を断り、輸送業務と荷役作業の完璧分離を実現できる。
【0054】
運送会社は封印シールした海上コンテナそのものの運搬に特化し、中の荷物の積み下ろしに関知しないのであるから、荷物の固縛の良否も、荷崩れも、荷潰れも、数量確認も、数量不足も、荷主側の責任である。輸送途中の荷崩れによる荷物の損傷も荷積みした荷主の責任であり、車両転倒など特殊例を除き、運送会社が弁償する責任はない。
【0055】
4;の説明。運搬する荷物が個々の荷物の集合でなく海上コンテナそのものになれば、荷主は積み降ろしコスト削減に投資するし、荷主と運送会社の輸送契約もシンプルになり、荷主と運送会社が出会うマッチングが簡素化し、マッチングアプリも登場し易くなり、総輸送費に占める割合が大きい個々の荷物取り扱いとマッチングコストが縮小し、総輸送費を大きく低減できる。
【0056】
5;の説明。工場や物流センターで車両への荷物の積み降ろしをする人員の処理量は始業から終業までほぼ均一とみなせる。但し、昼休み休憩中は処理量ゼロ。一方、車両の到着時刻は、出発地、出発時刻、輸送距離、道路状況、などによって波がある。車両到着が疎な時は車両到着待ち、密な時は車両側の荷待ち、が必然となる。
【0057】
シャーシと荷箱と運転室が運送会社の所有、個々の荷物が荷主の所有、である限り、車両到着前に荷積みできない、車両が出ていった後に荷降ろしできない、のであるから、車両到着待ちや車両側の荷待ちの発生は必然である。シャーシと運転室が運送会社の所有、荷箱の海上コンテナと個々の荷物が荷主の所有なら、車両到着前に荷積み、車両が出て行った後に荷降ろしができ、車両到着待ち荷待ちを解消できる。
【0058】
6;の説明。トラクタとシャーシが運送会社の所有、海上コンテナと中の積荷が荷主の所有なら、運搬する荷物は海上コンテナとなり、かつ、運送会社の運転手が特別な資格なしに昇降装置を操作できるなら、積み降ろし作業員がいない夜間休日などの業務時間外に、守衛の許可を受け運送会社が海上コンテナを持込持出できる。
【0059】
7;の説明。荷物を入れた海上コンテナを、風雨のある屋外に特別な防水処置をしないで蔵置保管できる事から、倉庫の代用となる。建築物となる倉庫は建設費が高額で建物の維持費や照明や固定資産税など経費も多くかかる。海上コンテナは安価に購入でき維持費もほとんどかからない。
【0060】
8;の説明。タンカーやコンテナ船が証明しているように、物は大きくまとめるほど輸送費用を安くできる。特別な許可なく道路を輸送できる最大限度の荷物、すなわち海上コンテナのサイズが、陸々輸送で輸送費を最も安くできる。人手や通常の荷役機器のフォークリフトで海上コンテナは持上げられなくて、専用の上げ下げ装置が必要になるが、これが機械化による省力化である。
【0061】
運送会社が運搬する荷物が海上コンテナそのものになると、海上コンテナの中に入っている色々な荷物は荷主の専決事項になる。中の荷物が、多くても少なくても、荷物の固縛の良否も、荷崩れも、荷潰れも、数量確認も、数量不足も、荷主側の責任である。運送会社はこれらの諸事項からフリーになり運賃を安くできる。
【0062】
9;の説明。日帰りで往復できず1泊が必要な長距離拠点間輸送において、海上コンテナの上げ下げ装置を使った載せ換えサービス拠点で、双方の車両が待ち合わせし、お互いの海上コンテナを入れ替えて、それぞれが出発地域に引き返すスイッチ輸送により、お互いに1泊なし日帰りで、お互いが請け負った海上コンテナを相互委託で輸送できる。
【0063】
背景技術の説明、その6として、海上コンテナの代役のスワップボディコンテナを説明する。
【0064】
最初にスワップボディコンテナの利点と欠点の概要を書いておく。利点は、1;コンテナ昇降装置が不要。2;牽引式より運転室前から荷箱後端までの全長が短い。3;牽引免許不要、4;有料道路の料金が安い。5;日帰り折り返し運行のスイッチ輸送。
【0065】
欠点は、6;コンテナの生産量が少なく納期が長く値段が高額。7;運転室とシャーシが一体になった専用車両が必要。8;荷箱全長が短く積載容積が少ない。9;最大積載重量が少ない。10;コンテナ脱着で前面に25mほどの平面空間が必要。11;運転に脱着練習必要。12;輸送業務と荷役作業の完璧分離が個別交渉による。
【0066】
1;の説明。陸々輸送にコンテナを使いながら、超高額なコンテナ昇降装置の購入を避ける方法として、スワップボディ型コンテナがある。専用コンテナの下部側面に格納してある片側2か3本ずつ両側計4か6本の支持脚を下向きに固定し、車両の動力を使ってシャーシの車台高を下げて前に引き抜く。コンテナの下にシャーシを後進させ、車両の動力を使って車台高を上げコンテナを持ち上げ、支持脚をコンテナ側面下部に格納する。
【0067】
2;3;4;の説明。海上コンテナを運ぶ車両はトラクタによる牽引車両であるのに対し、スワップボディ車両はシャーシと運転室が一体構造であり、運転室前からコンテナ箱の後端までの全長が短くて済み、かつ、牽引免許を必要としない。高速道路が有料道路になっている国では、牽引車両より通行料金が安くなる。
