(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171965
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 35/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02K35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089349
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】712008002
【氏名又は名称】西浦 信一
(72)【発明者】
【氏名】西浦 信一
(57)【要約】
【課題】 簡単な構造で、特別な材料に依存することなく、外部振動や運動エネルギーを効率よく電気に変える発電素子、発電機、発電装置を提供する。
【解決手段】 運動可能に配置された磁石に、軟磁性材料からなるコアを内包するコイルを複数前記磁石に近接するよう固定して配置し、前記磁石が外部エネルギーによって振動した時、前記複数のコア内の磁性の向きが交互に変わることで複数コイルが発電する。さらには、複数のコイルの金属線の太さや巻き数、コアの形状の少なくとも一つが異なり、各々の電圧や電流、インピーダンスなどが異なることを特徴とする振動発電機。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのコアと少なくとも一つのコイルを備え、前記コアは磁性材料によって作られ、前記コイルは前記コアの周りに配置された発電部と、少なくとも一つの磁石が少なくとも一つの支持部材によって支持され振動可能に配置された磁石振動部を備え、前記発電部は複数であり、それぞれの前記発電部の前記コアが、前記磁石振動部の前記磁石に近接して配置されたことを特徴とする発電機。
【請求項2】
複数の前記発電部は、前記コイルの金属線の巻き数、前記コイルの金属線の太さ、前記コアの形状、のうち、少なくとも一つが異なる複数の前記発電部であることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項3】
前記磁石振動部が、少なくとも一つの可動部材によって支持され振動可能に配置された前記磁石を備えることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項4】
前記磁石振動部が、少なくとも一つの弾性部材によって支持され振動可能に配置された前記磁石を備えることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項5】
前記磁石振動部の前記磁石からの磁力を受けて前記発電部の前記コアの磁性の向きの反転を繰り返すことを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項6】
本発明の第6の発明は、前記発電部の前記コアが前記コイルに固定されていることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項7】
発生する電力が交流であることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項8】
前記コアの磁性材料は、軟磁性材料であることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【請求項9】
前記磁石振動部の少なくとも一部が外部の機械によって打鍵された振動力により、前記磁石が振動可能に配置された請求項第1に記載の発電機。
【請求項10】
外力エネルギーを、回転運動や上下運動に変換した機構を用いて、前記弾性体に弾性力を発生させ、前記磁石を振動させることを特徴とする請求項第1に記載の発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギー、運動エネルギー、振動等をエネルギー源とする振動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用した発電方法が注目されている。なかでも、振動を利用した発電方法は、特殊な発電材料を用いた発電方法が考案され、公開されている。
【0003】
振動をエネルギー源とした発電機は、単に発電機にとどまらず、自己発電型センサーや自己発電型送信機等の用途に利用できる。
しかし、これまで考案されてきた方法の多くは、特殊な発電材料を用いて、量産性、コストに問題があるものが多く、さらには発電効率も悪く、ほとんど実用化された例がない。
【0004】
簡単な構造で、発電効率の高い、振動発電機が求められている。
【0005】
