IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ、及び、ワイヤハーネス 図1
  • 特開-コネクタ、及び、ワイヤハーネス 図2
  • 特開-コネクタ、及び、ワイヤハーネス 図3
  • 特開-コネクタ、及び、ワイヤハーネス 図4
  • 特開-コネクタ、及び、ワイヤハーネス 図5
  • 特開-コネクタ、及び、ワイヤハーネス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171974
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】コネクタ、及び、ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20241205BHJP
   H01R 13/58 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/42 F
H01R13/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089363
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 孝治
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA08
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC02
5E021FC07
5E021GA07
5E021GB01
5E087EE02
5E087EE07
5E087FF07
5E087FF13
5E087GG08
5E087GG15
5E087GG26
5E087GG32
5E087HH01
5E087MM05
5E087RR06
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】端子を適正に保持することができるコネクタ、及び、ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】ワイヤハーネスWHに適用されるコネクタ1は、導電性を有する配索材Wの端末に接続され、外面側から突出して形成された係止片14を有する端子10と、端子10を収容する端子収容部21、及び、当該端子収容部21に向かって突出して形成され、端子10が端子収容部21に収容された状態で係止片14と当接して端子10を係止するランス23を有するインナハウジング20と、インナハウジング20の外側に組み付けられる固定部材30とを備える。また、ランス23は、弾性変形可能に構成され、インナハウジング20に固定部材30が組み付けられた状態で当該固定部材30と接触することで、端子収容部21に収容された端子10に向かって押し付けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する配索材の端末に接続され、外面側から突出して形成された係止片を有する端子と、
前記端子を収容する端子収容部と、前記端子収容部に向かって突出して形成され、前記端子が前記端子収容部に収容された状態で前記係止片と当接して前記端子を係止するランスとを有するインナハウジングと、
前記インナハウジングの外側に組み付けられる固定部材とを備え、
前記ランスは、弾性変形可能に構成され、前記インナハウジングに前記固定部材が組み付けられた状態で当該固定部材と接触することで前記端子収容部に収容された前記端子に向かって押し付けられることを特徴とする、
コネクタ。
【請求項2】
前記ランスは、前記インナハウジングの外部に露出して配置され、
前記インナハウジングは、前記端子収容部に収容される前記端子の延在方向に沿って、前記固定部材に対して挿入されることで組み付けられる、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ランスは、前記インナハウジングが前記固定部材に挿入される際に当該固定部材と接触する端部に設けられることで、前記固定部材の端部に当接した際に押し下げられる誘導部を有し、
前記誘導部は、面取り部分を含んで構成される、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記固定部材は、金属材料によって形成され、前記配索材の被覆部を加締めることで当該配索材と接続される、
請求項2または3に記載のコネクタ。
【請求項5】
導電性を有する配索材と、
前記配索材の端末に接続され、外面側から突出して形成された係止片を有する端子と、
前記端子を収容する端子収容部と、前記端子収容部に向かって突出して形成され、前記端子が前記端子収容部に収容された状態で前記係止片と当接して前記端子を係止するランスとを有するインナハウジングと、
前記インナハウジングの外側に組み付けられる固定部材とを備え、
前記ランスは、弾性変形可能に構成され、前記インナハウジングに前記固定部材が組み付けられた状態で当該固定部材と接触することで前記端子収容部に収容された前記端子に向かって押し付けられることを特徴とする、
