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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171928
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20241205BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241205BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241205BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089297
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(72)【発明者】
【氏名】上剃 春樹
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029DJ09
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029HJ04
5H029HJ07
5H050AA01
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA13
5H050EA12
5H050EA15
5H050HA04
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】 良好な特性を有し、かつ生産性に優れた全固体電池を提供する。
【解決手段】 本発明の全固体電池は、正極と負極とが平面状の固体電解質層を介して積層されている柱状の電極体を有し、前記固体電解質層は、前記電極体の軸方向に延伸しており、前記正極と前記負極の対向面は、それぞれの全面が前記固体電解質層と接合されており、前記電極体は、前記軸方向と直交する方向に切断された時の断面における面積をS(cm)とし、前記軸方向における前記電極体の幅をt(cm)とした場合に、√S<tであることを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とが平面状の固体電解質層を介して積層されている柱状の電極体を有する全固体電池であって、
前記固体電解質層は、前記電極体の軸方向に延伸しており、
前記正極と前記負極の対向面は、それぞれの全面が前記固体電解質層と接合されており、
前記電極体は、前記軸方向と直交する方向に切断された時の断面における面積をS(cm)とし、前記軸方向における前記電極体の幅をt(cm)とした場合に、√S<tであることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記断面の形状が、円形、長円形、楕円形、もしくは多角形である請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記固体電解質層が、硫化物系固体電解質を含有する請求項1に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記固体電解質層が、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質を含有する請求項1に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記固体電解質層が、バインダを含有する請求項1に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記固体電解質層が、樹脂製の多孔質支持体を有する請求項1に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記正極および/または前記負極が、バインダを含有しない請求項1に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な特性を有し、かつ生産性に優れた全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型・軽量で、かつ高容量・高エネルギー密度の電池が必要とされるようになってきている。
【0003】
現在、この要求に応え得るリチウム電池、特にリチウムイオン電池では、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などのリチウム含有複合酸化物が用いられ、負極活物質に黒鉛などが用いられ、非水電解質として有機溶媒とリチウム塩とを含む有機電解液が用いられている。
【0004】
そして、リチウムイオン電池の適用機器のさらなる発達に伴って、リチウムイオン電池のさらなる長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化が求められていると共に、長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化したリチウムイオン電池の信頼性も高く求められている。
【0005】
しかし、リチウムイオン電池に用いられている有機電解液は、可燃性物質である有機溶媒を含んでいるため、電池に短絡などの異常事態が発生した際に、有機電解液が異常発熱する可能性がある。また、近年のリチウムイオン電池の高エネルギー密度化および有機電解液中の有機溶媒量の増加傾向に伴い、より一層リチウムイオン電池の信頼性が求められている。
