(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171967
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】フードキャップ
(51)【国際特許分類】
G03B 11/04 20210101AFI20241205BHJP
【FI】
G03B11/04 C
G03B11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089352
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】神田 悠利
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 文哉
(72)【発明者】
【氏名】星 浩二
【テーマコード(参考)】
2H083
【Fターム(参考)】
2H083AA26
2H083DD13
(57)【要約】
【課題】 簡易な構成で光学フィルタを収納可能な収納部を有するフードキャップを提供する。
【解決手段】 レンズ鏡筒の花弁型フードに装着可能なフードキャップであって、装着されるレンズ鏡筒の第1レンズ面との間に光学フィルタを収納する収納部を有し、収納部は、筒部の第2の遮光壁と対応する位置にスライド蓋と、スライド蓋を略光軸垂直方向に案内する第1のカム機構を有し、第1のカム機構のカム溝は、スライド蓋を開放位置へと案内する開閉カム部と、スライド蓋を係止位置へと案内する係止カム部とを有し、スライド蓋が収納位置において、光学フィルタはスライド蓋に設けられた第1の保持面と収納部に設けられた第2の保持面とにより保持され、スライド蓋が係止位置において、光学フィルタは収納位置から突出されることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の第1の遮光壁と前記第1の遮光壁より光軸方向の突出長さが短い対向する一対の第2の遮光壁とを有する、レンズ鏡筒の花弁型フードに装着可能なフードキャップであって、
フードキャップは、天面を形成し略円盤形状のキャップ本体と、光軸垂直方向に花弁型フードを覆う筒部と、前記キャップ本体と装着される前記レンズ鏡筒の第1レンズ面との間に光学フィルタを収納する収納部と、を有し、
前記収納部は、前記筒部の前記第2の遮光壁と対応する位置にスライド蓋を備える
ことを特徴とするフードキャップ。
【請求項2】
前記収納部は前記スライド蓋を略光軸垂直方向に案内する第1のカム機構をさらに有し、
前記第1のカム機構のカム溝は、前記スライド蓋を開放位置へと案内する開閉カム部と、前記スライド蓋を係止位置へと案内する係止カム部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のフードキャップ。
【請求項3】
前記スライド蓋が収納位置において、前記光学フィルタは前記スライド蓋に設けられた第1の保持面と収納部に設けられた第2の保持面とにより保持され、
前記スライド蓋が係止位置において、前記光学フィルタは前記収納位置から突出される
ことを特徴とする請求項2に記載のフードキャップ。
【請求項4】
前記スライド蓋は、前記開閉カム部による案内時に前記光学フィルタと当接する押出爪部を有し、
前記光学フィルタは、前記スライド蓋の前記開放位置への摺動動作と連動して前記押出爪部と一体で移動する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のフードキャップ。
【請求項5】
前記第2の保持面は、前記係止カム部による案内時に前記光学フィルタと当接する支持爪部を有し、
前記光学フィルタは、前記スライド蓋の前記係止位置への摺動動作と連動することなく前記支持爪部と当接し、前記スライド蓋が前記係止位置において前記支持爪部により前記収納部からの突出が支持される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のフードキャップ。
【請求項6】
前記第1のカム機構はさらに、前記開閉カム部と略直交して前記開閉カム部と前記係止カム部とを接続し、前記スライド蓋を前記開放位置と傾斜位置との間で案内する遷移カム部を有し、
前記収納部はさらに前記開閉カム部と略平行のカム溝を備える第2のカム機構を有し、
前記スライド蓋は、前記遷移カム部による案内時に前記第2のカム機構のカムボスを支点として揺動動作が可能であり、
前記光学フィルタは、前記スライド蓋の前記傾斜位置への揺動動作と連動して前記押出爪部との当接から前記支持爪部との当接へと切り替わる
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のフードキャップ。
【請求項7】
前記スライド蓋の前記レンズ鏡筒と対向する面は傾斜面であり、
前記スライド蓋は前記傾斜面に作用するユーザの操作力を利用して前記開放位置から前記傾斜位置に移動する
