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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017200
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B65D1/02 BRH
B65D1/02 ZAB
B65D1/02 BRL
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119694
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】室屋 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
(72)【発明者】
【氏名】大村 一平
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA14
3E033BA21
3E033BA30
3E033BB08
3E033CA16
3E033DA09
3E033DB01
3E033DD05
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】内袋を容器本体から引き抜きやすい、二重容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、打栓式で前記容器本体の口部に装着されており、前記口部装着部材を前記外殻に対して回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、
前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、
前記口部装着部材は、打栓式で前記容器本体の口部に装着されており、
前記口部装着部材を前記外殻に対して回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記口部装着部材は、前記口部装着部材が前記容器本体の口部に装着された時点での前記口部装着部材と前記外殻の係合関係の状態のまま、前記回転が可能に構成される、二重容器。
【請求項3】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記口部装着部材は、前記口部装着部材を前記容器本体に対して回転させる前に前記口部装着部材と前記外殻との係合力を弱める操作を行うことなく、前記回転が可能に構成される、二重容器。
【請求項4】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記口部装着部材は、打栓式で前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、
前記口部装着部材の回転に伴って前記内袋が前記外殻に対して回転するように構成され、
前記内袋と前記外殻の間に設けられたカム機構の作用により、前記内袋の回転に伴って前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器。
【請求項5】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記口部装着部材の回転は、正ネジ緩め方向の回転である、二重容器。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の二重容器であって、
前記口部装着部材は、中栓と、オーバーキャップを備え、
前記中栓は、打栓式で前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、
前記オーバーキャップは、前記中栓に対して螺合されており、
前記中栓に対して前記オーバーキャップを正ネジ緩め方向に回転させることによって、前記オーバーキャップと前記中栓が螺合解除可能に構成され、
前記外殻に対して前記中栓を正ネジ緩め方向に回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器。
【請求項7】
請求項6に記載の二重容器であって、
前記中栓に対して前記オーバーキャップを初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要なオーバーキャップ回転トルクをT1とし、
前記外殻に対して前記中栓を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要な中栓回転トルクをT2とすると、
T2/T1は、1.2以上である、二重容器。
【請求項8】
請求項6に記載の二重容器であって、
シュリンクフィルムを備え、
前記シュリンクフィルムは、前記容器本体と前記中栓を覆って前記オーバーキャップは覆わない被覆状態で装着されるか、又は前記シュリンクフィルムの一部を除去した後に前記被覆状態になるように易切断線が設けられる、二重容器。
【請求項9】
容器本体と、口部装着部材と、前記容器本体及び前記口部装着部材を覆うように装着されるシュリンクフィルムを備える、二重容器であって、
前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、
前記口部装着部材は、中栓と、オーバーキャップを備え、
前記中栓は、前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、
前記オーバーキャップは、前記中栓に対して係合されており、
前記外殻に対して前記中栓を回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成され、
前記シュリンクフィルムは、前記容器本体と前記中栓を覆って前記オーバーキャップは覆わない被覆状態で装着されるか、又は前記シュリンクフィルムの一部を除去した後に前記被覆状態になるように易切断線が設けられる、二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、外殻プリフォームと内袋プリフォームとを重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行うことによって形成した二重容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-10741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二重容器の外殻と内袋とが別素材で成形されている場合や、使用後の内袋内に内容物が付着している場合等において、当該二重容器をリサイクルする際には、外殻と内袋とを分離することが望まれる。
【0005】
外殻と内袋は、内袋を容器本体から引き抜くことによって分離することが想定されており、内袋を容器本体から引き抜きやすくすることが望まれている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内袋を容器本体から引き抜きやすい、二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、打栓式で前記容器本体の口部に装着されており、前記口部装着部材を前記外殻に対して回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器。
[2][1]に記載の二重容器であって、前記口部装着部材は、前記口部装着部材が前記容器本体の口部に装着された時点での前記口部装着部材と前記外殻の係合関係の状態のまま、前記回転が可能に構成される、二重容器。
[3][1]又は[2]に記載の二重容器であって、前記口部装着部材は、前記口部装着部材を前記容器本体に対して回転させる前に前記口部装着部材と前記外殻との係合力を弱める操作を行うことなく、前記回転が可能に構成される、二重容器。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の二重容器であって、前記口部装着部材は、打栓式で前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、前記口部装着部材の回転に伴って前記内袋が前記外殻に対して回転するように構成され、前記内袋と前記外殻の間に設けられたカム機構の作用により、前記内袋の回転に伴って前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器。
[5][1]~[4]の何れか1つに記載の二重容器であって、前記口部装着部材の回転は、正ネジ緩め方向の回転である、二重容器。
[6][1]~[5]の何れか1つに記載の二重容器であって、前記口部装着部材は、中栓と、オーバーキャップを備え、前記中栓は、打栓式で前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、前記オーバーキャップは、前記中栓に対して螺合されており、前記中栓に対して前記オーバーキャップを正ネジ緩め方向に回転させることによって、前記オーバーキャップと前記中栓が螺合解除可能に構成され、前記外殻に対して前記中栓を正ネジ緩め方向に回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器。
[7][6]に記載の二重容器であって、前記中栓に対して前記オーバーキャップを初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要なオーバーキャップ回転トルクをT1とし、前記外殻に対して前記中栓を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要な中栓回転トルクをT2とすると、T2/T1は、1.2以上である、二重容器。
[8][6]又は[7]に記載の二重容器であって、シュリンクフィルムを備え、前記シュリンクフィルムは、前記容器本体と前記中栓を覆って前記オーバーキャップは覆わない被覆状態で装着されるか、又は前記シュリンクフィルムの一部を除去した後に前記被覆状態になるように易切断線が設けられる、二重容器。
[9]容器本体と、口部装着部材と、前記容器本体及び前記口部装着部材を覆うように装着されるシュリンクフィルムを備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、中栓と、オーバーキャップを備え、前記中栓は、前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、前記オーバーキャップは、前記中栓に対して係合されており、前記外殻に対して前記中栓を回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成され、前記シュリンクフィルムは、前記容器本体と前記中栓を覆って前記オーバーキャップは覆わない被覆状態で装着されるか、又は前記シュリンクフィルムの一部を除去した後に前記被覆状態になるように易切断線が設けられる、二重容器。
【0008】
本発明では、打栓式で容器本体に装着された口部装着部材を、外殻に対して回転させると内袋が容器本体から抜け出す方向に移動するので、内袋を容器本体から引き抜きやすい、。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の二重容器1の斜視図である。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
