(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171985
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】マウスピース型歯ブラシ、マウスピース型歯ブラシの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20241205BHJP
A61C 17/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61C17/22 G
A61C17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089381
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】520218132
【氏名又は名称】株式会社Plasma
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】遠野 宏季
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA03
3B202AA06
3B202AB19
3B202BA10
3B202BB04
3B202BE13
3B202CB10
3B202HA01
(57)【要約】
【課題】より適切にブラッシングや歯肉マッサージを行うことが可能なマウスピース型歯ブラシを提供する。
【解決手段】マウスピース型歯ブラシ10は、マウスピース部20と、カバー部30とを備える。マウスピース部20は、内面にブラシ221が設けられる。カバー部30は、マウスピース部20においてブラシが設けられる内面とは反対側の外面に対向するようにマウスピース部20に接合される。マウスピース部20の外面と、カバー部30の内面との間には内部空間Saが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎及び下顎の少なくとも一方の歯列に装着して使用されるマウスピース型歯ブラシであって、
歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されて、内面にブラシが設けられるマウスピース部と、前記歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されて、前記マウスピース部において前記ブラシが設けられる前記内面とは反対側の外面に対向するように前記マウスピース部に接合されるカバー部と、を備え、
前記マウスピース部の前記外面と、前記マウスピース部の前記外面に対向する前記カバー部の内面との間には内部空間が形成されている
マウスピース型歯ブラシ。
【請求項2】
前記マウスピース部は、
前記歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成される外郭部と、
前記外郭部の内面に接合されて、前記ブラシが設けられるシート状のブラシシートと、を備える
請求項1に記載のマウスピース型歯ブラシ。
【請求項3】
前記マウスピース部には、前記マウスピース部に対して前記ブラシシートを取り付けるフック部が形成されている
請求項2に記載のマウスピース型歯ブラシ。
【請求項4】
前記マウスピース部と前記カバー部との接合部には、前記マウスピース部及び前記カバー部の外側の空間に前記内部空間を連通させる隙間が形成されている
請求項1に記載のマウスピース型歯ブラシ。
【請求項5】
前記マウスピース部、及び前記カバー部は、脱着可能に互いに接合されている
請求項1に記載のマウスピース型歯ブラシ。
【請求項6】
前記カバー部には、ユーザが把持可能な柄部が前記カバー部の外面から延びるように形成されている
請求項1に記載のマウスピース型歯ブラシ。
【請求項7】
前記マウスピース部及び前記カバー部は一体化されている
請求項1に記載のマウスピース型歯ブラシ。
【請求項8】
上顎及び下顎の少なくとも一方の歯列に装着して使用されるマウスピース型歯ブラシの製造方法であって、
前記歯列の型を取り、
前記歯列の型からマウスピース型を形成し、
前記歯列の型からカバー型を形成し、
前記マウスピース型から、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されるマウスピース部を形成し、
前記カバー型から、前記歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されるカバー部を形成し、
前記マウスピース部の内面にブラシを取り付け、
前記マウスピース部において前記ブラシが設けられる内面とは反対側の外面に対向し、且つ前記マウスピース部との間に内部空間が形成されるように、前記マウスピース部に対して前記カバー部を接合する
マウスピース型歯ブラシの製造方法。
【請求項9】
前記マウスピース部は、