ことを特徴とする請求項6に記載のフードキャップ。
【請求項8】
前記収納部は前記第2の遮光壁が緩挿されるフード受け部を有し、
前記フード受け部に前記第2の遮光壁が緩挿された状態において、前記スライド蓋の前記開放位置への摺動動作が規制される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフードキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタを収納することが可能なフードキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子に入る光量を減らすことができるNDフィルタや、夜間の光害を除去することができる光害カットフィルタ、被写体の描写を柔らかにするソフトフィルタなど、特殊な効果を得るための光学フィルタを交換レンズのマウント部に装着する場合がある。そのような光学フィルタはリアフィルタと呼ばれる。
【0003】
リアフィルタは、交換レンズの先端に装着するフロントフィルタに比べ、画質低下が少なく、低コストであり、交換レンズの先端のレンズ形状に左右されず装着可能であるというメリットがある。そのため、特に、先端レンズの径が大きい大口径レンズや、先端レンズのレンズ面が大きく突出する広角レンズで好まれる傾向がある。
【0004】
一方で、リアフィルタは、交換レンズのマウント部に設けたフィルタホルダに挿入して使用されるので、装着する交換レンズの種類に応じた専用の形状となる場合が多い。
【0005】
リアフィルタに関する技術として、例えば、特許文献1に開示の発明では、交換レンズの十分な光学有効径の大きさを確保しつつ、光学フィルタを交換するための挿抜作業の作業性を向上する技術が開示されている。
【0006】
ところで、リアフィルタのニーズが特に高い大口径広角レンズでは先端レンズのレンズ面が大きく突出するので、通常のレンズキャップだとレンズ面と接触してしまう。
【0007】
そこで、このようなレンズ形状の交換レンズに対しては、特許文献2の
図1に開示されているような、先端レンズ面を保護するために交換レンズ先端に花弁型に伸ばした花弁型フードと呼ばれる形状のフードを採用し、さらに、先端レンズ面と花弁型フードとを覆うように被せる形状のレンズキャップを用いることが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-92596号公報
【特許文献2】特開2009-175348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1には以下のような問題点があった。すなわち、交換レンズのリアフィルタとして用いられる光学フィルタはゼラチンフィルタなどの樹脂フィルムシートからなるものが多く、挿抜時以外にも使用していないときの折れ曲がりなどに対する注意を要するが、特許文献1に開示の発明はそのような課題に対する言及はなされていない。また、そのような取り扱いに注意を要する光学フィルタを持ち運ぶために、別途ケースを用意して持ち運ぶ必要があるという課題も存在する。
【0010】
また、特許文献2に開示されるようなレンズキャップでは、光軸方向に伸びる花弁型フード全体を覆う形状としているため、長い遮光壁と短い遮光壁、もしくは長い遮光壁と先端レンズ面との間にデッドスペースが生じやすいという課題が存在する。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、花弁型フードに被せて使用するフードキャップにおいて、光学フィルタを収納可能な収納部を有するフードキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明を実施のフードキャップは、対向する一対の第1の遮光壁と第1の遮光壁より光軸方向の突出長さが短い対向する一対の第2の遮光壁とを有する、レンズ鏡筒の花弁型フードに装着可能であって、フードキャップは、天面を形成し略円盤形状のキャップ本体と、光軸垂直方向に花弁型フードを覆う筒部と、キャップ本体と装着されるレンズ鏡筒の第1レンズ面との間に光学フィルタを収納する収納部と、を有し、収納部は、筒部の第2の遮光壁と対応する位置にスライド蓋を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、収納部はスライド蓋を略光軸垂直方向に案内する第1のカム機構をさらに有し、第1のカム機構のカム溝は、スライド蓋を開放位置へと案内する開閉カム部と、スライド蓋を係止位置へと案内する係止カム部とを有してもよい。
【0014】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、スライド蓋が収納位置において、光学フィルタはスライド蓋に設けられた第1の保持面と収納部に設けられた第2の保持面とにより保持され、スライド蓋が係止位置において、光学フィルタは収納位置から突出されるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、スライド蓋は、開閉カム部による案内時に光学フィルタと当接する押出爪部を有し、光学フィルタは、スライド蓋の開放位置への摺動動作と連動して押出爪部と一体で移動してもよい。