本発明は、発電効率の良い発電機を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行する特許文献である特願2021―19641において、発明者は、磁性材料からなるコアとコイルで構成された電磁石同様の構造を持つ発電部と、振動可能に配置された磁石を備え、前記発電部のコアに近接して磁石を振動させることで、磁石からの磁力を受けてコアの磁性の向きが反転を繰り返し、コイルに電流が発生する、いわば逆電磁発電機と名づけ得る発明を考案した。
【0008】
ユーザーは、可能な限り同じスペースで発電量を高めたいというニーズを持っている。さらに、利用電圧の複数利用等の利便性も求めている。この逆電磁発電機を複数利用すれば発電量は高まるが、設置に必要なスペースも大きくなる。そこで更なる発電効率の向上と利便性の向上が望まれている。
【0009】
本発明は、発電効率がよく利便性の高い発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、鋭意研究し、振動する磁石に近接する前記発電部を2つに増やし、磁石の両脇に配置して磁石を振動させたところ、磁石に加えた振動エネルギーは同一でも、2個の発電部から得られる電力の和は、1個の時の電力を1.8倍上回ることを発見した。さらに、この片方の1個の発電部のコイルの巻き数やコイルの線径をかえたところ、もう片方の発電部とは違う特性の電力を得られることも確認した。なお、本発明はこれら考案までの知見に限定されるものではない。
【0011】
本発明の第1の発明は、少なくとも一つのコアと少なくとも一つのコイルを備え、前記コアは磁性材料によって作られ、前記コイルは前記コアの周りに配置された発電部と、少なくとも一つの磁石が少なくとも一つの支持部材によって支持され振動可能に配置された磁石振動部を備え、前記発電部は複数であり、それぞれの前記発電部の前記コアが、前記磁石振動部の前記磁石に近接して配置されたことを特徴とする発電機である。
【0012】
本発明の第2の発明は、前記コイルの金属線の巻き数、前記コイルの金属線の太さ、前記コアの形状、のうち、少なくとも一つが異なる複数の前記発電部であることを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0013】
本発明の第3の発明は、前記磁石振動部が、少なくとも一つの可動部材によって支持され振動可能に配置された前記磁石を備えることを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0014】
本発明の第4の発明は、前記磁石振動部が、少なくとも一つの弾性部材によって支持され振動可能に配置された前記磁石を備えることを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0015】
本発明の第5の発明は、前記磁石振動部の前記磁石からの磁力を受けて前記発電部の前記コアの磁性の向きの反転を繰り返すことを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0016】
本発明の第6の発明は、前記発電部の前記コアが前記コイルに固定されていることを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0017】
本発明の第7の発明は、発生する電力が交流であることを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0018】
本発明の第8の発明は、前記コアの磁性材料は、軟磁性材料であることを特徴とする第1の発明に記載の発電機である。
【0019】
本発明の第9の発明は、前記発電部の前記コアの少なくとも一方端部または他方端部のいずれかに当接する軟磁性材料のヨークをさらに備える、第1の発明に記載の発電機である。
【0020】
本発明の第10の発明は、前記磁石振動部の前記磁石が重力方向に振動するように配置された第1の発明に記載の発電機である。
【0021】
本発明の第11の発明は、前記磁石振動部が共振周波数を調整可能な機構を備えた第1の発明に記載の発電機である。
【0022】
本発明の第12の発明は、前記磁石振動部の少なくとも一部が外部の機械によって打鍵された振動力により、前記磁石が振動可能に配置された第1の発明に記載の発電機である。
【0023】
発明の第13は、外力により前記弾性体が荷重を受け変形し、除荷されて発生する復元力によって前記磁石が振動することを特徴とする発明の第1に記載の発電機である。
【0024】
発明の第14は、前記外力を、回転運動や上下運動に変換した機構を用いて、前記弾性体に弾性力を発生させ、前記磁石を振動させることを特徴とする発明の第1に記載の発電機である。
【0025】
発明の第15は、前記外力を、てこの原理を用いた機構あるいは変速機などを用いて、前記弾性体に弾性力を発生させることを特徴とする発明の第1に記載の発電機である。
【0026】