前記歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成される外郭部と、
前記外郭部の内面に接合されて、前記ブラシが設けられるシート状のブラシシートと、を備え、
前記マウスピース部を形成する際に、前記外郭部の内面に対して前記ブラシシートを真空熱圧着により接合させる
請求項8に記載のマウスピース型歯ブラシの製造方法。
【請求項10】
上顎及び下顎の少なくとも一方の歯列に装着して使用されるマウスピース型歯ブラシの製造方法であって、
前記歯列の型を取り、
前記歯列の型から、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されるマウスピース部と、前記歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されて、前記マウスピース部との間に内部空間を有するように前記マウスピース部に一体的に接合されるカバー部とを有するマウスピース本体を形成し、
前記マウスピース本体において前記マウスピース部の内面にあたる部分にブラシを取り付ける
マウスピース型歯ブラシの製造方法。
【請求項11】
前記マウスピース本体を3Dプリンタにより形成する
請求項10に記載のマウスピース型歯ブラシの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスピース型歯ブラシ、及びマウスピース型歯ブラシの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の歯ブラシがある。この歯ブラシは、ブラシ台と、把持部とを有している。ブラシ台には、ブラシが埋め込まれる複数の孔が形成されている。ブラシ台と把持部とはネック部を介して互いに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の歯ブラシを用いて歯磨きを行う場合、ブラシを歯に当てつつ把持部を動かす必要がある。このような歯磨きの方法では、全ての歯の部分のうち、ブラシを正しく当てることができなかった部分に関してはブラッシング効果が及ばない。特に歯と歯茎との間に存在する歯周ポケットにブラシを当てることは難しいため、その部分のブラッシングが困難になることが多い。ブラッシングが適切に行われない部分の歯垢(プラーク)が、歯周病やう蝕等を発生させる大きな要因となっている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より適切にブラッシングを行うことが可能なマウスピース型歯ブラシ、及びマウスピース型歯ブラシの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するマウスピース型歯ブラシは、上顎及び下顎の少なくとも一方の歯列に装着して使用されるマウスピース型歯ブラシであって、マウスピース部と、カバー部と、を備える。マウスピース部は、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されて、内面にブラシが設けられる。カバー部は、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されて、マウスピース部においてブラシが設けられる内面とは反対側の外面に対向するようにマウスピース部に接合される。マウスピース部の外面と、マウスピース部の外面に対向するカバー部の内面との間には内部空間が形成されている。
【0007】
上記課題を解決するマウスピース型歯ブラシの製造方法は、上顎及び下顎の少なくとも一方の歯列に装着して使用されるマウスピース型歯ブラシの製造方法であって、歯列の型を取り、歯列の型からマウスピース型を形成し、歯列の型からカバー型を形成し、マウスピース型から、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されるマウスピース部を形成し、カバー型から、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されるカバー部を形成し、マウスピース部の内面にブラシを取り付け、マウスピース部においてブラシが設けられる内面とは反対側の外面に対向し、且つマウスピース部との間に内部空間が形成されるように、マウスピース部に対してカバー部を接合する。
【0008】
上記課題を解決するマウスピース型歯ブラシの他の製造方法は、上顎及び下顎の少なくとも一方の歯列に装着して使用されるマウスピース型歯ブラシの製造方法であって、歯列の型を取り、歯列の型から、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されるマウスピース部と、歯牙の萌出方向に直交する断面形状が凹状に形成されて、マウスピース部との間に内部空間を有するようにマウスピース部に一体的に接合されるカバー部とを有するマウスピース本体を形成し、マウスピース本体においてマウスピース部の内面にあたる部分にブラシを取り付ける
