(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171972
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241205BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241205BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241205BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241205BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 657D
H01L29/78 655F
H01L29/78 655G
H01L29/78 655B
H01L29/78 652J
H01L29/78 655D
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089358
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(57)【要約】
【課題】組立性を維持しかつ応力耐量が向上する半導体装置の提供を目的とする。
【解決手段】半導体装置は、複数のトレンチ、複数のトレンチ電極、絶縁膜および第1電極を含む。複数のトレンチ電極は、複数のトレンチの内部にそれぞれ設けられている。絶縁膜は、複数のトレンチ電極のうち2以上のトレンチ電極を覆っている。第1電極は、絶縁膜上に設けられている。絶縁膜は、その絶縁膜に覆われた2以上のトレンチ電極の間に設けられた開口を含む。第1電極は、開口を塞ぐように半導体基板上に設けられている。複数のトレンチ電極の各々の上面は、第1凹部を含む。絶縁膜の上面は、第1凹部の直上に第2凹部を含む。第1電極の上面は、開口の直上に第3凹部を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上面に設けられた複数のトレンチと、
前記複数のトレンチの内部にそれぞれ設けられた複数のトレンチ電極と、
前記複数のトレンチ電極のうち2以上のトレンチ電極を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた第1電極と、を備え、
前記絶縁膜は、前記絶縁膜に覆われた前記2以上のトレンチ電極の間に設けられた開口を含み、
前記第1電極は、前記開口を塞ぐように前記半導体基板上に設けられ、
前記複数のトレンチ電極の各々の上面は、第1凹部を含み、
前記絶縁膜の上面は、前記第1凹部の直上に第2凹部を含み、
前記第1電極の上面は、前記開口の直上に第3凹部を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記第3凹部は、前記第1電極の前記上面における前記第2凹部の直上にさらに設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極上に設けられた第2電極を、さらに備え、
前記第2電極の上面は、前記第3凹部の直上に第4凹部を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第4凹部の深さは、前記第3凹部の深さよりも浅い、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第4凹部の前記深さは、前記第2凹部の深さおよび前記開口の深さよりも浅い、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第4凹部の前記深さは、前記第1凹部の深さよりも浅い、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1凹部の底部は、前記半導体基板の前記上面よりも低い位置に設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数のトレンチ電極の各々の上端は、前記半導体基板の前記上面よりも低い位置に設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁膜は、酸化膜を含む単層構造を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁膜は、互いにドーパント濃度の異なる2種類以上の酸化膜を含む積層構造を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1電極の厚みは、前記第2電極の厚みよりも厚い、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2電極の厚みは、前記第1電極の厚みよりも厚い、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記開口の底部の幅は、前記開口の側壁を形成している前記絶縁膜の高さよりも大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2電極は、2種類以上の金属層を含む積層構造を有する、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1電極は、前記開口の底部において前記半導体基板の前記上面に接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記絶縁膜に覆われた前記2以上のトレンチ電極の各々は、前記半導体基板に形成されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のゲート電極である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記複数のトレンチ電極は、
前記2以上のトレンチ電極として、前記絶縁膜に覆われた複数の第1トレンチ電極と、
前記絶縁膜の前記開口の内側に設けられた少なくとも1つの第2トレンチ電極と、を含み、
前記複数の第1トレンチ電極の各々は、前記半導体基板に形成されたIGBTのゲート電極であり、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極は、前記絶縁膜に覆われておらず、前記第1電極に電気的に接続されており、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極の前記上面の前記第1凹部は、前記開口の底部の一部を形成している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極は、前記複数のトレンチの各々の内壁に沿って設けられたトレンチ絶縁膜を介して前記複数のトレンチの各々の内部に形成されており、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極に接触している前記トレンチ絶縁膜の上面は、前記半導体基板の前記上面よりも下方に位置する第5凹部を含む、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1電極をスパッタ法によって形成する工程と、
前記第2電極をめっき法によって形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項17に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数のトレンチと前記複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された前記複数のトレンチ電極とを含む前記半導体基板を準備する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記複数の第1トレンチ電極を覆う前記絶縁膜を形成する工程と、を備え、
前記絶縁膜を形成する前記工程は、
前記複数のトレンチ電極上に前記絶縁膜を形成する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記少なくとも1つの第2トレンチ電極上の前記絶縁膜を除去して、前記絶縁膜に覆われた前記複数の第1トレンチ電極の間に前記絶縁膜の前記開口を形成する工程と、を含み、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極の前記上面の前記第1凹部は、前記開口の底部の一部を形成している、半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項18に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数のトレンチと前記複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された前記複数のトレンチ電極とを含む前記半導体基板を準備する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記複数の第1トレンチ電極を覆う前記絶縁膜を形成する工程と、を備え、
前記複数のトレンチ電極上に前記絶縁膜を形成する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記少なくとも1つの第2トレンチ電極上の前記絶縁膜を除去して、前記絶縁膜に覆われた前記複数の第1トレンチ電極の間に前記絶縁膜の前記開口を形成する工程と、を含み、
前記開口を形成する前記工程は、前記少なくとも1つの第2トレンチ電極に接触している前記トレンチ絶縁膜の上部を除去して、前記第5凹部を形成することを含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード等の半導体素子が半導体基板に設けられた構造を有する。特許文献1に記載された半導体装置は、半導体基板と配線層とを接続するコンタクトプラグを有する。コンタクトプラグは、その上部に形成される電極を平坦化するため、その後の半導体装置の製造工程における組立性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板上に設けられる配線または電極が平坦化される場合、その半導体基板の上面に形成される各層の界面も平坦化されるため、それらの層構造は横方向の応力に対して弱い。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するため、組立性を維持しかつ応力耐量が向上する半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、複数のトレンチ、複数のトレンチ電極、絶縁膜および第1電極を含む。複数のトレンチは、半導体基板の上面に設けられている。複数のトレンチ電極は、複数のトレンチの内部にそれぞれ設けられている。絶縁膜は、複数のトレンチ電極のうち2以上のトレンチ電極を覆っている。第1電極は、絶縁膜上に設けられている。絶縁膜は、その絶縁膜に覆われた2以上のトレンチ電極の間に設けられた開口を含む。第1電極は、開口を塞ぐように半導体基板上に設けられている。複数のトレンチ電極の各々の上面は、第1凹部を含む。絶縁膜の上面は、第1凹部の直上に第2凹部を含む。第1電極の上面は、開口の直上に第3凹部を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、組立性を維持しかつ応力耐量が向上する半導体装置が提供される。
【0008】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態における半導体装置の構成を示す平面図である。
【
図2】実施の形態における半導体装置の構成を示す平面図である。
【
図3】半導体装置のIGBT領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図4】半導体装置のIGBT領域の構成を示す断面図である。
【
図5】IGBT領域の構成を示す部分拡大断面図である。
【
図6】IGBT領域の構成を示す部分拡大断面図である。
【
図7】IGBT領域の構成を示す部分拡大断面図である。
【
図8】半導体装置のIGBT領域の構成を示す断面図である。
【
図9】半導体装置のダイオード領域の構成を示す部分拡大平面図である。
【
図10】半導体装置のダイオード領域の構成を示す断面図である。
【
図11】半導体装置のダイオード領域の構成を示す断面図である。
