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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171984
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241205BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241205BHJP
   E01C 19/48 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G05D1/02 K
E01C19/48 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089378
(22)【出願日】2023-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】509122887
【氏名又は名称】株式会社レグラス
(74)【代理人】
【識別番号】110003546
【氏名又は名称】弁理士法人伊藤IP特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆志
【テーマコード(参考)】
2D052
5H301
5L096
【Fターム(参考)】
2D052AC08
5H301AA01
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE02
5H301GG09
5H301HH02
5L096BA04
5L096CA05
5L096DA02
5L096EA26
5L096FA06
5L096FA24
5L096FA32
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により低コストで既存の作業車両に容易に後付けできるとともに、可及的に安定して精度良く目標に追随した走行を可能にする走行制御装置を提供する。
【解決手段】本開示の作業車両の走行制御装置100は、所定の段差に沿って移動する作業車両の走行制御装置である。そして、この走行制御装置100は、作業車両10の下方の路面を撮影するステレオカメラ200と、撮影されたステレオ画像データに基づいて所定の処理を実行するプロセッサ303と、を備える。そして、プロセッサ303は、路面座標を測定する測距処理と、路面座標から変換された路面高さの分布の中から段差を検出する段差検出処理と、検出された段差に沿って作業車両10が自動操舵されるように、該段差に基づく操舵情報をステアリング機構に入力する走行制御処理と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の段差に沿って移動する作業車両の走行制御装置であって、
前記作業車両に設置され、該作業車両の下方の路面を撮影するステレオカメラと、
前記ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像データを取得し、該ステレオ画像データに基づいて所定の処理を実行するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記ステレオ画像データの視差に基づいて、前記ステレオカメラの設置位置を基準とした前記路面の3次元座標である路面座標を測定する測距処理と、
前記路面座標を地平面からの高さを表す路面高さに変換する座標変換処理と、
前記路面高さの分布の中で高さの値が所定値以上の領域を抽出するとともに、抽出された該領域のうちの前記作業車両側の端部を前記段差として検出する段差検出処理と、
検出された前記段差に沿って前記作業車両が自動操舵されるように、該段差に基づく操舵情報を該作業車両のステアリング機構に入力する走行制御処理と、を実行する、
作業車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記走行制御処理において、
検出された前記段差と前記作業車両の進行方向との角度、及び前記作業車両の進行方向と直交する平面であって且つ前記ステレオカメラの基準軸を含んだ平面における前記段差と該基準軸との距離を算出し、該角度と該距離とに基づく前記操舵情報を、前記作業車両のステアリング機構に入力する、
請求項1に記載の作業車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記走行制御処理において、
検出された前記段差を線分で近似し、該段差が複数の線分によって近似される場合には、該複数の線分を平均した平均線を前記段差として、前記角度及び前記距離を算出する、
請求項2に記載の作業車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記座標変換処理において、
前記ステレオ画像データの中でその領域が予め定義されたキャリブレーション領域の前記路面座標に基づいて、前記路面高さを補正する、
請求項1に記載の作業車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両で走行しながら道路に対して所定の作業を行う作業車両(アスファルトフィニッシャやロードローラ、除雪車等)が知られている。このような、作業車両では、路面における作業対象領域を安定して精度良く走行する必要があるため、運転者の目視に基づく走行では不十分な場合がある。
【0003】
