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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171948
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20241205BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J3/407
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089325
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 孝幸
(57)【要約】
【課題】下地の明度の違いによるデザインの見映えの違いを抑制する。
【解決手段】印刷装置1が、白色の下地が塗布された爪Tの下地の上にデザインDの印刷が実行される場合に、下地の明度を検出する検出手段、検出手段により検出された下地の明度に対応するようにデザインのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段、生成手段により補正デザインデータが生成されたときは、補正デザインデータに基づいて下地上へのデザインの印刷を実行させる印刷制御手段、として機能する制御部11を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色の下地が塗布された爪の前記下地の上にデザインの印刷が実行される場合に、前記下地の明度を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記下地の明度に対応するように前記デザインのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により前記補正デザインデータが生成されたときは、前記補正デザインデータに基づいて前記下地上への前記デザインの印刷を実行させる印刷制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記下地の上に前記カラーデザインデータに基づいた前記デザインを合成した印刷イメージデータを生成し、前記印刷イメージデータから所定の閾値以上の明度を有する白色領域を検出する領域検出手段と、
前記領域検出手段により検出された前記白色領域が爪全体に占める白色占有率を導出する占有率導出手段と、
を備え、
前記生成手段は、前記占有率導出手段により導出された白色占有率が所定率以上である場合に、前記デザインのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記爪を撮像して前記爪の領域を含む爪画像を取得する撮像手段を備え、
前記撮像手段は、前記検出手段が前記下地の明度を検出する際の検出材料を提供する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記検出手段により検出された前記明度に対応する変換テーブルを前記カラーデザインデータに適用することで前記補正デザインデータを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
白色の下地が塗布された爪の前記下地の上にカラーデザインデータに基づいたデザインの印刷が実行される場合に、前記下地の明度を検出する検出処理、
前記検出処理において検出された前記下地の明度に対応するように前記カラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する補正データ生成処理、
前記補正データ生成処理において生成された前記補正デザインデータに基づいて、前記下地上へのデザインの印刷を実行させる印刷制御処理、
を含んでいることを特徴とする制御方法。
【請求項6】
コンピュータを、
白色の下地が塗布された爪の前記下地の上にカラーデザインデータに基づいたデザインの印刷が実行される場合に、前記下地の明度を検出する検出手段、
前記検出手段により検出された前記下地の明度に対応するように前記カラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段、
前記生成手段により生成された前記補正デザインデータに基づいて、前記下地上へのデザインの印刷を実行させる印刷制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、爪等にデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。このような印刷装置では、カラーでデザイン印刷を行う場合に、デザイン印刷前に爪の上に白色等で下地を形成することも行われる。
【0003】
しかし、デザインによってはデザイン印刷後も下地等の白色の領域が多く残る場合もある。この場合、下地等の明度によってデザイン印刷後の見映えに差が出る場合がある。
この点、特許文献1には、トナー像を形成してこれを転写することで用紙に印刷を行う画像形成装置において、用紙の測色値、画像情報等に基づいて画像処理パラメータを補正することにより、予め記憶しているものと色味の異なる種類の用紙に印刷した場合でも、多次色を長期間に渡って精度良く再現する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-72823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、ユーザの命令に基づいて形成した画像の測色適応領域を測色した結果に基づいて、画像処理パラメータの適切な補正量を決定している。このため、印刷対象(特許文献1では「用紙」)全体を反映した測色結果とはならない。
