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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171981
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電流センサおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20241205BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01R15/18 C
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089373
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA11
2G025AB01
2G025AB02
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】出力電流のS/N比を向上させる。
【解決手段】磁気コアMC1に配設されたフラックスゲートFG1と、巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に巻回された巻線W1と、磁気コアMC1内に発生する磁束を打ち消す電流I1をフラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて生成して巻線W1の一端T11に供給する増幅器A1とを備え、磁気コアMC2に配設されたフラックスゲートFG2と、巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に巻回されて巻線W1の他端T12から出力された電流I1が供給される巻線W2と、巻数N2よりも少ない巻数N3を有すると共に磁気コアMC2に巻回された巻線W3と、電流I1が巻線W2に供給されることによって磁気コアMC2内に発生する磁束を打ち消す電流I2をフラックスゲートFG2から出力される電圧V2に基づいて生成して巻線W3の一端T31に供給する増幅器A2とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出導体が挿通される第1磁気コアと、
前記第1磁気コアに配設された第1磁電変換部と、
第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回された第1巻線と、
前記検出導体に検出電流が流れることによって前記第1磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第1電流を前記第1磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第1巻線の一端に供給する第1電圧電流変換回路とを備えている電流センサであって、
第2磁気コアと、
前記第2磁気コアに配設された第2磁電変換部と、
第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回されて前記第1巻線の他端から出力された前記第1電流が供給される第2巻線と、
前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、
前記第1電流が前記第2巻線に供給されることによって前記第2磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第2電流を前記第2磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第3巻線の一端に供給する第2電圧電流変換回路とを備えて、
前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線の他端から出力する電流センサ。
【請求項2】
前記第1巻線の前記他端から出力された前記第1電流をドライブして前記第2巻線に供給する電流バッファを備えている請求項1記載の電流センサ。
【請求項3】
検出導体が挿通される第1磁気コアと、
第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回されて前記検出導体に検出電流が流れることによって当該第1磁気コア内に発生する磁束に応じた第1電流を出力する第1巻線とを備えている電流センサであって、
第2磁気コアと、
第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第2巻線と、
前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、
前記第1巻線から出力された前記第1電流をドライブして前記第2巻線に供給する第1電流バッファとを備え、
前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線から出力する電流センサ。
【請求項4】
検出導体が挿通される第1磁気コアと、
前記第1磁気コアに配設された第1磁電変換部と、
第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回された第1巻線Aと、
前記第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回された第1巻線Bと、
前記検出導体に検出電流が流れることによって前記第1磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第1電流Aを前記第1磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第1巻線Aの一端に供給する第1電圧電流変換回路Aと、
前記検出導体に前記検出電流が流れることによって前記第1磁気コア内に発生する磁束を前記第1電流Aと相俟って打ち消す第1電流Bを前記第1磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第1巻線Bの一端に供給する第1電圧電流変換回路Bと、
第2磁気コアと、
前記第2磁気コアに配設された第2磁電変換部と、
第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回されて前記第1巻線Aの他端から出力された前記第1電流Aが供給される第2巻線Aと、
前記第2巻数を有すると共に、前記第1巻線Bの他端から出力された前記第1電流Bが供給され、かつ当該第1電流Bが供給されたときに前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きと、前記第1電流Aが前記第2巻線Aに供給された際に前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きとが同じになるように当該第2磁気コアに巻回された第2巻線Bと、
前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、
前記第1電流Aが前記第2巻線Aに供給されると共に前記第1電流Bが前記第2巻線Bに供給されることによって前記第2磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第2電流を前記第2磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第3巻線の一端に供給する第2電圧電流変換回路とを備えて、
前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線の他端から出力する電流センサ。
【請求項5】
前記第1巻線Aの前記他端から出力された前記第1電流Aをドライブして前記第2巻線Aに供給する電流バッファAと、
前記第1巻線Bの前記他端から出力された前記第1電流Bをドライブして前記第2巻線Bに供給する電流バッファBとを備えている請求項4記載の電流センサ。
【請求項6】
検出導体が挿通される第1磁気コアと、
第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回されて前記検出導体に検出電流が流れることによって当該第1磁気コア内に発生する磁束に応じた第1電流Aを出力する第1巻線Aと、
前記第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回されて前記検出導体に前記検出電流が流れることによって当該第1磁気コア内に発生する磁束に応じた第1電流Bを出力する第1巻線Bと、
第2磁気コアと、
第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回されて前記第1巻線Aから出力された前記第1電流Aが供給される第2巻線Aと、
前記第2巻数を有すると共に、前記第1巻線Bから出力された前記第1電流Bが供給され、かつ当該第1電流Bが供給されたときに前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きと、前記第1電流Aが前記第2巻線Aに供給された際に前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きとが同じになるように当該第2磁気コアに巻回された第2巻線Bと、
前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、
前記第1巻線Aから出力された前記第1電流Aをドライブして前記第2巻線Aに供給する第1電流バッファAと、
前記第1巻線Bから出力された前記第1電流Bをドライブして前記第2巻線Bに供給する第1電流バッファBとを備えて、
前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線から出力する電流センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電流センサを備え、
前記電流センサから出力された前記検出電流の電流値に応じた電流値の前記電流に基づいて前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値を測定する測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出導体が挿通される磁気コアと、磁気コアに巻回されて検出導体に検出電流が流れることによって磁気コア内に発生する磁束に応じた電流を出力する巻線とを備えて、検出導体を流れる検出電流の電流値に応じた電流値の電流を巻線から出力する電流センサ、およびそのような電流センサを備えた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、この種の電流センサとして下記の特許文献1に開示された電流センサが知られている。この電流センサは、磁気コア、例えばフラックスゲートで構成される磁電変換部、帰還巻線および電圧電流変換回路を備えて、ゼロフラックス方式の電流センサとして構成されている。
【0003】
この従来の電流センサでは、検出電流の流れている被検出電線(検出導体)が磁気コアの内部に挿通されている状態において、磁電変換部が、磁気コアの内部に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた電圧値の電圧を出力する。この場合、磁気コア内には、被検出電線に検出電流が流れることによって発生している磁束と、電圧電流変換回路から出力されている負帰還電流が帰還巻線に流れることによって発生している磁束との差分の磁束が発生している。
【0004】
この際に、電圧電流変換回路は、被検出電線に流れている検出電流が例えば直流から数kHzまでの低周波数帯域のときには、ゼロフラックス動作を実行する。具体的には、電圧電流変換回路は、磁電変換部から入力している電圧に基づいて、出力する電圧がゼロボルトになるように、つまり、磁電変換部において検出される磁気コア内に発生している磁束の磁束密度がゼロになるように、負帰還電流の電流値を制御しつつ、負帰還電流を生成して帰還巻線に出力する。これにより、この電流センサは、検出電流の電流値を帰還巻線の巻回数で除算した値の電流値の負帰還電流を出力する。
【0005】
