(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172005
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】偏光フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241205BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20241205BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241205BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241205BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241205BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20241205BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241205BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241205BHJP
C08F 30/06 20060101ALI20241205BHJP
C08L 85/04 20060101ALI20241205BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20241205BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
G02F1/13363
C09D7/63
C09D201/00
C08F30/06
C08L85/04
C08K3/38
C08F2/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089411
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】三田 聡司
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
4J002
4J011
4J038
4J100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
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2H149FA01Y
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2H149FA21Y
2H149FA66
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2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
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2H291FC05
2H291FC08
2H291HA06
2H291HA09
2H291HA13
2H291PA24
2H291PA53
2H291PA79
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE26
4J002BQ001
4J002DK006
4J002FD146
4J002GP00
4J011AA05
4J011CA01
4J011CC04
4J011CC09
4J038JC37
4J038PB08
4J100AM21P
4J100AM21Q
4J100BA87P
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5G435AA17
5G435BB05
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5G435HH02
5G435KK07
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL10
(57)【要約】
【課題】偏光特性の加湿信頼性に優れた偏光フィルムおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備える偏光フィルムであって、硬化物層が特定のホウ素含有化合物およびホウ酸を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物層である偏光フィルム。硬化性樹脂組成物中の特定のホウ素含有化合物とホウ酸との質量比が1:0.1~1:30.0であることが好ましい。硬化性樹脂組成物中の一般式(1)で表される化合物の含有量が0.05~5質量%であり、ホウ酸の含有量が0.1~2質量%であることが好ましい。偏光子はホウ酸を10~22質量%含有する偏光子であることが好ましい。偏光子のホウ酸を含有する割合をA質量%、硬化性樹脂組成物のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備える偏光フィルムであって、
前記硬化物層が下記一般式(1):
【化1】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)およびホウ酸を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物中の前記一般式(1)で表される化合物と前記ホウ酸との質量比が1:0.1~1:30.0である請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物はさらに下記一般式(2):
【化2】
で表される化合物(ただし、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、R
5およびR
6は環状複素環を形成してもよい)を含有するものである請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
前記硬化性樹脂組成物中の前記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.05~5質量%であり、前記ホウ酸の含有量が0.1~2質量%である請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項5】
前記偏光子はホウ酸を10~22質量%含有する偏光子である請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項6】
前記偏光子のホウ酸を含有する割合をA質量%、前記硬化性樹脂組成物のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1である請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項7】
前記硬化物層の厚みが1μm以上、2μm以下である請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項8】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムであって、前記接着剤層が前記硬化物層である請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項9】
前記透明保護フィルムがトリアセチルセルロース系樹脂フィルムである請求項8記載の偏光フィルム。
【請求項10】
前記透明保護フィルムと前記接着剤層との間に、互いが相溶した相溶層を備える請求項8に記載の偏光フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載の偏光フィルムが、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム。
【請求項12】
請求項1に記載の偏光フィルム、または請求項11に記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムの製造方法であって、
前記接着剤層は、少なくとも第1組成物および第2組成物で構成された硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、
前記第1組成物は、少なくとも下記一般式(1):
【化3】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)およびホウ酸を含有し、
前記第2組成物は、少なくとも下記一般式(2):
【化4】
で表される化合物(ただし、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、R
5およびR
6は環状複素環を形成してもよい)を含有し、
前記偏光子の貼合面に第1組成物を塗工する第1塗工工程と、前記透明保護フィルムの貼合面に第2組成物を塗工する第2塗工工程と、
前記偏光子および前記透明保護フィルムを貼り合わせる貼合工程と、
