(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017195
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】イオン交換樹脂の再生装置及び再生方法
(51)【国際特許分類】
B01J 49/50 20170101AFI20240201BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20240201BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240201BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240201BHJP
B01J 49/57 20170101ALI20240201BHJP
B01J 49/60 20170101ALI20240201BHJP
【FI】
B01J49/50
B01D61/00 500
C02F1/44 E
C02F1/42 B
B01J49/57
B01J49/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119685
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 義教
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
【Fターム(参考)】
4D006GA14
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB08
4D006PB20
4D006PC80
4D025AA09
4D025BA13
4D025DA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、イオン交換樹脂の再生処理の際に発生する排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができるイオン交換樹脂の再生装置及び再生方法を提供する。
【解決手段】再生装置10は、再生液槽2、イオン交換樹脂再生設備3、及び正浸透膜ユニット4を備え、イオン交換樹脂再生設備3はイオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を再生液と接触させてイオン交換樹脂を再生し、次いで、イオン交換樹脂をリンス水と接触させてイオン交換樹脂を洗浄し、低塩分濃度排液を導出する。正浸透膜ユニット4は、低塩分濃度排液と再生液の間に配設された正浸透膜4aを有し、低塩分濃度排液と再生液を正浸透膜と接触させることにより低塩分濃度排液に含まれる水分が再生液側(駆動溶液側)に移動し、低塩分濃度排液が濃縮される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を塩分を含む再生液により再生処理し、高塩分濃度排液を導出する再生手段と、
前記再生処理後のイオン交換樹脂をリンス水により洗浄し、低塩分濃度排液を導出する洗浄手段と、
前記低塩分濃度排液を正浸透膜と接触させることにより、低塩分濃度排液を濃縮する濃縮手段と、
を備えたことを特徴とするイオン交換樹脂の再生装置。
【請求項2】
前記再生装置が再生液槽を備え、前記再生液が該再生液槽から前記再生手段に供給される、請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記正浸透膜が低塩分濃度排液と駆動溶液との間に配設され、該正浸透膜が低塩分濃度排液に含まれる水分を透過するとともに塩分を捕捉して低塩分濃度排液を濃縮する、請求項1記載の再生装置。
【請求項4】
前記駆動溶液が、前記再生液槽から供給された再生液である、請求項3記載の再生装置。
【請求項5】
前記正浸透膜を透過した水分を含む駆動溶液が前記再生液槽に循環する、請求項4記載の再生装置。
【請求項6】
前記再生装置が再生原液槽を備え、前記駆動溶液が、該再生原液槽から供給される再生原液である、請求項3記載の再生装置。
【請求項7】
前記再生原液槽から再生液槽に再生原液が供給され、再生液槽において再生原液が希釈されて再生液が調製される、請求項6記載の再生装置。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂が帯磁性の陰イオン交換樹脂である、請求項1~7のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項9】
イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を塩分を含む再生液により再生処理し、高塩分濃度排液を導出する再生手段と、
前記再生処理後のイオン交換樹脂をリンス水により洗浄し、低塩分濃度排液を導出する洗浄手段と、
前記低塩分濃度排液を正浸透膜と接触させることにより、低塩分濃度排液を濃縮する濃縮手段と、を備えたイオン交換樹脂の再生装置によって実行されるイオン交換樹脂の再生方法において、
イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を再生液と接触させてイオン交換樹脂を再生処理する再生ステップと、
前記再生処理後のイオン交換樹脂をリンス水と接触させてイオン交換樹脂を洗浄する洗浄ステップと、
前記低塩分濃度排液を正浸透膜と接触させて低塩分濃度排液を濃縮する濃縮ステップと、
を有することを特徴とする再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン交換樹脂の再生装置及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶液中に含まれたイオン類を分離除去するためにイオン交換樹脂が用いられている。イオン交換樹脂は一定量のイオン交換を行うとイオン交換能力が低下することから、通常は、塩分を含む再生液と接触させて再生させている。このイオン交換樹脂の再生方法として、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を収容した再生処理槽に再生液を供給し、イオン交換樹脂の再生処理を行った後に、イオン交換樹脂を水洗する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図5は、従来のイオン交換樹脂の再生装置50を概略的に示す図である。
図5の再生装置50は、再生液槽2とイオン交換樹脂再生設備3とを備えている。
【0004】
図5において、再生液槽2には、イオン交換樹脂の再生に用いられる再生用の塩と希釈水とを混合することにより調製された再生液が収容されている。再生液槽2に収容された再生液は、再生液供給ポンプP1により再生液供給経路7を経てイオン交換樹脂再生設備3に供給される。イオン交換樹脂再生設備3にはイオン交換能力の低下したイオン交換樹脂が収容されており、イオン交換樹脂を再生液と接触させることによりイオン交換樹脂が再生処理される。イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂の場合には、再生処理により陰イオン交換樹脂に吸着している負電荷成分と再生液中の陰イオンとが交換して、陰イオン交換樹脂が再生される。イオン交換樹脂が再生処理されると、イオン交換樹脂に吸着していた成分を含む再生排液が生じ、再生排液はイオン交換樹脂再生設備3から導出される。
【0005】
イオン交換樹脂の再生処理が終了すると、イオン交換樹脂再生設備3への再生液の供給と、イオン交換樹脂再生設備3からの再生排液の導出が停止される。次いで、再生処理を行ったイオン交換樹脂を洗浄するため、リンス水供給経路9からイオン交換樹脂再生設備3にリンス水が供給される。イオン交換樹脂はリンス水と接触することにより洗浄され、イオン交換樹脂内に残存していた再生液を含むリンス排液が生じ、リンス排液はイオン交換樹脂再生設備3から導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の再生装置50では、イオン交換樹脂を洗浄する際に発生するリンス排液の処分にかかるコストが高いという問題があった。
【0008】
本発明は、イオン交換樹脂の再生処理の際に発生する排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができるイオン交換樹脂の再生装置及び再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のイオン交換樹脂の再生装置は、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を塩分を含む再生液により再生処理し、高塩分濃度排液を導出する再生手段と、前記再生処理後のイオン交換樹脂をリンス水により洗浄し、低塩分濃度排液を導出する洗浄手段と、前記低塩分濃度排液を供給溶液、再生液を駆動溶液として正浸透膜と接触させることにより、低塩分濃度排液を濃縮する濃縮手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のイオン交換樹脂の再生方法は、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を塩分を含む再生液により再生処理し、高塩分濃度排液を導出する再生手段と、前記再生処理後のイオン交換樹脂をリンス水により洗浄し、低塩分濃度排液を導出する洗浄手段と、前記低塩分濃度排液を供給溶液、再生液を駆動溶液として正浸透膜と接触させることにより、低塩分濃度排液を濃縮する濃縮手段と、を備えたイオン交換樹脂の再生装置によって実行されるイオン交換樹脂の再生方法において、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を再生液と接触させてイオン交換樹脂を再生処理する再生ステップと、前記再生処理後のイオン交換樹脂をリンス水と接触させてイオン交換樹脂を洗浄する洗浄ステップと、前記低塩分濃度排液を正浸透膜と接触させて低塩分濃度排液を濃縮する濃縮ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イオン交換樹脂の再生処理の際に発生する排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るイオン交換樹脂の再生装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の再生装置によって実行される再生処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の再生装置の変形例を概略的に示す図である。
【
図4】
図3の再生装置によって実行される再生処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るイオン交換樹脂の再生装置を概略的に示す図である。
【0015】
図1の再生装置10は、再生液槽2とイオン交換樹脂再生設備3と正浸透膜ユニット4とを備えている。再生液槽2には、希釈水供給経路5から希釈水が供給され、塩供給経路6からイオン交換樹脂の再生処理に用いられる再生用の塩が供給され、再生用の塩と希釈水とを混合することにより調製された再生液が収容されている。ここで、再生用の塩としては塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩を用いることができ、中でも塩化ナトリウムが好ましい。再生液の塩分濃度は、再生するイオン交換樹脂や使用する塩の種類にもよるが、通常2~30重量%、好ましくは5~15重量%である。再生液槽2に収容されている再生液は、再生液供給ポンプP1により再生液供給経路7を経てイオン交換樹脂再生設備3に供給される。
【0016】
イオン交換樹脂再生設備3には、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂が収容されている。イオン交換樹脂再生設備3は、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂を再生液と接触させることにより、イオン交換樹脂を再利用可能な状態に再生する再生処理を行う(再生手段)。このとき、イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂の場合には、陰イオン交換樹脂に吸着している負電荷成分と再生液中の陰イオンとが交換して陰イオン交換樹脂が再生される。イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂の場合には、陽イオン交換樹脂に吸着している正電荷成分と再生液中の陽イオンとが交換して陽イオン交換樹脂が再生される。本発明で用いられるイオン交換樹脂は、塩分を含む再生液により再生可能なものであれば特に限定されず、一般的な陰イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂を用いることができる。
【0017】
本実施の形態では、イオン交換樹脂として微弱な磁性を帯びた帯磁性陰イオン交換樹脂を使用する。帯磁性陰イオン交換樹脂は、例えば、粒径が通常150~300μm、好ましくは170~250μmの粒状樹脂であり、磁性を帯びているため樹脂同士が集塊化し易く、沈降性に優れるという特徴を有する。このような特徴を有する帯磁性陰イオン交換樹脂は、流動床において再生液の上向流と接触させることにより、効率的な再生処理を行うことができる。
【0018】
イオン交換樹脂が再生処理されると、再生液に含まれていた塩成分とイオン交換樹脂から脱離した成分に由来する高濃度の塩分を含む排液(以下、「高塩分濃度排液」ともいう。)が生じる。本発明において高塩分濃度排液とは、後述する低塩分濃度排液よりも塩分濃度が高い排液を意味する。再生処理の工程においては多少の希釈が生じるが、希釈の影響を無視すると、高塩分濃度排液の塩濃度は、モル当量換算では再生液と同程度となる。再生処理に伴うイオン交換により、再生液に含まれるイオンの種類は変化しても、イオンのモル当量は基本的に一定であるためである。高塩分濃度排液はイオン交換樹脂再生設備3から高塩分濃度排液導出経路8に導出される。
【0019】
イオン交換樹脂が再利用可能な状態まで再生された段階で、イオン交換樹脂の再生処理は終了する。具体的に、イオン交換樹脂が再利用可能な状態まで再生された時点で、イオン交換樹脂再生設備3への再生液の供給を停止し再生処理を終了するとともに、イオン交換樹脂再生設備3からの高塩分濃度排液の導出を停止する。
【0020】
