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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172000
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】パーキングロック装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20241205BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20241205BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20241205BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H61/28
B60T1/06 G
F16D63/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089406
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】上條 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 佳紀
【テーマコード(参考)】
3J058
3J067
【Fターム(参考)】
3J058AB21
3J058BA67
3J058CC15
3J058CC76
3J058CD34
3J058FA07
3J067AA01
3J067AA21
3J067AB23
3J067DA41
3J067DA52
3J067DB32
3J067FA57
3J067FA84
3J067FB73
3J067FB81
3J067FB90
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】パーキングロック装置の部品点数および設置スペースを削減する。
【解決手段】本開示のパーキングロック装置は、パーキングロッドをロック方向に移動させて車両の伝動軸をロックすると共に、パーキングロッドをロック解除方向に移動させて伝動軸のロックを解除するものであって、パーキングロッドを収容するケースと、ケース内でパーキングロッドに対して着脱自在に連結されるアクチュエータロッドおよびアクチュエータロッドを軸方向に進退移動させる駆動源を含む直動アクチュエータとを含み、直動アクチュエータは、アクチュエータロッドがケース内に突出するようにケースに着脱自在に取り付けられ、ケースから直動アクチュエータを取り外す方向は、パーキングロッドをロック解除方向に移動させて伝動軸のロックを解除するときのアクチュエータロッドの移動方向に一致している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングロッドをロック方向に移動させて車両の伝動軸をロックすると共に、前記パーキングロッドをロック解除方向に移動させて前記伝動軸のロックを解除するパーキングロック装置であって、
前記パーキングロッドを収容するケースと、
前記ケース内で前記パーキングロッドに対して着脱自在に連結されるアクチュエータロッドおよび前記アクチュエータロッドを軸方向に進退移動させる駆動源を含む直動アクチュエータであって、前記アクチュエータロッドが前記ケース内に突出するように前記ケースに着脱自在に取り付けられる直動アクチュエータとを備え、
前記ケースから前記直動アクチュエータを取り外す方向が、前記パーキングロッドを前記ロック解除方向に移動させて前記伝動軸のロックを解除するときの前記アクチュエータロッドの移動方向に一致しているパーキングロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパーキングロック装置において、
前記パーキングロッドの基端部に連結されると共に前記アクチュエータロッドの先端に着脱自在に連結され、前記ケースにより回転自在に支持される連結部材を更に備え、
前記連結部材は、間隔をおいて配設された2つの係合爪を有し、
前記アクチュエータロッドは、前記連結部材の前記2つの係合爪の間に着脱自在に嵌め込まれるピンを有し、
前記2つの係合爪のうち、前記アクチュエータロッドの基端部に近接する一方は、他方よりも短いパーキングロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパーキングロック装置において、
前記直動アクチュエータは、前記アクチュエータロッドの軸心が前記パーキングロッドの軸心と交差するように前記ケースに取り付けられるパーキングロック装置。