【0068】
5;の説明。日帰りで往復できず1泊が必要な長距離拠点間輸送において、入れ替え用に設置してある中間拠点で双方の車両が待ち合わせし、お互いのスワップボディコンテナを入れ替えて、それぞれが出発地域に引き返し代理お届けすることで、お互いに1泊なし日帰りで、お互いのスワップボディコンテナを相互委託でスイッチ輸送できる。
【0069】
6;の説明。コンテナ船を使った陸海陸輸送に使う大量生産の海上コンテナと異なり、入手性に難がある。世界共通規格もなく流通量も少なく少量生産のスワップボディコンテナは、受注をまとめて半年や1年毎の生産となることもあり納期が長く、少量の短期入手も難しく、荷物量の変動に柔軟に対応できない。生産量も少なく製造コストが高い。
【0070】
7;の説明。世界中の道を大量に走り回るトラクタおよび海上コンテナ用シャーシと異なり、シャーシと運転室が一体構造のトラクタも少量生産で価格が高い。受注をまとめて半年や1年毎の生産や受注生産になることもあり納期が長い。海上コンテナの牽引用に転用できない。
【0071】
8;の説明。海上コンテナの全長は、道路走行に特別な許可が不要のほぼ上限の40Fが多くを占める。スワップボディの全長は上限の2/4や3/4ほど。陸海陸の海上コンテナの全長競争でほぼ上限の40Fが勝ち残った。輸送単価の競争では、ほぼ上限の全長だけが勝ち残れる。
【0072】
9;の説明。スワップボディは4本や6本の取付式支持脚で総重量を支える構造により、最大積載重量が海上コンテナの半分ほどに少なくなっている。重量制限により運べる荷物の範囲が狭くなる。脚数を増やす、脚を太くする、フレームの強度を上げる、など積載重量を増やす手段はあるが、脚重量増による取扱難、コスト、コンテナ自重増加による積載可能重量減、などの問題がある。
【0073】
10;の説明。スワップボディは4本や6本の取付式支持脚で支えた荷箱の下にシャーシを後進し潜り込ませる構造により、路面に傾きがなく平坦である必要がある。斜面、不整地での脱着作業不可。また、シャーシと箱下ガイドレールの隙間が数センチ程度と非常に狭く、シャーシがコンテナ支持脚から完全に抜け切るまでハンドルを切る事ができず、車両前方に25mほどの方向転回用の広い平坦な路面を必要とする。
【0074】
11;の説明。海上コンテナの陸海陸輸送を専業とする運送会社と運転手は多く実在する。陸々輸送への進出に車両投資や運転教習が不要である。対して、スワップボディコンテナを輸送できる運送会社と運転手は少なく、多くの場合に転用できない車両購入の投資や運転手の教習が必要となる。投資に見合う収益で投資を回収できるか不安がある。
【0075】
12;の説明。スワップボディ輸送車両の外形は、荷箱ボディと運転室が一体となったトラックに似ている。むしろ、それを特徴としている。トラックには運転手が積込みするラスト1マイルの配達業務があり、荷積みが運転手担当か荷主担当か混在している。スワップボディ輸送では輸送業務と荷役作業の完璧分離が個別交渉となる。
【0076】
スワップボディコンテナのまとめ。大量生産の海上コンテナと違い、スワップボディコンテナは下部に支持脚を格納した独自のコンテナで高価になる。ISOの規格統一もない。シャーシと運転席が一体になった車両部もシャーシ昇降の独自機能で高額となり、かつ、海上コンテナ用と共用できない。通常のトラック運送、海上コンテナ運送、に対して、スワップボディコンテナは第三の運送手段であるが広く普及しているとは言い難い。
【0077】
以上、背景技術のまとめ。荷主と運送会社の責任境界が個々の荷物から海上コンテナに移行した事で、陸海陸運賃は大幅な低減を実現した。大型機械化で労働環境も改善した。通常のトラックの陸々輸送では、荷主と運送会社の責任境界が個々の荷物にあり、労働環境も含めた高コスト構造を引きずっている。輸送コスト低減と労働環境の改善は、海上コンテナに移行が解決策であり、移行しなければ解決しない。
【0078】
海上コンテナの大きさや重さの規格はコンテナ船と道路制約によって決まり、積み降ろし装置はターミナル作業の効率優先の機能を持つ。トラック輸送が主流の陸々輸送に、海上コンテナを使い物流を抜本改革するには、ターミナルで使われている海上コンテナの積み降ろし装置から、機能を削り落とした安価な昇降装置の出現が必要である。
【0079】
車両の到着と荷物の積み降ろしに同時性の制約がある限り、荷主側の車両到着待ち、運送会社側の荷待ちの発生は必然であり、待ち解消の解は海上コンテナに移行であるが、移行するには海上コンテナの安価な昇降装置に加えて、誰でもが一人で簡単に操作できる昇降装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2020-121831号公報
【特許文献2】特開2011-46479号公報
【非特許文献】
【0081】