図2図1の分解斜視図である。
図3図2中の領域Aの拡大図である。
図4図3の分解斜視図である。内袋4は、開口端5c近傍の一部のみを図示している。
図5】外殻3の開口端近傍の斜視図である。
図6】オーバーキャップ27及び中栓26を斜め下側から見た斜視図である。
図7図7Aは、中栓26が内袋4に装着された状態を示す。内袋4は、口部5近傍を示す斜視図であり、中栓26は、縦断面斜視図である。図7Bは、中栓26の縦断面斜視図である。
図8】オーバーキャップ27を開封する前の時点での、図1に示す二重容器1の、口部5の中心を通る縦断面図である。
図9】容器本体2と口部装着部材8を覆うようにシュリンクフィルム33が装着された状態の正面図である。
図10】容器本体2を下側から見た斜視図である。
図11】容器本体2の口部5の中心を通る縦断面図である。
図12図12A図12Cは、それぞれ、図11中のA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図である。
図13】内袋4を外殻3に対して回転させたときに折れ曲がり形状2cが形成されやすいことを示す図12Cに対応する断面図である。
図14】内袋4にキャップ8aが装着された状態の斜視図である。
図15】内袋4の層構成を示す図である。
図16】内プリフォーム14及び外プリフォーム13が分離されている状態を示す斜視図である。
図17図17Aは、内プリフォーム14の正面図であり、図17Bは、内プリフォーム14の右側面図であり、図17C図17Dは、内プリフォーム14の底部近傍を斜め下から見た斜視図である。
図18】内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって構成されたプリフォーム15を示す斜視図である。
図19】開状態の分割金型35,36の間に筒状パリソン34が配置されている状態の断面図である。
図20】分割金型35,36を閉状態にしてエアーを吹き込むことによって成形体38を形成した後の断面図である。
図21図21Aは、図20の状態から成形体38を分割金型35,36から取り出すと共にバリ39を除去した後の状態を示す断面図である。図21Bは、図21A中の領域Bの拡大図である。
図22図22Aは、図21の状態から袋部40を切除して内プリフォーム14を形成した後の状態を示す断面図である。図22Bは、図22A中の領域Bの拡大図である。図22Cは、内プリフォーム14の開口端にバリ14pが残っている場合の、図22Bに対応する図である。
図23図23Aは、突出シール部42に延伸抑制構造が設けられていない形態での、図22A中の領域Aに対応する部位の拡大図である。図23Bは、二軸延伸ブロー成形後の図23Aに対応する部位を示す。
図24図24Aは、図22A中の領域Aの拡大図である。図24Bは、図24Aの状態から、突出シール部42を屈曲させて延伸抑制構造を形成した後の状態を示し、図24Cは、延伸抑制構造を導入した内プリフォーム14を二軸延伸ブロー成形した後の図24Bに対応する部位を示す。
図25図25Aは、本発明の第2実施形態での内プリフォーム14の底部近傍の斜視図である。図25Bは、図25Aの内プリフォーム14の、突出シール部42の長手方向に垂直な断面の断面図である。図25Cは、図25B中の領域Cの拡大図である。この形態では、突出シール部42が後加工なしの状態で延伸抑制構造となっている。
図26図26Aは、本発明の第3実施形態での内プリフォーム14の底部近傍の斜視図である。図26Bは、図26Aの内プリフォーム14の、突出シール部42の長手方向に垂直な断面の断面図である。図26Cは、図26B中の領域Cの拡大図である。図26Dは、図26C中の突出シール部42を再溶融させて延伸抑制構造を形成した後の状態を示す。
図27図27Aは、本発明の第4実施形態での内プリフォーム14の底部近傍の斜視図である。図27Bは、図27Aの内プリフォーム14の、突出シール部42の長手方向に垂直な断面の断面図である。図27Cは、図27B中の領域Cの拡大図である。図27Dは、図27C中の突出シール部42を屈曲させて延伸抑制構造を形成した後の状態を示す。
図28図28Aは、本発明の第5実施形態での内プリフォーム14の底部近傍の斜視図である。図28Bは、図28Aの内プリフォーム14の、突出シール部42の長手方向に垂直な断面の断面図である。図28Cは、図28B中の領域Cの拡大図である。図28Dは、図28C中の突出シール部42を屈曲させて延伸抑制構造を形成した後の状態を示す。
図29】本発明の第6実施形態での内プリフォーム14の斜視図である。
図30】本発明の第7実施形態での内プリフォーム14及び外プリフォーム13の斜視図である。
図31】突出シール部42が延伸抑制構造を有しない点以外は、本発明の第7実施形態と同様の構成の内プリフォーム14及び外プリフォーム13の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
以下の示す実施形態では、第1~第9観点の発明が開示され、特許請求の範囲は、その少なくとも一部に関連する。第1~第5実施形態は、第1~第9観点に関連する。第6~第7実施形態は、第1~第3及び第5~第9観点に関連する。
【0012】
(第1観点)
本観点では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して、内袋とこれを覆う外殻を有する容器本体を製造する工程を備える、二重容器の製造方法であって、前記内プリフォームは、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形によって形成され、前記内プリフォームには、前記筒状パリソンの内面同士が溶着して構成されたシール部が前記内プリフォームの本体部から突出する突出シール部が設けられ、前記突出シール部には、前記二軸延伸ブロー成形の際に前記シール部が延伸されることを抑制する延伸抑制構造が設けられている、方法が提供される。
【0013】
(第2観点)
本観点では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して、内袋とこれを覆う外殻を有する容器本体を製造する工程を備える、二重容器の製造方法であって、前記内プリフォームは、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形によって形成され、前記内プリフォームの口部には、前記容器本体から前記内袋を引き抜くために用いられる係合部が設けられ、前記内プリフォームの前記口部での外径が最大の部位の外径をD1とし、前記内プリフォームの全高をHとし、前記内プリフォームの底部からの高さが0.1Hである高さ位置での、前記内プリフォームの外径をD2とすると、D2/D1が0.35以上である、方法が提供される。
【0014】
(第3観点)
本観点では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して、内袋とこれを覆う外殻を有する容器本体を製造する工程を備える、二重容器の製造方法であって、前記内プリフォームは、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形によって形成され、前記内袋は、肉厚が100μm以下となる薄肉部位を含み、前記内プリフォームには、前記薄肉部位に対応する部位を含む領域の外面に、凹凸形状が設けられているか、又は滑剤が存在している、方法が提供される。
【0015】
(第4観点)
本観点では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して、内袋とこれを覆う外殻を有する容器本体を製造する工程を備える、二重容器の製造方法であって、前記内プリフォームは、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形によって形成され、前記内プリフォームの口部には、前記容器本体から前記内袋を引き抜くために用いられる係合部が設けられ、前記内プリフォームの前記口部での外径が最大の部位の外径をD1とし、前記筒状パリソンの外径をD3とすると、D1/D3は、1.5以上であり、前記内プリフォームの開口端には、前記口部の変形を抑制する拡径構造が設けられている、方法が提供される。
【0016】
(第5観点)
本観点では、容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、打栓式で前記容器本体の口部に装着されており、前記口部装着部材を前記外殻に対して回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成される、二重容器が提供される。
【0017】
(第6観点)
本観点では、容器本体と、口部装着部材と、前記容器本体及び前記口部装着部材を覆うように装着されるシュリンクフィルムを備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、中栓と、オーバーキャップを備え、前記中栓は、前記内袋の口部に周方向及び軸方向に係合されており、前記オーバーキャップは、前記中栓に対して係合されており、前記外殻に対して前記中栓を回転させることによって、前記内袋が前記容器本体から抜け出す方向に移動するように構成され、前記シュリンクフィルムは、前記容器本体と前記中栓を覆って前記オーバーキャップは覆わない被覆状態で装着されるか、又は前記シュリンクフィルムの一部を除去した後に前記被覆状態になるように易切断線が設けられる、二重容器が提供される。
【0018】
(第7観点)
本観点では、二重容器内の内容物の吐出方法であって、前記二重容器は、容器本体と、前記容器本体の口部に装着されたキャップを備え、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記内容物は、前記内袋内に収容されており、前記キャップは、前記内袋に係合されており、引抜工程と、吐出工程を備え、前記引抜工程では、前記内袋内に前記内容物の一部が残存した状態で、前記キャップが前記内袋に係合された状態で、前記内袋を前記容器本体から引き抜き、前記吐出工程では、前記容器本体から引き抜いた後に、前記内袋に残存している前記内容物を吐出させる、方法が提供される。
【0019】
(第8観点)
本観点では、容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記容器本体の全高をJとすると、前記容器本体の底面から0.2Jの位置の断面において、前記容器本体は、周方向に間隔をおいて設けられた3つ以上の角部を有し、前記角部と角部の間には、前記角部よりも曲率半径が大きい連結部が設けられている、二重容器が提供される。
【0020】
(第9観点)
本観点では、容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記内袋は、前記容器本体の内側から順に、内側層と、ガスバリア層と、外側層を備える、二重容器が提供される。
【0021】
1.第1実施形態
1-1.二重容器1の構成
<基本構成>
図1に示すように、本発明の第1実施形態の二重容器1は、容器本体2と、口部装着部材8を備える。
【0022】
図2図3に示すように、容器本体2は、口部5と、胴部6と、底部7を備える。口部5は、開口端5cを有する筒状(好ましくは円筒状)部位である。口部5は、キャップやポンプなどの口部装着部材8を装着可能な係合部4mを備える。係合部4mの詳細は、後述する。口部5には、フランジ5bが設けられている。フランジ5bは、口部5に口部装着部材8を装着する際に口部5を支持するために利用可能である。