【0009】
これらの構成及び方法によれば、マウスピース部の内面に歯列が入るようにマウスピース型歯ブラシを歯列に装着した後、マウスピース型歯ブラシを噛む動作を行えば、マウスピース部が内側に向かうように変形する。これにより、マウスピース部の内面に設けられるブラシが例えば歯周ポケットに挿入し易くなるため、より適切にブラッシングや歯肉のマッサージを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマウスピース型歯ブラシ、及びマウスピース型歯ブラシの製造方法によれば、より適切にブラッシングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のマウスピース型歯ブラシの斜視構造を示す斜視図。
【
図2】
図1のII-II線に沿った断面構造を模式的に示す断面図。
【
図3】第1実施形態のマウスピース部の外郭部の斜視構造を示す斜視図。
【
図4】第1実施形態のブラシシートの拡大斜視構造を示す斜視図。
【
図5】第1実施形態のカバー部の斜視構造を示す斜視図。
【
図6】(A),(B)は、第1実施形態のマウスピース型歯ブラシの動作例を模式的に示す断面図。
【
図7】第1実施形態のマウスピース型歯ブラシの製造工程を示すフローチャート。
【
図8】第1実施形態の歯型の3Dデータの一例を示す図。
【
図9】第1実施形態のマウスピース型の3Dデータの一例を示す図。
【
図10】第1実施形態のカバー型の3Dデータの一例を示す図。
【
図11】第1実施形態のマウスピース型の斜視構造を示す斜視図。
【
図12】第1実施形態のカバー型の斜視構造を示す斜視図。
【
図13】(A),(B)は、第1実施形態のマウスピース部のベース素材の成形方法の一例を模式的に示す図。
【
図14】第1実施形態のブラシシートの平面構造を示す平面図。
【
図15】第1実施形態のカバー部のベース素材の平面構造を示す平面図。
【
図16】第2実施形態のカバー部の斜視構造を示す斜視図。
【
図17】第2実施形態のマウスピース型歯ブラシの斜視構造を示す斜視図。
【
図18】第3実施形態のマウスピース型歯ブラシの斜視構造を示す斜視図。
【
図19】第3実施形態のマウスピース型歯ブラシの製造工程を示すフローチャート。
【
図20】第3実施形態のマウスピース本体の3Dデータの一例を示す図。
【
図21】第3実施形態の変形例のマウスピース型歯ブラシの斜視構造を示す斜視図。
【
図22】
図21のXXII-XXII線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図23】他の実施形態のマウスピース型歯ブラシの断面構造を示す断面図。
【
図24】他の実施形態のマウスピース型歯ブラシの斜視構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、マウスピース型歯ブラシ、及びマウスピース型歯ブラシの製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、マウスピース型歯ブラシ、及びマウスピース型歯ブラシの製造方法の第1実施形態について説明する。
【0013】
(マウスピース型歯ブラシの構成)
図1に示される本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10は、上顎又は下顎の歯列に装着して使用される。
図1に示される一点鎖線m10は、マウスピース型歯ブラシ10が装着される歯牙の萌出(配列)方向を示すものである。マウスピース型歯ブラシ10は、マウスピース部20と、カバー部30とを備えている。
【0014】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面構造を示したものである。
図2に示されるように、マウスピース部20は、外郭部21と、ブラシシート22とを有している。
外郭部21は、弾性を有する熱可塑性材料、例えば熱可塑性エラストマ(TPE:Thermoplastic Elastomers)、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)、ナイロン、及びシリコン等により形成される薄板の部材である。歯牙萌出方向(歯牙配列方向)m10に直交する外郭部21の断面形状は凹状に形成されている。したがって、外郭部21は、底壁部210と、底壁部210の両端部からそれぞれ直立するように形成される一対の側壁部211,212とを有している。
【0015】
図3は、底壁部210側から見た外郭部21の斜視構造を示したものである。
図3に示されるように、底壁部210には凹凸構造210aが形成されている。凹凸構造210aには、歯列を構成する各歯の形状及び配置に対応した凹凸形状が形成されている。本実施形態では、凹凸構造210aが第1凹凸構造に相当する。