【
図12】IGBT領域とダイオード領域との境界部分の構成を示す断面図である。
【
図13】IGBT領域と終端領域との境界部分の構成を示す断面図である。
【
図14】ダイオード領域と終端領域との境界部分の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、nおよびpは半導体の導電型を示す。n-は不純物濃度がnよりも低濃度であることを示す。n+は不純物濃度がnよりも高濃度であることを示す。同様に、p-は不純物濃度がpよりも低濃度であることを示す。p+は不純物濃度がpよりも高濃度であることを示す。以下に示される各層のp型およびn型は、互いに入れ替わってもよい。
【0011】
(1)半導体装置の全体平面構造
図1は、実施の形態における半導体装置100の構成を示す平面図である。
図2は、実施の形態における半導体装置101の構成を示す平面図である。半導体装置100,101は、1つの半導体基板内にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)領域10とダイオード領域20とが設けられたRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)である。半導体基板は、例えば、Siなどの半導体によって形成されている。半導体は、SiC、GaN、酸化ガリウム等のいわゆるワイドバンドギャップ半導体で形成されることが好ましい。
【0012】
図1に示されるように、半導体装置100においては、IGBT領域10およびダイオード領域20が半導体装置100の一端から他端に向かう方向に延伸している。IGBT領域10およびダイオード領域20は、その延伸方向と直交する方向に交互に設けられている。半導体装置100は、IGBT領域10とダイオード領域20とがストライプ状に並んで設けられたストライプ型の構造を有する。
【0013】
半導体装置100は、3個のIGBT領域10と2個のダイオード領域20とを含む。IGBT領域10およびダイオード領域20の個数は、これらに限定されるものでない。IGBT領域10の個数は、3つ以上であってもよいし3つ以下であってもよい。ダイオード領域20の個数は、2つ以上であってもよいし2つ以下であってもよい。
【0014】
半導体装置100のダイオード領域20は、2つのIGBT領域10によって挟まれている。IGBT領域10およびダイオード領域20の配置は、これに限定されるものでない。その配置は、IGBT領域10およびダイオード領域20が互いに入れ替わった配置であってもよい。つまり、IGBT領域10が2つのダイオード領域20に挟まれていてもよい。IGBT領域10とダイオード領域20とは、交互に隣り合って設けられていればよい。
【0015】
図2に示されるように、半導体装置101においては、複数のダイオード領域20が縦方向および横方向に離散的に設けられている。つまり、ダイオード領域20はマトリクス状に設けられている。IGBT領域10は、それらダイオード領域20の周囲に設けられている。半導体装置101は、このようなアイランド型の構造を有する。
【0016】
半導体装置101においては、横方向に4つのダイオード領域20が並んでおり、縦方向には2つのダイオード領域20が並んでいる。ダイオード領域20の個数および配置はこれに限定されるものではない。IGBT領域10内に1つまたは複数のダイオード領域20が点在して設けられていればよい。言い換えると、各ダイオード領域20がIGBT領域10に囲まれていればよい。
【0017】
半導体装置100,101のIGBT領域10には、複数のIGBTセル(図示せず)が形成されている。複数のIGBTセルの各々は、半導体素子として、IGBTを含む。ダイオード領域20には、複数のダイオードセル(図示せず)が形成されている。複数のダイオードセルの各々は、半導体素子として、還流ダイオードを含む。また、1つのセル構造は、素子の最小単位に対応する構造である。IGBT領域10およびダイオード領域20を含む領域は、セル領域と言われる。
【0018】
図1および
図2に示されるように、半導体装置100,101は、IGBT領域10およびダイオード領域20に加えて、パッド領域40および終端領域30を含む。
【0019】
パッド領域40は、セル領域の外側、すなわちIGBT領域10およびダイオード領域20の外側に設けられている。ここでは、パッド領域40は、IGBT領域10の少なくとも一部に隣接するように設けられている。パッド領域40は、半導体装置100,101を制御するための制御パッド41が設けられる領域である。制御パッド41は、例えば、電流センスパッド41a、ケルビンエミッタパッド41b、ゲートパッド41c、温度センスダイオードパッド41d,41e等を含む。
【0020】
電流センスパッド41aは、セル領域に流れる電流を検知するための制御パッドである。電流センスパッド41aは、セル領域全体に流れる電流の数分の1から数万分の1の電流が流れるように、セル領域の一部のIGBTセルまたはダイオードセルに電気的に接続されている。
【0021】
ケルビンエミッタパッド41bおよびゲートパッド41cは、半導体装置100,101をオンオフ制御するためのゲート駆動電圧が印加される制御パッドである。ケルビンエミッタパッド41bは、IGBTセルのp型ベース層およびn+型ソース層(ともに図示せず)に電気的に接続されている。ケルビンエミッタパッド41bとp型ベース層とは、p+型コンタクト層(図示せず)を介して互いに電気的に接続されてもよい。ゲートパッド41cは、IGBTセルのゲートトレンチ電極(図示せず)に電気的に接続されている。
【0022】
温度センスダイオードパッド41d、41eは、セル領域内に設けられた温度センスダイオード(図示せず)のアノードおよびカソードに電気的に接続された制御パッドである。温度センスダイオードパッド41d,41eは、温度センスダイオードのアノードとカソードとの間の電圧を測定して、半導体装置100,101の温度を測定する。
【0023】
終端領域30は、セル領域およびパッド領域40を合わせた領域の周囲に設けられている。終端領域30は、半導体装置100,101の耐圧保持のための構造を有する。耐圧保持構造には、適宜、様々な構造が選択される。耐圧保持構造は、例えば、半導体基板の第1主面側(上面側)の表層に形成されるFLR(Field Limiting Ring)、VLD(Variation of Lateral Doping)等である。FLRは、セル領域を囲うp型終端ウェル層(図示せず)を有する。VLDは、セル領域を囲っておりかつ濃度勾配を有するp型ウェル層(図示せず)を有する。FLRを構成するリング状のp型終端ウェル層の個数およびVLDを構成するp型ウェル層の濃度分布は、半導体装置100,101の耐圧設計によって適宜選択される。また、パッド領域40には、そのほぼ全域に亘ってp型終端ウェル層が設けられてもよい。または、パッド領域40には、IGBTセルまたはダイオードセルが設けられていてもよい。
【0024】
(2)IGBT領域10の構造
図3は、半導体装置100,101のIGBT領域10の構成を示す部分拡大平面図である。
図3は、
図1または
図2に示された領域82における構成を拡大して示している。
【0025】
半導体装置100および半導体装置101は、IGBT領域10に設けられたアクティブトレンチ11とダミートレンチ12とを含む。
【0026】
半導体装置100においては、アクティブトレンチ11およびダミートレンチ12は、IGBT領域10の長手方向に延伸している。アクティブトレンチ11およびダミートレンチ12は、IGBT領域10の延伸方向に長手を有する。IGBT領域10の長手方向は、
図3における左右方向に対応している。
【0027】
半導体装置101においては、アクティブトレンチ11およびダミートレンチ12は、一方向に延伸している。例えば、アクティブトレンチ11およびダミートレンチ12は、
図2における上下方向および左右方向のうちいずれかの方向に延伸している。
【0028】
アクティブトレンチ11は、ゲートトレンチ電極11aおよびゲートトレンチ絶縁膜11bを含む。アクティブトレンチ11の断面構造の詳細は後述するが、ゲートトレンチ絶縁膜11bは、半導体基板の第1主面つまり上面から深さ方向に形成されたトレンチ構造の内壁に沿って形成されている。ゲートトレンチ電極11aは、そのゲートトレンチ絶縁膜11bを介してトレンチ構造の内部に形成されている。ゲートトレンチ電極11aは、ゲートパッド41cに電気的に接続されている(図示せず)。
【0029】
ダミートレンチ12は、ダミートレンチ電極12aおよびダミートレンチ絶縁膜12bを含む。ダミートレンチ12の断面構造の詳細は後述するが、ダミートレンチ絶縁膜12bは、半導体基板の第1主面から深さ方向に形成されたトレンチ構造の内壁に沿って形成されている。ダミートレンチ電極12aは、そのダミートレンチ絶縁膜12bを介してトレンチ構造の内部に形成されている。ダミートレンチ電極12aは、半導体装置100または半導体装置101の第1主面の上方に設けられるエミッタ電極6(
図4参照)に電気的に接続されている。
【0030】
IGBT領域10のうち、アクティブトレンチ11が設けられる領域においては、半導体基板の第1主面側の表層として、n+型ソース層13とp+型コンタクト層14とが選択的に設けられている。n+型ソース層13およびp+型コンタクト層14は、アクティブトレンチ11の延伸方向に沿って、交互に設けられている。アクティブトレンチ11は、それらn+型ソース層13とp+型コンタクト層14とを横切るように設けられている。アクティブトレンチ11のゲートトレンチ絶縁膜11bの一部は、n+型ソース層13に接している。
【0031】
IGBT領域10のうち、ダミートレンチ12が設けられる領域においては、半導体基板の第1主面側の表層として、p+型コンタクト層14が設けられている。p+型コンタクト層14は、互いに隣り合う2つのダミートレンチ12の間に設けられている。
【0032】
図3においては、3本のアクティブトレンチ11の隣に、3本のダミートレンチ12が配置されている。さらに、それら3本のダミートレンチ12の隣に、別の3本のアクティブトレンチ11が配置されている。つまり、3本のアクティブトレンチ11を含む1組のアクティブトレンチ群と、3本のダミートレンチ12を含む1組のダミートレンチ群とが交互に配置されている。1組のアクティブトレンチ群に含まれるアクティブトレンチ11の本数は、3本に限定されるものではなく、1本以上でよい。また、1組のダミートレンチ群に含まれるダミートレンチ12の本数は、3本に限定されるものではなく、1本以上でよい。ただし、半導体装置100,101において、ダミートレンチ12は必ずしも必要ではない。すなわち、IGBT領域10に設けられる全てのトレンチが、アクティブトレンチ11であってもよい。
【0033】
図4は、半導体装置100,101のIGBT領域10の構成を示す断面図である。
図4は、
図3に示された破線A-Aにおける断面を示している。
【0034】
半導体装置100,101は、IGBT領域10において、n+型ソース層13、p+型コンタクト層14、p型ベース層15、n型キャリア蓄積層2、n-型ドリフト層1、n型バッファ層3、p型コレクタ層16、アクティブトレンチ11、ダミートレンチ12、層間絶縁膜4、バリアメタル5、エミッタ電極6およびコレクタ電極7を含む。
【0035】
1つのIGBTセルは、例えば、アクティブトレンチ11ごとに区分けされた領域に対応する。IGBTセルは、n+型ソース層13、p型ベース層15、n型キャリア蓄積層2、n-型ドリフト層1、n型バッファ層3、p型コレクタ層16、アクティブトレンチ11、層間絶縁膜4、バリアメタル5、エミッタ電極6およびコレクタ電極7を含む。
【0036】
IGBT領域10における半導体基板の第1主面は、n
+型ソース層13およびp
+型コンタクト層14の表面(上面)に対応する。第1主面は、半導体基板の上面である。IGBT領域10における半導体基板の第2主面は、p型コレクタ層16の表面(下面)に対応する。第2主面は、第1主面とは反対側の面であって半導体基板の下面である。
図4において、半導体基板はn
+型ソース層13およびp
+型コンタクト層14の上面からp型コレクタ層16の下面までの範囲に対応する。
【0037】
