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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171993
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241205BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241205BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J7/10 A
H02J1/00 306G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089393
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】相馬 宗厳
(72)【発明者】
【氏名】石山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平松 佑基
(72)【発明者】
【氏名】山上 修平
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 大毅
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165EA01
5G165FA01
5G165GA04
5G165HA09
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503CC08
5G503DA19
5G503FA03
(57)【要約】
【課題】複数の充電器が直列接続されたときに、外部から受電した受電電力をどのように各充電器に振り分けるかを選択可能な充電器を提供することである。
【解決手段】充電器1は、第1動作モードと第2動作モードとの何れかを選択的に実行する。第1動作モードは、受電電力のうちの一部の電力である第1充電電力で第2インタフェイスを介してバッテリを充電し、且つ、受電電力から第1充電電力を減じたうちの少なくとも一部の電力である第1給電電力で第3インタフェイスを介して他の充電器1に給電する。第2動作モードは、受電電力のうちの一部の電力であり第1充電電力よりも小さい第2充電電力で第2インタフェイスを介してバッテリを充電し、且つ、受電電力から第2充電電力を減じたうちの少なくとも一部の電力である第2給電電力で第3インタフェイスを介して他の充電器1に給電する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
USB PD(USB Power Delivery)規格に準じて外部から受電電力を受電可能な第1インタフェイスと、
バッテリに給電可能な第2インタフェイスと、
他の充電器に給電可能な第3インタフェイスと、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記受電電力のうちの一部の電力である第1充電電力で前記第2インタフェイスを介して前記バッテリを充電し、且つ、前記受電電力から前記第1充電電力を減じたうちの少なくとも一部の電力である第1給電電力で前記第3インタフェイスを介して前記他の充電器に給電する第1動作モードと、
前記受電電力のうちの一部の電力であり前記第1充電電力よりも小さい第2充電電力で前記第2インタフェイスを介して前記バッテリを充電し、且つ、前記受電電力から前記第2充電電力を減じたうちの少なくとも一部の電力である第2給電電力で前記第3インタフェイスを介して前記他の充電器に給電する第2動作モードと、
の何れかを選択的に実行する
ことを特徴とする充電器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1インタフェイスを介した前記受電電力の受電を制御する受電制御部と、
前記受電制御部により受電される前記受電電力に基づき、前記第1充電電力又は前記第2充電電力と、前記第1給電電力又は前記第2給電電力とを決定する電力制御部と、
前記電力制御部により決定された前記第1充電電力又は前記第2充電電力を、前記第2インタフェイスを介して、前記バッテリに供給する充電制御部と、
前記電力制御部により決定された前記第1給電電力又は前記第2給電電力を、前記第3インタフェイスを介して、前記他の充電器へ給電する給電制御部と
を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記充電制御部と、前記受電制御部と、前記電力制御部と、前記給電制御部とは、1つの集積回路で実現される
ことを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項4】
前記充電制御部は、1つの第1集積回路で実現され、
前記受電制御部と、前記電力制御部と、前記給電制御部とは、1つの第2集積回路で実現される
ことを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項5】
前記電力制御部は、1つの第1集積回路で実現され、
前記充電制御部と、前記受電制御部と、前記給電制御部とは、1つの第2集積回路で実現される
ことを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項6】
前記受電制御部は、
前記第1インタフェイスを介して外部電源と通信を行う第1通信処理と、
前記第1通信処理による通信の結果に基づき、受電される前記受電電力の情報を前記外部電源から取得する取得処理と、
前記取得処理により取得された前記受電電力の情報を、前記電力制御部に通知する第1通知処理と
を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項7】
前記電力制御部は、
決定した前記第1充電電力又は前記第2充電電力の情報を、前記充電制御部に通知する第2通知処理と、
決定した前記第1給電電力又は前記第2給電電力の情報を、前記給電制御部に通知する第3通知処理と
を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項8】
前記給電制御部は、
前記第3インタフェイスを介して前記他の充電器と通信を行う第2通信処理と、
前記第2通信処理による通信の結果に基づき、前記第3インタフェイスを介して、決定した前記第1給電電力又は前記第2給電電力を前記他の充電器に給電する給電処理と
を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1動作モードにおいて、
前記受電電力が前記第1充電電力以上の場合、前記第1充電電力で前記バッテリの充電を実行し、前記受電電力が前記第1充電電力より小さい場合、前記受電電力で前記バッテリの充電を実行し、
前記第2動作モードにおいて、
前記受電電力が前記第2充電電力以上の場合、前記第2充電電力で前記バッテリの充電を実行し、前記受電電力が前記第2充電電力より小さい場合、前記受電電力で前記バッテリの充電を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項10】