【0016】
図2に示されるように、ブラシシート22は、外郭部21の内面、より具体的には外郭部21の底壁部210及び側壁部211,212のそれぞれの内面に設けられている。ブラシシート22は外郭部21の内面に一体的に接合されている。ブラシシート22は、例えばナイロンやポリエステル等によりフィルム状に形成されている。
図4に示されるように、ブラシシート22の一方の表面には、毛状のブラシ221が突出するように形成されている。
図2に示されるように、ブラシシート22は、ブラシ221が設けられていない裏面側が外郭部21の内面に接触するようにして外郭部21に接合されている。これにより、ブラシシート22に形成されているブラシ221は、外郭部21の凹部の内側に突出するように配置されている。ブラシシート22は、外郭部21に対して付け替え可能である。
【0017】
カバー部30は、マウスピース部20の外郭部21と同一の材料により形成されている。なお、カバー部30は、マウスピース部20の外郭部21と異なる材料により形成されていてもよい。
図2に示されるように、歯牙萌出方向m10に直交するカバー部30の断面形状は凹状に形成されている。したがって、カバー部30は、底壁部310と、底壁部310の両端部からそれぞれ直立するように形成される一対の側壁部311,312とを有している。
【0018】
図5は、底壁部310側から見たカバー部30の斜視構造を示したものである。
図5に示されるように、底壁部310には凹凸構造310aが形成されている。凹凸構造310aには、歯列を構成する各歯の形状及び配置に対応した凹凸形状が形成されている。カバー部30に形成される凹凸構造310aの凹凸形状は、マウスピース部20の外郭部21に形成される凹凸構造210aの凹凸形状よりも大きい。例えば、カバー部30の凹凸構造310aに形成される所定の凹部の大きさは、その所定の凹部に対応する位置に設けられているマウスピース部20の外郭部21の凹凸構造210aに形成される凹部の大きさよりも大きい。本実施形態では、凹凸構造310aが第2凹凸構造に相当する。なお、カバー部30の底壁部310には凹凸構造310aが設けられていなくてもよい。例えば、カバー部30の底壁部310は平面や曲面であってもよい。
【0019】
図2に示されるように、カバー部30は、例えば熱による圧着や接着剤等によりマウスピース部20に接合されている。具体的には、カバー部30の側壁部311の先端部とマウスピース部20の外郭部21の側壁部211の先端部とは接合部40を介して互いに接合されている。また、カバー部30の側壁部312の先端部とマウスピース部20の外郭部21の側壁部212の先端部とは接合部41を介して互いに接合されている。
【0020】
マウスピース部20の外郭部21の外面とカバー部30の内面との間には内部空間Saが形成されている。内部空間Saは、接合部40,41に形成される微少な隙間Gを通じてマウスピース型歯ブラシ10の外部の空間Sbに連通されている。したがって、内部空間Saに存在する空気は接合部40,41の隙間Gを通じて外部空間Sbに抜けることが可能となっている。
【0021】
本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10は、例えば
図6(A)に示されるようにユーザの上顎の歯列60に装着される。このとき、歯列60の頂面(歯冠)61がマウスピース部20の底壁部210に対向し、且つ歯列60の両側面62,63がマウスピース部20の一対の側壁部211,212にそれぞれ対向する。この状態でユーザが上顎及び下顎を上下させてマウスピース型歯ブラシ10を噛む動作を行うと、マウスピース部20及びカバー部30の間の内部空間Saに存在する空気が接合部40,41の隙間Gを通じて外部空間Sbに抜けつつマウスピース部20及びカバー部30が弾性変形する。具体的には、
図6(B)に示されるように例えばマウスピース部20の底壁部210とカバー部30の底壁部310とが近づくようにしてマウスピース部20及びカバー部30が弾性変形する。ユーザがマウスピース型歯ブラシ10を噛む動作を継続することにより、マウスピース型歯ブラシ10が
図6(A)に示される状態と
図6(B)に示される状態とに交互に遷移する。これにより、マウスピース部20の内面に設けられるブラシシート22のブラシ221が歯列60の頂面61及び両側面62,63に対する相対変位を繰り返して、歯列60の頂面61及び両側面62,63がブラシ221によりブラッシングされることになる。
【0022】
また、
図6(B)に示されるようにマウスピース部20及びカバー部30が変形した際には、マウスピース部20の側壁部211,212及びカバー部30の側壁部311,312が内側に向かって倒れるように弾性変形するため、ブラシシート22のブラシ221が歯周ポケット等に挿入される。そのため、歯周ポケット等にブラシ221を適切に当てることが可能となる。
【0023】