一方、自動車の走行中に自車両が走行車線から逸脱しそうになったときに、その逸脱を防止するように車両の走行を制御することで、走行車線内の走行を自動で維持する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されたとき、逸脱回避方向への進路修正を行う車線逸脱防止装置が開示されている。この車線逸脱防止装置では、カメラの撮影画像に基づいて、走行車線に対する車両のヨー角と、走行車線中央からの横変位と、走行車線の曲率と、車線幅等を算出し、これらの算出値に基づいて、車両が走行車線から逸脱しているか否かが判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-178743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アスファルトフィニッシャやロードローラ、除雪車等の作業車両では、路面において予め定められた作業対象領域に対して正確に作業を施すために、安定して精度良く該作業対象領域の目標に追随した走行を行う必要がある。そして、このような走行を運転者の技術によらずに実現し得るためには、車両を目標に追随して自動走行させることが考えられる。例えば、特許文献1に記載の技術によれば、カメラの撮影画像に基づいて、車両が走行車線から逸脱しているか否かが判断され逸脱回避方向への進路修正が行われるため、車両を目標に追随して自動走行させることができるようにも思われる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、車両の前方の撮影画像に基づいて、車両が走行車線から逸脱しているか否かが判断されるため、例えば、作業対象領域の目標に対して小さい誤差で作業車両を自動走行させることは困難である。一方、作業車両を安定して精度良く作業対象領域の目標に追随して走行させるために、ライダー(LiDAR)や複数のセンサ等を用いて車両の走行制御を行うことも考えられるが、この場合、コストが問題となり得る。このように、低コストで、可及的に安定して精度良く目標に追随した作業車両の走行を可能にするための技術については、未だ改善の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、簡易な構成により低コストで既存の作業車両に容易に後付けできるとともに、可及的に安定して精度良く目標に追随した走行を可能にする走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の作業車両の走行制御装置は、所定の段差に沿って移動する作業車両の走行制御装置である。そして、この走行制御装置は、前記作業車両に設置され、該作業車両の下方の路面を撮影するステレオカメラと、前記ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像データを取得し、該ステレオ画像データに基づいて所定の処理を実行するプロセッサと、を備える。そして、前記プロセッサは、前記ステレオ画像データの視差に基づいて、前記ステレオカメラの設置位置を基準とした前記路面の3次元座標である路面座標を測定する測距処理と、前記路面座標を地平面からの高さを表す路面高さに変換する座標変換処理と、前記路面高さの分布の中で高さの値が所定値以上の領域を抽出するとともに、抽出された該領域のうちの前記作業車両側の端部を前記段差として検出する段差検出処理と、検出された前記段差に沿って前記作業車両が自動操舵されるように、該段差に基づく操舵情報を該作業車両のステアリング機構に入力する走行制御処理と、を実行する。
【0010】
ここで、上記の作業車両とは、アスファルトフィニッシャやロードローラ、除雪車等の車両である。そして、本開示の作業車両の走行制御装置は、ステレオカメラ、画像処理装置といった簡易な構成によって実現され、これらを既存の作業車両に配置するだけで、所定の段差に沿って自動操舵させるための走行制御装置を作業車両に簡単に低コストで設置することができる。また、走行の目標となる段差を正確に検出し、該段差から算出された操舵情報に基づいて作業車両を自動操舵させることで、作業車両を可及的に安定して精度良く目標に追随して走行させることが可能になる。
【0011】
そして、前記プロセッサは、前記走行制御処理において、検出された前記段差と前記作業車両の進行方向との角度、及び前記作業車両の進行方向と直交する平面であって且つ前記ステレオカメラの基準軸を含んだ平面における前記段差と該基準軸との距離を算出し、該角度と該距離とに基づく前記操舵情報を、前記作業車両のステアリング機構に入力してもよい。
【0012】
更に、この場合、前記プロセッサは、前記走行制御処理において、検出された前記段差を線分で近似し、該段差が複数の線分によって近似される場合には、該複数の線分を平均した平均線を前記段差として、前記角度及び前記距離を算出してもよい。
【0013】
また、本開示の作業車両の走行制御装置では、前記プロセッサは、前記座標変換処理において、前記ステレオ画像データの中でその領域が予め定義されたキャリブレーション領域の前記路面座標に基づいて、前記路面高さを補正してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、簡易な構成により低コストで既存の作業車両に容易に後付けできるとともに、可及的に安定して精度良く目標に追随した作業車両の走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における作業車両の走行制御装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る走行制御装置において、作業車両が段差に沿って移動できるように制御部が行う処理フローを示すフローチャートである。
図3】走行制御処理において、作業車両のステアリング機構に入力される操舵情報を説明するための図である。
図4】複数の線分の平均線が段差として検出される例を示す図である。