【請求項4】
請求項2に記載のパーキングロック装置において、
前記直動アクチュエータは、前記アクチュエータロッドの軸心が前記パーキングロッドの軸心に沿って延在するように前記ケースに取り付けられるパーキングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーキングロッドを一方向に移動させて車両の回転軸をロックすると共に、当該パーキングロッドを他方向に移動させて回転軸のロックを解除するパーキングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータと、当該アクチュエータにより周方向に回動させられるコントロールロッドと、コントロールロッドに装着されたディテントプレートと、ディテントプレートに装着されてパーキングロックポールをパーキングギヤに係合する方向へ押圧可能なパーキングロッドとを含むパーキングロック装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このパーキングロック装置において、コントロールロッド、ディテントプレート、パーキングロッド、パーキングロックポール、およびパーキングギヤは、トランスアクスルケースの内部に配置され、アクチュエータは、トランスアクスルケースの外部に配置される。また、当該パーキングロック装置は、パーキングギヤのロックを手動で解除するための手動解除機構を含む。手動解除機構は、一端がディテントプレートに連結された操作ケーブルを有し、当該操作ケーブルの他端は、トランスアクスルケースの外側で把手部材に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-170699公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のパーキングロック装置では、アクチュエータが動作不能になったときに、トランスアクスルケース外の把手部材を手動操作によって当該トランスアクスルケースから離隔させることで、パーキングロッドをパーキングロックポールとパーキングギヤとの係合を解除する方向に移動させて当該パーキングギヤのロックを解除することができる。しかしながら、パーキングロック装置に手動解除機構が追加されると、部品点数の増加によるコストアップや、設置スペースの増大化を招いてしまう。
【0005】
そこで、本開示は、パーキングロック装置の部品点数および設置スペースを削減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のパーキングロック装置は、パーキングロッドをロック方向に移動させて車両の伝動軸をロックすると共に、前記パーキングロッドをロック解除方向に移動させて前記伝動軸のロックを解除するパーキングロック装置であって、前記パーキングロッドを収容するケースと、前記ケース内で前記パーキングロッドに対して着脱自在に連結されるアクチュエータロッドおよび前記アクチュエータロッドを軸方向に進退移動させる駆動源を含む直動アクチュエータであって、前記アクチュエータロッドが前記ケース内に突出するように前記ケースに着脱自在に取り付けられる直動アクチュエータとを備え、前記ケースから前記直動アクチュエータを取り外す方向が、前記パーキングロッドを前記ロック解除方向に移動させて前記伝動軸のロックを解除するときの前記アクチュエータロッドの移動方向に一致しているものである。
【0007】
本開示のパーキングロック装置において、直動アクチュエータは、アクチュエータロッドがケース内に突出するように当該ケースに着脱自在に取り付けられ、アクチュエータロッドは、ケース内でパーキングロッドに対して着脱自在に連結される。これにより、直動アクチュエータの駆動源によりアクチュエータロッドを軸方向に進退移動させることで、パーキングロッドをロック方向またはロック解除方向に移動させることができる。そして、ケースから直動アクチュエータを取り外す方向は、パーキングロッドをロック解除方向に移動させて車両の伝動軸のロックを解除するときのアクチュエータロッドの移動方向に一致している。これにより、直動アクチュエータが動作不能になったときに、当該直動アクチュエータをケースから取り外せば、アクチュエータロッドがケース外に引き抜かれるのに伴ってパーキングロッドがロック解除方向に移動するので、伝動軸のロックを解除することが可能になる。更に、直動アクチュエータを引っ張ることで、アクチュエータロッドとパーキングロッドとの連結を解除して、直動アクチュエータをケースから完全に離脱させることができる。この結果、本開示のパーキングロック装置では、手動操作により伝動軸のロックを解除する手動解除機構が不要となるので、部品点数および設置スペースを削減し、コストアップおよびケースのサイズアップを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のパーキングロック装置の一例を示す概略構成図である。
