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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017197
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両用バッテリの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/651 20140101AFI20240201BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240201BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240201BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/625
H01M10/6563
B60K1/04 Z
B60K11/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119688
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 遼
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC12
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC14
3D235HH07
5H031AA09
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、バッテリモジュール間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することが可能な車両用バッテリの冷却構造を提供する。
【解決手段】車両用バッテリの冷却構造は、車両前後方向に沿って複数のバッテリモジュールが配列されたバッテリ集合部と、車両前後方向におけるバッテリ集合部よりも前方側に位置し、車両走行中の外気が吹き込む吹込口と、熱交換器と、バッテリ集合部と熱交換器との間で、バッテリモジュールを冷却するための熱媒体が循環する冷却流路とを備える。バッテリ集合部は、熱媒体によって、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュールほど、より冷却される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用バッテリの冷却構造であって、
車両前後方向に沿って複数のバッテリモジュールが配列されたバッテリ集合部と、
車両前後方向における前記バッテリ集合部よりも前方側に位置し、車両走行中の外気が吹き込む吹込口と、
熱交換器と、
前記バッテリ集合部と前記熱交換器との間で、前記バッテリモジュールを冷却するための熱媒体が循環する冷却流路とを備え、
前記バッテリ集合部は、
前記熱媒体によって、車両前後方向の後方に位置する前記バッテリモジュールほど、より冷却される
ことを特徴とする車両用バッテリの冷却構造。
【請求項2】
前記冷却流路を部分的に構成する流路板が、前記バッテリモジュールに対峙して設けられ、
前記流路板は、車両前後方向の後方に位置するほど流路体積が大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリの冷却構造。
【請求項3】
前記冷却流路を部分的に構成する流路板が、前記バッテリモジュールに接触して設けられ、
前記流路板は、熱伝導性部材によって形成され、車両前後方向の後方に位置するほど前記バッテリモジュールとの接触面積が大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリの冷却構造。
【請求項4】
前記熱交換器は、車両前後方向における前記バッテリ集合部よりも後方に位置し、
車両前後方向における前記バッテリ集合部と前記熱交換器との間に、車両走行中の外気が吹き込む副吹込口を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリの冷却構造。
【請求項5】
ファンを備え、
前記ファンの回転駆動により、前記吹込口に外気が吹き込む
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用バッテリの冷却構造。
【請求項6】
ファンを備え、
前記ファンの回転駆動により、前記吹込口及び前記副吹込口に外気が吹き込む