n-型ドリフト層1は、半導体基板からなる。n-型ドリフト層1は、半導体基板の第1主面と第2主面との間に設けられている。n-型ドリフト層1は、n型不純物として、例えばヒ素(As)またはリン(P)を含む半導体層である。n-型ドリフト層1におけるn型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+12/cm3以上1.0E+15/cm3以下である。
【0038】
n型キャリア蓄積層2は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。n型キャリア蓄積層2は、n型不純物として、例えばヒ素またはリンを含む半導体層である。n型キャリア蓄積層2は、n-型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高い。n型キャリア蓄積層2におけるn型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+13/cm3以上1.0E+17/cm3以下である。n型キャリア蓄積層2は、電流がIGBT領域10に流れた際の通電損失を低減する。n型キャリア蓄積層2とn-型ドリフト層1とは、合わせて1つのn型ドリフト層と定められていてもよい。n型キャリア蓄積層2は、必ずしも必要ではなく、n型キャリア蓄積層2の位置にn-型ドリフト層1が設けられていてもよい。
【0039】
p型ベース層15は、n型キャリア蓄積層2に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。p型ベース層15は、p型不純物として、例えばボロン(B)またはアルミニウム(Al)を含む半導体層である。p型ベース層15におけるp型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+12/cm3以上1.0E+19/cm3以下である。p型ベース層15は、アクティブトレンチ11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接している。ゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加された場合、p型ベース層15にチャネルが形成される。
【0040】
n+型ソース層13は、p型ベース層15に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。そのn+型ソース層13は、半導体基板の表層として、p型ベース層15の上方に選択的に設けられている。n+型ソース層13は、n型不純物として、例えばヒ素またはリンを含む半導体層である。n+型ソース層13におけるn型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+17/cm3以上1.0E+20/cm3以下である。n+型ソース層13は、n+型エミッタ層と言われる場合がある。
【0041】
p+型コンタクト層14は、p型ベース層15に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。そのp+型コンタクト層14は、半導体基板の表層として、p型ベース層15の上方に選択的に設けられている。p+型コンタクト層14は、p型ベース層15の上方において、n+型ソース層13が設けられていない領域に設けられている。p+型コンタクト層14は、p型不純物として、例えばボロンまたはアルミニウムを含む半導体層である。p+型コンタクト層14におけるp型不純物の濃度は、p型ベース層15におけるp型不純物の濃度よりも高い。p+型コンタクト層14におけるp型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+15/cm3以上1.0E+20/cm3以下である。p+型コンタクト層14とp型ベース層15とは、合わせて1つのp型ベース層と定められていてもよい。
【0042】
n型バッファ層3は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第2主面側に設けられている。n型バッファ層3は、n型不純物として、例えばリンおよびプロトン(H+)のうち少なくとも一方を含む半導体層である。n型バッファ層3は、n-型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高い。n型バッファ層3におけるn型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+12/cm3以上1.0E+18/cm3以下である。n型バッファ層3は、半導体装置100がオフ状態の場合に、空乏層がp型ベース層15から第2主面側に伸びて、パンチスルーが発生することを低減する。n型バッファ層3とn-型ドリフト層1とは、合わせて1つのn型ドリフト層と定められていてもよい。さらには、n型キャリア蓄積層2とn型バッファ層3とn-型ドリフト層1とが、合わせて1つのn型ドリフト層と定められていてもよい。また、n型バッファ層3は、必ずしも必要ではなく、n型バッファ層3の位置にn-型ドリフト層1が設けられていてもよい。
【0043】
p型コレクタ層16は、n型バッファ層3に対して半導体基板の第2主面側に設けられている。p型コレクタ層16は、p型不純物として、例えばボロンまたはアルミニウムを含む半導体層である。p型コレクタ層16におけるp型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+16/cm3以上1.0E+20/cm3以下である。
【0044】
アクティブトレンチ11は、半導体基板の第1主面、つまり半導体基板の上面に設けられている。アクティブトレンチ11は、その第1主面からn+型ソース層13、p型ベース層15およびn型キャリア蓄積層2を貫通し、n-型ドリフト層1に達している。
【0045】
ゲートトレンチ絶縁膜11bは、半導体基板の第1主面から深さ方向に形成されたトレンチ構造の内壁に沿って形成されている。ゲートトレンチ絶縁膜11bは、n+型ソース層13およびp型ベース層15に接している。ゲートトレンチ絶縁膜11bは、例えば、酸化膜である。
【0046】
ゲートトレンチ電極11aは、そのゲートトレンチ絶縁膜11bを介してトレンチ構造の内部に形成されている。ゲートトレンチ電極11aの底部は、ゲートトレンチ絶縁膜11bを介してn-型ドリフト層1に対向している。ゲートトレンチ電極11aは、例えば、導電性のポリシリコンで形成されている。ゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加された場合、ゲートトレンチ絶縁膜11bに接するp型ベース層15にチャネルが形成される。
【0047】
ダミートレンチ12は、半導体基板の第1主面、つまり半導体基板の上面に設けられている。ダミートレンチ12は、半導体基板の第1主面からp+型コンタクト層14、p型ベース層15およびn型キャリア蓄積層2を貫通し、n-型ドリフト層1に達している。
【0048】
ダミートレンチ絶縁膜12bは、半導体基板の第1主面から深さ方向に形成されたトレンチ構造の内壁に沿って形成されている。ダミートレンチ絶縁膜12bは、例えば、酸化膜である。
【0049】
ダミートレンチ電極12aは、そのダミートレンチ絶縁膜12bを介してトレンチ構造の内部に形成されている。ダミートレンチ電極12aの底部は、ダミートレンチ絶縁膜12bを介してn-型ドリフト層1に対向している。ダミートレンチ電極12aは、例えば、導電性のポリシリコンで形成されている。
【0050】
層間絶縁膜4は、アクティブトレンチ11のゲートトレンチ電極11a上に設けられている。
【0051】
バリアメタル5は、半導体基板の第1主面のうち層間絶縁膜4が設けられていない領域上、および、層間絶縁膜4上に形成されている。バリアメタル5は、例えば、Ti,TiN,TiSiなど、チタンを含む金属で形成されている。チタンを含む金属とは、例えば、窒化チタン、TiSiである。TiSiは、チタンとシリコン(Si)との合金である。バリアメタル5は、n+型ソース層13、p+型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aにオーミック接触している。バリアメタル5は、n+型ソース層13、p+型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aに電気的に接続されている。
【0052】
エミッタ電極6は、バリアメタル5上に設けられる。エミッタ電極6は、例えば、アルミシリコン合金(Al―Si系合金)で形成される。エミッタ電極6は、バリアメタル5を介して、n+型ソース層13、p+型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aに電気的に接続されている。エミッタ電極6は、アルミニウム合金膜およびその他の金属膜からなる複数の金属膜で構成されていてもよい。例えば、エミッタ電極6は、アルミニウム合金膜とめっき膜とで構成されていてもよい。めっき膜は、例えば、無電解めっきあるいは電解めっきで形成される。めっき膜は、例えば、ニッケル(Ni)膜である。互いに隣接する層間絶縁膜4の間の微細領域には、タングステン膜が形成されていてもよい。エミッタ電極6は、そのタングステン膜上に形成される。タングステン膜は、めっき膜よりも埋込性が良好であるため、良好なエミッタ電極6が形成される。
【0053】
バリアメタル5とエミッタ電極6とが、合わせて1つのエミッタ電極と定められていてもよい。バリアメタル5は必ずしも必要ではない。バリアメタル5が設けられない場合、エミッタ電極6は、n+型ソース層13上、p+型コンタクト層14上およびダミートレンチ電極12a上に設けられ、それらとオーミック接触する。または、バリアメタル5は、n+型ソース層13などのn型半導体層上のみに設けてられてもよい。ダミートレンチ電極12a上の一部には、層間絶縁膜4が設けられていてもよい。その場合、エミッタ電極6は、ダミートレンチ電極12a上のいずれかの領域において、そのダミートレンチ電極12aと電気的に接続される。
【0054】
コレクタ電極7は、p型コレクタ層16上に設けられる。コレクタ電極7は、例えば、エミッタ電極6と同様に、アルミニウム合金で形成される。コレクタ電極7は、p型コレクタ層16にオーミック接触し、そのp型コレクタ層16に電気的に接続されている。コレクタ電極7は、アルミニウム合金とめっき膜とで構成されていてもよい。コレクタ電極7は、エミッタ電極6とは異なる構成であってもよい。
【0055】
図4に示されるように、半導体装置100および半導体装置101は、複数のトレンチとして、複数のアクティブトレンチ11と複数のダミートレンチ12とを含む。アクティブトレンチ11の内部には、第1トレンチ電極として、ゲートトレンチ電極11aが設けられている。ダミートレンチ12の内部には、第2トレンチ電極として、ダミートレンチ電極12aが設けられている。ゲートトレンチ電極11aおよびダミートレンチ電極12aを合わせて、複数のトレンチ電極と言う。層間絶縁膜4は、それら複数のトレンチ電極のうち2以上の第1トレンチ電極、すなわち2以上のゲートトレンチ電極11aを覆っている。
【0056】
図5は、IGBT領域10の構成を示す部分拡大断面図である。
図5は、
図4に示された領域Pにおける構成を示している。
【0057】
ゲートトレンチ電極11aの上面は、第1凹部51を含む。その第1凹部51は、ゲートトレンチ電極11aの短手方向の上端の中央部に設けられている。短手方向とは、ゲートトレンチ電極11aの延伸方向と直交する方向である。第1凹部51の底部は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。ゲートトレンチ電極11aの上端は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。
【0058】
層間絶縁膜4の上面は、第1凹部51の直上に第2凹部52を含む。その第2凹部52は、第1凹部51に追従するように形成されている。第2凹部52は、層間絶縁膜4の上面の中央部に位置する。
【0059】
層間絶縁膜4は、開口4aを含む。開口4aは、層間絶縁膜4に覆われた複数のゲートトレンチ電極11aの間に設けられている。開口4aの底部の幅は、開口4aの側壁を形成している層間絶縁膜4の高さよりも大きいことが好ましい。
【0060】
