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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171976
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ロボット用ハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20241205BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089367
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊昭
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU17
3C707EV23
3C707HS14
3C707HS27
3C707KS04
3C707KS06
3C707KT02
3C707KT05
3C707KT06
3C707LT12
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】 被搬送物の位置を適切に制御することができるロボット用ハンドを提供する。
【解決手段】 ロボット機構に取り付けられるロボット用ハンドであって、被搬送物の底面に沿って差し込まれるとともに、底面に沿って引き抜かれる差込部材と、差込部材を第1の方向に引き抜く際に、差込部材の上にある被搬送物が第1の方向に移動することを規制する第1の規制部材と、を備える。差込部材には、底面が接触可能な傾斜面が形成され、傾斜面は、差込部材が底面に沿って差し込まれる第2の方向に向かって下降する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット機構に取り付けられるロボット用ハンドであって、
被搬送物の底面に沿って差し込まれるとともに、前記底面に沿って引き抜かれる差込部材と、
前記差込部材を第1の方向に引き抜く際に、前記差込部材の上にある前記被搬送物が前記第1の方向に移動することを規制する第1の規制部材と、
を備えるロボット用ハンド。
【請求項2】
前記差込部材には、前記底面が接触可能な傾斜面が形成され、
前記傾斜面は、前記差込部材が前記底面に沿って差し込まれる第2の方向に向かって下降する、請求項1に記載のロボット用ハンド。
【請求項3】
前記第1の規制部材には、前記第1の規制部材の下端よりも上方に延びる切欠きが形成され、
前記切欠きに前記差込部材が収容されることにより、前記差込部材と前記第1の規制部材とが互いに干渉することが防止される、請求項1に記載のロボット用ハンド。
【請求項4】
前記差込部材が前記底面に沿って差し込まれる第2の方向への前記被搬送物の移動を規制する第2の規制部材を備え、
前記被搬送物が、前記第1の規制部材および前記第2の規制部材の間に位置付けられる、請求項1に記載のロボット用ハンド。
【請求項5】
前記第1の規制部材と前記第2の規制部材との間の距離を変化させることが可能とされる、請求項4に記載のロボット用ハンド。
【請求項6】
前記差込部材は、前記差込部材が前記底面に沿って差し込まれる第2の方向に突出する先端部を有し、
前記先端部の下端が前記被搬送物が置かれた載置面に接触した状態で、前記差込部材が前記底面に沿って差し込まれる、請求項1に記載のロボット用ハンド。
【請求項7】
前記差込部材は、前記下端が前記載置面に押し付けられて弾性変形した状態で、前記先端部の前記下端が前記載置面に接触する、請求項6に記載のロボット用ハンド。
【請求項8】
前記差込部材が前記底面に沿って差し込まれたときに、前記被搬送物の上方への移動を規制する第3の規制部材を備える、請求項1に記載のロボット用ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット用ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被搬送物を、掬い部材を用いて把持する把持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7123816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被搬送物の性質によっては、被搬送物が掬い部材に貼り付いて、被搬送物の位置を制御することが難しくなるなどの問題がある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、被搬送物の位置を適切に制御することができるロボット用ハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