発明の第16は、前記磁石あるいは前記弾性体に重りを連結して、前記磁石の振動周波数を調整することを特徴とする発明の第1に記載の発電機である。
【0027】
発明の第17は、前記磁石の振動は、線材の振り子運動によるものであることを特徴とする発明の第1に記載の発電機である。
【0028】
発明の第18は、発明の第1に記載の前記発電機を具備することを特徴とする通信システムである。
【0029】
発明の第19は、発明の第1に記載の発電機の発電量をセンサー情報として利用したことを特徴とするセンシングシステムである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、簡単至便に再生可能エネルギーや、運動エネルギー、あるいは外部振動などの外力をエネルギー源とした発電機が構成できる。さらにフリーメンテナンスの高信頼の電源や蓄電装置、通信装置、あるいは自立電源型センサーなどを提供することができる。また、本発明の原理を使用して大掛かりな海洋発電機などの製作も可能である。さらにプリント基板用の超小型のコイル等を利用して超小型の本発明の発電素子を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施の形態における発電機の上面の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における発電機の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
発電部1、発電部2、発電部3、コイル6、コア7、磁石振動部4、磁石8、弾性体9、止めネジ10、支持体11、台座12、発電部固定枠13、運動エネルギー受容方向14、移動方向15
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の一形態について、
図1と
図2を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【実施例0034】
本発明の発電機は、発電部と磁石振動部に概略構成される。
【0035】
本発明の実施の一形態の発電部1の部品構成について
図1を用いて説明する。発電部2と発電部3は、発電部1同様の構成である。
図1は本発電機の上面の概略断面図である。発電部1は、磁性材料からなるコア7が棒状に伸びて、その周囲をコイル6が包んでいる。コイル6の両端は図示しないが外部電気回路につながっている。
【0036】
コア7の磁性材料は、磁性のある金属であればいずれも使用できる。鉄、鉄合金、フェライトなどの軟磁性材料が好ましい。形状は、棒状、板状、中空パイプ形状等いずれも使いうる。コア7の長さは、好ましくはコイル6に完全に包まれるようにコイル6と同等の長さとする。しかし、必ずしもコア7の長さがコイル6と同等である必要はない。コア7の端部の断面積は、電気特性や設置状況を考慮して決めるのが良い。
【0037】
コイル6は、公知の技術がすべて使いうる。求める電圧、電流によって、コイルに使用する金属線の太さや材質、巻き数を決めるのが良い。一般的に金属線は銅やアルミニウムが使用される。
図1は、コア7に直接コイル6を巻いているが、生産性を考慮して、図示しないが中空ボビンにコイル7を巻き、中空ボビンに包まれるようコア7を挿入してもよい。中空ボビンは、磁性を持たない材料によるものが好ましく、樹脂製などが考えられる。
【0038】
コア7は、コイル6あるいはコイル6を巻いたボビンに挿入されて、固定されているのが好ましい。
【0039】
発電部1は、基本構造において電磁石と同一である。発電部1は、公知の電磁石と置き換えることが可能である。その際、ヨークの追加、シールド等、電磁石で公知の技術はすべて使いうる。
【0040】
発電部1の位置は、コア7に磁石振動部4の磁石8が近接するよう
図2の発電部固定枠13によって配置される。
【0041】
磁石振動部4の部品構成について
図1を用いて説明する。
【0042】
磁石振動部4は、磁石8、弾性体9、止めネジ10、支持体11で概略構成される。
【0043】
磁石8は電磁石の使用なども考えられるが、コスト面を考えると永久磁石であることが好ましい。材料には、強い磁力を持つもの、例えばネオジウム磁石やフェライト磁石などが適している。形状は、角形、円筒形、中空形、球体、いずれも使いうる。
【0044】
弾性体9の材質は、弾性振動する材料であればいずれも使いうる。金属、ゴム・エラストマー、繊維強化複合材料、セラミックスなどが考えられる。形状は、弾性振動する形状であればいずれも使いうる。バネ状で直線状のバネやらせん状のコイルばねなどが好ましい。振幅、振動周波数、周期などのパラメーターで使用目的や利用状況等に合わせて選択するのが好ましい。
【0045】
磁石振動部4の構造について、
図2を用いて説明する。
【0046】
磁石振動部4は、台座12の上に支持体11を固定し、その支持体11に止めネジ10で弾性体9の一方の端部を固定し、もう一方の端部を自由端とする片梁構造である。弾性体9は板状に台座12上面に平行に伸びて、その自由端側の端部付近に磁石8を配置する。