層間絶縁膜4は、例えば、酸化膜を含む単層構造を有する。単層構造の酸化膜は、例えば、TEOS(Tetraethoxysilane)によって形成される。層間絶縁膜4は、複数の酸化膜を含む積層構造を有していてもよい。層間絶縁膜4が積層構造を有する場合、その複数の酸化膜は、互いにドーパント濃度の異なる2種類以上の酸化膜で構成される。その2種類以上の酸化膜のうち、1つの酸化膜はボロンおよびリンを含むTEOS(BPTEOS)によって形成され、別の1つの酸化膜はTEOSによって形成される。
【0061】
エミッタ電極6は、第1エミッタ電極6bおよび第2エミッタ電極6cを含む。第1エミッタ電極6bは、バリアメタル5を介して層間絶縁膜4の開口4aを塞ぐように半導体基板上に設けられている。言い換えると、開口4aの空間にはバリアメタル5およびエミッタ電極6が形成されている。ただし、バリアメタル5は必ずしも必要ではない。バリアメタル5が設けられない場合には、第1エミッタ電極6bは、開口4aの底部において半導体基板の上面に接する。
【0062】
第1エミッタ電極6bの上面は、第2凹部52および開口4aの直上に第3凹部53を含む。第3凹部53は、第2凹部52または開口4aに追従するように形成されている。
図5に示された第3凹部53は、第2凹部52および開口4aの両方の直上に形成されているが、それらのうち第2凹部52の直上には必ずしも形成されていなくてもよい。
【0063】
第2エミッタ電極6cは、第1エミッタ電極6b上に設けられている。例えば、第2エミッタ電極6cは、2種類以上の金属層を含む積層構造を有する。積層構造は、例えば、半導体基板の第1主面側から順にNi膜、Pd膜およびAu膜を有する。
【0064】
第2エミッタ電極6cの上面は、第3凹部53の直上に第4凹部54を含んでいてもよい。その第4凹部54は、第3凹部53に追従するように形成される。第4凹部54の深さは、第3凹部53の深さよりも浅いことが好ましい。第4凹部54の深さは、第2凹部52の深さおよび開口4aの深さよりも浅いことが好ましい。第4凹部54の深さは、第1凹部51の深さよりも浅いことが好ましい。
【0065】
第1エミッタ電極6bの厚みは、第2エミッタ電極6cの厚みよりも厚くてもよいし、逆に、第2エミッタ電極6cの厚みが、第1エミッタ電極6bの厚みよりも厚くてもよい。第1エミッタ電極6bの厚みが、第2エミッタ電極6cの厚みよりも厚い場合、応力耐量が向上する。第2エミッタ電極6cの厚みが、第1エミッタ電極6bの厚みよりも厚い場合、第2エミッタ電極6cの表面の濡れ性が向上し、高い組立性が実現される。
【0066】
図6および
図7は、IGBT領域10の構成を示す部分拡大断面図である。
図6は、
図4に示された領域Qにおける構成を示している。
図7は、
図6に示された領域Rにおける構成を示している。
【0067】
図3および
図4に示されるように、ダミートレンチ電極12aは、層間絶縁膜4に覆われた2つのゲートトレンチ電極11aの間に設けられている。言い換えると、層間絶縁膜4の開口4aの内側に、3つのダミートレンチ電極12aが設けられている。ダミートレンチ電極12aは、層間絶縁膜4に覆われておらず、エミッタ電極6に電気的に接続されている。
図4および
図6には、3つのダミートレンチ電極12aが示されているが、開口4aの内側に設けられるダミートレンチ電極12aの個数は、1つ以上である。
【0068】
図6および
図7に示されるように、ダミートレンチ電極12aの上面は、第1凹部51を含む。その第1凹部51は、ダミートレンチ電極12aの短手方向の上端の中央部に設けられている。第1凹部51の底部は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。ダミートレンチ電極12aの上端は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。第1凹部51は、開口4aの底部を形成している。
【0069】
ダミートレンチ電極12aに接触しているダミートレンチ絶縁膜12bの上面は、第5凹部55を含む。第5凹部55は、半導体基板の上面よりも下方に位置する。第5凹部55は、開口4aの底部を形成している。
【0070】
第1エミッタ電極6bは、バリアメタル5を介して層間絶縁膜4の開口4aを塞ぐように半導体基板上に設けられている。第1凹部51および第5凹部55上には、バリアメタル5が形成されているが、バリアメタル5が設けられない場合には、第1エミッタ電極6bが第1凹部51および第5凹部55に形成される。
【0071】
図6に示されるように、第1エミッタ電極6bの上面は、開口4aの直上に第3凹部53を含む。第3凹部53は、開口4aの内側に位置する第1凹部51の直上に凹部(
図6には図示せず)をさらに含んでいてもよい。第3凹部53は、第1凹部51または開口4aに追従するように形成される。
【0072】
第2エミッタ電極6cは、第1エミッタ電極6b上に設けられている。第2エミッタ電極6cの上面は、第3凹部53の直上に第4凹部54を含んでいてもよい。第4凹部54は、第3凹部53に追従するように形成される。
【0073】
図8は、半導体装置100,101のIGBT領域10の構成を示す断面図である。
図8は、
図3に示された破線B-Bにおける断面を示している。
【0074】
図8に示される断面は、半導体基板の第1主面側の表層としてn
+型ソース層13が設けられていない点で、
図4に示される断面とは異なる。
図3に示されたように、n
+型ソース層13は、半導体基板の第1主面側の表層として選択的に設けられている。そのため、
図8に示される断面においては、n
+型ソース層13が存在しない。
【0075】
図示は省略するが、
図8に示された構造においても、
図5から
図7に示された構成と同様に、半導体装置100および半導体装置101は、第1凹部51から第5凹部55および開口4aを含む。
【0076】
(3)ダイオード領域20の構造
図9は、半導体装置100,101のダイオード領域20の構成を示す部分拡大平面図である。
図9は、
図1または
図2に示された領域83における構成を拡大して示している。
【0077】
半導体装置100および半導体装置101は、ダイオード領域20に設けられたダイオードトレンチ21を含む。
【0078】
ダイオードトレンチ21は、一方向に延伸している。実施の形態におけるダイオードトレンチ21は、アクティブトレンチ11およびダミートレンチ12と同じ方向に延伸している。
【0079】
ダイオードトレンチ21は、ダイオードトレンチ絶縁膜21bおよびダイオードトレンチ電極21aを含む。ダイオードトレンチ21の断面構造の詳細は後述するが、ダイオードトレンチ絶縁膜21bは、半導体基板の第1主面から深さ方向に形成されたトレンチ構造の内壁に沿って形成されている。ダイオードトレンチ電極21aは、そのダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してトレンチ構造の内部に形成されている。
【0080】
ダイオード領域20においては、半導体基板の第1主面側の表層として、p+型コンタクト層24とp型アノード層25とが選択的に設けられている。実施の形態において、p+型コンタクト層24とp型アノード層25とは、ダイオードトレンチ21の延伸方向(長手方向)に沿って、交互に設けられている。ダイオードトレンチ21は、それらp+型コンタクト層24とp型アノード層25とを横切っている。p+型コンタクト層24およびp型アノード層25は、互いに隣り合う2つのダイオードトレンチ21の間に設けられている。
【0081】
図10は、半導体装置100,101のダイオード領域20の構成を示す断面図である。
図10は、
図9に示された破線C-Cにおける断面を示している。
【0082】
半導体装置100および半導体装置101は、ダイオード領域20において、p+型コンタクト層24、p型アノード層25、n型キャリア蓄積層2、n-型ドリフト層1、n型バッファ層3、n+型カソード層26、ダイオードトレンチ21、バリアメタル5、エミッタ電極6およびコレクタ電極7を含む。
【0083】
1つのダイオードセルは、例えば、ダイオードトレンチ21ごとに区分けされた領域に対応する。ダイオードセルは、p+型コンタクト層24、p型アノード層25、n型キャリア蓄積層2、n-型ドリフト層1、n型バッファ層3、n+型カソード層26、ダイオードトレンチ21、バリアメタル5、エミッタ電極6およびコレクタ電極7を含む。
【0084】
ダイオード領域20における半導体基板の第1主面は、p
+型コンタクト層24の表面(上面)に対応する。そのダイオード領域20における第1主面は、IGBT領域10における第1主面から連続しており、互いに同一面である。ダイオード領域20における半導体基板の第2主面は、n
+型カソード層26の表面(下面)に対応する。ダイオード領域20における第2主面は、IGBT領域10における第2主面から連続しており、互いに同一面である。
図10において、半導体基板はp
+型コンタクト層24の上面からn
+型カソード層26の下面までの範囲に対応する。
【0085】
n-型ドリフト層1は、半導体基板からなる。ダイオード領域20におけるn-型ドリフト層1は、IGBT領域10におけるn-型ドリフト層1と同様に、半導体基板の第1主面と第2主面との間に設けられている。ダイオード領域20のn-型ドリフト層1は、IGBT領域10のn-型ドリフト層1と連続して一体的に形成されている。言い換えると、ダイオード領域20およびIGBT領域10のn-型ドリフト層1は、同一の半導体基板に形成されている。
【0086】
n型キャリア蓄積層2は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。ダイオード領域20に設けられるn型キャリア蓄積層2は、IGBT領域10に設けられるn型キャリア蓄積層2と同一の構成を有する。例えば、ダイオード領域20におけるn型キャリア蓄積層2の厚さおよび不純物濃度は、IGBT領域10におけるn型キャリア蓄積層2のそれらと同一である。
【0087】
p型アノード層25は、n型キャリア蓄積層2に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。p型アノード層25は、p型不純物として、例えばボロンまたはアルミニウムを含む半導体層である。p型アノード層25におけるp型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+12/cm3以上1.0E+19/cm3以下である。p型アノード層25のp型不純物の濃度は、例えば、IGBT領域10におけるp型ベース層15のp型不純物の濃度と同じである。p型不純物の濃度が互いに同じである場合、p型アノード層25は、p型ベース層15と同時に形成されてもよい。または例えば、p型アノード層25のp型不純物の濃度は、IGBT領域10におけるp型ベース層15のp型不純物の濃度よりも低くてもよい。p型アノード層25のp型不純物の濃度が低い場合、ダイオード動作時にダイオード領域20に注入される正孔の量が減少する。そのため、ダイオード動作時のリカバリ損失が低減する。
【0088】
p
+型コンタクト層24は、p型アノード層25に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。
図9に示されるように、p
+型コンタクト層24は、半導体基板の第1主面側の表層として、p型アノード層25の上方に選択的に設けられている。ただし、
図10に示されるC-C断面においては、p
+型コンタクト層24はp型アノード層25の全面を覆っている。p
+型コンタクト層24は、p型不純物として、例えばボロンまたはアルミニウムを含む半導体層である。p
+型コンタクト層24におけるp型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+15/cm
3以上1.0E+20/cm
3以下である。p
+型コンタクト層24のp型不純物の濃度は、IGBT領域10におけるp
+型コンタクト層14のp型不純物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。p
+型コンタクト層24とp型アノード層25とは、合わせて1つのp型アノード層と定められていてもよい。
【0089】
n型バッファ層3は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第2主面側に設けられている。ダイオード領域20に設けられるn型バッファ層3は、IGBT領域10に設けられるn型バッファ層3と同一の面内に延伸し、同一の構成を有する。例えば、ダイオード領域20におけるn型バッファ層3の厚さおよび不純物濃度は、IGBT領域10におけるn型バッファ層3のそれらと同一である。n型バッファ層3とn-型ドリフト層1とは、合わせて1つのn型ドリフト層と定められていてもよい。さらには、n型キャリア蓄積層2とn型バッファ層3とn-型ドリフト層1とが、合わせて1つのn型ドリフト層と定められていてもよい。また、n型バッファ層3は、必ずしも必要ではなく、n型バッファ層3の位置にn-型ドリフト層1が設けられていてもよい。