【非特許文献1】松田琢磨著 「コンテナから読む世界経済」KADOKAWA出版 2023年
【非特許文献2】国土交通省 スワップボディコンテナ車両利活用促進に向けたガイドライン
【非特許文献3】中継輸送の取組事例集、令和2年1月、国土交通省自動車局貨物課
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0082】
陸海陸輸送としてターミナルで使われている海上コンテナの積み降ろし装置は、大きく重く余りにも高額なため、陸々輸送の装置として流用できない。かつ、陸々輸送用に作られた装置は見当たらない。ターミナルで使われている装置を参考に、陸々輸送用の小さく軽く安価な積み降ろし装置を実現する時に、下記の課題がある。
【0083】
大きく重い原因の1つ目は、ツイストロックが先端にある海上コンテナ用スプレッダ(吊具)の伸縮機能にある。ターミナルで使う装置としては真に合理的であるが、伸縮機能を持つ事によって、重量物の海上コンテナを吊り下げるツイストロックが先端にある可動部を、中央の固定部分が持ち上げる構造となる。
【0084】
すなわち、固定部分から水平に長く伸びた可動部の先端のツイストロックが、重量物の海上コンテナを吊り下げる構造になり、強度を確保するため厚く重い鋼材が必要となる。また、伸縮機能も構造を複雑にし使用する鋼材を増やし部品点数も増やし、スプレッダ部の値段がフォークリフト1台か2台分ほどの高額になる。
【0085】
大きく重い原因の2つ目は、海上コンテナの積み重ね機能にある。ターミナルで使うリーチスタッカは、先端にスプレッダを取り付けたブームに伸縮機能を持たせて、機能を実現している。限られた敷地内に積み重ねて数多くの海上コンテナを蔵置したい屋根のないターミナルで使う装置としては真に合理的であるが、建物内で使う昇降装置で必要としない機能で重く高価になる。
【0086】
大きく重い原因の3つ目は、海上コンテナを横から持ち上げる装置の仕組みにある。荷物を詰め込んだ時の最大総重量が30トンを超える海上コンテナを横から持ち上げる装置の自重は70トンほどの重さが必要になる。軽いと持ち上げられない。持ち上げても自分が倒れてしまう。
【0087】
大きく重い原因の4つ目は、海上コンテナを持ち上げて自由に横移動する機能にある。重い海上コンテナと重い装置を自由に動かすために力強く巨大な内燃エンジンを積む必要があり、動力伝達系やタイヤなどの回転系も必要になり、フレームの強度も必要になり、装置が重く高価になる。
【0088】
5つ目の課題として重機操作の人員確保がある。動力によって持上げ横に移動する装置はクレーン操作の資格が必要となる。荷役作業員の中に資格者を常時確保しておく必要がある。クレーン操作の資格が必要だから、夜間休日に運送会社の運転手が構内に入り海上コンテナを持込持出するを、荷主側の事業者は許可できない。
【課題を解決するための手段】
【0089】
大きく重い原因の1つ目の課題は、海上コンテナ用スプレッダで、長手方向の部材を取り除き、前竿と後竿に2分割する手段により解決する。スプレッダはツイストロックが両端にある竿部分だけになり、中央の伸縮収納部も、伸び縮む伸縮部分も無くなる。
【0090】
大きく重い原因の2つ目の課題は、海上コンテナの積み重ね機能の廃止の手段で解決する。屋根のないターミナルでは積み重ねで土地の有効活用ができるが、屋根のある事業所では積み重ね機能を必要とする事が少ない。機能廃止は削除処理だから、特に技術的な工夫を必要としない。
【0091】
大きく重い原因の3つ目の課題は、柱と梁で海上コンテナを跨ぐ門型と柱の下に付けた土台の門型土台構造を持つ前後2つで構成する半固定の構造体、で解決する。角形鋼管の柱とH形鋼の梁をダイヤフラムで接続する門型構造は、重量物を支える建築で使う技術として確立している。壁や床に固定する方式でなく、柱の下に付けた前後方向の土台で、重い海上コンテナの重みを受け止め、門型の転倒を防ぐ。床にボルトを埋め込んで固定しなくて済む。
【0092】
海上コンテナの前端部分と後端部分にある隅金具の穴の真上に、海上コンテナを跨いで門型の吊り上げ機構を置き、下向きのツイストロックがあるスプレッダを持ち上げる。鉛直に持ち上げるから、使用鋼材が少なくて済む柱と梁の門型で、重い海上コンテナを持ち上げできる。
【0093】
前後2基の門型は、20、または、40Fの間隔で設置する。使う海上コンテナの長さに合わせて設置すれば、伸縮で間隔を調整する必要は無くなる。また、45、48、53Fには40Fの位置に隅金具が付いており、40Fの間隔で対応できる。すなわち、スプレッダが伸縮方式でなくても、半固定方式で20F、あるいは、40、45、48、53Fに対応できる。
【0094】
念の為に記述しておくと、ターミナルにおいて海上コンテナを横から持ち上げる装置は、リーチスタッカやトップリフタである。トランステナやストラドルキャリアは海上コンテナを跨いで持ち上げる。但し、本特許の柱からなる前後の分離した門型ではなくて、前後一体型の形状をもつ。