ワイヤハーネス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、及び、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、アウタハウジングと、アウタハウジングに収容され内部に保持されるインナハウジングと、インナハウジングに収容される端子と、端子の端末にそれぞれ接続される電線と、電線の絶縁被覆部に加締められてインナハウジングの外周に組み付けられるジャケット固定部材(固定部材)と、を備えるコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-102305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のコネクタは、インナハウジングに形成される端子収容部に端子を収容して保持させた状態で、当該インナハウジングに固定部材を装着することで、各部材を組み付けることができる。しかし、このような構成のコネクタは、例えば、電線が引き抜かれる方向に引っ張られると、端子にも力がかかる。そのため、端子の組み付け位置がずれる虞があり、その点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、端子を適正に保持することができるコネクタ、及び、ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、導電性を有する配索材の端末に接続され、外面側から突出して形成された係止片を有する端子と、前記端子を収容する端子収容部と、前記端子収容部に向かって突出して形成され、前記端子が前記端子収容部に収容された状態で前記係止片と当接して前記端子を係止するランスとを有するインナハウジングと、前インナハウジングの外側に組み付けられる固定部材とを備え、前記ランスは、弾性変形可能に構成され、前記インナハウジングに前記固定部材が組み付けられた状態で当該被固定用部材と接触することで前記端子収容部に収容された前記端子に向かって押し付けられることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、導電性を有する配索材と、前記配索材の端末に接続され、外面側から突出して形成された係止片を有する端子と、前記端子を収容する端子収容部と、前記端子収容部に向かって突出して形成され、前記端子が前記端子収容部に収容された状態で前記係止片と当接して前記端子を係止するランスとを有するインナハウジングと、前記インナハウジングの外側に組み付けられる固定部材とを備え、前記ランスは、弾性変形可能に構成され、前記インナハウジングに前記固定部材が組み付けられた状態で当該被固定用部材と接触することで前記端子収容部に収容された前記端子に向かって押し付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコネクタ、及び、ワイヤハーネスは、端子を適正に保持することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係るコネクタが適用されるワイヤハーネスの概略構成を表す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るコネクタが適用されるワイヤハーネスの概略構成を表す断面図である。
図3図3は、本実施形態に係るコネクタの端子収容部に収容される端子の概略構成を表す斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係るコネクタのインナハウジングの概略構成を表す斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係るコネクタの組み付けについて説明する断面図である。
図6図6は、本実施形態に係るコネクタの組み付けについて説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1に示すワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で電線を各機器に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、図1図2に示すように、導電性を有する配索材Wと、コネクタ1とを備える。なお、ワイヤハーネスWHは、この他に、さらに、プロテクタ、外装材、固定具等を含んで構成されてもよい。
【0012】
配索材Wは、差動伝送用のケーブルであり、例えば、Ethernet(登録商標)ケーブルである。本実施形態の配索材Wは、UTP電線(UTP:Unshielded Twisted Pair)であり、導電性を有する複数の金属素線を束ねた芯線を絶縁被覆部によって被覆した絶縁電線(電線WA)が一対で束ねられたものである。また、配索材Wは、一対の電線WAによって電気信号等を伝える通信ケーブルであり、ノイズを遮断するシールド加工が施されていないものである。配索材Wは、一対の電線WAが絶縁性を有するシースWB(被覆部に相当する)によって覆われている。また、配索材Wを構成する一対の電線WAは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆部が剥ぎ取られており、芯線が絶縁被覆部から露出している。また、一対の電線WAは、絶縁被覆部から露出している芯線の端末に端子10がそれぞれ設けられている。