【0023】
胴部6は、口部5よりも開口端5cから離れた側に口部5に隣接して配置される。胴部6は、口部5よりも外径(本明細書において、「外径」は、断面が円形でない場合は、円相当径を意味する。)が大きい。胴部6は筒状であり、底部7は、胴部6の下端に設けられ、胴部6の下端を閉塞する。胴部6は、口部5から離れるにつれて外径が大きくなる肩部6bを備える。また、胴部6は、肩部6bよりも底部7側に、胴部本体6cを備える。胴部本体6cは、例えば、底部7に向かって外径が略一定である形状であるか、又は底部7に向かって縮径する形状である。
【0024】
図4に示すように、容器本体2は、内袋4と、内袋4を覆うように配置された外殻3を備える。内袋4は、突出部4c以外の内袋本体4dが外殻3内に収容されている。以下の説明では、内袋4のうち、容器本体2の口部5、胴部6、及び底部7に相当する部位をそれぞれ、内袋4の口部5、胴部6、及び底部7のように称する。外殻3についても同様である。
【0025】
胴部6の高さ方向の中央での外殻3の平均肉厚は、例えば、200~800μmであり、250~500μmが好ましいこの肉厚は、具体的には例えば、具体的には例えば、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
胴部6の高さ方向の中央での内袋4の平均肉厚は、例えば、50~250μmであり、50~100μmが好ましい。この肉厚は、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。本明細書において、所定の高さ位置での平均肉厚は、その高さ位置で周方向に等間隔に設定した8つの測定点での測定値の平均値を意味する。
【0027】
口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合は、内袋4の内容物を吐出した後にも内袋4が収縮しないので、外殻3の口部5を通じて、内袋4を引き出すことが容易でない。本発明は、内袋4を外殻3の口部5を通じて引き出すことを容易にするものであるので、口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合に、本発明を適用する意義が特に顕著である。
【0028】
外殻3の口部5の内径は、例えば20~50mmであり、25~40mmが好ましい。外殻3の口部5の内径は、具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部5の長さは、例えば15~45mmであり、具体的には例えば、15、20、25、30、35、40、45mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
<外殻3と内袋4の詳細構造>
図3図4に示すように、内袋4は、外殻3の開口端3aから突出する突出部4cを備える。突出部4cは、突出筒4c1と、係合凸部4c2と、環状凸部4c5と、当接フランジ4c4を備える。
【0030】
環状凸部4c5は、口部装着部材8と軸方向に係合する。係合凸部4c2は、口部装着部材8と周方向に係合する。本明細書において、「軸方向」とは、口部5の中心軸Cが延びる方向であり、言い換えると、容器本体2から内袋4を引き抜く方向である。「周方向」とは、口部5の中心軸Cを中心として回転させる方向であり、言い換えると、口部5において内袋4を外殻3に対して、回転させる方向である。
【0031】
係合凸部4c2は、周方向に離間されて複数箇所(本実施形態では8箇所)に設けられることが好ましい。係合凸部4c2は、環状凸部4c5上に配置され、環状凸部4c5から径方向外側に向かって突出するように設けられる。環状凸部4c5及び係合凸部4c2は、上面にテーパー面4c8,4c3が設けられている。これによって、後述するように、口部装着部材8の環状凸部28c(図7Aに図示)が環状凸部4c5及び係合凸部4c2を乗り越えやすくなっている。
【0032】
また、図7Aに示すように、係合凸部4c2の下面4c6は、環状凸部4c5の下面4c7と面一であるか、環状凸部4c5の下面4c7よりも内袋4の開口端に近い位置に設けられている。このような構成によれば、環状凸部4c5と口部装着部材8の軸方向の係合が、係合凸部4c2によって補強されるので、口部装着部材8と内袋4との係合が強固になる。
【0033】
当接フランジ4c4は、開口端3aに当接する位置に配置され且つ突出筒4c1よりも拡径された環状部位である。当接フランジ4c4が開口端3aに当接することによって、内袋4が外殻3内に脱落することが回避される。
【0034】
図4に示すように、内袋本体4dの外周面には、カム凸部4gと、係合凸部4hが設けられている。係合凸部4hは、カム凸部4g上に設けられている。カム凸部4gと係合凸部4hのそれぞれの下面は、それぞれ、口部5の開口端5c側から見て、反時計周りに進むにつれて開口端5cに近づくように傾斜している。
【0035】
図5に示すように、外殻3の内周面には、カムレール3lと、係合凹部3mと、係合凸部3nが設けられている。係合凹部3mは、係合凹部3mの下面がカムレール3lの上面と連続するように設けられている。カムレール3lの上面及び係合凹部3mの下面は、開口端3a側から見て、反時計周りに進むにつれて開口端3aに近づくように傾斜している。係合凸部3nは、係合凹部3mに隣接した位置に配置されている。
【0036】
内袋4を容器本体2から引き抜く前の状態では、係合凸部4hが係合凹部3m内に配置されており、カム凸部4gの下面がカムレール3lの上面に当接している。カム凸部4gとカムレール3lによって、カム機構31が構成される。本実施形態では、係合凹部3mは貫通孔であるが、非貫通孔であってもよい。
【0037】
内袋4を反時計回りに回転させようとすると、係合凸部4hが係合凸部3nに当接して、回転が規制される。この規制は強固ではなく、強めのトルク(後述する中栓回転トルクT2以上のトルク)を内袋4に加えると、係合凸部4hが係合凸部3nを乗り越え、内袋4が外殻3に対して自由に回転可能となる。そして、内袋4を反時計回りにさらに回転させると、内袋4がカム機構31の作用によって容器本体2から抜け出す方向に移動する。この際に、内袋4が捻られて縮径される。
【0038】
内袋4の開口端4lには、拡径構造4kが設けられている。拡径構造4kによって、内袋4の口部5の剛性が高まり、内袋4の口部5の変形が抑制される。本実施形態では、内袋4に設けた係合部4m(より詳しくは環状凸部4c5及び係合凸部4c2)を用いて内袋4の引き抜きを行うので、内袋4に高い荷重が加わる場合があり、その場合に、内袋4の開口端4lが変形しやすいと内袋4を引き抜きにくくなる場合があるが、本実施形態では、内袋4の開口端4lの変形が抑制されるので、内袋4のスムーズな引き抜きが可能になる。
【0039】
<単純操作による内袋4の引き抜き>
口部装着部材8は、打栓式で容器本体2の口部5に装着可能に構成されており、口部装着部材8を口部5に被せた状態で、口部装着部材8を底部7の方向に押圧することによって、口部装着部材8を口部5に係合させて装着することができる。打栓式の口部装着部材8は、押圧するだけで装着可能であるので、内容物の充填ラインでの口部装着部材8の装着工程の単純化が可能であるという利点がある。
【0040】
ところで、打栓式の口部装着部材は、一般に、中栓から分離可能な分別バンドを備えていて、分別バンドの係合部を外殻の係合部に係合させることによって、容器本体に装着するように構成されている。そして、口部装着部材を口部から取り外す際には、最初に中栓と分別バンドの間の連結部を引き裂いて分別バンドを除去することによって、口部装着部材と外殻の係合力を弱める(通常は係合を解除する)操作を行い、その後に、口部装着部材を口部から取り外す操作を行う。しかし、口部装着部材を口部から取り外す操作を行う前に、口部装着部材と外殻の係合力を弱める操作を行うのは煩わしい。係合力を弱める操作は、例えば分別バンドを除去せずに、分別バンドに切れ込みを入れることによって、分別バンドと外殻の係合力を弱めるような操作であってもよい。
【0041】
本実施形態では、このような問題を解決すべく、口部装着部材8を外殻3に対して回転させることによって、内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動する(つまり、内袋4を浮き上がらせる)ように構成した上で、口部装着部材8を容器本体2に対して回転させる前に口部装着部材8と外殻3との係合力を弱める操作を行うことなく、口部装着部材8を外殻3に対して回転させることを可能にしている。つまり、口部装着部材8が容器本体2の口部5に装着された時点での口部装着部材8と外殻3の係合関係の状態のまま、口部装着部材8の回転が可能になっている。
【0042】
より具体的には、口部装着部材8は、打栓式で内袋4の口部5に周方向及び軸方向に係合されており、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が外殻3に対して回転するように構成されている。そして、内袋4と外殻3の間に設けられたカム機構31の作用により、内袋4の回転に伴って内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動するように構成される。
【0043】
このような構成によれば、分別バンドの除去のような面倒な操作を事前に行うことなく、口部装着部材8を回転させるだけで、内袋4を容器本体2から抜け出る方向に移動させることができ、その後は、口部装着部材8を引っ張ることによって、内袋4を容器本体2から引き抜くことができる。つまり、口部装着部材8を回して引っ張るだけで、内袋4の引き抜きができるので、内袋4の引き抜きに必要な操作が非常に単純になる。この際の口部装着部材8の回転は、正ネジ緩め方向(つまり、二重容器1の上側から見て反時計回り方向)の回転であることが好ましい。この場合、内袋4が容器本体2から抜け出る方向に移動することが感覚的に理解しやすいという利点がある。
【0044】
また、容器本体2の胴部6は、口部5よりも外径が大きいので、単に、内袋4を引っ張るだけでは、外殻3の口部5を通じて内袋4を引き出すことは容易ではないが、内袋4の口部5を回転させて内袋4を捻って内袋4の胴部6を縮径させることによって、内袋4の胴部6が外殻3の口部5を通過しやすくなり、容器本体2から内袋4を容易に引き出すことができる。
【0045】
<口部装着部材8の詳細構造>
図2に示すように、本実施形態では、口部装着部材8は、キャップ8aであり、中栓26と、オーバーキャップ27を備える。中栓26は、打栓式で内袋4の口部5に周方向及び軸方向に係合されている。オーバーキャップ27は、中栓26に対して螺合されている。
【0046】
図2図6及び図8に示すように、オーバーキャップ27は、外筒27aと、中間筒27bと、内筒27cと、天板27dを備える。
【0047】
外筒27aの外周面には、ローレット27eが設けられており、オーバーキャップ27を把持して回転させやすくなっている。外筒27aの内周面には、雌ネジ部27fが設けられている。天板27dは、外筒27aの上面に設けられている。天板27dの下面には中間筒27b及び内筒27cが設けられている。中間筒27bは、外筒27aよりも直径が小さく、外筒27aの内部に配置される、いわゆるインナーリングである。内筒27cは、中間筒27bよりも直径が小さく、中間筒27bの内部に配置される。