ロボット機構に取り付けられるロボット用ハンドであって、
被搬送物の底面に沿って差し込まれるとともに、前記底面に沿って引き抜かれる差込部材と、
前記差込部材を第1の方向に引き抜く際に、前記差込部材の上にある前記被搬送物が前記第1の方向に移動することを規制する第1の規制部材と、
を備えるロボット用ハンドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、被搬送物の位置を適切に制御することができるロボット用ハンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例のロボット用ハンドが適用される作業システムの構成例を示す図である。
図2】ロボット機構を例示する斜視図である。
図3】ロボット用ハンドの構成を示す斜視図である。
図3A】第1の規制部材の形状を示す図である。
図4】ロッドが引き込まれた状態を示す斜視図である。
図5】被搬送物を掬う作業を示す正面図である。
図5A】被搬送物を掬う作業を示す正面図である。
図5B】被搬送物を掬う作業を示す正面図である。
図6】被搬送物を掬う作業を示す上面図である。
図6A】被搬送物を掬う作業を示す上面図である。
図7】シャリがコンベアにより搬送される様子を示す上面図である。
図8】被搬送物をシャリに載せる作業を示す正面図である。
図8A】被搬送物をシャリに載せる作業を示す正面図である。
図8B】被搬送物をシャリに載せる作業を示す正面図である。
図8C】被搬送物をシャリに載せる作業を示す正面図である。
図8D】被搬送物をシャリに載せる作業を示す正面図である。
図9】2つのシャリに対して、異なる方向から差込部材を差し込む例を示す正面図である。
図9A】2つのシャリに対して、異なる方向から差込部材を差し込む例を示す正面図である。
図10】ハンドの変形例を示す斜視図である。
図11図10の例における差込部材の形状を示す図である。
図11A図10の例における第1の規制部材の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例のロボット用ハンドが適用される作業システムの構成例を示す図、図2は、ロボット機構を例示する斜視図、図3は、ロボット用ハンドの構成を示す斜視図、図3Aは、第1の規制部材の形状を示す図である。
【0010】
図1に示すように、作業システムは、メイン制御装置10と、メイン制御装置10からの指令に基づいてロボット機構2(図2)を制御するロボット制御装置20と、メイン制御装置10からの指令に基づいて搬送装置3を制御する搬送制御装置30と、を含んで構成される。
【0011】
図2に示すように、ロボット機構2は、複数の回転関節を有するアーム状の多関節ロボットであり、搬送装置3構成するコンベア31の近傍に設置されている。図2において矢印31Aは、コンベア31の移動方向を示している。
【0012】
図2に示すように、ロボット機構2の先端部には、ハンド50(図3)が取り付け可能とされる。
【0013】
図1に示すように、メイン制御装置10には、ロボット機構2に取り付けられるカメラ11およびコンベア31を上方から撮影するカメラ11(後述)を含む複数のカメラ11と、カメラ11により撮影された画像に基づく画像処理を実行する画像処理装置12と、調理システムの動作状態等を表示する表示装置15と、調理システムに対するユーザの操作を受け付ける操作部16と、が接続されている。
【0014】
ロボット制御装置20には、ロボット機構2の各関節を駆動する複数の電動のアクチュエータ23と、ロボット機構2の姿勢等を検出する複数のセンサ24と、ロボット機構2およびハンド50(図3)の駆動源となるアクチュエータ(例えば、図3のアクチュエータ52)に圧縮空気を送るポンプ21と、当該アクチュエータのそれぞれを制御する複数の電磁弁22と、が接続されている。
【0015】
搬送制御装置30には、搬送装置3を駆動する電動の複数のモータ30aと、搬送装置3の各部の状態等を検出する複数のセンサ30bと、が接続されている。
【0016】
なお、メイン制御装置10、カメラ11および画像処理装置12は、被搬送物40(図4)の目標向きおよび目標重心位置を検出する検出部として機能する。また、メイン制御装置10およびロボット制御装置20は、被搬送物40を目標重心位置に応じた位置に目標向きで置くようにハンド50(ロボット用ハンド)を制御する制御部として機能する。
【0017】