(マウスピース型歯ブラシの製造方法)
次に、本実施形態のマウスピース型歯ブラシの製造方法について説明する。
図7に示されるように、マウスピース型歯ブラシ10を製造する際には、まず、歯科医院等においてユーザの上顎又は下顎の歯列60を口腔内3Dスキャン等でスキャンすることにより、歯列60の三次元的な外形形状の情報である歯型の3DデータD10を取得する(ステップS10)。
図8は、歯型の3DデータD10の一例を示したものである。なお、歯型の3DデータD10を取得する方法としては、口腔内3Dスキャンに代えて、印象材等を用いてもよい。
【0024】
続いて、
図7に示されるように、歯型の3DデータD10からマウスピース型の3DデータD11をソフトウェア等により作成する。(ステップS11)。マウスピース型は、マウスピース部20を成形する際に用いられる鋳型である。マウスピース型の3DデータD11は、マウスピース型の三次元的な外形形状の情報を示すものである。ステップS11の工程では、例えば
図8に示される歯型の3DデータD10に対して、マウスピース部20の成形の際に不要な部分のデータを削除する処理や、3Dプリンタでの造形を可能とするデータ処理等を行うことにより、
図9に示されるようなマウスピース型の3DデータD11を作成する。その際に、歯(歯牙)と歯茎(歯肉)との間や歯間等に対応する部分の3Dモデルを意図的に凹ませたり、削ったりするデータ処理等を行うことが有効である。これにより、マウスピース型歯ブラシ10の実際の使用時に、歯と歯茎との間や歯間等に対するブラシ221の接触圧を増加させたり、歯と歯茎との間や歯間等にブラシ221を挿入させ易くしたりすることが可能となる。
【0025】
続いて、
図7に示されるように、
図8に示される歯型の3DデータD10からカバー型の3DデータD12をソフトウェア等により更に作成する(ステップS12)。カバー型は、カバー部30を成形する際に用いられる鋳型である。カバー型の3DデータD12は、カバー型の三次元的な外形形状の情報を示すものである。ステップS12の処理では、例えば
図8に示される歯型の3DデータD10に対して、ブラシシート22のブラシ221の長さ程度で歯型モデルをソリッド化する処理、すなわちメッシュ表面に厚みを追加する処理等を行うことにより、
図10に示されるようなカバー型の3DデータD12を作成する。なお、ステップS10で得られたユーザの噛み合わせ等の情報に基づいて、カバー型の3DデータD12の調整を行ってもよい。
【0026】
続いて、
図7に示されるように、3Dプリンタ装置を用いて、マウスピース型の3DデータD11から、
図11に示されるようなマウスピース型80を3Dプリントにより成形する(ステップS13)。同様に、3Dプリンタ装置を用いることにより、カバー型の3DデータD12から、
図12に示されるようなカバー型90を3Dプリントにより成形する(ステップS14)。
【0027】
続いて、
図7に示されるように、
図11に示されるマウスピース型80からマウスピース部20のベース素材を成形する(ステップS15)。具体的には、
図13(A)に示されるように、マウスピース型80に対してブラシシート22及びシート素材100を順に載せる。シート素材100は、マウスピース部20の外郭部21と同一の材料により形成されるシート状の部材である。その後、
図13(A)に示される状態で周囲環境を真空成型機により真空状態にすることにより、
図13(B)に示されるようにマウスピース型80に対してブラシシート22及びシート素材100を密着させる。その際、ブラシシート22及びシート素材100は互いに真空熱圧着されて一体化させる。なお、マウスピース型80に対してシート素材100を密着させ易くするために、例えば
図14に示されるようにシート素材100に切り込み222を形成してもよい。その後、ブラシシート22及びシート素材100が密着したマウスピース型80を冷却した後、一体化されたブラシシート22及びシート素材100をマウスピース型80から剥がすことにより、マウスピース部20のベース素材が成形される。
【0028】
続いて、
図7に示されるように、
図12に示されるカバー型90からカバー部30のベース素材を成形する(ステップS16)。具体的には、カバー型90に対して、カバー部30と同一の材料により形成されるシート状の素材を載せた後、真空成形機により周囲環境を真空状態にすることにより、カバー型90にシート素材を真空熱圧着させてカバー部30のベース素材を成形する。
図15は、カバー部30のベース素材110の斜視構造の一例を示したものである。
【0029】
続いて、
図7に示されるように、ステップS15の工程で成形されたマウスピース部20のベース素材、及びステップS16の工程で成形されたカバー部30のベース素材からマウスピース型歯ブラシ10を成形する(ステップS17)。ステップS17の処理では、まず、マウスピース部20のベース素材及びカバー部30のベース素材から必要部分を切り抜く作業を行う。例えば、