【0006】
以上のような状況において、有機溶媒を用いない全固体型のリチウム電池も検討されている。全固体型のリチウム電池は、従来の有機溶媒系電解質に代えて、有機溶媒を用いない固体電解質の成形体を用いるものであり、固体電解質の異常発熱の虞がなく、高い信頼性を備えている。そのため、特に高容量の二次電池を必要とする製品分野での期待は大きい。
【0007】
また、全固体電池は、高い安全性だけではなく、高い信頼性および高い耐環境性を有し、かつ長寿命であるため、社会の発展に寄与すると同時に安心、安全にも貢献し続けることができるメンテナンスフリーの電池として期待されている。全固体電池の社会への提供により、国際連合が制定する持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、目標3(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)、目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する)、目標11〔包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する〕、および目標12(持続可能な生産消費形態を確保する)の達成に貢献することができる。
【0008】
なお、全固体電池においては、例えば、正極材料、固体電解質、および負極材料を積層した3層のペレットよりなる電極積層体を用い、円筒形の電池が組み立てられる(特許文献1など)。
【0009】
また、特許文献2では、固体電解質層を介して正極と負極が積層されたシート状の電極積層体を巻回して円筒形固体電池とすることが提案されている。
【0010】
一方、特許文献3には、円柱状の第1極の集電体の外側面に第1の活物質が被覆され、第1の活物質の外側面に固体電解質が被覆され、固体電解質の外側面に第2の活物質が被覆され、さらに第2の活物質の外側面に第2極の集電体が被覆されて構成された電極積層体を有する円柱状の全固体型二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2020-136126号公報
【特許文献2】特開2022-110670号公報
【特許文献3】特開2015-220109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の電池では、電池の高容量化のため正極材料(正極)および負極材料(負極)を厚くして電極積層体を高くすると、正極および負極と固体電解質との界面の面積に対する電極の容量の割合が高くなりすぎ、電池反応が進行し難くなって必要な負荷特性が得られ難いという問題を生じやすい。
【0013】
また、特許文献2の電池では、正極と負極の対向面積が大きいため負荷特性を向上させやすいが、電極や固体電解質層に十分な柔軟性を付与させることが難しく、巻回時に、電極や固体電解質層に割れが生じたり、構成材料の脱落が生じたりするなどの問題が発生しやすい。
【0014】
さらに、特許文献3に記載の電池の場合、製造工程が複雑であり生産性を向上させることが困難である。
【0015】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な特性を有し、かつ生産性に優れた全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の全固体電池は、正極と負極とが平面状の固体電解質層を介して積層されている柱状の電極体を有し、前記固体電解質層は、前記電極体の軸方向に延伸しており、前記正極と前記負極の対向面は、それぞれの全面が前記固体電解質層と接合されており、前記電極体は、前記軸方向と直交する方向に切断された時の断面における面積をS(cm)とし、前記軸方向における前記電極体の幅をt(cm)とした場合に、√S<tであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な特性を有し、かつ生産性に優れた全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の全固体電池の一例を模式的に表す断面図である。
図2図1の全固体電池が有する電極体を模式的に表す斜視図である。
図3】本発明外の全固体電池に係る電極体の例を表す斜視図である。
図4】全固体電池の電極体の他の例を模式的に表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の全固体電池は、正極と負極とが平面状の固体電解質層を介して積層されている柱状の電極体を有している。
【0020】
また、全固体電池において、電極体の固体電解質層は、電極体の軸方向に延伸しており、正極と負極の対向面は、それぞれの全面が固体電解質層と接合されており、電極体は、軸方向と直交する方向に切断された時の断面における面積をS(cm)とし、軸方向における電極体の幅をt(cm)とした場合に、√S<tを満たすよう構成されている。
【0021】
前記電極体を軸方向と直交する方向に切断した時の断面形状は、限定はされないが、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形などとすることができる。
【0022】