図5】第1実施形態の変形例における測距処理および座標変換処理を説明するためのフローチャートである。
図6】第1実施形態の変形例におけるキャリブレーション領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
<第1実施形態>
第1実施形態における作業車両の走行制御装置の概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における作業車両の走行制御装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る作業車両の走行制御装置100は、所定の段差に沿って移動する作業車両10の走行制御装置である。ここで、本実施形態における作業車両10とは、アスファルトフィニッシャであって、該作業車両10は、ガイドとなる舗装路の型枠(本開示の所定の段差に相当)に沿って移動しながら路面を舗装する。そして、走行制御装置100は、ステレオカメラ200と、画像処理装置300と、を備える。なお、本実施形態では、所定の段差として舗装路の型枠を例にして説明するが、本開示の所定の段差をこれに限定する意図はなく、該段差は、例えば、コンクリート構造物や切削面の溝であってもよい。
【0018】
ステレオカメラ200は、作業車両10に設置され該作業車両10の下方の路面を撮影する装置であって、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。ここで、本実施形態では、ステレオカメラ200は、その光軸が真下(路面に対して垂直真下)に向くように配置される。そして、ステレオカメラ200は、例えば、路面から略1mの高さで作業車両10に設置され得る。
【0019】
画像処理装置300は、ステレオカメラ200によって撮影されたステレオ画像データを取得し、該ステレオ画像データに基づいて所定の処理を実行する。
【0020】
ここで、画像処理装置300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のある機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、コンピュータである。すなわち、画像処理装置300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0021】
そして、図1(b)に基づいて、画像処理装置300の構成要素の詳細な説明を行う。図1(b)は、第1実施形態における、走行制御装置100に含まれる画像処理装置300の構成要素をより詳細に示した図である。
【0022】
画像処理装置300は、機能部として記憶部302、制御部303を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0023】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0024】
また、記憶部302は、キャリブレーションパラメータを記憶してもよい。ここで、画像処理装置300の機能がFPGAのようなハードウェア回路によって実現される場合、キャリブレーションパラメータはFPGAに内蔵されたメモリに記憶されてもよい。
【0025】
制御部303は、画像処理装置300が行う処理を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、更に、取得部3031と、測距処理部3032と、検出処理部3033と、走行制御処理部3034と、の4つの機能部を有して構成される。各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。なお、制御部303が、取得部3031、測距処理部3032、検出処理部3033、および走行制御処理部3034の処理を実行することで、本開示に係るプロセッサとして機能する。そして、このプロセッサが、画像処理装置300を構成する集積回路に実装されることで、上記機能部の処理を実行するプロセッサが作業車両10に設置されることになる。
【0026】
ここで、制御部303が行う処理フローについて、図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る走行制御装置100において、作業車両10が段差に沿って移動できるように制御部303が行う処理フローを示すフローチャートである。本実施形態では、走行制御装置100の電源が入れられると本フローの実行が開始され、作業車両10の走行中に所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0027】
本フローでは、先ず、S101において、取得部3031が、ステレオカメラ200によって撮影されたステレオ画像データを取得する。ここで、ステレオカメラ200および画像処理装置300は通信部を有しており、これらの通信部が接続されることで、取得部3031が上記のステレオ画像データを取得することが可能になる。なお、上記の通信部の接続は、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよく、例えば、上記の通信部は、ビデオケーブルによって接続される。
【0028】
次に、S102において、測距処理部3032が、上記のステレオ画像データの視差に基づいて、路面座標を測定する測距処理を実行する。ここで、上記の路面座標は、ステレオカメラ200の設置位置を基準とした路面の3次元座標であって、上述したように、ステレオカメラ200が、作業車両10において真下に向けて設置され該作業車両10の下方の路面を撮影するように構成されるため、該ステレオカメラ200によって撮影されたステレオ画像データの視差に基づいて、路面の3次元座標を測定することができる。