【0013】
コネクタ1は、図1図2に示すように、基板200に設けられた相手方コネクタ100と嵌合することによって、配索材Wと基板200の回路とを接続するものである。本実施形態のコネクタ1は、図2に示すように、配索材Wの端末に接続された端子10と、端子10を収容し、当該端子10を係止することで保持するインナハウジング20と、インナハウジング20の外側に組み付けられる固定部材30と、アウタハウジング40とを備える。そして、本実施形態のコネクタ1は、インナハウジング20に設けられる係止部材(後述するランス23)に対する端子10のかかり代を増やすことで、端子10を適正に保持することができる構成を実現したものである。以下、図1図4を参照してコネクタ1の各構成について詳細に説明する。
【0014】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「長さ方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。長さ方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。長さ方向Xは、典型的には、インナハウジング20に収容される端子10の延在方向、インナハウジング20に固定部材30を組み付ける際に固定部材30に対してインナハウジング20を挿入する方向等に相当する。幅方向Yは、電線WAの端末に接続される一対の端子10が配列される方向等に相当する。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、コネクタ1の各部が組み付けられた状態での方向として説明する。
【0015】
また、長さ方向Xにおいて先端側とは、典型的には、コネクタ1が相手方コネクタ100に嵌合した状態での相手方コネクタ100側等に相当し、長さ方向Xにおいて基端側とは、典型的には、コネクタ1が相手方コネクタ100に嵌合した状態でのコネクタ1側等に相当する。
【0016】
[端子]
端子10は、導電性を有する銅等の金属材料によって形成され、図2に示すように、コネクタ1と相手方コネクタ100が嵌合することで、相手方端子110と電気的に接続されるものである。端子10は、一枚の板金が各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで、各部が立体的に一体で形成される。なお、図3は、電線WAの端末に端子10を圧着する前の状態を示すものである。
【0017】
本実施形態の端子10は、図3に示すように、電気接続部11と、加締め部12と、連結部13とを含んで構成される。
【0018】
電気接続部11は、長さ方向Xおいて先端側に位置し、コネクタ1が相手方コネクタ100に嵌合した際に相手方端子110に接続される部分である。
【0019】
加締め部12は、長さ方向Xにおいて基端側に位置し、電線WAの端末が接続される部分である。本実施形態の加締め部12は、基部10a上に配置された電線WAの端末を、基部10aから延出するバレル片10bで加締めることで、電線WAの芯線及び絶縁被覆部に対して端子10を圧着することができる。そのため、端子10は、加締め部12を介して電線WAの芯線と電気的に接続される。
【0020】
連結部13は、電気接続部11と加締め部12の間に位置し、電気接続部11及び加締め部12を連結する部分である。本実施形態の連結部13は、一枚の板金が筒状に成形されることで当該板金の端部同士が合わさる箇所に係止片14が形成されている。
【0021】
係止片14は、連結部13の外面から突出して形成される部分である。本実施形態の係止片14は、図3に示すように、幅方向Yから視た形状が略四角形状に形成されている。そして、係止片14は、長さ方向Xにおいて先端側に形成される誘導部14gと、長さ方向Xにおいて基端側に形成される当接部14tとを含んで構成される(図5を参照)。
【0022】
誘導部14gは、長さ方向Xにおいて先端側に位置する端部の角部に形成される面取り部分である。本実施形態の誘導部14gは、長さ方向Xにおいて基端側から先端側に向かって係止片14の高さが低くなるように傾斜している(図5を参照)。そのため、誘導部14gは、端子10がインナハウジング20に組み付けられる際に、インナハウジング20に設けられる係止部材(後述するランス23)に接触し、当該係止部材を傾斜面に沿って摺動させることで、当該係止部材を外側(端子収容部21と反対側)に向かって撓みやすくすることができる。
【0023】
当接部14tは、長さ方向Xにおいて基端側に位置する端部の端面部分である。本実施形態の当接部14tは、端子10の延在方向(長さ方向X)と交差する高さ方向Zに沿って設けられている(図5を参照)。そのため、当接部14tは、インナハウジング20の内部に収容された端子10が引き抜かれる方向に引っ張られた際に、インナハウジング20に設けられる係止部材(後述するランス23)に接触することで、当該係止部材によって係止される。
【0024】
[インナハウジング]