また、特許文献1に記載の画像形成装置は、測色適応領域を測色して複数の測色結果を得る色測定手段として分光計やトナー濃度センサ等を備えており、装置構成が複雑なものとなってしまうという問題もある。
【0006】
デザインが下地の形成された領域全体に印刷されるような場合にはデザインの色味を調整する必要はないが、デザイン印刷後も下地等の白色の領域が広範囲に残るデザインの場合、下地等の明度がデザイン印刷後の見映えに大きく影響し、ユーザが意図したものと異なる仕上がりとなってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、下地の明度の違いによるデザインの見映えの違いを抑制することのできる印刷装置、制御方法及びプログラムを提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る印刷装置の一態様は、
白色の下地が塗布された爪の前記下地の上にデザインの印刷が実行される場合に、前記下地の明度を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記下地の明度に対応するように前記デザインのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により前記補正デザインデータが生成されたときは、前記補正デザインデータに基づいて前記下地上への前記デザインの印刷を実行させる印刷制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る制御方法は、白色の下地が塗布された爪の前記下地の上にカラーデザインデータに基づいたデザインの印刷が実行される場合に、前記下地の明度を検出する検出処理、
前記検出工程において検出された前記下地の明度に対応するように前記カラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する補正データ生成処理、
前記補正データ生成工程において生成された前記補正デザインデータに基づいて、前記下地上へのデザインの印刷を実行させる印刷制御処理、
を含んでいることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、白色の下地が塗布された爪の前記下地の上にカラーデザインデータに基づいたデザインの印刷が実行される場合に、前記下地の明度を検出する検出手段、
前記検出機能により検出された前記下地の明度に対応するように前記カラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段、
前記生成機能により生成された前記補正デザインデータに基づいて、前記下地上へのデザインの印刷を実行させる印刷制御手段、
として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下地の明度の違いによるデザインの見映えの違いを抑制するとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
図2】実施形態における印刷装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
図3】本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
図4】補正無しのカラーデザインデータにおいて各色に定義されているRGB値の一例を示す図である。
図5】下地領域の明度がL*70以上である場合にカラーデザインデータに適用される変換テーブルのRGB値の一例を示す図である。
図6】下地領域の明度がL*55以上70未満である場合にカラーデザインデータに適用される変換テーブルのRGB値の一例を示す図である。
図7】下地領域の明度がL*55未満である場合にカラーデザインデータに適用される変換テーブルのRGB値の一例を示す図である。
図8】色のトーンの分類例を示す説明図である。
図9】下地領域の明度がL*70以上である場合に図5に示す変換テーブルを適用することで色のトーンが調整された補正デザインデータのRGB値の範囲例を示すイメージ図である。
図10】下地領域の明度L*55以上70未満である場合に図6に示す変換テーブルを適用することで色のトーンが調整された補正デザインデータのRGB値の範囲例を示すイメージ図である。
図11】下地領域の明度L*55未満である場合に図7に示す変換テーブルを適用することで色のトーンが調整された補正デザインデータのRGB値の範囲例を示すイメージ図である。
図12図9図11に示す色のトーンの調整イメージをまとめた説明図である。
図13】爪に下地が形成された指の一例を示す平面図である。
図14】デザインのデザインデータの一例を示す図である。
図15図14に示すデザインを下地領域に合わせ込んだ印刷イメージを示す図である。
図16図14に示すデザインデータに変換テーブルを適用して補正した補正デザインデータにしたがって爪にデザイン印刷を行った例を示す指の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[印刷装置の構成]
図1から図16を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。