【0029】
詳しくは、測距処理部3032は、ステレオカメラ200の設置位置を基準として、該ステレオカメラ200から路面までの距離を、ステレオ画像データの視差に基づいて測距する。
【0030】
更に、測距処理部3032は、上記の路面座標を地平面からの高さを表す路面高さに変換する座標変換処理を実行する。ここで、測距処理部3032は、記憶部302に記憶されたキャリブレーションパラメータを用いて、路面座標を路面高さに変換することができる。例えば、作業車両10におけるステレオカメラ200の設置高さがキャリブレーションパラメータとして予め記憶され、この設置高さの値から、ステレオカメラ200と路面との間の距離の値を減算した値を、上記の路面高さとして算出することができる。
【0031】
また、上記の座標変換処理では、作業車両10へのステレオカメラ200の実際の設置角度に関わる情報に基づいて、キャリブレーションが行われてもよい。仮に、作業車両10におけるステレオカメラ200の設置高さに基づいて上記の路面高さを算出したとしても、作業車両10において真下に向くように設置したステレオカメラ200の実際の設置角度が、例えば、1度傾いていると、該路面高さに20~30mmの誤差が生じてしまうことがある。そこで、図2に示す処理フローが実行される前に、作業車両10に設置されたステレオカメラ200を用いて、基準となる平坦な地平面(基準平面)を撮影し、そのステレオ画像データの視差に基づいて、基準平面の3次元座標を測定してもよい。そうすると、本来であれば基準平面の高さ座標が0になるところ、ステレオカメラ200の実際の設置角度に応じて、測定された基準平面の3次元座標に基づく高さ座標に誤差が生じ得る。したがって、測定された基準平面の3次元座標の高さ平均値が0となるようにステレオ画像データの視差に基づいて測定される3次元座標を補正する、補正パラメータを推定してもよい。この場合、推定された補正パラメータがキャリブレーションパラメータとして、記憶部302に予め記憶される。そうすると、上記の座標変換処理では、上記の路面座標をこの補正パラメータを用いて補正したうえで、補正後の路面座標と、作業車両10におけるステレオカメラ200の設置高さと、に基づいて、上記の路面高さを算出することができる。これによれば、作業車両10へのステレオカメラ200の設置情報に基づいて、正確に路面高さを算出することができるため、後述する段差検出処理において、精度良く段差を検出することが可能になる。
【0032】
そして、S103において、検出処理部3033が、ガイドとなる舗装路の型枠(本開示の段差に相当)を検出する段差検出処理を実行する。
【0033】
この段差検出処理では、先ず、S102の処理で算出された路面高さの分布の中から、高さの値が所定値以上の領域が抽出される。ここで、上記の所定値は、例えば、20mmであって、ガイドとなる舗装路の型枠に応じて予め定められ得る。次に、抽出された上記の領域のうちの作業車両10側の端部が段差として検出される。
【0034】
そして、S104において、走行制御処理部3034が、S103の処理で検出された上記の段差に沿って作業車両10が自動操舵されるように、該段差に基づく操舵情報を該作業車両10のステアリング機構に入力する走行制御処理を実行する。これについて、以下に詳しく説明する。
【0035】
図3は、走行制御処理において、作業車両10のステアリング機構に入力される操舵情報を説明するための図である。ここで、図3(a)は段差検出処理によって検出される段差を表していて、図3(b)は、該段差に基づく操舵情報を表している。図3(a)に示すように、路面高さの分布の中で高さの値が所定値以上の領域のうちの作業車両10側の端部が段差として検出される。なお、図3(a)は、ステレオカメラ200によって撮影された画像データSC1を例示する図である。
【0036】
そして、走行制御処理では、検出された上記の段差と作業車両10の進行方向との角度、及び作業車両10の進行方向と直交する平面であって且つステレオカメラ200の基準軸を含んだ平面における段差と該基準軸との距離が算出され、該角度と該距離とに基づく操舵情報が、作業車両10のステアリング機構に入力される。
【0037】
ここで、上記の基準軸とは、例えば、ステレオカメラ200の光軸であって、図3(b)に示すように、この基準軸を含み且つ作業車両10の進行方向と直交する平面において、該基準軸と段差との距離が算出される。また、図3(b)に示すように、作業車両10の進行方向と段差との角度が算出される。なお、図3(b)は、ステレオカメラ200によって撮影された画像データSC2を例示する図において、作業車両10の進行方向と基準軸および基準軸を含んだ平面の位置を併せて示す図である。
【0038】
そして、走行制御処理部3034は、このようにして算出された角度と距離とに基づく操舵情報を、作業車両10のステアリング機構に入力する。この操舵情報は、検出された段差に沿って作業車両10を自動操舵させるための情報であって、作業車両10は、この操舵情報に基づいて、周知の技術によって自動操舵される。
【0039】
以上に述べた処理によれば、作業車両の走行制御装置100が、ステレオカメラ200、画像処理装置300といった簡易な構成によって実現され、これらを既存の作業車両10に配置するだけで、所定の段差に沿って自動操舵させるための走行制御装置100を作業車両10に簡単に低コストで設置することができる。また、走行の目標となる段差を正確に検出し、該段差から算出された操舵情報に基づいて作業車両10を自動操舵させることで、作業車両10を可及的に安定して精度良く目標に追随して走行させることが可能になる。
【0040】