【0095】
大きく重い原因の4つ目の課題は、車輪を土台に置き換えて、横移動の機能撤去で解決する。横移動がなくても、昇降機能が有れば、海上コンテナを陸々輸送に使える。横移動の撤去で、エンジン、タイヤ、動力伝達機構、運転室、強度補強材など、部材の削減効果が大きい。機能撤去は削除処理だから、特に技術的な工夫を必要としない。
【0096】
本装置は無線信号を使い前後2基の門型の間の信号配線が無い事により、前と後ろを個々に移動できる。本装置は半固定式で、海上コンテナを持ち上げて横移動できないが、前後2分割の構造により構内にある別の場所に手動で移動し再設置できる。あるいは、片側を移動して、20F用と40F用に切り替えできる。
【0097】
前部分と後部分を別々に昇降を繰り返していると、前部分と後部分の昇降高さがズレる不具合が発生する。本発明の昇降範囲は、シャーシの高さから地面までの1メートルちょっとであり、昇降速度はゆっくりで良い。前後の高さズレが発生した時は前か後ろを個々に昇降操作して高さを揃え戻しておく。
【0098】
前述後述しているが、車輪を使った横移動のクレーン機能を無くし、本発明の門型土台構造の昇降装置により、事業所内の構造物や荷物を破損する恐れが無くなり、資格なしに誰もが装置を操作でき、運送会社の運転手が業務時間外の夜間休日に海上コンテナを持込持出できるようになり、荷主と運送会社の双方とも業務効率が向上する。
【0099】
5つ目の課題は半固定式で車輪のない土台付き昇降装置で解決する。横移動しない昇降装置であるから、クレーン操作の資格者を必要とせず、誰でも、運送会社の運転手でも、操作できる。独立した前部分と後部分を1箇所で1人で操作できる。前部分と後部分の間を無線で信号伝達するから昇降装置の設置移動移設が簡単でもある。
【0100】
ついでに書いておくと、門型構造でキャスタやゴムタイヤの車輪を付けた昇降装置やクレーンがある。重量物を吊り下げたまま横移動できるので便利である。数百Kgほどの比較的軽量な重量物ではチェーンブロックで吊り上げて動力がなく安価である。重い重量物では動力を装着し吊り上げと横移動に動力を使い高価になる。
【0101】
課題を解決するための上記5つの手段は、3つが本特許の工夫、2つが機能の削除である。本特許の1次的な目的は海上コンテナ昇降装置の低価格化と操作の簡素化であるが、2次的で本当の目的は、昇降装置の低価格化と操作の簡素化により、陸々輸送に海上コンテナの使用を一般化し、陸々輸送における労働環境の改善と輸送コストの低減である。
【発明の効果】
【0102】
本発明によるスプレッダの簡素化、昇降装置の伸縮ブームの廃止や前後2分割、移動機能の削除、などにより、海上コンテナ昇降装置の低価格化、装置操作の平易化が実現できる。これが本発明による直接的な発明の効果である。
【0103】
通常、スプレッダは4隅に下向きのツイストロックピンを持ち、長手方向の伸縮機能を持つ。本発明では長手方向の部材を無くして短手方向の両端にツイストロックピンを持つスプレッダ前後2組の構造により、伸縮機能の消失と合わせて、非常に重く高価であったスプレッダの部材を軽量に材料費を安価にできる。
【0104】
多段積み機能を持った海上コンテナ昇降装置は、多段積みの海上コンテナより高い門型構造物あるいは伸縮するブームを持つ。本発明は陸々輸送用の海上コンテナ昇降装置に焦点を絞ったことにより、これらの構造材が不要になり、海上コンテナ昇降装置の低価格化に貢献する。
【0105】
通常、海上コンテナ昇降装置は、重い海上コンテナを持ち上げたまま横移動時に自分が転倒しない十分の重さ(海上コンテナ総重量の2倍以上)が必要である。本発明では横移動機能を無くした事により門型土台構成でスプレッダを上下に昇降する構造および操作で、海上コンテナ昇降装置の低価格化、装置操作の平易化が実現できる。
【0106】
通常、ターミナルで使う海上コンテナ昇降装置は、横移動機能により高電圧の電動モータあるいは大排気量の内燃機関、と動力伝達機構と頑丈な車輪とそれらを支える頑丈な構造物や運転室を持つ。本発明では横移動機能を無くした事により車輪機構が不要になり、海上コンテナ昇降装置の低価格化、装置操作の平易化が実現できる。
【0107】
本発明による海上コンテナ昇降装置の低価格化、技能資格不要な装置操作の平易化によって、陸々輸送用の海上コンテナ昇降装置の普及が進めば、(ラスト1マイルなどの配達運送、すなわち配送を除いた)、拠点間の陸々輸送に海上コンテナが使われ始め、海上コンテナを使った陸々輸送で、運送会社と荷主に下記の導入効果がある。
【0108】
運送会社の利点は、1;陸海陸輸送の海上コンテナ運送会社が陸々輸送に参入できる、2;陸々輸送で所有する車両種類の統合、3;車両と運転手のマッチング作業が楽になる、4;昇降装置を運転手が操作できる、5;荷待ち解消と夜間休日の持込持出による車両回転率の向上、6;運搬する荷物が海上コンテナそのものによる取扱簡素化、7;荷積み荷降ろし作業の完全荷主化、8;スイッチ輸送で1泊運行を0泊運行にできる、などである。