前記偏光子面側または前記透明保護フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、前記硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた前記接着剤層を介して、前記偏光子および前記透明保護フィルムを接着させる接着工程とを含むことを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記第1組成物中の前記一般式(1)で表される化合物と前記ホウ酸との質量比が1:0.1~1:30.0である請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記硬化性樹脂組成物中の前記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.05~5質量%であり、前記ホウ酸の含有量が0.1~2質量%である請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記偏光子はホウ酸を10~22質量%含有する偏光子である請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記偏光子のホウ酸を含有する割合をA質量%、前記硬化性樹脂組成物のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1である請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記第1塗工工程後の前記第1組成物の乾燥前塗工厚みが0.6~2.0μmであり、乾燥後塗工厚みが0.3~1.0μmである請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記接着剤層の厚みが1μm以上、2μm以下である請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備える偏光フィルム、特には偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムおよびその製造方法に関する。当該偏光フィルムはこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDPなどの画像表示装置を形成し得る。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。特に、TVなどの用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光フィルムにおいてもますます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
偏光子としては、高透過率、高偏光度を有することから、例えばポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」ともいう)にヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が最も一般的に広く使用されている。一般的に偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系の材料を水に溶かしたいわゆる水系接着剤によって、偏光子の両面に透明保護フィルムを貼り合わせたものが用いられている(下記特許文献1)。透明保護フィルムとしては、透湿度の高いトリアセチルセルロースなどが用いられる。前記水系接着剤を用いた場合(いわゆるウェットラミネーション)には、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。
【0004】
一方、前記水系接着剤の代わりに、活性エネルギー線硬化性接着剤が提案されている。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光フィルムを製造する場合には、乾燥工程を必要としないため、偏光フィルムの生産性を向上させることができる。例えば、本発明者らにより、N-置換アミド系モノマーを硬化性成分として使用した、ラジカル重合型の活性エネルギー線硬化性接着剤が提案されている(下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-296427号公報
【特許文献2】特開2012-052000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて形成された接着剤層は、例えば60℃温水に6時間浸漬後の色抜け、ハガレの有無を評価する耐水性試験に関しては、十分クリア可能である。しかしながら近年では、耐水性試験がより過酷な条件に代わってきていることに加え、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性を維持向上することが要求されてきている。したがって、特許文献2に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤も含めて、現在まで報告されている偏光フィルム用接着剤については、特に偏光特性の加湿信頼性の点でさらなる改良の余地があるのが実情であった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて開発されたものであり、偏光特性の加湿信頼性に優れた偏光フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
さらには、前記偏光フィルムを用いた光学フィルムを提供すること、前記偏光フィルムまたは光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、偏光子の少なくとも一方の面に備えられた硬化物層に特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを共存させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備える偏光フィルムであって、前記硬化物層が下記一般式(1):
【化1】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)およびホウ酸を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする偏光フィルム(1)に関する。
【0011】
上記偏光フィルム(1)において、前記硬化性樹脂組成物中の前記一般式(1)で表される化合物と前記ホウ酸との質量比が1:0.1~1:30.0である偏光フィルム(2)が好ましい。
【0012】
上記偏光フィルム(1)または(2)において、前記硬化性樹脂組成物はさらに下記一般式(2):
【化2】
で表される化合物(ただし、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、R
5およびR
6は環状複素環を形成してもよい)を含有するものである偏光フィルム(3)が好ましい。
【0013】
上記偏光フィルム(1)~(3)のいずれかにおいて、前記硬化性樹脂組成物中の前記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.05~5質量%であり、前記ホウ酸の含有量が0.1~2質量%である偏光フィルム(4)が好ましい。
【0014】
上記偏光フィルム(1)~(4)のいずれかにおいて、前記偏光子はホウ酸を10~22質量%含有する偏光子である偏光フィルム(5)が好ましい。
【0015】
上記偏光フィルム(1)~(5)において、前記偏光子のホウ酸を含有する割合をA質量%、前記硬化性樹脂組成物のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1である偏光フィルム(6)が好ましい。
【0016】
上記偏光フィルム(1)~(6)のいずれかにおいて、前記硬化物層の厚みが1μm以上、2μm以下である偏光フィルム(7)が好ましい。
【0017】
上記偏光フィルム(1)~(7)のいずれかにおいて、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムであって、前記接着剤層が前記硬化物層である偏光フィルム(8)が好ましい。
【0018】
上記偏光フィルム(8)において、前記透明保護フィルムがトリアセチルセルロース系樹脂フィルムである偏光フィルム(9)が好ましい。
【0019】
上記偏光フィルム(8)または(9)において、前記透明保護フィルムと前記接着剤層との間に、互いが相溶した相溶層を備える偏光フィルム(10)が好ましい。
【0020】
また本発明は、上記偏光フィルム(1)~(10)のいずれかが、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム(11)に関する。さらに本発明は、上記偏光フィルム(1)~(10)のいずれか、または上記光学フィルム(11)が用いられていることを特徴とする画像表示装置(12)に関する。
【0021】
また本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムの製造方法であって、前記接着剤層は、少なくとも第1組成物および第2組成物で構成された硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、
前記第1組成物は、少なくとも下記一般式(1):
【化3】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)およびホウ酸を含有し、
前記第2組成物は、少なくとも下記一般式(2):
【化4】
で表される化合物(ただし、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、R
5およびR
6は環状複素環を形成してもよい)を含有し、前記偏光子の貼合面に第1組成物を塗工する第1塗工工程と、前記透明保護フィルムの貼合面に第2組成物を塗工する第2塗工工程と、前記偏光子および前記透明保護フィルムを貼り合わせる貼合工程と、前記偏光子面側または前記透明保護フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、前記硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた前記接着剤層を介して、前記偏光子および前記透明保護フィルムを接着させる接着工程とを含むことを特徴とする偏光フィルムの製造方法(13)に関する。
【0022】
上記偏光フィルムの製造方法(13)において、前記第1組成物中の前記一般式(1)で表される化合物と前記ホウ酸との質量比が1:0.1~1:30.0である偏光フィルムの製造方法(14)が好ましい。
【0023】
上記偏光フィルムの製造方法(13)または(14)において、前記硬化性樹脂組成物中の前記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.05~5質量%であり、前記ホウ酸の含有量が0.1~2質量%である偏光フィルムの製造方法(15)が好ましい。
【0024】
上記偏光フィルムの製造方法(13)~(15)のいずれかにおいて、前記偏光子はホウ酸を10~22質量%含有する偏光子である偏光フィルムの製造方法(16)が好ましい。
【0025】