図2図1のパーキングロック装置の一部を示す拡大図である。
図3図1のパーキングロック装置の直動アクチュエータをケースから取り外す様子を示す説明図である。
図4】連結部材の支持構造の他の例を示す拡大図である。
図5】本開示の他のパーキングロック装置を示す概略構成図である。
図6図5のパーキングロック装置を示す拡大図である。
図7】本開示の更に他のパーキングロック装置を示す概略構成図である。
図8】本開示の他のパーキングロック装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のパーキングロック装置1を示す概略構成図であり、図2は、パーキングロック装置1の一部を示す拡大図である。これらの図面に示すパーキングロック装置1は、車両の走行駆動源からの動力を駆動輪に伝達するための伝動軸(回転軸)TSをロックすると共に、当該伝動軸TSのロックすなわちパーキングロックを解除するものである。パーキングロック装置1が適用される車両は、バッテリ電気自動車であってもよく、ハイブリッド車両であってもよく、燃料電池車両であってもよく、内燃機関のみを走行駆動源として含む車両であってもよい。
【0011】
図1および図2に示すように、パーキングロック装置1は、パーキングギヤ2と、パーキングポール3と、パーキングロッド4と、カム部材5と、カムスプリング6と、支持ローラ7と、連結部材8と、捩りばね9と、直動アクチュエータ10と、電子制御装置(以下、「ECU」という。)20とを含む。パーキングギヤ2、パーキングポール3、パーキングロッド4、カム部材5、カムスプリング6、支持ローラ7、連結部材8および捩りばね9は、車両の走行駆動源であるモータジェネレータおよび/またはエンジンに連結される動力伝達装置のトランスミッションケースC内に収容される。また、直動アクチュエータ10は、トランスミッションケースCの外側から、当該トランスミッションケースCに取り付けられる。
【0012】
パーキングギヤ2は、複数の歯2t(図2参照)を有する。パーキングギヤ2は、伝動軸TSに固定され、当該伝動軸TSと一体に回転する。パーキングポール3は、パーキングギヤ2と係合可能なものであり、伝動軸TSと平行に延在するように基端部に固定されたポールシャフト30を有する。ポールシャフト30は、図示しない軸受等を介してトランスミッションケースCにより回転自在に支持される。これにより、パーキングポール3は、ポールシャフト30の軸心の周りに回動自在となる。更に、パーキングポール3は、長手方向中央部から遊端部側に若干寄った位置にパーキングギヤ2に向けて突出するように形成された係合部35を有する。係合部35は、パーキングギヤ2の互いに隣り合う歯2t間の凹部と係合可能である。また、パーキングポール3(遊端部)は、トランスミッションケースCにより支持された図示しない捩りばねの遊端部と係合し、当該捩りばねにより係合部35がパーキングギヤ2から離間するように付勢される。
【0013】
パーキングロッド4は、筒状に形成されたカム部材5内および本実施形態ではコイルスプリングであるカムスプリング6内に摺動自在に挿通される。また、パーキングロッド4は、カムスプリング6の一端(図1および図2における上端)と当接するスプリングストッパ4sを有し、カム部材5の一端(図1および図2における上端)は、カムスプリング6の他端(図1および図2における下端)に当接する。更に、パーキングロッド4には、カム部材5の他端(図1および図2における下端)と当接するカムストッパ4cが固定される。これにより、カム部材5は、パーキングロッド4によってカムストッパ4cとカムスプリング6との間でパーキングロッド4の軸方向に移動可能に支持される。また、カムスプリング6は、スプリングストッパ4sとカム部材5の間で圧縮され、カム部材5をカムストッパ4c側に付勢する。
【0014】
カム部材5は、図2に示すように、大径部51と、小径部52と、大径部51と小径部52との間に形成されたテーパ部53とを含む。大径部51は、上底の直径が下底の直径よりも若干小さい円錐台状に形成されている。小径部52は、大径部51の上底側から軸方向に延出されている。テーパ部53は、大径部31から離間するにつれて縮経するように形成されている。また、カム部材5は、図示しないスプリングにより付勢されたパーキングポール3の遊端部とトランスミッションケースCにより回転自在に支持される支持ローラ7とにより狭持される。これにより、カム部材5に挿通されるパーキングロッド4もパーキングポール3と支持ローラ7とにより摺動自在に支持される。