図3に示すように、ハンド50は、ロボット機構2のアーム先端部へ取り付けられる取付部材51と、取付部材51に対して取り付けられたアクチュエータ52と、アクチュエータ52により駆動される駆動部材53と、駆動部材53に対して取り付けられた平板状の差込部材6と、取付部材51に対して取り付けられた平板状の第1の規制部材7と、取付部材51に対して取り付けられた平板状の第2の規制部材8と、を備える。差込部材6、第1の規制部材7および第2の規制部材8の材質は任意であるが、例えば、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料を用いることができる。
【0018】
アクチュエータ52は、水平方向に延びるロッド52a(図3では3本のロッド52a)を備え、ロッド52aがその延設方向(図3においてほぼ左右方向)に駆動される。図3に示すように、駆動部材53は、ロッド52aの先端(図3の左端)に取り付けられて、差込部材6とともに、ロッド52aがその延設方向に往復駆動される。
【0019】
図3に示すように、差込部材6は、矩形板状に形成され、図3に示す状態において、第1の規制部材7に向かって下降する傾斜面61を有する。
【0020】
図3に示すように、第1の規制部材7と第2の規制部材8は、いずれも表面(平板の表面)がロッド52aの延設方向、すなわち差込部材6の駆動方向に直交する方向となるように取り付けられている。また、図3および図3Aに示すように、第1の規制部材7の下端側には、第1の規制部材7の下端から上方に向けて形成された矩形状の切欠き71が形成されている。図3Aにおいて、切欠き71の両側には、下方向に突出する一対の突出部72が形成されている。
【0021】
ここで、図3は、ロッド52aが突き出された状態を示している。このとき、水平方向において、差込部材6は第1の規制部材7から離れた位置にある。
【0022】
図4は、ロッドが引き込まれた状態を示す斜視図である。
【0023】
図4に示すように、アクチュエータ52のロッド52aが引き込まれた状態では、水平方向において、差込部材6は第1の規制部材7と重なり合う位置にある。このとき、差込部材6が第1の規制部材7の切欠き71に収容されることで、差込部材6と第1の規制部材7との間の干渉が回避される。
【0024】
図4に示す状態においては、第1の規制部材7と第2の規制部材8の間に挟まれた被搬送物40が差込部材6により下方から支持された状態で、ハンド50によって搬送可能とされる。
【0025】
次に、作業システムの動作について説明する。
【0026】
以下、にぎり寿司のネタをシャリに載せる一連の作業を実行する場合の動作について例示する。なお、作業システムの用途は任意であり、被搬送物の種類も任意である。例えば、本開示の作業システムを、任意の製品の製造工程に適用することもできる。
【0027】
図5図5Bは、被搬送物を掬う作業を示す正面図、図6図6Aは、被搬送物を掬う作業を示す上面図である。図6は、図5の状態に対応し、図6A図5Aおよび図5Bの状態に対応している。
【0028】
図5および図6に示す状態では、被搬送物40(ネタ)がトレーの表面45(載置面)に載置されている。
【0029】
トレーの表面45に載置された被搬送物40の画像は、メイン制御装置10の制御に従って所定のカメラ11により取得され、メイン制御装置10の制御に従って画像処理装置12において解析される。例えば、被搬送物40の輪郭が取得されて、取得された輪郭に基づき、被搬送物40の画像(輪郭内の範囲)における重心座標と被搬送物40の長手方向(図6における上下方向)が求められる。
【0030】
これらの情報(重心位置および長手方向)に基づいて、ハンド50の位置および角度が制御された状態となる。
【0031】
図6に示すように、この状態では、第1の規制部材7と第2の規制部材8の間に被搬送物40が位置付けられるように、ハンド50の位置が調整される。また、第1の規制部材7と第2の規制部材8の表面が、それぞれ被搬送物40の長手方向(図6の上下方向)に沿うようにハンド50の角度が調整される。またこのとき、図5に示すように、第1の規制部材7と第2の規制部材8の下端が表面45よりもわずかに上方に位置付けられる。
【0032】
また、この状態では、図5に示すように、差込部材6の先端部の下端がトレーの表面45に接触している。この場合、差込部材6が表面45に押し付けられて弾性変形するような状態としてもよい。これにより、差込部材6の先端部の下端の全体を安定して表面45に接触させることができ、被搬送物40の底面と表面45の間に容易に差込部材6を差し込むことが可能となる。
【0033】
次に、取付部材51の位置および角度を維持しつつ、アクチュエータ52により差込部材6を駆動し、ハンド50の状態を図4に示す状態に移行させる。
【0034】