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用バッテリの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源としてバッテリパックを搭載した車両が知られている。バッテリパックは、充放電時のバッテリモジュールの温度上昇が比較的顕著であるため、通常、温度上昇による劣化を回避するための冷却手段を設けている。このような冷却手段は、バッテリパック内の複数個のバッテリモジュール間で温度差が生じやすい。そのため、複数個のバッテリモジュール間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制するようにした技術がある。
【0003】
例えば特許文献1には、複数個の二次電池を冷却する冷却機構として、第一の冷媒経路と第二の冷媒経路とを互いに対抗流としたものが記載されている。この第一の冷媒経路と第二の冷媒経路とは、それぞれ異なる外部冷媒経路と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-82353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却機構は、冷媒経路を含む構成が複雑である。このような冷却機構をバッテリパックの筐体(ケース)内に設定するには、バッテリパックの重量が大きくなる上、製造コストも大きくなる。
【0006】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであり、簡易な構成で、バッテリモジュール間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することが可能な車両用バッテリの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用バッテリの冷却構造は、車両前後方向に沿って複数のバッテリモジュールが配列されたバッテリ集合部と、車両前後方向における前記バッテリ集合部よりも前方側に位置し、車両走行中の外気が吹き込む吹込口と、熱交換器と、前記バッテリ集合部と前記熱交換器との間で、前記バッテリモジュールを冷却するための熱媒体が循環する冷却流路とを備え、前記バッテリ集合部は、前記熱媒体によって、車両前後方向の後方に位置する前記バッテリモジュールほど、より冷却されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で、バッテリモジュール間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することが可能な車両用バッテリの冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のバッテリ冷却構造を搭載した車両の例を示す模式側面図である。
図2】第1実施形態のバッテリ冷却構造の例を示す模式側面図である。
図3】第1実施形態のバッテリ冷却構造の例を示す模式上面図である。
図4】第1実施形態のバッテリ冷却構造の変形例を示す模式上面図である。
図5】第2実施形態のバッテリ冷却構造の例を示す模式側面図である。
図6】第2実施形態のバッテリ冷却構造の例を示す模式上面図である。
図7】第1実施形態のバッテリ冷却構造の変形例を示す模式上面図である。
図8】第1実施形態のバッテリ冷却構造の変形例を示す模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の構成については、説明を省略する。
【0011】
各図において、矢印Xで示す方向(以下「X方向」ともいう)は、車両Aの車両前後方向における前方方向(車両進行方向)であり、矢印Yで示す方向(以下「Y方向」ともいう)は、車両Aの車幅方向(左右方向)における右方向であり、矢印Zで示す方向(以下「Z方向」ともいう)は、車両Aの上下方向(高さ方向)における上方向である。X方向の反対方向は、車両Aの車両前後方向における後方方向(車両後退方向)であり、Y方向の反対方向は、車両Aの車幅方向における左方向であり、Z方向の反対方向は、車両Aの上下方向(高さ方向)における下方向である。
【0012】
各図において、前方側は、X方向により寄った側(より前方方向側)であり、後方側は、X方向の反対方向により寄った側(より後方方向側)である。右側は、Y方向により寄った側(より右方向側)であり、左側は、Y方向の反対方向により寄った側(より左方向側)である。上側は、Z方向により寄った側(より上方向側)であり、下側は、Z方向の反対方向により寄った側(より下方向側)である。また、前後、左右、上下は、車両Aの車両前後方向の前後、車両Aの車幅方向の左右、車両Aの上下方向(高さ方向)の上下をいう。