図15に示されるカバー部30のベース素材110に関しては、マウスピース部20との接合部分を残すようにして、ベース素材110からマウスピース部20となる部分を切り抜く。また、マウスピース部20のベース素材に関しては、図示は省略するが、歯と歯茎との境界となる部分よりも歯茎側となる部分でマウスピース部20のベース素材を切断することにより、マウスピース部20を切り抜く。その後、切り抜かれたマウスピース部20とカバー部30とを接触させた後、グルーガン等を用いてそれらを接着させることにより、
図1に示されるようなマウスピース型歯ブラシ10を成形する。
このように、本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10は、口腔内3Dスキャンで得られた歯型の3DデータD10に基づいて作成される。これにより、パーソナライズされ計算されたマウスピース型歯ブラシ10を作製することが可能である。
【0030】
(第1実施形態のマウスピース型歯ブラシの作用及び効果)
以上のように、本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10は、マウスピース部20と、カバー部30とを備える。マウスピース部20は、歯牙萌出方向m10の断面形状が凹状に形成されて、内部にブラシ221が設けられている。カバー部30は、歯牙萌出方向m10に直交する断面形状が凹状に形成されて、マウスピース部20においてブラシ221が設けられる内面とは反対側の外面に対向するようにマウスピース部20に接合される。マウスピース部20の外面とカバー部30の内面との間には内部空間Saが形成されている。
【0031】
この構成によれば、マウスピース部20の内面に歯列60が入るようにマウスピース型歯ブラシ10を歯列60に装着した後、マウスピース型歯ブラシ10を噛む動作を行えば、マウスピース部20が内側に向かうように変形する。これにより、マウスピース部20の内面に形成されているブラシ221が例えば歯周ポケットに挿入し易くなるため、より適切にブラッシングや歯肉のマッサージを行うことが可能となる。
【0032】
マウスピース部20の内面には凹凸構造210aが形成されている。カバー部30の内面にも凹凸構造310aが形成されている。マウスピース部20の凹凸構造210aとカバー部30の凹凸構造310aとは互いに異なる形状を有している。具体的には、カバー部30の凹凸構造310aに形成される凹凸形状は、マウスピース部20の凹凸構造210aに形成される凹凸形状よりも大きい。
【0033】
この構成によれば、マウスピース型歯ブラシ10を噛む動作を行った際に、歯列60がマウスピース部20の凹凸構造210aに挿入され易くなる。また、マウスピース部20が弾性変形した際に、マウスピース部20の凹凸構造210aがカバー部30の凹凸構造310aに挿入されることにより、歯列60に対するマウスピース型歯ブラシ10の噛み合わせを向上させることができる。
【0034】
マウスピース部20は、外郭部21と、ブラシシート22とを備える。外郭部21は、歯牙萌出方向m10に直交する断面形状が凹状に形成されている。ブラシシート22は、外郭部21の内面に接合されて、ブラシ221が設けられるシート状の部材である。
この構成によれば、内面にブラシ221を有するマウスピース部20を容易に形成することが可能となる。
【0035】
マウスピース部20とカバー部30との接合部40,41には隙間Gが形成されている。隙間Gは、マウスピース部20及びカバー部30の外側の空間Sbに、マウスピース部20の外面とカバー部30の内面との間に形成される内部空間Saを連通させている。
この構成によれば、マウスピース型歯ブラシ10を噛む動作を行った際に、内部空間Saに存在する空間が隙間Gを通じて外部空間Sbに抜けることによりマウスピース部20が弾性変形し易くなるため、ブラシ221が例えば歯周ポケットに更に挿入し易くなる。
【0036】
(変形例)
次に、第1実施形態のマウスピース型歯ブラシ10の変形例について説明する。
マウスピース部20及びカバー部30は機械的に脱着可能に接合されていてもよい。例えば、カバー部30の側壁部311,312に、溝等の被係合部をそれぞれ形成する。また、マウスピース部20の外郭部21の側壁部211,212に、被係合部に係合可能な突出部等の係合部を形成する。そして、カバー部30の被係合部にマウスピース部20の係合部を係合させることにより、マウスピース部20及びカバー部30が脱着可能に接合する。また、機械的な脱着機構としては、ボタンやフック等の機構を採用することも可能である。
【0037】
この構成によれば、マウスピース部20とカバー部30とを分離することが可能であるため、例えばマウスピース部20とカバー部30とを別々に洗浄することが可能となる。
<第2実施形態>