【0109】
1;の説明。安価な海上コンテナ昇降装置が登場すると、拠点間の陸々輸送に海上コンテナが使われるようになり、海上コンテナの陸上輸送の新規需要が発生する。コンテナ船の陸海陸輸送の陸上輸送を分担している運送会社は、海上コンテナを運搬するトラクタとシャーシを既に所有しており、新規投資なく現有車両で参入でき有利である。
【0110】
2;の説明。運送は大型や特大トラックを使う拠点間の輸送と、小型や中型を使う末端の配送がある。兼業の会社も多い。荷台形状も平ボディ、バン、保冷、冷蔵冷凍など色々。運送依頼に見積書を出す時は受注未定であり、使用車両や運転手のダブルブッキングの配車は必然である。ダブルブッキング発生の後処理で大変な手間と費用が発生する。
【0111】
輸送が海上コンテナになると、運送会社の車両はトラクタと40F用シャーシの単一車種に集約して、内容積増で1件単価が上がり、配車が楽になり、車両回転率が増加する。ダブルブッキング発生が減少し、その手間と費用が減少する。車種統合で保有車両総数が減少する。車両保管面積が縮小する。車両の購入費や維持費が減少する。
【0112】
3;の説明。個々の荷物の集合を運ぶ運送会社は、運転できる車両が異なる全運転手に、運用中の全車両の種類、荷物の形状や量、荷積の場所と日時、荷届の場所と日時、でマッチングが複雑になる。海上コンテナを運ぶ運送会社は、大型と牽引を運転できる運転手、車両がトラクターとシャーシ、荷物が海上コンテナ、でマッチングが簡素になる。
【0113】
4;の説明。本発明の海上コンテナ昇降装置は横移動がなく、オフィスエレベータの昇降操作と同程度に操作が簡単であり、運送会社の運転手が操作できる。入門管理者(守衛)の承諾を受け、事業者の積み降ろし作業員がいない夜間休日に、運送会社の運転手が昇降装置を操作し、海上コンテナを事業所に持込持出(お届け引取)できる。
【0114】
5;の説明。運転室と荷箱が一体となったトラックでは、車両が到着しないと積み降ろしが出来ず、荷待ち発生は必然である。積み降ろし中も荷待ちである。荷主所有の海上コンテナなら、事前荷積み事後荷降ろしで荷待ちを解消できる。同様に、夜間休日の事業所への海上コンテナの持込持出が可能になる。これらにより、運送会社の車両の回転率が向上する。
【0115】
6;の説明。輸送コストの高止まり要因の多くは、運送する荷物が個々の集合に起因する。引き合い毎に異なる内容の見積書作成費用が発生し、注文が来ない事も多く、その時は手間の多い見積書作成費用を回収できない。荷物量と車両サイズの選択で積み残しの危険性が生じる。荷物内訳毎の数量、破損有無、の相互確認。輸送中破損の補償、などなど。運送する荷物が海上コンテナそのものなら、これらの費用が無くなる。
【0116】
7;の説明。運送は輸送と配送がある。両方を兼業の会社も多い。配送は運転手が荷物の積込みをする事が多く、輸送でも運転手に荷積みを期待する荷主もいる。海上コンテナの輸送では、荷物の積み降ろしは荷主責任、運送会社は車の運転、が確立しており、運転手は荷物の積み降ろしに関与しない。関与してはいけない。
【0117】
8;の説明。1泊を要するA地域とC地域の相互輸送において、昇降装置を使って海上コンテナの載せ換えサービスをしている中間のB地点で落ち合い、互いの海上コンテナを載せ換えて頂いた後に、互いの地域に引返して預かった海上コンテナを荷受人に届け、トラクタとシャーシで帰社し運転業務を終了し、1泊せずに帰宅できる。
【0118】
運送会社の新規出費の説明。海上コンテナの陸海陸輸送の陸上輸送している運送会社は新規出費なし、既存の車両で参入できる。トラックで陸々輸送している運送会社は、海上コンテナを載せるシャーシとシャーシを牽引するトラクタの購入が必要になり、現在所有しているトラックは不要になる。
【0119】
載せ換えサービス会社の新規出費の説明。上記8の説明で必要となる設備です。高速道路脇の給油所横などに、風雨を避ける建物の中に、海上コンテナ昇降装置を2基または3基を設置する。給油所の所員が海上コンテナの載せ換え操作して料金を頂く。
【0120】
荷主の利点は。1;荷物積み降ろし作業の平準化、2;至急荷物の優先積み降ろし、3;夜間休日の持込持出の開始、4;海上コンテナに合わせたパッケージの制作、5;積み降ろしの段差解消とプラットフォーム不要、6;中間蔵置の削減、7;海上コンテナでの蔵置で倉庫代用、8;昇降装置を作業員が操作できる、9;輸送関連コストの大幅低減、10;狭く収納できる。11;陸海陸輸送にも使える
【0121】
1;の説明。荷主所有の海上コンテナで輸送すると、運送会社の車両到着前に荷積みができる、運送会社の車両が出て行った後に荷降ろしができる。海上コンテナ内の荷物の積み降ろしは車両到着に縛られなくなるので、積み降ろし作業の時間帯が拡がる。すなわち、積み降ろし作業が平準化できる。
【0122】