差込部材6が駆動されると、図5Aおよび図6Aに示すように、差込部材6が被搬送物40の底面と表面45の間に差し込まれる。また、差込部材6が駆動される間、被搬送物40は第1の規制部材7、とくに突出部72と、第2の規制部材8の間でその位置が規制される。このため、被搬送物40を確実に差込部材6の上に載せることができる。この状態でハンド50を移動させることにより、図5Bに示すように被搬送物40を搬送することができる。
【0035】
次に、コンベア31により搬送されてくるシャリに被搬送物40を載せる作業について説明する。
【0036】
図7は、シャリがコンベアにより搬送される様子を示す上面図である。
【0037】
図7に示す例では、2つのシャリ32、32Aが皿33に載せられてコンベア31により搬送されている。コンベア31上の皿33の角度を一定に揃えることは難しいため、シャリ32、32Aの角度は、皿33ごとにまちまちとなりがちである。しかし、本実施例では、シャリ32、32Aごとにその角度を検出しているので、シャリ32、32Aの向きに対して正しい向きで被搬送物40を載せることが可能となる。
【0038】
コンベア31を上方から撮影するカメラ11は、メイン制御装置10の制御に従って図7に示すような画像を、現在時刻(画像取得時刻)とともに取得する。このカメラ11は、ハンド50を用いた作業範囲よりもコンベア31の上流側で当該画像を取得する。
【0039】
カメラ11により取得された画像は、メイン制御装置10の制御に従って画像処理装置12において解析される。例えば、シャリ32の輪郭が取得されて、取得された輪郭に基づき、シャリ32の画像(輪郭内の範囲)における重心座標とシャリ32の長手方向32Xが求められる。シャリ32の重心位置は、シャリ32に載せられる被搬送物40の目標重心位置に相当する。また、シャリ32の長手方向32Xは、シャリ32に載せられる被搬送物40の目標向きに相当する。シャリ32Aについても同様である。
【0040】
なお、シャリ32の重心位置と、被搬送物40の目標重心位置とをあえてずらしてもよい。例えば、被搬送物40がネタの海老であるような場合には、尻尾の方向を考慮して、被搬送物40の目標重心位置をシャリ32の重心位置からずれた位置に設定してもよい。
【0041】
皿33に載せられたシャリ32は、コンベア31により運ばれるが、コンベア31の搬送速度は既知の値(設定値)である。このため、ロボット制御装置20は、メイン制御装置10からの情報(画像取得時刻、画像取得時刻におけるシャリ32の重心位置および向き)に基づいてシャリ32の現在の重心位置および角度を把握することができる。
【0042】
図8図8Dは、被搬送物をシャリに載せる作業を示す正面図である。なお、図8図8Dにおいて皿33の図示は省略している。
【0043】
本実施例では、コンベア31の搬送速度(速度ベクトル)と同一の速度(速度ベクトル)でロボット用ハンド50を移動させながら被搬送物40をシャリ32の上に置く作業を行っている。
【0044】
まず、図8に示すように、被搬送物40がシャリ32の上方に位置付けられるとともに、被搬送物40の長手方向(図6における上下方向)がシャリ32の長手方向32Xとが一致するように、ハンド50(取付部材51)の位置および角度が制御される。なお、このとき、シャリ32は、コンベア31により平行移動するように搬送されているので、ハンド50(取付部材51)の水平面内の位置は、シャリ32の移動に合わせて平行移動する。すなわち、図8図8Dに示す作業の間、ハンド50(取付部材51)の水平面内における位置がシャリ32の位置に追従するように制御される。これにより、シャリ32に載せられる被搬送物40の位置ずれを防ぐことができるとともに、ハンド50がシャリ32と干渉することを防止できる。
【0045】
また、ハンド50(取付部材51)の水平面内における位置がコンベア31の流れに追従するので、差込部材6の差し込み方向と無関係に被搬送物40を正確な位置でシャリ32に載せることが可能となる。例えば、差込部材6の差し込み方向がコンベア31の搬送方向と一致、あるいは逆転し、あるいはコンベア31の搬送方向と交わっても、いずれの場合においても実質的に同じ位置精度が維持される。被搬送物40をシャリ32Aに載せる作業においても同様である。
【0046】
次に、図8A図8Bに示すように、ハンド50(取付部材51)を所定の高さまで降下させる。次に、差込部材6を図8A図8Bにおいて左方に移動させると、被搬送物40は差込部材6に付着したまま左方に移動する。しかし、被搬送物40が第1の規制部材7に当接すると、以降は左方への被搬送物40の移動が規制され、被搬送物40の位置(図8Bにおける左右方向の位置)が第1の規制部材7により規定された状態となる。このとき、第1の規制部材7の一対の突出部72によって、長手方向における両側で被搬送物40が支持される。このため、被搬送物40の向き(長手方向の向き)も正しく調整される。