【0048】
図2及び図6図8に示すように、中栓26は、本体部28と、開栓部32を備える。本体部28と開栓部32は、易引裂性の連結部30を介して互いに連結されている。
【0049】
本体部28は、外筒28aと、内筒28bと、環状凸部28cと、係合凸部28dと、天板28eと、吐出筒28fと、取付筒28gを備える。開栓部32及び連結部30は、吐出筒28f及び内筒28bの内側に配置されている。開栓部32には、不図示の係合部が設けられた係合筒32aが設けられており、内筒27cと係合筒32aが周方向及び軸方向に係合している。このような構成によれば、オーバーキャップ27を本体部28に対して回転させることによって、係合筒32aを本体部に対して回転させて、連結部30を破断させることが可能になる。連結部30を破断させることによって、開栓部32が本体部28から分離され、吐出筒28f及び内筒28bの内側に流通孔が形成される。内袋4内の内容物は、この流通孔を通じて吐出することができる。
【0050】
外筒27aの外周面には、ローレット28iが設けられており、中栓26を把持して回転させやすくなっている。天板28eは、外筒28aの上面に設けられる。天板28eの下面には内筒28bが設けられている。内筒28bは、外筒28aよりも直径が小さく、外筒28aの内部に配置される、いわゆるインナーリングである。中栓26を口部5に装着すると、内筒28bが内袋4内に挿入され、内筒28bの外周面が内袋4の内周面に密着する。
【0051】
天板28eの上面には、吐出筒28fと取付筒28gが設けられている。内袋4内の内容物は、吐出筒28fを通って吐出される。図2に示すように、取付筒28gの外周面には、雄ネジ部28hが設けられており、雄ネジ部28hが、オーバーキャップ27の外筒27aの内周面に設けられた雌ネジ部27fと係合することによって、オーバーキャップ27が中栓26に螺合される。この場合、オーバーキャップ27を中栓26に対して相対回転させることによって、オーバーキャップ27を中栓26に対して着脱させることができる。オーバーキャップ27を中栓26に装着すると、中間筒27bが吐出筒28f内に挿入され、中間筒27bの外周面が吐出筒28fの内周面に密着する。吐出筒28fの上側がオーバーキャップ27によって閉塞される。
【0052】
環状凸部28cは、外筒28aの内周面に周方向に延びるように設けられる環状の凸部である。環状凸部28cが係合凸部4c2と軸方向に係合することによって、本体部28が内袋4の口部5に軸方向に係合する。係合凸部28dは、周方向に離間されて複数箇所(本実施形態では8箇所)に設けられることが好ましい。係合凸部28dは、環状凸部28c上に配置され、環状凸部28cから径方向内側に向かって突出するように設けられる。係合凸部28dは、隣接する係合凸部4c2の間に配置され、これによって、本体部28が内袋4の口部5に周方向に係合する。
【0053】
<オーバーキャップ27と中栓26の回転方向及びトルク>
オーバーキャップ27は、好ましくは、正ネジによって中栓26に螺合されている。このため、中栓26に対してオーバーキャップ27を正ネジ緩め方向に回転させることによって、オーバーキャップ27と中栓26の螺合を解除することができる。また、外殻3に対して中栓26を正ネジ緩め方向に回転させることによって、内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動するように構成される。このように、正ネジ緩め方向にオーバーキャップ27を回転させることによって、オーバーキャップ27を取り外すことができ、正ネジ緩め方向に中栓26を回転させることによって、内袋4を浮き上がらせることができる。どちらも同じ回転方向の操作であるので、操作が単純であるという利点がある。
【0054】
一方、上記構成の場合、容器本体2とオーバーキャップ27を把持してオーバーキャップ27を正ネジ緩め方向に回転させると、オーバーキャップ27が中栓26に対して相対回転せずに、オーバーキャップ27と中栓26が一緒に容器本体2に対して相対回転し、その結果、内袋4が浮き上がってしまう虞がある。
【0055】
このような問題の発生を抑制すべく、本実施形態では、中栓26に対してオーバーキャップ27を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要なオーバーキャップ回転トルクをT1とし、外殻3に対して中栓26を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要な中栓回転トルクをT2とすると、T2/T1は、1.2以上であることが好ましい。オーバーキャップ回転トルクT1以上のトルクをオーバーキャップ27に加えることによって、オーバーキャップ27を緩め方向に回転させることができる。中栓回転トルクT2以上のトルクを中栓26に加えることによって、中栓26を緩め方向に回転させることができる。
【0056】
この場合、容器本体2とオーバーキャップ27を把持してオーバーキャップ27を正ネジ緩め方向に回転させると、外殻3に対して中栓26が回転する前に、オーバーキャップ27が中栓26に対して回転するので、上記問題の発生が抑制される。T2/T1は、例えば、1.2~5であり、1.5~3が好ましい。T2/T1は、具体的には例えば、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0057】
T1は、例えば、40~120N・cmであり、60~100N・cmが好ましい。T2は、例えば、100~200N・cmであり、130~170N・cmが好ましい。T1は、具体的には例えば、40、50、60、70、80、90、100、110、120N・cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上若しくは以下であってもよい。T2は、具体的には例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200N・cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上若しくは以下であってもよい。
【0058】
オーバーキャップ回転トルクT1は、本実施形態では、連結部30を破断させて開栓部32を本体部28から分離するのに必要なトルクである。別の実施形態では、中栓26に開栓部32を設ける代わりに、オーバーキャップ27に易引裂性の連結部を介して開封リングが設けられ、開封リングが中栓26に周方向に係合する。このような形態では、薄肉部を破断させて開封リングをオーバーキャップ27から分離するのに必要なトルクがオーバーキャップ回転トルクT1となる。また、さらに別に実施形態では、中栓26に対するオーバーキャップ27の回転を規制する回転規制構造が設けられており、回転規制構造による回転の規制が所定のトルクで解除される場合(例えばオーバーキャップ27の凸部と中栓26の凸部が当接することで回転が規制され、オーバーキャップ27の凸部が中栓26の凸部を乗り越えることで、回転の規制が解除される場合)、規制解除に必要なトルクがオーバーキャップ回転トルクT1となる。
【0059】
中栓回転トルクT2は、本実施形態では、係合凸部4hが係合凸部3nを乗り越えるのに必要なトルクである。別の実施形態では、例えば、中栓26と外殻3を周方向に係合させ、中栓回転トルクT2を加えると係合が解除されるように構成してもよい。
【0060】
また、内袋4に対して中栓26を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要なオーバーターントルクをT3とすると、T3/T2は、1.2以上であることが好ましい。これによって、中栓26が内袋4に対して空回りすることが抑制される。T3/T2は、例えば、1.2~5であり、1.5~3が好ましい。T3/T2は、具体的には例えば、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0061】
T3は、例えば200N・cm以上であり、200~1000N・cmが好ましく、具体的には例えば、200、250、300、350、400、500、1000N・cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。オーバーターントルクT3は、本実施形態では、係合凸部28dが係合凸部4c2を乗り越えるのに必要なトルクである。
【0062】
<シュリンクフィルムを用いた誤操作抑制>
ところで、オーバーキャップ27を把持して回転させるつもりが、誤って中栓26を把持して回転させてしまう虞がある。この場合、中栓26の回転に伴って内袋4が捻れて内容物が溢れてしまう虞がある。
【0063】
本実施形態では、図9に示すように、シュリンクフィルム33を用いて、このような問題の発生を抑制している。本実施形態では、開封前の状態では、シュリンクフィルム33は、容器本体2と、中栓26と、オーバーキャップ27を覆っている。シュリンクフィルム33には、易切断線33a,33bが設けられている。易切断線33a,33bは、ミシン目やハーフカットラインなどの、シュリンクフィルムの切断を容易にする線で構成される。易切断線33aは、中栓26とオーバーキャップ27の境界又は中栓26に対向する位置において、中栓26の周方向に延びるように設けられる。このような易切断線33aに沿ってシュリンクフィルム33の一部(つまり、易切断線33aよりも上側の上側部位33c)を除去すると、シュリンクフィルム33は、中栓26を覆ってオーバーキャップ27は覆わない被覆状態となる。この状態では、中栓26を把持して回転させにくいので、誤って中栓26を回転させてしまうという誤操作を抑制することができる。なお、易切断線33aを設ける代わりに、シュリンクフィルム33の上縁が中栓26とオーバーキャップ27の境界又は中栓26に対向する位置に配置されるように、シュリンクフィルム33を装着するようにしてもよい。この場合、シュリンクフィルム33の一部を除去する前の状態で、中栓26を覆ってオーバーキャップ27は覆わない被覆状態が実現される。
【0064】
また、易切断線33bは、シュリンクフィルム33のうち易切断線33aよりも下側の下側部位33dの除去を容易にするために設けられる。易切断線33bは、易切断線33aと非平行に設けられ、易切断線33aに垂直に設けられることが好ましい。また、易切断線33bは、易切断線33aとつながっていることが好ましく、下側部位33dの下縁に到達することが好ましい。
【0065】
なお、シュリンクフィルムを用いた誤操作抑制は、キャップ8aが打栓式でない場合にも適用可能である。キャップ8aがネジ式である場合には、キャップ8aを外殻3の口部に螺合させることによって、キャップ8aが容器本体2に装着される。また、シュリンクフィルムを用いた誤操作抑制は、オーバーキャップが螺合ではなく、例えばスナップ係合によって中栓26に係合される場合にも適用可能である。さらに、中栓26を逆ネジ緩め方向に回転させることによって内袋4を浮き上がらせる構成の場合にも適用可能である。
【0066】
<容器本体2の形状>