次に、マウスピース型歯ブラシ10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のマウスピース型歯ブラシ10との相違点を中心に説明する。
【0038】
(マウスピース型歯ブラシの構成)
図16に示されるように、本実施形態のカバー部30は、マウスピース部20と分離されている。なお、本実施形態のマウスピース部20の形状は、
図2及び
図3等に示される第1実施形態のマウスピース部20と同一又は類似であるため、その詳細な説明は割愛する。
【0039】
図16に示されるように、歯牙萌出方向m10に直交するカバー部30の断面形状は凹状に形成されている。カバー部30の内側にはマウスピース部20を挿入可能である。カバー部30は、マウスピース部20よりも固い材料、例えばポリプロピレンにより形成されている。
【0040】
カバー部30には、その外面から延びるように棒状の柄部32が形成されている。
本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10では、
図17に示されるようにカバー部30の内側にマウスピース部20を載せた後、ユーザが柄部32を手で把持してマウスピース部20を口の中に入れることにより、歯列60にマウスピース部20を装着することが可能となる。
【0041】
(第2実施形態のマウスピース型歯ブラシの作用及び効果)
以上のように、本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10では、カバー部30に柄部32が形成されている。この構成によれば、マウスピース型歯ブラシ10を持ち易くなるため、利便性を向上させることが可能となる。また、小児や高齢者によるマウスピース型歯ブラシ10の誤飲や誤嚥を防止することも可能である。
【0042】
<第3実施形態>
次に、マウスピース型歯ブラシ10の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態のマウスピース型歯ブラシ10との相違点を中心に説明する。
図18に示されるように、本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10では、マウスピース部20とカバー部30とが一体化されている。以下では、マウスピース部20とカバー部30とが一体的に接合された成形品をマウスピース本体120と称する。マウスピース本体120は、柔軟性を有するフレキシブルレジンやラバーレジン等により形成されている。マウスピース本体120においてマウスピース部20の内面にあたる部分にはブラシシート22が取り付けられる。なお、
図18では、ブラシシート22の図示が省略されている。マウスピース本体120の両端部には開口部121,122がそれぞれ形成されている。内部空間Saに存在する空気は、開口部121,122を通じて外部空間に抜けることが可能である。
【0043】
次に、
図19を参照して、本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10の製造方法について説明する。なお、
図19に示される工程において、
図7に示される工程と同一の工程には同一の符号を付すことにより重複する説明を可能な限り省略する。
図19に示されるように、本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10を製造する際には、第1実施形態と同様に、ユーザの上顎又は下顎の歯列60を口腔内3Dスキャン等でスキャンすることにより歯型の3DデータD10を取得した後(ステップS10)、マウスピース本体120の3DデータD13をソフトウェア等により作成する(ステップS21)。
図20は、マウスピース本体120の3DデータD13の一例を示したものである。ステップ21の処理では、例えば噛み合わせを考慮しつつマウスピース部20及びカバー部30のそれぞれの3Dデータをデザインした後、それらの3Dデータを、内部が中空になるように繋ぎ合わせることによりマウスピース本体の3DデータD13を作成する。マウスピース本体120の3DデータD13は、ユーザの噛む動作によりマウスピース部20が内側に向かうように弾性変形することでブラッシング効果が奏されるように作製されることが望ましい。
【0044】
続いて、マウスピース本体の3DデータD13を3Dプリンタに入力する。これにより、3Dプリンタがフレキシブルレジンやラバーレジン等を用いてマウスピース本体120のベース素材を成形する(ステップS22)。
続いて、3Dプリンタにより成形されたマウスピース本体120のベース素材に対して洗浄や二次硬化処理、研磨等の各種加工を行うことにより、
図18に示されるマウスピース本体120を成形する(ステップS23)。さらに、マウスピース本体120においてマウスピース部20の内面にあたる部分に、接着剤やマジックテープ(登録商標)等を含む表面処理によりブラシシート22を密着させて取り付けることにより、マウスピース型歯ブラシ10を成形する(ステップS24)。なお、マウスピース本体120に対してブラシシート22を密着させる工程は機械及び人のいずれにより行われても良い。また、マウスピース本体120に対してブラシシート22を密着させる工程は、マウスピース型歯ブラシ10を使用するユーザが行ってもよい。