上記偏光フィルムの製造方法(13)~(16)のいずれかにおいて、前記偏光子のホウ酸を含有する割合をA質量%、前記硬化性樹脂組成物のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1である偏光フィルムの製造方法(17)が好ましい。
【0026】
上記偏光フィルムの製造方法(13)~(17)のいずれかにおいて、前記第1塗工工程後の前記第1組成物の乾燥前塗工厚みが0.6~2.0μmであり、乾燥後塗工厚みが0.3~1.0μmである偏光フィルムの製造方法(18)が好ましい。
【0027】
上記偏光フィルムの製造方法(13)~(18)のいずれかにおいて、前記接着剤層の厚みが1μm以上、2μm以下である偏光フィルムの製造方法(19)が好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る偏光フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備えるものであり、該硬化物層が一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物層であるため、偏光特性の加湿信頼性に優れる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定可能である。
【0029】
偏光子の少なくとも一方の面に備える硬化物層は、硬化性樹脂組成物を原料として形成され、硬化性樹脂組成物は、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物を含有する。一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物は、ホウ酸基(あるいはホウ酸エステル基)と反応性基Xとを含有し、ホウ酸基(あるいはホウ酸エステル基)は偏光子表面に存在する水酸基などの官能基と共有結合を形成し得る。また、反応性基Xは硬化性樹脂組成物に含まれる他の硬化性成分と反応し、やはり共有結合を形成し得る。したがって、偏光子と硬化物層との界面密着力を向上し、かつ偏光子の膨潤を抑制するためには、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物の反応性を高めることが極めて重要である。本発明者らの鋭意検討の結果、硬化物層の原料となる硬化性樹脂組成物中に一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを併存させることにより、ホウ酸が一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物の反応性を著しく向上できることが判明した。つまり、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを共存させることにより、硬化物層と偏光子との界面密着力が飛躍的に高まるため、偏光フィルムが高温加湿環境下に曝された場合であっても、偏光子の膨潤が抑制され、その結果、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性が著しく向上するものと推定される。加えて、硬化物層の原料となる硬化性樹脂組成物中にホウ酸が存在する場合、ホウ酸は偏光子内の架橋反応にも寄与し得る。したがって、偏光フィルムが高温加湿環境下に曝された場合であっても、ホウ酸による偏光子内の架橋反応により、偏光子の膨潤が抑制される。つまりホウ酸に起因した偏光子内の架橋反応によっても、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性が著しく向上するものと推定される。
【0030】
また、本発明は偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムの製造方法に関する。かかる接着剤層は、少なくとも第1組成物および第2組成物で構成された硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、第1組成物が一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを含有する場合、最終的に製造される偏光フィルムは、偏光特性の加湿信頼性が著しく向上する。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定可能である。
【0031】
一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物は、ホウ酸基(あるいはホウ酸エステル基)と反応性基Xとを含有し、ホウ酸基(あるいはホウ酸エステル基)は偏光子表面に存在する水酸基などの官能基と共有結合を形成し、反応性基Xは硬化性樹脂組成物に含まれる他の硬化性成分と反応し、やはり共有結合を形成し得る。したがって、偏光子と硬化物層との界面密着力を向上し、かつ偏光子の膨潤を抑制するためには、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物の反応性を高めることが極めて重要である。本発明者らの鋭意検討の結果、硬化物層の原料となる硬化性樹脂組成物中に一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを併存させることにより、ホウ酸が一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物の反応性を著しく向上できることが判明した。つまり、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを共存させることにより、硬化物層と偏光子との界面密着力が飛躍的に高まるため、偏光フィルムが高温加湿環境下に曝された場合であっても、偏光子の膨潤が抑制され、その結果、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性が著しく向上するものと推定される。加えて、硬化物層の原料となる硬化性樹脂組成物中にホウ酸が存在する場合、ホウ酸は偏光子内の架橋反応に寄与し得る。したがって、偏光フィルムが高温加湿環境下に曝された場合であっても、ホウ酸による偏光子内の架橋反応により、偏光子の膨潤が抑制される。つまりホウ酸に起因した偏光子内の架橋反応によっても、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性が著しく向上するものと推定される。特に本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とを含有する第1組成物を偏光子の貼合面に塗工するため、偏光子の表面に一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物とホウ酸とが高濃度で存在することとなる。したがって、一般式(1)で表される特定のホウ素含有化合物が偏光子と速やかにかつ効率よく反応し、さらにホウ酸に起因した偏光子内の架橋反応も速やかにかつ効率よく進行する。したがって、本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、偏光特性の加湿信頼性が著しく向上した偏光フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る偏光フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備える偏光フィルムである。該硬化物層は下記一般式(1):
【化5】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)およびホウ酸を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物層である。前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の置換基を有してもよい直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3~20の置換基を有してもよい環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられ、アリール基としては、炭素数6~20の置換基を有してもよいフェニル基、炭素数10~20の置換基を有してもよいナフチル基等が挙げられ、ヘテロ環基としては例えば、少なくとも一つのヘテロ原子を含む、置換基を有してもよい5員環または6員環の基が挙げられる。これらは互いに連結して環を形成してもよい。一般式(1)中、R
1およびR
2として好ましくは、水素原子、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子である。
【0033】
一般式(1)で表される化合物が有するXは反応性基であって、硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性成分と反応し得る官能基であり、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、α,β-不飽和カルボニル基、メルカプト基、ハロゲン基などが挙げられる。硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性である場合、反応性基Xは、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基およびメルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物がラジカル重合性である場合、反応性基Xは、(メタ)アクリル基、スチリル基および(メタ)アクリルアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、一般式(1)で表される化合物が(メタ)アクリルアミド基を有する場合、反応性が高く、硬化物層、特には接着剤層中の硬化性成分との共重合率が高まるためより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド基の極性が高く、接着性に優れるため本発明の効果を効率的に得られるという点からも好ましい。硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物がカチオン重合性である場合、反応性基Xは、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド、カルボキシル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、メルカプト基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有することが好ましく、特にエポキシ基を有する場合、得られる硬化物層、特には接着剤層と被着体との密着性に優れるため好ましく、ビニルエーテル基を有する場合、硬化性樹脂組成物の硬化性が優れるため好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(1a)~(1d)が挙げられる。なお、一般式(1a)および(1b)中のR