インナハウジング20は、絶縁性を有する合成樹脂材料によって形成され、端子10を収容して保持するものである。本実施形態のインナハウジング20は、図2図4に示すように、端子収容部21と、ランス設置孔22と、ランス23とを含んで構成されている。
【0025】
端子収容部21は、長さ方向Xに沿って略筒状に形成され、内側に端子10の電気接続部11を収容する部分である。本実施形態の端子収容部21は、図4に示すように、2つ設けられ、各端子収容部21は、幅方向Yに間隔をあけて配置されている。
【0026】
ランス設置孔22は、端子収容部21に形成され、当該端子収容部21の内部と外部を連通する部分である。本実施形態のランス設置孔22は、図2図4に示すように、高さ方向Zに貫通する孔であり、端子収容部21の高さ方向Zにおいて上側に設けられている。
【0027】
ランス23は、長さ方向Xに沿って形成される片持ち状のアーム部であり、端子収容部21に収容された端子10を係止する部分である。本実施形態のランス23は、図2図4に示すように、長さ方向Xにおいて基端側から先端側に向かって形成され、固定端が長さ方向Xにおいて基端側、自由端が長さ方向Xにおいて先端側に位置している。また、ランス設置孔22内に弾性変形可能に支持されている。そのため、ランス23は、ランス設置孔22を介して外部の露出し、かつ、端子収容部21に臨む位置関係で設けられている。そして、ランス23は、自然状態において、インナハウジング20の外部に露出して配置される外面側に形成される誘導部23gと、端子収容部21に向かって突出して配置される内面側に形成される当接部23tとを含んで構成される(図5を参照)。なお、ここでいう自然状態とは、ランス23に対して外力が付与されていない状態等を意味する。
【0028】
誘導部23gは、ランス23の先端側の端部の角部に形成される面取り部分である。本実施形態の誘導部23gは、長さ方向Xにおいて基端側から先端側に向かってランス23の高さが低くなるように傾斜している(図5を参照)。そのため、誘導部23gは、インナハウジング20の外側に固定部材30が組み付けられる際に、固定部材30の壁部に接触することで、ランス23を内側(端子収容部21側)に向かって撓みやすくすることができる。
【0029】
当接部23tは、ランス23の先端側の端部の端面部分である。本実施形態の当接部23tは、ランス23の延在方向(長さ方向X)と交差する高さ方向Zに沿って設けられている(図5を参照)。そのため、当接部23tは、インナハウジング20の端子収容部21に収容された端子10が引き抜かれる方向に引っ張られた際に、端子10の係止片14に設けられる当接部14tと接触し、当該当接部14tの移動を規制することで端子10を係止することできる。そして、インナハウジング20は、ランス23によって端子10を係止することで、当該端子10を端子収容部21に収容された状態で保持することができる。
【0030】
[固定部材]
固定部材30は、金属材料によって形成され、インナハウジング20や当該インナハウジング20から引き出される電線WAを保持するものである。固定部材30は、一枚の板金が各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで、各部が立体的に一体で形成される。
【0031】
そして、本実施形態の固定部材30は、図2に示すように、本体部31と、加締め部32とを含んで構成されている。
【0032】
本体部31は、長さ方向Xに沿って略筒状に形成され、内側にインナハウジング20を収容する部分である。本実施形態の本体部31は、内部空間部としての収容空間部31sと、長さ方向Xに開口する開口部31kとを有している(図6を参照)。
【0033】
収容空間部31sは、本体部31の壁部によって区画、形成される部分である。本実施形態の固定部材30は、インナハウジング20を開口部31kから挿入して収容空間部31sに収容させることができる。
【0034】
開口部31kは、本体部31の端によって区画、形成される部分である。なお、ここでいう本体部31の端とは、本体部31の縁部分である。
【0035】
加締め部32は、本体部31と一体に形成され、収容空間部31sに収容されたインナハウジング20から引き出される配索材Wと接続される部分である。本実施形態の加締め部32は、配索材Wの被覆部であるシースWBを加締めることで、シースWBの位置を固定し、当該シースWBに挿通される電線WAの位置を固定することができる。
【0036】
[アウタハウジング]
アウタハウジング40は、樹脂材料によって形成され、インナハウジング20の外側に固定部材30が組み付けられた組立体A(図6を参照)を収容して保持するものである。本実施形態のアウタハウジング40は、図2に示すように、組立体収容部41と、ロック部42とを含んで構成されている。
【0037】
組立体収容部41は、長さ方向Xに沿って略筒状に形成され、内側に組立体Aの先端側を収容する部分である。
【0038】