図1に、本発明の全固体電池の一例を模式的に表す縦断面図を示す。図1に示す全固体電池1は、軸方向と直交する方向に切断した時の断面形状が円形となる円柱状の電極体10を、有底筒形で金属製の円筒形外装缶50と金属製の蓋体60とを有する容器(外装体)内に収容したものである。外装缶や蓋体はアルミニウムやステンレス鋼などによって形成することができる。図1では、電極体10の軸を一点鎖線で示しているが、電極体10の軸方向とは、柱体である電極体10が延伸する方向であり、図1中に示した軸の延びる方向に平行な方向(図中上下方向)である。
【0023】
蓋体60には、樹脂(ポリプロピレンなど)製の絶縁パッキング80を介して金属製の端子70が取り付けられ、この端子70には金属(ステンレス鋼など)製のリード板100が取り付けられている。また、端子70には、蓋体60が外装缶50と合わせられる際にリード板100が蓋板60の内面に接触しないようにするために、樹脂(ポリプロピレンなど)製の絶縁体90が取り付けられている。そして、蓋体60は外装缶50の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接するなどして外装缶50の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、外装缶50の底部には樹脂(ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなど)製の絶縁体120が配置されている。
【0024】
図2は、図1の全固体電池が有する電極体10の斜視図である。この図2においても、電極体10の軸を一点鎖線で示している(後記の図3および図4においても同様である)。この図2に示すように、全固体電池1の電極体10は円柱状であり、正極20と負極30とが、電極体10の軸方向に延びる固体電解質層40を介して積層されている。正極20は、正極合剤層(正極合剤の成形体)21と、その側面に設けられた集電層22とを有しており、図1に示すように、集電層20が正極端子を兼ねる外装缶50の内面と接触することで、導電接続している。また、負極30は、負極合剤層(負極合剤の成形体)31と、その上面に設けられた集電層32とを有しており、図1に示すように、集電層32が接続リード110を介して、負極端子として機能する端子70に接続されたリード板100と、溶接されるなどして導電接続している。
【0025】
電極体の軸方向は、例えば、電極体の上面および下面が円形の場合、上面の円の中心および下面の円の中心を通る軸の方向であり、電極体の上面および下面が楕円形の場合、上面の楕円の長径と短径との交点および下面の楕円の長径と短径との交点を通る軸の方向であり、電極体の上面および下面が多角形の場合、上面の多角形の幾何中心および下面の多角形の幾何中心を通る軸の方向である。
【0026】
また、固体電解質層40は、電極体の軸方向に延伸しており、正極20と負極30の対向面、すなわち、正極20における負極30との対向面、および、負極30における正極20との対向面は、それぞれ全面が固体電解質層40と接合されている。
【0027】
なお、外装缶50は正極端子を兼ねているため、負極30と外装缶50との間には、これらの接触を防ぐために樹脂(ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなど)製の絶縁体130が配置されている。また、図1では、外装缶50が正極端子を兼ね、端子70が負極端子として機能する態様の全固体電池を示したが、必要に応じて、外装缶50が負極端子を兼ね、端子70が正極端子として機能する態様とすることもできる。
【0028】
電極体10は、軸方向と直交する方向に切断された時の断面(図1および図2の電極体10の上面および下面と同じ)の形状が円形であり、その断面における面積をS(cm)とし、軸方向における電極体の幅(図1に示すように、図1および図2における上下方向の長さ)をt(cm)とした場合に、Sの平方根:√Sよりもtが長く、固体電解質層40は、電極体10の幅方向に一定以上の長さを有するよう設計されている。
【0029】
図3に、本発明外の全固体電池に係る電極体の例を表す斜視図を示している。この図3図2に示すような柱状の電極体において、正極と固体電解質層と負極とを積層するに際し、例えば、図3に示すように、電極体11の軸方向に各構成要素が並ぶように(電極体11の上面および下面に平行な方向に固体電解質層40が介在するように)配置する場合、電池の高容量化のため正極および負極を厚くする(電極体を高くする)と、正極および負極と固体電解質との界面の面積に対する電極の容量の割合が高くなり、特に大きな電流値で充放電した場合に、電池反応が進行し難くなるため、電池の負荷特性が低下する。
【0030】
そこで、本発明の全固体電池では、図1および図2に示すように、正極と負極とが平面状の固体電解質層を介して積層された柱状の電極体を有する場合に固体電解質層を電極体の軸方向に延伸させ、正極と負極の対向面について、それぞれ全面を固体電解質層と接合し、さらに、電極体を軸方向と直交する方向に切断した時の断面における面積をS(cm)とし、軸方向における電極体の幅をt(cm)とした場合に、√S<tを満たすよう電極体の断面積と幅を設定する。
【0031】
ここで、前記断面積Sの平方根は、前記断面の形状を正方形と仮定した時の一辺の長さに相当する。
【0032】