【0090】
n+型カソード層26は、n型バッファ層3に対して半導体基板の第2主面側に設けられている。n+型カソード層26は、n型不純物として、例えばヒ素またはリンを含む半導体層である。n+型カソード層26におけるn型不純物の濃度は、好ましくは、1.0E+16/cm3以上1.0E+21/cm3以下である。
【0091】
n+型カソード層26は、ダイオード領域20の全部に設けられていてもよいし、その一部に設けられていてもよい。図示は省略するが、半導体装置100および半導体装置101は、ダイオード領域20における半導体基板の第2主面を構成する半導体層として、n+型カソード層26とp+型カソード層とが交互に配置された半導体層を含んでいてもよい。そのような構造は、例えば、n+型カソード層26が形成された領域の一部に、p型不純物を選択的に注入する工程により形成される。n+型カソード層26とp+型カソード層とが交互に配置された半導体層を含むダイオードは、RFC(Relaxed Field of Cathode)ダイオードと言われる。
【0092】
ダイオードトレンチ21は、半導体基板の第1主面、つまり半導体基板の上面に設けられている。ダイオードトレンチ21は、半導体基板の第1主面からp+型コンタクト層24、p型アノード層25およびn型キャリア蓄積層2を貫通し、n-型ドリフト層1に達している。
【0093】
ダイオードトレンチ絶縁膜21bは、半導体基板の第1主面から深さ方向に形成されたトレンチ構造の内壁に沿って形成されている。ダイオードトレンチ絶縁膜21bは、例えば、酸化膜である。
【0094】
ダイオードトレンチ電極21aは、そのダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してトレンチ構造の内部に形成されている。ダイオードトレンチ電極21aの底部は、ダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn-型ドリフト層1に対向している。ダイオードトレンチ電極21aは、例えば、導電性のポリシリコンで形成されている。
【0095】
バリアメタル5は、p+型コンタクト層24上およびダイオードトレンチ電極21a上に設けられている。バリアメタル5は、IGBT領域10におけるバリアメタル5と同一の構成を有していてもよい。バリアメタル5は、例えば、Ti,TiN,TiSiなど、チタンを含む金属で形成されている。バリアメタル5は、p+型コンタクト層24およびダイオードトレンチ電極21aにオーミック接触している。
【0096】
エミッタ電極6は、バリアメタル5上に設けられる。エミッタ電極6は、IGBT領域10におけるエミッタ電極6から連続している。エミッタ電極6は、例えば、アルミニウム合金(Al―Si系合金)で形成されることが好ましい。エミッタ電極6は、バリアメタル5を介して、ダイオードトレンチ電極21aおよびp+型コンタクト層24に電気的に接続されている。
【0097】
バリアメタル5とエミッタ電極6とが、合わせて1つのエミッタ電極と定められていてもよい。バリアメタル5は必ずしも必要ではない。バリアメタル5が設けられない場合、エミッタ電極6は、p型アノード層25上、p+型コンタクト層24上およびダイオードトレンチ電極21a上に設けられ、それらとオーミック接触する。ダイオードトレンチ電極21a上の一部には、層間絶縁膜4が設けられていてもよい。その場合、エミッタ電極6は、ダイオードトレンチ電極21a上のいずれかの領域において、そのダイオードトレンチ電極21aと電気的に接続される。
【0098】
コレクタ電極7は、n+型カソード層26上に設けられる。コレクタ電極7は、IGBT領域10におけるコレクタ電極7から連続している。コレクタ電極7は、アルミニウム合金で形成されることが好ましい。コレクタ電極7は、n+型カソード層26にオーミック接触している。
【0099】
図示は省略するが、
図10に示されたダイオード領域20においても、半導体装置100および半導体装置101は、第1凹部51、第3凹部53、第4凹部54および第5凹部55を含む。
【0100】
半導体装置100および半導体装置101は、複数のトレンチとして、
図4に示される複数のアクティブトレンチ11と
図10に示される複数のダイオードトレンチ21とを含む。アクティブトレンチ11の内部には、第1トレンチ電極として、ゲートトレンチ電極11aが設けられている。ダイオードトレンチ21の内部には、第2トレンチ電極として、ダイオードトレンチ電極21aが設けられている。ゲートトレンチ電極11aおよびダイオードトレンチ電極21aを合わせて、複数のトレンチ電極と言う。層間絶縁膜4は、それら複数のトレンチ電極のうち2以上の第1トレンチ電極、すなわち2以上のゲートトレンチ電極11aを覆っている。
【0101】
ダイオード領域20における層間絶縁膜4の開口4aは、層間絶縁膜4に覆われた複数のゲートトレンチ電極11aの間に設けられている。例えば、
図1または
図2に示されるように、1つのダイオード領域20の両端が2つのIGBT領域10に挟まれている場合、開口4aは、一方のIGBT領域10のゲートトレンチ電極11aと他方のIGBT領域10のゲートトレンチ電極11aとの間に形成される。
図10に示されるp
+型コンタクト層24およびダイオードトレンチ21の上面は、その開口4aの底部に対応している。
【0102】
言い換えると、ダイオードトレンチ電極21aは、層間絶縁膜4の開口4aの内側に設けられている。ダイオード領域20におけるダイオードトレンチ電極21aは、層間絶縁膜4に覆われておらず、エミッタ電極6に電気的に接続されている。そのダイオードトレンチ電極21aの個数は、1つ以上である。
【0103】
図6に示されるダミートレンチ電極12aと同様に、ダイオードトレンチ電極21aの上面は、第1凹部51を含む。その第1凹部51は、ダイオードトレンチ電極21aの短手方向の上端の中央部に設けられている。第1凹部51の底部は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。ダイオードトレンチ電極21aの上端は、半導体基板の上面よりも低いに設けられている。第1凹部51は、開口4aの底部を形成している。
【0104】
図6および
図7に示されるダミートレンチ絶縁膜12bの上面と同様に、ダイオードトレンチ絶縁膜21bの上面は、第5凹部55を含む。第5凹部55は、半導体基板の上面よりも下方に位置する。第5凹部55は、開口4aの底部を形成している。
【0105】
図6に示されるダミートレンチ12が形成された領域と同様に、第1エミッタ電極6bは、バリアメタル5を介して層間絶縁膜4の開口4aを塞ぐように半導体基板上に設けられている。第1凹部51および第5凹部55上には、バリアメタル5が形成されている。バリアメタル5が設けられない場合には、第1エミッタ電極6bが第1凹部51および第5凹部55に形成される。
【0106】
第1エミッタ電極6bの上面は、開口4aの直上に第3凹部53を含む。第3凹部53は、開口4aの内側に位置する第1凹部51の直上に凹部(図示せず)をさらに含んでいてもよい。第3凹部53は、第1凹部51または開口4aに追従するように形成される。
【0107】
第2エミッタ電極6cは、第1エミッタ電極6b上に設けられている。第2エミッタ電極6cの上面は、第3凹部53の直上に第4凹部54を含んでいてもよい。第4凹部54は、第3凹部53に追従するように形成される。
【0108】
図11は、半導体装置100,101のダイオード領域20の構成を示す断面図である。
図11は、
図9に示された破線D-Dにおける断面を示す。
【0109】
図11に示される断面は、半導体基板の第1主面側のp
+型コンタクト層24が設けられていない点で、
図10に示される断面とは異なる。
図9に示されるように、p
+型コンタクト層24は、半導体基板の第1主面側の表層として選択的に設けられている。そのため、
図11に示される断面においては、p
+型コンタクト層24が存在しない。また、ダイオード領域20のうち、p
+型コンタクト層24が設けられていない領域においては、半導体基板の第1主面は、p型アノード層25の表面(上面)に対応する。その
図11に示される断面において、1つのダイオードセルは、p型アノード層25、n型キャリア蓄積層2、n
-型ドリフト層1、n型バッファ層3、n
+型カソード層26、バリアメタル5、エミッタ電極6およびコレクタ電極7を含む。
【0110】
図示は省略するが、
図11に示された構造においても、半導体装置100および半導体装置101は、第1凹部51、第3凹部53、第4凹部54および第5凹部55を含む。
【0111】
また、ダイオード領域20において、第1凹部51、第3凹部53、第4凹部54および第5凹部55が形成される構成は上記に限定されるものではない。複数のダイオードトレンチ21のうち一部のダイオードトレンチ(図示せず)が層間絶縁膜4によって覆われる半導体装置においても、第1凹部51、第3凹部53、第4凹部54および第5凹部55が形成される。その場合、複数のダイオードトレンチ21のうち層間絶縁膜4に覆われた第1ダイオードトレンチ電極が、第1トレンチ電極であり、層間絶縁膜4に覆われていない第2ダイオードトレンチ電極が、第2トレンチ電極である。第1ダイオードトレンチ電極は、その第1ダイオードトレンチ電極上のいずれかの領域においてエミッタ電極6と電気的に接続される。ダイオード領域20における開口4aは、層間絶縁膜4に覆われた2つの第1ダイオードトレンチ電極の間に設けられる。少なくとも1つの第2ダイオードトレンチ電極が、その層間絶縁膜4の開口4aの内側に設けられる。このような構成であっても、第1凹部51、第3凹部53、第4凹部54および第5凹部55がダイオード領域20に形成される。
【0112】
(4)IGBT領域10とダイオード領域20との境界部分の構造
図12は、IGBT領域10とダイオード領域20との境界部分の構成を示す断面図である。
図12は、
図1または
図2に示される破線G-Gにおける断面を示す。
【0113】
IGBT領域10の第2主面側に設けられたp型コレクタ層16は、IGBT領域10とダイオード領域20との境界から距離U1だけダイオード領域20にはみ出している。p型コレクタ層16がダイオード領域20にはみ出さない構造と比較して、n+型カソード層26とアクティブトレンチ11との距離が拡大する。このような構造は、還流ダイオードの動作時に、ゲート駆動電圧がゲートトレンチ電極11aに印加された場合であっても、アクティブトレンチ11に隣接して形成されるチャネルからn+型カソード層26へ流れる電流を減少させる。距離U1は、例えば100μmである。ただし、半導体装置100または半導体装置101の用途によっては、距離U1が0μmあるいは100μmよりも小さい距離であってもよい。
【0114】
(5)終端領域30の構造
図13は、IGBT領域10と終端領域30との境界部分の構成を示す断面図である。
図13は、
図1または
図2に示される破線E-Eにおける断面を示す。
図14は、ダイオード領域20と終端領域30との境界部分の構成を示す断面図である。
図14は、
図1に示される破線F-Fにおける断面を示す。
【0115】
半導体装置100および半導体装置101は、終端領域30において、p型終端ウェル層31、n+型チャネルストッパ層32、n-型ドリフト層1、n型バッファ層3、p型終端コレクタ層16a、層間絶縁膜4、バリアメタル5、エミッタ電極6、終端電極6a、半絶縁性膜33、終端保護膜34およびコレクタ電極7を含む。
【0116】
上記の構造のうち、p型終端ウェル層31、n+型チャネルストッパ層32、n-型ドリフト層1、n型バッファ層3およびp型終端コレクタ層16aは、半導体基板の第1主面と第2主面との間に設けられている。
【0117】
終端領域30における半導体基板の第1主面は、n-型ドリフト層1、p型終端ウェル層31およびn+型チャネルストッパ層32の表面(上面)に対応する。その終端領域30における第1主面は、IGBT領域10またはダイオード領域20における第1主面から連続しており、それらは互いに同一面である。終端領域30における半導体基板の第2主面は、p型終端コレクタ層16aの表面(下面)に対応する。その終端領域30における第2主面は、IGBT領域10またはダイオード領域20における第2主面から連続しており、それらは互いに同一面である。