【0016】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、第2の保持面は、係止カム部による案内時に光学フィルタと当接する支持爪部を有し、光学フィルタは、スライド蓋の係止位置への摺動動作と連動することなく支持爪部と当接し、スライド蓋が係止位置において支持爪部により収納部からの突出が支持されるようにしてもよい。
【0017】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、第1のカム機構はさらに、開閉カム部と略直行して開閉カム部と係止カム部とを接続し、スライド蓋を開放位置と傾斜位置との間で案内する遷移カム部を有し、収納部はさらに開閉カム部と略平行のカム溝を備える第2のカム機構を有し、スライド蓋は、遷移カム部による案内時に第2のカム機構のカムボスを支点として揺動動作が可能であり、光学フィルタは、スライド蓋の傾斜位置への揺動動作と連動して押出爪部との当接から支持爪部との当接へと切り替わるようにしてもよい。
【0018】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、スライド蓋のレンズ鏡筒と対向する面は傾斜面であり、スライド蓋は傾斜面に作用するユーザの操作力を利用して開放位置から傾斜位置に移動するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明を実施のフードキャップは、好ましくは、収納部は第2の遮光壁が緩挿されるフード受け部を有し、フード受け部に第2の遮光壁が緩挿された状態において、スライド蓋の開放位置への摺動動作が規制されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明を実施のフードキャップによれば、花弁型フードに被せて使用するフードキャップに生じるデッドスペースを活用して光学フィルタを収納でき、さらに、光学フィルタの取り出しが容易なフードキャップを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を実施のフードキャップ100及び、フードキャップ100が装着される花弁型フード210を有する交換レンズ200の外観斜視図である。
【
図2】
図2aは収納部300に収納される光学フィルタFLの形状を説明するための正面図、
図2bは光学フィルタFLが交換レンズ200のフィルタホルダ400に保持された状態を説明するための斜視図である。
【
図3】フードキャップ100の交換レンズ200と対向する面の正面図である。
【
図4】フードキャップ100を交換レンズ200に装着した状態での
図1のA-A矢視断面図である。
【
図5】
図5aは収納部300及び光学フィルタFLの上面展開斜視図、
図5bはスライド蓋310の裏面を説明するための斜視図である。
【
図6】
図3のB-B矢視断面図に各カム溝341、351を破線で付加的に図示したものである。
【
図7】
図3のC-C矢視断面図に蓋側爪部360を破線で付加的に図示したものであり、スライド蓋310の各ポジション及びそれに付随する光学フィルタFLの位置がそれぞれ異なっている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態であるフードキャップ及び、フードキャップが装着される花弁型フードを有する交換レンズが示されている。本図は、本発明を実施のフードキャップ及び交換レンズの一部を物体側から見た外観斜視図であり、フードキャップを交換レンズに装着する前の状態を示している。
【0024】
フードキャップ100は、交換レンズ200に装着した状態で被写体側の面を構成する円盤形状のキャップ本体110と、キャップの側面を構成し花弁型フード210を覆う筒部120とで、主に構成されている。また、本図では不図示であるが、装着される交換レンズ200のレンズ光学系LNの先頭面との間に光学フィルタFLを収納する収納部300を有している。
【0025】
フードキャップ100はさらに、交換レンズ200と装着するための不図示の係止機構も有している。フードキャップ100の詳しい構成は後述する。
【0026】
交換レンズ200は、上述したように花弁型フード210を有する円筒形状をしたレンズ鏡筒であり、レンズ光学系LNと光学系の合焦位置を調節するフォーカス環220とを有している。花弁型フード210は、被写体方向の長さの異なる2対の遮光壁である遮光長壁230と遮光短壁240を有している。また、交換レンズ200は、バヨネット機構を介して不図示のカメラ本体と装着可能である。
【0027】