以下、理解を容易にするため、断面が直径1cmの円形で高さが0.886cmの円柱よりなり、その軸方向に延伸して中央近傍で円柱を二分する平面状の固体電解質層(厚み:0.1cm)を有する電極体A(図2に示す電極体10と同様の層構成の電極体)と、同じ形状の円柱よりなり、その軸方向と直交する方向に延伸して中央で円柱を二分する平面状の固体電解質層(厚み:0.1cm)を有する電極体B(図3に示す電極体11と同様の層構成の電極体)とを仮定して説明する。断面が円形以外の他の形状でも同様である。
【0033】
それぞれの電極体における軸方向と直交する方向に切断した時の断面積Sは、0.785cmであり、√Sは0.886であり、軸方向における電極体の幅tは0.886cmである。すなわち、√S=tとなっている。
【0034】
また、電極体Aにおける固体電解質層の面積(正極または負極と固体電解質層との接合面の面積)は、およそ、1×0.886=0.886cmであり、正極および負極の体積の合計は、およそ、0.785×0.886-0.886×0.1=0.607cmである。同様に、電極体Bにおける固体電解質層の面積は、0.785cmであり、正極および負極の体積の合計は、0.785×0.886-0.785×0.1=0.617cmである。
【0035】
すなわち、電極体Aと電極体Bとは、正極および負極の体積の合計がほぼ同じであり、従って設計容量がほぼ同じ電極体であるが、固体電解質層の面積は、電極体Aの方が若干大きくなっている。
【0036】
それぞれの電極体について、Sの値を固定したままtを0.886より大きくすると、電極体Aでは、正極および負極の体積の合計の増加に伴って固体電解質層の面積も増加するため、電極体を高容量化すると共に、負荷特性などの電池特性を良好なものとすることができるが、電極体Bでは、正極および負極の体積の合計は増加するものの、固体電解質層の面積は一定で変化しないため、負荷特性などの電池特性が低下することになる。
【0037】
また、電極体Aは、電極体Bと同様に、例えば、金型を用い、正極、負極および固体電解質層の構成材料を、順次積層し、圧縮成形することにより容易に作製することができる。
【0038】
従って、前記の構成を満たす電極体とすることにより、良好な特性を有し、かつ生産性に優れた全固体電池を構成することができる。
【0039】
図4に、全固体電池に使用し得る電極体の他の例を模式的に表す斜視図を示す。図4に示す電極体10は、上面および下面が多角形(正六角形)の多角柱状(六角柱状)である。
【0040】
次に、本発明の全固体電池の各構成要素の詳細について説明する。なお、本発明の全固体電池には、一次電池と二次電含まれる。
【0041】
<正極>
全固体電池の正極には、例えば、正極活物質などを含む正極合剤を成形した成形体をそのまま使用したり、図1図2および図4に示すように、正極合剤の成形体からなる正極合剤層と集電層とを有するものを使用したりすることができる。
【0042】
全固体電池が一次電池である場合、正極活物質には、従来から知られている非水電解質一次電池に用いられている正極活物質と同じものが使用できる。具体的には、例えば、二酸化マンガン、リチウム含有マンガン酸化物〔例えば、LiMnや、二酸化マンガンと同じ結晶構造(β型、γ型、またはβ型とγ型が混在する構造など)を有し、Liの含有割合が3.5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である複合酸化物など〕、LiTi5/3(4/3≦a<7/3)などのリチウム含有複合酸化物;バナジウム酸化物;ニオブ酸化物;チタン酸化物;二硫化鉄などの硫化物;フッ化黒鉛;AgSなどの銀硫化物;NiOなどのニッケル酸化物:などが挙げられる
【0043】
全固体電池が二次電池である場合、正極活物質には、従来から知られている非水電解質二次電池に用いられている正極活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵・放出可能な活物質であれば特に制限はない。正極活物質の具体例としては、LiMMn2-r(ただし、Mは、Li、Na、K、B、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Zr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Sb、In、Nb、Ta、Mo、W、Y、RuおよびRhよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦r≦1)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、LiMn(1-s-r)Ni(2-u)(ただし、Mは、Co、Mg、Al、B、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Mo、Sn、Ca、SrおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0.8≦r≦1.2、0<s<0.5、0≦t≦0.5、u+v<1、-0.1≦u≦0.2、0≦v≦0.1)で表される層状化合物、LiCo1-r(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、V、Cr、Zr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦r≦0.5)で表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNi1-r(ただし、Mは、Al、Mg、Ti、Zr、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、SbおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦r≦0.5)で表されるリチウムニッケル複合酸化物、Li1+s1-rPO(ただし、Mは、Fe、MnおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、Nは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、Sb、VおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦r≦0.5、0≦s≦1)で表されるオリビン型複合酸化物、Li1-r(ただし、Mは、Fe、MnおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、Nは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Nb、Mo、Sn、Sb、VおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦r≦0.5)で表されるピロリン酸化合物などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
全固体電池が二次電池である場合、正極活物質の平均粒子径は、電池の容量劣化を引き起こす副反応を少なくし、正極の密度を高くする観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、また、25μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、正極活物質は一次粒子でも一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。正極が固体電解質を含有する場合、平均粒子径が前記範囲の正極活物質を使用すると、固体電解質との界面を多くとれるため、電池の負荷特性がより向上する。
【0045】
本明細書でいう正極活物質の平均粒子径、およびその他の粒子(固体電解質など)の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」など)を用いて、粒度の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(D50)を意味している。
【0046】
正極が固体電解質を含有する場合、正極活物質は、その表面に、正極に含まれる固体電解質との反応を抑制するための反応抑制層を有していることが好ましい。
【0047】
正極内において、正極活物質と固体電解質とが直接接触すると、固体電解質が酸化して抵抗層を形成し、正極内のイオン伝導性が低下する虞がある。正極活物質の表面に、固体電解質との反応を抑制する反応抑制層を設け、正極活物質と固体電解質との直接の接触を防止することで、固体電解質の酸化による正極内のイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0048】
反応抑制層は、イオン伝導性を有し、正極活物質と固体電解質との反応を抑制できる材料で構成されていればよい。反応抑制層を構成し得る材料としては、例えば、Liと、Nb、P、B、Si、Ge、Ti、Zr、TaおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む酸化物、より具体的には、LiNbOなどのNb含有酸化物、LiPO、LiBO、LiSiO、LiGeO、LiTiO、LiZrO、LiWOなどが挙げられる。反応抑制層は、これらの酸化物のうちの1種のみを含有していてもよく、また、2種以上を含有していてもよく、さらに、これらの酸化物のうちの複数種が複合化合物を形成していてもよい。これらの酸化物の中でも、Nb含有酸化物を使用することが好ましく、LiNbOを使用することがより好ましい。
【0049】
反応抑制層は、正極活物質:100質量部に対して0.1~2.0質量部で表面に存在することが好ましい。この範囲であれば正極活物質と固体電解質との反応を良好に抑制することができる。
【0050】
正極活物質の表面に反応抑制層を形成する方法としては、ゾルゲル法、メカノフュージョン法、CVD法、PVD法、ALD法などが挙げられる。
【0051】
正極合剤における正極活物質の含有割合は、20~95質量%であることが好ましい。
【0052】
正極の導電助剤としては、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなど)、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、気相成長炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料;Cu、Ni、Al、Au、Pdの単体やその合金の粉末、または、その多孔体;などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。正極合剤における導電助剤の含有割合は、0.1~15質量%であることが好ましい。
【0053】