3は水素原子またはメチル基である。
【化6】
【0035】
一般式(1)で表される化合物としては、前記例示した化合物以外にも、ヒドロキシエチルアクリルアミドとホウ酸のエステル、メチロールアクリルアミドとホウ酸のエステル、ヒドロキシエチルアクリレートとホウ酸のエステル、およびヒドロキシブチルアクリレートとホウ酸のエステルなど、(メタ)アクリレートとホウ酸とのエステルを例示可能である。
【0036】
本発明に係る偏光フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層、特には接着剤層を備える。該硬化物層、特に接着剤層は、硬化性樹脂組成物を原料として形成される。硬化性樹脂組成物は単一の組成物のみで構成してもよく、2以上の組成物、例えば第1組成物と第2組成物とで構成してもよい。硬化性樹脂組成物を単一の組成物のみで構成する場合、硬化物層、特には接着剤層を形成するために、硬化性樹脂組成物を偏光子の貼合面に塗工してもよく、他の被着体、例えば透明保護フィルムの貼合面に塗工してもよい。硬化性樹脂組成物を2以上の組成物、例えば第1組成物と第2組成物とで構成する場合、第1組成物を偏光子の貼合面に塗工し、第2組成物を他の被着体、例えば透明保護フィルムの貼合面に塗工してもよく、この場合、第1組成物に一般式(1)で表される化合物およびホウ酸を配合することが好ましい。なお、一般式(1)で表される化合物およびホウ酸を配合した第1組成物中には、他に硬化性成分や水などの溶媒を配合してもよい。ただし、水などの溶媒を配合した場合、例えば偏光子の貼合面に第1組成物を塗工した後、乾燥工程を設けることで偏光子の貼合面に塗工した第1組成物から水などの溶媒を除去する必要がある。このため、本発明において硬化性樹脂組成物中の配合量を計算する際は、水などの溶媒を除いて計算するものとする。
【0037】
偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物中の一般式(1)で表される化合物の配合量は、0.05~5質量%であることが好ましく、1.0~3.0質量%であることが好ましい。同様に、硬化性樹脂組成物中のホウ酸の配合量は0.1~2質量%であることが好ましく、0.2~1.0質量%であることがより好ましい。
【0038】
さらに、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物中の一般式(1)で表される化合物とホウ酸との質量比は、1:0.10~1:30.0であることが好ましく、1:0.15~1:5であることが端部脱色抑制効果の観点からより好ましい。
【0039】
硬化性樹脂組成物は上記一般式(1)に記載の化合物およびホウ酸に加え、硬化性成分やその他の成分を配合することができる。本発明において使用する硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合硬化性樹脂組成物とカチオン重合硬化性樹脂組成物に区分出来る。本発明において、波長範囲10nm~380nm未満の活性エネルギー線を紫外線、波長範囲380nm~800nmの活性エネルギー線を可視光線として表記する。
【0040】
ラジカル重合硬化性樹脂組成物を構成する硬化性成分としては、例えば、下記一般式(2):
【化7】
で表される化合物(ただし、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、R
5およびR
6は環状複素環を形成してもよい)が挙げられる。アルキル基、ヒドロキシアルキル基、および/またはアルコキシアルキル基のアルキル部分の炭素数は特に限定されないが、例えば1~4個のものが例示される。また、R
5およびR
6が形成してもよい環状複素環は、例えばN-アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0041】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体などが挙げられる。また、環状エーテル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられ、例えば、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等があげられる。これらのなかでも、反応性に優れる点、高弾性率の硬化物を得られる点、偏光子への接着性に優れる点から、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリンを好適に使用することができる。
【0042】
硬化性樹脂組成物を2つの組成物、例えば第1組成物と第2組成物とで構成する場合、一般式(2)で表される化合物は第2組成物のみに配合してもよく、第1組成物および第2組成物の両方に配合してもよい。
【0043】
偏光子と接着剤層との接着性および耐水性向上、特には偏光子と透明保護フィルムとを接着剤層を介して接着させる場合の接着性および耐水性向上の見地から、硬化性樹脂組成物中、一般式(2)に記載の化合物の含有量は、20~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。
【0044】
また、本発明において使用する硬化性樹脂組成物は、一般式(2)で表される化合物以外に、硬化性成分として、他の単官能ラジカル重合性化合物を含有してもよい。単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する各種の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類が挙げられる。
【0045】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、などの多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;などが挙げられる。これらのなかでも各種保護フィルムとの接着性に優れることから、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ-ト、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0046】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレートなどのオキセタン基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブチロラクトン(メタ)アクリレート、などの複素環を有する(メタ)アクリレートや、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのなかでも、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートは各種保護フィルムとの接着性に優れるため好ましい。
【0047】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0048】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドンなどのラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどの窒素含有複素環を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0049】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、末端または分子中に(メタ)アクリル基などの活性二重結合基を有し、かつ活性メチレン基を有する化合物である。活性メチレン基としては、例えばアセトアセチル基、アルコキシマロニル基、またはシアノアセチル基などが挙げられる。前記活性メチレン基がアセトアセチル基であることが好ましい。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;2-エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N-(2-シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N-(2-プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N-(4-アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N-(2-アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミドなどが挙げられる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0050】
ラジカル重合硬化性樹脂組成物を構成する硬化性成分として二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物を配合することができる。多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリルアミド誘導体であるN,N‘-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオぺンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンがあげられる。具体例としては、アロニックスM-220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)、SR-531(Sartomer社製)、CD-536(Sartomer社製)などが好ましい。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。なお、多官能(メタ)アクリルアミド誘導体は、重合速度が速く生産性に優れる上、樹脂組成物を硬化物とした場合の架橋性に優れるため、硬化性樹脂組成物に含有させることが好ましい。