【0013】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係る車両用バッテリの冷却構造(バッテリ冷却構造)の第1実施形態(第1実施形態)について説明する。図1に、第1実施形態のバッテリ冷却構造1を搭載した車両Aを示す。車両Aは、バッテリを電源とする車両の一例として電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。なお、車両Aは、これに限定されず、ハイブリッド車、燃料電池車等の電源としてバッテリを有する他の何れの車両であってもよい。
【0014】
図1に示すように、車両Aの車体2内のフロアパネル3上には、運転席を含む座席4が設けられている。車体2内には、運転用のハンドル5、図示しないエンジン、モータ、制御装置等が設けられている。バッテリ冷却構造1は、車体2の最前部に位置するフロントグリル開口部(入気口)11と、熱交換器13及びポンプ14と、バッテリパック(バッテリ収容部)15と、底部(アンダーカバー)12に形成された吹込口16と、冷却流路17とを備える。熱交換器13及びポンプ14は、前方部6内の底部12上に設置されている。図1及び図2に示すように、バッテリパック15は、フロアパネル3の下方(すなわち床下)の底部12上に搭載される。バッテリパック15の筐体(ケース)18は、底部12に図示しないボルト等によって固定されている。
【0015】
図2及び図3の実線矢印に示すように、バッテリ冷却構造1は、車両前後方向の前側のフロントグリル開口部(入気口)11から外気を取り入れ、車両前後方向の後側からその外気を排気する。底部12において、吹込口16は、車両前後方向におけるバッテリパック(バッテリ収容部)15よりも前方側に形成されている。
【0016】
冷却流路17は、配管状に形成されており、前方部6内の熱交換器13とバッテリパック(バッテリ収容部)15内の後述のバッテリ集合部200とを繋いでいる。
【0017】
熱交換器13は、冷却流路17を介してポンプ14と繋がっている。ポンプ14は、冷却流路17を介して流路板231と繋がっている。また、熱交換器13は、冷却流路17を介して流路板233と繋がっている。
【0018】
熱交換器13は、一例としてラジエータである。熱交換器(ラジエータ)13は、その前面がフロントグリル開口部(入気口)11側に向き、その背面がバッテリパック15側に向くように配置されている。なお、熱交換器13が配置される姿勢は、これに限定されず、適宜変更してよい。
【0019】
バッテリパック15は、その筐体(ケース)18内に、バッテリ集合部200を収容する。バッテリ集合部200は、複数のバッテリモジュール20を車両前後方向に沿って配列してなる。バッテリパック15の筐体18は、その前後方向の長さが左右方向の長さよりも長い箱状に形成されている。筐体18の前側面には前開口部21が形成され、筐体18の後側面には後開口部22が形成されている。
【0020】
車両Aの走行中、フロントグリル開口部(入気口)11から車体2の前方部6内に吹き込まれた走行中の外気(走行風)は、熱交換器(ラジエータ)13の前面側に当たり、図示しない熱交換器13内部のコア部(ラジエータコア)を通過して、熱交換器13の背面側へと抜ける。その際に、熱交換器13では、走行風と熱媒体との間で熱交換が行われ、熱媒体が冷却されるようになっている。なお、「走行中」とは、車両Aがその前方方向(車両進行方向、X方向)へと走行している最中であることをいう。
【0021】
フロントグリル開口部(入気口)11から車体2の床下と底部(アンダーカバー)12との間の空間内に吹き込まれて熱交換器13を通過した走行風と、吹込口16からこの空間内に吹き込まれた走行風は、共に車両後退方向へと流れる。そして、バッテリパック15の前開口部21から筐体18内に流入した走行風は、バッテリモジュール20に接触しながら流れ、後開口部22から筐体18外へ流出して車両Aの外部へと排出される。
【0022】
ポンプ14は、作動すると冷却流路17内に熱媒体を循環させる。ポンプ14は、一例としてウォーターポンプであるが、これに限定されず何れのポンプであってもよい。熱媒体は、一例として水であるが、これに限定されず他の液体であってもよく、例えばクーラント(冷却水)であってもよい。
【0023】
ポンプ14が作動すると、熱交換器(ラジエータ)13で冷却された熱媒体の水は、冷却流路17内を図3の点線矢印に示す方向に流動し、バッテリパック15の筐体18内に流れ込む。この筐体18内において、熱媒体の水は、バッテリモジュール20からの伝熱によって温められる。筐体18内で温められた水は、点線矢印に示すように、冷却流路17を介して熱交換器13へと戻る。
【0024】