前記制御部は、
前記第1動作モード又は前記第2動作モードの何れかの動作モードを受け付ける受付処理を実行し、
前記受付処理により受け付けた前記動作モードを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項11】
前記受付処理は、
前記バッテリの充電中に前記動作モードを受け付ける
ことを特徴とする請求項10に記載の充電器。
【請求項12】
前記バッテリの温度を検出するセンサを備え、
前記制御部は、
前記センサにより検出される前記バッテリの温度が所定範囲内の値か判断する判断処理を更に実行し、
前記判断処理により、前記バッテリの温度が前記所定範囲内と判断された場合、
前記第1動作モードにおいて、前記第1充電電力よりも低い第3充電電力で前記バッテリを充電し、
前記第2動作モードにおいて、前記第2充電電力よりも低い第4充電電力で前記バッテリを充電する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項13】
前記第3充電電力と前記第4充電電力とが等しいことを特徴とする請求項12に記載の充電器。
【請求項14】
前記第1動作モードの実行中であるか、又は、前記第2動作モードの実行中であるかを示す表示を行う表示部を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項15】
前記第1充電電力は、前記バッテリの仕様に基づき決定される最大の充電電力である
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一つに記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の充電器は、ケーブルを介して複数台を直列接続し、ACアダプタからの電力に基づきバッテリの充電を行う。例えばバッテリを長期保管する場合、充電器は、バッテリの余剰な電力の放電を行うか、又は、他のバッテリの電力で充電することで、バッテリの残量を目標充電量に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-163802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直列接続された複数の充電器において、外部から受電した受電電力をどのように各充電器に振り分けるかを選択できることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、複数の充電器が直列接続されたときに、外部から受電した受電電力をどのように各充電器に振り分けるかを選択可能な充電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る充電器は、USB PD(USB Power Delivery)規格に準じて外部から受電電力を受電可能な第1インタフェイスと、バッテリに給電可能な第2インタフェイスと、他の充電器に給電可能な第3インタフェイスと、制御部とを備え、前記制御部は、前記受電電力のうちの一部の電力である第1充電電力で前記第2インタフェイスを介して前記バッテリを充電し、且つ、前記受電電力から前記第1充電電力を減じたうちの少なくとも一部の電力である第1給電電力で前記第3インタフェイスを介して前記他の充電器に給電する第1動作モードと、前記受電電力のうちの一部の電力であり前記第1充電電力よりも小さい第2充電電力で前記第2インタフェイスを介して前記バッテリを充電し、且つ、前記受電電力から前記第2充電電力を減じたうちの少なくとも一部の電力である第2給電電力で前記第3インタフェイスを介して前記他の充電器に給電する第2動作モードと、の何れかを選択的に実行すること特徴とする。
【0007】
充電器は、第1動作モードと第2動作モードと選択的に実行できる。第1動作モードは、第2動作モードに比べて、本充電器に電気接続されたバッテリの充電電力を多くするモードである。第2動作モードは、第1動作モードに比べて、他の充電器への給電電力を多くするモードである。故に、充電器は、複数の充電器が直列接続されたときに、外部から受電した受電電力をどのように各充電器に振り分けるかを選択可能となる。
【0008】
本発明において、前記制御部は、前記第1インタフェイスを介した前記受電電力の受電を制御する受電制御部と、前記受電制御部により受電される前記受電電力に基づき、前記第1充電電力又は前記第2充電電力と、前記第1給電電力又は前記第2給電電力とを決定する電力制御部と、前記電力制御部により決定された前記第1充電電力又は前記第2充電電力を、前記第2インタフェイスを介して、前記バッテリに供給する充電制御部と、前記電力制御部により決定された前記第1給電電力又は前記第2給電電力を、前記第3インタフェイスを介して、前記他の充電器へ給電する給電制御部とを備えてもよい。充電器は、各制御部により、各電力を制御する為の機能を実現できる。
【0009】
本発明において、前記充電制御部と、前記受電制御部と、前記電力制御部と、前記給電制御部とは、1つの集積回路で実現されてもよい。充電器は、1の集積回路を使用するだけで、各制御部の機能を実現できる。充電器は、簡易な回路構成で実現できるので、部品点数を削減できる。
【0010】
本発明において、前記充電制御部は、1つの第1集積回路で実現され、前記受電制御部と、前記電力制御部と、前記給電制御部とは、1つの第2集積回路で実現されてもよい。充電器は、各制御部の機能を、第1集積回路と第2集積回路に分散して処理できる。
【0011】
本発明において、前記電力制御部は、1つの第1集積回路で実現され、前記充電制御部と、前記受電制御部と、前記給電制御部とは、1つの第2集積回路で実現されてもよい。充電器は、各制御部の機能を、第1集積回路と第2集積回路に分散して処理できる。
【0012】
本発明において、前記受電制御部は、前記第1インタフェイスを介して外部電源と通信を行う第1通信処理と、前記第1通信処理による通信の結果に基づき、受電される前記受電電力の情報を前記外部電源から取得する取得処理と、前記取得処理により取得された前記受電電力の情報を、前記電力制御部に通知する第1通知処理とを実行してもよい。充電器は、受電制御部が取得した情報を、電力制御部に通知できる。
【0013】
本発明において、前記電力制御部は、決定した前記第1充電電力又は前記第2充電電力の情報を、前記充電制御部に通知する第2通知処理と、決定した前記第1給電電力又は前記第2給電電力の情報を、前記給電制御部に通知する第3通知処理とを実行してもよい。充電器1は、各制御部に通知された情報に基づき、バッテリの充電と他の充電器への給電とを実行できる。
【0014】
本発明において、前記給電制御部は、前記第3インタフェイスを介して前記他の充電器と通信を行う第2通信処理と、前記第2通信処理による通信の結果に基づき、前記第3インタフェイスを介して、決定した前記第1給電電力又は前記第2給電電力を前記他の充電器に給電する給電処理とを実行してもよい。充電器は、他の充電器との通信の結果に基づき、他の充電器に給電電力を給電できる。
【0015】
本発明において、前記制御部は、前記第1動作モードにおいて、前記受電電力が前記第1充電電力以上の場合、前記第1充電電力で前記バッテリの充電を実行し、前記受電電力が前記第1充電電力より小さい場合、前記受電電力で前記バッテリの充電を実行し、前記第2動作モードにおいて、前記受電電力が前記第2充電電力以上の場合、前記第2充電電力で前記バッテリの充電を実行し、前記受電電力が前記第2充電電力より小さい場合、前記受電電力で前記バッテリの充電を実行してもよい。充電器は、受電電力と各動作モードの充電電力との大小関係に基づき、バッテリを充電できる。
【0016】
本発明において、前記制御部は、前記第1動作モード又は前記第2動作モードの何れかの動作モードを受け付ける受付処理を実行し、前記受付処理により受け付けた前記動作モードを実行してもよい。ユーザは、充電器の動作モードを選択できる。
【0017】
本発明において、前記受付処理は、前記バッテリの充電中に前記動作モードを受け付けてもよい。充電器は、バッテリの充電中においても、第1動作モードと第2動作モードとを切り替えできる。
【0018】
本発明において、充電器は、前記バッテリの温度を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記センサにより検出される前記バッテリの温度が所定範囲内の値か判断する判断処理を更に実行し、前記判断処理により、前記バッテリの温度が前記所定範囲内と判断された場合、前記第1動作モードにおいて、前記第1充電電力よりも低い第3充電電力で前記バッテリを充電し、前記第2動作モードにおいて、前記第2充電電力よりも低い第4充電電力で前記バッテリを充電してもよい。充電器は、バッテリの温度に基づき、第1動作モードでは第3充電電力で、第2動作モードでは第4充電電力で充電する。これにより、充電器は、バッテリへの過負荷を低減しつつ、バッテリを充電できる。
【0019】
本発明において、前記第3充電電力と前記第4充電電力とが等しくてもよい。充電器は、第3充電電力と第4充電電力とが等しいので、簡単な制御でバッテリへの過負荷を低減できる。
【0020】
本発明において、充電器は、前記第1動作モードの実行中であるか、又は、前記第2動作モードの実行中であるかを示す表示を行う表示部を備えてもよい。ユーザは、表示部を視認することで、充電器のモードを確認できる。
【0021】
本発明において、前記第1充電電力は、前記バッテリの仕様に基づき決定される最大の充電電力であってもよい。充電器は、バッテリを最速で充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】充電器1を示す図である。
図2】充電器1の電気的構成を示す図である。
図3】第1動作モードと第2動作モードの態様を示す図表である。
図4】テーブルTを示す図表である。
図5】第1メイン処理のフローチャートである。
図6】第2メイン処理のフローチャートである。
図7】第3メイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態の充電器1を説明する。以下の説明では図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。図1に示すように、充電器1A~1Dは、携帯可能な印刷装置(図示略)に利用されるバッテリ10A~10Dを着脱可能に装着し、バッテリ10A~10Dに充電可能である。充電器1A~1Dは、同一の構成である。以下説明では、便宜上、充電器1A~1Dを総じて説明する場合、充電器1とする。バッテリ10A~10Dは、略同一の構成である。以下説明では、便宜上、バッテリ10A~10Dを総じて説明する場合、バッテリ10とする。
【0024】
バッテリ10は上下方向に長い直方体状であり、後面の上下方向に延びる左右の端部(稜線部)が面取りされて曲面を呈す。バッテリ10には、例えばリチウムイオン二次電池が用いられる。充電器1は、ACアダプタ9に接続して単独で使用可能である他、複数の充電器1をケーブル8で互いに接続し、電力供給ラインを形成して使用することもできる。ケーブル8は、USB Type-C(登録商標)規格に準拠するコネクタを備え、USB PD(USB Power Delivery)に対応する。ケーブル8は、例えば最大5Aの電流に対応する電力の送信と、各種情報の伝達を行うことができる。
【0025】
充電器1は、例えば商用コンセント(図示略)に接続するACアダプタ9から電力の供給を受ける。充電器1は、正面視、上下に長い矩形状で、左側面視、L字状であり、平面視、角が丸みを帯びた矩形状である。充電器1は、下部前面に、ケーブル8を接続する2基のインタフェイス41、43を備える。インタフェイス41、43は、USB Type-C規格に準拠するUSBインターフェース(I/F)であり、前面にて左右に並べて配置する。第1インタフェイス41は、例えばACアダプタ9からの電力を受電する。
【0026】
電力供給ラインを形成する場合において、第1インタフェイス41は、電力を供給する機器との接続を担う。即ち第1インタフェイス41は、自身よりも電力供給ラインの上流側の機器に接続する為のものである。電力を供給する機器は、USB PD(USB Power Delivery)に対応した他の充電器1、又は、ACアダプタ9である。第3インタフェイス43は、電力を受給する機器との接続を担う。即ち第3インタフェイス43は、自身よりも電力供給ラインの下流側の機器に接続する為のものである。電力を受給する機器は、USB PD(USB Power Delivery)に対応する充電器1である。
【0027】
充電器1は、前部上面に操作部4と表示部5を備える。操作部4は、例えばプッシュスイッチであり、各種条件を設定する操作に用いられる。表示部5は、例えばLEDで構成され、後述する充電器1の動作モードに応じて点灯、消灯、点滅等する。
【0028】
充電器1は、後面にバッテリ10の装着部6を備える。装着部6はバッテリ10の外形よりもやや大きな凹部状に形成される。装着部6は、バッテリ10が装着された場合に、バッテリ10の形状と略対応する。充電器1の回路基板(図示略)とバッテリ10を電気的に接続する端子(図示略)は、装着部6内で下部に設けられる。回路基板は、充電器1内の下部に配設される。矢印Aで示すように、バッテリ10Bは充電器1Bの背面側にて上方から装着部6に差し込んで装着する。バッテリ10A、10C、10Dも同様の手順で充電器1A、1C、1Dの装着部6に装着する。バッテリ10が装着部6に装着された場合、端子は、バッテリ10が備える端子(図示略)に接触し、バッテリ10に電力を供給する接点となる。
【0029】
充電器1は、右側面下部に係合爪部7を備え、左側面下部に係合凹部(図示略)を備える。矢印Bで示すように、充電器1Cは、右側に配置する他の充電器1Dの係合凹部に、自身の係合爪部7を下から差し込んで係合することで、充電器1Dと連結することができる。充電器1A、1B、1Dも同様に、他の充電器1と直列に連結する機能を有する。即ち、充電器1は、複数台を直列に接続できる。
【0030】