一方、被検出電線に流れている検出電流が例えば数kHz以上の高周波数帯域のときには、この従来の電流センサは、カレントトランスの動作を実行する(以下、「CT動作」ともいう)。具体的には、この電流センサでは、帰還巻線が、磁気コア内に発生している磁束に基づいて、検出電流の電流値を帰還巻線の巻数(以下、巻数を「N1」ともいう)で除した値の電流を出力電流として出力する。したがって、この電流センサに接続される測定装置では、フラックスゲート素子が動作するゼロフラックス動作時に出力される負帰還電流、およびCT動作時に出力される出力電流に基づいて、検出電流の電流値を測定することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-16643号公報(第10-13頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の電流センサには、以下の改善すべき課題が存在している。具体的には、上記の電流センサでは、ゼロフラックス動作時には、磁電変換部が、磁気コア内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた電圧値の電圧を出力する。この際に、磁電変換部は、高い周波数成分のノイズが検出電流に含まれているときには、そのノイズ成分に応じた電圧を出力する。このため、電圧電流変換回路が磁電変換部から出力されたノイズ成分に基づく負帰還電流を出力する結果、この電流センサから出力される負帰還電流のS(信号)/N(ノイズ)比(以下、「S/N比」ともいう)が低下している。そこで、この種の電流センサでは、帰還巻線の巻数を増やすことによって帰還巻線のインダクタンスを大きくしてノイズ成分を低減している。ところが、電流センサから出力される負帰還電流の電流値は、検出電流の電流値を帰還巻線の巻数で除した値の電流となる。このため、検出電流の電流値が大きいときには特に問題とはならないものの、検出電流が微小電流のときには、電流センサから出力される負帰還電流の電流値も微小となる結果、負帰還電流のS/N比が低下する。したがって、この電流センサには、出力電流のS/N比を向上すべきとの改善点が存在する。
【0008】
一方、CT動作時にも、ゼロフラックス動作時における上記の課題が同様に存在する。また、CT動作時には、上記の電流センサでは、帰還巻線が、磁気コア内に発生している磁束に基づいて、検出電流の電流値を帰還巻線の巻数で除した値の電流を出力電流として出力している。このため、電流センサ(帰還巻線)の負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合において、高周波数帯域の検出電流が被検出電線に流れたときには、帰還巻線が高周波数帯域の出力電流を出力するのが困難となる。したがって、この電流センサには、電流センサの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流を検出可能とすべきとの改善点も存在する。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、出力電流のS/N比を向上し得る電流センサを提供することを主目的とする。また、CT動作時において高周波数帯域の検出電流を検出し得る電流センサを提供することを他の主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく本発明に係る電流センサは、検出導体が挿通される第1磁気コアと、前記第1磁気コアに配設された第1磁電変換部と、第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回された第1巻線と、前記検出導体に検出電流が流れることによって前記第1磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第1電流を前記第1磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第1巻線の一端に供給する第1電圧電流変換回路とを備えている電流センサであって、第2磁気コアと、前記第2磁気コアに配設された第2磁電変換部と、第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回されて前記第1巻線の他端から出力された前記第1電流が供給される第2巻線と、前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、前記第1電流が前記第2巻線に供給されることによって前記第2磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第2電流を前記第2磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第3巻線の一端に供給する第2電圧電流変換回路とを備えて、前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線の他端から出力する。
【0011】
したがって、本発明に係る電流センサによれば、演算増幅回路などの能動素子で電流を増幅する構成と比較して、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、第2磁気コアの第2巻線の巻数を第3巻線の巻数よりも大きくすることによって第1巻線から出力される電流を等価的に増幅しているため、出力する電流のS/N比をより十分に向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る電流センサは、前記第1巻線の前記他端から出力された前記第1電流をドライブして前記第2巻線に供給する電流バッファを備えている。したがって、本発明に係る電流センサによれば、電流センサの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流を精度良く検出することができる。
【0013】
また、本発明に係る電流センサは、検出導体が挿通される第1磁気コアと、第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回されて前記検出導体に検出電流が流れることによって当該第1磁気コア内に発生する磁束に応じた第1電流を出力する第1巻線とを備えている電流センサであって、第2磁気コアと、第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第2巻線と、前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、前記第1巻線から出力された前記第1電流をドライブして前記第2巻線に供給する第1電流バッファとを備え、前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線から出力する。
【0014】
したがって、本発明に係る電流センサによれば、演算増幅回路などの能動素子で電流を増幅する構成と比較して、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、第2磁気コアの第2巻線の巻数を第3巻線の巻数よりも大きくすることによって第1巻線から出力される電流を等価的に増幅しているため、出力する電流のS/N比をより十分に向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る電流センサは、検出導体が挿通される第1磁気コアと、前記第1磁気コアに配設された第1磁電変換部と、第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回された第1巻線Aと、前記第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回された第1巻線Bと、前記検出導体に検出電流が流れることによって前記第1磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第1電流Aを前記第1磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第1巻線Aの一端に供給する第1電圧電流変換回路Aと、前記検出導体に前記検出電流が流れることによって前記第1磁気コア内に発生する磁束を前記第1電流Aと相俟って打ち消す第1電流Bを前記第1磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第1巻線Bの一端に供給する第1電圧電流変換回路Bと、第2磁気コアと、前記第2磁気コアに配設された第2磁電変換部と、第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回されて前記第1巻線Aの他端から出力された前記第1電流Aが供給される第2巻線Aと、前記第2巻数を有すると共に、前記第1巻線Bの他端から出力された前記第1電流Bが供給され、かつ当該第1電流Bが供給されたときに前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きと、前記第1電流Aが前記第2巻線Aに供給された際に前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きとが同じになるように当該第2磁気コアに巻回された第2巻線Bと、前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、前記第1電流Aが前記第2巻線Aに供給されると共に前記第1電流Bが前記第2巻線Bに供給されることによって前記第2磁気コア内に発生する磁束を打ち消す第2電流を前記第2磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記第3巻線の一端に供給する第2電圧電流変換回路とを備えて、前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線の他端から出力する。
【0016】
したがって、本発明に係る電流センサによれば、演算増幅回路などの能動素子で電流を増幅する構成と比較して、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、第2磁気コアの第2巻線の巻数を第3巻線の巻数よりも大きくすることによって第1巻線Aおよび第1巻線Bから出力される電流を等価的に増幅しているため、出力する電流のS/N比をより十分に向上させることができる。また、この電流センサによれば、検出導体を流れる検出電流にコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズを相殺して低減することができる結果、耐ノイズを十分に向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る電流センサは、前記第1巻線Aの前記他端から出力された前記第1電流Aをドライブして前記第2巻線Aに供給する電流バッファAと、前記第1巻線Bの前記他端から出力された前記第1電流Bをドライブして前記第2巻線Bに供給する電流バッファBとを備えている。したがって、本発明に係る電流センサによれば、電流センサの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流を精度良く検出することができる。
【0018】
また、本発明に係る電流センサは、検出導体が挿通される第1磁気コアと、第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回されて前記検出導体に検出電流が流れることによって当該第1磁気コア内に発生する磁束に応じた第1電流Aを出力する第1巻線Aと、前記第1巻数を有すると共に前記第1磁気コアに巻回されて前記検出導体に前記検出電流が流れることによって当該第1磁気コア内に発生する磁束に応じた第1電流Bを出力する第1巻線Bと、第2磁気コアと、第2巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回されて前記第1巻線Aから出力された前記第1電流Aが供給される第2巻線Aと、前記第2巻数を有すると共に、前記第1巻線Bから出力された前記第1電流Bが供給され、かつ当該第1電流Bが供給されたときに前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きと、前記第1電流Aが前記第2巻線Aに供給された際に前記第2磁気コア内に発生する磁束の向きとが同じになるように当該第2磁気コアに巻回された第2巻線Bと、前記第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に前記第2磁気コアに巻回された第3巻線と、前記第1巻線Aから出力された前記第1電流Aをドライブして前記第2巻線Aに供給する第1電流バッファAと、前記第1巻線Bから出力された前記第1電流Bをドライブして前記第2巻線Bに供給する第1電流バッファBとを備えて、前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値に応じた電流値の電流を前記第3巻線から出力する。