図2及び図3に示すように、バッテリモジュール20は、バッテリケース20-1内に6個のバッテリセル20-2を収容してなる。バッテリケース20-1は、内外に通気可能な構造となっている。このバッテリケース20-1内において、バッテリセル20-2の底面以外の周囲は、バッテリケース20-1との間に隙間を有している。これら6個のバッテリセル20-2は、互いに間隔を隔てて、走行風の流れに対して略直交する方向(すなわち左右方向)に並列されている。
【0025】
図3に示すように、バッテリパック15の筐体18内には、このようなバッテリモジュール20が、車両前後方向に沿って間隔を隔てて3個配列されている。つまり、バッテリパック15には、18個のバッテリセル20-2が、互いに通気可能に間隔を隔てて配置されている。
【0026】
車両Aの走行中、バッテリパック15の筐体18内に走行風が吹き込むと、その走行風は、並列するバッテリセル20-2同士の隙間や、バッテリセル20-2とバッテリケース20-1との間の隙間等を流れ、車両後退方向に吹き抜けていく。バッテリセル20-2は、この走行風の通過によって冷却される。
【0027】
バッテリセル20-2は、一例として、全固体電池セル(全固体バッテリセル)である。全固体電池セルは、正極と負極それぞれの活物質の粉体と固体電解質の粉体を混ぜて固めてなるものであり、走行風の温度範囲で温度調節が可能なバッテリである。なお、バッテリセル20-2は、これに限定されず、他のバッテリのセルであってもよく、例えばリチウムイオンバッテリセルであってもよい。
【0028】
また、バッテリモジュール20において左右方向に配列されるバッテリセル20-2の個数はこれに限定されず、単数又は複数の何れの数であってもよい。また、筐体18内のバッテリ集合部200を構成するバッテリモジュール20の前後方向の配列数はこれに限定されず、単数又は複数の何れの数であってもよい。
【0029】
冷却流路17内には、バッテリ集合部200と熱交換器13との間でバッテリモジュール20を冷却するための熱媒体である水が循環する。バッテリパック15の筐体18内には、冷却流路17を部分的に構成する流路板23が設けられている。冷却流路17の流路断面の断面積は、何れの断面でも略同一であるが、これに限定されず、異なる断面の箇所で非同一であってもよい。
【0030】
流路板23のプレート部24には、冷却流路17を部分的に構成する管状の空間が形成されている。このプレート部24に形成された冷却流路17は、複数並列になるように蛇行(屈曲)して形成されている。
【0031】
流路板23は、図2及び図3に示すように、バッテリモジュール20に対峙して設けられている。具体的に、流路板23は、バッテリモジュール20の下面に接触している。バッテリパック15の筐体18内では、このような流路板23が車両前後方向に沿って3個配列されている(流路板231~233)。なお、流路板23は、バッテリモジュール20の下面でなく他の面に対峙して接触するように設置してもよい。
【0032】
熱交換器(ラジエータ)13には、バッテリパック15で温められた水が冷却流路17を通じて流入する。熱交換器13は、冷却流路17を通じて流入した熱媒体の水を、フロントグリル開口部(入気口)11を介して吹き付けられた走行風で熱交換して冷却する。熱交換器13にて冷却された水は、冷却流路17を通じてバッテリパック15の筐体18内の流路板23の内部に流入する。
【0033】
なお、熱交換器13は、ラジエータに代えて他の構成であってもよい。車両Aは、ヒートポンプ式のエアコンシステムを搭載するが、熱交換器13は、このエアンシステムが備える吸熱器(蒸発器)であってもよい。熱交換器13がこの吸熱器である場合、車両Aは、例えば停車時や徐行運転時等の走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、冷却流路17を介して熱交換器13に流入した水を十分に冷却することができる。
【0034】
吹込口16に吹き込まれた走行風は、図2及び図3の実線矢印に示すように、前開口部21を介してバッテリパック15の筐体18内に勢いよく流入する。筐体18内のバッテリモジュール20の内、車両前後方向の最も前方側に位置する流路板231上のバッテリモジュール20は、筐体18内に流入した走行風が直接吹き付けられる。
【0035】
このように、車体2の床下と底部12との間の空間内において、走行風は、バッテリモジュール20よりも前方側から取り入れられるため、車両前後方向の最も前方に位置するバッテリモジュール20には、走行風が十分に当たる。このため、バッテリパック15の筐体18内の前後方向の最も前方側に位置する流路板231上のバッテリモジュール20は、筐体18内に流入した走行風によって最も冷却される。
【0036】