【0014】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、x方向、y方向は、図1に示した方向をいうものとする。本実施形態においてx方向は印刷装置1の幅方向(横方向)であり、y方向は印刷装置1の奥行き方向である。
【0015】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
印刷装置1の筐体2の前面側(図1においてy方向の手前側)であって装置の左右方向(図1におけるx方向)のほぼ中央部には、印刷対象となる爪Tに対応する指U(図3等参照)を装置内に挿入する指挿入口21が設けられている。
また、筐体2の上面(天板)には操作部22や表示部23等が設置されている。
なお、筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。
【0016】
操作部22は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部22は、例えば、印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)等である。
操作部22が操作されると操作に応じた操作信号が制御部11に出力され、制御部11が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作部22が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
なお本実施形態では、印刷装置1が図示しない各種端末装置(例えばスマートフォン)等の外部装置と連携している場合には、操作部22に代えて、外部装置の操作部等から入力された操作信号に従って印刷装置1の各部が動作してもよい。
【0017】
また筐体2の上面(天板)には、表示部23が設けられている。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
表示部23の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部22として機能する。
【0018】
筐体2の内部には、載置部3、印刷機構4、撮影部5(図2参照)等が設けられた図示しない装置本体が収容されている。
載置部3は、指挿入口21の内側に対応する位置に配置されており、指挿入口21から挿入された指Uを受け入れることができるようになっている。
載置部3の下側面は、指Uの腹部分を受ける部分であり、例えば樹脂等の柔軟性を有する材料で形成されたクッション部材が設けられていてもよい。
指挿入口21から挿入され、載置部3に指Uが配置されると、爪Tが後述の印刷ヘッド41による印刷に適した適正位置に配置された状態で保持される。
載置部3の奥側(装置後方側)まで指が挿入されると、指Uの爪T部分及び爪T周辺の指先部分が図示しない窓部から露出する。この状態で、後述の撮影部5のカメラ51による撮影や印刷機構4の印刷ヘッド41による印刷動作等が可能となる。
【0019】
印刷機構4は、図2に示すように、印刷ヘッド41、X方向移動モータ45及びY方向移動モータ47等を備えている。
本実施形態において印刷機構4は、後述するように爪Tに白色のインク等の液剤で形成された白下地の領域(以下において「下地領域」とする)に対して、補正無しのカラーデザインデータ又はカラーデザインデータにおける色のトーンを補正した補正デザインデータに基づいてデザイン印刷を行う。
【0020】
X方向移動モータ45は印刷ヘッド41を装置の左右方向(x方向)に移動させるモータであり、Y方向移動モータ47は印刷ヘッド41を装置の前後方向(y方向)に移動させるモータである。X方向移動モータ45及びY方向移動モータ47は例えばステッピングモータであり、印刷ヘッド41を移動させるためのヘッド移動機構を構成する。
【0021】
本実施形態の印刷ヘッド41は、印刷対象面(本実施形態では、爪表面)に対向する面が、インクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面(いずれも図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象である爪T等の表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクを貯留するインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等、ネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう)の印刷を行うためのインク(デザイン印刷用のカラーインク)を吐出可能となっている。なお、印刷装置1は、印刷ヘッド41として、下地を形成する塗料として白色等の下地用インクを吐出可能な下地用のヘッド等を備えていてもよい。なお、印刷ヘッド41に備えられるインクの種類はこれに限定されない。
【0022】
また、筐体2の上面(天板)の内側であって、載置部3に配置された指Uの爪Tの上方に対応する位置には、載置部3の窓部から露出する爪T(爪Tを含む指U)を撮影して画像(爪画像)を取得することのできる撮影部5が固定されている。
なお撮影部5は、載置部3に載置された指Uの爪T等を撮影可能な位置に配置されていればよく、その具体的な配置は特に限定されない。
撮影部5は、例えば200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラ等であるカメラ51と、撮影対象を照明する白色LED等で構成された光源52とを備えている(図2参照)。
【0023】