本実施形態では、容器本体2は、図2及び図10図12に示すように、胴部6の形状が底部7に近づくにつれて、断面略四角形状(角が丸められた四角形状)になっている。より詳しくは、肩部6bの上端では、図12Aに示すように断面が円形になっており、図12Cに示すように胴部本体6cでは、図12Cに示すように断面略四角形状になっており、図2Bに示すように肩部6bの途中では、断面が円形と略四角形状の間の形状になっている。つまり、肩部6bでは、底部7に向かって容器本体2が拡径されながら、その形状が断面略四角形状に徐々に近づいている。また、底部7には凹部7aが設けられている。
【0067】
図12Cは、容器本体2の全高をJとすると、容器本体2の底面から0.2Jの位置の断面Pを示す。断面Pにおいて、容器本体2は、周方向に間隔をおいて設けられた3つ以上の角部2aを有し、角部2aと角部2aの間には、角部2aよりも曲率半径が大きい連結部2bが設けられている。内袋4も、容器本体2と同様の形状を有する。曲率半径は、別段の言及が無い限り、容器本体2の外面での値を意味する。
【0068】
このような形状の容器本体2において、内袋4を外殻3に対して反時計回りに回転させると、連結部2bは、角部2aよりも回転されやすいので、図13に示すように、連結部2bと角部2aの境界付近に折れ曲がり形状2cが形成されやすい。この状態でさらに内袋4を反時計回りに回転させると、内袋4の角部2aが折り畳まれるように内袋4が縮径され、内袋4を引き抜きやすくなる。本実施形態では、角部2aの数は4つであるが、角部2aの数が3つの場合でも、5つ以上の場合でも同様の作用効果が奏される。角部2aの数は、例えば3~12であり、3~6が好ましい。
【0069】
断面Pにおいて、連結部2bのうち最長のものの長さをL1とし、連結部2bのうち最短のものの長さをL2とすると、[(L1-L2)/L1]の値は、0.1以下であることが好ましい。この場合、全ての連結部2bの長さがほぼ同じになり、断面が略正多角形状となる。この場合、連結部2bが一層回転されやすいので、内袋4の角部2aが一層折り畳まれやすくなる。
【0070】
断面Pにおいて、角部2aでの曲率半径が最小となる部位の曲率半径をR1とし、連結部2bでの曲率半径が最大となる部位での曲率半径をR2とすると、R2/R1は、3以上であることが好ましい。この場合、内袋4の角部2aが一層折り畳まれやすくなる。連結部2bは、平坦面であってもよく、その場合、曲率半径は無限大となる。角部2aは、容器本体2の外側に向かって凸であることが好ましい。連結部2bは、外側に向かって凸であっても、平坦であっても、内側に向かって凸であってもよい。R2/R1は、例えば、3~1000であり、具体的には例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、100、500、1000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0071】
曲率半径R1は、例えば、5~20mmであり、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。曲率半径R2は、例えば、30mm以上であり、30~200mmが好ましく、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。断面Pでの容器本体2の円相当半径をR3とすると、R1/R3は、例えば0.2~0.6であり、具体的には例えば、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。円相当半径R3は、例えば、15~40mmであり、具体的には例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0072】
断面Pにおいて、角部2aでの内袋4の肉厚が最小となる部位の肉厚をT1とし、連結部2bでの内袋4の肉厚が最大となる部位での肉厚をT2とすると、T1/T2は、0.90以下が好ましい。断面Pにおいて、全ての角部2aでの内袋4の肉厚の平均値をT1aとし、全ての連結部2bでの内袋4の肉厚の平均値をT2aとすると、T1a/T2aは、0.90以下が好ましい。この場合に、内袋4の角部2aが一層折り畳まれやすくなる。T1/T2又はT1a/T2aは、それぞれ、例えば、0.40~0.90であり、具体的には例えば、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。T1及びT1aは、それぞれ、95μm以下が好ましい。T1及びT1aは、それぞれ、例えば、50~95μmであり、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。T2及びT2aは、それぞれ、例えば、60~150μmであり、具体的には例えば、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0073】
<二重容器1内の内容物の吐出方法>
上述の通り、本実施形態の二重容器1では、口部装着部材8を用いて、内袋4を容器本体2から引き抜くことができる。図14に示すように、引き抜いた後の内袋4には、口部装着部材8が係合されたままになっている。
【0074】
口部装着部材8がキャップ8aである場合、内袋4内に内容物の一部が残存した状態で内袋4を容器本体2から引き抜き(引抜工程)、その後に、内袋4に残存している内容物を吐出させることができる(吐出工程)。
【0075】
内袋4は、外殻3に比べて柔軟性が高いので、内袋4を絞ったり圧縮したりすることによって、内容物を吐出させやすく、さらなる吐出が不可となる時点で残留量(以下、「最終残留量」)を低減することができる。
【0076】
最終残留量は、一般に、粘度が高いほど多くなる傾向があるが、本実施形態の方法によれば、粘度が高い場合でも、最終残留量の増大が抑制可能である。従って、本実施形態の方法は、内容物が高粘度(例えば100mPa・秒以上である場合に、技術的意義が顕著である。内容物の粘度は、例えば100~10000mPa・秒であり、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000mPa・秒であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0077】
ところで、容器本体2の底部7には、図10に示すように、円錐台形状の凹部7aが設けられている。凹部7aは、内袋4の底部7にも設けられる。円錐台形状の凹部7aは、横断面(中心軸Cに垂直な断面)が円形であるので、変形させにくく、内袋4に円錐台形状の凹部7aが存在していると、最終残留量の低減が不十分になる虞がある。このような観点では、容器本体2の底部には、扁平形状の横断面を有する凹部を設けることが好ましい。このような凹部は、円形の横断面を有する凹部よりも変形させやすいので、最終残留量をさらに低減させることができる。
【0078】
また、内袋4とキャップ8aの係合力が弱いと、内袋4を引き抜いた後にキャップ8aが内袋4から外れて、内容物が内袋4から漏出してしまう虞がある。一方、本実施形態では、環状凸部4c5と口部装着部材8の軸方向の係合が、係合凸部4c2によって補強されているので、キャップ8aと内袋4との係合が強固になり、キャップ8aが内袋4から外れることが抑制される。
【0079】
<内袋4の肉厚>
内袋4は、肉厚が小さいことが好ましい。内袋4の肉厚が小さいほど、内袋4が柔軟になって最終残留量が低減されやすくなったり、樹脂の使用量の低減が可能になったりするからである。
【0080】
この観点では、内袋4は、肉厚が100μm以下となる薄肉部位を備えることが好ましい。また、薄肉部位は、胴部6の高さ方向の中央よりも底部側の位置に備えることが好ましい。薄肉部位の肉厚は、95μm以下が好ましく、90μm以下がさらに好ましく、例えば50~100μmであり、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0081】
<内袋4の層構成>
内袋4は、単層構成であっても、多層構成であってもよい。図15に示すように、内袋4は、内袋4の内側から順に、内側層4iと、ガスバリア層4jと、外側層4eを備えることが好ましい。
【0082】
内側層4iは、ガスバリア層4jよりも内袋4の内側に配置される層である。内袋4が内側層4iを備えることによって、内容物に含まれる水分にガスバリア層4jがさらされることが抑制される。
【0083】
内側層4iの肉厚は、例えば、5~60μmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。内側層4iは、好ましくは、内袋4の内側から順に、最内層4i1と、リプロ層4i2と、接着層4i3を備える。
【0084】
最内層4i1は、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン)やPETなどの水分バリア性に優れた樹脂で構成することが好ましい。最内層4i1は、内袋4内の内容物に接する層であり、内容物の汚染を抑制すべく、再生樹脂ではない新品の樹脂(以下「バージン樹脂」)で構成することが好ましい。
【0085】
リプロ層4i2は、再生樹脂を含む樹脂で構成され、再生樹脂とバージン樹脂で構成される混合樹脂で構成されることが好ましい。リプロ層4i2を設けることによって、環境負荷及び容器製造コストを低減させることができる。リプロ層4i2は、不要な場合は省略可能である。
【0086】
混合樹脂全体を100質量%とすると、混合樹脂は、再生樹脂を15~50質量%(15、20、25、30、35、40、45、50質量%)と、バージン樹脂50~85質量%(50、55、60、65、70、75、80、85質量%)含むことが好ましい。再生樹脂及びバージン樹脂の割合は、括弧内に例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。再生樹脂は、容器本体2の成形時に発生するスクラップを再生して得られる樹脂である。スクラップには、容器本体2の全層が含まれているので、再生樹脂は、容器本体2の全層のそれぞれを構成する樹脂組成物を混合したものとなる。
【0087】
接着層4i3は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着層4i3を設けることによって、接着層4i3に隣接する層間の接着性が向上する。
【0088】
外側層4eは、ガスバリア層4jよりも内袋4の外側に配置される層である。内袋4が外側層4eを備えることによって、外気に含まれる水分にガスバリア層4jがさらされることが抑制される。
【0089】
外側層4eの肉厚は、例えば、5~60μmであり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。外側層4eは、好ましくは、内袋4の外側から順に、最外層4e1と、接着層4e2を備える。
【0090】
最外層4e1は、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン)やPETなどの水分バリア性に優れた樹脂で構成することが好ましい。最外層4e1は、内袋4の外部に露出される層であり、外部環境の汚染を抑制すべく、バージン樹脂で構成することが好ましい。
【0091】
接着層4e2の説明は、接着層4i3と同様である。
【0092】
(内側層4iの肉厚/外側層4eの肉厚)の値は、例えば0.2~5であることが好ましい。この値は、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0093】