正極には、固体電解質を含有させることができる。正極に用いる固体電解質は、Liイオン伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などが使用できる。
【0054】
硫化物系固体電解質としては、LiS-P、LiS-SiS、LiS-P-GeS、LiS-B系ガラスなどの粒子が挙げられる他、近年、Liイオン伝導性が高いものとして注目されているthio-LISICON型のもの〔Li10GeP12、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3などの、Li12-12a-b+c+6d-e 3+a-b-c-d 12-e(ただし、MはSi、GeまたはSn、MはPまたはV、MはAl、Ga、YまたはSb、MはZn、Ca、またはBa、MはSまたはSおよびOのいずれかであり、XはF、Cl、BrまたはI、0≦a<3、0≦b+c+d≦3、0≦e≦3〕や、アルジロダイト型のもの〔LiPSClなどの、Li7-f+gPS6-xClx+y(ただし、0.05≦f≦0.9、-3.0f+1.8≦g≦-3.0f+5.7)で表されるもの、Li7-hPS6-hClBr(ただし、h=i+j、0<h≦1.8、0.1≦i/j≦10.0)で表されるものなど〕も使用することができる。
【0055】
水素化物系固体電解質としては、例えば、LiBH、LiBHと下記のアルカリ金属化合物との固溶体(例えば、LiBHとアルカリ金属化合物とのモル比が1:1~20:1のもの)などが挙げられる。前記固溶体におけるアルカリ金属化合物としては、ハロゲン化リチウム(LiI、LiBr、LiF、LiClなど)、ハロゲン化ルビジウム(RbI、RbBr、RbF、RbClなど)、ハロゲン化セシウム(CsI、CsBr、CsF、CsClなど)、リチウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0056】
ハロゲン化物系固体電解質としては、例えば、単斜晶型のLiAlCl、欠陥スピネル型または層状構造のLiInBr、単斜晶型のLi6-3m(ただし、0<m<2かつX=ClまたはBr)などが挙げられ、その他にも例えば国際公開第2020/070958や国際公開第2020/070955に記載の公知のものを使用することができる。
【0057】
酸化物系固体電解質としては、例えば、LiO-Al-SiO-P-TiO系ガラスセラミックス、LiO-Al-SiO-P-GeO系ガラスセラミックス、ガーネット型のLiLaZr12、NASICON型のLi1+OAl1+OTi2-O(PO、Li1+pAl1+pGe2-p(PO、ペロブスカイト型のLi3qLa2/3-qTiOなどが挙げられる。
【0058】
これらの固体電解質の中でも、Liイオン伝導性が高いことから、硫化物系固体電解質が好ましく、LiおよびPを含む硫化物系固体電解質がより好ましく、特にLiイオン伝導性が高く、化学的に安定性の高いアルジロダイト型の硫化物系固体電解質がさらに好ましい。
【0059】
正極合剤における固体電解質の含有割合は、4~80質量%であることが好ましい。
【0060】
正極には、バインダは含有させてもよく、硫化物系固体電解質を含有させ、前記正極合剤の粉末を成形金型に投入して圧粉成形する正極の場合などのように、バインダを使用しなくても良好な成形性が確保できる場合には含有させなくてもよい。
【0061】
正極に含有させるバインダとしては、PVDFなどのフッ素樹脂などが挙げられる。
【0062】
正極合剤において、バインダを要する場合には、その含有割合は、15質量%以下であることが好ましく、また、0.5質量%以上であることが好ましい。他方、正極合剤において、成形性の観点からバインダを要しない場合には、その含有割合が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、バインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
【0063】
正極には集電層を設けることができる。正極の集電層は、アルミニウムやステンレス鋼などの金属の箔;パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタルなどのシート状の導電性多孔質基材;カーボンシート;などの集電体で形成することができ、また、カーボンペーストを用いて正極合剤の成形体(正極合剤層)の表面に集電層を形成することもできる。シート状の導電性多孔質基材としては、発泡状金属多孔質体を使用することが好ましい。発泡状金属多孔質体の具体例としては、住友電気工業株式会社の「セルメット(登録商標)」などが挙げられる。集電層を設ける箇所は、電池の外装体における端子の構成や配置に応じて適宜変更可能であるが、例えば、図1および図2に示す正極のように、電極体の側面に当たる箇所に設けてもよく、図1および図2に示す負極のように、電極体の上面または下面に当たる箇所に設けてもよい。
【0064】
正極は、例えば、正極活物質、導電助剤および固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した正極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
【0065】
集電層を有する正極の場合は、前記のようにして得られた正極合剤の加圧成形体に集電体を圧着して集電層を形成したり、正極合剤の加圧成形体の表面にカーボンペーストを塗布し乾燥して集電層を形成したりすることができる。