本実施形態においてカメラ51は、爪Tを撮像して爪Tの領域を含む爪画像を取得する撮像手段である。また本実施形態においてカメラ51が取得した画像(爪画像)は、白色の下地が塗布された爪Tの下地(白下地)の上にカラーデザインデータに基づいたデザイン印刷が行われる場合に、白下地の領域(下地領域)の明度を検出する際の検出材料となる。
撮影部5で取得された爪画像等の画像は、制御装置10に送られて、制御部11に取得される。
【0024】
また図2に示すように、印刷装置1は、上述した印刷機構4及び撮影部5のほかに、通信部25と、制御装置10等を備えている。
通信部25は、印刷装置1と各種外部装置との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。
印刷装置1と外部装置との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と外部装置との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部25は通信先の外部装置の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0025】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備えるコンピュータである。
記憶部12のROM等には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。本実施形態では、記憶部12に、デザイン(図14等のデザインD)のカラーデザインデータ又はカラーデザインデータにおける色のトーンを補正した補正デザインデータが格納される。また記憶部12には、色のトーンを補正した補正デザインデータを生成するための変換テーブル(後述する図5等の変換テーブル)が格納されている。
【0026】
本実施形態において制御装置10は、ROM等に格納された各種プログラムを制御部11がRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部の動作を統合的に制御する。
制御部11はプログラム(例えば印刷制御処理プログラム等)との協働により、印刷装置1が印刷制御処理等を行うための各種機能を実現する。
【0027】
まず、制御部11は、撮影部5のカメラ51及び光源52を制御して載置部3に載置された爪Tを含む指Uを撮像させ、爪画像(爪Tの領域を含む指先の画像、図13参照)を取得させる。撮像された爪画像は撮影部5から制御装置10に送られて制御部11に取得される。
本実施形態の制御部11は、爪画像に基づいて爪Tの領域を画する爪輪郭を検出し、爪輪郭の内側の領域(爪領域)を印刷の対象領域とする。
【0028】
制御部11が爪輪郭を検出する手法は特に限定されない。例えば制御部11は、爪画像について各種の画像解析を行うことによって、爪Tとそれ以外の部分(指Uの皮膚等)との輝度差等を検出し、爪Tの領域を画する爪輪郭を検出する。
本実施形態では爪Tの表面全体に白色の下地が塗布されることが予定されている。このため、制御部11は、白色の領域とそれ以外の領域を区別することで比較的容易に爪Tとそれ以外の部分(指Uの皮膚等)とを区別し、爪輪郭を検出することができる。なお、下地が塗布され白色の領域を「下地領域」とする。
【0029】
さらに制御部11は、白色の下地が塗布された爪Tの下地(白下地)の上にカラーデザインデータに基づいたデザイン印刷が行われる場合に、検出手段として、カメラ51による撮像で取得された爪画像に基づき、白下地の領域(下地領域)の明度を検出する。制御部11は、検出結果を記憶部12等に記憶させる。
なお、制御部11は、下地領域の複数箇所で明度を取得し、その平均値を導出して、下地領域の明度とすることが好ましい。
【0030】
また、制御部11は、ユーザによって選択されたデザイン(ネイルデザイン)のカラーデザインデータを適宜拡大縮小、配置の調整等を行って、爪画像から検出された爪輪郭の内側の領域(爪領域)に合わせ込み、爪Tに印刷するデザインのイメージデータを生成する。
そして制御部11は、このカラーデザインデータに基づいたデザイン(デザインのイメージデータ)を下地の上に合成した印刷イメージデータを生成する。
【0031】
そして制御部11は、さらに領域検出手段として、印刷イメージデータから所定の閾値以上の明度を有する領域を「白色領域」として検出する。
「所定の閾値」は、予め設定されていてもよいし、ユーザ等によって事後的に調整することができてもよい。例えば印刷イメージデータがRGB値で構成されており、RGB値を256階調で表現した場合にR「255」、G「255」、B「255」である箇所は確実に「白色」と判断できる。しかし、見た目にはほぼ白色に見える箇所でも実際のRGB値はR「245」、G「245」、B「245」等である場合もある。白色又は白色に近く見える部分は、カラーのデザインを印刷した際の仕上がり、見映えに影響する。このため、本実施形態では、制御部11は、「白色」と判断する範囲を多少広げて見映えに影響するような白色又は白色に近い領域を「白色領域」とする。
【0032】
また本実施形態の制御部11は、領域検出手段として検出した「白色領域」が爪T(爪領域)全体に占める「白色占有率」を導出する占有率導出手段としても機能する。
そして制御部11は、占有率導出手段として導出した「白色占有率」が所定率(例えば50%)以上である場合に、デザイン(図14においてデザインD)のカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段として機能する。