図2を参照し、充電器1の電気的構成を説明する。図2では、デバイス間における電力の流れを実線の矢印で示し、各部間における信号及び情報の流れを点線で示す。充電器1の回路基板は、操作部4、表示部5、インタフェイス41~43、受電制御部31、電力制御部32、給電制御部33、及び充電制御部34を搭載する。操作部4は、例えば押下、長押し等、プッシュスイッチに対するユーザの操作の入力を受け付ける。表示部5は、電力制御部32の指示に従い、LEDの点灯、消灯、及び点滅等を行う。操作部4と表示部5は、夫々電力制御部32に接続する。
【0031】
受電制御部31は、第1インタフェイス41を介して、上流側の充電器1と通信可能に接続する。また、受電制御部31は、スイッチSW1をオンすることで、上流側の充電器1又はACアダプタ9からの受電電力Pinを受電する。電力制御部32は、USBPD(USB Power Delivery)による電力の受電及び給電を統括制御する。電力制御部32は、バッテリ10を充電する充電電力Pch、及び下流側の充電器1に給電する給電電力Poutを決定する。充電制御部34は、電力制御部32により決定された充電電力Pchを、第2インタフェイス42を介して、バッテリ10に供給する。詳細には、充電制御部34は、充電器1に装着するバッテリ10が内蔵する電池セル12に第1充電電力P_mode1を供給する。給電制御部33は、スイッチSW2をオンすることで、電力制御部32により決定された第1給電電力Pout1を、第3インタフェイス43を介して、下流側の充電器1へ給電する。
【0032】
各制御部31~34は、第1インタフェイス41から供給される受電電力Pinで駆動する。各制御部31~34は、夫々、別の集積回路で構成される。例えば各制御部31~34は、マイクロコンピュータとして機能し、非図示のCPU、ROM、RAMを備える。CPUは、夫々、各制御部31~34の統括制御を司る。ROMは、夫々、各種プログラム、各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAMは、夫々、CPUの演算結果、ポインタ、カウンタ等を一時的に記憶する。
【0033】
バッテリ10は、電池セル12、制御回路(図示略)、保護回路(図示略)、及びセンサ11等を備える。制御回路は、電池セル12の電圧を管理する。保護回路は、電池セル12の過充電・過放電を防ぐ。センサ11は、バッテリ10の温度T_batを検出して、検出結果を電力制御部32に送信する。
【0034】
図3を参照して、充電器1の動作モードについて説明する。充電器1は、第1動作モードと第2動作モードとの何れかを選択的に実行する。第1動作モードは、バッテリ10の充電速度を優先し、且つ下流側の充電器1への電力を抑制する。この場合、充電器1は、第1充電電力P_mode1で第2インタフェイス42を介してバッテリ10を充電する。第1充電電力P_mode1は、受電電力Pinのうちの一部の電力である。第1充電電力P_mode1は、バッテリ10の仕様に基づき決定される最大の充電電力Pchである。第1充電電力P_mode1は、例えば30Wである。また、充電器1は、第1給電電力Pout1を、第3インタフェイス43を介して他の充電器1に給電する。第1給電電力Pout1は、受電電力Pinから第1充電電力P_mode1を減じた電力である。
【0035】
例えば、ACアダプタ9からの受電電力Pinが60Wの場合、且つバッテリ10への第1充電電力P_mode1が30Wの場合、ユーザは、2つの充電器1に30Wを夫々供給可能である。この場合、充電器1は、2つのバッテリ10を30Wの充電電力Pchで夫々充電する。1番目の充電器1Aが供給可能な第1給電電力Pout1は、受電電力Pinの60Wから第1充電電力P_mode1である30Wを減じた30Wである。2番目の充電器1Bは、受電した第1給電電力Pout1、即ち30Wの受電電力Pinに基づき、バッテリ10Bを、第1充電電力P_mode1で充電する。この場合、受電電力Pinと第1充電電力P_mode1は等しくなる。なお、3番目の充電器1Cが直列接続されている場合も想定されるが、2番目の充電器1からの第2給電電力Pout2は0である。このため、2番目の充電器1Bは、3番目の充電器1Cへ給電電力Poutを給電できない。故に、ユーザは、2つの充電器1A、1Bを使用して、バッテリ10A、10Bを最高速度で充電可能となる。
【0036】
図3を参照して、充電器1の第2動作モードについて説明する。第2動作モードは、充電器1の連結可能な個数を増やし、且つ同時に多くのバッテリ10を同時に充電するモードである。この場合、充電器1は、第2充電電力P_mode2で第2インタフェイス42を介してバッテリ10を充電する。第2充電電力P_mode2は、受電電力Pinのうちの一部の電力であり、第1充電電力P_mode1よりも小さい。第2充電電力P_mode2は、例えばバッテリ10の仕様に基づき決定される最小の充電電力Pchである。第2充電電力P_mode2は、例えば15Wである。また、充電器1は、第2給電電力Pout2で第3インタフェイス43を介して他の充電器1に給電する。なお、第2給電電力Pout2は、受電電力Pinから第2充電電力P_mode2を減じた電力である。
【0037】
例えば、ACアダプタ9からの受電電力Pinが60Wの場合、且つバッテリ10への第2充電電力P_mode2が15Wの場合、4つの充電器1に15Wを夫々供給可能である。この場合、1番目の充電器1Aは、バッテリ10Aを15Wの第2充電電力P_mode2で充電する。2番目の充電器1Bに供給可能な第2給電電力Pout2は、受電電力Pinの60Wから第2充電電力P_mode2である15Wを減じた45Wである。2番目の充電器1Bは、第2給電電力Pout2、即ち45Wの受電電力Pinに基づき、バッテリ10Bを15Wの第2充電電力P_mode2で充電する。3番目の充電器1Cに供給可能な第2給電電力Pout2は、受電電力Pinの45Wから15Wを減じた30Wである。3番目の充電器1Cは、第2給電電力Pout2、即ち受電した30Wの受電電力Pinに基づき、15Wの第2充電電力P_mode2でバッテリ10Cを充電する。4番目の充電器1Dに供給可能な第2給電電力Pout2は、受電電力Pinの30Wから15Wを減じた15Wである。4番目の充電器1Dは、第2給電電力Pout2、即ち受電した15Wの受電電力Pinに基づき、15Wの第2充電電力P_mode2でバッテリ10Dを充電する。なお、5番目の充電器1Eが直列接続されている場合も想定されるが、4番目の充電器1Dから供給可能な第2給電電力Pout2は0である。このため、4番目の充電器1Dは、5番目の充電器1Eへの供給を実行しない。故に、直列接続された充電器1A~1Dは、4つのバッテリ10A~10Dを同時に充電できる。
【0038】
なお、上記説明では、説明の便宜上、給電電力Poutは、受電電力Pinから充電電力Pchを減じた電力であると説明した。しかしながら、実際の充電器1は、受電電力Pinを使用して、充電器1の他のデバイスを駆動する。このため、第1動作モードでは、第1給電電力Pout1は、受電電力Pinから第1充電電力P_mode1を減じたうちの少なくとも一部の電力である。同様に、第2動作モードでは、第2給電電力Pout2は、受電電力Pinから第2充電電力P_mode2を減じたうちの少なくとも一部の電力である。