2;の説明。1の説明で積み降ろし作業の時間帯が拡がるだけでなく、直ぐの積み降ろしを必要としない荷物は後に廻して、急ぎの荷物の積み降ろしを先に済ます事ができる。通常のトラック輸送でも順番待ちを飛び越えて急ぎ車両の積み降ろしを先に実行できるが順番待ちに犠牲を強いる。海上コンテナなら犠牲を強いらないでできる。
【0123】
3;の説明。通常のトラック輸送では車両の到着と積み降ろし作業の同時性の制約から、作業員のいない夜間休日や昼休みに積み降ろし作業ができない。海上コンテナの積み降ろしは海上コンテナ内の荷物の積み降ろしを伴わない事から、作業員の業務時間外の夜間休日や昼休みに、海上コンテナを持込持出できる。
【0124】
事業所内の動力機器の操作を運送会社の運転手に許可するかどうかを荷主側が判断する時に、動力機器の横移動の有無が重要になる。横移動すれば設備や荷物を損傷する可能性が有り、横移動しなければ無くなる。横移動しない本発明の昇降装置は荷主側が許可を出し易い。また操作に不慣れな運転手でも簡単に操作できる。
【0125】
4;の説明。荷主所有の海上コンテナの輸送では、海上コンテナ内に詰め込む荷物は荷主の専決事項で、運送会社は介入しない。中の荷物が多くても少なくても輸送料金は変わらない。輸送単価を下げるために荷主は海上コンテナの内寸に合わせて最大に荷物を詰め込めるようにパッケージを制作する、かも。
【0126】
5;の説明。海上コンテナ内の荷物の積み下ろしは荷主側の作業範囲である。プラットホームがない積み降ろし場に於いて、海上コンテナ昇降装置で床に降ろし、小さなスロープを付けると、フォークリフトやハンドリフトを海上コンテナ内に入れて荷物の積み降ろしができる。つまり、プラットホームが無くても楽に積み降ろしできる。
【0127】
6;の説明。車輪と荷箱が一体の車両では到着前に荷積み不可であるから、荷物を揃えて置く中間蔵置空間が必須である。荷主所有の海上コンテナなら中間蔵置を省き荷積みできる。例えばエンジン工場で出来上がる毎に積み込んで行き、満杯になったら次の海上コンテナに積み込む。運送会社は積込完了の海上コンテナを組立工場に運んで行く。
【0128】
例えば宅配便の集荷センターで、集荷した宅配物を方面別に配置した海上コンテナに(カゴ台車で)詰め込んで行く。満杯になったら隣の海上コンテナに詰め込んで行く。満杯になった海上コンテナはシャーシを牽引するトラクタで方面先へと次々に出発して行く。方面別の一時蔵置空間が不要。一時蔵置作業が不要。多頻度時に節減効果大。
【0129】
集荷センターに集まった宅配物は、中間蔵置の作業工程を省いて方面別に区分けし、一刻も早く遠方方面に出発したい。蔵置空間の削減、一時蔵置の削減による作業人員減(費用減)と荷役機器の稼働減と運転作業時間減、に加えて遠隔地への到着を早める事ができる。遠隔地への配達時間の短縮で、宅配便の利便性を向上できる。
【0130】
荷物を運んで来た車両は荷物を降ろし直ぐに引き返すから、荷物を降ろして置く中間蔵置空間を使うことがある。荷主所有の海上コンテナなら荷降ろしせずに蔵置できる。例えば車両組立工場で、必要になった時に海上コンテナからエンジンを降ろし組立てラインに運ぶ。中間蔵置への荷物移動作業を節減できる。多頻度時に節減効果大。
【0131】
7;の説明。物流には繁閑の波がある。季節要因、景気要因、社会要因、など様々な要因で物流量は変動する。想定最大量に合わせて物流体制を構築するとムダが多く費用も高騰する。繁盛期に保管容量を超えたら海上コンテナに入れ別の場所に横持ちして一時蔵置する。露天蔵置もできる。空いて来たら取り戻す。
【0132】
8;の説明。本発明の海上コンテナ昇降装置は横移動がなく、オフィスエレベータの昇降操作と同程度に操作が簡単であり、重量装置を操作できる特別な技能者を雇う必要がなく、積み降ろしの作業員が操作できる。事業者の作業員がいない夜間休日に、運送会社の運転者が昇降装置を操作して、海上コンテナを事業所に持込持出してくれる。
【0133】
9;の説明。上記の荷主の利点に加えて、運送会社の数々の利点も時の経過と共に輸送費の低減に反映して来る。特別な通行許可手続き不要で、道路運送の上限の大きさの荷物、すなわち、海上コンテナそのものを輸送する荷物とした場合に、究極の運送費低減を実現する。
【0134】
10;の説明。何らかの理由でしばらく使わなくなった時に、手前と奥の門型が切り離れているから、移動して狭く収納できる。収納した門型があった場所を別の用途に使用できる。例えば繁盛期に不足の門型を収納場所から取り出し設置して使い、閑散期になったら使わない門型を元の場所に収納しておく。あるいは、海上コンテナの荷積み荷降ろしする時だけ取り出して使い、使い終わったら収納する。
【0135】
11;の説明。陸々輸送の荷主利点1~9の重複であるが、コンテナ船で運ぶ海上コンテナの陸海陸輸送にも荷主利点が及ぶ。陸々輸送に加えて、陸海陸輸送に利用できれば、昇降装置の導入効果が更に高まる。投資対効果が更に良くなる。陸海陸の荷主は陸々輸送の荷主の場合も多く、昇降装置を両用できる。