【0019】
したがって、本発明に係る電流センサによれば、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、第1磁気コアの第2巻線Aおよび第2巻線Bの巻数を第3巻線の巻数よりも大きくすることによって第1巻線Aおよび第2巻線Bから出力される電流を等価的に増幅しているため、出力する電流のS/N比をより十分に向上させることができる。また、この電流センサによれば、検出導体を流れる検出電流にコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズを相殺して低減することができる結果、耐ノイズを十分に向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係る電流測定装置は、上記のいずれかに記載の電流センサを備え、前記電流センサから出力された前記検出電流の電流値に応じた電流値の前記電流に基づいて前記検出導体を流れる前記検出電流の電流値を測定する。したがって、本発明に係る電流測定装置によれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電流センサによれば、能動素子で電流を増幅する構成と比較して、電流センサから出力される電流のS/N比を十分に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電流測定装置100の構成を示す構成図である。
図2】電流測定装置100Aの構成を示す構成図である。
図3】電流測定装置100Bの構成を示す構成図である。
図4】電流測定装置100Cの構成を示す構成図である。
図5】電流測定装置100Dの構成を示す構成図である。
図6】電流測定装置100Eの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、電流センサの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
最初に、電流センサ1を備えた電流測定装置100について、図1を参照して説明する。
【0025】
電流測定装置100は、電流センサ1、測定部2および出力部3を備えて、検出導体Lを流れる検出対象の検出電流Itの電流値を測定可能に構成されている。
【0026】
電流センサ1は、磁気コアMC1,MC2、巻線W1,W2,W3、フラックスゲートFG1,FG2、増幅器A1,A2および電流バッファBUを備えて構成され、検出導体Lを流れる直流から数kHz(例えば、3kHz程度)までの低周波数帯域(以下、単に「低周波数帯域」ともいう)における検出電流Itの電流値をゼロフラックス動作で測定(検出)すると共に、数kHz(例えば、3kHz程度)以上の高周波数帯域(以下、単に「高周波数帯域」ともいう)における検出電流Itの電流値をCT動作によって測定(検出)する。
【0027】
磁気コアMC1は、第1磁気コアを構成する。この場合、磁気コアMC1は、例えば、フェライト、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼板および純鉄などの材料を用いて、基端部(図1中の左端部)を中心として開閉可能な分割型に形成されて、検出電流Itが流れている活線状態の検出導体Lをクランプ可能(検出導体Lを内部に挿通可能)に、円形状、楕円形状、矩形状および多角形状状などの環状に形成されている。なお、磁気コアMC1については、分割型に限定されず、貫通型(非分割型)の構成を採用することもできる。
【0028】
また、巻線W1は、帰還巻線として機能して、予め規定された巻数N1(本例では一例として、N1=50)を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。
【0029】
フラックスゲートFG1は、第1磁電変換部として機能して、一例として、磁気コアMC1の基端部に形成されたギャップG1内に配設されている。また、フラックスゲートFG1は、作動状態において、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。この場合、磁気コアMC1内に発生する磁束は、磁気コアMC1に挿通された検出導体Lに検出電流Itが流れることによって発生する磁束φ1と、巻線W1に後述する負帰還電流である電流I1が流れることによって発生する磁束φ2(磁束φ1と逆向きの磁束)との合成磁束(φ1-φ2)となっている。なお、第1磁電変換部としては、フラックスゲートに代えてホール素子や磁気抵抗素子(MR:Magneto Resistive)などで構成することもできる。
【0030】
増幅器A1は、第1電圧電流変換回路として機能すると共に演算増幅回路などで構成されている。この場合、増幅器A1は、フラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて、検出導体Lに検出電流Itが流れることによって磁気コアMC1内に発生する磁束φ1を打ち消す第1電流としての電流I1を生成して巻線W1の一端T11に供給する。具体的には、増幅器A1は、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を打ち消すように)、電流I1の電流値を制御する。この場合、電流I1の電流値(I1とする)は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値(Itとする)を巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)となる。
【0031】
磁気コアMC2は、第2磁気コアであって、磁気コアMC1とは互いに別体に構成されている。この場合、磁気コアMC2は、例えば、フェライト、パーマロイ、パーメンジュール、ケイ素鋼板および純鉄などの材料を用いて、基端部(図1中の左端部)を中心として開閉可能な分割型に形成されて、検出電流Itが流れている活線状態の検出導体Lをクランプ可能(検出導体Lを内部に挿通可能)に、円形状、楕円形状、矩形状および多角形状状などの環状に形成されている。なお、磁気コアMC2については、分割型に限定されず、貫通型(非分割型)の構成を採用することもできる。また、磁気コアMC2については、環状に限らず、I型やL型の磁気コアを用いることができる。ただし、漏れ磁束を少なくして検出精度を上げる観点からすれば、磁気コアMC2を環状に形成するのが好ましい。
【0032】
巻線W2は、予め規定された巻数N2(本例では一例として、N2=200)で磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。また、巻線W3は、巻線W2と磁気結合すると共に帰還巻線として機能する巻線であって、予め規定された巻数N3(本例では一例として、N3=50)で磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。この場合、本例では、巻数N3は、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、巻数N2は、巻数N3よりも大きい巻数に規定されている。
【0033】
フラックスゲートFG2は、第2磁電変換部として機能して、一例として、磁気コアMC2の基端部に形成されたギャップG2内に配設されている。また、フラックスゲートFG2は、作動状態において、磁気コアMC2内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V2を出力する。この場合、磁気コアMC2内に発生する磁束は、磁気コアMC2に巻回されている巻線W2に電流I1が流れることによって発生する磁束φ3と、巻線W3に後述する負帰還電流である電流I2が流れることによって発生する磁束φ4(磁束φ3と逆向きの磁束)との合成磁束(φ3-φ4)となっている。なお、第2磁電変換部としては、フラックスゲートに代えてホール素子や磁気抵抗素子(MR:Magneto Resistive)などで構成することもできる。
【0034】
増幅器A2は、第2電圧電流変換回路として機能すると共に演算増幅回路などで構成されている。この場合、増幅器A2は、フラックスゲートFG2から出力された電圧V2に基づいて、巻線W2に電流I2が流れることによって磁気コアMC2内に発生する磁束φ3を打ち消す第2電流としての電流I2を生成して巻線W3の一端T31に供給する。具体的には、増幅器A2は、電圧V2がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG2において検出される磁気コアMC2内に発生している合成磁束(φ3-φ4)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ4で磁束φ3を打ち消すように)、電流I2の電流値を制御する。この場合、電流I2は、電流センサ1から出力される出力電流として、巻線W3を通って、巻線W3の他端T32から出力される。
【0035】
電流バッファBUは、巻線W1の他端T12と巻線W2の一端T21とを結ぶラインに反転端子が接続されると共に非反転端子がグランドに接続され、かつ巻線W2の他端T22に出力端子が接続された演算増幅回路で構成されている。この電流バッファBUは、巻線W1の他端T12から電流I1が出力された際に、I/V変換回路として機能して、電流I1を電流/電圧変換して変換した電圧を出力端子に出力することにより電流I1を電流増幅する。つまり、電流バッファBUは、電流I1をドライブして巻線W2に供給する。この場合、電流I1の周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2の巻数が多いときに、つまり巻線W2のインダクタンスが大きいときには、巻線W1の負荷が誘導性となるため、巻線W1の他端T12から出力される電流I1を巻線W2に供給するのが困難となる。これに対して、この電流センサ1では、電流バッファBUを設けたことにより、電流I1の周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2の巻数が多いときであっても、電流I1を巻線W2に確実に供給することができる。
【0036】
測定部2は、巻線W3の他端T32から出力された電流I2を入力してA/D変換することによって電流I2の電流を示す測定値を演算すると共に、その測定値を表示させるための表示用データSdを出力部3に出力する。
【0037】
出力部3は、一例として、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置(ディスプレイ)で構成されて、測定部2から出力された表示用データSdを入力して検出導体Lを流れている検出電流Itの電流値Itを画面上に表示する。なお、出力部3は、表示装置に代えて、外部装置とデータ通信を行うインターフェース装置で構成して、この外部装置にインピーダンスデータDzを出力する構成を採用することもできる。
【0038】
次に、電流センサ1および電流測定装置100の動作について、図1を参照して説明する。なお、検出導体Lは、磁気コアMC1の内部に挿通されているものとする。
【0039】
磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに低周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、フラックスゲートFG1が、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。次いで、増幅器A1が、フラックスゲートFG1から出力された電圧V1を入力すると共に、この電圧V1に基づいて上記した電流I1を生成して巻線W1の一端T11に供給する。この場合、増幅器A1は、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を相殺するように)、電流I1の電流値を制御する。この結果、この電流センサ1では、ゼロフラックス動作により、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の電流I1が巻線W1の他端T12から出力される。
【0040】