図2aは上述したフードキャップ100の収納部300に収納される光学フィルタFLの形状を説明するための正面図であり、
図2bは光学フィルタFLが交換レンズ200末端に設けたフィルタホルダ400に保持された状態を説明するための斜視図である。
【0028】
光学フィルタFLは所望の機能を有するフィルム等で形成されたリアフィルタであり、この光学フィルタFLを交換レンズ200に装着することにより画質や光量の調節を行うことが可能となる。光学フィルタFLは挿入部411と把持部412とを有しており、
図2aに示す所定の形状をしている。これらの挿入部411と把持部412とを後述するフィルタホルダ400に係合させることで、光学フィルタFLは交換レンズ200に保持される。
【0029】
図2bに示すように、交換レンズ200のフィルタホルダ400は、マウント部250近傍の開口部外周に被写体光線を遮光することがないように設けられている。フィルタホルダ400は係合穴421と係止爪422と当て面430とを有しており、光学フィルタFLの挿入部411と把持部412とをそれぞれ係合させることにより光学フィルタFLは交換レンズ200に対して保持される。係止爪422はスライド可能に構成されており、退避位置では光学フィルタFLと干渉しない位置に退避可能であり、係止位置では光学フィルタFLを挟持することで係止可能となっている。
【0030】
すなわち、ユーザはピンセットや自身の指を用いて把持部412をつまんで光学フィルタFLを持ち上げ、光学フィルタFLの挿入部411をフィルタホルダ400の係合穴421に差し込む。次に、光学フィルタFLをフィルタホルダ400の当て面430に接触させ、退避位置にある係止爪422を係止位置までスライドさせる。これにより、光学フィルタFLは係止爪422により挟持されるので、所定の位置に保持される。
【0031】
図3は、フードキャップ100の交換レンズ200と対向する面の正面図である。以降では、便宜上本図に示す面をフードキャップ100の上面と呼ぶ場合がある。
【0032】
フードキャップ100の上面には、光学フィルタFLを収納する収納部300が設けられている。収納部300はフードキャップ100の半径方向にスライド可能なスライド蓋310を備えており、このスライド蓋310を開閉することでユーザは光学フィルタFLの収納や取出しを行う。スライド蓋310を含むフードキャップ100上面は、装着時に対向するレンズ光学系LN先頭面と接触しないようすり鉢状の傾斜面311を備えた形状をしている。
【0033】
スライド蓋310は、上述した収納部300の傾斜面311の一部と、フードキャップ100の筒部120の一部とを構成している。ユーザはこの傾斜面311に指を押し当てて力をかけることで、スライド蓋310をスライドさせて開くことが可能となる。また、傾斜面311には凸部312が設けられており、これが滑り止めとして機能することでユーザがスライド操作をより確実に行うことができる。
【0034】
フードキャップ100の外縁部には、装着される交換レンズ200の花弁型フード210を構成する遮光長壁230と遮光短壁240とが緩挿される長壁受け部130と短壁受け部140とが設けられている。本図からも分かるように、短壁受け部140はその一部がスライド蓋310の一部により構成されている。
【0035】
図4はフードキャップ100を交換レンズ200に装着した状態での
図1のA-A矢視断面図であり、本発明の説明に不要な構造は適宜省略している。本図に示すように、光学フィルタFLを収納する収納部300はキャップ本体110と交換レンズ200のレンズ光学系LN先頭面との間に設けられている。
【0036】
本実施例において、光学フィルタFLは、主にキャップ本体110側に設けられた本体側保持面320とスライド蓋310側に設けられた蓋側保持面330との間に保持される。ここでは面で保持するとしているが、光学フィルタFLが脱落しない程度に肉抜き等の加工を行うことができる。本図では示されていないが、収納部300はさらにスライド蓋310の摺動を担うカム機構も備えている。
【0037】
また、上述したように、花弁型フード210の遮光短壁240は短壁受け部140に緩挿される。本図においてスライド蓋310は上下方向にスライドするように構成されているが、フードキャップ100を交換レンズ200に装着した状態でスライド蓋310が開く方向にスライドしたとしても、短壁受け部140に緩挿されている遮光短壁240と干渉してしまい開くことは不可能となっている。このような構成とすることにより、フードキャップ100を交換レンズ200に装着した状態ではスライド蓋310にロックがかかり、誤操作などによる光学フィルタFLの脱落を防ぐことが可能となる。
【0038】
なお、フードキャップ100と花弁型フード210との装着は、一般的な公知技術を用いることができる。例えば、テレンプを筒部120の内周面に貼り付け、緩挿される花弁型フード210外周面との間に適切な摩擦力を生じさせて装着状態を維持するようにすることができる。
【0039】