【0047】
図2の磁石振動部4は片梁構造であるが、用途に応じて、別の構造も使いうる。例えば弾性体9を両梁構造で支え、磁石8を弾性体9の任意の位置に配置し振動させることも可能である。さらには、ビームカンチレバー構造や複数梁構造、梁格子構造、針と板の組み合わせ等、公知の梁を使用した様々な構造を磁石を振動させる構造として使いうる。
【0048】
本発明の実施の一形態の発電機の発電プロセスについて、
図2の本発明の一実施の形態における発電機の斜視図を用いて説明する。
【0049】
台座12の上に任意の高さを持つ支持体11が置かれ、その上面に、台座12に平行して板バネ状に伸びる弾性体9の一方の端部付近が止めネジ10によって固定されている。このもう一方の端部は自由端で、端部付近に磁石8が配置されている。
【0050】
3個の発電部1.2.3は発電部固定枠13に固定され、静止位置の磁石8にそれぞれのコア7の一方の端面が近接するよう磁石8を囲むように配置されている。
【0051】
なお、3個の発電部1.2.3の固定位置は、磁石8の静止位置にコア7を近接するのが好ましいが、磁石8が振動している軌道の上死点と下死点の間であれば、いずれにも近接して固定位置とすることができる。
【0052】
磁石振動部4の磁石8は、片梁構造の自由端側にある重りとして作用する。磁石8にさらに別材料の重りを付けることも可能である。外部の運動エネルギーが運動エネルギー受容方向14に伝わると弾性体9は変形し、弾性力によって振動する。あるいは、荷重が除荷されて振動する。その結果、磁石8の位置は弾性体9の移動方向15のように振動し、磁石8の磁力を受けてコア7の磁性の向きが反転を繰り返しコイル6に電力が発生する。運動エネルギーが例えば地震や構造物の揺れであれば、本発電機の全体が揺れ、この揺れによって自由端側の重りとして、磁石8には重力に従って下にひかれる力と、慣性力によって上に押し上げられる力が働き、弾性体9は、バネ振動子としてふるまう。そして、磁石8には、周期を伴う振動が生じ、磁石8の磁力を受けて3個の発電部1.2.3のそれぞれのコア7の磁性の向きが反転を繰り返しそれぞれのコイル6に電力が発生する。図示しないが発生電力はそれぞれのコイル6に配線された線材によって、外部回路へ供給される。
【0053】
弾性体9は、振動する際に固有振動数を有している。運動エネルギーである外部振動を受けて発電機全体が振動した時、外部振動の周波数と弾性体9の固有振動数が近づくほど、弾性体9の振幅は大きくなり、発電部1.2.3に発生する発電量も大きくなる。発明者は、この2つの周波数が近づいて共振状態に至った時、振幅はもっとも大きくなり発電量は10倍以上にもなることを実験によって確認している。
【0054】
図示しないが、前述の磁石8あるいは追加する重りの重量や位置を変えることができるようにする固有振動周波数調整機構を弾性体9に加えることもできる。これにより弾性体9の固有振動周波数を外部振動の周波数に合わせて調整し、発電機の発電効率を高めることができる。さらに、共振による破壊を避けるためにも使用できる。固有振動周波数調整機構は、公知の技術であるので、図示しない。
【0055】
発電部1.2.3は、同じものであれば、ひとつの磁石8の振動で、発電部が一つの場合に比べ2.5倍の電力が、発明者の実験によって確認できた。さらに、発電部1.2.3のコア7の径、長さ、さらにコイル6の金属線の太さ、巻き数を別々とすることで、用途に応じた電力を供給することができる。
【0056】
これにより、発電部1.2を太い金属線を使い大電流が流れるようにして充電器へつなげ、発電部3は、細い金属線で巻き数を増やし、発生電圧を上げて、高感度のセンサー信号として利用するといった具合に、用途に応じて、電流、電圧、インピーダンスの違う複数の電力供給を一つの磁石振動部4で可能になる。
【0057】
本発明の実施の一形態の発電機では、
図1、
図2のように発電部の数を3つとしたが、これに限定されるものではない。磁石振動部4の磁石8を大きくしたり数を増やしたりして、発電部の数を更に増やすことも可能である。
【0058】
本発明の実施の一形態の発電機では、外部エネルギーとして最適なのは振動である。機械振動や橋梁、建物などの振動、鉄道、自動車等の振動を電力、あるいは電気信号に変えるのに最適である。
【0059】
また、図示しないが、外部エネルギーを使って打鍵装置を駆動し、磁石振動部4の任意の部分を打鍵して磁石8に振動を発生させ、前記プロセスによって発電することも可能である。
本発明の発電素子、発電機並びに発電装置、センサーは、一般的な材料を使用し、単純な構造と一般的な加工技術で生産でき、大量生産による小型化及び低価格化が可能である。そのことにより、特殊用途だけでなく、民生用製品として、広く利用される可能性を持っている。