【0015】
連結部材8は、伝動軸TSおよびパーキングロッド4の双方に略直交する支軸(回転軸)SSを介してトランスミッションケースCにより回転自在に支持される。図1に示すように、連結部材8は、パーキングロッド4の基端部(カムストッパ4c側とは反対側の端部)が回転自在に連結される連結部80と、2つの係合爪81,82とを有する。2つの係合爪81、82は、連結部80および支軸SSの軸心の双方向から離間した位置で間隔をおいて略平行に延在する。本実施形態において、2つの係合爪81,82の延在方向と、パーキングロッド4の基端部が差し込まれる連結部80の孔部の中心と支軸SSの軸心とを結ぶ直線とのなす角度は、例えば45°から90°までの範囲内に含まれる。また、2つの係合爪81、82のうち、パーキングロッド4の基端部(連結部80)に近接する一方の係合爪81は、他方の係合爪82よりも長く形成されている。更に、連結部材8は、トランスミッションケースCにより支持された捩りばね9の遊端部と係合する。捩りばね9は、支軸SSの周りで、パーキングロッド4を図1に示すロック解除方向に移動させる方向に連結部材8を付勢する。
【0016】
直動アクチュエータ10は、アクチュエータロッド11と、当該アクチュエータロッド16を軸方向に進退移動させる駆動源としてのモータ12とを含む。アクチュエータロッド11の先端部には、連結部材8の2つの係合爪81,82が差し込まれるスリットが形成されている。また、アクチュエータロッド11の先端部は、当該スリットに差し込まれた2つの係合爪81,82の間に着脱自在に嵌め込まれるピン(丸棒)13を保持している。更に、アクチュエータロッド11は、基端部で開口する孔部が形成されており、当該孔部の内周面には、雌ねじ部が形成されている。また、モータ12の回転軸14の先端には、アクチュエータロッド11の当該雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が形成されている。これにより、モータ12を作動させたときに、アクチュエータロッド11は、回転軸14の回転方向に応じて、当該モータ12に対して軸方向に接近または離間すなわち進退移動する。
【0017】
モータ12は、図1に示すように、アクチュエータロッド11が孔部Hを介してトランスミッションケースC内に突出するように、トランスミッションケースCの外部から図示しない複数のボルト等を介して当該トランスミッションケースCに固定される。本実施形態において、モータ12は、アクチュエータロッド11(および回転軸14)の軸心11aがパーキングロッド4の軸心4aと交差(略直交)するようにトランスミッションケースCに取り付けられる。また、アクチュエータロッド11のピン13は、トランスミッションケースC内で2つの係合爪81,82の間に着脱自在に嵌め込まれる。これにより、アクチュエータロッド11は、連結部材8に回動自在に連結されると共に、当該連結部材8を介してパーキングロッド4に連結され、係合爪81よりも短い係合爪82がアクチュエータロッド11の基端部(モータ12)に近接する。
【0018】
ECU20は、CPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータを含む。ECU20は、車両の運転者により選択されたシフトポジションを検出されたるシフトポジションセンサや、アクチュエータロッド11の軸方向における位置を検出するストロークセンサ、あるいは支軸SSの回転位置を検出する回転位置センサ等の検出値を取得する。ECU20は、これらのセンサの検出値に基づいて直動アクチュエータ10のモータ12を制御する。すなわち、パーキングロック装置1は、ECU20により直動アクチュエータ10を作動させて伝動軸TSのロックおよび当該伝動軸TSのロックの解除を実行するシフトバイワイヤ式のパーキングロック装置として構成されている。
【0019】
続いて、上記パーキングロック装置1の動作について説明する。
【0020】
パーキングロック装置1が搭載された車両の運転者によりパーキングポジションが選択されると、ECU20は、アクチュエータロッド11がモータ12から離間する方向(図1における左側)に予め定められた距離だけ軸方向に前進(移動)するように当該モータ12を制御する。アクチュエータロッド11の前進に応じて少なくとも係合爪81がアクチュエータロッド11により押圧され、連結部材8は、捩りばね9の付勢力に抗して、支軸SSの周りに図1における反時計方向に回動する。更に、連結部材8の回動に応じて、パーキングロッド4は、図1におけるロック方向に移動する。