【0045】
(第3実施形態のマウスピース型歯ブラシの作用及び効果)
本実施形態のマウスピース型歯ブラシ10ではマウスピース部20とカバー部30とが一体化されている。このような構成であっても、第1実施形態のマウスピース型歯ブラシ10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0046】
(変形例)
次に、第3実施形態のマウスピース型歯ブラシ10の変形例について説明する。
図21に示されるように、本変形例のマウスピース型歯ブラシ10は3Dプリンタにより作製されている。このマウスピース型歯ブラシ10のマウスピース部20には複数のフック部213が形成されている。なお、
図21では、ブラシシート22の図示が省略されている。
【0047】
図22は、
図21のXXII-XXII線に沿った断面構造を示したものである。
図22に示されるように、フック部213は、マウスピース部20の側壁部211,212のそれぞれの頂部から外郭部21の凹部の内側に向かって延びるように形成されている。フック部213は、マウスピース部20の内面との間にブラシシート22を把持するように設けられている。ブラシシート22は、フック部213によりマウスピース部20に取り付けられている。
この構成によれば、接着材やマジックテープ(登録商標)等を用いることなくマウスピース部20にブラシシート22を取り付けることができるため、マウスピース型歯ブラシ10の構造を簡素化することが可能である。
【0048】
<他の実施形態>
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。
例えばマウスピース部20及びカバー部30の形状は適宜変更可能である。
【0049】
上記実施形態では、
図7に示されるように、口腔内3Dスキャナでスキャンしたデータを利用することにより歯型の3DデータD10を作成した(ステップS10)。これに代えて、例えばユーザの歯列60の型を印象材により取った後、印象材から歯列60のモデル型を成形するとともに、モデル型から歯型の3DデータD10を作成してもよい。
【0050】
また、マウスピース部20及びカバー部30のそれぞれの製造方法に関しては、
図7に示される方法とは別の方法を採用することが可能である。
上記実施形態のマウスピース型歯ブラシ10は、例えば上顎及び下顎のそれぞれの歯列に同時に装着して使用されるものであってもよい。
図23は、そのようなマウスピース型歯ブラシ10の一例を示した物である。なお、
図23において、符号60aは上顎の歯列を示し、符号60bは下顎の歯列を示す。
図23に示されるマウスピース型歯ブラシ10は、上顎の歯列60aに対応した第1部位130と、下顎の歯列60bに対応した第2部位131とにより構成されている。各部位130,131は、マウスピース部20及びカバー部30を有している。第1部位130の内部空間Sa10と第2部位131の内部空間Sa11とは隔壁70によって隔てられている。なお、隔壁70は設けられていなくてもよい。
【0051】
図24に示されるように、第2実施形態のマウスピース型歯ブラシ10については、柄部32に振動装置50を設けてもよい。これにより、振動装置50により柄部32及びカバー部30を介してマウスピース部20を振動させることができるため、より効率的にユーザの歯を磨くことが可能となる。なお、第1実施形態のマウスピース型歯ブラシ10に関しても同様に柄部32及び振動装置50を設けることにより、同様の効果を奏することが可能である。
各実施形態のマウスピース型歯ブラシ10の内部空間Sa,Sa10,Sa11には、空気に限らず、例えば流体や柔らかい素材、クッション機構が配置されていてもよい。
【0052】
マウスピース型歯ブラシ10を噛む際に奥歯と前歯とで均一に力が加わるように、上下顎の位置関係を事前に咬合採得してもよい。そして、咬合採得された噛み合わせに基づいてマウスピース型歯ブラシ10の底壁部310の厚みを臼歯部と前歯部とで変化させてもよい。また、上顎と下顎のマウスピース型歯ブラシ10を合わせて利用する際も咬合採得の結果に基づいてマウスピース型歯ブラシ10の底壁部310の厚みを調整してもよい。
【0053】
上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0054】
G:隙間、Sa:内部空間、10:マウスピース型歯ブラシ、20:マウスピース部、21:外郭部、22:ブラシシート、30:カバー部、32:柄部、40:接合部、210a:凹凸構造(第1凹凸構造)、213:フック部、221:ブラシ、310a:凹凸構造(第2凹凸構造)。