【0051】
ラジカル重合性化合物は、偏光子や各種透明保護フィルムとの接着性と、過酷な環境下における光学耐久性を両立させる観点から、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。硬化性樹脂組成物中の単官能ラジカル重合性化合物の配合量は、30~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。硬化性樹脂組成物中の多官能ラジカル重合性化合物の配合量は、10~70質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましい。
【0052】
<ラジカル重合硬化性樹脂組成物の態様>
本発明で使用する硬化性樹脂組成物は、硬化性成分を活性エネルギー線硬化性成分として用いる場合には活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として用いることができる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線に電子線などを用いる場合には、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤を含有することは必要ではないが、活性エネルギー線に紫外線または可視光線を用いる場合には、光重合開始剤を含有するのが好ましい。
【0053】
光重合開始剤は、活性エネルギー線によって適宜に選択される。紫外線または可視光線により硬化させる場合には紫外線または可視光線開裂の光重合開始剤が用いられる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインブチルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、ドデシルチオキサントンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。
【0054】
前記光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全量を100質量部としたとき、0.5~5質量部含有するものであることが好ましく、1~4質量部含有するものであることがより好ましい。
【0055】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を可視光線硬化型で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
【0056】
前記光重合開始剤としては、下記一般式(3)で表される化合物;
【化8】
(式中、R
7およびR
8は-H、-CH
2CH
3、-iPrまたはClを示し、R
7およびR
8は同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(3)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(3)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて接着性に優れる。一般式(3)で表される化合物の中でも、R
7およびR
8が-CH
2CH
3であるジエチルチオキサントンが特に好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の一般式(3)で表される化合物の配合量は、硬化性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.1~4質量%含有するものであることが好ましく、0.5~3質量%含有するものであることがより好ましい。
【0057】
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全量を100質量部としたとき、0.1~3質量部含有するものであることが好ましく、0.3~1質量部含有するものであることがより好ましい。
【0058】
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する光学機能層および基材フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0059】
本発明においては、硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーを含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物中にアクリル系オリゴマーを含有することで、該組成物に活性エネルギー線を照射・硬化させる際の硬化収縮を低減し、接着剤層と、光学機能層および基材フィルムなどの被着体との界面応力を低減することができる。その結果、接着剤層と被着体との密着性の低下を抑制することができる。
【0060】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗工時の作業性や均一性を考慮した場合、低粘度であることが好ましいため、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーも低粘度であることが好ましい。低粘度であって、かつ接着剤層の硬化収縮を防止できるアクリル系オリゴマーとしては、重量平均分子量(Mw)が15000以下のものが好ましく、10000以下のものがより好ましく、5000以下のものが特に好ましい。一方、硬化物層(接着剤層)の硬化収縮を十分に抑制するためには、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。アクリル系オリゴマーを構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、S-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、N-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。アクリル系オリゴマー(E)の具体例としては、東亞合成社製「ARUFON」、綜研化学社製「アクトフロー」、BASFジャパン社製「JONCRYL」などが挙げられる。
【0061】
硬化性樹脂組成物中のアクリル系オリゴマーの配合量は、3~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0062】
本発明で使用する硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤の具体例としては、活性エネルギー線硬化性の化合物としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0063】
好ましくは、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。
【0064】
上記以外の活性エネルギー線硬化性ではないシランカップリング剤の具体例としては、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
【0065】
本発明で使用する硬化性樹脂組成物は、カチオン重合硬化性樹脂組成物であってもよい。カチオン重合硬化性樹脂組成物に使用されるカチオン重合性化合物としては、分子内にカチオン重合性官能基を1つ有する単官能カチオン重合性化合物と、分子内にカチオン重合性官能基を2つ以上有する多官能カチオン重合性化合物とに分類される。単官能カチオン重合性化合物は比較的液粘度が低いため、カチオン重合硬化性樹脂組成物に含有させることで液粘度を低下させることができる。また、単官能カチオン重合性化合物は各種機能を発現させる官能基を有している場合が多く、カチオン重合硬化性樹脂組成物に含有させることで、カチオン重合硬化性樹脂組成物及び/又はカチオン重合硬化性樹脂組成物の硬化物に各種機能を発現させることができる。多官能カチオン重合性化合物は、カチオン重合硬化性樹脂組成物の硬化物を3次元架橋させることができるため、カチオン重合硬化性樹脂組成物に含有させることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物の比は、単官能カチオン重合性化合物100質量部に対して、多官能カチオン重合性化合物を10質量部から1000質量部の範囲で混合することが好ましい。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基やオキセタニル基、ビニルエーテル基が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられ、本発明のカチオン重合性樹脂組成物としては、硬化性や接着性に優れることから、脂環式エポキシ化合物を含有することが特に好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのカプロラクトン変性物やトリメチルカプロラクトン変性物やバレロラクトン変性物等が挙げられ、具体的には、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085(以上、ダイセル化学工業(株製)、サイラキュアUVR-6105、サイラキュアUVR-6107、サイラキュア30、R-6110(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)等が挙げられる。オキセタニル基を有する化合物は、カチオン重合性樹脂組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。オキセタニル基を有する化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられ、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-211、アロンオキセタンOXT-221、アロンオキセタンOXT-212(以上、東亞合成社製)等が市販されている。ビニルエーテル基を有する化合物は、カチオン重合性樹脂組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールものビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ペンタエリスリトール型テトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0066】