内側層4iが外側層4eよりも肉厚が大きい場合、ガスバリア層4jを内容物の水分からより確実に保護することができる。外側層4eが内側層4iよりも肉厚が大きい場合、ガスバリア層4jを外部の水分からより確実に保護することができる
【0094】
本実施形態では、内側層4iの肉厚を外側層4eよりも肉厚も大きくし、リプロ層4i2を内側層4iに配置することによって、リプロ層4i2の肉厚を比較的大きくすることを可能にしているが、リプロ層4i2は、内側層4iと外側層4eの両方に設けてもよく、外側層4eにのみ設けてもよい。また、リプロ層4i2は、ポストコンシューマー材のような内容物のへの匂いや成分移行が強い成分を含む可能性がある材料を含んでもよく、この場合、リプロ層4i2から内容物への匂いや成分移行を抑制すべく、リプロ層4i2は、外側層4eに配置されることが好ましい。この場合、外側層4eの肉厚を内側層4iの肉厚よりも厚くして、リプロ層4i2の樹脂の使用量が多くなるようにしてもよい。
【0095】
ガスバリア層4jは、ガスバリア性樹脂で構成される。本明細書において、ガスバリア性樹脂は、厚さ20μmのフィルムにした状態で、20℃・65%RHの環境下での酸素透過度が50cc/(m・24時間・atm)未満であるものを意味する。上記酸素透過度は、例えば0~49cc/(m・24時間・atm)であり、具体的には例えば、0.01、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、49cc/(m・24時間・atm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。
【0096】
ガスバリア性樹脂は、(20℃・100%RHの環境下での酸素透過度)/(20℃・40%RHの環境下での酸素透過度)の値が2以上であることが好ましく、5以上がさらに好ましい。この値が大きいほど、高湿化でのガスバリア性が低いことを意味し、本発明を適用する技術的意義が顕著である。この値は、例えば2~10000であり、具体的には例えば、2、5、10、20、50、100、200、1000、10000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0097】
ガスバリア性樹脂としては、EVOHや、ポリアミドのようなガスバリア性が高い樹脂のみで構成されていてもよく、上記樹脂と別の樹脂との混合樹脂であってもよい。別の樹脂としては、接着性樹脂が挙げられる。ガスバリア層4jに接着性樹脂を配合することによって、接着層4i3,4e2を省略することができ、内袋4を構成する層数をへらすことができる。
【0098】
ガスバリア層4jの厚さは、例えば、20~100μmであり、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0099】
1-2.二重容器1の製造方法
図16図18に示すように、容器本体2は、プリフォーム15を加熱して二軸延伸ブロー成形することによって形成することができる。
【0100】
<内プリフォーム14、外プリフォーム13,プリフォーム15の構成>
プリフォーム15は、一例では、内袋4となる内プリフォーム14に、外殻3となる外プリフォーム13を被せて構成することができる。
【0101】
図16に示すように、内プリフォーム14は、有底筒状であり、口部14aと、胴部14bと、底部14cを備える。口部14aの開口端には、突出部14dが設けられている。突出部14dは、成形時に変形せずにそのままの形状で突出部4cとなる。従って、突出部4cについて述べた事項は、突出部14dにも当てはまる。突出部14dには、係合部14mが設けられて。係合部14mは、成形後に係合部4mとなり、内袋4の引き抜きに用いられる。底部14cは、胴部14bの下端を閉じるように設けられる。底部14cには、位置決めピン(不図示)を設けてもよい。
【0102】
図16に示すように、外プリフォーム13は、有底筒状であり、口部13aと、胴部13bと、底部13cを備える。底部13cは、胴部13bの下端を閉じるように設けられる。底部13cには、環状凸部13d及び位置決め孔(不図示)が設けられている。
【0103】
図18に示すように、内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって、プリフォーム15を形成することができる。内プリフォーム14に位置決めピンが設けられている場合には、この位置決めピンを外プリフォーム13の位置決め孔に挿入して、内プリフォーム14と外プリフォーム13を互いに位置決めすることができる。プリフォーム15では、口部14aと口部13aが対向し、胴部14bと胴部13bが対向する。
【0104】
口部13a,14aがプリフォーム15の口部15aとなり、胴部13b,14bがプリフォーム15の胴部15bとなり、底部13c,14cがプリフォーム15の底部15cとなる。胴部15b及び底部15cが、二軸延伸ブロー成形において主に延伸される。
【0105】
<内プリフォーム14と外プリフォーム13の材料・製造方法>
内プリフォーム14及び外プリフォーム13は、ポリエステル(例:PET)やポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂のダイレクトブロー成形や射出成形等によって形成可能である。一例では、内プリフォーム14がポリオレフィン(例:ポリプロピレン)で構成され、外プリフォーム13はPETで構成される。内プリフォーム14に用いられるポリオレフィンは、ポリエチレンよりもポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンの方が、ポリエチレンよりも、二軸延伸ブロー成形に適した温度がPETに近いからである。
【0106】
<ダイレクトブロー成形による内プリフォーム14の製造>
内プリフォーム14は、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形で形成することが好ましい。ダイレクトブロー成形では、射出成形に比べて、薄肉化が容易であるので、ダイレクトブロー成形で内プリフォーム14を形成することによって、内袋4の薄肉化が可能である。また、多層構造の内袋4を形成すべく、内プリフォーム14は、図23に示すように、内側から順に、内側層14iと、ガスバリア層14jと、外側層14eを備える構成にすることが望ましいが、このような構成の内プリフォーム14は、多層射出成形で形成することが容易ではないことに加えて、例えば内プリフォーム14の底部14cにゲートを設けた場合、ガスバリア層14jを構成する樹脂が内プリフォーム14の開口端にまで到達せずにガスバリア性が低下してしまう虞がある。特に、内プリフォーム14の肉厚が小さくなるほど、樹脂が流動しにくくなり、上記問題が顕著になる。一方、ダイレクトブロー成形では、内側層14iと、ガスバリア層14jと、外側層14eに対応する構成を備えた筒状パリソンを用いて成形するので、ガスバリア層14jを内プリフォーム14の全体に渡って設けることが容易である。
【0107】
ダイレクトブロー成形は、図19に示すように開状態の分割金型35,36の間に溶融状態の筒状パリソン34を配置し、その後に図20に示すように分割金型35,36を閉状態にすることによって筒状パリソン34を袋状パリソンにし、袋状パリソン内にエアーを吹き込んで分割金型35,36の賦形面に沿って形状に成形することによって行うことができる。ダイレクトブロー成形によって、バリ39付きの成形体38が形成される。この後に、成形体38を分割金型35,36から取り出すと共に、バリ39を除去することによって、図21に示す成形体38が得られる。
【0108】
成形体38は、内プリフォーム14の開口端14oに袋部40が連なった形状を有する。内プリフォーム14と袋部40の境界には、切断部位を示す環状凹部41が設けられている。
【0109】
次に、図22に示すように、環状凹部41に沿って成形体38を切断し、袋部40を除去することによって内プリフォーム14が得られる。環状凹部41は、成形体38の外側では凹部であるが、成形体38の内側で環状凸部41aとなっており、環状凹部41に沿って成形体38を切断したときに、環状凸部41aが部分的に残留して、図22Cに示すように、内プリフォーム14の内側に向かって突出するバリ14pとなってしまったり、成形体38の内側に環状凸部41aが形成されていない場合でも切断時にバリ14pが形成されてしまう場合がある。内プリフォーム14の開口端14oに拡径構造14lが設けられていなければ、バリ14pによって中栓26の内筒28bの外周面と内袋4の内周面の密着が阻害される虞があるが、本実施形態では、バリ14pは、拡径構造14lに形成されるので、バリ14pが上記密着を阻害することがない。
【0110】
<内プリフォーム14の形状と筒状パリソン34の外径の関係>
図17Bに示すように、内プリフォーム14の口部14aでの外径が最大の部位の外径(当接フランジ14nでの外径)をD1とし、図19に示すように、筒状パリソン34の外径をD3とすると、D1/D3は、1.5以上であることが好ましい。D1/D3が大きいほど、内プリフォーム14を形成する際のブロー比が大きくなるので、内プリフォーム14の口部14aの肉厚が小さくなりやすい。内プリフォーム14の口部14aの肉厚が小さくと、口部14aの剛性が小さくなり、環状凹部41に沿って成形体38を切断する際に、口部14aが変形してしまって、切断を精度良く行いにくい場合がある。一方、本実施形態では、内プリフォーム14の開口端14oには、口部14aの変形を抑制する拡径構造14lが設けられているので、口部14aの変形が抑制される。
【0111】
D1/D3は、2以上が好ましく、2.5以上が好ましい。D1/D3は、例えば、1.5~4.0であり、具体的には例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。D1は、例えば、25~40mmであり、具体的には例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。D3は、例えば、8~25mmであり、具体的には例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0112】
内プリフォーム14は、開口端14oでの肉厚が1.5mm以下であることが好ましい。この場合、内プリフォーム14の口部14a及び内袋4の口部5の剛性が特に低いので、拡径構造14l,4kを設けることの技術的意義が顕著である。この肉厚は、例えば0.5~1.5mmであり、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0113】
図17Bに示すように、内プリフォーム14の全高をHとし、内プリフォーム14の底部14cからの高さが0.1Hである高さ位置での、内プリフォーム14の外径をD2とすると、D2/D1が0.35以上であることが好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。分割金型35,36を閉状態にする際に、分割金型35,36のピンチオフ部35a,36aで筒状パリソン34が挟まれることによって筒状パリソン34の内面同士が溶着してシール部が形成される。
【0114】