ここで、ガイドとなる舗装路の型枠は、上記の図3に示したように直線であるとは限らない。例えば、舗装対象の路面がカーブしている場合には、ガイドとなる舗装路の型枠もカーブするように配置され得る。
【0041】
このような場合、上述した検出処理部3033は、検出した段差を線分で近似する。ここで、検出処理部3033は、例えば、ハフ変換のような周知の技術を用いて、段差を線分で近似することができる。そして、段差が複数の線分によって近似される場合には、該複数の線分を平均した平均線を段差として検出する。
【0042】
図4は、複数の線分の平均線が段差として検出される例を示す図である。図4に示す例では、カーブ部が2つの型枠によって表されている。この場合、各型枠の作業車両10側のエッジが線分として検出され、これら2つの線分を平均した平均線が段差として検出されることになる。なお、図4は、ステレオカメラ200によって撮影された画像データSC3を例示する図である。
【0043】
そして、走行制御処理部3034は、上述したようにして検出された段差に基づいて上記の角度および距離を算出し、走行制御処理を実行する。これにより、舗装対象の路面がカーブしている場合に、自動操舵による作業車両10の走行がより滑らかになるように走行制御することができる。
【0044】
以上に述べたように、本実施形態では、簡易な構成により低コストで既存の作業車両10に容易に後付けできるとともに、可及的に安定して精度良く目標に追随した走行を可能にする走行制御装置100を提供することができる。
【0045】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例について説明する。本変形例では、上記第1実施形態の説明で述べた座標変換処理において、作業車両10の走行中に測定されたキャリブレーション領域の路面座標に基づいて、路面高さが動的にキャリブレーションされる。これについて、図5および図6に基づいて説明する。
【0046】
図5は、本変形例における測距処理および座標変換処理を説明するためのフローチャートである。本フローは、上記の図2に示したS102の内部処理として実行され得る。
【0047】
本フローでは、先ず、S1021において、路面座標が測定される。なお、S1021の処理は、上記の図2に示したS102の処理の説明で述べたとおりである。
【0048】
次に、S1022において、路面高さが算出される。なお、このS1022の処理も、上記の図2に示したS102の処理の説明で述べたとおりである。
【0049】
そして、本変形例では、次に、S1023において、基準路面高さが取得される。ここで、上記の基準路面高さは、ステレオ画像データの中でその領域が予め定義されたキャリブレーション領域の路面座標に基づいて算出される路面高さである。
【0050】
ここで、図6は、本変形例におけるキャリブレーション領域を説明するための図である。キャリブレーション領域は、作業車両10の走行時に、ステレオ画像データにおいて必ず路面が映る領域であって、図6に示すように、例えば、ステレオカメラ200の前方における作業車両10側の領域である。なお、このようなキャリブレーション領域は、作業車両10へのステレオカメラ200の設置状態に応じて、予め定義され得る。
【0051】
そして、本変形例では、上記のキャリブレーション領域の路面高さ(基準路面高さ)を常に0にするように、補正パラメータを算出する。
【0052】
詳しくは、S1024において、S1023の処理で取得した基準路面高さを補正パラメータとして算出する。
【0053】
そして、S1025において、S1022の処理で算出された路面高さが、S1024の処理で算出された補正パラメータに基づいて、補正される。詳しくは、S1022の処理で算出された路面高さから、S1024の処理で算出された補正パラメータが減算されることで、路面高さが補正される。
【0054】
以上に述べた処理によれば、作業車両10の走行中に動的にキャリブレーションしながら路面高さを算出することができる。そのため、路面高さを正確に算出することができる。そうすると、段差検出処理において、精度良く段差を検出することが可能になる。
【0055】
そして、本変形例によっても、簡易な構成により低コストで既存の作業車両10に容易に後付けできるとともに、可及的に安定して精度良く目標に追随した走行を可能にする走行制御装置100を提供することができる。
【0056】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0057】
上記の第1実施形態では、作業車両10がアスファルトフィニッシャである場合を例にして説明したが、本開示の作業車両はこれに限定されない。例えば、本開示の作業車両は、ロードローラや除雪車等であってもよい。
【0058】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、走行制御処理部3034を画像処理装置300とは別の集積回路に形成してもよい。このとき当該別の集積回路は画像処理装置300と好適に協働可能に構成される。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。集積回路において、各機能をどのようなハードウェア構成によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0059】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0060】
10・・・・作業車両
100・・・走行制御装置
200・・・ステレオカメラ
300・・・画像処理装置
303・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6