【0033】
さらに制御部11は、「白色占有率」が所定率未満である場合には、デザインDのカラーデザインデータ(色のトーンの調整をしない、補正無しのカラーデザインデータ)を適宜拡大縮小、配置の調整等を行って爪領域に合わせ込み、爪Tに印刷するデザインDの印刷データを生成する。
また、「白色占有率」が所定率以上である場合には、制御部11は、デザインDのカラーデザインデータに対して下地領域の明度に対応するように色のトーンを調整する変換テーブル(LUT)を適用した補正デザインデータを適宜拡大縮小、配置の調整等を行って爪領域に合わせ込み、爪Tに印刷するデザインDの印刷データを生成する。
【0034】
また制御部11は、印刷機構4の各部を制御して印刷を実行させる。
具体的には、制御部11は印刷データに基づいて印刷ヘッド41を制御し、適宜インクを吐出させるとともに、適宜X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47を動作させて適宜印刷ヘッド41をxy方向に移動させる。これにより、印刷データ(カラーデザインデータに基づく印刷データ又は補正デザインデータに基づく印刷データ)に基づき、下地が塗布された爪Tの上へのデザインDの印刷が行われる。
【0035】
[印刷装置の作用、制御方法]
次に、図3等を参照しつつ、本実施形態の印刷装置の作用、制御処理について説明する。
図3は、本実施形態における印刷装置の印刷動作に関する制御処理を示すフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、白色の下地(白下地)が塗布されて下地が形成された爪Tを含む指Uが載置部3に配置されると、制御部11がまず撮影部5の動作を制御し、載置部3上に配置された爪Tを含む指Uを撮影部5のカメラ51で撮像させ、爪画像を取得する(ステップS1)。図13は、爪画像の一例を示す平面図である。
なお、下地(白下地)は、ユーザ等が手塗りによって形成する場合も、印刷装置1によって印刷される場合もあり、いずれでもよい。
爪画像が取得されると、制御部11は、爪画像から白下地が形成されている領域を「下地領域」として検出する。
【0037】
次に制御部11は、爪画像から「下地領域」とされた領域の色情報(明度)を取得する(ステップS2)。例えば、制御部11は、カメラ51によって取得された爪画像からRGB値を計測し、L*を計算することで「下地領域」の明るさ(明度)を得る。なお、「下地領域」の明度を求める手法はこれに限定されない。例えば印刷装置1が測色機能を有している場合には、「下地領域」のL*を直接計測してもよい。
なお、明度を取得する箇所(L*の計測ポイント)は複数であることが好ましい。複数個所で明度を取得した場合には、制御部11は、さらに「下地領域」の明度の平均値を導出する(ステップS3)。このように「下地領域」の明度の平均値を求めることで、例えば「下地領域」中、部分的に光沢の強い箇所やくすんで見える箇所があるような場合でも「下地領域」全体の明度を適切に判断することができる。
【0038】
次に制御部11は、爪Tに印刷したいものとしてユーザ等によって選択されたデザイン(ネイルデザイン、図14等におけるデザインD)を「下地領域」に合成した印刷イメージデータを生成する(ステップS4)。図15は、印刷イメージデータの一例を示している。なお、図15では、実際にはデータ含まれない指Uの形状を仮想的に破線で示している。
そして、制御部11は、この印刷イメージデータから所定の閾値以上の明度の領域を「白色領域」と判定する(ステップS5)。
【0039】
例えば図14図15に示す例では、デザインDが爪Tの先端側に印刷される第1のデザインd1と、第1のデザインd1よりも下(爪Tの生え際側)に印刷される第2のデザインd2とで構成され、第2のデザインd2部分は淡いピンク色や淡い水色等、白色に近い(所定の閾値以上の)明度の部分となっている。
この場合、(カラーの)デザインのない部分(実際の印刷ではデザインが印刷されず、白色の下地がそのまま残る部分)だけでなく、白色に近い明度を有する第2のデザインd2部分についても、制御部11が「白色領域」と判定する。
【0040】
「白色領域」を判定すると、制御部11は、爪T(爪領域)全体に占める「白色領域」の割合(白色占有率)を導出する(ステップS6)。すなわち、図13に示す爪画像において爪Tと判断された領域(実施形態において「下地領域」)のうち、「白色領域」と判定される領域がどの程度を占めるかを導出する。
そして制御部11は、「白色占有率」が爪T全体の50%以上であるか否かを判断する(ステップS7)。
例えば図15において、下地がそのまま残る部分だけを見ると、爪T全体の50%に満たない。しかし、第2のデザインd2部分を含めた「白色領域」で見ると、「白色占有率」が爪T全体の50%以上であると判断することができる。
【0041】
「白色占有率」が爪T全体の50%未満である場合(ステップS7;NO)には、制御部11は、デザインDのカラーデザインデータ(図14参照)を補正しないと判断する(ステップS8)。図4は、デザインDのカラーデザインデータ(デザインDの元データ)において各色に定義されているRGB値の一例を示したものである。例えば図4に例示する元データでは、例えば「赤」がR「221」、G「102」、B「115」と定義されている。
【0042】
他方、例えば図15において、下地がそのまま残る部分と第2のデザインd2部分とをともに「白色領域」とした場合のように、「白色占有率」が爪T全体の50%以上である場合(ステップS7;YES)には、制御部11は、ステップS3において導出した「下地領域」の明度の平均値を読み出す(ステップS9)。