シール部は、美観が悪いので、内プリフォーム14の胴部14bに形成されることは望ましくない。D2が大きいほど、内プリフォーム14の胴部14bにシール部が形成されにくくなるので、採用可能な筒状パリソン34の外径が大きくなる。また、D1が小さいほど、内プリフォーム14の口部14aでのブロー比が小さくなり、口部14aの肉厚が大きくなる。その結果、内袋4の口部5の剛性が高まり、内袋4を引き抜きやすくなる。
【0115】
D2は、例えば、12~30mmであり、具体的には例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0116】
また、D2/D1は、0.8以下であることが好ましい。D2/D1が大きすぎると、内袋4の胴部6の肉厚が大きくなりやすく、内容物の吐出性が悪くなる場合がある。
【0117】
D2/D1は、例えば、0.35~1.0であり、具体的には例えば、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0118】
D2/D3は、1.1以上が好ましく、1.4以上であることがさらに好ましい。この場合、内プリフォーム14の胴部14bにシール部が形成されにくくなり、内プリフォーム14の美観が高められる。D2/D3は、例えば1.1~2.0であり、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0119】
<突出シール部42>
筒状パリソン34の内面同士が溶着して構成されるシール部は、強度が不十分である場合があり、図23Aに示すように、シール部43を内プリフォーム14の本体部14qから突出させて突出シール部42とすることが好ましい。突出シール部42は、筒状パリソン34の内面同士が溶着して構成され且つ内プリフォーム14の本体部14qから突出する。本体部14qは、内プリフォーム14のうち突出シール部42以外の部位を指す。図23Aに示すように、シール部43を突出させて突出シール部42とすることによって、シール面43aの面積が大きくなり、シール部43でのシール強度が高められる。
【0120】
ところで、内プリフォーム14が、図23Aに示すように、内側から順に、内側層14iと、ガスバリア層14jと、外側層14eを備える場合、対向する内側層14i同士は、シール面43aで互いに溶着されるが、ガスバリア層14j同士は互いに溶着されず、外側層14e同士も互いに溶着されない。このため、シール部43近傍においては、ガスバリア層14jが設けられていない非バリア領域44が設けられる。非バリア領域44が広いほど、内容物に対するガスバリア性が低下する。
【0121】
このような内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せて二軸延伸ブロー成形を行うと、突出シール部42においても延伸が起こるので、図23Bに示すような構造となり、非バリア領域44が広くなって、ガスバリア性が一層低下する。内プリフォーム14の本体部14qの内側層14iと、ガスバリア層14jと、外側層14eがそれぞれ、内袋4の本体部4qの内側層4iと、ガスバリア層4jと、外側層4eとなっている。また、図23A図23Bの構成では、シール部43での延伸が抑制されないので、シール面43aの両側からシール面43aを剥離する方向の力が加わり、シール面43aが剥離されてしまう虞もある。
【0122】
このような問題を解決すべく、本実施形態では、図24Aに示すような突出シール部42をダイレクトブロー成形で形成し、その後、図24Bに示すように突出シール部42を屈曲させて屈曲構造を形成している。突出シール部42は、例えば、再加熱して軟化させた状態で屈曲させることができる。
【0123】
このような内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せて二軸延伸ブロー成形を行うと、屈曲した突出シール部42によってシール部43での延伸が抑制されることに加えて、シール部43が延伸されたとしても非バリア領域44が広がることなく、ガスバリア性の低下が抑制される。従って、本実施形態では、屈曲した突出シール部42が、二軸延伸ブロー成形の際にシール部43が延伸されることを抑制する延伸抑制構造となる。
【0124】
本体部14qには、突出シール部42に沿った溝14rが設けられていることが好ましい。この場合、屈曲させて突出シール部42を溝14r内に収容することによって、本体部14qからの、突出シール部42の突出量が小さくなり、二軸延伸ブロー成形後にも、突出シール部42に相当する部位が目立たなくなる。
【0125】
突出シール部42は、本体部14q側から順に根本部42aと外側部42bを備え、外側部42bは、根本部42aよりも肉厚が大きい部位を備えることが好ましい。このような構成によれば、突出シール部42を根本部42aで屈曲させやすい。また、突出シール部42は、図17C図17Dに示すように、本体部14qの底部14cと胴部14bにまたがって設けられることが好ましい。外側部42bは、厚肉部42b1と、厚肉部42b1よりも肉厚が小さい薄肉部42b2を備え、薄肉部42b2は、底部14cと胴部14bの境界に隣接した位置に設けられている。底部14cと胴部14bの境界に厚肉部42b1が設けられていると、突出シール部42を屈曲させようとすると厚肉部42b1同士が干渉して突出シール部42を屈曲しにくくなる。底部14cと胴部14bの境界に薄肉部42b2を設けることによって、突出シール部42が底部14cと胴部14bにまたがって設けられる場合でも、突出シール部42を屈曲させやすい。厚肉部42b1は、根本部42aよりも肉厚が大きいことが好ましい。薄肉部42b2は、根本部42aよりも肉厚が小さいことが好ましい。
【0126】
<内プリフォーム14の表面処理>
ダイレクトブロー成形によって内プリフォーム14を形成する場合、射出成形によって内プリフォーム14を形成する場合に比べて、内プリフォーム14の薄肉化が可能であり、その結果、内袋4の薄肉化も可能であり、内袋4が、肉厚が100μm以下となる薄肉部位を含む場合がある。内袋4と外殻3の密着力は、内袋4の肉厚が小さいほど強くなる傾向がある。また、内プリフォーム14と外プリフォーム13の材料の組み合わせによって、二軸延伸ブロー成形後の冷却工程において、内袋4の収縮率が、外殻3の収縮率よりも大きくなる場合がある。
【0127】
このような場合、内袋4が均一に収縮するのではなく、内袋4のうち外殻3との密着力が比較的弱い部位で内袋4が選択的に収縮し、その結果、内袋4にシワが形成されて美観が悪くなってしまう場合がある。
【0128】
このような問題を解決すべく、本実施形態では、内プリフォーム14には、前記薄肉部位に対応する部位を含む領域の外面に、凹凸形状が設けられているか、又は滑剤が存在している、という構成を採用している。凹凸形状と滑剤の何れによっても、内袋4と外殻3の密着力が低下するので、内袋4が均一に収縮するようになり、シワの発生が抑制される。
【0129】
凹凸形状の形成方法としては、内プリフォーム14に対する後加工によって凹凸形状を形成する方法、内プリフォーム14を形成するための分割金型の賦形面に形成した凹凸形状を内プリフォーム14に転写する方法、内プリフォーム14を構成する樹脂に粒子を混ぜ、粒子の形状を内プリフォーム14の表面に反映させることによって凹凸形状を形成する方法などが挙げられる。
【0130】
後加工によって凹凸形状を形成する方法としては、サンドペーバーで内プリフォーム14の表面を擦る方法や、内プリフォーム14に対してサンドブラストを行う方法が挙げられる。賦形面に凹凸形状を形成する方法としては、サンドペーバーで賦形面を擦ったり、賦形面に対してサンドブラストを行ったりする方法が挙げられる。樹脂に混ぜる粒子は、無機粒子(例:タルクなどの合成珪酸塩や合成ゼオライト)が挙げられる。その粒子径は、例えば、1~50μmであり、粒子の割合は、例えば0.5~10質量%であり、1~5質量%が好ましい。後加工によって凹凸形状を形成した場合に、内袋4と外殻3の密着力の低下が顕著であるので、この方法が好ましい。
【0131】
滑剤は、剥離効果がある任意のものを用いることができる。滑剤は、内プリフォーム14の外面に塗布してもよく、内プリフォーム14を構成する樹脂に滑剤を混ぜて、ブリードアウトによって内プリフォーム14の外面に存在するようにしてもよい。
【0132】
凹凸形状は、ランダムな形状を有することが好ましい。また、凹凸形状は、算術平均粗さRaが1~200μmであることが好ましい。この場合、内袋4と外殻3の密着力を特に効果的に低減可能である。Raは、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2013に準拠して測定することができる。
【0133】
以下、他の実施形態について説明する。第1実施形態で述べた内容は、その趣旨に反しない限り、以下の実施形態にも適用可能である。
【0134】
2.第2実施形態
第1実施形態では、ダイレクトブロー成形では屈曲されていない突出シール部42を形成し、後加工によって突出シール部42を屈曲させて屈曲構造を形成している。一方、本実施形態では、図25に示すように、内プリフォーム14をダイレクトブロー成形する際に、突出シール部42に屈曲構造を形成している。このような構成でも、第1実施形態と同様の作用によって、二軸延伸ブロー成形の際にシール部43が延伸されることを抑制することができる。本実施形態によれば、後加工の手間を省くことができる。
【0135】
3.第3実施形態
本実施形態では、延伸抑制構造は、内プリフォーム14のダイレクトブロー成形後に、突出シール部42を再溶融させて、その表面積を低減させることによって形成される。再溶融によって、突出シール部42が塊状になって剛性が高まるので、延伸抑制構造として機能する。
【0136】
好ましくは、再溶融の前の時点で、[突出シール部42の高さ/突出シール部42の肉厚]で定義されるアスペクト比が3以上であり、再溶融によって前記アスペクト比が低減される。つまり、ダイレクトブロー成形では、図26A図26Cに示すように、突出シール部42を薄膜状に形成し、薄膜状の突出シール部42を再溶融して塊状にする。突出シール部42を薄膜状に形成することによって、ガスバリア層14jが設けられていない非バリア領域44が狭くなることに加えて、突出シール部42を再溶融しやすくなる。
【0137】
突出シール部42の肉厚は、例えば0.1~0.5mmであり、0.1~0.3mmが好ましく、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。突出シール部42の高さは、例えば、1.0~4.0mmであり、1.0~3.0mmが好ましく、具体的には例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。再溶融前のアスペクト比及び[再溶融前のアスペクト比-再溶融後のアスペクト比]の値は、それぞれ、例えば、3~20であり、具体的には例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0138】
本体部14qには、突出シール部42に沿って溝14rが設けられることが好ましい。この場合、再溶融によって生じた溶融樹脂を溝14r内に収容することができる。
【0139】
4.第4実施形態
本実施形態では、図27に示すように、第1実施形態と同様に、突出シール部42を後加工で屈曲させることによって屈曲構造を形成している。本実施形態は、溝14rが無い点を除くと、第1実施形態と同様の作用によって延伸抑制構造として機能する。