カチオン重合硬化性樹脂組成物は、硬化性成分として以上説明したエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、光カチオン重合開始剤が配合される。この光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。光カチオン重合開始剤としては、後述の光酸発生剤が好適に使用される。またカチオン重合性樹脂組成物を可視光線硬化性で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光カチオン重合開始剤を用いることが好ましいが、光カチオン重合開始剤は一般に、300nm付近またはそれより短い波長域に極大吸収を示す化合物であるため、それより長い波長域、具体的には380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を配合することで、この付近の波長の光に感応し、光カチオン重合開始剤からのカチオン種または酸の発生を促進させることができる。光増感剤としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられ、これらは、2種類以上を混合して使用してもよい。特にアントラセン化合物は、光増感効果に優れるため好ましく、具体的にはアントラキュアUVS-1331、アントラキュアUVS-1221(川崎化成社製)が挙げられる。光増感剤の含有量は、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0067】
本発明においては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、光酸発生剤を含有してもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤を含有しない場合に比べて、接着剤層の耐水性および耐久性を飛躍的に向上することができる。光酸発生剤は、下記一般式(3)で表すことができる。
【0068】
一般式(4)
【化9】
(ただし、L
+は、任意のオニウムカチオンを表す。また、X
-は、PF6
6
-、SbF
6
-、AsF
6
-、SbCl
6
-、BiCl
5
-、SnCl
6
-、ClO
4
-、ジチオカルバメートアニオン、SCN-よりからなる群より選択されるカウンターアニオンを表す。)
【0069】
次に、一般式(4)中のカウンターアニオンX-について説明する。
【0070】
一般式(4)中のカウンターアニオンX-は原理的に特に限定されるものではないが、非求核性アニオンが好ましい。カウンターアニオンX-が非求核性アニオンの場合、分子内に共存するカチオンや併用される各種材料における求核反応が起こりにくいため、結果として一般式(4)で表記される光酸発生剤自身やそれを用いた組成物の経時安定性を向上させることが可能である。ここでいう非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が低いアニオンを指す。このようなアニオンとしては、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、SbCl6
-、BiCl5
-、SnCl6
-、ClO4
-、B(C6H5)4
-、ジチオカルバメートアニオン、SCN-などが挙げられる。
【0071】
具体的には、「サイラキュアーUVI-6992」、「サイラキュアーUVI-6974」(以上、ダウ・ケミカル日本株式会社製)、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP152」、「アデカオプトマーSP170」、「アデカオプトマーSP172」(以上、株式会社ADEKA製)、「Omnicat250」(IGM Resins B.V.社製)、「CI-5102」、「CI-2855」(以上、日本曹達社製)、「サンエイドSI-60L」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110L」、「サンエイドSI-180L」(以上、三新化学社製)、「IK-1」、「CPI-100P」、「CPI-101A」、「CPI-110P」、「CPI-200K」、「CPI-210S」、「CPI-310B」、「CPI-410B」、「CPI-410S」(以上、サンアプロ株式会社製)、「WPI-069」、「WPI-113」、「WPI-116」、「WPI-041」、「WPI-044」、「WPI-054」、「WPI-055」、「WPAG-281」、「WPAG-567」、「WPAG-596」(以上、富士フイルム和光純薬社製)が本発明の光酸発生剤の好ましい具体例として挙げられる。
【0072】
本発明に係る偏光フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に硬化物層を備える偏光フィルムであり、好適には、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムであって、接着剤層が硬化物層である。
【0073】
硬化物層(接着剤層)の厚みは、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、1μm以上、2μm以下であることが好ましい。
【0074】
本発明に係る偏光フィルムが、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムである場合、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、透明保護フィルムと接着剤層との間に、互いが相溶した相溶層を備えることが好ましい。相溶層形成の確認方法については後述する。
【0075】
本発明において、偏光子は特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素を吸着させて一軸延伸したものなどが挙げられる。偏光子の厚みとしては例えば3~20μmが挙げられる。
【0076】
ただし、本発明においては高温高湿下の過酷な環境における加湿信頼性向上の観点から、偏光子として厚みが3μm以上、15μm以下の薄型偏光子を用いることが好ましい。特に12μm以下であるのが好ましく、さらには10μm以下、特には8μm以下であるのが好ましい。このような薄型偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0077】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0078】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や加湿信頼性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラックの発生抑制の観点から、偏光子全量に対して22質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがさらに好ましい。延伸安定性や加湿信頼性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10質量%以上であることが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。
【0079】
偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、本発明に係る偏光フィルムにおいては、偏光子のホウ酸含有量の割合をA質量%、硬化性樹脂組成物中のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1であることが好ましく、A:B=1:0.01~1:0.05であることがより好ましい。
【0080】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
などに記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0081】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0082】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース系樹脂フィルムなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0083】
また透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましく、特に透湿度が150g/m2/24h以下であるものがより好ましく、140g/m2/24h以下のものが特に好ましく、120g/m2/24h以下のものさらに好ましい。
【0084】
透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0085】
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1~500μm程度であり、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。さらには10~200μmが好ましく、20~80μmが好ましい。
【0086】
前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差フィルムを用いることができる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0087】
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、20~150μm程度が一般的である。