その一方、それよりも後方に位置するバッテリモジュール20には、その前方のバッテリモジュール20が壁となり、走行風が十分に当たらない。また、走行風は、車両後退方向(X方向と反対方向)に進むにつれ、バッテリモジュール20からの伝熱によって温度が上昇し易くなり、冷却効果がより小さくなる虞がある。これらの点から、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20ほど、走行風によって冷却され難くなる。
【0037】
また、熱交換器13にて冷却された熱媒体の水は、バッテリパック15の筐体18内を車両後退方向へと流れるにつれ、その上に位置するバッテリモジュール20からの伝熱によって温度が上昇し易くなり、冷却効果が小さくなる虞がある。
【0038】
これらの点に起因して車両前後方向の後方のバッテリモジュール20の温度がより上昇することを抑制し、車両前後方向におけるバッテリモジュール20間の温度差を低減する必要がある。このため、バッテリ冷却構造1では、バッテリパック15の筐体18内において、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20ほど、冷却流路17を循環する水によって、より冷却されるようにしている。
【0039】
具体的に、バッテリ冷却構造1は、バッテリパック15の筐体18内において、流路板231、流路板232、流路板233というように、車両前後方向の後方に位置する流路板23ほど、その流路体積がより大きくなっている。図3に示すように、流路板231、流路板232、流路板233となるにつれて、形成されている冷却流路17の屈曲数(蛇行数)をより多くして冷却流路17をより長くすることで、流路体積をより大きくしている。これにより、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20ほど、対峙する冷却流路17の流路体積がより大きいことから、熱媒体の水によって、より冷却される。
【0040】
このように、バッテリ冷却構造1では、車両前後方向の前方に位置するバッテリモジュール20は、主に吹込口16を介して吹き付けられた走行風によって冷却する。その一方、バッテリ冷却構造1では、走行風によって冷却され難い車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20は、対峙する流路板23の流路体積をより大きくすることで、より冷却されるようにしている。
【0041】
バッテリ冷却構造1は、複雑な冷却機構を設けることなく、このような簡易な構成で、バッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができる。そして、バッテリ冷却構造1では、バッテリモジュール20を冷却する際に、走行風による冷却と熱媒体による冷却とを併用することで、冷却効率を上げることができる。このようなバッテリ冷却構造1は、走行風の温度範囲で温度調節が可能な全固体電池セルをバッテリセル20-2とした場合に、特に有用である。
【0042】
図3の例では、流路板231、流路板232、流路板233というように、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20の下面に接触する流路板23ほど、その冷却流路17の屈曲数(蛇行数)の増加に伴ってプレート部24(プレート部241、プレート部242、プレート部243)の面積がより大きくなっている。これにより、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20の広範囲を迅速に冷却することができる。なお、この例に代えて図4の例のようにしてもよい。
【0043】
図4に示すバッテリ冷却構造1Aも、バッテリパック15aの筐体18内において、流路板231a、流路板232a、流路板233aというように、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20に接触する流路板23aほど、形成されている冷却流路17aの屈曲数(蛇行数)が多く、これにより流路体積がより大きくなっている。
【0044】
但し、バッテリ冷却構造1Aでは、流路板23aが流路板231a、流路板232a、流路板233aとなるにつれて、プレート部24a(プレート部241a、プレート部242a、プレート部243a)の面積をより大きくするのではなく、それらの面積を略同一としている。その上で、流路板231a、流路板232a、流路板233aとなるにつれて、屈曲(蛇行)により並列する冷却流路17a同士の間隔をより狭くしてより密な蛇行状の冷却流路17aを形成することで、流路体積を大きくしている。
【0045】