次に、光学フィルタFLを収納する収納部300について説明する。
図5aは収納部300及び光学フィルタFLの上面展開斜視図であり、
図5bはスライド蓋310の裏面を説明するための斜視図である。
【0040】
収納部300は、スライド蓋310と、光学フィルタFLを保持するための蓋側保持面330及び本体側保持面320の他に、2つのカム機構A及びカム機構Bと、バネ313と、蓋側爪部360と、本体側爪部370と、を有している。
【0041】
カム機構A及びBは、それぞれカム溝341とカムフォロア345、カム溝351とカムフォロア352から構成されている。スライド蓋310に設けられた各カムフォロア345、352は、それぞれキャップ本体110に設けられた各カム溝341、351に緩挿され、摺動可能となっている。これらのカム機構により、スライド蓋310は収納位置、開放位置、傾斜位置、及び係止位置に移動することができる。
【0042】
2つのバネ313は一端がカムフォロア352に係止され、他端がキャップ本体110に設けられる不図示のボスに係止されている。スライド蓋310はこれらのバネ313の復元力により収納位置又は係止位置に保持される。
【0043】
スライド蓋310の光軸側の辺縁部には蓋側爪部360が設けられており、この蓋側爪部360とほぼ対向するようにして本体側保持面320には本体側爪部370が設けられている。蓋側爪部360及び蓋側保持面330には本体側爪部370との干渉を避けるようにスリット314が設けられている。後述するように、光学フィルタFLは、収納位置において蓋側保持面330と本体側保持面320と蓋側爪部360とで保持され、係止位置において本体側保持面320と本体側爪部370とで保持される。
【0044】
また、蓋側爪部360は、スライド蓋310が収納位置から開放位置にスライドする際に光学フィルタFLと当接し、開放位置において光学フィルタFLを収納部300から突出させる押出部としても機能する。本体側爪部370は、スライド蓋310が係止位置においてユーザが光学フィルタFLを外部から収納部300内に挿入する際に当て面としても機能する。スライド蓋310内周面の一部は、外部から挿入された光学フィルタFLを収納部300内に移動させる際に当て面部315として機能する。
【0045】
次に、上述した各カム機構A、Bによるスライド蓋310の動きについて説明する。
図6は
図3のB-B矢視断面図であり、各カム機構A、Bとスライド蓋310との位置関係を説明するため各カム溝341、351を破線で付加的に図示したものである。本図において画面上がフードキャップ100の上面であり、交換レンズ200が装着される面である。
【0046】
本図に示すようにカム溝341は概ねV字の形状をしており、詳しくは、キャップ本体110の半径方向と平行に伸びる開閉カム部342、フードキャップ100の下面方向に所定の角度を有し半径方向に伸びる係止カム部343、そして、これらのカム部を接続し光軸方向に伸びる遷移カム部344で構成されている。
【0047】
一方、カム溝351はキャップ本体110の半径方向と平行に伸びるカム溝のみで構成されている。
【0048】
上述したバネ313の復元力によりスライド蓋310には、開閉カム部342において常に収納位置に戻ろうとする付勢力が働き、また、係止カム部343において常に係止位置に戻ろうとする付勢力が働く。
【0049】
なお、以降では、カム溝341をVカム341、カム溝351を直線カム351とも呼ぶ場合がある。また、カムフォロア345をVカムフォロア345、カムフォロア352を直線カムフォロア352とも呼ぶ場合がある。
【0050】
上述したように、各カム機構A、Bによる摺動により、スライド蓋310は収納位置、開放位置、傾斜位置、及び係止位置に移動することができる。以降では、
図7に示す各断面図に基づいてスライド蓋310のこれらの移動と、それに伴う光学フィルタFLの動きを詳しく説明する。
図7aは
図3のC-C矢視断面図であり、光学フィルタFLとスライド蓋310との位置関係を説明するため蓋側爪部360を破線で付加的に図示したものである。
図7b~7dも断面位置については
図7aと同様に
図3のC-C矢視断面図であるが、スライド蓋310のポジション及びそれに付随する光学フィルタFLの位置が異なっている。
【0051】
まず、スライド蓋310の収納位置から開放位置への移動を説明する。
図7aは、スライド蓋310が収納位置にある状態を示している。本図では省略しているが、本図のポジションは、Vカムフォロア345がVカム341の開閉カム部342の光軸側末端に位置し、直線カムフォロア352が直線カム351の光軸側末端寄りの中間位置に位置していることに対応している。このポジションは、フードキャップ100の通常使用可能な状態であり、ユーザはこの状態のフードキャップ100を交換レンズ200に装着したり撮影のために外してバッグ等に保管する。
【0052】
同様に、