【0118】
n-型ドリフト層1は、IGBT領域10およびダイオード領域20のn-型ドリフト層1と同様に、半導体基板の第1主面と第2主面との間に設けられている。終端領域30におけるn-型ドリフト層1の一部は、半導体基板の表層として第1主面に露出している。終端領域30のn-型ドリフト層1は、IGBT領域10およびダイオード領域20のn-型ドリフト層1と連続して一体的に形成されている。
【0119】
p型終端ウェル層31は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。p型終端ウェル層31は、平面視において、セル領域を取り囲んでいる。実施の形態においては、3つのp型終端ウェル層31が、平面視において、三重のリングを形成してセル領域を取り囲んでいる。その3つのp型終端ウェル層31は、FLRを形成している。p型終端ウェル層31の個数は、3つに限定されるものではない。p型終端ウェル層31の個数は、半導体装置100または半導体装置101の耐圧設計によって適宜選択される。p型終端ウェル層31は、p型不純物として、例えばボロンまたはアルミニウムを含む半導体層である。p型終端ウェル層31におけるp型不純物の濃度は1.0E+14/cm3以上1.0E+19/cm3以下である。
【0120】
n+型チャネルストッパ層32は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第1主面側に設けられている。n+型チャネルストッパ層32は、平面視において、p型終端ウェル層31の外側に設けられている。n+型チャネルストッパ層32は、p型終端ウェル層31を取り囲むように設けられている。
【0121】
n型バッファ層3は、n-型ドリフト層1に対して半導体基板の第2主面側に設けられている。終端領域30に設けられるn型バッファ層3は、IGBT領域10またはダイオード領域20に設けられるn型バッファ層3と同様の構成を有する。終端領域30に設けられるn型バッファ層3は、IGBT領域10またはダイオード領域20に設けられるn型バッファ層3と連続して一体的に形成されている。
【0122】
p型終端コレクタ層16aは、n型バッファ層3に対して半導体基板の第2主面側に設けられている。p型終端コレクタ層16aは、IGBT領域10に設けられるp型コレクタ層16と連続して一体的に形成されている。終端領域30のp型終端コレクタ層16aとIGBT領域10のp型コレクタ層16とは、合わせて1つのp型コレクタ層と定められていてもよい。
【0123】
図14に示されるように、p型終端コレクタ層16aは、ダイオード領域20と終端領域30との境界から距離U2だけダイオード領域20にはみ出している。p型終端コレクタ層16aがダイオード領域20にはみ出さない構造と比較して、n
+型カソード層26とp型終端ウェル層31との距離が拡大する。このような構造は、p型終端ウェル層31が還流ダイオードのアノードとして動作することを防ぐ。距離U2は、例えば100μmである。
【0124】
層間絶縁膜4は、半導体基板の第1主面上に設けられている。層間絶縁膜4は、コンタクトホールを有する。コンタクトホールは、p型終端ウェル層31上およびn+型チャネルストッパ層32上に設けられる。コンタクトホールからは、p型終端ウェル層31またはn+型チャネルストッパ層32の表面が露出している。
【0125】
バリアメタル5は、p型終端ウェル層31上およびn+型チャネルストッパ層32上に設けられる。
【0126】
エミッタ電極6は、IGBT領域10またはダイオード領域20に近いp型終端ウェル層31に、バリアメタル5を介して電気的に接続されている。終端領域30におけるエミッタ電極6は、IGBT領域10またはダイオード領域20のエミッタ電極6と連続して一体的に形成されている。
【0127】
終端電極6aは、エミッタ電極6とは分離され、エミッタ電極6よりも外側に設けられている。終端電極6aは、コンタクトホール内のバリアメタル5を介して、p型終端ウェル層31およびn+型チャネルストッパ層32に電気的に接続されている。
【0128】
半絶縁性膜33は、エミッタ電極6と終端電極6aとを電気的に接続している。半絶縁性膜33は、例えば、半絶縁性シリコン窒化膜(semi-insulating Silicon Nitride:sin SiN)である。
【0129】
終端保護膜34は、エミッタ電極6、終端電極6aおよび半絶縁性膜33を覆う。終端保護膜34は、例えば、ポリイミドで形成される。
【0130】
コレクタ電極7は、p型終端コレクタ層16a上、つまり半導体基板の第2主面上に設けられている。終端領域30におけるコレクタ電極7は、IGBT領域10およびダイオード領域20におけるコレクタ電極7と連続して一体的に形成されている。
【0131】
(6)半導体装置100,101の製造方法
図15から
図26は、半導体装置100,101の製造方法を示す図である。
図15から
図22は、半導体装置100,101の第1主面側の構造を形成する工程を示している。
図23から
図26は、半導体装置100,101の第2主面側の構造を形成する工程を示している。各図は、IGBT領域10とダイオード領域20との境界部分の断面、すなわち
図1または
図2に示される破線G-Gにおける断面を示している。
【0132】
図15は、半導体基板を準備する工程を示す図である。実施の形態においては、半導体基板として、n型不純物を含むn型ウエハが準備される。半導体基板は、FZ(Floating Zone)法で作製された、いわゆるFZウエハであってもよいし、MCZ(Magnetic field applied CZochralki)法で作製された、いわゆるMCZウエハであってもよい。または、半導体基板は、昇華法あるいはCVD(chemical vapor deposition)によって作製されたウエハであってもよい。この工程においては、その半導体基板全体がn
-型ドリフト層1に対応する。n型不純物の濃度は、半導体装置100または半導体装置101の耐圧仕様によって適宜選択される。例えば、半導体装置100,101の耐圧仕様が1200Vである場合、n型不純物の濃度はn
-型ドリフト層1の比抵抗が40~120Ω・cm程度となるように調整される。
図15には、半導体基板全体がn
-型ドリフト層1であるn型ウエハを準備する工程が示されているが、半導体基板を準備する工程はそれに限定されるものではない。例えば、半導体基板の第1主面または第2主面からn型不純物をイオン注入する工程と、熱処理によってそのn型不純物を拡散させる工程とによって、n
-型ドリフト層1を含む半導体基板が準備されてもよい。
【0133】
半導体基板には、IGBTセルが配置されるべきIGBT領域10と、ダイオードセルが配置されるべきダイオード領域20とが定められている。
図15には示されていないが、IGBT領域10およびダイオード領域20の周囲には、耐圧保持構造が形成されるべき終端領域30が定められている。以下では、主としてIGBT領域10およびダイオード領域20における各構造の製造方法を説明する。
【0134】
図16は、n型キャリア蓄積層2とp型ベース層15とp型アノード層25とを形成する工程を示す図である。n型キャリア蓄積層2を形成するためのn型不純物が半導体基板の第1主面側からn
-型ドリフト層1の表層にイオン注入される。そのn型不純物は、例えばリンである。p型ベース層15およびp型アノード層25を形成するためのp型不純物が半導体基板の第1主面にイオン注入される。そのp型不純物は、例えばボロンである。イオン注入後に熱処理が施される。その熱処理によってn型不純物およびp型不純物は拡散し、n型キャリア蓄積層2、p型ベース層15およびp型アノード層25が形成される。
【0135】
上記のイオン注入の際、半導体基板の第1主面には、所定の領域に開口を有するマスクが形成される。n型不純物およびp型不純物は、マスクの開口に対応した領域に注入される。そのマスクは、半導体基板の第1主面にレジストを塗布する工程、および、フォトリソグラフィー(写真製版)技術によってレジストの所定の領域に開口を形成する工程によって形成される。以下、このような所定の領域に開口を有するマスクを形成する処理を、マスク処理と言う。n型不純物およびp型不純物は、マスク処理によって所定の領域に注入される。その結果、n型キャリア蓄積層2、p型ベース層15およびp型アノード層25は、半導体基板の第1主面の面内に選択的に形成される。
【0136】
p型ベース層15およびp型アノード層25は、同時にp型不純物がイオン注入されることによって形成されてもよい。この場合、p型ベース層15およびp型アノード層25の深さおよびp型不純物の濃度は、互いに同一の構成を有する。一方で、p型ベース層15およびp型アノード層25は、マスク処理によって別々にp型不純物がイオン注入されて形成されてもよい。この場合、p型ベース層15およびp型アノード層25の深さまたはp型不純物の濃度は、互いに異なる構成を有する。例えば、IGBT領域10に設けられた開口を介して、p型ベース層15のためのp型不純物がイオン注入される。ダイオード領域20に設けられた開口を介して、p型アノード層25のためのp型不純物がイオン注入される。
【0137】
図示は省略するが、終端領域30におけるp型終端ウェル層31とダイオード領域20におけるp型アノード層25とは、同時にp型不純物がイオン注入されることによって形成されてもよい。この場合、p型終端ウェル層31およびp型アノード層25の深さおよびp型不純物濃度は、互いに同一である。p型終端ウェル層31およびp型アノード層25のp型不純物の濃度が互いに異なる場合であっても、p型不純物は同時にイオン注入されてもよい。ただし、この場合、p型終端ウェル層31が形成される領域およびp型アノード層25が形成される領域のうち少なくとも一方には、メッシュ形状を有するマスクが設けられる。そのメッシュの開口率に応じて、p型不純物の注入量が制御される。
【0138】
p型終端ウェル層31およびp型アノード層25は、マスク処理によって別々にp型不純物がイオン注入されることによって形成されてもよい。この場合、p型終端ウェル層31およびp型アノード層25の深さまたはp型不純物濃度は、互いに異なる。
【0139】
p型終端ウェル層31、p型ベース層15およびp型アノード層25は、同時にp型不純物がイオン注入されることによって形成されてもよい。p型終端ウェル層31は、IGBT領域10およびダイオード領域20を加工する前にp型不純物がイオン注入されて形成されてもよい。
【0140】
図17は、n
+型ソース層13、p
+型コンタクト層14およびp
+型コンタクト層24を形成する工程を示す図である。n型不純物が半導体基板の第1主面側からp型ベース層15の表層にイオン注入される。この際、n型不純物は、マスク処理によって、IGBT領域10内に注入される。これにより、n
+型ソース層13がIGBT領域10におけるp型ベース層15の表層に選択的に形成される。n型不純物は、例えば、砒素またはリンである。
【0141】
また、p型不純物が、半導体基板の第1主面側からイオン注入される。この際、IGBT領域10内の所定の領域およびダイオード領域20内の所定の領域にp型不純物が注入されるようマスクの開口が配置される。このマスク処理により、p+型コンタクト層14およびp+型コンタクト層24が、IGBT領域10およびダイオード領域20におけるp型ベース層15の表層にそれぞれ選択的に形成される。p型不純物は、例えば、ボロンまたはアルミニウムである。
【0142】
図18は、トレンチ構造8を形成する工程を示す図である。トレンチ構造8は、半導体基板の第1主面にハードマスク用の材料を堆積させる工程、フォトリソグラフィーによってトレンチ構造8に対応する部分に開口を含むハードマスクを形成する工程、および、ハードマスクを介して半導体基板をエッチングする工程によって、形成される。ハードマスクは、例えばSiO
2などの薄膜である。
【0143】
IGBT領域10におけるトレンチ構造8は、半導体基板の第1主面からp型ベース層15およびn型キャリア蓄積層2を貫通し、n-型ドリフト層1に達する。IGBT領域10に形成される複数のトレンチ構造8のうち一部のトレンチは、n+型ソース層13も貫通し、別の一部のトレンチ構造8は、p+型コンタクト層14も貫通している。ダイオード領域20におけるトレンチ構造8は、半導体基板の第1主面からp型アノード層25およびn型キャリア蓄積層2を貫通し、n-型ドリフト層1に達する。半導体基板の表層として、p+型コンタクト層24が設けられている領域においては、トレンチ構造8は、そのp+型コンタクト層24も貫通している。