【0047】
図8Cに示すように、差込部材6が被搬送物40から離れる位置まで移動されると、被搬送物40は、ハンド50から解放されて所定の位置(第1の規制部材7により規定された位置)に配置される。すなわち、被搬送物40は、シャリ32の上に載せられた状態となる。なお、被搬送物40を差込部材6により掬い取り、シャリ32の上に載せるまでの間に、第1の規制部材7が被搬送物40の下方に位置づけられるようにハンド50全体を回動させてもよい。例えば、図5Bにおいてハンド50を反時計回りに回動させることにより、差込部材6上で被搬送物40を左方向に滑らせて第1の規制部材7に当接させることができる。これにより、被搬送物40を第1の規制部材7で規定される位置に確実に位置決めすることができる。
【0048】
次に、図8Dに示すように、ハンド50(取付部材51)をシャリ32の位置から退避させて、次の被搬送物40を掬い上げる図5図5Bの作業を行う。さらに、ハンド50(取付部材51)をシャリ32Aの上方まで移動させた後、図8図8Dの作業を行うことにより、被搬送物40をシャリ32Aの上に載せることができる。
【0049】
この場合も、図8図8Dに示す作業の間、ハンド50(取付部材51)の水平面内における位置がシャリ32Aの位置に追従するように制御される。これにより、シャリ32Aに載せられる被搬送物40の位置ずれを防ぐことができるとともに、ハンド50がシャリ32Aや、皿33の上のにぎり寿司(シャリ32に載せられた被搬送物40)と干渉することを防止できる。
【0050】
なお、図8図9では、シャリ32、32Aに載せられる被搬送物40の長手方向をシャリ32、32Aの長手方向に一致させているが、両者の方向の関係は任意である。例えば、被搬送物40(ネタ)の種類によっては、両者の長手方向を互いに直交させてもよい。すなわち、シャリ32、32Aの長手方向を、そのまま、シャリ32、32Aに載せられるネタの長手方向の「目標向き」として設定することも可能である。しかし、シャリ32、32Aの長手方向から所定角度ずれた向きを「目標向き」として設定することも可能である。上記のように、たとえば、敢えてシャリの長手方向から90度回転した向き(シャリの短手方向)にネタを載せることも可能である。また、本実施例では、差込部材6を引き抜く方向(第1の方向)と、差し込む方向(第2の方向)とを互いに逆方向としているが、これら両方向の関係はこれに限定されない。
【0051】
以上の作業を、シャリ32およびシャリ32Aがハンド50による作業範囲内で搬送されている間に実行することにより、2つのシャリ32およびシャリ32Aの上に、それぞれ被搬送物40を載せることができる。
【0052】
このように、本実施例によれば、差込部材6を、図8図8Dにおける左方向に引き抜く際に、差込部材6の上にある被搬送物40が差込部材6とともに当該方向に移動することが、第1の規制部材7により規制される。このため、被搬送物40の位置を正確に制御することができる。例えば、図8図8Dの例では、図8図8Dにおける被搬送物40の左端の位置が第1の規制部材7により規制される。仮に、第1の規制部材7がなければ、差込部材6に貼り付いた被搬送物40が解放される位置を正確に制御することが困難となる。これに対し、本実施例では、図8図8Dにおける被搬送物40の左端の位置が第1の規制部材7により規制されるので、正確な位置で被搬送物40を解放できる。また、第1の規制部材7により被搬送物40の向きも整えられる。したがって、例えば、シャリ32、32Aの中心と被搬送物40の中心がほぼ一致し、互いの長手方向もほぼ一致するような所望の位置と角度で、被搬送物40を配置することができる。
【0053】
ところで、ハンド50により掬い上げた被搬送物40は、第1の規制部材7と第2の規制部材8により、その位置が規制されている。しかし、第1の規制部材7と第2の規制部材8に沿った被搬送物40の長手方向(図6の上下方向)については、差込部材6の上を滑って移動するおそれがある。このため、被搬送物40の搬送時には、被搬送物40の長手方向(図6の上下方向)に大きな加速度を発生させないようにハンド50を駆動することが好ましい。換言すれば、被搬送物40の長手方向と直交する方向(図6の左右方向)に加速度が印加されるようにハンド50の向きを制御することにより、被搬送物40の搬送速度を上げることが可能となる。これにより、作業時間の短縮が図れる。
【0054】