このように、バッテリ冷却構造1Aでは、簡易な構成で、バッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができる。また、バッテリ冷却構造1Aでは、バッテリモジュール20を冷却する際に、走行風による冷却と熱媒体による冷却とを併用することで、冷却効率を上げることができる。また、バッテリ冷却構造1Aでは、流路板23aにおける冷却流路17aの蛇行数に応じてプレート部24aの面積を変えるのではなく、プレート部24aの面積を略同一としているため、同一構成(同一形状、同一面積)のプレート部24aを使用することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る車両用バッテリの冷却構造(バッテリ冷却構造)の第2の実施形態(第2実施形態)について説明する。図5及び図6に示すように、第2実施形態のバッテリ冷却構造1Bは、第1実施形態のバッテリパック15と同位置に設置されるバッテリパック15bからなる。バッテリ冷却構造1Bを構成するバッテリパック15bは、その筐体18内に、バッテリ集合部200の他、熱交換器(ラジエータ)13bと、ポンプ14bと、ファン26と、モータ27とを備える。また、筐体18内には、熱交換器13bとバッテリ集合部200とを繋ぐ冷却流路17bが設けられている。熱交換器(ラジエータ)13bのサイズは、例えば上述の熱交換器(ラジエータ)13よりも小さく、ポンプ14bのサイズは、例えば上述のポンプ14よりも小さい。
【0047】
熱交換器13bは、冷却流路17bを介してポンプ14bと繋がっている。ポンプ14bは、冷却流路17bを介して流路板233bと繋がっている。また、熱交換器13bは、冷却流路17bを介して流路板231bと繋がっている。
【0048】
また、バッテリパック15bの筐体18の底面には、吹込口16bと、副吹込口25とが形成されている。筐体18の底面において、吹込口16bは、車両前後方向におけるバッテリ集合部200よりも前方側に形成されている。
【0049】
熱交換器(ラジエータ)13bは、車両前後方向におけるバッテリ集合部200よりも後方に設置されている。この位置にある熱交換器13bは、筐体18の前側面の前開口部21にて吹き込まれた走行風が当たり難い。そのため、走行風が吹き込む副吹込口25が、筐体18の底面の車両進行方向におけるバッテリ集合部200と熱交換器13bとの間に設けられている。これにより、副吹込口25にて走行風が筐体18内に吹き込むと、熱交換器13bに向けて当たるようになる。
【0050】
また、バッテリ冷却構造1Bを構成するバッテリパック15bでは、バッテリ集合部200下に、互いに略同一構成の流路板23b(流路板231b、流路板232b、流路板233b)を配置している。すなわち、プレート部24b(プレート部241b、プレート部242b、プレート部243b)の構成が略同一であり、その内部の冷却流路17bの形状(屈曲数、屈曲により並列する冷却流路17b同士の間隔等)が略同一である。
【0051】
車両Aの走行中、バッテリパック15bにおいて、筐体18の前側面の前開口部21、筐体18の底面の吹込口16b及び副吹込口25を介して筐体18内に吹き込まれた走行風は、図5及び図6の実線矢印に示すように、車両前後方向の前方向から後方向へと流動する。
【0052】
バッテリ集合部200の前後方向の最も前方側に位置するバッテリモジュール20は、前開口部21及び吹込口16bの両方から筐体18内に流入した走行風が直接吹き付けられるため、その走行風によって十分に冷却される。
【0053】
バッテリ冷却構造1B(バッテリパック15b)においても、走行風は、車両後退方向(X方向とは反対方向)に進むにつれ、バッテリモジュール20からの伝熱によってその冷却効果がより小さくなる。そのため、バッテリ冷却構造1Bにおいても、車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20ほど、走行風によって冷却され難くなる。
【0054】
バッテリ冷却構造1Bでは、車両前後方向におけるバッテリ集合部200よりも後方の熱交換器13bに、バッテリ集合部200のバッテリモジュール20によって温められた水が冷却流路17bを通じて流入する。熱交換器13bは、その流入した水を、副吹込口25を介して吹き付けられた走行風で熱交換して冷却する。
【0055】
熱交換器13bにて冷却された水は、図6の点線矢印に示すように、冷却流路17bを通じてバッテリ集合部200下の流路板233b、流路板232b、流路板231bに順次流れ込む。流路板233bの冷却流路17b内を流動する水は、熱交換器13bによって冷却された水が直接流れ込んだものであるため、十分な冷却効果を有する。そして、流路板233b、流路板232b、流路板231bというように車両進行方向に進むにつれ、その上に位置するバッテリモジュール20からの伝熱によって冷却流路17b内の水の温度が上昇し易くなるため、その冷却効果がより小さくなる虞がある。