【0021】
パーキングロッド4のロック方向への移動に応じて、カム部材5の大径部51が図示しないスプリングにより付勢されたパーキングポール3とトランスミッションケースCによって支持される支持ローラ7とにより狭持される。これにより、パーキングポール3は、カム部材5によりパーキングギヤ2に押し付けられてポールシャフト30の周りに図2における反時計方向に回動する。この結果、パーキングポール3の係合部35がパーキングギヤ2の互いに隣り合う歯2t間の凹部と係合し、伝動軸TSがロックされる。
【0022】
また、パーキングポジションの選択に応じて伝動軸TSがロックされた状態で、車両の運転者によりパーキングポジション以外のシフトポジションが選択されると、ECU20は、アクチュエータロッド11がモータ12に接近する方向(図1における右側)に予め定められた距離だけ軸方向に後退(移動)するように当該モータ12を制御する。アクチュエータロッド11の後退に応じて少なくとも係合爪82がアクチュエータロッド11により引っ張られ、連結部材8は、支軸SSの周りに図1における時計方向に回動する。更に、連結部材8の回動に応じて、パーキングロッド4は、図1におけるロック解除方向に移動する。
【0023】
パーキングロッド4のロック解除方向への移動に応じて、カム部材5のテーパ部53や小径部52が図示しないスプリングにより付勢されたパーキングポール3とトランスミッションケースCによって支持される支持ローラ7とにより狭持される。これにより、カム部材5によるパーキングギヤ2に対するパーキングポール3の押し付けが解除され、パーキングポール3は、ポールシャフト30の周りに図2における時計方向に回動する。この結果、パーキングポール3の係合部35とパーキングギヤ2との係合、すなわち伝動軸TSのロック(パーキングロック)が解除される。なお、パーキングロックの解除中、カムスプリング6の付勢力の反力は、スプリングストッパ4sおよびカムストッパ4cによって受けられる。
【0024】
上述のように、パーキングロック装置1において、直動アクチュエータ10のモータ12は、アクチュエータロッド11がトランスミッションケースC内に突出するように当該トランスミッションケースCに着脱自在に取り付けられ、アクチュエータロッド11は、トランスミッションケースC内でパーキングロッド4に対して着脱自在に連結される。これにより、直動アクチュエータ10のモータ12によりアクチュエータロッド11を軸方向に進退移動させることで、パーキングロッド4をロック方向またはロック解除方向に移動させることができる。
【0025】
そして、パーキングロック装置1において、直動アクチュエータ10のトランスミッションケースCからの取り外し方向は、図1に示すように、パーキングロッド4をロック解除方向に移動させて車両の伝動軸TSのロックを解除するときのアクチュエータロッド11の移動方向(モータ12に接近する方向)に一致している。これにより、モータ12の不具合等により直動アクチュエータ10が動作不能になったときに、図3に示すように、当該直動アクチュエータ10(モータ12)をトランスミッションケースCから取り外せば、アクチュエータロッド11がトランスミッションケースC外に引き抜かれるのに伴ってパーキングロッド4がロック解除方向に移動するので、伝動軸TSのロックを解除することが可能になる。更に、直動アクチュエータ10を引っ張ることで、アクチュエータロッド11とパーキングロッド4との連結、すなわちピン13と2つの係合爪81,82との嵌め合いを解除して、直動アクチュエータ10をトランスミッションケースCから完全に離脱させることができる。この結果、パーキングロック装置1では、手動操作により伝動軸TSのロックを解除する手動解除機構が不要となるので、部品点数および設置スペースを削減し、コストアップおよびトランスミッションケースCのサイズアップを抑制することが可能になる。
【0026】
また、パーキングロック装置1は、パーキングロッド4の基端部に連結されると共にアクチュエータロッド11の先端に着脱自在に連結され、トランスミッションケースCにより回転自在に支持される連結部材8を含む。連結部材8は、間隔をおいて配設された2つの係合爪81,82を有し、アクチュエータロッド11は、連結部材8の2つの係合爪81,82の間に着脱自在に嵌め込まれるピン13を有する。更に、2つの係合爪81,82のうち、アクチュエータロッド11の基端部(モータ12)に近接する一方の係合爪82は、他方の係合爪81よりも短く形成されている。