次いで、再生されたイオン交換樹脂を洗浄するため、リンス水供給経路9からイオン交換樹脂再生設備3にリンス水が供給される。リンス水は通常は水であるが、イオン交換樹脂の性能と洗浄効率に悪影響を与えない限り他の成分を含んでいてもよい。イオン交換樹脂再生設備3では、再生されたイオン交換樹脂がリンス水と接触することにより洗浄される(洗浄手段)。このとき、イオン交換樹脂内に残存した再生液などに由来する低濃度の塩分を含む排液(以下、「低塩分濃度排液」ともいう。)が生じる。本発明において低塩分濃度排液とは、前述した高塩分濃度排液よりも塩分濃度が低い排液を意味する。イオン交換樹脂の洗浄工程は主にイオン交換樹脂内に残存する再生液をリンス水により除去する工程であるため、洗浄工程後の排液に含まれる塩分濃度は再生工程後の排液に含まれる塩分濃度よりも低くなる。低塩分濃度排液の塩分濃度は再生液の塩分濃度によるが、再生液の10分の1前後であり、好ましくは1重量%以下である。低塩分濃度排液はイオン交換樹脂再生設備3から低塩分濃度排液導出経路10に導出される。
【0021】
その後、低塩分濃度排液は低塩分濃度排液導出経路10から正浸透膜ユニット4に供給される。正浸透膜ユニット4は正浸透膜4aを備えている。正浸透膜4aは溶質濃度の異なる2種類の溶液(供給溶液及び駆動溶液)が接触し、低濃度側(供給溶液)の溶媒が高濃度側(駆動溶液)の溶媒に移動する正浸透作用に基づいて、供給溶液を濃縮する半透膜である。本実施の形態では、低塩分濃度排液が供給溶液であり、駆動溶液として再生液槽2から再生液供給経路11を経て再生液が正浸透ユニット4に供給される。正浸透膜4aは低塩分濃度排液(供給溶液)と再生液(駆動溶液)の間に配設され、低塩分濃度排液(供給溶液)と再生液(駆動溶液)が正浸透膜4aに接触することにより正浸透作用が生じる。このとき、正浸透ユニット4に供給された再生液(駆動溶液)の溶質濃度は低塩分濃度排液(供給溶液)の溶質濃度よりも高いため、正浸透膜4aが低塩分濃度排液から受ける圧力は再生液から受ける圧力よりも高くなる。その結果、正浸透作用により、低塩分濃度排液に含まれる水分のみが正浸透膜4aを透過して再生液(駆動溶液)側に移動し、塩分は正浸透膜4aの低塩分濃度排液側に残存し、低塩分濃度排液が濃縮される。正浸透膜4aとしては、水分子を透過するが、イオン交換樹脂の交換イオンを透過しないものであれば特に限定されず、公知の正浸透膜を使用することができる。その後、濃縮された低塩分濃度排液は、正浸透膜ユニット4から濃縮排液導出経路13に導出される。
【0022】
このようにイオン交換樹脂の洗浄処理により生じた低塩分濃度排液を正浸透膜ユニット4において濃縮することにより(濃縮手段)、再生処理の際に発生する排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができる。正浸透膜4aは濃縮を実行する際に強い圧力を加える必要がないため、MF膜、UF膜、NF膜及びRO膜に比べエネルギー効率の点から優位である。
【0023】
正浸透膜4aを透過して再生液(駆動溶液)側に移動した水分は、再生液供給経路11から正浸透膜ユニット4に供給された再生液を希釈し、希釈された再生液は再生液循環経路12を経て再生液槽2に循環される。このように、再生液を正浸透膜ユニット4を介して循環させることにより、希釈された再生液を再生液槽2に戻すことができるため、希釈水供給経路5から再生液槽2に供給する希釈水の量を低減することができる。
【0024】
次に、本実施の形態に係る再生装置10(
図1)によって実行される再生方法について説明する。
【0025】
図2は、
図1の再生装置によって実行される再生方法の手順を示すフローチャートである。
【0026】
上述したように、本実施の形態の再生装置(
図1)は、再生液槽2とイオン交換樹脂再生設備3と正浸透膜ユニット4とを備える。再生液槽2には、再生用の塩と希釈水とを混合することにより調製された再生液が収容されている。
【0027】
図2において、まず、再生液槽2からイオン交換樹脂再生設備3に再生液が供給される(S401)。再生液は、例えば、10重量%の塩化ナトリウム水溶液である。イオン交換樹脂再生設備3には、イオン交換能力の低下したイオン交換樹脂が収容されており、本実施の形態では、磁性を帯びた帯磁性陰イオン交換樹脂を使用する(
図1)。イオン交換樹脂再生設備3では、帯磁性陰イオン交換樹脂に再生液を接触させることにより再生処理が行われる(S402:再生ステップ)。このとき、帯磁性陰イオン交換樹脂に吸着している負電荷成分と再生液中の陰イオンとが交換して、陰イオン交換樹脂が再生される。
【0028】
イオン交換樹脂の再生処理を行った後の再生排液は、再生液に含まれていた塩成分とイオン交換樹脂から脱離した成分に由来する高濃度の塩分を含み、高塩分濃度排液として、イオン交換樹脂再生設備3から高塩分濃度排液導出経路8に導出される(S403)。このとき、高塩分濃度排液に含まれる塩分の濃度は、希釈の影響を無視すれば、モル当量換算で再生液に含まれる塩分の濃度と同程度である。
【0029】
イオン交換樹脂が再利用可能な状態まで再生されると、イオン交換樹脂再生設備3への再生液の供給を停止して再生処理を終了するとともに、イオン交換樹脂再生設備3からの高塩分濃度排液の導出を停止する(S404)。
【0030】