【0039】
図4のテーブルTに示すように、表示部5は、LEDを点灯させることで、充電器1の状態をユーザに報知可能である。表示部5は、例えば第1動作モードの実行中であるか、又は、第2動作モードの実行中であるかを示す表示を行う。動作モードが第1動作モードに設定されており、且つバッテリ10が充電されていない場合、表示部5は、LEDを、例えば緑色で点滅させる。一方、動作モードが第2動作モードに設定されており、且つバッテリ10が充電されていない場合、表示部5は、LEDを、例えば橙色で点滅させる。ユーザは、表示部5を視認することで、充電器1の動作モードを認識できる。
【0040】
第1動作モード、及び第2動作モードの何れの場合にも、バッテリ10を充電している場合、表示部5は、LEDを、例えば赤色で点滅させる。第1動作モード、及び第2動作モードの何れの場合にも、バッテリ10が満充電となった場合には、表示部5は、LEDを、例えば赤色に点灯させる。バッテリ10が充電不可の状態の場合、表示部5は、LEDを、例えば消灯させる。バッテリ10の充電不可の状態とは、例えばバッテリ10を充電する為の電力が不足している場合、バッテリ10が高温又は低温で充電できない場合等である。
【0041】
図5を参照して、第1メイン処理について説明する。第1メイン処理は、各制御部31~34が実行するステップを総称したものである。第1メイン処理は、充電器1がACアダプタ9、又は、上流側の充電器1に接続された場合に1回だけ実行される。なお、充電器1の動作モードは、初期条件として、第1動作モード、第2モードの何れかに設定されている。ユーザにより充電器1がACアダプタ9、又は、上流側の充電器1に接続されると、各制御部31~34は、各ROMから夫々プログラムを読み出して第1メイン処理を実行する。
【0042】
第1メイン処理が実行されると、受電制御部31は、第1インタフェイス41を介して、ACアダプタ9、又は上流側の充電器1と通信を行うネゴシエーションを行う(S1)。受電制御部31は、ネゴシエーションによる通信の結果に基づき、受電される受電電力Pinの情報をACアダプタ9から取得する(S3)。受電制御部31は、取得された受電電力Pinの情報を、電力制御部32に通知する(矢印D1参照)。受電制御部31は、第1インタフェイス41を介した受電電力Pinの受電を制御する(S5)。この場合、受電制御部31は、ネゴシエーション結果に基づき、スイッチSW1をオンオフして受電を制御する。受電制御部31は、処理を終了して待機する。
【0043】
ここで、電力制御部32は、充電器1の動作モードの確認を実行する(S7)。電力制御部32は、確認した動作モードに対応する想定電力Pch_maxを決定する(S9)。想定電力Pch_maxは、第1動作モードでは第1充電電力P_mode1、第2動作モードでは第2充電電力P_mode2に決定される。例えば、第1動作モードでは想定電力Pch_maxが30W、第2動作モードでは想定電力Pch_maxが15Wとなる。
【0044】
電力制御部32は、通知された受電電力Pinの情報(矢印D1参照)に基づき、受電電力Pinが最低電力Pch_minより大きいか否か判断する(S11)。最低電力Pch_minは、バッテリ10を充電可能な最低の電力を示す。
【0045】
受電電力Pinが最低電力Pch_min以下と判断した場合(S11:NO)、電力制御部32は、バッテリ10を充電する為の電力が不足しているので、バッテリ10への充電不可に設定する(S23)。電力制御部32は、その旨を、充電制御部34に通知する(矢印D3参照)。この場合、電力制御部32は、下流側の充電器1へ給電してもバッテリ10を充電できない。従って、電力制御部32は、給電電力Poutを0に設定する(S25)。電力制御部32は、その旨を、給電制御部33に通知する(矢印D13参照)。電力制御部32は、処理をS27に進める。
【0046】
一方、受電電力Pinが最低電力Pch_min以上であると判断した場合(S11:YES)、電力制御部32は、受電電力Pinが想定電力Pch_maxよりも大きいか否か判断する(S13)。
【0047】
受電電力Pinが想定電力Pch_maxよりも大きいと判断した場合(S13:YES)、電力制御部32は、バッテリ10の充電電力Pchを想定電力Pch_maxに決定する(S15)。この場合、充電電力Pchは、第1動作モードでは第1充電電力P_mode1に、第2動作モードでは第2充電電力P_mode2に決定される。電力制御部32は、充電電力Pchとして決定した第1充電電力P_mode1又は第2充電電力P_mode2の情報を、充電制御部34に通知する(矢印D5参照)。
【0048】
電力制御部32は、受電電力Pinから充電電力Pchを減ずることで、下流側の充電器1への給電電力Poutを決定する(S17)。この場合、給電電力Poutは、第1給電電力Pout1、又は、第2給電電力Pout2に決定される。電力制御部32は、決定した第1給電電力Pout1又は第2給電電力Pout2の情報を、給電制御部33に通知する(矢印D11参照)。電力制御部32は、処理をS27に進める。
【0049】
一方、受電電力Pinが想定電力Pch_max以下であると判断した場合(S13:NO)、電力制御部32は、バッテリ10への充電電力Pchを受電電力Pinに決定する(S19)。この場合、第1充電電力P_mode1、又は、第2充電電力P_mode2よりも低い値が充電電力Pchとなる。電力制御部32は、受電電力Pinが概ねバッテリ10の充電に使用される旨を、充電制御部34に通知する(矢印D7参照)。受電電力Pinが概ねバッテリ10の充電に使用されるので、充電器1は、下流側の充電器1に給電電力Poutを供給できない。故に、給電制御部33は、Poutを0に決定する(S21)。電力制御部32は、その旨を、給電制御部33に通知する(矢印D9参照)。電力制御部32は、処理をS27進める。
【0050】
ここで、充電制御部34は、充電電力Pchの通知があった場合、バッテリ10への充電制御を実行する(S29)。充電制御部34は、電力制御部32により決定された第1充電電力P_mode1、第2充電電力P_mode2、又は受電電力Pinを、第2インタフェイス42を介して、バッテリ10に供給する。詳細には、充電制御部34は、第1動作モードにおいて、受電電力Pinが第1充電電力P_mode1以上の場合、第1充電電力P_mode1でバッテリ10の充電を実行する。充電制御部34は、第1動作モードにおいて、受電電力Pinが第1充電電力P_mode1より小さい場合、受電電力Pinでバッテリ10の充電を実行する。充電制御部34は、第2動作モードにおいて、受電電力Pinが第2充電電力P_mode2以上の場合、第2充電電力P_mode2でバッテリ10の充電を実行する。充電制御部34は、第2動作モードにおいて、受電電力Pinが第2充電電力P_mode2より小さい場合、受電電力Pinでバッテリ10の充電を実行する。一方、バッテリ10の充電不可に設定された旨の通知を受けている場合(矢印D3参照)、充電制御部34は、バッテリ10への充電を実行しない。