ロック部42は、長さ方向Xに沿って形成される片持ち状のアーム部であり、組立体収容部41に収容された組立体Aを係止する部分である。本実施形態のロック部42は、図2に示すように、長さ方向Xにおいて基端側から先端側に向かって形成され、固定端が長さ方向Xにおいて基端側、自由端が長さ方向Xにおいて先端側に位置している。また、ロック部42は、弾性変形可能に支持され、組立体収容部41に臨む位置関係で設けられている。ロック部42は、組立体収容部41に収容された組立体Aが引き抜かれる方向に引っ張られた際に、組立体Aの構成部材(例えば、固定部材30の開口部31k)に接触し、当該構成部材の移動を規制することで組立体Aを係止することできる。そして、アウタハウジング40は、ロック部42によって組立体Aを係止することで、当該組立体Aを組立体収容部41に収容された状態で保持することができる。
【0039】
次に、図5図6を参照して、コネクタ1の組付動作を説明する。
【0040】
まず、作業者は、配索材Wの端末に端子10を接続する。このとき、配索材Wを構成する一対の電線WAは、絶縁被覆部が剥ぎ取られることで、芯線が絶縁被覆部の端末から露出している。そして、端子10は、加締め部12が芯線の端末に圧着されることで、当該芯線と電気的に接続される。
【0041】
そして、作業者は、図5に示すように、インナハウジング20に端子10を組み付ける。このとき、端子10は、インナハウジング20の端子収容部21に対して長さ方向Xに沿って挿入される。そして、端子10は、係止片14の誘導部14gがランス23に接触すると、誘導部14gの傾斜面に沿ってランス23を摺動させる。そして、端子10は、係止片14によってランス23を外側(高さ方向において上側)に向かって弾性変形させることで、当該ランス23を押し上げる。そして、端子10は、長さ方向Xに沿ってさらに挿入されると、係止片14がランス23を乗り越えることで当該ランス23を元の位置に戻す。そのため、ランス23は、端子収容部21に端子10が収容されると、端子10の係止片14と長さ方向Xに隣り合って位置し、かつ、高さ方向Zに重なり合って位置することで、係止片14に対するかかり代を得ることができる。したがって、ランス23は、端子10がインナハウジング20に対して適正な位置関係で組み付けられることで、当該端子10を係止することができる。
【0042】
そして、作業者は、図6に示すようにインナハウジング20に固定部材30を組み付ける。このとき、インナハウジング20は、固定部材30の本体部31に対して長さ方向Xに沿って挿入される。そして、固定部材30は、ランス23の誘導部23gが本体部31の開口部31kに接触すると、本体部31の内面に沿ってランス23を摺動させる。そして、固定部材30は、本体部31の壁部によってランス23を内側(高さ方向において下側)に向かって弾性変形させることで、当該ランス23を押し下げる。このとき、ランス23は、インナハウジング20の外面から突出している分だけ内側に向かって変形する。そのため、ランス23の高さは、固定部材30の本体部31によって、図5に示す変位量Z1の分だけ変位し、端子収容部21に向かってより突出している状態で固定される。そして、ランス23は、端子10の係止片14と高さ方向Zに重なり合って位置する部分が増えることで、係止片14に対するかかり代を増やすことができる。したがって、ランス23は、固定部材30がインナハウジング20に対して適正な位置関係で組み付けられることで、当該端子10をより確実に係止することができる。
【0043】
そして、作業者は、図6に示すように、インナハウジング20から引き出された配索材Wと、固定部材30とを接続する。このとき、固定部材30は、加締め部32が配索材Wのシース部WBに圧着されることで、当該配索材Wと接続される。
【0044】
そして、作業者は、インナハウジング20に固定部材30が組み付けられた組立体Aをアウタハウジング40に組み付ける。このとき、組立体Aは、アウタハウジング40の組立体収容部41に対して長さ方向Xに沿って挿入される。そして、組立体Aは、ロック部42に接触すると、当該ロック部42を外側(高さ方向において上側)に向かって弾性変形させることで押し上げる。そして、組立体Aは、長さ方向Xに沿ってさらに挿入されると、ロック部42を乗り越えることで当該ロック部42を元の位置に戻す。そのため、ロック部42は、組立体Aがアウタハウジング40に対して適正な位置関係で組み付けられることで、組立体Aを係止することができる。
【0045】
以上で説明したワイヤハーネスWHに適用されるコネクタ1は、導電性を有する配索材Wの端末に接続され、外面側から突出して形成された係止片14を有する端子10と、端子10を収容する端子収容部21、及び、当該端子収容部21に向かって突出して形成され、端子10が端子収容部21に収容された状態で係止片14と当接して端子10を係止するランス23を有するインナハウジング20と、インナハウジング20の外側に組み付けられる固定部材30とを備える。また、ランス23は、弾性変形可能に構成され、インナハウジング20に固定部材30が組み付けられた状態で当該固定部材30と接触することで、端子収容部21に収容された端子10に向かって押し付けられる。
【0046】