一方、磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに高周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、巻線W1が、磁気コアMC1内に発生する磁束の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I1を出力する。この結果、この電流センサ1では、CT動作により、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Iを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の電流I1が巻線W1の他端T12から出力される。
【0041】
次いで、電流バッファBUが、巻線W1の他端T12から出力された電流I1を電流/電圧変換して出力端子に出力することにより電流I1をドライブする。この結果、電流I1の周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2の巻数が多いときであっても、電流I1は、巻線W2に確実に供給される。したがって、この電流センサ1では、低周波数帯域から高周波数帯域までに亘る広い周波数帯域の検出電流Itが検出導体Lに流れたときであっても、広い周波数帯域に対応する電流I1を巻線W2に確実に供給することができる。
【0042】
次に、巻線W2に低周波数帯域の電流I1が流れた際には、フラックスゲートFG2が、磁気コアMC2内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V2を出力する。この場合、磁気コアMC2内に発生する磁界の強さは、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した値(It/N1)に、巻線W2の巻数N2を乗算した値に比例する値となる。つまり、磁気コアMC2の巻線W2の巻数N2を巻数N1よりも大きく規定したことで、磁気コアMC2内に発生する磁界の強さが等価的に値(N2/N1)だけ増幅される。
【0043】
次いで、増幅器A2が、フラックスゲートFG2から出力された電圧V2を入力すると共に、この電圧V2に基づいて上記した電流I2を生成して巻線W3の一端T31に供給する。この場合、増幅器A2は、電圧V2がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG2において検出される磁気コアMC2内に発生している合成磁束(φ3-φ4)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ4で磁束φ3を相殺する(打ち消す)ように)、電流I2の電流値を制御する。この結果、電流I2は、巻線W3を通って、巻線W3の他端T32から出力される。この場合、電流I2の電流値(I2とする)は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)に、巻線W2の巻数N2を巻線W3の巻数N3で除した値を乗算した値となる。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0044】
一方、巻線W2に高周波数帯域の電流I1が流れた際には、磁気コアMC2内に磁束φ3が発生し、巻線W3が、その発生した磁束φ3の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I2を他端T32から出力する。この場合、電流I2の電流値I2は、巻線W2に低周波数帯域の電流I1が流れたときと同様にして、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)に、巻線W2の巻数N2を巻線W3の巻数N3で除した値を乗算した値となる。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0045】
ここで、この電流センサ1では、巻数N3が、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、この電流センサ1では、巻数N2が、巻数N3よりも多い巻数に規定されている。したがって、値(N2/N3)が1よりも大きい値になるため、電流I2の電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))は、巻線W1から出力された電流I1の電流値I1(=(It/N1))よりも値(N2/N3)倍だけ大きい値となる。つまり、巻数N2を巻数N3よりも大きい巻数に規定したことにより、磁気コアMC2の巻線W2によって電流I1が等価的に値(N2/N3)だけ増幅される。この結果、従来技術の電流センサから出力される電流値I1(=It×(1/N1))と比較して、値(N2/N3)倍の電流値の電流I2が出力される結果、従来技術の電流センサにおける負帰還電流に対応する電流I2のS/N比が、演算増幅回路などの能動素子で電流を増幅する従来技術の電流センサと比較して十分に向上する。また、電流センサ1のCT動作時には、高周波数帯域の検出電流Itが検出導体Lに流れた際に、電流バッファBUが、電流I1をドライブして巻線W2に出力するため、電流センサ1の負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。
【0046】
次いで、測定部2が、巻線W3の他端T32から出力された電流I2を入力してA/D変換することによって電流I2の電流を示す測定値を演算すると共に、その測定値を表示させるための表示用データSdを出力部3に出力する。この後、出力部3が、測定部2から出力された表示用データSdを入力して検出導体Lを流れている検出電流Itの電流値Itを画面上に表示する。以上により、電流測定装置100による電流センサ1を用いての検出導体Lに流れる検出電流Itの電流検出(測定)が終了する。
【0047】
このように、この電流センサ1および電流測定装置100では、磁気コアMC1に配設されたフラックスゲートFG1と、巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に巻回された巻線W1とを備え、巻線W1に供給されることによって磁気コアMC1内に発生する磁束を打ち消す電流I1をフラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて増幅器A1で生成して、巻線W1の一端T11に供給する。そして、磁気コアMC2に配設されたフラックスゲートFG2と、巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に巻回されて巻線W1の他端T12から出力された電流I1が供給される巻線W2と、巻線W2の巻数N2よりも少ない巻数(N3)である巻線W3とを有すると共に磁気コアMC2に巻回された巻線W3とを備え、電流I1が巻線W2に供給されることによって磁気コアMC2内に発生する磁束を打ち消す電流I2を、フラックスゲートFG2から出力される電圧V2に基づいて生成して巻線W3の一端T31に供給することにより、演算増幅回路などの能動素子で電流I1を増幅する構成と比較して、この電流センサ1によれば、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、磁気コアMC2の巻線W2の巻数N2を巻線W3の巻数N3よりも大きくすることによって電流I1を等価的に値(N2/N3)だけ増幅しているため、電流I2のS/N比をより十分に向上させることができる。したがって、この電流測定装置100によれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。
【0048】
また、この電流センサ1によれば、磁気コアMC1と磁気コアMC2の両方をゼロフラックス動作させることにより、直流から交流までの信号を扱えるため、直流から交流までの検出電流Itを検出することができる。また、この電流センサ1によれば、電流バッファBUが、電流I1をドライブして巻線W2に出力することにより、電流センサ1の負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。さらに、この電流センサ1によれば、巻線W3の一端T31に電流I2を供給する増幅器A2を備えたことにより、巻線W1から出力される電流I1を増幅した電流I2を出力することができる結果、電流センサ1の負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。
【0049】
次に、電流センサ1Aを備えた電流測定装置100Aについて、図2を参照して説明する。なお、上記した電流センサ1および電流測定装置100と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0050】
この電流センサ1Aは、電流センサ1における電流バッファBUの配設を省略しており、それ以外の構成に関しては、電流センサ1と同様に構成されている。
【0051】
電流センサ1Aは、磁気コアMC1,MC2、巻線W1,W2,W3,フラックスゲートFG1,FG2および増幅器A1,A2を備え、主としてゼロフラックス動作によって検出導体Lを流れる低周波数帯域の検出電流Itの電流値Itを測定(検出)可能に構成されている。
【0052】
この場合、巻線W1は、第1巻線を構成し、電流センサ1における巻線W1と同様にして、第1巻数である巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。
【0053】
フラックスゲートFG1は、電流センサ1におけるフラックスゲートFG1と同様に構成されると共に同様にして動作して、第1磁電変換部として機能する。また、フラックスゲートFG1は、作動状態において、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。この場合、磁気コアMC1内に発生する磁束は、磁気コアMC1に挿通された検出導体Lに検出電流Itが流れることによって発生する磁束φ1と、巻線W1に上記した負帰還電流である電流I1が流れることによって発生する磁束φ2(磁束φ1と逆向きの磁束)との合成磁束(φ1-φ2)となっている。
【0054】
増幅器A1は、電流センサ1Aにおける増幅器A1と同様に構成されると共に同様にして動作して、第1電圧電流変換回路として機能する。この場合、増幅器A1は、フラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて、検出導体Lに検出電流Itが流れることによって磁気コアMC1内に発生する磁束φ1を打ち消す第1電流としての電流I1を生成して巻線W1の一端T11に供給する。
【0055】
巻線W2は、電流センサ1における巻線W2と同様にして、第2巻数である巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W2では、巻線W3と磁気結合する巻線であって、一端T21が巻線W1の他端T12に接続されると共に他端T22がグランドに接続されている。
【0056】
次に、電流センサ1Aおよび電流測定装置100Aの動作について、図2を参照して説明する。なお、電流センサ1Aは、電流センサ1ではゼロフラックス動作およびCT動作の両動作で動作するのに対して、主としてゼロフラックス動作で動作する。したがって、以下、電流センサ1の動作とは相違する動作を説明し、同じ動作に関しては、重複する説明を省略する。また、測定部2および出力部3に関しては、電流センサ1の測定部2および出力部3と同じ構成で同様に動作するため、その説明を省略する。また、検出導体Lは、磁気コアMC1の内部に挿通されているものとする。
【0057】
この電流センサ1Aでは、磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに低周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、フラックスゲートFG1が、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。次いで、増幅器A1が、フラックスゲートFG1から出力された電圧V1を入力すると共に、この電圧V1に基づいて上記した電流I1を生成して、巻線W1の一端T11に供給する。この場合、増幅器A1は、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を相殺するように)、電流I1の電流値を制御する。この結果、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の電流I1が巻線W1の他端T12から出力される。