そして制御部11は、「下地領域」の明度に応じてデザインDのカラーデザインデータ(デザインDの元データ)に変換テーブル(LUT)を適用し、RGB値を変換する補正を行う。
【0043】
具体的には、まず制御部11は、「下地領域」の明度の平均値が、L*70以上であるか否かを判断する(ステップS10)。
「下地領域」の明度の平均値が、L*70以上である場合(ステップS10;YES)には、制御部11は、デザインDのカラーデザインデータ(図14参照)に「下地領域」の明度L*70以上の場合の変換テーブル(LUT)を適用して、RGB値を補正した補正デザインデータを生成する(ステップS11)。
図5は、「下地領域」の明度L*70以上の場合の変換テーブルにおけるRGB値の一例を示したものである。図5に示す例では、例えば補正後の「赤」がR「239」、G「133」、B「140」と定義されている。
【0044】
一方、「下地領域」の明度の平均値が、L*70未満である場合(ステップS10;NO)には、制御部11は、さらに「下地領域」の明度の平均値が、L*55未満であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0045】
「下地領域」の明度の平均値が、L*55以上である場合(ステップS12;NO)には、制御部11は、デザインDのカラーデザインデータ(図14参照)に「下地領域」の明度L*70未満L*55以上の場合の変換テーブル(LUT)を適用し、RGB値を補正した補正デザインデータを生成する(ステップS13)。図6は、「下地領域」の明度L*55以上~70未満の場合の変換テーブルにおけるRGB値の一例を示したものである。図6に示す例では、例えば補正後の「赤」がR「233」、G「84」、B「107」と定義されている。
【0046】
他方、「下地領域」の明度の平均値が、L*55未満である場合(ステップS10;YES)には、制御部11は、デザインDのカラーデザインデータ(図14参照)に「下地領域」の明度L*55未満の場合の変換テーブル(LUT)を適用し、RGB値を補正した補正デザインデータを生成する(ステップS14)。図7は、「下地領域」の明度L*55未満の場合の変換テーブルにおけるRGB値の一例を示したものである。図7に示す例では、例えば補正後の「赤」がR「202」、G「71」、B「92」と定義されている。
【0047】
「下地領域」の明度に応じた補正デザインデータが生成されると、制御部11は、それぞれのRGBデータに基づき、印刷用のCMYデータである印刷データを生成する(ステップS15)。
すなわち、補正無しの場合(ステップS8の場合)には、制御部11は、デザインDのカラーデザインデータ(デザインDの元データ)のRGB値をCMY値に変換して、爪領域にデザインDを印刷するための印刷データを生成する。
また「下地領域」の明度に応じた変換テーブル(LUT)が適用されて補正デザインデータが生成された場合(ステップS11,S13,S14の場合)には、制御部11は、デザインDの補正デザインデータのRGB値をCMY値に変換して、爪領域にデザインDを印刷するための印刷データを生成する。
【0048】
印刷データが生成されると、下地の上に印刷機構4により印刷されるインクを受容することのできるインク受容層を形成する。インク受容層をユーザによる手塗りで形成する場合には、制御部11は、一旦指Uを装置外に取り出し、インク受容層を塗布した後に載置部3に指Uを再配置するよう表示部23等に表示させてユーザに処理を促す。
また、インク受容層を印刷機構4による印刷によって形成する場合には、制御部11は印刷機構4の動作を制御して、下地の上にインク受容層を形成させる。
【0049】
そして、インク受容層が形成されると、制御部11は、印刷機構4の各部を制御して、デザインDのカラーデザインデータ(デザインDの元データ)に基づく印刷データ又は「下地領域」の明度に応じたデザインDの補正デザインデータに基づく印刷データにしたがって、爪Tにデザイン印刷を行う(ステップS16)。
【0050】
図16は、図14に示すようなデザインDを、「下地領域」の明度に応じた変換テーブル(LUT)を用いて生成された補正デザインデータに基づく印刷データにしたがって爪Tに印刷を行なった印刷例である。
例えば「白色占有率」が爪T全体の50%以上である場合(例えば図15に示す例参照)に、変換テーブル(LUT)を用いて、下地(下地領域)の明度に対応するようにデザインDのカラーデザインデータの色のトーンを調整し、印刷を行う。このようにすることで、デザインDを構成する第1のデザインd1及び第2のデザインd2の色のトーンが、くっきりと鮮やかに調整される。これにより、「下地領域」等の「白色領域」が爪領域の広い範囲を占めている場合にも全体としてのデザインDの調和がとれ、違和感のない仕上がりとすることができる。
【0051】
上記のように、本実施形態では、デザインDが「白色占有率」が所定率以上となるようなデザインである場合に、生成手段としての制御部11が「下地領域」の明度に対応した変換テーブル(LUT)を適用して、デザインDのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する。色のトーンとは、色調(色の調子)であり、「明度」と「彩度」と「色相」の3つの属性で表現することができる。
図8は、縦軸に「明度」を取り、横軸に「彩度」を取って色のトーンを分類・体系化したPCCS(Practical Color Co-ordinate System)ハーモニックカラーチャート(201-L、日本色研事業株式会社)を示したものである。