【0066】
正極の厚み(固体電解質層と直交する方向における最大の厚み)は、通常は0.4mm以上であるが、電池の高容量化の観点から、0.7mm以上であることが好ましい。また、正極の厚みは、通常、23mm以下である。
【0067】
正極の集電層の厚みは、0.01~0.1mmであることが好ましい。
【0068】
<負極>
全固体電池の負極には、例えば、負極活物質などを含む負極合剤を成形した成形体をそのまま使用したり、図1図2および図4に示すように、負極合剤の成形体からなる負極合剤層と集電層とを有するものを使用したりすることができる。
【0069】
全固体電池が一次電池である場合の負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金(リチウム-アルミニウム合金、リチウム-インジウム合金など)などが挙げられる。
【0070】
全固体電池が二次電池である場合の負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などのリチウムを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金;リチウム含有窒化物またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物;リチウム金属;リチウム/アルミニウム合金;も、負極活物質として用いることができる。例えば、LiTi12やTiO、NbO2.5-δ(0≦δ≦0.5)、MoO3-δ(0≦δ≦1)、WO3-δ(0≦δ≦1)、TiNbなどの金属酸化物;WS、MoSなどの金属硫化物;の1種または2種以上の混合物を、負極活物質として用いることもできる。
【0071】
負極合剤における負極活物質の含有割合は、50~95質量%であることが好ましい。
【0072】
負極には、固体電解質を含有させることができる。負極に含有させる固体電解質には、正極に含有させ得る固体電解質として先に例示した硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質および酸化物系固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。前記例示の固体電解質の中でも、Liイオン伝導性が高く、また、負極の成形性を高める機能を有していることから、硫化物系固体電解質を用いることがより好ましく、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質を用いることがさらに好ましい。
【0073】
負極合剤における固体電解質の含有割合は、4~70質量%であることが好ましい。
【0074】
負極には、導電助剤を含有させることができる。その具体例としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などが挙げられる。負極合剤における導電助剤の含有割合は1~10質量%であることが好ましい。
【0075】
負極には、バインダを含有させなくてもよく、含有させてもよい。その具体例としては、正極に含有させ得るものとして先に例示したバインダと同じものなどが挙げられる。なお、例えば負極に硫化物系固体電解質を含有させる場合のように、バインダを使用しなくても、負極を形成する上で良好な成形性が確保できる場合には、負極にはバインダを含有させなくてもよい。
【0076】
負極合剤において、バインダを要する場合には、その含有割合は、15質量%以下であることが好ましく、また、0.5質量%以上であることが好ましい。他方、負極合剤にバインダを含有させなくても良好な成形性が得られる場合には、その含有割合は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、バインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
【0077】
負極には集電層を設けることができる。負極の集電層は、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタルなどのシート状の導電性多孔質基材;カーボンシート;などを用いて形成することができ、また、カーボンペーストを用いて負極合剤の成形体(負極合剤層)の表面に集電層を形成することもできる。シート状の導電性多孔質基材としては、発泡状金属多孔質体を使用することが好ましい。発泡状金属多孔質体の具体例としては、住友電気工業株式会社の「セルメット(登録商標)」などが挙げられる。。集電層を設ける箇所は、電池の外装体における端子の構成や配置に応じて適宜変更可能であるが、例えば、図1および図2に示す正極のように、電極体の側面に当たる箇所に設けてもよく、図1および図2に示す負極のように、電極体の上面または下面に当たる箇所に設けてもよい。
【0078】
負極は、例えば、負極活物質、導電助剤および固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した負極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
【0079】
集電層を有する負極の場合は、前記のようにして得られた負極合剤の加圧成形体に集電体を圧着して集電層を形成したり、負極合剤の加圧成形体の表面にカーボンペーストを塗布し乾燥して集電層を形成したりすることができる。
【0080】