【0058】
次に、巻線W2に電流I1が供給された際には、フラックスゲートFG2が、磁気コアMC2内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V2を出力する。次いで、増幅器A2が、フラックスゲートFG2から出力された電圧V2を入力すると共に、この電圧V2に基づいて上記した電流I2を生成して、巻線W3の一端T31に供給する。この場合、増幅器A2は、電圧V2がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG2において検出される磁気コアMC2内に発生している合成磁束(φ3-φ4)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ4で磁束φ3を相殺する(打ち消す)ように)、電流I2の電流値を制御する。この結果、電流I2は、巻線W3を通って、巻線W3の他端T32から出力される。この場合、電流I2の電流値I2は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)に、巻線W2の巻数N2を巻線W3の巻数N3で除した値を乗算した値となる。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0059】
ここで、この電流センサ1Aでは、巻数N3が、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、この電流センサ1では、巻数N2が、巻数N3よりも多い巻数に規定されている。したがって、値(N2/N3)が1よりも大きい値になるため、電流I2の電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))は、増幅器A1から出力された電流I1の電流値I1(=(It/N1))よりも値(N2/N3)倍だけ大きい値となる。この結果、負帰還電流である電流I2のS/N比が向上する。なお、この電流センサ1Aでは、高周波数帯域の周波数成分の電流I1が巻線W2に供給される際には、大きなインダクタンスを有する巻線W2に電流I1を供給することが困難となる。このため、この電流センサ1Aでは、主として、ゼロフラックス動作で動作する。
【0060】
このように、この電流センサ1Aおよび電流測定装置100Aでは、磁気コアMC1に配設されたフラックスゲートFG1と、巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に巻回された巻線W1とを備え、巻線W1に供給されることによって磁気コアMC1内に発生する磁束を打ち消す電流I1をフラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて増幅器A1で生成して、巻線W1の一端T11に供給する。そして、磁気コアMC2に配設されたフラックスゲートFG2と、巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に巻回されて巻線W1の他端T12から出力された電流I1が供給される巻線W2と、巻線W2の巻数N2よりも少ない巻数(N3)である巻線W3を有すると共に磁気コアMC2に巻回された巻数N3と、電流I1が巻線W2に供給されることによって磁気コアMC2内に発生する磁束を打ち消す電流I2を、フラックスゲートFG2から出力される電圧V2に基づいて生成して巻線W3の一端T31に供給することにより、演算増幅回路などの能動素子で電流I1を増幅する構成と比較して、この電流センサ1Aでは、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、磁気コアMC2の巻線W2の巻数N2を巻線W3の巻数N3よりも大きくすることによって電流I1を等価的に値(N2/N3)だけ増幅しているため、電流I2のS/N比をより十分に向上させることができる。したがって、この電流測定装置100Aによれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。
【0061】
また、この電流センサ1Aによれば、磁気コアMC1と磁気コアMC2の両方をゼロフラックス動作させることにより、直流から交流までの信号を扱えるため、直流から交流までの検出電流Itを検出することができる。また、この電流センサ1Aによれば、巻線W3の一端T31に電流I2を供給する増幅器A2を備えたことにより、巻線W1から出力される電流I1を増幅した電流I2を出力することができる結果、電流センサ1Aの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。
【0062】
次に、電流センサ1Bを備えた電流測定装置100Bについて、図3を参照して説明する。なお、上記した電流センサ1および電流測定装置100と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0063】
この電流センサ1Bは、電流センサ1におけるフラックスゲートFG1,FG2および増幅器A1,A2の配設を省略しており、それ以外の構成に関しては、電流センサ1と同様に構成されている。
【0064】
電流センサ1Bは、磁気コアMC1,MC2、巻線W1,W2,W3および電流バッファBUを備え、主としてCT動作時によって検出導体Lを流れる高周波数帯の検出電流Itの電流値Itを測定(検出)可能に構成されている。
【0065】
この場合、巻線W1は、第1巻線を構成し、電流センサ1における巻線W1と同様にして、第1巻数である巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W1では、一端T11がグランドに接続されると共に他端T12が巻線W2の一端T21に接続されている。
【0066】
電流バッファBUは、第1電流バッファを構成し、電流センサ1における電流バッファBUと同様に構成されると共に同様にして動作する。この電流バッファBUは、巻線W1の他端T12から電流I1が出力された際に、電流I1を電流/電圧変換して出力端子に出力することにより電流I1を電流増幅する。つまり、電流バッファBUは、電流I1をドライブして巻線W2に供給する。この場合、この電流センサ1では、電流バッファBUを設けたことにより、電流センサ1における電流バッファBUと同様にして、電流I1の周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2の巻数が多いときであっても、電流I1を巻線W2に確実に供給することができる。
【0067】
巻線W2は、第2巻線を構成し、電流センサ1における巻線W2と同様にして、第2巻数である巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。巻線W3は、第3巻線を構成し、電流センサ1における巻線W3と同様にして、第3巻数である巻数N3を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W3では、一端T31がグランドに接続されると共に他端T32が測定部2の入力部に接続されている。
【0068】
次に、電流センサ1Bおよび電流測定装置100Bの動作について、図3を参照して説明する。なお、電流センサ1Bは、電流センサ1ではゼロフラックス動作およびCT動作の両動作で動作するのに対して、主としてCT動作で動作する。したがって、以下、電流センサ1の動作とは相違する動作を説明し、同じ動作に関しては、重複する説明を省略する。また、測定部2および出力部3に関しては、電流センサ1の測定部2および出力部3と同じ構成で同様に動作するため、その説明を省略する。また、検出導体Lは、磁気コアMC1の内部に挿通されているものとする。
【0069】
この電流センサ1Bでは、磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに高周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、巻線W1が、磁気コアMC1内に発生する磁束の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I1を出力する。この場合、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の電流I1が巻線W1の他端T12から出力される。
【0070】
次いで、電流バッファBUが、巻線W1の他端T12から出力された電流I1を電流/電圧変換して出力端子に出力することにより電流I1をドライブする。この結果、電流I1の周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2の巻数が多いときであっても、電流I1は、巻線W2に確実に供給される。電流I1が巻線W2に供給された際には、磁気コアMC2内に磁束が発生し、巻線W3が、その発生した磁束の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I2を他端T32から出力する。この場合、電流I2の電流値I2は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)に、巻線W2の巻数N2を巻線W3の巻数N3で除した値を乗算した値となる。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0071】
ここで、この電流センサ1Bでは、巻数N3が、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、この電流センサ1では、巻数N2が、巻数N3よりも多い巻数に規定されている。したがって、値(N2/N3)が1よりも大きい値になるため、電流I2の電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))は、巻線W1から出力された電流I1の電流値I1(=It/N1)よりも値(N2/N3)倍だけ大きい値となる。つまり、巻数N2を巻数N3よりも大きい巻数に規定したことにより、磁気コアMC2の巻線W2によって電流I1が等価的に値(N2/N3)だけ増幅される。この結果、従来技術の電流センサから出力される電流値I1(=It/N1)と比較して、値(N2/N3)倍の電流値の電流I2が出力される結果、従来技術の電流センサにおける負帰還電流に対応する電流I2のS/N比が、演算増幅回路などの能動素子で電流を増幅する従来技術の電流センサと比較して十分に向上する。また、電流センサ1BのCT動作時には、高周波数帯域の検出電流Itが検出導体Lに流れた際に、電流バッファBUが、電流I1をドライブして巻線W2に出力するため、電流センサ1Bの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。なお、低周波数帯域の周波数成分の検出電流Itが検出導体Lに流れる際には、巻線W1から電流I1bを供給することが困難となる。このため、この電流センサ1Bでは、主として、CT動作で動作する。
【0072】
このように、この電流センサ1Bおよび電流測定装置100Bによれば、検出導体Lが挿通される磁気コアMC1と、巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に巻回されて検出導体Lに検出電流Itが流れることによって磁気コアMC1内に発生する磁束に応じた電流I1を出力する巻線W1と、磁気コアMC2と、巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に巻回された巻線W2と、巻線W2よりも少ない巻数N3を有すると共に磁気コアMC2に巻回された巻線W3と、巻線W1から出力された電流I1をドライブして巻線W2に供給する電流バッファBUとを備えて、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値に応じた電流値の電流I2を巻線W3から出力することにより、電流センサ1Bの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。したがって、この電流測定装置100Bによれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。
【0073】