【0052】
「下地領域」が爪領域の広範囲を占めている場合、「下地領域」の明度は、デザインDを印刷した場合の全体のバランスや見映えに大きく影響する。
この点、デザインDが「白色占有率」が所定率以上のデザインである場合には「下地領域」の明度に応じてデザインDの色のトーンを調整することで、違和感のない見映えのよい仕上がりのネイルプリントとすることができる。
【0053】
例えば、図9は、「下地領域」の明度の平均値が、L*70以上である場合に使用する色の範囲のイメージを図8のPCCSカラーチャートに重ねて示したイメージ図である。図9では、使用に適した色の範囲例を破線で示している。
また例えば、図10は、「下地領域」の明度の平均値が、L*55以上~70未満である場合に使用する色の範囲のイメージを図8のPCCSカラーチャートに重ねて示したイメージ図である。図10では、使用に適した色の範囲例を一点鎖線で示している。
さらに例えば、図11は、「下地領域」の明度の平均値が、L*55未満である場合に使用する色の範囲のイメージを図8のPCCSチャートに重ねて示したイメージ図である。図11では、使用に適した色の範囲例を点線で示している。
【0054】
図12は、図9から図11において図中に示した使用に適した色の範囲の方向を、矢印によって視覚的に示した説明図である。すなわち、図12は、デザインDの「白色占有率」が所定率以上の場合に、「下地領域」の明度に応じてどのような方向にデザインDの色のトーンを調整するのか、の方向性を示している。
図12において矢印で示すように、例えば下地領域の明度が低い場合には、デザインDの色のトーンを、明度が高く彩度が低い方向に調整(スライド)する(図9参照)。逆に例えば下地領域の明度が高い場合には、デザインDの色のトーンを、明度が低く彩度が高い方向に調整(スライド)する(図11参照)。
なお、図4から図7に示すRGB値は説明のための数値例であり、実際の各色のRGB値を示すものではない。また、図9から図12は説明のためのイメージ図であって実際の色のトーン範囲を正確に反映させたものではない。
【0055】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、印刷装置1が、白色の下地が塗布された爪Tの下地の上にデザインDの印刷が実行される場合に、下地(下地領域)の明度を検出する検出手段、検出された下地の明度に対応するようにデザインDのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する生成手段、及び下地上へのデザインDの印刷を実行させる印刷制御手段として機能する制御部11を備えている。
そして、印刷制御手段として機能する制御部11は、補正デザインデータが生成されたときは、補正デザインデータに基づいて下地上へのデザインDの印刷を行わせる。
これにより、デザインDの「白色占有率」が所定率以上の場合(デザイン印刷後の白色領域が爪領域の広い範囲を占める場合)に下地(下地領域)の明度によってデザインDの印刷結果のバランスや見た目の印象が崩れることが防止され、下地の明度の違いによるデザインDの見映えの違いを抑制して良好な仕上がりのネイルプリントを実現することができる。
【0056】
また本実施形態では、制御部11が、下地の上にカラーデザインデータに基づいたデザインDを合成した印刷イメージデータを生成し、印刷イメージデータから「所定の閾値」以上の明度を有する「白色領域」を検出する領域検出手段、検出された「白色領域」が爪T全体に占める「白色占有率」を導出する占有率導出手段としても機能する。
そして生成手段としての制御部11は、「白色占有率」が所定率以上である場合に、デザインDのカラーデザインデータに対して色のトーンを調整した補正デザインデータを生成する。
「白色領域」が爪T全体に占める割合が大きいほど、下地(下地領域)の明度によるデザインDの印刷結果への影響が大きくなる。この点「白色占有率」が所定率以上である場合に色のトーンを補正することで、デザインDの印刷結果のバランスや見た目の印象が崩れることが防止され、見映えの悪化を抑えることができる。
【0057】
また本実施形態では、爪Tを撮像して爪Tの領域を含む爪画像を取得する撮像手段としてのカメラ51を備え、カメラ51は、検出手段である制御部11が下地の明度を検出する際の検出材料を提供する。すなわち、制御部11は、カメラ51によって取得された爪画像に基づいて、下地の明度を検出する。
これにより、測色計等、下地の明度を測定するための機器を別途装置に搭載する必要がなく、制御部11は印刷範囲となる爪領域を検出するためのカメラ51を用いて下地の明度を取得することができる。このため、装置構成の簡易化、簡略化を実現しつつ、下地(下地領域)の明度に応じた色のトーン調整が可能となり、簡易な構成により下地の明度の違いによるデザインDの見映えの違いを抑制することができる。
【0058】
また本実施形態では、生成手段としての制御部11が、検出された下地の明度に対応する変換テーブルをカラーデザインデータに適用することで補正デザインデータを生成する。
これにより、補正デザインデータの生成をLUTの適用という簡易な手法で実現することができる。
【0059】
[変形例]
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0060】
例えば、実施形態では、下地が均一に爪Tに塗布されている場合を全体として説明したが、下地が均一に塗布されていない場合でもカラーデザインデータを補正して下地(下地領域)の明度によるデザインDの印刷結果への影響を抑えることは可能である。