負極の厚み(固体電解質層と直交する方向における最大の厚み)は、通常は0.4mm以上であるが、電池の高容量化の観点から、0.7mm以上であることが好ましい。また、負極の厚みは、通常、23mm以下である。
【0081】
また、負極の集電層の厚みは、0.01~0.1mmであることが好ましい。
【0082】
<固体電解質層>
全固体電池における固体電解質層には、正極に含有させ得る固体電解質として先に例示した硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質および酸化物系固体電解質のうちの1種または2種以上を使用することができる。前記例示の固体電解質の中でも、電池特性をより優れたものとするためには、硫化物系固体電解質を用いることがより好ましく、アルジロダイト型の硫化物系固体電解質を用いることがさらに好ましい。
【0083】
固体電解質層は、固体電解質を加圧成形などによって圧縮する方法;固体電解質を溶媒に分散させて調製した固体電解質層形成用組成物を基材や正極、負極の上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などの加圧成形を行う方法:などで形成することができる。
【0084】
固体電解質層には、形状維持のためアクリル樹脂やフッ素樹脂などのバインダを含有させてもよい。
【0085】
また、固体電解質層は、樹脂製の不織布などの多孔質体を支持体として有していてもよい。この場合は、前記支持体を有する固体電解質シートが得られる。
【0086】
固体電解質層形成用組成物に使用する溶媒は、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましい。特に、硫化物系固体電解質や水素化物系固体電解質は、微少量の水分によって化学反応を起こすため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に代表される非極性非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。特に、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することがより好ましい。また、三井・デュポンフロロケミカル社製の「バートレル(登録商標)」、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)」、住友3M社製の「ノベック(登録商標)」などのフッ素系溶媒、並びに、ジクロロメタン、ジエチルエーテルなどの非水系有機溶媒を使用することもできる。
【0087】
固体電解質層の厚みは、10~500μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、10~50μmであることが最も好ましい。
【0088】
<電極体>
電極体は、必要な形状に加圧成形する工程を経て得られた正極および負極と、前記の方法で得られた固体電解質層とを貼り合わせる方法などで形成することができる。また、予め形成した固体電解質層の片面に正極合剤(または負極合剤)の加圧成形体を形成し、他面に負極合剤(または正極合剤)の加圧成形体を形成する方法で電極体を得ることもできる。溶媒を用いずに乾式の工程で作製された正極合剤の成形体および負極合剤の成形体と、前述の固体電解質シートとを組み合わせて電極体を得るのであってもよい。
【0089】
電極体は、図2に示すような円柱状、または上面および下面が楕円形の楕円柱状であってもよく、図4に示すような六角柱状、または上面および下面が他の多角形(四角形、五角形、八角形など)の多角柱状であってもよい。なお、図2図4に示す電極体10は、正極20がその側面に集電層22を有していることから、平面視では、この集電層22の部分が円(図2)や正六角形(図4)からはみ出しているが、本明細書でいう電極体の「円柱状」や「楕円柱状」、「多角柱状」には、このように一部の領域で構成要素が平面視で円形や楕円形、多角形からはみ出しているものも含む。
【0090】
なお、電極体の幅は、電極体における軸方向と直交する方向に切断した時の断面の面積の平方根、すなわち、断面を正方形と見なしたときの一辺の長さよりも長ければよいが、通常は、前記の長さの2~8倍である。また、電極体の前記断面の面積は、例えば、2.5~20cmである。
【0091】
<外装体>
全固体電池の外装体は、特に制限はないが、円柱状や楕円柱状、多角柱状の電極体を内包することから、図1で示すような有底筒形の外装缶(角筒缶、円筒缶)と蓋体とを有する形態のものなどが好ましく用いられる。外装缶と蓋体との接続は、溶接やガスケットを介したかしめなどによって行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の全固体電池は、従来から知られている一次電池や二次電池と同様の用途に適用し得るが、前記の通り、耐熱性に優れていることから、高温に曝されるような用途に好ましく使用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 全固体電池
10、11 電極体
20 正極
21 正極合剤層
22 集電層
30 負極
31 負極合剤層
32 集電層
40 固体電解質層
50 外装缶
60 蓋体
70 端子
80 絶縁パッキング
90、120、130 絶縁体
100 リード板
110 接続リード
図1
図2
図3
図4