【0144】
図18において、IGBT領域10におけるトレンチ構造8のピッチは、ダイオード領域20におけるトレンチ構造8のピッチと同じである。しかし、IGBT領域10におけるトレンチ構造8のピッチは、ダイオード領域20におけるトレンチ構造8のピッチと異なっていてもよい。トレンチ構造8のピッチは、マスク処理におけるマスクパターンにより適宜変更される。
【0145】
図19は、酸化膜9を形成する工程を示す図である。半導体基板が、酸素を含む雰囲気中で加熱される。酸化膜9がトレンチ構造8の内壁および半導体基板の第1主面に形成される。IGBT領域10においては、n
+型ソース層13を貫通しているトレンチ構造8の内壁に形成される酸化膜9が、ゲートトレンチ絶縁膜11bに対応する。同様に、IGBT領域10において、p
+型コンタクト層14を貫通しているトレンチ構造8の内壁に形成される酸化膜9が、ダミートレンチ絶縁膜12bに対応する。ダイオード領域20においては、トレンチ構造8に形成された酸化膜9が、ダイオードトレンチ絶縁膜21bに対応する。なお、半導体基板の第1主面に形成された酸化膜9は後の工程で除去される。
【0146】
図20は、ゲートトレンチ電極11a、ダミートレンチ電極12aおよびダイオードトレンチ電極21aを形成する工程を示す図である。n型またはp型の不純物がドープされたポリシリコンが、CVD(chemical vapor deposition)などによってトレンチ構造8の内部に堆積する。その結果、ゲートトレンチ電極11aが、ゲートトレンチ絶縁膜11bを介してトレンチ構造8の内部に形成される。ダミートレンチ電極12aが、ダミートレンチ絶縁膜12bを介してトレンチ構造8の内部に形成される。ダイオードトレンチ電極21aが、ダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してトレンチ構造8の内部に形成される。
【0147】
図21は、層間絶縁膜4を形成する工程を示す図である。層間絶縁膜4は、複数のトレンチ電極のうち、ゲートトレンチ電極11a上に形成される。この工程においては、まず、層間絶縁膜4が半導体基板の上面に形成される。層間絶縁膜4は、例えば、酸化膜としてSiO
2を含む。層間絶縁膜4は、例えば、酸化膜を含む単層構造を有する。単層構造の酸化膜は、例えば、TEOS(Tetraethoxysilane)によって形成される。層間絶縁膜4は、複数の酸化膜を含む積層構造を有していてもよい。層間絶縁膜4が積層構造を有する場合、その複数の酸化膜は、互いにドーパント濃度の異なる2種類以上の酸化膜で構成される。その2種類以上の酸化膜のうち、1層目の酸化膜はボロンおよびリンを含むTEOS(BPTEOS)によって形成され、2層目の酸化膜はTEOSによって形成される。
【0148】
その後、層間絶縁膜4にマスク処理が施され、所定の位置の層間絶縁膜4および酸化膜9がエッチングされる。具体的には、ダミートレンチ電極12aおよびダイオードトレンチ電極21aの上の層間絶縁膜4および酸化膜9が除去される。それにより、層間絶縁膜4の開口4aが形成される。開口4aは、層間絶縁膜4に覆われたゲートトレンチ電極11aの間に位置する。開口4aからは、n+型ソース層13、p+型コンタクト層14、p+型コンタクト層24、ダミートレンチ12の上面およびダイオードトレンチ21の上面が露出する。ダイオードトレンチ電極21aおよびダミートレンチ電極12aの上面の第1凹部51は、開口4aの底部の一部を形成している。
【0149】
また、開口4aの形成の際、ダミートレンチ電極12aに接触しているダミートレンチ絶縁膜12bの上部およびダイオードトレンチ電極21aに接触しているダイオードトレンチ絶縁膜21bの上部も除去される。それにより、
図6に示されるようなダミートレンチ絶縁膜12bの上面およびダイオードトレンチ絶縁膜21bの上面に、第5凹部55が形成される。
【0150】
図22は、バリアメタル5およびエミッタ電極6を形成する工程を示す図である。バリアメタル5が、半導体基板の第1主面および層間絶縁膜4上に形成される。バリアメタル5は、例えば、Ti,TiN,TiSiなど、チタンを含む金属であることが好ましい。バリアメタル5は、PVD(physical vapor deposition)またはCVDによって製膜される。
【0151】
エミッタ電極6がバリアメタル5上に形成される。
図5および
図6に示されるように、エミッタ電極6は、第1エミッタ電極6bおよび第2エミッタ電極6cを含む。第1エミッタ電極6bは、スパッタリング、蒸着等のPVD法によって形成される。第1エミッタ電極6bは、例えば、アルミシリコン合金(Al-Si系合金)を含む。第2エミッタ電極6cは、第1エミッタ電極6bの上に無電解めっき法あるいは電解めっき法によって形成される。第2エミッタ電極6cは、例えば、ニッケルまたはニッケル合金を含む。第2エミッタ電極6cは、例えば、2種類以上の金属層を含む積層構造を有していてもよい。その積層構造は、例えば、Ni膜、Pd膜およびAu膜で構成され、めっき法で形成される。
【0152】
めっき法は、厚い金属膜を容易に形成することを可能にする。厚膜のエミッタ電極6においては、熱容量が増加するため、エミッタ電極6の耐熱性が向上する。アルミシリコン合金上に、めっき処理でニッケル合金をさらに形成する場合、そのめっき処理は半導体基板の第2主面側の加工が行われた後に実施してもよい。
【0153】
図23は、半導体基板を薄板化する工程を示す図である。半導体基板の第2主面が研削され、半導体装置100,101の設計に応じた所定の厚さに薄板化される。研削後の半導体基板の厚さは、例えば、80μm以上200μm以下である。
【0154】
図24は、n型バッファ層3およびp型コレクタ層16を形成する工程を示す図である。n型バッファ層3の形成のためのn型不純物が、半導体基板の第2主面側からn
-型ドリフト層1の表層にイオン注入される。n型不純物として、例えば、リンが注入されてもよいし、プロトンが注入されてもよい。または例えば、リンおよびプロトンの両方が注入されてもよい。
【0155】
プロトンは、比較的低い加速エネルギーで半導体基板の第2主面から深い位置にまで注入される。プロトンの注入深さは、加速エネルギーの変更によって比較的容易に制御される。このため、加速エネルギーを変更しながら、プロトンが複数回イオン注入された場合、リンを含むn型バッファ層3よりも、半導体基板の厚さ方向に幅が広いn型バッファ層3が形成される。
【0156】
リンは、プロトンと比較して、n型不純物としての活性化率が高い。薄板化した半導体基板であっても、リンを含むn型バッファ層3は、より確実に空乏層の拡大によるパンチスルーの発生を低減させる。半導体基板をより一層薄板化するためには、プロトンおよびリンの両方を含むn型バッファ層3が形成されることが好ましい。その場合、プロトンはリンよりも半導体基板の第2主面から深い位置に注入される。
【0157】
p型コレクタ層16の形成のためのp型不純物が、半導体基板の第2主面側からイオン注入される。p型不純物として、例えば、ボロンが注入される。イオン注入後、半導体基板の第2主面にレーザーが照射される。そのレーザーアニールによって、注入されたボロンが活性化し、p型コレクタ層16が形成される。
【0158】
このレーザーアニールの際、半導体基板の第2主面から比較的浅い位置に注入されたn型不純物のリンも同時に活性化される。プロトンは350℃~500℃程度の比較的低いアニール温度で活性化される。そのため、プロトンが注入された後、そのプロトンの活性化の工程以外で、半導体基板が350℃~500℃よりも高い温度に加熱されないことが好ましい。レーザーアニールは、半導体基板の第2主面近傍のみを高温に加熱する。そのため、レーザーアニールは、プロトンの注入後におけるn型不純物またはp型不純物の活性化に有効である。
【0159】
n型バッファ層3は、IGBT領域10、ダイオード領域20および終端領域30に形成されてもよいし、IGBT領域10またはダイオード領域20のみに形成されてもよい。p型コレクタ層16は、終端領域30にも形成される。ここでは、終端領域30のp型コレクタ層16は、p型終端コレクタ層16aに対応する。
【0160】
図25は、n
+型カソード層26を形成する工程を示す図である。n
+型カソード層26の形成のためのn型不純物が、ダイオード領域20における半導体基板の第2主面にイオン注入される。n型不純物として、リンが注入される。この際、p型コレクタ層16とn
+型カソード層26との境界が、IGBT領域10とダイオード領域20との境界から距離U1だけダイオード領域20側に入り込むように、n型不純物はマスク処理によって選択的に注入される。
【0161】
n+型カソード層26を形成するためのn型不純物の注入量は、p型コレクタ層16に含まれるp型不純物の注入量より多い。n+型カソード層26のn型不純物は、p型コレクタ層16が形成されている領域に注入される。すなわち、そのn型不純物の注入により、p型半導体をn型半導体に変更する必要がある。そのため、n+型カソード層26が形成される領域の全てにおいて、n型不純物の濃度がp型不純物の濃度より高くなるように、n型不純物が注入される。
【0162】
図25においては、第2主面からのp型コレクタ層16の深さとn
+型カソード層26の深さとが同じである例が示されているが、p型コレクタ層16およびn
+型カソード層26の深さの関係はそれに限定されるものではない。n
+型カソード層26の深さは、p型コレクタ層16の深さ以上である。
【0163】
図26は、コレクタ電極7を形成する工程を示す図である。コレクタ電極7は、IGBT領域10、ダイオード領域20および終端領域30における第2主面に形成される。コレクタ電極7は、半導体基板の第2主面の全面に亘って形成されてもよい。
【0164】
コレクタ電極7は、アルミシリコン合金、チタン等を含む。コレクタ電極7は、スパッタリング、蒸着等のPVDによって形成される。コレクタ電極7は、各々がアルミシリコン合金、チタン、ニッケルあるいは金などを含む複数の金属層で形成されていてもよい。または、コレクタ電極7は、PVDによって形成された金属膜上に、無電解めっきあるいは電解めっきによって別の金属膜が形成された構造を有していてもよい。
【0165】
実施の形態においては、複数の半導体装置100または複数の半導体装置101が、上記の製造工程によって、1枚の半導体基板上にマトリクス状に作製される。複数の半導体装置100,101は、レーザーダイシングあるいはブレードダイシングによって、個々の半導体装置に切り分けられる。それにより、半導体装置100または半導体装置101が完成する。
【0166】
以上をまとめると、実施の形態における半導体装置100,101は、複数のトレンチ、複数のトレンチ電極、層間絶縁膜4および第1エミッタ電極6bを含む。複数のトレンチは、半導体基板の上面に設けられている。複数のトレンチとは、アクティブトレンチ11、ダミートレンチ12およびダイオードトレンチ21のうちのいずれかである。複数のトレンチ電極は、複数のトレンチの内部にそれぞれ設けられている。複数のトレンチ電極とは、ゲートトレンチ電極11a、ダミートレンチ電極12aおよびダイオードトレンチ電極21aのうちのいずれかである。層間絶縁膜4は、複数のトレンチ電極のうち2以上のトレンチ電極を覆っている。その2以上のトレンチ電極とは、ゲートトレンチ電極11aまたは一部のダイオードトレンチ電極21aに対応する。第1エミッタ電極6bは、層間絶縁膜4上に設けられている。層間絶縁膜4は、開口4aを含む。開口4aは、その層間絶縁膜4に覆われた2以上のトレンチ電極の間に設けられている。第1エミッタ電極6bは、開口4aを塞ぐように半導体基板上に設けられている。複数のトレンチ電極の各々の上面は、第1凹部51を含む。層間絶縁膜4の上面は、第1凹部51の直上に第2凹部52を含む。第1エミッタ電極6bの上面は、開口4aの直上に第3凹部53を含む。
【0167】
また、半導体装置100,101は、第1エミッタ電極6b上に設けられた第2エミッタ電極6cをさらに含む。第2エミッタ電極6cの上面は、第3凹部53の直上に第4凹部54を含む。さらに、第3凹部53は、第1エミッタ電極6bの上面における第2凹部52の直上にも設けられている。