【0136】
荷主の新規出費の説明。大量生産で割安な海上コンテナをたくさん購入し、次々に荷物を詰め込む。着いた荷物を降ろさずにそのまま保管。海上コンテナ昇降装置を購入し設置する。バースの並びと同様に昇降装置を並べて、到着車両から次々に海上コンテナを降ろす。次々に海上コンテナを載せて車両が出て行く。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1】本発明を構成する2つの門型昇降装置と、40フィート海上コンテナ(背高)の図である。
図2】本発明を構成する2つの門型昇降装置と、20フィート海上コンテナ(標準高)の図である。
図3】本発明を構成する2つの門型昇降の手前側装置の図である。
図4】同上で、ツイスト駆動用ケーブルの配線構造が判読し易い背面図である。
図5】同上で、移動用の持上棒とキャスタを土台に取り付けた図である。
図6】手前と奥の2つの門型昇降装置を揃えて保管する配置例の図である。
図7】操作箱の中にある操作盤の操作ボタンと表示の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
以下、本発明に係る実施の形態の、海上コンテナ昇降装置について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0139】
図1および図2に示す門型構造のスプレッダ付き昇降機構の前後2つで、本発明の昇降装置を構成する。図1および図2は、それぞれ40Fおよび20Fの海上コンテナに合わせた門型の配置である。標準高と背高は高さの違いであり、海上コンテナの長さが同じで有れば同じ配置で昇降できる。
【0140】
図1および図2は海上コンテナが床に降りた状態である。手前の門型の柱に操作箱が付き、奥の門型の柱には無い。手前の操作箱と奥の制御回路の間は無線で接続し、手前の門型と奥の門型の間を繋ぐ信号配線は無い。電力線は手前と奥へ個々に繋ぐ。
【0141】
図3に於いて、5:柱の2本と7:梁の1本で門型を構成する。柱は角形鋼管、梁はH形鋼、柱と梁を一体化する6:ダイアフラムの鉄骨ラーメン構造であり、建築構造物で実績があり、少ない鋼材で重量物を吊り下げる強度を確保できる。柱の下部にはH形鋼の9:土台と10:支え柱が前後方向に固定してあり、前後方向の転倒を防いでいる。
【0142】
梁は中央付近で切り分かれており、建築構造物と同じ構造を使い、8:添板と強力ボルトの継手で繋がっている。継手によって2つの柱と梁に切り分けて、門型のまま一般道を運搬できない本装置をトラックに載せて一般道を運搬できる。加えて、本装置そのものを海上コンテナ内に収納できる。収納した海上コンテナを一般道で牽引運搬できる。
【0143】
門型の梁、竿形状の11:スプレッダ、は海上コンテナの隅金具の真上にあり、16:ワイヤーロープを使って、スプレッダの上部に付いた14:動滑車と梁の下部に付いた15:固定滑車との間で、梁がスプレッダを真上に持ち上げ持ち下げる。H形鋼の梁が真上に持ち上げるから、角形鋼管の柱は上下方向の力に耐えれば良く、少ない鋼材で大きな重量を持ち上げできる。
【0144】
スプレッダ竿の両端近くに、12:ツイストロックが下向きに付いており、海上コンテナの上部の隅金具の左右位置のズレに合わせて13:ガイド板でスプレッダを左右に動かしつつ下げて、隅金具の穴にツイストロックを落とし込んだ後に、17:ツイスト駆動用ケーブル内のツイストロック制御線に流す電流でツイストロックの先端を90度回転して、スプレッダと海上コンテナを緊締する。逆電流で逆回転すると緊締が外れ、スプレッダを持ち上げて海上コンテナから切り離すことができる。
【0145】
スプレッダの竿部分の上側に複数の滑車が付いており、動滑車として働く。梁の下側にも複数の滑車が付いており、固定滑車として働く。動滑車に巻き付くワイヤーロープの本数に反比例して、小さな引張力で吊り上げ吊り下げできる。逆に、巻き取るワイヤーロープの長さはこの本数倍だけ長くなる。
【0146】
20:ギヤードモーターを回すと19:巻取りドラムが回り、ワイヤーロープを巻き取り、梁の下部に付いた固定滑車とスプレッダの上部に付いた動滑車を通して、スプレッダが持ち上がり、スプレッダに緊締している海上コンテナが持ち上がる。ギヤードモーターを逆回転すると海上コンテナが降りて行く。
【0147】
ワイヤーロープは巻取りドラムで巻き取られる。巻取りドラムは内蔵ギヤで減速した電動モーターで回す。本発明の昇降装置はシャーシから床に降ろす用途で、昇降高さが1.5m程で行程が短く、ギヤードモーターで減速して、減速比に比例したトルクの小さな電動モーターが使用できる。小さいほど安価になる。低い給電電圧が使える。
【0148】
図4は、手前の門形の背面図である。スプレッダの昇降に合わせてツイスト駆動用ケーブルが長く短くなる。ケーブル用の23:固定滑車の回転と24:動滑車の重さと回転で、ケーブルの張力を一定に保持する。18:センサ部の上限と下限センサにケーブルが達すると、スプレッダの上限下限到達によりドラム回転を停止する。