【0140】
5.第5実施形態
本実施形態では、図28に示すように、第1実施形態と同様に、突出シール部42を後加工で屈曲させることによって屈曲構造を形成している。本実施形態は、第1実施形態と同様の作用によって延伸抑制構造として機能する。
【0141】
6.第6実施形態
本実施形態は、図29に示すように、内プリフォーム14の口部14aが第1実施形態よりも長い点と、突出シール部42の形状が第2実施形態のものである点を除いて第1実施形態と同様である。本実施形態の内プリフォーム14に適合する寸法を有する外プリフォーム13及び口部装着部材8を準備することによって、第1実施形態と同様に二重容器1を製造することができる。なお、本実施形態において、突出シール部42は、第1又は第3~5実施形態の構成のものを採用してもよい。
【0142】
7.第7実施形態
本実施形態は、図30に示すように、内プリフォーム14に設けたカム凸部14sと外プリフォーム13に設けたカムレール13eによってカム機構31が構成され、逆ネジ緩め方向の回転によって、内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動する点と、外プリフォーム13に係合凸部13fが設けられている点、突出シール部42の形状が第2実施形態のものである点を除いて第1実施形態と同様である。
【0143】
本実施形態の内プリフォーム14及び外プリフォーム13に適合する口部装着部材8を用いて、第1実施形態と同様に二重容器1を製造することができる。口部装着部材8は、係合凸部13fと周方向に強固に係合して、外殻3に対して回転不能になる構成のものを装着してもよく、第1実施形態で説明した中栓回転トルクT2を加えたときに回転可能になる程度に係合凸部13fと周方向に係合するものを用いてもよい。前者の場合は、係合凸部13fと係合する分別バンドを口部装着部材8に設け、分別バンドを分離することによって口部装着部材8の取り外しを行うことができる。後者の場合、分別バンドの分離のような操作を行うことなく、口部装着部材8に中栓回転トルクT2以上のトルクを加えることによって口部装着部材8を取り外すことが可能になる。
【0144】
なお、本実施形態において、突出シール部42は、第1又は第3~5実施形態の構成のものを採用してもよい。
【実施例0145】
以下、上記実施形態に関連する種々の試験例について説明する。
【0146】
1.試験例1(延伸抑制構造の効果の実証)
・サンプル1
サンプル1では、図31に示すように、延伸抑制構造を設けていない突出シール部42を有する内プリフォーム14に、図31に示す外プリフォーム13を被せてプリフォーム15を形成し、プリフォーム15を110℃(プリフォーム15の高さ方向の中央での温度)に加熱して二軸延伸ブロー成形することによって、図2に示す形状(但し、口部5は、図31の形状)の容器本体2(容量200mL)を製造した。
【0147】
内プリフォーム14は、ダイレクトブロー成形によって製造した。内プリフォーム14の層構成は、内側から順に、内側層[ポリプロピレン/接着樹脂]/ガスバリア層[EVOH]/外側層[接着樹脂/ポリプロピレン/タルクを5質量%含むポリプロピレン)]とした。内プリフォーム14の高さ方向の中央で周方向の4点(パーティングライン方向の2点及びパーティングラインに垂直な方向の2点)で各層の肉厚を測定し、測定値を平均することによって平均肉厚を得た。各層の肉厚を、内プリフォーム14全体の肉厚で除することによって、肉厚比を得た。た。得られた結果を表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
外プリフォーム13は、PET(型式:チタン系触媒グレード、帝人社製)を300℃で射出成形して外プリフォームの形状とした後に20℃に急冷することによって製造した。急冷によって溶融状態のPETを非晶質状態にした。外プリフォーム13は、高さ方向の中央での平均肉厚が750μmであった。
【0150】
二軸延伸ブロー成形によって得られた容器本体2の内袋4の胴部は、高さが120mmであり、底面から60mmの高さ位置で、8つの測定点で内袋4の各層の肉厚を測定し、測定値を平均することによって平均肉厚を得た。各層の肉厚を、内袋4全体の肉厚で除することによって、肉厚比を得た。得られた結果を表2に示す。
【表2】
【0151】
容器本体2から内袋4を引き抜き、突出シール部42の状態を確認したところ、外側層及びガスバリア層に裂けが発生していて、内側層が露出していた。
【0152】
・サンプル2
サンプル2では、ダイレクトブロー成形によって図28に示す構造の突出シール部42を形成した後、突出シール部42を屈曲させて延伸抑制構造を構成した。その他の点は、サンプル1と同様に容器本体2を製造した。
【0153】
サンプル1と同様に、突出シール部42の状態を確認したところ、外側層及びガスバリア層に裂けが発生していなかった。
【0154】
2.試験例2(内プリフォーム14の外面に凹凸形状を設けることの効果の実証)
・サンプル3
サンプル3では、内プリフォーム14をポリプロピレンの単層構成とした以外は、サンプル1と同様に容器本体2を製造した。内袋4の胴部は、高さが120mmであり、10mm刻みの高さ位置のそれぞれにおいて、8つの測定点で内袋4の肉厚を測定した。連結部平均肉厚は、4つの連結部2bの中央での測定値の平均であり、角部平均肉厚は、4つの角部2aの中央での測定値の平均であり、平均肉厚は、8つの測定点での測定値の平均である。得られた結果を表3に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
容器本体2が冷却された後の外観を確認したところ、多くの縦筋が形成されていた。
【0157】
・サンプル4
サンプル4では、ダイレクトブロー成形によって内プリフォーム14を製造した後に、内プリフォーム14の外面をサンドペーパー#320で擦って、内プリフォーム14の表面に凹凸形状を形成した。その他の点は、サンプル3と同様に容器本体2を製造した。容器本体2が冷却された後の外観を確認したところ、内袋4が均一に収縮しており、縦筋が形成されていなかった。
【0158】
・サンプル5
サンプル4では、サンドブラストによって凹凸形状を形成した分割金型を用いて、ダイレクトブロー成形によって内プリフォーム14を製造した。その他の点は、サンプル3と同様に容器本体2を製造した。容器本体2が冷却された後の外観を確認したところ、わずかに縦筋が形成されていたものの、サンプル3と比べるとはるかに軽度であった。
【0159】
・サンプル6
サンプル6では、ポリプロピレンに無機粒子として合成珪酸塩であるタルクを3質量%添加した以外は、サンプル3と同様に容器本体2を製造した。容器本体2が冷却された後の外観を確認したところ、縦筋が形成されていなかった。
【0160】
・サンプル7
サンプル7では、ポリプロピレンに無機粒子として合成ゼオライトを3質量%添加した以外は、サンプル3と同様に容器本体2を製造した。容器本体2が冷却された後の外観を確認したところ、縦筋が形成されていなかった。
【0161】
3.試験例3(内袋4の絞り出しによる最終残留量低減効果の実証)
表4に示す条件で試験No.1~10を実施した。
【0162】
・試験No.1
試験No.1では、サンプル3と同様の条件で容器本体2を製造し、容器本体2内に表4に示す粘度の内容物を同表に示す充填量で充填した。その後、容器本体2の口部5に図1に示すキャップ8aを装着した。
【0163】
次に、オーバーキャップ27を取り外し、容器本体2を傾斜させることによって内容物が出なくなるまで内容物を吐出させ、その後の残留量を測定した(傾注後残留量)。次に、中栓26を回転させて内袋4を容器本体2から引き抜き、内袋4を絞ることによって、内容物をさらに吐出させた(絞出後残留量)。
【0164】
・試験No.2
試験No.2は、内プリフォーム14をPETの射出成形によって形成した以外は、試験No.1と同様の方法で試験を行った。
【0165】
・試験No.3~4及び7~10
試験No.3~4及び7~10は、試験No.1~2と同様の方法で試験を行った。
【0166】
・試験No.5~6
試験No.5~6では、傾注後に、容器本体2の底部7を軽く叩くタッピングを行うことによって内容物が出なくなるまで内容物を吐出させ、その後の残留量を測定した(タッピング後残留量)。その他の点は、試験No.1~2と同様の方法で試験を行った。
【表4】
【0167】
試験No.1~10の全てにおいて、内袋4の絞り出しによって最終残留量を低減することができた。No.1と2の比較により、内袋4が柔軟性に優れたPPで構成されている試験No.1の方が絞出後残留量が少なくなることが分かった。また、傾注後残留量は、粘度の増大に伴って著しく増大するのに対し、絞出後残留量は、粘度が増大しても、傾注後残留量程は、増大しなかった。
【符号の説明】
【0168】
1 :二重容器
2 :容器本体
2a :角部
2b :連結部
2c :折れ曲がり形状
3 :外殻
3a :開口端
3l :カムレール
3m :係合凹部
3n :係合凸部
4 :内袋
4c :突出部
4c1 :突出筒
4c2 :係合凸部
4c3 :テーパー面
4c4 :当接フランジ
4c5 :環状凸部
4c6 :下面
4c7 :下面
4c8 :テーパー面
4d :内袋本体
4e :外側層
4e1 :最外層
4e2 :接着層
4g :カム凸部
4h :係合凸部
4i :内側層
4i1 :最内層
4i2 :リプロ層
4i3 :接着層
4j :ガスバリア層
4k :拡径構造
4l :開口端
4m :係合部
4q :本体部
5 :口部
5b :フランジ
5c :開口端
6 :胴部
6b :肩部
6c :胴部本体
7 :底部
7a :凹部
8 :口部装着部材
8a :キャップ
13 :外プリフォーム
13a :口部
13b :胴部
13c :底部
13d :環状凸部
13e :カムレール
13f :係合凸部
14 :内プリフォーム
14a :口部
14b :胴部
14c :底部
14d :突出部
14e :外側層
14i :内側層
14j :ガスバリア層
14l :拡径構造
14m :係合部
14n :当接フランジ
14o :開口端
14p :バリ
14q :本体部
14r :溝
14s :カム凸部
15 :プリフォーム
15a :口部
15b :胴部
15c :底部
26 :中栓
27 :オーバーキャップ
27a :外筒
27b :中間筒
27c :内筒
27d :天板
27e :ローレット
27f :雌ネジ部
28 :本体部
28a :外筒
28b :内筒
28c :環状凸部
28d :係合凸部
28e :天板
28f :吐出筒
28g :取付筒
28h :雄ネジ部
28i :ローレット
30 :連結部
31 :カム機構
32 :開栓部
32a :係合筒
33 :シュリンクフィルム
33a :易切断線
33b :易切断線
33c :上側部位
33d :下側部位
34 :筒状パリソン
35 :分割金型
35a :ピンチオフ部
36 :分割金型
36a :ピンチオフ部
38 :成形体
39 :バリ
40 :袋部
41 :環状凹部
41a :環状凸部
42 :突出シール部
42a :根本部
42b :外側部
42b1 :厚肉部
42b2 :薄肉部
43 :シール部
43a :シール面
44 :非バリア領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31