【0027】
これにより、直動アクチュエータ10のトランスミッションケースCからの取り外しに際して、トランスミッションケースC外へと引き抜かれるアクチュエータロッド11のピン13と連結部材8の2つの係合爪81,82との嵌め合いを容易に解除することができる。また、直動アクチュエータ10のトランスミッションケースCへの取り付け(交換)に際して、トランスミッションケースC内に押し込まれるアクチュエータロッド11のピン13を連結部材8の2つの係合爪81,82の間に容易に嵌め込むことが可能になる。更に、連結部材8を介してアクチュエータロッド11とパーキングロッド4とを軸心11a,4aが交差(略直交)するように連結することで、トランスミッションケースCに対する直動アクチュエータ10の配置の自由度をより向上させることができる。なお、パーキングロック装置1において、アクチュエータロッド11の軸心11aと、パーキングロッド4の軸心4aとは、必ずしも直交している必要はなく、軸心11aと軸心4aとのなす角度α(図1参照)は、例えば45°から135°の範囲に含まれてもよい。
【0028】
また、連結部材8は、トランスミッションケースCにより支持された捩りばね9の遊端部と係合し、捩りばね9は、支軸SSの周りで、パーキングロッド4を図1に示すロック解除方向に移動させる方向に連結部材8を付勢する。これにより、図3からわかるように、直動アクチュエータ10がトランスミッションケースCから取り外されているときに、捩りばね9により連結部材8を付勢して、2つの係合爪81,82をトランスミッションケースCの孔部Hに近接させておくことができる。この結果、直動アクチュエータ10のトランスミッションケースCへの取り付けに際して、トランスミッションケースC内に押し込まれるアクチュエータロッド11のピン13を連結部材8の2つの係合爪81,82の間に容易かつスムースに嵌め込むことが可能になる。
【0029】
ただし、パーキングロック装置1から捩りはね9が省略されてもよく、図4に示すように、支軸SSと連結部材8の被支持部(図4の例では、筒状部)との間に、例えばOリング等の弾性部材EMが配置されてもよい。これにより、直動アクチュエータ10がトランスミッションケースCから取り外されているときに、支軸SSと連結部材8との間の摺動抵抗により、2つの係合爪81,82がトランスミッションケースCの孔部Hに近接するように連結部材8の位置を保持しておくことができる。従って、図4の構成が適用されたパーキングロック装置1においても、直動アクチュエータ10のトランスミッションケースCへの取り付けに際して、トランスミッションケースC内に押し込まれるアクチュエータロッド11のピン13を連結部材8の2つの係合爪81,82の間に容易かつスムースに嵌め込むことが可能になる。
【0030】
図5は、本開示の他のパーキングロック装置1Bを示す概略構成図である。なお、パーキングロック装置1Bの構成要素のうち、上述のパーキングロック装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
図5に示すパーキングロック装置1Bにおいて、連結部材8Bは、伝動軸TSと平行に延在する支軸SSを介してトランスミッションケースCにより回転自在に支持される。また、連結部材8Bは、図5および図6に示すように、第1プレート部材8xと、第2プレート部材8yと、第1および第2プレート部材8x,8yに接合される筒状(円筒状)の被支持部8zとを含む。連結部材8Bの第1プレート部材8xは、パーキングロッド4の基端部が回転自在に連結される連結部80を含む。第2プレート部材8yは、アクチュエータロッド11のピン13と係合する2つの係合爪81,82を含む。被支持部8zは、第1および第2プレート部材8x,8yが間隔をおいて平行に延在するように両者に接合され、支軸SSにより回転自在に支持される。また、パーキングロック装置1Bにおいて、2つの係合爪81,82の延在方向と、パーキングロッド4の基端部が差し込まれる連結部80の孔部の中心と支軸SSの軸心とを結ぶ直線とのなす角度は、例えば90°から180°までの範囲内に含まれる。
【0032】
更に、パーキングロック装置1Bにおいて、直動アクチュエータ10のモータ12は、アクチュエータロッド11(および回転軸14)の軸心11aがパーキングロッド4の軸心4aと交差(略直交)すると共に、パーキングロッド4やカム部材5から支軸SSの軸方向にオフセットされるように(図6参照)トランスミッションケースCに取り付けられる。上述のような連結部材8Bを含むパーキングロック装置1Bでは、当該連結部材8Bを介してアクチュエータロッド11とパーキングロッド4とを連結することで、トランスミッションケースCに対する直動アクチュエータ10の配置の自由度をより向上させることが可能になる。なお、パーキングロック装置1Bにおいて、アクチュエータロッド11の軸心11aと、パーキングロッド4の軸心4aとは、必ずしも直交している必要はなく、軸心11aと軸心4aとのなす角度α(図5参照)は、例えば45°から135°の範囲に含まれてもよい。