【0051】
充電制御部34は、バッテリ10への充電制御の内容を、電力制御部32に通知する(矢印D15参照)。充電制御部34は、処理を終了して待機する。
【0052】
ここで、給電制御部33は、通知された給電電力Pout(矢印D9、D11、D13)に基づき、第3インタフェイス43を介して、下流側の充電器1と通信を行うネゴシエーションを実行する(S31)。給電制御部33は、下流側の充電器1への給電制御を行う(S33)。ネゴシエーションが成功した場合、給電制御部33は、スイッチSW2をオンして、第3インタフェイス43を介して電力制御部32により決定された給電電力Poutを他の充電器1に給電する。ネゴシエーションが失敗した場合、例えば下流側の充電器1への給電電力Poutが0である通知を受けている場合、スイッチSW2をオフして、給電電力Poutの給電を実行しない。給電制御部33は、処理を終了して待機する。
【0053】
ここで、電力制御部32は、各ステップで処理した結果に基づき、テーブルTを参照して、表示部5のLEDの表示を変更する(S27)。例えば、バッテリ10の充電不可に設定されている場合、電力制御部32は、LEDを消灯させる。バッテリ10への充電が実行されていない場合、電力制御部32は、充電器1の動作モードに応じて、LEDを緑色又は橙色に点灯させる。バッテリ10への充電が実行中の場合、電力制御部32は、動作モードに関わらずLEDを赤色に点滅させる(矢印D15参照)。電力制御部32は、処理を終了して待機する。
【0054】
図6を参照して、第2メイン処理を説明する。第2メイン処理は、各制御部31~34が実行するステップを総称したものである。第2メイン処理は、第1メイン処理が実行された後に実行される。第2メイン処理は、充電器1の動作モードが変更された場合、又は、所定の周期で実行される。なお、動作モードの変更は、例えばユーザの操作部4の操作により変更されてもよいし、PC、スマートフォン、及びタブレット等からの指令で変更されてもよい。電力制御部32は、第1動作モード又は第2動作モードの何れかの動作モードを受け付ける。なお、第1メイン処理でバッテリ10の充電が開始されている場合、第2メイン処理では、電力制御部32は、バッテリ10の充電中に動作モードを受け付ける。動作モードの変更、又は、所定の周期を経過したことを受け付けた場合、各制御部31~34は、ROMからプログラムを読み出して第2メイン処理を実行する。
【0055】
第2メイン処理が実行されると、電力制御部32は、第1動作モードに設定されたか判断する(S101)。第1動作モードに設定されたと判断した場合(S101:YES)、電力制御部32は、第1動作モードにおける想定電力Pch_maxを、第1充電電力P_mode1に決定する(S103)。電力制御部32は、S107に処理を進める。第2動作モードに設定されたと判断した場合(S101:NO)、電力制御部32は、第2動作モードにおける想定電力Pch_maxを、第2充電電力P_mode2に決定する(S105)。電力制御部32は、S107に処理を進める。
【0056】
電力制御部32は、バッテリ10を充電中か判断する(S107)。バッテリ10を充電していないと判断した場合(S107:NO)、電力制御部32は、処理をS119に進める。なお、バッテリ10の充電状況については、電力制御部32は、充電制御部34から情報を取得するものとする。例えばバッテリ10が充電器1から取り外された場合、バッテリ10が満充電の情報を取得した場合には、電力制御部32は、バッテリ10を充電していないと判断する。
【0057】
一方、バッテリ10を充電中であると判断した場合(S107:YES)、電力制御部32は、受電電力Pinが想定電力Pch_maxよりも大きいか判断する(S109)。受電電力Pinが想定電力Pch_maxよりも大きいと判断した場合(S109:YES)、電力制御部32は、バッテリ10の充電電力Pchを、想定電力Pch_maxに決定する(S111)。電力制御部32は、決定した充電電力Pchを、充電制御部34に通知する(矢印D101参照)。電力制御部32は、受電電力Pinから充電電力Pchを減ずることで、給電電力Poutを決定する(S113)。電力制御部32は、決定した給電電力Poutを給電制御部33に通知する(矢印D103参照)。電力制御部32は、処理をS119に進める。
【0058】
一方、受電電力Pinが想定電力Pch_max以下であると判断した場合(S109:NO)、電力制御部32は、バッテリ10への充電電力Pchを、受電電力Pinに決定する(S115)。電力制御部32は、その旨を充電制御部34に通知する(矢印D105参照)。この場合、受電電力Pinが概ねバッテリ10の充電に使用される。従って、充電器1は、下流側の充電器1に給電電力Poutを給電不能となる。故に、電力制御部32は、給電電力Poutを0に決定する(S117)。電力制御部32は、その旨を給電制御部33に通知する(矢印D107)。電力制御部32は、処理をS119に進める。
【0059】
ここで、電力制御部32は、各ステップで処理した結果に基づき、テーブルTを参照して、表示部5のLEDの表示を変更する(S119)。この場合、表示部5は、充電器1の動作モード、又は、バッテリ10への充電状況に応じて、LEDの表示を制御する。電力制御部32は、処理を終了して待機する。
【0060】
ここで、充電制御部34は、バッテリ10の充電を制御する(S121)。充電電力Pchの通知を受けている場合(矢印D101、D105参照)、充電制御部34は、決定した充電電力Pchでバッテリ10の充電を継続する。一方、バッテリ10の充電を終了している場合、充電制御部34は、バッテリ10の充電停止状態を継続する。充電制御部34は、処理を終了して待機する。
【0061】
ここで、給電制御部33は、決定した給電電力Poutに基づき、下流側の充電器1と通信を行うネゴシエーションを実行する(S123)。給電制御部33は、ネゴシエーション結果に基づき、給電制御を実行する(S125)。ネゴシエーションが成功した場合、給電電力Poutを供給する。ネゴシエーションが失敗した場合、給電電力Poutを給電しない。給電制御部33は、処理を終了して待機する。
【0062】
図7を参照して、第3メイン処理を説明する。第3メイン処理は、各制御部31~34が実行するステップを総称したものである。第3メイン処理は、ACアダプタ9、又は、上流側の充電器1に充電器1が接続されてから、所定の周期で実行される。第3メイン処理が実行される所定の周期は、第2メイン処理と同様でもよいし、異なっていてもよい。所定の周期に到達したことを受け付けた場合、各制御部31~34は、ROMからプログラムを読み出して第3メイン処理を実行する。
【0063】
第3メイン処理が実行されると、電力制御部32は、センサ11の検出結果からバッテリ10の温度T_batを取得する(S301)。電力制御部32は、バッテリ10の温度T_batが第1所定範囲(T_high>T_bat>T_low)か否か判断する(S303)。なお、第1所定範囲とは、バッテリ10の充電を問題なく実行できる温度範囲である。温度T_highは、高温状態であるがバッテリ10を充電可能な温度である。温度T_lowは、低温状態であるがバッテリ10を充電可能な温度を示す。第1温度範囲は、バッテリ10の仕様に基づき決定される。