下地はユーザによる手塗りで形成される場合が多く、この場合、下地に塗りむらが生じる可能性がある。
例えば何度も塗り重ねて完全に白色になっている部分と、塗り重ねが足りずに、明度の低い部分がある場合、明度の低い部分が「下地領域」と認識されないおそれがある。
【0061】
このように下地に塗りむら等が想定される場合には、「下地領域」と判定するか否かについて「所定の閾値」を設けてもよい。この場合、爪画像から「所定の閾値」以上の明度の部分を制御部11が「下地領域」と判定する。
これにより、完全に白く塗られていない塗りむらの箇所も「下地領域」に含めて、図3のステップS3以降のフローを適用することができる。
【0062】
また本実施形態では、下地が白色である場合を前提としたが、下地は白色である場合に限定されない。上記の塗りむら等がある場合と同様に、「下地領域」と判定するか否かについて「所定の閾値」を設けておき、「所定の閾値」の閾値の範囲内であれば、下地が多少ピンクがかっている場合や水色がかっている場合でも「下地領域」と判定されるようにしてもよい。
この場合も、「下地領域」が判定された後は、図3のステップS3以降のフローを適用することができる。
なお、この場合、「下地領域」の色味に応じて、補正デザインデータを生成するための変換テーブルの値を調整してもよい。
【0063】
また本実施形態では、生成手段としての制御部11が変換テーブル(LUT)を適用することで補正デザインデータを生成する場合を例示したが、補正デザインデータを生成する手法は変換テーブル(LUT)を用いるものに限定されず、他の手法によってもよい。
【0064】
また、本実施形態では、印刷装置1の制御部11が検出手段、生成手段、印刷制御手段、領域検出手段、占有率導出手段等として機能し、印刷装置1が単体で印刷処理を完結させる場合を例示したが、検出手段、生成手段、印刷制御手段、領域検出手段、占有率導出手段等として機能するのは、印刷装置1の制御部11である場合に限定されない。
例えば印刷装置1が外部装置(例えばスマートフォン等の端末装置)と連携している場合には、外部装置の制御部等が検出手段、生成手段、印刷制御手段、領域検出手段、占有率導出手段等として機能してもよい。
この場合には、例えば外部装置の記憶部等に、印刷装置1と連携するためのネイルプリントアプリケーションプログラム等、所定の制御処理を印刷装置1に行わせるためのプログラムや各種でデータ等が格納される。
【0065】
この場合には、外部装置の制御部等が、例えば外部装置の制御部等が爪Tの領域を含む指Uの画像(爪画像)を印刷装置1や自機に設けられている撮影手段等から取得し、検出手段として、当該画像(爪画像)に基づいて爪領域に形成された下地(下地領域)の明度を検出する。
また外部装置の制御部等が、生成手段として補正デザインデータを生成する。また、カラーデザインデータ及び補正デザインデータに基づいて印刷データを生成してもよい。
さらに外部装置の制御部等が、下地の上にカラーデザインデータに基づいたデザインDを合成した印刷イメージデータを生成するとともに、領域検出手段として、この印刷イメージデータから「所定の閾値」以上の明度を有する「白色領域」を検出してもよい。
また外部装置の制御部等が、「白色領域」が爪T全体に占める「白色占有率」を導出する占有率導出手段として機能してもよい。
【0066】
このように、スマートフォン等の外部装置の制御部等が検出手段、生成手段、印刷制御手段、領域検出手段、占有率導出手段等として機能する場合には、印刷装置1側の制御部11は、外部装置の制御部等において検出された検出結果や処理結果等を外部装置から受け取り、当該検出結果や処理結果等に基づいて印刷機構4等の動作制御を行えばよい。このため、印刷装置1の制御部11や記憶部12にかかる負荷を軽減することができ、印刷装置1の制御構成をより簡易なものとすることができる。
【0067】
また本実施形態では、印刷機構4に設けられている印刷ヘッド41が、デザイン印刷用のカラーインクを吐出可能なものであり、白色等の下地は、ユーザが手塗りすることを想定したが、下地の塗布は手塗りされる場合に限定されない。
例えば、印刷機構4が白色等の下地用の液剤を吐出可能な下地用の印刷ヘッドを備え、下地用の液剤が印刷ヘッドによって印刷されるようにしてもよい。
【0068】
なお、本実施形態では、印刷装置1の印刷ヘッド41として、インクジェット方式の印刷ヘッド41を備える構成としたが、印刷ヘッド41の構成はこれに限定されない。
例えばシリンジ型のヘッドやペン型のヘッド等、インクジェット方式の印刷ヘッド41とは異なる構成のものを備えてもよい。
この場合には、特に印刷機構4が白色等の下地やインク受容層を形成するための液剤、各種コーティング剤等、通常のインクよりも粒子の大きな溶質を含む液剤や粘土の高い液剤等を印刷する場合であっても、良好に印刷することが可能となる。
【0069】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷装置
3 載置部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
5 撮影部
51 カメラ
52 光源
10 制御装置
11 制御部(検出手段、生成手段、印刷制御手段、領域検出手段、占有率導出手段)
12 記憶部
D デザイン(ネイルデザイン)
T 爪
U 指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16