【0056】
このように、バッテリ冷却構造1Bを構成するバッテリパック15bでは、熱交換器13bを車両前後方向におけるバッテリ集合部200よりも後方に配置し、その熱交換器13bで冷却された水を車両前後方向の後方側から前方側へと流動させる。これにより、バッテリ集合部200を構成するバッテリモジュール20は、車両前後方向の後方に位置するほど、冷却流路17b内の水によって、より冷却される。
【0057】
以上のようなバッテリ冷却構造1Bを構成するバッテリパック15bでは、その筐体18内において、車両前後方向の前方に位置する流路板231b上のバッテリモジュール20は、主に走行風で冷却される。その一方、走行風では冷却し難い車両前後方向の後方に位置する流路板233b上のバッテリモジュール20は、主に冷却流路17b内の水によって冷却される。これにより、バッテリ冷却構造1Bでは、車両前後方向においてバッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができる。
【0058】
また、バッテリ冷却構造1Bを構成するバッテリパック15bは、筐体18内における車両前後方向の熱交換器13bよりも後方側に、ファン26と、ファン26を回転駆動させるためのモータ27とを備える。バッテリ冷却構造1Bでは、モータ27の動作に基づくファン26の回転駆動により、例えば停車時や徐行運転時等の走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、副吹込口25に外気が吹き込み、熱交換器13bに吹き付けられる。
【0059】
そのため、熱交換器13bでは、そのような状況であっても、吹き込まれた外気で熱媒体の水を冷却することができる。バッテリ集合部200における車両前後方向の後方に位置するバッテリモジュール20は、その下側の流路板23bに形成された冷却流路17b内に熱交換器13bで冷却された水が直接流入するため、その水によって十分に冷却される。
【0060】
バッテリ冷却構造1Bでは、ファン26の回転駆動により、前開口部21及び吹込口16bにも外気が吹き込む。そのため、停車時や徐行運転時等の走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、この外気によって、バッテリパック15bの筐体18内の車両前後方向の前方に位置するバッテリモジュール20は、十分に冷却される。これにより、バッテリ冷却構造1Bでは、停車時や徐行運転時等の走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、車両前後方向においてバッテリモジュール20間の温度差を低減することができる。
【0061】
以上のように、バッテリ冷却構造1Bでは、簡易な構成で、バッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができる。また、バッテリ冷却構造1Bでは、バッテリモジュール20を冷却する際に、走行風による冷却と熱媒体による冷却とを併用することで、冷却効率を上げることができる。そして、バッテリ冷却構造1Bでは、ファン26を回転駆動させることで、走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、バッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができる。
【0062】
<他の例>
本発明の実施形態は、上述の例に限定されない。上述のバッテリ冷却構造1と異なり、図7のバッテリ冷却構造1Cは、バッテリパック15cの筐体18内の何れの流路板23cも、形成されている冷却流路17cの形状(屈曲数、屈曲により並列する冷却流路17c同士の間隔等)が略同一である。
【0063】
その上で、バッテリ冷却構造1Cでは、流路板23cのプレート部24cが何れも熱伝導性部材によって形成されている。プレート部24cを形成する熱伝導性部材としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、銅、鉄等、熱伝導率が高い金属材料を挙げることができる。
【0064】
プレート部24cは、熱伝導性部材であることから、冷却流路17c内の水からの伝熱によって全体的に冷却される。そのため、バッテリモジュール20は、その下面と接触するプレート部24cとの接触面積が大きいほど、プレート部24cからの伝熱によって、より冷却される。
【0065】