【0064】
バッテリ10の温度T_batが第1所定範囲(T_high>T_bat>T_low)内であると判断した場合(S303:YES)、電力制御部32は、現在の充電電力Pchに設定されている想定電力Pch_maxを維持する(S305)。例えば、第1動作モードの場合には、第1充電電力P_mode1が維持され、第2動作モードの場合には、第2充電電力P_mode2が維持される。なお、受電電力Pinで充電が行われている場合には、受電電力Pinが維持される。電力制御部32は、処理をS313に進める。
【0065】
一方、バッテリ10の温度T_batが第1所定範囲(T_high>T_bat>T_low)内にないと判断した場合(S303:NO)、電力制御部32は、バッテリ10の温度T_batが、第2所定範囲(T_max>T_bat>T_min)内であるか判断する(S307)。上限温度T_maxは、バッテリ10を充電する場合の上限の温度を示す。下限温度T_minは、バッテリ10を充電する場合の下限の温度を示す。第2所定範囲は、バッテリ10の仕様に応じて決定される。
【0066】
バッテリ10の温度T_batが第2所定範囲内(T_max>T_bat>T_min)である場合(S307:YES)、電力制御部32は、現在の充電電力Pchよりも低く抑制された抑制電力Pch_lowに決定する(S309)。第1動作モードの場合、例えば充電電力Pchは、抑制電力Pch_lowである第3充電電力Pch3に決定される。第2動作モードの場合、例えば充電電力Pchは、抑制電力Pch_lowである第4充電電力Pch4に決定される。第3充電電力Pch3と第4充電電力Pch4とは等しい。これにより、電力制御部32は、バッテリ10の劣化を抑制しつつ充電を継続できる。電力制御部32は、処理をS313に進める。
【0067】
一方、バッテリ10の温度T_batが第2所定範囲(T_max>T_bat>T_min)内でないと判断した場合(S307:NO)、電力制御部32は、バッテリ10の充電を継続できる温度ではないので、バッテリ10を充電不可に決定にする(S311)。電力制御部32は、処理をS313に進める。
【0068】
電力制御部32は、各ステップで処理した結果に基づき、充電電力Pchを再設定する(S313)。この場合、電力制御部32は、再設定された充電電力Pchを、充電制御部34に通知する(矢印D301参照)。なお、S305を経由した場合には、充電電力Pchはそのまま維持される。S309を経由した場合、充電電力Pchは、抑制電力Pch_lowに変更される。S311を経由した場合には、充電電力Pchは0となる。
【0069】
電力制御部32は、再設定された充電電力Pchに基づき、給電電力Poutを再設定する(S315)。電力制御部32は、再設定した給電電力Poutを、給電制御部33に通知する(矢印D303)。電力制御部32は、各ステップで処理した結果に基づき、表示部5のLEDの表示を変更する(S317)。電力制御部32は、処理を終了して待機する。
【0070】
ここで、充電制御部34は、再設定された充電電力Pchの情報に基づき、バッテリ10の充電を実行する(S321)。なお、充電不可の情報が通知された場合は、充電制御部34は、充電を停止する。充電制御部34は、処理を終了して待機する。
【0071】
ここで、給電制御部33は、再設定された給電電力Poutの情報に基づき、下流側の充電器1と通信を行うネゴシエーションを実行する(S323)。その後、給電制御部33は、ネゴシエーション結果に基づき、給電制御を実行する(S325)。給電制御部33は、処理を終了して待機する。
【0072】
以上説明したように、電力制御部32は、第1動作モードと第2動作モードとの何れかを選択的に実行する。第1動作モードは、第2動作モードに比べて、本充電器1に電気接続されたバッテリ10の充電電力Pchを多くするモードである。第2動作モードは、第1動作モードに比べて、他の充電器1への給電電力Poutを多くするモードである。故に、充電器1は、複数の充電器1が直列接続されたときに、外部から受電した受電電力Pinをどのように各充電器1に振り分けるかを選択可能となる。
【0073】
受電制御部31は、第1インタフェイス41を介した受電電力Pinの受電を制御する。電力制御部32は、受電制御部31により受電される受電電力Pinに基づき、第1充電電力P_mode1又は第2充電電力P_mode2と、第1給電電力Pout1又は第2給電電力Pout2とを決定する。充電制御部34は、電力制御部32により決定された第1充電電力P_mode1又は第2充電電力P_mode2を、第2インタフェイス42を介して、バッテリ10に供給する。給電制御部33は、電力制御部32により決定された第1給電電力Pout1又は第2給電電力Pout2を、第3インタフェイス43を介して、他の充電器1へ給電する。充電器1は、各制御部により、各電力を制御する為の機能を実現できる。
【0074】
受電制御部31は、第1インタフェイス41を介してACアダプタ9と通信を行うネゴシエーションを行う。受電制御部31は、ネゴシエーションによる通信の結果に基づき、受電される受電電力Pinの情報をACアダプタ9から取得する。受電制御部31は、取得された受電電力Pinの情報を、電力制御部32に通知する。充電器1は、受電制御部31が取得した情報を、電力制御部32に通知できる。
【0075】
電力制御部32は、決定した第1充電電力P_mode1又は第2充電電力P_mode2の情報を、充電制御部34に通知する。電力制御部32は、決定した第1給電電力Pout1又は第2給電電力Pout2の情報を、給電制御部33に通知する。充電器1は、各制御部31~34に通知された情報に基づき、バッテリ10の充電と他の充電器1への給電とを実行できる。
【0076】
給電制御部33は、第3インタフェイス43を介して他の充電器1と通信を行うネゴシエーションを行う。給電制御部33は、ネゴシエーションによる通信の結果に基づき、第3インタフェイス43を介して、決定した第1給電電力Pout1又は第2給電電力Pout2を他の充電器1に給電する。充電器1は、他の充電器1との通信の結果に基づき、他の充電器1に給電電力Poutを給電できる。
【0077】
充電制御部34は、第1動作モードにおいて、受電電力Pinが第1充電電力P_mode1以上の場合、第1充電電力P_mode1でバッテリ10の充電を実行し、受電電力Pinが第1充電電力P_mode1より小さい場合、受電電力Pinでバッテリ10の充電を実行する。充電制御部34は、第2動作モードにおいて、受電電力Pinが第2充電電力P_mode2以上の場合、第2充電電力P_mode2でバッテリ10の充電を実行し、受電電力Pinが第2充電電力P_mode2より小さい場合、受電電力Pinでバッテリ10の充電を実行する。充電器1は、受電電力Pinと各動作モードの充電電力Pchとの大小関係に基づき、バッテリ10を充電できる。
【0078】