このような構成によれば、インナハウジング20に設けられているランス23は、固定部材30が組み付けられる際に端子収容部21に向かって押し付けられることで、せん断長さ23x(図5図6を参照)が変位する。ここでいうランス23のせん断長さ23xとは、ランス23の水平方向の長さであり、端子10の係止片14に対する接触点を通って長さ方向Xに延在する長さである。ランス23は、押し付けられる前のせん断長さ23xa(図5を参照)より、押し付けられた後のせん断長さ23xb(図6を参照)の方が長くなる。そのため、ランス23は、端子収容部21に向かって押し付けられることで、長さ方向Xに沿う断面積(ランス23をせん断長さ23xに沿って切った時の面積)が増え、当該断面積が増えることによって、係止片14がぶつかった際に単位面積あたりにかかる力を減らすとことができる。
【0047】
また、さらに言えば、ランス23は、端子10が端子収容部21から引き抜かれる方向に引っ張られることで、端子10の係止片14がぶつかった際に端子収容部21が広がる方向に座屈しにくくなり、係止片14に対するかかり代を確保しやすくなる。そのため、ランス23は、端子収容部21に向かって押し付けられることで、係止片14を乗り越えにくくすることができる。そのため、本発明のコネクタ1は、端子収容部21に収容されている端子10をランス23によって適正に係止することができ、当該端子10をインナハウジング20から抜けづらくすることで、端子10を適正に保持することができる。また、コネクタ1は、端子10をインナハウジング20から抜けづらくすることで、当該端子10に接続される配索材Wをインナハウジング20から抜けづらくすることができ、これによって、各部材を適正な位置関係で組み付けることができる。したがって、コネクタ1は、適正な導通性能を確保することができ、接続信頼性を向上することができる。
【0048】
さらに、以上で説明したコネクタ1のランス23は、インナハウジング20の外部に露出して配置され、インナハウジング20は、端子収容部21に収容される端子10の延在方向(長さ方向X)に沿って、固定部材30に対して挿入されることで組み付けられる。このような構成によれば、インナハウジング20に設けられているランス23は、固定部材30が組み付けられる際に、インナハウジング20の外部に露出して配置されている部分が固定部材30と接触することで端子収容部21に向かって押し付けられる。そのため、本発明のコネクタ1は、端子収容部21に収容されている端子10をランス23によって適正に係止することができ、端子10をインナハウジング20から抜けづらくすることで、端子10を適正に保持することができることができる。
【0049】
さらに、以上で説明したコネクタ1のランス23は、インナハウジング20が固定部材30に挿入される際に当該固定部材30と接触する端部に設けられることで、固定部材30の端部に当接した際に押し下げられる誘導部23gを有し、誘導部23gは、面取り部分を含んで構成される。このような構成によれば、インナハウジング20に設けられているランス23は、インナハウジング20に固定部材30が組み付けられる際に、誘導部23gを固定部材30に接触させる。そのため、固定部材30は、誘導部23gの面取り部分を介してランス23を乗り越えやすくなり、当該ランス23を端子収容部21に向かって撓みやすくする。したがって、本発明のコネクタ1は、インナハウジング20に固定部材30を組み付けるときに必要な力(固定部材30に対するインナハウジング20の挿入力)を軽減させることができ、インナハウジング20に固定部材30を組み付けやすくすることができる。したがって、組み付け時の作業効率を向上させることができる。
【0050】
さらに、以上で説明したコネクタ1の固定部材30は、金属材料によって形成され、配索材WのシースWB(被覆部)を加締めることで当該配索材Wと接続される。このような構成によれば、固定部材30は、樹脂材料よりも硬い金属材料によって形成されることで、端子10が端子収容部21から引き抜かれる方向に引っ張られた際に、変形しにくく、撓みにくくなる。したがって、本発明のコネクタ1は、インナハウジング20を固定部材30から抜けづらくしたり、配索材Wを固定部材30から抜けづらくしたりすることができ、これによって各部材を適正な位置関係で組み付けることができる。
【0051】
なお、上述した本発明の実施形態に係るコネクタ1、及び、ワイヤハーネスWHは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、ランス23は、誘導部23gを有していなくてもよい。
【0053】
また、ランス23は、固定部材30が組み付けられる際に、端子収容部21に収容された端子10に向かって押し付けられる形状である限り、その形状は特に限定されない。
【0054】
また、固定部材30は、金属製であることが好ましいが、樹脂製であってもよい。
【0055】
本実施形態に係るコネクタ、及び、ワイヤハーネスは、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタ
10 端子
14 係止片
20 インナハウジング
21 端子収容部
23 ランス
23g 誘導部
30 固定部材
40 アウタハウジング
100 相手方コネクタ
200 基板
W 配索材
WB シース(被覆部)
WH ワイヤハーネス
X 長さ方向
Y 幅方向
Z 高さ方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6