次に、電流センサ1Cを備えた電流測定装置100Cについて、図4を参照して説明する。なお、上記した電流センサ1および電流測定装置100と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0074】
電流センサ1Cは、磁気コアMC1,MC2、巻線W1a,巻線W1b,W2a,W2b,W3、フラックスゲートFG1,FG2、増幅器A1a,A1b,A2および電流バッファBUa,BUbを備えて構成され、検出導体Lを流れる低周波数帯域における検出電流Itの電流値Itをゼロフラックス動作で測定(検出)すると共に、高周波数帯域における検出電流Itの電流値ItをCT動作によって測定(検出)する。また、この電流センサ1Cは、検出電流Itが検出導体Lに流れているときに磁気コアMC1内に発生する磁束に応じて検出した電流(本例では、後述する電流I1a,I1b)を差動方式で磁気コアMC2に巻回されている巻線W2a,W2bに出力する。
【0075】
巻線W1aは、帰還巻線として機能する第1巻線Aを構成し、予め規定された巻数N1(本例では一例として、N1=50)を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。巻線W1bは、帰還巻線として機能する第1巻線Bを構成し、巻線W1aと同じ巻数に予め規定された巻数N1(本例では、一例として、N1=50)を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。この場合、巻線W1a,W1bは、後述する電流I1aが巻線W1aに供給されると共に後述する電流I1bが巻線W1bに供給された際に、磁気コアMC1内に発生する磁束が互いに同じ向きとなるように、磁気コアMC1にそれぞれ巻回されている。つまり、巻線W1a,W1bは、電流I1a,I1bがそれぞれ供給された際に、磁気コアMC1に挿通された検出導体Lに検出電流Itが流れることによって発生する磁束φ1を相殺可能な向きで磁気コアMC1に巻回されている。
【0076】
フラックスゲートFG1は、電流センサ1におけるフラックスゲートFG1と同様に構成されると共に同様にして動作して、第1磁電変換部として機能する。また、フラックスゲートFG1は、作動状態において、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。この場合、磁気コアMC1内に発生する磁束は、磁気コアMC1に挿通された検出導体Lに検出電流Itが流れることによって発生する磁束φ1と、巻線W1aに上記した電流I1aが供給されて発生する磁束(電流センサ1において発生した磁束φ2の1/2)に相当する磁束(磁束φ1と逆向きの磁束)、および巻線W1bに電流I1bが供給されることによって発生する磁束(電流センサ1において発生した磁束φ2の1/2)に相当する磁束(磁束φ1と逆向きの磁束)を合成した磁束φ2との合成磁束(φ1-φ2)となっている。
【0077】
増幅器A1aは、第1電圧電流変換回路Aとして機能すると共に演算増幅回路などで非反転増幅回路として構成されている。この場合、増幅器A1aは、フラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて、検出導体Lに検出電流Itが流れることによって磁気コアMC1内に発生する磁束φ1の1/2を打ち消す第1電流Aとしての電流I1aを生成して巻線W1aの一端T11aに供給する。具体的には、増幅器A1aは、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度が後述する電流I1bと相俟って、ゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を打ち消すように)、電流I1aの電流値を制御する。この場合、電流I1aの電流値(I1aとする)は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1()=It/N1)の1/2となる。
【0078】
増幅器A1bは、第1電圧電流変換回路Bとして機能すると共に演算増幅回路などで反転増幅回路として構成されている。この場合、増幅器A1bは、フラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて、検出導体Lに検出電流Itが流れることによって磁気コアMC1内に発生する磁束φ1の1/2を打ち消す第1電流Bとしての電流I1bを生成して巻線W1bの一端T11bに供給する。具体的には、増幅器A1bは、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度が上記の電流I1aと相俟って、ゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を打ち消すように)、電流I1bの電流値を制御する。この場合、電流I1bの電流値(I1bとする)は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の1/2となる。なお、本例では、増幅器A1aを非反転増幅回路として構成すると共に増幅器A1bを反転増幅回路として構成したが、これに限定されない。例えば、電流I1a,I1bによって磁気コアMC1内に発生する磁束の向きが同じで、かつ巻線W2a,W2bに向かって流れる電流I1a,I1bの向き(これについては後述する)が逆向きになる限り、巻線W1a,W1bの巻き方を変えることができるし、増幅器A1a,A1bを非反転増幅回路および反転増幅回路のいずれにも構成することができる。
【0079】
巻線W2aは、第2巻線Aとして機能して、予め規定された巻数N2(本例では一例として、N2=200)で磁気コアMC2に線材を巻回して構成され、巻線W1aの他端T12aから出力された電流I1aが一端T21aに供給される。また、巻線W2bは、第2巻線Bとして機能して、予め規定された巻数N2(本例では一例として、N2=200)で磁気コアMC2に線材を巻回して構成され、巻線W1bの他端T12bから出力された電流I1bが一端T21bに供給される。この場合、巻線W2bは、電流I1bが供給されたときに磁気コアMC2内に発生する磁束の向きと、巻線W2aに電流I1aが供給された際に磁気コアMC2内に発生する磁束の向きとが同じになるように磁気コアMC2に巻回されている。また、巻線W3は、巻線W2a,W2bと磁気結合する巻線であって、予め規定された巻数N3(本例では一例として、N3=50)で磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。この場合、本例では、巻数N3は、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、巻数N2は、巻数N3よりも大きい巻数に規定されている。
【0080】
電流バッファBUaは、電流バッファAとして機能して、巻線W1aの他端T12aと巻線W2aの一端T21aとを結ぶラインに反転端子が接続されると共に非反転端子がグランドに接続され、かつ巻線W2aの他端T22aに出力端子が接続された演算増幅回路で構成されている。この電流バッファBUaは、巻線W1aの他端T12aから電流I1aが出力された際に、I/V変換回路として機能して、電流I1aを電流/電圧変換して変換した電圧を出力端子に出力することにより電流I1aを電流増幅する。つまり、電流バッファBUaは、電流I1aをドライブして巻線W2aに供給する。この場合、電流I1aの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2aの巻数が多いときに、つまり巻線W2aのインダクタンスが大きいときには、巻線W1aの負荷が誘導性となるため、巻線W1aの他端T12aから出力される電流I1aを巻線W2aに供給するのが困難となる。これに対して、この電流センサ1Cでは、電流バッファBUaを設けたことにより、電流I1aの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2aの巻数が多いときであっても、電流I1aを巻線W2aに確実に供給することができる。
【0081】
電流バッファBUbは、電流バッファBとして機能して、電流バッファBUaと同様にして動作する。具体的には、電流バッファBUbは、巻線W1bの他端T12bと巻線W2bの一端T21bとを結ぶラインに反転端子が接続されると共に非反転端子がグランドに接続され、かつ巻線W2bの他端T22bに出力端子が接続された演算増幅回路で構成されている。この電流バッファBUbは、巻線W1bの他端T12bから電流I1bが出力された際に、I/V変換回路として機能して、電流I1bを電流/電圧変換して変換した電圧を出力端子に出力することにより電流I1bを電流増幅する。つまり、電流バッファBUbは、電流I1bをドライブして巻線W2bに供給する。この場合、電流I1bの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2bの巻数が多いときに、つまり巻線W2bのインダクタンスが大きいときには、巻線W1bの負荷が誘導性となるため、巻線W1bの他端T12bから出力される電流I1bを巻線W2bに供給するのが困難となる。これに対して、この電流センサ1Cでは、電流バッファBUbを設けたことにより、電流I1bの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2bの巻数が多いときであっても、電流I1bを巻線W2bに確実に供給することができる。
【0082】
次に、電流センサ1Cおよび電流測定装置100Cの動作について、図4を参照して説明する。なお、電流センサ1Cは、上記したように、検出電流Itが検出導体Lに流れているときに磁気コアMC1内に発生する磁束に応じて検出した電流I1a,I1bを差動方式で巻線W2a,W2bに出力する。したがって、この点が電流センサ1とは異なり、それ以外の動作については電流センサ1と同様にため、以下、差動方式で動作する点を主として説明する。また、測定部2および出力部3に関しては、電流センサ1の測定部2および出力部3と同じ構成で同様に動作するため、その説明を省略する。また、検出導体Lは、磁気コアMC1の内部に挿通されているものとする。
【0083】
磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに低周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、フラックスゲートFG1が、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。次いで、増幅器A1aが、フラックスゲートFG1から出力された電圧V1を入力すると共に、この電圧V1に基づいて上記した電流I1aを生成して巻線W1aの一端T11aに供給する。この場合、増幅器A1aは、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度が、電流I1bと相俟って、ゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を打ち消すように)、電流I1aの電流値を制御する。この結果、この電流センサ1Cでは、ゼロフラックス動作により、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の1/2の電流値(I1aとする。I1a=It/(N1×2))の電流I1aが巻線W1aの他端T12aから出力される。
【0084】
また、増幅器A1bが、フラックスゲートFG1から出力された電圧V1を入力すると共に、この電圧V1に基づいて上記した電流I1bを生成して巻線W1bの一端T11bに供給する。この場合、増幅器A1bは、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG1において検出される磁気コアMC1内に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度が、電流I1aと相俟って、ゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を打ち消すように)、電流I1bの電流値を制御する。この結果、この電流センサ1Cでは、ゼロフラックス動作により、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の1/2の電流値(I1bとする。I1b=It/(N1×2))の電流I1bが巻線W1bの他端T12bから出力される。この場合、電流I1bは、電流I1aと同じ電流値であって、巻線W1bの他端T12bから巻線W2bの一端T21bに流れる向きが、巻線W1aの他端T12aから巻線W2aの一端T21aに流れる電流I1aの向きとは逆向きとなっている。つまり、この電流センサ1Cでは、電流1Ia,I1bは、差動電流として巻線W2a,W2bの各一端T21a,T21bに出力される。このため、検出導体Lを流れる検出電流Itにコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズが相殺されて低減される。