図7bは、スライド蓋310が開放位置にある状態を示しており、本図のポジションは、Vカムフォロア345がVカム341の開閉カム部342と遷移カム部344との接続点に位置し、直線カムフォロア352が直線カム351の外周側末端に位置していることに対応している。このポジションは上述したように、バネ313によってスライド蓋310に対して収納位置に戻るような付勢力が働いている状態に対応している。
【0053】
ユーザが収納位置から開放位置へとスライド蓋310を開こうとする場合、ユーザは傾斜面311に設けられた凸部312に例えば親指の腹を当て、スライド蓋310が開放位置の方向にスライドするように力をかけることで押し開くことができる。詳しくは、ユーザにより傾斜面311の凸部312に作用される操作力は、スライド蓋310を外周側に移動させようとする水平分力とスライド蓋310を下面側に移動させようとする垂直分力とに分けることができる。収納位置から開放位置への移動に用いられる各カム溝はいずれも半径方向(水平方向)に伸びているので、スライド蓋310は光軸方向に移動することなく水平分力によって半径方向にのみ移動される。
【0054】
ユーザによる外力がバネ313による付勢力を上回ると、スライド蓋310はVカム341の開閉カム部342と直線カム351に案内されて外周側にスライドされ、開放位置で停止する。スライド蓋310が開放位置に達すると、
図7bに示すように不完全な状態ではあるものの、キャップ本体110の外周面とスライド蓋310の下面との間に開口部380が形成される。
【0055】
光学フィルタFLは、
図7aの収納位置においては、上述したように、本体側保持面320と蓋側保持面330と蓋側爪部360とで形成される空間に保持されている。ユーザ操作によりスライド蓋310が開放位置方向にスライドされると、光学フィルタFLは蓋側爪部360に当接し、一体となって開放位置方向に押し出される。そして、スライド蓋310が開放位置に到達すると、光学フィルタFLはその一部が不完全な状態の開口部380から外部に露出した状態となる。この一連の動作において本体側爪部370はスリット314内を通過しており、光学フィルタFLはと接触することはない。
【0056】
次に、
図7bcを用いてスライド蓋310の開放位置から傾斜位置への移動を説明する。
図7cは、スライド蓋310が傾斜位置にある状態を示しており、本図のポジションは、Vカムフォロア345がVカム341の遷移カム部344と係止カム部343との接続点に位置し、直線カムフォロア352が引き続き直線カム351の外周側末端に位置していることに対応している。
【0057】
ユーザによりスライド蓋310がスライドされて開放位置へと到達すると、Vカムフォロア345は遷移カム部344の一端に位置する一方、直線カムフォロア352は直線カム351の一端に位置することとなる。上述したように遷移カム部344は光軸方向に伸びるカム溝であるため、スライド蓋310は開放位置において直線カムフォロア352を支点として揺動動作が可能な状態となる。
【0058】
上述したように、ユーザによるスライド操作中、スライド蓋310には操作力として半径方向の水平分力に加えて光軸方向の垂直分力が作用している。そのため、Vカムフォロア345が開閉カム部342と遷移カム部344との接続点に到達すると、Vカムフォロア345は操作力の垂直分力により滑らかに遷移カム部344に進入し、遷移カム部344と係止カム部343との接続点である傾斜位置にまで一気に到達する。
【0059】
ユーザ操作によりスライド蓋310が直線カムフォロア352を支点にして傾斜位置まで揺動動作されると、蓋側爪部360が下降して本体側爪部370がスリット314内に進入する。さらに下降を続けると蓋側爪部360と本体側爪部370との光軸方向の位置(高さ)が逆転して蓋側爪部360が本体側爪部370よりも低くなり、本体側爪部370が光学フィルタFLと接触する。これにより、開放位置において蓋側爪部360により開口部380から外部に露出された光学フィルタFLを支持する部位が蓋側爪部360から本体側爪部370へと切り替わり、光学フィルタFLは本体側保持面320と蓋側保持面330と本体側爪部370とで保持されることになる。
【0060】
なお、開口部380はスライド蓋310が開放位置から傾斜位置へと移動した後もまだ不完全な状態のままであり、光学フィルタFLは露出してはいるものの取り出しやすい状態にはなっていない。
【0061】
次に、
図7cdを用いてスライド蓋310の傾斜位置から係止位置への移動を説明する。
図7dは、スライド蓋310が係止位置にある状態を示しており、本図のポジションは、Vカムフォロア345がVカム341の係止カム部343の光軸側末端に位置し、直線カムフォロア352が直線カム351の光軸側末端に位置していることに対応している。
【0062】