【0168】
このような半導体装置100,101においては、ゲートトレンチ電極11a、ダミートレンチ電極12a、ダイオードトレンチ電極21a、層間絶縁膜4、第1エミッタ電極6bおよび第2エミッタ電極6cの各界面における接触面積が増加する。そのため、密着性が向上する。それら凹凸構造によって、アンカー効果が生じ、応力耐性が向上する。第4凹部54の深さは、第3凹部53の深さ、第2凹部52の深さ、開口4aの深さおよび第1凹部51の深さよりも浅い。第2エミッタ電極6cの上面が平坦であることから、例えばワイヤボンディングまたははんだ接合において、組立性が向上する。このように、半導体装置100,101は、組立性および応力耐量を向上させる。
【0169】
第1凹部51の底部は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。複数のトレンチ電極の各々の上端は、半導体基板の上面よりも低い位置に設けられている。このような構成により、第2凹部52の窪みの程度が大きくなる。そのため、接触面積およびアンカー効果が向上する。
【0170】
層間絶縁膜4は、酸化膜を含む単層構造を有する。単層構造の酸化膜が、TEOSによって形成された場合、凹凸の程度が大きくなる。そのため、接触面積およびアンカー効果が向上する。
【0171】
層間絶縁膜4は、互いにドーパント濃度の異なる2種類以上の酸化膜を含む積層構造を有していてもよい。その2種類以上の酸化膜のうち、1つの酸化膜はボロンおよびリンを含むTEOS(BPTEOS)によって形成され、別の1つの酸化膜はTEOSによって形成される。ドーパント濃度の差異によって、凹凸の程度を制御可能である。
【0172】
第1エミッタ電極6bの厚みは、第2エミッタ電極6cの厚みよりも厚くてもよい。その場合、応力耐量が向上する。逆に、第2エミッタ電極6cの厚みが、第1エミッタ電極6bの厚みよりも厚くてもよい。その場合、濡れ性が向上し、高い組立性が実現される。
【0173】
開口4aの底部の幅は、開口4aの側壁を形成している層間絶縁膜4の高さよりも大きい。これにより、第1エミッタ電極6bまたはバリアメタル5の埋め込み性が向上する。
【0174】
ダミートレンチ電極12aおよびダイオードトレンチ電極21aの上面の第1凹部51は、開口4aの底部の一部を形成している。これにより、第1エミッタ電極6bまたはバリアメタル5と半導体基板との接触領域が拡張する。
【0175】
上記の構成は、RC-IGBTのIGBT領域10およびダイオード領域20の両方に適用されているが、IGBT領域10およびダイオード領域20のうちいずれか一方の領域だけに適用されてもよい。また、上記の構成は、RC-IGBTだけに適用されるものではない。単体のIGBT、または、単体のダイオードを含む半導体装置にも適用可能であり、その場合であっても上記の効果が得られる。
【0176】
本開示は、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0177】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0178】
(付記1)
半導体基板の上面に設けられた複数のトレンチと、
前記複数のトレンチの内部にそれぞれ設けられた複数のトレンチ電極と、
前記複数のトレンチ電極のうち2以上のトレンチ電極を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた第1電極と、を備え、
前記絶縁膜は、前記絶縁膜に覆われた前記2以上のトレンチ電極の間に設けられた開口を含み、
前記第1電極は、前記開口を塞ぐように前記半導体基板上に設けられ、
前記複数のトレンチ電極の各々の上面は、第1凹部を含み、
前記絶縁膜の上面は、前記第1凹部の直上に第2凹部を含み、
前記第1電極の上面は、前記開口の直上に第3凹部を含む、半導体装置。
【0179】
(付記2)
前記第3凹部は、前記第1電極の前記上面における前記第2凹部の直上にさらに設けられている、付記1に記載の半導体装置。
【0180】
(付記3)
前記第1電極上に設けられた第2電極を、さらに備え、
前記第2電極の上面は、前記第3凹部の直上に第4凹部を含む、付記1または付記2に記載の半導体装置。
【0181】
(付記4)
前記第4凹部の深さは、前記第3凹部の深さよりも浅い、付記3に記載の半導体装置。
【0182】
(付記5)
前記第4凹部の前記深さは、前記第2凹部の深さおよび前記開口の深さよりも浅い、付記3または付記4に記載の半導体装置。
【0183】
(付記6)
前記第4凹部の前記深さは、前記第1凹部の深さよりも浅い、付記3から付記5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0184】
(付記7)
前記第1凹部の底部は、前記半導体基板の前記上面よりも低い位置に設けられている、付記1から付記6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0185】
(付記8)
前記複数のトレンチ電極の各々の上端は、前記半導体基板の前記上面よりも低い位置に設けられている、付記1から付記7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0186】
(付記9)
前記絶縁膜は、酸化膜を含む単層構造を有する、付記1から付記8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0187】
(付記10)
前記絶縁膜は、互いにドーパント濃度の異なる2種類以上の酸化膜を含む積層構造を有する、付記1から付記9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0188】
(付記11)
前記第1電極の厚みは、前記第2電極の厚みよりも厚い、付記3に記載の半導体装置。
【0189】
(付記12)
前記第2電極の厚みは、前記第1電極の厚みよりも厚い、付記3に記載の半導体装置。
【0190】
(付記13)
前記開口の底部の幅は、前記開口の側壁を形成している前記絶縁膜の高さよりも大きい、付記1から付記12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0191】
(付記14)
前記第2電極は、2種類以上の金属層を含む積層構造を有する、付記3に記載の半導体装置。
【0192】
(付記15)
前記第1電極は、前記開口の底部において前記半導体基板の前記上面に接している、付記1から付記14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0193】
(付記16)
前記絶縁膜に覆われた前記2以上のトレンチ電極の各々は、前記半導体基板に形成されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のゲート電極である、付記1から付記15のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0194】
(付記17)
前記複数のトレンチ電極は、
前記2以上のトレンチ電極として、前記絶縁膜に覆われた複数の第1トレンチ電極と、
前記絶縁膜の前記開口の内側に設けられた少なくとも1つの第2トレンチ電極と、を含み、
前記複数の第1トレンチ電極の各々は、前記半導体基板に形成されたIGBTのゲート電極であり、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極は、前記絶縁膜に覆われておらず、前記第1電極に電気的に接続されており、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極の前記上面の前記第1凹部は、前記開口の底部の一部を形成している、付記1から付記16のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0195】
(付記18)
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極は、前記複数のトレンチの各々の内壁に沿って設けられたトレンチ絶縁膜を介して前記複数のトレンチの各々の内部に形成されており、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極に接触している前記トレンチ絶縁膜の上面は、前記半導体基板の前記上面よりも下方に位置する第5凹部を含む、付記17に記載の半導体装置。
【0196】
(付記19)
付記3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1電極をスパッタ法によって形成する工程と、
前記第2電極をめっき法によって形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【0197】
(付記20)
付記17に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数のトレンチと前記複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された前記複数のトレンチ電極とを含む前記半導体基板を準備する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記複数の第1トレンチ電極を覆う前記絶縁膜を形成する工程と、を備え、
前記絶縁膜を形成する前記工程は、
前記複数のトレンチ電極上に前記絶縁膜を形成する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記少なくとも1つの第2トレンチ電極上の前記絶縁膜を除去して、前記絶縁膜に覆われた前記複数の第1トレンチ電極の間に前記絶縁膜の前記開口を形成する工程と、を含み、
前記少なくとも1つの第2トレンチ電極の前記上面の前記第1凹部は、前記開口の底部の一部を形成している、半導体装置の製造方法。
【0198】
(付記21)
付記18に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数のトレンチと前記複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された前記複数のトレンチ電極とを含む前記半導体基板を準備する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記複数の第1トレンチ電極を覆う前記絶縁膜を形成する工程と、を備え、
前記複数のトレンチ電極上に前記絶縁膜を形成する工程と、
前記複数のトレンチ電極のうち前記少なくとも1つの第2トレンチ電極上の前記絶縁膜を除去して、前記絶縁膜に覆われた前記複数の第1トレンチ電極の間に前記絶縁膜の前記開口を形成する工程と、を含み、
前記開口を形成する前記工程は、前記少なくとも1つの第2トレンチ電極に接触している前記トレンチ絶縁膜の上部を除去して、前記第5凹部を形成することを含む、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0199】
1 n-型ドリフト層、2 n型キャリア蓄積層、3 n型バッファ層、4 層間絶縁膜、4a 開口、5 バリアメタル、6 エミッタ電極、6a 終端電極、6b 第1エミッタ電極、6c 第2エミッタ電極、7 コレクタ電極、8 トレンチ構造、9 酸化膜、10 IGBT領域、11 アクティブトレンチ、11a ゲートトレンチ電極、11b ゲートトレンチ絶縁膜、12 ダミートレンチ、12a ダミートレンチ電極、12b ダミートレンチ絶縁膜、13 n+型ソース層、14 p+型コンタクト層、15 p型ベース層、16 p型コレクタ層、16a p型終端コレクタ層、20 ダイオード領域、21 ダイオードトレンチ、21a ダイオードトレンチ電極、21b ダイオードトレンチ絶縁膜、24 p+型コンタクト層、25 p型アノード層、26 n+型カソード層、30 終端領域、31 p型終端ウェル層、32 n+型チャネルストッパ層、33 半絶縁性膜、34 終端保護膜、40 パッド領域、41 制御パッド、41a 電流センスパッド、41b ケルビンエミッタパッド、41c ゲートパッド、41d 温度センスダイオードパッド、41e 温度センスダイオードパッド、51 第1凹部、52 第2凹部、53 第3凹部、54 第4凹部、55 第5凹部、82 領域、83 領域、100 半導体装置、101 半導体装置、P 領域、Q 領域、R 領域。