【0149】
図5は、門型の昇降装置の土台に移動用の補助棒と補助棒の両先端下部にキャスタを追加した図である。補助棒をハンドリフトやフォークリフトで持ち上げて、土台や補助棒にキャスタを取り付け、ハンドリフトやフォークリフトで引いて、前後に、あるいは別の場所に移動できる。
【0150】
図6は、本発明の昇降装置をある期間使わない時の保管例である。スプレッダの長手方向の部材がなく、土台が付いた自立型構造により、手前と奥の昇降装置を揃えて狭い容積で保管できる。保管スペースを大きく節約できる。設置スペースを別用途に使える。利用者側で保管スペースを節約できるが、装置の製造でも道路運搬でも節約できる。
【0151】
図7は、21:操作箱の中にある操作盤である。操作盤の上部に、ロックオンとロックリリースの操作ボタンが中央に、表示が左右にある。左の表示は奥の、右の表示は操作盤側のロックオンとロックリリースの状態を表示する。押すと手前と奥の計4つのツイストロックが回転する。4つの正常回転を検出すると押したボタンの両側の表示が点灯し、押してないボタンの両側が消灯する。回転不足があると不足側の表示が点滅し、連続ブザーが鳴り続ける。
【0152】
ロック操作ボタンの下にパワー表示がある。右の表示は操作箱がある手前側の給電の有無を表示する。左の表示は奥側の給電かつ手前と奥の通信中の有無を表示する。奥側に給電があっても、手前と奥の間の無線が繋がっていない場合は点灯しない。
【0153】
操作盤の下半分に、海上コンテナを上げる、下げる、のボタンが、中央と左右で計6つある。中央列のボタンを押すと、手前と奥のスプレッダが同時に昇降する。左右のボタンで手前と奥を個々に上げ下げできる。手前と奥の高さ揃えに使う。中央の下部に低速シフトのボタンがあり、押しながら上げ下げボタンを押すと上げ下げ速度が1/2になる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
以上で説明したように、本発明では、スプレッダの前後2分割と車輪の土台置き換えが実現する昇降装置の簡素化によって、海上コンテナを陸々輸送に導入できる低価格の昇降装置と平易な操作を実現する。低価格と平易操作の実現によって、前述した陸々輸送の諸問題を海上コンテナが解決する。
【0155】
スワップボディコンテナの登場は、陸々輸送コンテナのニーズの証左ではあるが、約3百万TEUが毎年生産され、世界中に約3千万TEUの世界標準規格の海上コンテナが既に出回っている現在では、拠点間輸送に独自規格の輸送コンテナの存在余地はない。蛇足であるが、独自規格の鉄道コンテナの存在余地もない。世界標準規格の海上コンテナ用の、安価で平易操作な昇降装置の普及が陸々輸送の海上コンテナ化を実現する。
【0156】
なお、ここでは滑車とロープを使って海上コンテナを持ち上げているが、本特許では持ち上げる方法は限定しない。例えば、両柱を伸縮式にして油圧シリンダで柱を伸ばして、海上コンテナを持ち上げる方法がある。また、前部分と後部分を物理的に接続していても、それぞれを個々に鉛直に持ち上げていれば物理接続に意義はなく、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0157】
1 本発明を構成する2つの門型昇降装置の手前側
2 本発明を構成する2つの門型昇降装置の奥側
3 本発明の装置が持ち上げる40フィート海上コンテナ(背高の例)
4 本発明の装置が持ち上げる20フィート海上コンテナ(標準高の例)
5 門型の柱部(角形鋼管)
6 門型の柱と梁をつなぐダイヤフラム
7 門型の梁部(H形鋼)
8 門型の梁のH形鋼同士をつなぐ添板とボルト
9 門型が床と接する土台(H形鋼)
10 門型の柱を支える支え柱(H形鋼)
11 門型からぶら下げる竿部(スプレッダ部、角形鋼管)
12 海上コンテナを持ち上げるツイストロック
13 海上コンテナ上部の隅金具の穴にツイストロックを誘導するガイド板
14 竿の上側に取り付けた滑車(動滑車)
15 門型の梁に取り付けた滑車(固定滑車)
16 スプレッダを巻上げ巻下げするワイヤーロープ
17 ツイストロックを90度回転する電流を給電するケーブル
18 スプレッダの巻上限と巻下限を検出するセンサ部
19 ワイヤーロープを巻き取る回転ドラム
20 回転ドラムを回す電動モータ(ギヤードモータ)
21 海上コンテナ昇降、ツイストロック回転、を操作する操作箱
22 巻上ドラムや電動モータの回転部周囲に付けた保安壁
23 17のケーブルを送り出す滑車(固定滑車)
24 17のケーブルの張力を保持しておく滑車(動滑車)
25 土台を持ち上げて門型全体を持ち上げる持上棒(H形鋼)
26 持上棒、あるいは、土台の下に取り付けて門型構造物を移動するキャスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7