【0085】
一方、磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに高周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、巻線W1aが、磁気コアMC1内に発生する磁束の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I1aを出力すると共に巻線W1bが、磁気コアMC1内に発生する磁束の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I1bを出力する。この結果、この電流センサ1Cでは、CT動作により、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の1/2の電流値I1a(=It/(N1×2))の電流I1aが巻線W1aの他端T12aから出力されると共に、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)の1/2の電流値I1b(=It/(N1×2))の電流I1bが巻線W1bの他端T12bから出力される。
【0086】
次いで、電流バッファBUaが、巻線W1aの他端T12aから出力された電流I1aを電流/電圧変換して出力端子に出力することにより電流I1aをドライブする。この結果、電流I1aの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2aの巻数が多いときであっても、電流I1aは、巻線W2aに確実に供給される。同時に、電流バッファBUbが、巻線W1bの他端T12bから出力された電流I1bを電流/電圧変換して出力端子に出力することにより電流I1bをドライブする。この結果、電流I1bの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2bの巻数が多いときであっても、電流I1bは、巻線W2bに確実に供給される。したがって、この電流センサ1Cでは、低周波数帯域から高周波数帯域までに亘る広い周波数帯域の検出電流Itが検出導体Lに流れたときであっても、広い周波数帯域に対応する電流I1a,Ibを巻線W2a,W2bに確実に供給することができる。
【0087】
次に、巻線W2a,W2bに低周波数帯域の電流I1a,I1bが流れた際には、フラックスゲートFG2が、磁気コアMC2内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V2を出力する。この場合、この磁気コアMC2では、巻線W2aに電流I1aが供給されることによって発生する磁束(電流センサ1において発生する磁束φ3の1/2の大きさ)の向きと、巻線W2bに電流I1bが供給されることによって発生する磁束(電流センサ1において発生する磁束φ3の1/2の大きさ)の向きとが同じとなっている。したがって、磁気コアMC2内に発生する磁界の強さは、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した値(It/N1)に、巻線W2a.W2bの巻数N2を乗算した値に比例する値となる。したがって、磁気コアMC2の巻線W2a.W2bの巻数N2を巻数N1よりも大きく規定したことで、磁気コアMC2内に発生する磁界の強さが等価的に値(N2/N1)だけ増幅される。
【0088】
次いで、増幅器A2が、フラックスゲートFG2から出力された電圧V2を入力すると共に、この電圧V2に基づいて上記した電流I2を生成して巻線W3の一端T31に供給する。この場合、増幅器A2は、電圧V2がゼロボルトに近づくように、つまり、フラックスゲートFG2において検出される磁気コアMC2内に発生している合成磁束(φ3(φ3/2+φ3/2)-φ4)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ4で磁束φ3を相殺する(打ち消す)ように)、電流I2の電流値を制御する。この結果、電流I2は、巻線W3を通って、巻線W3の他端T32から出力される。この場合、電流I2の電流値I2は、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)に、巻線W2a,W2bの巻数N2を巻線W3の巻数N3で除した値を乗算した値となる。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0089】
一方、巻線W2a,W2bに高周波数帯域の電流I1a,I1bがそれぞれ流れた際には、磁気コアMC2の内部に磁束φ3(=φ3/2+φ3/2)が発生し、巻線W3が、その発生した磁束φ3の磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電流値の電流I2を他端T32から出力する。この場合、電流I2の電流値I2は、巻線W2a,W2bに低周波数帯域の電流I1a,I1bが流れたときと同様にして、検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを巻数N1で除算した電流値I1(=It/N1)に、巻線W2a,W2bの巻数N2を巻線W3の巻数N3で除した値を乗算した値となる。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0090】
ここで、この電流センサ1Cでは、巻数N3が、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、この電流センサ1Cでは、巻数N2が、巻数N3よりも多い巻数に規定されている。したがって、値(N2/N3)が1よりも大きい値になるため、電流I2の電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))は、巻線W1aから出力された電流I1aの電流値I1a(=It×(1/N1)/2)と巻線W1bから出力された電流I1bの電流値I1b(=It×(1/N1)/2)とを加算した電流値I1(=It×(1/N1))よりも値(N2/N3)倍だけ大きい値となる。つまり、巻数N2を巻数N3よりも大きい巻数に規定したことにより、磁気コアMC2の巻線W2によって電流I1が等価的に値(N2/N3)だけ増幅される。この結果、電流センサ1Cでは、電流センサ1と同様にして、電流I2のS/N比が十分に向上すると共に電流バッファBUa,BUbが、電流I1a,I1bをドライブして巻線W2a,W2bに出力するため、電流センサ1Cの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。
【0091】
また、この電流センサ1Cでは、巻線W1aの他端T12aから巻線W2aの一端T21aに流れる電流I1aの向きと、巻線W1bの他端T12bから巻線W2bの一端T21bに流れる電流I1bの向きとが互いに逆向きで同じ電流値となっている。つまり、この電流センサ1Cでは、巻線W1a,W1bが巻線W2a,W2bに差動電流(I1a,I1b)を供給する構成となっている。このため、検出導体Lを流れる検出電流Itにコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズを相殺して低減することができる結果、この電流センサ1Cでは、耐ノイズが十分に向上している。
【0092】
このように、この電流センサ1Cおよび電流測定装置100Cは、磁気コアMC1に配設されたフラックスゲートFG1と、巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に巻回された巻線W1aと、巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に巻回された巻線W1bと、磁気コアMC1内に発生する磁束を打ち消す電流I1aをフラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて生成して巻線W1aの一端T11aに供給する増幅器A1aと、磁気コアMC1内に発生する磁束を電流I1aと相俟って打ち消す電流I1bをフラックスゲートFG1から出力される電圧V1に基づいて生成して巻線W1bの一端に供給する増幅器A1bと、磁気コアMC2と、磁気コアMC2に配設されたフラックスゲートFG2と、巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に巻回されて巻線W1aの他端T12aから出力された電流I1aが供給される巻線W2aと、巻数N2を有すると共に、巻線W1bの他端T12bから出力された電流I1bが供給され、かつ電流I1bが供給されたときに磁気コアMC2内に発生する磁束の向きと、電流I1aが巻線W2aに供給された際に磁気コアMC2内に発生する磁束の向きとが同じになるように磁気コアMC2に巻回された巻線W2bと、巻数N2よりも少ない巻数N3を有すると共に磁気コアMC2に巻回された巻線W3とを備えている。
【0093】
したがって、この電流センサ1Cおよび電流測定装置100Cによれば、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、磁気コアMC2の巻線W2a,W2bの巻数N2を巻線W3の巻数N3よりも大きくすることによって電流I1a,I1bを等価的に値(N2/N3)だけ増幅しているため、電流I2のS/N比をより十分に向上させることができる。したがって、この電流測定装置100Cによれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。
【0094】
また、この電流センサ1Cによれば、磁気コアMC1と磁気コアMC2の両方をゼロフラックス動作させることにより、直流から交流までの信号を扱えるため、直流から交流までの検出電流Itを検出することができる。また、この電流センサ1Cによれば、電流バッファBUaが巻線W1aの他端T12aから出力された電流I1aをドライブして巻線W2aに出力し、電流バッファBUbが巻線W1bの他端T12bから出力された電流I1bをドライブして巻線W2bに出力することにより、電流センサ1の負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。また、この電流センサ1Cによれば、巻線W3の一端T31に電流I2を供給する増幅器A2を備えたことにより、巻線W1から出力される電流I1a,I1bを増幅した電流I2を出力することができる結果、電流センサ1Cの負荷が誘導性の場合や負荷が重い場合においても、高周波数帯域の検出電流Itを精度良く検出することができる。
【0095】
さらに、この電流センサ1Cおよび電流測定装置100Cによれば、検出導体Lを流れる検出電流Itにコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズを相殺して低減することができる結果、耐ノイズを十分に向上させることができる。
【0096】
次に、電流センサ1Dを備えた電流測定装置100Dについて、図5を参照して説明する。なお、上記した電流センサ1,1Cおよび電流測定装置100,100Cと同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0097】
この電流センサ1Dは、電流センサ1Cにおける電流バッファBUa,BUbの配設を省略しており、それ以外の構成に関しては、電流センサ1Cと同様に構成されている。
【0098】
電流センサ1Dは、磁気コアMC1,MC2、巻線W1a,巻線W1b,W2a,W2b,W3、フラックスゲートFG1,FG2および増幅器A1a,A1b,A2を備え、検出導体Lを流れる低周波数帯域における検出電流Itの電流値Itをゼロフラックス動作で測定(検出)可能に構成されている。また、この電流センサ1Cは、電流センサ1Dと同様にして、検出電流Itが検出導体Lに流れているときに磁気コアMC1内に発生する磁束に応じて検出した電流(本例では、電流I1a,I1b)を差動方式で磁気コアMC2に巻回されている巻線W2a,W2bに出力する。