【0088】
位相差フィルムとしては、下記式(1)ないし(3):
0.70<Re[450]/Re[550]<0.97・・・(1)
1.5×10-3<Δn<6×10-3・・・(2)
1.13<NZ<1.50・・・(3)
(式中、Re[450]およびRe[550]は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した位相差フィルムの面内の位相差値であり、Δnは位相差フィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率を、それぞれnx、nyとしたときのnx-nyである面内複屈折であり、NZはnzを位相差フィルムの厚み方向の屈折率としたときの、厚み方向複屈折であるnx-nzと面内複屈折であるnx-nyとの比である)を満足する逆波長分散型の位相差フィルムを用いてもよい。
【0089】
本発明に係る偏光フィルムにおいては位相差層が設けられてもよい。位相差層は単層であっても複数層であってもよく、位相差層が偏光子の保護層を兼ねてもよい。
【0090】
位相差層の形成には液晶性化合物が好ましく用いられ 該液晶性化合物を含む溶媒を、例えばワイヤーバー、ギャップコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スロットダイなどを使用して塗布することができる。この際、塗布された液晶性溶液は、自然乾燥させてもよいし、加熱乾燥させてもよい。なお、液晶性溶液は、等方相-液晶相転移濃度よりも低い濃度、即ち、等方相状態で塗工することが好ましい。この場合、ラビング処理や光配向などの方法により安定的に配向させることができる。
【0091】
本発明に係る偏光フィルムが、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムである場合、好適には下記の製造方法により製造可能である。
【0092】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが積層された偏光フィルムの製造方法であって、接着剤層は、少なくとも第1組成物および第2組成物で構成された硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、第1組成物は、少なくとも下記一般式(1):
【化10】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)およびホウ酸を含有し、第2組成物は、少なくとも下記一般式(2):
【化11】
で表される化合物(ただし、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基または環状エーテル基であって、R
5およびR
6は環状複素環を形成してもよい)を含有し、偏光子の貼合面に第1組成物を塗工する第1塗工工程と、透明保護フィルムの貼合面に第2組成物を塗工する第2塗工工程と、偏光子および透明保護フィルムを貼り合わせる貼合工程と、偏光子面側または透明保護フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた接着剤層を介して、偏光子および透明保護フィルムを接着させる接着工程とを含む偏光フィルムの製造方法。以下、各工程などについて説明する。
【0093】
上記製造方法では硬化性樹脂組成物が第1組成物および第2組成物で構成される。ただし、本発明に係る偏光フィルムは、単一の硬化性樹脂組成物の硬化物層で接着剤層が構成されてもよい。上記第1組成物は、少なくとも一般式(1)で表される化合物とホウ酸とを含有する。必要に応じて、第1組成物は他に、前記一般式(2)で表される化合物などの硬化性成分を含有してもよい。
【0094】
第1組成物は、溶媒および添加剤を含有してもよい。溶媒としては、一般式(1)で表される化合物を安定化して、溶解または分散し得るものが好ましい。かかる溶媒は、有機溶媒、水、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。前記溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ヒドロキシエチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;等から選択される。添加剤としては、たとえば、バインダー樹脂、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、低分子量ポリマー、重合性モノマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、チタンカップリング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などが挙げられる。前記バインダー樹脂としては、透明であればよく、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等のポリマーが挙げられる。
【0095】
上記製造方法では硬化性樹脂組成物が第1組成物および第2組成物で構成されるが、第1組成物が水などの溶媒を含有する場合はその含有量を除いた上で、第1組成物を含む硬化性樹脂組成物中、一般式(1)で表される化合物の配合量は、0.05~5質量%であることが好ましく、1.0~3.0質量%であることが好ましい。同様に、硬化性樹脂組成物中のホウ酸の配合量は0.1~2質量%であることが好ましく、0.2~1.0質量%であることがより好ましい。
【0096】
製造する偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の見地から、上記製造方法で使用する偏光子は、ホウ酸を10~22質量%含有する偏光子であることが好ましく、さらに偏光子のホウ酸を含有する割合をA質量%、硬化性樹脂組成物のホウ酸を含有する割合をB質量%としたとき、A:B=1:0.001~1:0.1であることが好ましく、A:B=1:0.01~1:0.05であえうころがより好ましい。
【0097】
第2組成物は、少なくとも前記一般式(2)で表される化合物を含有する。必要に応じて、第2組成物は一般式(1)で表される化合物および/またはホウ酸を含有してもよい。
【0098】
上記偏光フィルムの製造方法では、第1塗工工程において偏光子の貼合面に第1組成物を塗工し、第2塗工工程において透明保護フィルムに第2組成物を塗工する。硬化性樹脂組成物単独、あるいは第1組成物と第2組成物を塗工する方法としては、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜選択され、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。硬化性樹脂組成物単独、あるいは第1組成物と第2組成物の粘度は3~100mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5~50mPa・sであり、最も好ましくは10~30mPa・sである。組成物の粘度が高い場合、塗工後の表面平滑性が乏しく外観不良が発生するため好ましくない。このため、各組成物を加熱または冷却して好ましい範囲の粘度に調整して塗布することができる。なお、第1組成物が溶媒などの水を含有する場合、第1塗工工程後に乾燥工程を設けてもよい。
【0099】
偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の見地から、第1塗工工程における第1塗工工程後の乾燥前厚みは0.6~2.0μmであることが好ましく、乾燥後厚みは0.3~1.0μmであることが好ましい。第2塗工工程における塗工厚みは、所望の接着剤層厚みとなるように適宜調整すればよい。
【0100】
なお偏光子および/または透明保護フィルムは、塗工工程前に表面改質処理を行ってもよい。特に偏光子は表面改質処理を行うことが好ましい。表面改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理などの処理が挙げられ、特にコロナ処理であることが好ましい。コロナ処理を行うことで偏光子表面にカルボニル基やアミノ基などの反応性官能基が生成し、接着剤層との密着性が向上する。また、アッシング効果により表面の異物が除去されたり、表面の凹凸が軽減されたりして、外観特性に優れる偏光フィルムを作成することができる。
【0101】
上記のように塗工した硬化性樹脂組成物(第1組成物+第2組成物)を介して、偏光子と透明保護フィルムとをロールラミネーターなどを使用して貼り合わせる(貼合工程)。
【0102】
偏光子および透明保護フィルムを貼り合わせた後に、活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)を照射し、硬化性樹脂組成物を硬化して接着剤層を形成する。活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。
【0103】
電子線を照射する場合の照射条件は、上記硬化性樹脂組成物を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、偏光子および透明保護フィルムにダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5~100kGy、さらに好ましくは10~75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、光学機能層および基材フィルムにダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0104】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。偏光子および透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる光学機能層および基材フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、偏光子および透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0105】