【0033】
図7は、本開示の他のパーキングロック装置1Cを示す概略構成図である。なお、パーキングロック装置1Cの構成要素のうち、上述のパーキングロック装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
図7に示すパーキングロック装置1Cにおいて、連結部材8Cの2つの係合爪81,82の延在方向と、パーキングロッド4の基端部が差し込まれる連結部80の孔部の中心と支軸SSの軸心とを結ぶ直線とのなす角度は、例えば135°から180°までの範囲内に含まれる。また、パーキングロック装置1Cにおいて、直動アクチュエータ10のモータ12は、アクチュエータロッド11(および回転軸14)の軸心11aがパーキングロッド4に沿って、当該パーキングロッド4の軸心4aと略平行に延在するようにトランスミッションケースCに取り付けられる。また、モータ12は、トランスミッションケースCの外側でパーキングギヤ2やパーキングポール3の側方に並ぶ。上述のような連結部材8Cを含むパーキングロック装置1Cにおいても、当該連結部材8Cを介してアクチュエータロッド11とパーキングロッド4とを連結することで、トランスミッションケースCに対する直動アクチュエータ10の配置の自由度をより向上させることが可能になる。なお、パーキングロック装置1Cにおいて、アクチュエータロッド11の軸心11aと、パーキングロッド4の軸心4aとは、必ずしも平行に延在している必要はなく、軸心11aと軸心4aとのなす角度は、例えば、0°から45°の範囲に含まれてもよい。
【0035】
図8は、本開示の他のパーキングロック装置1Dを示す概略構成図である。なお、パーキングロック装置1Dの構成要素のうち、上述のパーキングロック装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
図8に示すパーキングロック装置1Dにおいて、連結部材8Dの2つの係合爪81,82は、連結部80に関して、支軸SS(被支持部)の反対側に位置するように当該連結部材8Dに形成されている。また、2つの係合爪81,82の延在方向と、パーキングロッド4の基端部が差し込まれる連結部80の孔部の中心と支軸SSの軸心とを結ぶ直線とのなす角度は、例えば0°から45°までの範囲内に含まれる。更に、パーキングロック装置1Cにおいて、直動アクチュエータ10のモータ12は、アクチュエータロッド11(および回転軸14)の軸心11aがパーキングロッド4に沿って、当該パーキングロッド4の軸心4aと略平行に延在するようにトランスミッションケースCに取り付けられる。
【0037】
また、モータ12は、トランスミッションケースCの外側で、連結部材8Dに関して、パーキングギヤ2やパーキングポール3、パーキングロッド4およびカム部材5の反対側に位置する。上述のような連結部材8Dを含むパーキングロック装置1Dにおいても、当該連結部材8Dを介してアクチュエータロッド11とパーキングロッド4とを連結することで、トランスミッションケースCに対する直動アクチュエータ10の配置の自由度をより向上させることが可能になる。なお、パーキングロック装置1Dにおいて、アクチュエータロッド11の軸心11aと、パーキングロッド4の軸心4aとは、必ずしも平行に延在している必要はなく、軸心11aと軸心4aとのなす角度は、例えば、0°から45°の範囲に含まれてもよい。また、パーキングロック装置1Dから連結部材8Dが省略されてもよく、直動アクチュエータ10のアクチュエータロッド11がピン結合部を介してパーキングロッド4に直接連結されてもよい。
【0038】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示の発明は、パーキングロック装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1,1B,1C,1D パーキングロック装置、8、8B,8C,8D 連結部材、10 直動アクチュエータ、11 アクチュエータロッド、12 モータ(駆動源)、13 ピン、80 連結部、81,82 係合爪、TS 伝動軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8