本実施例では、差込部材6が平板状とされ、その傾斜面61(差込部材6の上面)が図8B図8Cの右方に向けて下がるように差込部材6が傾斜して設けられている。このため、差込部材6を水平面に沿った板状とした場合と比較し、表面45から差込部材6が受ける摩擦力等の力が抑制され、差込部材6を円滑に移動させることができる。また、水分により差込部材6が表面45に貼り付いてしまうような不都合も回避できる。
【0055】
また、差込部材6が傾斜して設けられているため、図8B図8Cなどに示されるように、シャリ32Aと差込部材6との間に空間を形成しやすく、したがって差込部材6がシャリ32Aに干渉することが抑制される。
【0056】
さらに、差込部材6を引き抜く際に、差込部材6に貼り付いた被搬送物40に過大なせん断力を与えることなく、被搬送物40を円滑に落下させることが可能となる。仮に、差込部材6の上面と第1の規制部材7の表面(被搬送物40に当接する面)とが直交している場合には、差込部材6を引き抜く際に、差込部材6に貼り付いた被搬送物40に過大なせん断力を与えてしまう可能性がある。
【0057】
図9図9Aは、2つのシャリに対して、異なる方向から差込部材を差し込む例を示す正面図である。
【0058】
ロボット用ハンド50は、被搬送物40を所定の位置および角度でシャリ32、32Aの上に置く際に選択されうる2つの姿勢を有する。ロボット制御装置20は、2つの姿勢の中からメイン制御装置10により指示された姿勢を選択し、選択された姿勢で被搬送物40をシャリ32、32Aの上に置くようにロボット用ハンド50の動きを制御する。
【0059】
図9図9Aに示す例では、ロボット制御装置20は、シャリ32およびシャリ32Aに対して、互いにロボット用ハンド50の異なる姿勢を選択している。すなわち、図9に示すように、シャリ32に対して図9図9Aにおいて右側から差込部材6を差し込み、右側に引き抜いている。一方、図9Aに示すように、シャリ32Aに対して図9図9Aにおいて左側から差込部材6を差し込み、左側に引き抜いている。このように、ハンド50の向きを180°回転させて差込部材6の位置を反転させることにより、図9において差込部材6をシャリ32Aの反対側に、図9Aにおいて差込部材6をシャリ32の反対側に、それぞれ配置している。このため、被搬送物40を載せる対象となっていないシャリ32Aないしにぎり寿司(シャリ32の上の被搬送物40)に差込部材6が干渉するおそれを排除できる。
【0060】
図10は、ハンドの変形例を示す斜視図である。図10において、図3と同一の要素には同一の符号を付している。
【0061】
図10の例では、差込部材6の上に載せられた被搬送物40の上方に位置し、被搬送物40の上方への移動を規制する第3の規制部材85を備える。第3の規制部材85は、取付部材51に対して固定された部材であってもよい。また、第3の規制部材85は、取付部材51に対して上下方向に移動可能な部材であってもよい。後者の場合、取付部材51に取り付けられたアクチュエータによって第3の規制部材85を駆動可能としてもよい。
【0062】
第3の規制部材85を設け、上方から被搬送物40を押さえることにより、被搬送物40の変形等を抑制することができる。例えば、被搬送物40が海老や小魚を開いた形態(背開き、腹開きの形態)のものである場合、上方から被搬送物40を押さえて差込部材6Aとの間に被搬送物40を挟み込むことにより、被搬送物40が丸まるなどの変形を抑制することができる。
【0063】
また、図10の例では、アクチュエータ81が取付部材51に取り付けられ、第2の規制部材8をアクチュエータ81により駆動可能としている。第2の規制部材8の駆動方向は、差込部材6Aの駆動方向と同一とされている。これにより、第1の規制部材7Aと第2の規制部材8との間の間隔を可変とすることができる。
【0064】
このように、第2の規制部材8を駆動可能とすることにより、差込部材6Aで掬った被搬送物40を第1の規制部材7Aの方向に押し付けることが可能となる。これにより、第2の規制部材8の駆動方向の幅(ネタの幅)が異なる被搬送物40に対する適用範囲を拡大することができる。例えば、幅の狭い被搬送物40を第2の規制部材8で押し込み、被搬送物40を第1の規制部材7Aに押し当てることにより、第1の規制部材7Aに接する位置まで被搬送物40を移動させることができる。すなわち、被搬送物40の幅の相違があっても、被搬送物40を第1の規制部材7Aの位置を基準に位置合わせすることができる。
【0065】
なお、第2の規制部材8を駆動可能とする代わりに、あるいは第2の規制部材8を駆動可能とするのに加えて、第1の規制部材7Aを駆動可能とし、これにより第1の規制部材7Aと第2の規制部材8との間の間隔を可変としてもよい。なお、図10の例においても、被搬送物40を差込部材6により掬い取り、シャリ32の上に載せるまでの間に、第1の規制部材7が被搬送物40の下方に位置づけられるようにハンド50全体を回動させる動作を追加してもよい。この場合、当該動作を、第1の規制部材7Aと第2の規制部材8との間の間隔を狭める動作と同時に実行することにより、より確実に被搬送物40を第1の規制部材7に当接させることができる。