本発明に係る偏光フィルムを製造する場合、活性エネルギー線として、波長範囲380nm~450nmの可視光線を含むもの、特には波長範囲380nm~450nmの可視光線の照射量が最も多い活性エネルギー線を使用することが好ましい。紫外線、可視光線を使用する場合であって、紫外線吸収能を付与した透明保護フィルム(紫外線不透過型透明保護フィルム)を使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は硬化性樹脂組成物に到達せず、その重合反応に寄与しない。さらに、偏光子または透明保護フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、偏光子または透明保護フィルム自体が発熱し、偏光フィルムのカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線、可視光線を採用する場合、活性エネルギー線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380~440nmの積算照度と波長範囲250~370nmの積算照度との比が100:0~100:50であることが好ましく、100:0~100:40であることがより好ましい。本発明に係る偏光フィルムを製造する場合、活性エネルギー線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380~440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光などの紫外線と可視光線を含む光源を使用することができ、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の紫外線を遮断して用いることもできる。偏光子と透明保護フィルムとの間の接着剤層の接着性能を高めつつ、偏光フィルムのカールを防止するためには、ガリウム封入メタルハライドランプを使用し、かつ380nmより短波長の光を遮断可能なバンドパスフィルターを介して得られた活性エネルギー線、またはLED光源を使用して得られる波長405nmの活性エネルギー線を使用することが好ましい。
【0106】
本発明に係る偏光フィルムを連続ラインで製造する場合、ライン速度は、硬化性樹脂組成物の硬化時間によるが、好ましくは1~500m/min、より好ましくは5~300m/min、さらに好ましくは10~100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、あるいは光偏光子または透明保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐え得る偏光フィルムが作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、硬化性樹脂組成物の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
【0107】
前述した偏光フィルムや、偏光フィルムを少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0108】
粘着層は、異なる組成または種類などのものの重畳層として偏光フィルムや光学フィルムの片面または両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光フィルムや光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚みなどの粘着層とすることもできる。粘着層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1~500μmであり、1~200μmが好ましく、特に1~100μmが好ましい。
【0109】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚み条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0110】
本発明の偏光フィルムや光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光フィルムまたは光学フィルム、および必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0111】
液晶セルの片側または両側に光学積層体を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学積層体は液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に光学積層体を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【実施例0112】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0113】
<偏光子>
非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された5μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された薄型偏光子を構成する、厚さ5.5μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を得た。なお、ホウ酸含有量の異なる偏光子は、上記のホウ酸水中延伸の際、浴中のホウ酸濃度を適宜変量することにより製造した。
【0114】
<透明保護フィルム>
・透明保護フィルム1:トリアセチルセルロース系樹脂フィルム(商品名「TJ25」、富士フイルム社製)
【0115】
<活性エネルギー線>
活性エネルギー線として、可視光線(ガリウム封入メタルハライドランプ) 照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380~440nm)を使用した。なお、可視光線の照度は、Solatell社製Sola-Checkシステムを使用して測定した。
【0116】
(硬化性樹脂組成物の調整)
表1の配合に従い、実施例1~2および比較例1~3の硬化性樹脂組成物を構成する第1組成物および第2組成物を調製した。表中の数値は各組成物全量を100質量%としたときの重量%を示す。なお、第1組成物中に配合した水は、第1塗工工程後の乾燥工程で除去されるため、硬化性樹脂組成物(第1組成物および第2組成物合計)中の組成計算では、水を省いて計算した。
【0117】
硬化性樹脂組成物を構成する各材料を以下に示す。
(硬化性成分)
・N-アクリロイルモルホリン(一般式(2)で表される化合物):商品名「ACMO」、興人社製
・1.9-ノナンジオールジアクリレート:商品名「ライトアクリレート1.9ND-A」、共栄社化学社製
・フェノキシジエチレングリコールアクリレート:商品名「ライトアクリレートP2H-A」、共栄社化学社製
(アクリル系オリゴマー)
・(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー:商品名「ARUFON UP-1190」、東亞合成社製
(開始剤)
・2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン:商品名「Omnirad 907」、IGM Resins B.V.社製
・ジエチルチオキサントン:商品名「KAYACURE DETX-S(表1中は「DETX-S」とする)」、日本化薬社製
(レベリング剤)
・商品名「BYK-UV3505」、BYK社製
(一般式(1)で表される化合物)
・3-メタクリルアミドフェニルボロン酸:商品名「MAPBA」、純正化学社製
(ホウ酸)
(表面調整剤)
・商品名「EXP.4200」、日信化学工業社製
【0118】
(偏光フィルムの製造)
実施例1
MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、透明保護フィルム1の貼合面に、第2組成物を塗工厚み1.0μmにて塗工した(第2塗工工程)。光学フィルム積層体の薄型偏光子面側に第1組成物を乾燥前塗工厚み0.8~1.2μmにて塗工し(第1塗工工程)、次にブロアを使用し、第1組成物中に含まれる水を除去した(乾燥工程)。乾燥後塗工厚みは0.4~0.6μmであった。次に透明保護フィルム1と薄型偏光子を備える光学フィルム積層体とをそれぞれ塗工面側からロール機で貼り合わせた(貼合工程)。その後、貼り合わせた透明保護フィルム側から、活性エネルギー線照射装置により上記可視光線を照射して、第1組成物および第2組成物で構成された硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた接着剤層を介して、薄型偏光子および前記透明保護フィルムを接着させた。次に光学フィルム積層体の非晶性PET基材を剥離した。
【0119】
実施例2、比較例1~3
実施例1で使用した第1組成物中の一般式(1)で表される化合物およびホウ酸の含有量およびその有無、および偏光子のホウ酸含有量などを表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法により偏光フィルムを製造した。
【0120】
<偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性評価>
粘着剤層(厚み20μm)を介して、偏光フィルムを厚さ0.7mmの無アルカリガラスの一方に貼り合わせた偏光フィルム(加湿耐久性試験評価用サンプル)を準備した。
【0121】
得られた偏光フィルムを60℃-95%湿度の環境下に240時間暴露し、投入前と投入後の偏光度を、積分球付き分光光度計(日本分光(株)製のV7100)を用いて測定し、偏光度の変化量ΔPz(%)=|(投入前の偏光度(%))-(投入後の偏光度(%))|を求めた。偏光度の変化量ΔPz(%)が小さいほど過酷な加湿環境下における偏光特性の加湿信頼性に優れると判断した。
【0122】
<偏光フィルムの偏光特性の端部脱色評価>
上記、加湿信頼性と同様のサンプルにて、電子顕微鏡により4辺の脱色長(色の抜け始めからサンプル端部まで)を測長し、その値が小さいほど過酷な加湿環境下における端部脱色耐性に優れると判断した。
【0123】
<偏光フィルムの接着剤層中の相溶層厚みの測定>
SEM(日立ハイテク社製のSU8200)により偏光板断面を観察し、測長した。
【0124】