再生処理後のイオン交換樹脂内には再生液が残存する。したがって、再生処理を行ったイオン交換樹脂を洗浄するため、リンス水供給経路9からイオン交換樹脂再生設備3にリンス水が供給される(S405)。イオン交換樹脂はリンス水と接触することにより洗浄され、再生処理の際にイオン交換樹脂内に残存した再生液がリンス水とともに流出する(S406:洗浄ステップ)。イオン交換樹脂を洗浄した後のリンス排液は、再生液に含まれていた塩成分とイオン交換樹脂から脱離した成分に由来する低濃度の塩分を含み、低塩分濃度排液として、イオン交換樹脂再生設備3から低塩分濃度排液導出経路10に導出される(S407)。イオン交換樹脂の洗浄工程はイオン交換樹脂内に残存する再生液をリンス水により除去する工程であるため、洗浄工程後のリンス排液に含まれる塩分濃度は、再生工程後の再生排液に含まれる塩分濃度よりも低くなる。低塩分濃度排液に含まれる塩分の濃度は、例えば、1重量%以下である。
【0031】
その後、低塩分濃度排液は、低塩分濃度排液導出経路10から正浸透膜ユニット4に供給される(S408)。また、再生液槽2から再生液供給経路11を経て再生液が正浸透ユニット4に供給される(S408)。正浸透膜ユニット4では、正浸透膜4aに低塩分濃度排液(供給溶液)と再生液(駆動溶液)が接触する。このとき、再生液(駆動溶液)は低塩分濃度排液(供給溶液)よりも溶質濃度が高いため、正浸透膜4aが低塩分濃度排液から受ける圧力は再生液から受ける圧力よりも高くなる。その結果、正浸透作用により低塩分濃度排液に含まれる水分のみが正浸透膜4aを浸透して再生液(駆動溶液)側に移動し、塩分は正浸透膜4aの低塩分濃度排液側に残存し、低塩分濃度排液が濃縮される(S409:濃縮ステップ)。これにより、低塩分濃度排液は正浸透膜4aに強い圧力を加えことなく効率的に濃縮されるため、再生処理の際に発生する排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができる。本実施の形態では、低塩分濃度排液の排液量を、例えば、数分の一まで濃縮することができる。
【0032】
正浸透膜4aを透過した水分は、正浸透膜ユニット4に供給された再生液を希釈し、希釈された再生液は再生液槽2に循環する(S410)。これにより、再生液槽2内の再生液が希釈されることとなり、再生液槽2に供給する希釈水の量を低減することができる。正浸透膜ユニット4において濃縮された低塩分濃度排液は、正浸透膜ユニット4から濃縮排液導出経路13に導出される(S411)。その後、本再生処理は終了する。
【0033】
以上のように、再生液槽2とイオン交換樹脂再生設備3と正浸透膜ユニット4とを備えた再生装置10(
図1)を用い、イオン交換樹脂の再生処理、洗浄処理、及び、低塩分濃度排液の濃縮処理を順次行うことにより、排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減するとともに、希釈水を低減でき、効率の良いイオン交換樹脂の再生処理を行うことができる。
【0034】
図3は、
図1の再生装置10の変形例を概略的に示す図である。
図3の再生装置30は、
図1の再生液槽2、イオン交換樹脂再生設備3及び正浸透膜ユニット4に加えて、再生原液槽1、塩及び希釈水供給経路14、再生原液供給経路15,16、再生原液循環経路17、並びにポンプP3,P4を備える。以下、
図1の再生装置10と異なる点のみ説明する。
【0035】
図3において、再生原液槽1には、塩及び希釈水供給経路14から再生用の塩及び希釈水が供給され、再生用の塩と希釈水を混合することにより調製された塩分濃度の非常に高い再生原液が収容されている。ここで、再生用の塩としては塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩を用いることができ、中でも塩化ナトリウムが好ましい。再生原液は、例えば、塩の飽和水溶液であり、再生用の塩として塩化ナトリウムを使用する場合には、約26%の塩化ナトリウム水溶液とすることができる。
【0036】
再生原液槽1内の再生原液は、再生原液供給ポンプP3により再生原液供給経路15を経て再生液槽2に供給される。再生原液槽1から再生液槽2に供給される再生原液には再生用の塩が含まれているため、再生液槽2には再生用の塩を別途供給する必要はない。再生原液供給経路15を経て再生液槽2に供給された再生原液は、希釈水供給経路5から供給された希釈水により希釈される。再生液槽2に収容される再生液の塩分濃度は、再生するイオン交換樹脂や使用する塩の種類にもよるが、例えば、塩化ナトリウム水溶液では5~20重量%、好ましくは8~15重量%となるよう調整される。
【0037】
正浸透膜ユニット4には、駆動溶液として、再生液槽2に収容されている再生液の代わりに、再生原液槽1に収容されている再生原液が供給される。再生原液は、再生原液循環ポンプP4により再生原液供給経路16を経て正浸透膜ユニット4に供給される。再生原液槽1に収容されている再生原液の溶質濃度は、再生液槽2に収容されている再生液の溶質濃度よりも高い。そのため、正浸透膜ユニット4に供給される低塩分濃度排液(供給溶液)の溶質濃度と再生原液(駆動溶液)の溶質濃度との差は、