上述したように、スライド蓋310にはバネ313の復元力により光軸方向に移動しようとする付勢力が常にかかっている。ユーザによりスライド蓋310が揺動動作されて傾斜位置へと到達するとVカムフォロア345は係止カム部343に緩挿されるので、ユーザが傾斜面311にかける力を弱めたり完全に抜くことでスライド蓋310はバネ313の復元力によって係止カム部343により案内され、係止位置で停止する。
【0063】
上述したように、係止カム部343はフードキャップ100の下面方向に向かって若干角度が付けられているため、スライド蓋310は傾斜位置から係止位置に進むにつれて下面方向に沈み込むように移動する。この動作により、スライド蓋310とキャップ本体110との間に形成される開口部380が完全な開口状態となる。
【0064】
傾斜位置において本体側爪部370により支持された光学フィルタFLは、スライド蓋310が係止位置へスライドしても本体側爪部370との当接が継続されており、光学フィルタFLの外周側への突出量は変化していない。しかしながら、上述したようにスライド蓋310が沈み込むように後退して開口部380が大きくなるため、光学フィルタFLの相対的な突出量も大きくなる。これにより、ユーザはピンセットや自身の指を用いて容易に光学フィルタFLをつまんで持ち上げることが可能となる。
【0065】
次に、光学フィルタFLを外部から収納部300に収納する流れについて説明する。まず、ユーザは上述した流れでスライド蓋310をスライドさせて収納位置から係止位置へと移動させ、収納部300の開口部380を完全に開く。
【0066】
ユーザはピンセットや自身の指を用いて、使用していた交換レンズ200のフィルタホルダ400等から光学フィルタFLをつまみ上げ、収納部300の開口部380に挿入する。挿入された光学フィルタFLは本体側保持面320又は蓋側保持面330に沿って奥に滑り込み、本体側爪部370に突き当たる。これで
図7dに示したのと同様のポジションとなる。
【0067】
次にユーザは、光学フィルタFLを収納部300内に収納するために、スライド蓋310を係止位置から傾斜位置・開放位置を経由して収納位置まで移動させる。スライド蓋310を収納位置から開放位置へスライドさせるときと同様に、ユーザは傾斜面311の凸部312に例えば親指の腹を押し当て、バネ313の復元力を上回る力をかけることでスライド蓋310を係止位置から外周側にスライドさせる。このときの動きは係止カム部343に沿った動きである。
【0068】
傾斜位置では上述した直線カムフォロア352を支点にした揺動動作が行われ、ユーザの操作力によりスライド蓋310は傾斜位置から開放位置に滑らかに移動する。この動きに連動して、スリット314を介して光学フィルタFLを支えていた本体側爪部370が退避して本体側爪部370よりも蓋側爪部360の高さが高くなり、光学フィルタFLは蓋側爪部360により持ち上げられながら一体となって開放位置に達する。
【0069】
開放位置に到達したスライド蓋310のVカムフォロア345は開閉カム部342に緩挿しているので、ユーザが傾斜面311にかけていた力を弱めることでスライド蓋310はバネ313の復元力により開閉カム部342に沿って案内され、収納位置で停止する。このとき光学フィルタFLは収納位置へと移動するスライド蓋310の当て面部315と当接し、一体となって収納位置に達する。以上の動作によって、光学フィルタFLの収納部300への収納が完了する。
【0070】
以上で説明したように、本実施例に記載のフードキャップ100によれば、フードキャップ100とレンズ光学系LNとの間に生じる空間に光学フィルタFLの収納部300を設けることができるので、デッドスペースを有効に活用することができる。また、光学フィルタFLが収納部300から突出され、さらにその突出が維持されるので取出しが容易に行うことができる。また、スライド蓋310が開放位置から係止位置へと後退することで開口部380を大きくできるので、取出しが容易に行うことができる。また、スライド蓋310に設けた短壁受け部140に花弁型フード210を緩挿させることでスライド移動が阻害されるので、誤操作などによる光学フィルタFLの脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 フードキャップ、110 キャップ本体、120 筒部、130 長壁受け部、140 短壁受け部、200 交換レンズ、210 花弁型フード、220 フォーカス環、230 遮光長壁、240 遮光短壁、250 マウント部、300 収納部、310 スライド蓋、311 傾斜面、312 凸部、313 バネ、314 スリット、315 当て面部、320 本体側保持面、330 蓋側保持面、341 カム溝(Vカム)、342 開閉カム部、343 係止カム部、344 遷移カム部、345 カムフォロア(Vカムフォロア)、351 カム溝(直線カム)、352 カムフォロア(直線カムフォロア)、360 蓋側爪部、370 本体側爪部、380 開口部、400 フィルタホルダ、411 挿入部、412 把持部、421 係合穴、422 係止爪、430 当て面、LN レンズ光学系、FL 光学フィルタ