【0066】
また、図10の例では、差込部材6Aおよび第1の規制部材7Aの形状を、それぞれ差込部材6および第1の規制部材7の形状と異なるものとしている。
【0067】
図11は、図10の例における差込部材の形状を示す図、図11Aは、図10の例における第1の規制部材の形状を示す図である。
【0068】
図11に示すように、板状の第1の規制部材7Aには、その下端から上方に切り欠かれた一対の切欠き71Aが形成されている。その結果、切欠き71Aの間には、下方に延びる3つの突出部72Aが形成される。
【0069】
一方、図11Aに示すように、板状の差込部材6Aには、一対の切欠き71Aに対応する一対の突出部63が形成されている。一対の突出部63が一対の切欠き71Aに収容された状態で、差込部材6Aの上に被搬送物40が載せられる。
【0070】
このように、第1の規制部材7Aには、3つの突出部72Aが形成され、これら3つの突出部72Aにより、被搬送物40の長手方向の両端部に加え、長手方向の中央部が支持される。このため、差込部材6Aを引き抜く際の被搬送物40の変形や破損を防止することができる。とくに、柔らかく壊れやすい被搬送物40を取り扱う場合に好適である。
【0071】
上記実施例において、ハンド50に他の任意の機能を追加してもよい。例えば、被搬送物40が置かれるトレーをハンド50を用いて移動できるようにしてもよい。この場合、例えば、ハンド50にアクチュエータにより駆動される部材を設け、この部材をトレーに接触させた状態でハンド50を移動させることで、トレーを移動させてもよい。例えば、当該部材をアクチュエータにより駆動して下方(第1の規制部材7および第2の規制部材2の下方)まで移動させることにより、当該部材によりトレーを移動可能な状態としてもよい。被搬送物40を掬い上げてシャリ32、32Aに載せる一連の作業時には、当該部材をアクチュエータにより引き上げて作業空間から退避させることができる。なお、被搬送物40をハンド50で把持する前に、ハンド50(少なくとも差し込み部材6)を水またはアルコール消毒液が入った容器内に移動させ、差し込み部材6等を水またはアルコール消毒液内にて駆動または移動させることで、ハンド50を洗浄してもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施例によれば、差込部材6を引き抜く際に、第1の規制部材7、7Aが、差込部材6の上にある被搬送物40が引き抜き方向に移動することを規制する。このため、シャリ32、32Aの上に載せられる被搬送物40の位置を第1の規制部材7、7Aにより規定することができる。本実施例は、粘性や水分などにより差込部材6に貼り付きやすい被搬送物40に対して、とくに有効である。
【0073】
また、本実施例によれば、シャリ32、32Aの向きを検出し、検出された向きに応じてハンド50の姿勢を調整している。これにより、被搬送物40を検出された向きに応じた向き(目標向き)でシャリ32、32Aに載せることができる。したがって、シャリ32、32Aの向きに応じて目標向きが変化する場合にも対応することができる。
【0074】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素の全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、上記実施例では、シャリの上に寿司ネタを置く実施例を記載したが、上記のように、本開示の適用範囲はこれに限定されない。例えば、本開示は、食品に限らず、一般的なオブジェクトにも適用可能である。例えば、製品を容器に置く作業等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0075】
6 差込部材
6A 差込部材
7 第1の規制部材
7A 第1の規制部材
8 第2の規制部材
10 メイン制御装置
11 カメラ
12 画像処理装置
20 ロボット制御装置
40 被搬送物
50 ハンド
61 傾斜面
71 切欠き
71A 切欠き
81 アクチュエータ
85 第3の規制部材
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図5A
図5B
図6
図6A
図7
図8
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図9A
図10
図11
図11A