図1の正浸透膜ユニット4における低塩分濃度排液(供給溶液)の溶質濃度と再生液(駆動溶液)の溶質濃度との差よりも大きくなる。すなわち、
図3の正浸透膜ユニット4では、
図1の正浸透膜ユニット4に比べ、正浸透膜4aが低塩分濃度排液(供給溶液)から受ける圧力と駆動溶液から受ける圧力との差がより大きくなり、より強い正浸透作用が生じるため、低塩分濃度排液の濃縮効果が高くなる。
【0038】
このように、再生原液槽1を設け塩分濃度の非常に高い再生原液を正浸透膜ユニット4に駆動溶液として供給することにより、低塩分濃度排液の濃縮処理をより効率的に行うことができ、排液量をより低減させ、排液の処分に要するコストを更に削減することができる。また、駆動溶液として塩分濃度の非常に高い再生原液を用いることにより、塩分濃度が比較的高い排液に対しても濃縮を行うことができる。
【0039】
次に、本実施の形態に係る再生装置30(
図3)によって実行される再生方法について説明する。
【0040】
図4は、
図3の再生装置30によって実行される再生方法の手順を示すフローチャートであり、
図2の再生方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
図4のステップS401~S407及びS411は
図2のステップS401~S407及びS411と同一であり、以下、
図2と異なる点のみ説明する。
【0041】
図4において、まず、再生原液槽1から再生原液が再生液槽2に供給される(S601)。再生原液は、再生原液供給ポンプP3を用い再生原液供給経路15を経て再生液槽2に供給される(
図3)。再生原液槽1に収容される再生原液は、例えば、約26重量%の塩化ナトリウム飽和水溶液である。
【0042】
続いて、
図2のステップS401~S407と同一のステップにより、イオン交換樹脂の再生処理及び洗浄処理が進行する(S401~S407)。その後、イオン交換樹脂再生設備3から導出した低塩分濃度排液が、低塩分濃度排液導出経路10を経て正浸透膜ユニット4に供給されるとともに、再生原液槽1から再生原液供給経路16を経て再生原液が正浸透ユニット4に供給される(S602)。低塩分濃度排液(供給溶液)と再生原液(駆動溶液)が正浸透膜4aに接触すると、低塩分濃度排液の濃縮が開始する。再生原液(駆動溶液)は低塩分濃度排液(供給溶液)よりも溶質濃度が高いため、正浸透膜4aが低塩分濃度排液から受ける圧力は再生原液から受ける圧力よりも高くなる。その結果、正浸透作用により低塩分濃度排液に含まれる水分のみが正浸透膜4aを浸透して再生原液(駆動溶液)側に移動し、塩分は正浸透膜4aの低塩分濃度排液側に残存するため、低塩分濃度排液が濃縮される(S603:濃縮ステップ)。本実施の形態では、低塩分濃度排液の排液量を、例えば、数分の一まで濃縮することができる。このようにイオン交換樹脂の洗浄処理により生じた低塩分濃度排液を正浸透膜ユニット4(濃縮手段)において濃縮することにより、排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができる。
【0043】
正浸透膜4aを浸透した水分は、正浸透ユニット4に供給された再生原液を希釈し、希釈された再生原液は再生原液循環経路17を経て再生液槽2に循環する(S604)。正浸透膜ユニット4において濃縮された低塩分濃度排液は、正浸透膜ユニット4から濃縮排液導出経路13に導出される(S411)。その後、本再生処理は終了する。
【0044】
以上のように、再生液槽2とイオン交換樹脂再生設備3と正浸透膜ユニット4に加え、再生原液槽1を更に備えた再生装置30(
図3)を用い、イオン交換樹脂の再生処理、洗浄処理、及び、低塩分濃度排液の濃縮処理を行うことにより、排液量をより効果的に低減し、排液の処分に要するコストを削減するとともに、効率の良いイオン交換樹脂の再生処理を行うことができる。
【0045】
本発明の再生装置及び再生方法は、イオン交換樹脂の再生処理の際に発生する排液量を大幅に且つ効率的に低減することができるため、排液量の多い下水等の汚水処理に使用したイオン交換樹脂の再生処理に対し有効に適用することができる。
【0046】
以上、本発明について、上述した実施の形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、イオン交換樹脂の再生処理の際に発生する排液量を低減し、排液の処分に要するコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 再生原液槽
2 再生液槽
3 イオン交換樹脂再生設備
4 正浸透膜ユニット
4a 正浸透膜
5 希釈水供給経路
6 塩供給経路
7,11 再生液供給経路
8 高塩分濃度排液導出経路
9 リンス水供給経路
10 低塩分濃度排液導出経路
12 再生液循環経路
13 濃縮排液導出経路
14 塩及び希釈水供給経路
15,16 再生原液供給経路
17 再生原液循環経路