【0099】
この場合、巻線W1aは、第1巻線Aを構成し、電流センサ1Cにおける巻線W1aと同様にして、第1巻数である巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。また、巻線W1bは、第1巻線Bを構成し、電流センサ1Cにおける巻線W1bと同様にして、第1巻数である巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。
【0100】
フラックスゲートFG1は、電流センサ1CにおけるフラックスゲートFG1と同様に構成されると共に同様にして動作して、第1磁電変換部として機能する。また、増幅器A1a,AIbは、電流センサ1Cにおける増幅器A1a,AIbと同様に構成されると共に同様にして動作して、第1電圧電流変換回路として機能する。
【0101】
巻線W2aは、第2巻線Aとして機能して、電流センサ1Cにおける巻線W2aと同様にして、第2巻数である巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W2aでは、巻線W3と磁気結合する巻線であって、一端T21aが巻線W1aの他端T12aに接続されると共に他端T22aがグランドに接続されている。また、巻線W2bは、第2巻線Bとして機能して、電流センサ1Cにおける巻線W2bと同様にして、第2巻数である巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W2bでは、巻線W3と磁気結合する巻線であって、一端T21bが巻線W1bの他端T12bに接続されると共に他端T22bがグランドに接続されている。
【0102】
次に、電流センサ1Dおよび電流測定装置100Dの動作について、図5を参照して説明する。なお、電流センサ1Dは、電流センサ1,1Cではゼロフラックス動作およびCT動作の両動作で動作するのに対して、主としてゼロフラックス動作で動作する。したがって、以下、電流センサ1,1Cの動作とは相違する動作を説明し、同じ動作に関しては、重複する説明を省略する。また、測定部2および出力部3に関しては、電流センサ1の測定部2および出力部3と同じ構成で同様に動作するため、その説明を省略する。また、検出導体Lは、磁気コアMC1の内部に挿通されているものとする。
【0103】
この電流センサ1Dでは、磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに低周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、フラックスゲートFG1が、磁気コアMC1内に発生する磁束を検出して、その磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。次いで、増幅器A1a,AIbが、フラックスゲートFG1から出力された電圧V1を入力すると共に、この電圧V1に基づいて上記した電流I1a,I1bを生成して巻線W1aの一端T11aおよび巻線W1bの一端T11bにそれぞれ供給する。次いで、この電流I1a,I1bは、巻線W2aの一端T21aおよび巻線W2bの一端T21bに出力される。
【0104】
次に、巻線W2a,W2bに電流I1a,I1bがそれぞれ供給された際には、電流センサ1Cと同様にして、フラックスゲートFG2が電圧V2を出力する。次いで、増幅器A2が、フラックスゲートFG2から出力された電圧V2を入力すると共に、この電圧V2に基づいて上記した電流I2を生成して、巻線W3の一端T31に供給する。この結果、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0105】
ここで、この電流センサ1Dでは、巻数N3が、巻数N2よりも少ない巻数に規定されている。言い替えれば、この電流センサ1Dでは、巻数N2が、巻数N3よりも多い巻数に規定されている。したがって、この電流センサ1Dでは、電流センサ1Cと同様にして、電流I2のS/N比が十分に向上する。
【0106】
このように、この電流センサ1Dおよび電流測定装置100Dによれば、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、磁気コアMC2の巻線W2a,W2bの巻数N2を巻線W3の巻数N3よりも大きくすることによって巻線W1a,W1bから出力される電流I1a,I1bを等価的に値(N2/N3)だけ増幅しているため、出力する電流I2のS/N比をより十分に向上させることができる。したがって、この電流測定装置100Dによれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。さらに、この電流センサ1Dおよび電流測定装置100Dによれば、検出導体Lを流れる検出電流Itにコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズを相殺して低減することができる結果、耐ノイズを十分に向上させることができる。
【0107】
また、この電流センサ1Dによれば、磁気コアMC1と磁気コアMC2の両方をゼロフラックス動作させることにより、直流から交流までの信号を扱えるため、直流から交流までの検出電流Itを検出することができる。
【0108】
次に、電流センサ1Eを備えた電流測定装置100Eについて、図6を参照して説明する。なお、上記した電流センサ1,1Cおよび電流測定装置100,100Cと同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0109】
この電流センサ1Eは、電流センサ1CにおけるフラックスゲートFG1,FG2および増幅器A1a,A1b,A2の配設を省略しており、それ以外の構成に関しては、電流センサ1Cと同様に構成されている。
【0110】
電流センサ1Eは、磁気コアMC1,MC2、巻線W1a,巻線W1b,W2a,W2b,W3、および電流バッファBUa,BUbを備え、主としてCT動作によって検出導体Lを流れる高周波数帯の検出電流Itの電流値Itを測定(検出)可能に構成されている。また、この電流センサ1Eは、電流センサ1Cと同様にして、検出電流Itが検出導体Lに流れているときに磁気コアMC1内に発生する磁束に応じて検出した電流(本例では、電流I1a,I1b)を差動方式で磁気コアMC2に巻回されている巻線W2a,W2bに出力する。
【0111】
この場合、巻線W1aは、第1巻線Aを構成し、電流センサ1Cにおける巻線W1aと同様にして、第1巻数である巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W1aでは、一端T11aがグランドに接続されると共に他端T12aが巻線W2aの一端T21aに接続されている。また、巻線W1bは、第1巻線Bを構成し、電流センサ1Cにおける巻線W1bと同様にして、第1巻数である巻数N1を有すると共に磁気コアMC1に線材を巻回して構成されている。また、この巻線W1bでは、一端T11bがグランドに接続されると共に他端T12bが巻線W2bの一端T21bに接続されている。
【0112】
巻線W2aは、第2巻線Aとして機能して、電流センサ1Cにおける巻線W2aと同様にして、第2巻数である巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。また、巻線W2bは、第2巻線Bとして機能して、電流センサ1Cにおける巻線W2bと同様にして、第2巻数である巻数N2を有すると共に磁気コアMC2に線材を巻回して構成されている。
【0113】
次に、電流センサ1Eおよび電流測定装置100Eの動作について、図6を参照して説明する。なお、電流センサ1Eは、電流センサ1,1Cではゼロフラックス動作およびCT動作の両動作で動作するのに対して、主としてCT動作で動作する。したがって、以下、電流センサ1,1Cの動作とは相違する動作を説明し、同じ動作に関しては、重複する説明を省略する。また、測定部2および出力部3に関しては、電流センサ1の測定部2および出力部3と同じ構成で同様に動作するため、その説明を省略する。また、検出導体Lは、磁気コアMC1の内部に挿通されているものとする。
【0114】
磁気コアMC1の内部に挿通されている検出導体Lに高周波数帯域の検出電流Itが流れた際には、電流センサ1Cと同様にして、電流値I1a(=It/(N1×2))の電流I1aが巻線W1aの他端T12aから出力されると共に電流値I1b(=It/(N1×2))の電流I1bが巻線W1bの他端T12bから出力される。
【0115】
次いで、電流センサ1Cと同様にして、電流バッファBUaが電流I1aをドライブすると共に電流バッファBUbが電流I1bをドライブする。この結果、電流I1a,I1bの周波数成分が高周波数帯域であって、巻線W2a,W2bの巻数が多いときであっても、電流1Ia,I1bは、巻線W2a,W2bにそれぞれ確実に供給される。
【0116】
次に、巻線W2a,W2bに高周波数帯域の電流I1aが供給された際には、電流センサ1Cと同様にして、電流値I2(=(It/N1)×(N2/N3))の電流I2が巻線W3の他端T32から出力される。
【0117】
このように、この電流センサ1Eおよび電流測定装置100Eによれば、動作ノイズを発生する能動素子を用いることなく、磁気コアMC2の巻線W2a,W2bの巻数N2を巻線W3の巻数N3よりも大きくすることによって電流I1a,I1bを等価的に値(N2/N3)だけ増幅しているため、電流I2のS/N比をより十分に向上させることができる。したがって、この電流測定装置100Eによれば、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。さらに、この電流センサ1Eおよび電流測定装置100Eによれば、検出導体Lを流れる検出電流Itにコモンモードノイズ(同相ノイズ)が重畳していた場合に、そのコモンモードノイズを相殺して低減することができる結果、耐ノイズを十分に向上させることができる。
【0118】
なお、電流測定装置100,100A~100Eでは、電流センサ1,1A~1Eを用いて検出導体Lを流れる検出電流Itの電流値Itを測定(演算)して、その電流値Itを出力部3に表示させているが、これに限定されない。例えば、電流値Itを測定(演算)すると共に電圧を測定して、測定した電流値Itおよび電圧値に基づいて電力値を測定する電力計や、抵抗値を測定する抵抗計などに電流センサ1,1A~1Eを適用することができる。
【0119】
また、磁気コアMC2(第2磁気コア)については、検出導体Lを挿通させる必要がない。このため、磁気コアMC2を磁気コアMC1(第1磁気コア)よりも小さく(または、できるだけ小さく)形成することにより、電流センサ1,1A~1Eおよび電流測定装置100,100A~100Eを小型化することができる。また、磁気コアMC2の一部または全部を磁気シールドで覆うことにより、外部磁界等の磁界の影響を抑制することができる。同様にして、磁気コアMC2の一部または全部を電磁シールドで覆うことにより、電波の影響を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本願発明によれば、第2磁気コアと、第2巻数を有すると共に第2磁気コアに巻回された第2巻線と、第2巻数よりも少ない第3巻数を有すると共に第2磁気コアに巻回された第3巻線とを備え、検出導体を流れる検出電流の電流値に応じた電流値の電流を第3巻線から出力することにより、出力する電流のS/N比を十分に向上させることができる。また、そのような電流センサを備えた電流測定装置は、電流測定の際の信頼性を十分に高めることができる。これにより、本願発明は、このような電流センサや、電流を測定する電流測定装置などに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1,1A~1E 電流センサ
2 測定部
3 出力部
100,100A~100E 電流測定装置
A1,A1a,A1b,A2 増幅器
BU,BUa,BUb 電流バッファ
FG1,FG2 フラックスゲート
I1,I1a,I1b,I2 電流
It 検出電流
L 検出導体
MC1,MC2 磁気コア
T11,T11a,T11b,T21a,T21b 一端
T12,T12a,T12b,T22a,T22b 他端
W1,W1a,W1b,W2,W2a,W2b,W3 巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6