電力制御部32は、第1動作モード又は第2動作モードの何れかの動作モードを受け付ける。電力制御部32は、受け付けた動作モードを実行する。ユーザは、充電器1の動作モードを選択できる。
【0079】
電力制御部32、バッテリ10の充電中に動作モードを受け付ける。充電器1は、バッテリ10の充電中においても、第1動作モードと第2動作モードとを切り替えできる。
【0080】
第3充電電力Pch3と第4充電電力Pch4とが等しい。充電器1は、第3充電電力Pch3と第4充電電力Pch4とが等しいので、簡単な制御でバッテリ10への過負荷を低減できる。
【0081】
表示部5は、第1動作モードの実行中であるか、又は、第2動作モードの実行中であるかを示す表示を行う。ユーザは、表示部5を視認することで、充電器1のモードを確認できる。
【0082】
第1充電電力P_mode1は、バッテリ10の仕様に基づき決定される最大の充電電力Pchである。充電器1は、バッテリ10を最速で充電できる。
【0083】
上記実施形態において、ACアダプタ9が本発明の「外部電源」に相当する。受電制御部31が実行するS1の処理が、本発明の「第1通信処理」に相当する。受電制御部31が実行するS3の処理が、本発明の「取得処理」に相当する。受電制御部31が実行する矢印D1の通知が、本発明の「第1通知処理」に相当する。電力制御部32が実行する矢印D3、D5、D7の通知が、本発明の「第2通知処理」に相当する。電力制御部32が実行する矢印D9、D11、D13の通知が、本発明の「第3通知処理」に相当する。給電制御部33が実行するS31の処理が、本発明の「第2通信処理」に相当する。給電制御部33が実行するS33の処理が、本発明の「給電処理」に相当する。電力制御部32が実行するS101の処理が、本発明の「受付処理」に相当する。電力制御部32が実行するS307の処理が、本発明の「判断処理」に相当する。
【0084】
本発明は上記実施形態から更に変更できる。なお、上記実施形態、及び下記変形例に開示された技術は、矛盾しない範囲で組み合わせてよい。充電器1は、ACアダプタ9又は上流側の充電器1の電力を受電したがこれに限らず、他のデバイス、例えばPC、スマートフォン、タブレットPC等から受電を行ってもよい。また、充電器1は、下流側の充電器1に代えて、他のデバイスに給電を行ってもよい。
【0085】
上記実施形態では、充電制御部34と、受電制御部31と、電力制御部32と、給電制御部33とは、夫々、別の集積回路で実現されていたがこれに限らない。例えば、充電制御部34と、受電制御部31と、電力制御部32と、給電制御部33とは、1つの集積回路で実現されてもよい。この場合、充電器1は、1の集積回路を使用するだけで、各制御部の機能を実現できる。充電器1は、簡易な回路構成で実現できるので、部品点数を削減できる。
【0086】
また、充電制御部34は、1つの第1集積回路で実現されてもよい。受電制御部31と、電力制御部32と、給電制御部33とは、1つの第2集積回路で実現されてもよい。この場合、充電器1は、各制御部の機能を、第1集積回路と第2集積回路に分散して処理できる。
【0087】
電力制御部32は、1つの第1集積回路で実現されてもよい。また、充電制御部34と、受電制御部31と、給電制御部33とは、1つの第2集積回路で実現されてもよい。この場合、充電器1は、各制御部の機能を、第1集積回路と第2集積回路に分散して処理できる。
【0088】
上記実施形態では、第3充電電力Pch3と第4充電電力Pch4とは等しかったがこれに限らない。例えば、第3充電電力Pch3と第4充電電力Pch4とは異なる電力であってもよい。この場合、例えば、センサ11は、バッテリ10の温度T_batを検出する。電力制御部32は、センサ11により検出されるバッテリ10の温度T_batが所定範囲内(T_max>T_bat>T_min)の値か判断する。電力制御部32は、バッテリ10の温度T_batが所定範囲内と判断された場合、第1動作モードにおいて、第1充電電力P_mode1よりも低い第3充電電力Pch3でバッテリ10を充電し、第2動作モードにおいて、第2充電電力P_mode2よりも低い第4充電電力Pch4でバッテリ10を充電する。充電器1は、バッテリ10の温度T_batに基づき、第1動作モードでは第3充電電力Pch3で、第2動作モードでは第4充電電力Pch4で充電する。これにより、充電器1は、バッテリ10への過負荷を低減しつつ、バッテリ10を充電できる。
【0089】
上記実施形態では、第1充電電力P_mode1は、バッテリ10を充電可能な最大の充電電力Pchであったがこれに限らない。例えば、第1充電電力P_mode1は、第2充電電力P_mode2よりも大きい値であればよく、ユーザの要求等に応じて適宜設定してよい。第2充電電力P_mode2についても、充電可能な最小の充電電力Pchであったがこれに限らない。第2充電電力P_mode2は、第1充電電力P_mode1よりも低い値であればよい。つまり、第1充電電力P_mode1と第2充電電力P_mode2は、ユーザの要求などに応じて適宜設定してよい。
【0090】
上記実施形態では、表示部5のLEDは1つの場合を想定したがこれに限らない。例えば表示部5のLEDは、複数設けられてもよい。この場合、複数のLEDのパターンにより、動作モード等の充電器1の状況をユーザに報知してもよい。例えば、バッテリ10の充電中は、動作モードによらずLEDは一定の表示を行ったが、何れの動作モードで充電を実行中かを、ユーザが識別できるようにしてもよい。なお、LEDの発色、個数等は、適宜変更してよい。
【0091】
上記実施形態では、表示部5はLEDで構成されたがこれに限らない。例えば、音声、ブザー等でユーザに充電器1の動作モード等を報知してもよいし、ディスプレイを用いて動作モード等を報知してもよい。
【0092】
なお、各制御部31~34の代わりに、CPU、ASIC、FPGA (Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。各メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。充電器1は、例えば、フラッシュメモリ、HDD等の他の非一時的な記憶媒体を備えてもよい。非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。
【0093】
各種のプログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(即ち、伝送信号として送信され)、フラッシュメモリ、HDD等に記憶されてもよい。この場合、各種のプログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【符号の説明】
【0094】
1、1A~1D 充電器
10 バッテリ
11 センサ
31~34 制御部
41~43 インタフェイス
Pin 受電電力
Pch、P_mode1、P_mode2、Pch3、Pch4 充電電力
Pout、Pout1、Pout2 給電電力
T_bat 温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7