図7に示すように、バッテリパック15cでは、流路板231cのプレート部241c、流路板232cのプレート部242c、流路板233cのプレート部243cというように、車両前後方向の後方に位置する流路板23cのプレート部24cほど、その面積が大きく、これに伴ってバッテリモジュール20との接触面積が大きくなっている。これにより、バッテリ冷却構造1Cのバッテリ集合部200は、流路板231c上のバッテリモジュール20、流路板232c上のバッテリモジュール20、流路板233c上のバッテリモジュール20となるにつれて、熱伝導性部材のプレート部24cからの伝熱によって、より冷却される。
【0066】
このように、バッテリ冷却構造1Cでは、流路板23cに形成する冷却流路17cの形状を変えずにプレート部24cを熱伝導性部材としてその面積を大きくするだけで、流路板23cの冷却効果を大きくすることができる。そのため、バッテリ冷却構造1Cでは、より簡易な構成で、バッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができ、その製造コストを低減することができる。また、バッテリ冷却構造1Cにおいても、バッテリモジュール20を冷却する際に、走行風による冷却と熱媒体による冷却とを併用することで、冷却効率を上げることができる。
【0067】
また、上述のバッテリ冷却構造1と異なり、図8のバッテリ冷却構造1Dは、バッテリパック15dの筐体18内において、車両前後方向の最も後方に位置するバッテリモジュール20の下側にのみ、プレート部24dに冷却流路17dを形成した流路板23dを設置する。このようにして、バッテリ冷却構造1Dでは、前方からの走行風によって最も冷却され難いバッテリモジュール20に対してのみ冷却流路17dの水によって冷却する。
【0068】
バッテリ冷却構造1Dは、流路板23dの数を減らすことで、より簡易な構成で、バッテリモジュール20間の温度差を低減してバッテリ寿命のばらつきを抑制することができ、その製造コストを低減することができる。また、バッテリ冷却構造1Dでは、流路板23dの数を削減することで、装置の軽量化を実現できる。また、バッテリ冷却構造1Dにおいても、バッテリモジュール20を冷却する際に、走行風による冷却と熱媒体による冷却とを併用することで、冷却効率を上げることができる。
【0069】
また、上述のバッテリ冷却構造1、1A、1B、1Dにおいて、プレート部24、24a、24b、24dを熱伝導性部材によって形成してもよい。この場合、流路板23、23a、23b、23dのバッテリモジュール20に対する冷却効果をより高めることができる。
【0070】
また、上述のバッテリ冷却構造1、1A、1C、1Dにおいて、車両前後方向の吹込口16よりも後方側(例えば筐体18よりも後方側)に、上述のファン26及びモータ27を備えるようにしてもよい。これにより、バッテリ冷却構造1、1A、1C、1Dは、例えば停車時や徐行運転時等の走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、吹込口16を介して車体2の床下と底部12との間の空間内に外気を取り込むことができる。
【0071】
この場合、バッテリ集合部200における車両前後方向の前方に位置するバッテリモジュール20は、ファン26の回転駆動により吹込口16を介して取り込まれた外気が当たり冷却される。
【0072】
このように、バッテリ冷却構造1、1A、1C、1Dでは、ファン26及びモータ27を備えることで、例えば停車時や徐行運転時等の走行風が全く或いは十分に得られない状況であっても、走行風が得られる場合と同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、上述のバッテリ冷却構造1、1A、1B、1C、1Dにおいて、筐体18を2層構造とし、その内部を熱媒体が流動する冷却流路の一部としてもよい。これにより、部品数を削減して製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1、1A、1B、1C、1D バッテリ冷却構造、2 車体、3 フロアパネル、4 座席、5 ハンドル 6 前方部、11 フロントグリル開口部(入気口)、12 底部、13、13b 熱交換器、14、14b ポンプ、15、15a、15b、15c、15d バッテリパック、16、16b 吹込口、17、17a、17b、17c、17d 冷却流路、18 筐体、20 バッテリモジュール、21 前開口部、22 後開口部、23、23a、23b、23c、23d 流路板、24、24a、24b、24c、24d プレート部、25 副吹込口、26 ファン、27 モータ、200 バッテリ集合部、A 車両
図1
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図7
図8