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  • 特開-トランスアクスル 図1
  • 特開-トランスアクスル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172014
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】トランスアクスル
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/405 20071001AFI20241205BHJP
   F02B 61/06 20060101ALI20241205BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241205BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20241205BHJP
【FI】
B60K6/405
F02B61/06 G
B60K1/04 Z
B60K6/485 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089422
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴裕
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202EE01
3D202EE02
3D202EE10
3D202EE21
3D202EE22
3D235AA01
3D235CC12
3D235CC32
3D235FF32
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減および小型化を図りつつ、振動や騒音を低減化すると共に電力機器を良好に保護することができるトランスアクスルの提供。
【解決手段】本開示のトランスアクスルは、電動機と、電動機およびエンジンに連結されるギヤ機構と、電動機およびギヤ機構を収容するケースとを有し、車両に搭載されるものであり、トランスアクスルのケースは、エンジンよりも低背であり、エンジンに固定されると共にギヤ機構を収容する第1ケースと、エンジンよりも低背であると共に第1ケースよりも高背であり、電動機と電動機を駆動するための電力機器とを収容する第2ケースと、一端が第1ケースに固定されると共に、他端が第2ケースの第1ケースよりも高さ方向に突出する部分に固定されるスティフナとを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機およびエンジンに連結されるギヤ機構と、前記電動機および前記ギヤ機構を収容するケースとを有し、車両に搭載されるトランスアクスルであって、
前記ケースは、
前記エンジンよりも低背であり、前記エンジンに固定されると共に前記ギヤ機構を収容する第1ケースと、
前記エンジンよりも低背であると共に前記第1ケースよりも高背であり、前記電動機と前記電動機を駆動するための電力機器とを収容する第2ケースと、
一端が前記第1ケースに固定されると共に、他端が前記第2ケースの前記第1ケースよりも高さ方向に突出する部分に固定されるスティフナと、
を備えるトランスアクスル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるトランスアクスルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、2つのモータを含むトランスアクスルと、電源の電力をモータの駆動電力に変換する電力変換器とを含むハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両において、エンジンとトランスアクスルとは、車幅方向で隣り合うように連結される。また、電力変換器は、前面に取り付けられたフロントブラケットと後面に取り付けられたリアブラケットとを介してトランスアクスルの上に隙間を設けて支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-079765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のような電力変換器をトランスアクスルのケース内に収容すれば、ブラケット等の省略により部品点数を削減すると共に、電力変換器を含むトランスアクスルの全体を小型化することができるであろう。ただし、ケース内に電力変換器が収容されるトランスアクスルでは、電力変換器の重量が加算されることでトランスアクスル全体の重量が増加し、当該トランスアクスルや、ケースの電力変換器の収容部の共振周波数が低下する。このため、エンジンからの強制力(振動)によりトランスアクスル全体の共振が発生して振動や騒音が大きくなってしまったり、エンジンからの振動(高周波振動)によりケース内の電力変換器の構成部品に悪影響を与えたりするおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、部品点数の削減および小型化を図りつつ、振動や騒音を低減化すると共に電力機器を良好に保護することができるトランスアクスルの提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のトランスアクスルは、電動機と、前記電動機およびエンジンに連結されるギヤ機構と、前記電動機および前記ギヤ機構を収容するケースとを有し、車両に搭載されるトランスアクスルであって、前記ケースが、前記エンジンよりも低背であり、前記エンジンに固定されると共に前記ギヤ機構を収容する第1ケースと、前記エンジンよりも低背であると共に前記第1ケースよりも高背であり、前記電動機と前記電動機を駆動するための電力機器とを収容する第2ケースと、一端が前記第1ケースに固定されると共に、他端が前記第2ケースの前記第1ケースよりも高さ方向に突出する部分に固定されるスティフナとを含むものである。
【0007】
本開示のトランスアクスルでは、電力機器をケースに固定するためのブラケットやブッシュ、ボルト、電力機器を収容するためのケース等を省略することができるので、部品点数を削減すると共に、装置全体を小型化することが可能になる。また、第1ケースと第2ケースの第1ケースよりも高さ方向に突出する部分との間には、スティフナが設けられ、第2ケース42は、スティフナを介して第1ケースにより支持される。更に、第2ケースは、エンジンよりも低背化されているので、スティフナの軸長を短くして第2ケースから当該スティフナに加えられるモーメントを小さくすることができる。これにより、第2ケースがエンジンに対して接近離間するように振動するのを良好に抑制すると共に、スティフナの耐久性を良好に確保することが可能になる。加えて、第2ケースには、エンジンからの高周波振動が第1ケースおよびスティフナで減衰されてから伝搬されることになるので、第2ケース内に配置される電力機器への振動の影響をより低減化することができる。この結果、本開示のトランスアクスルでは、部品点数の削減および小型化を図りつつ、振動や騒音を低減化すると共に電力機器を良好に保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のトランスアクスルを含む車両の概略構成図である。
図2】本開示のトランスアクスルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のトランスアクスル20を含む車両1を示す概略構成図である。同図に示す車両1は、エンジン10と、モータジェネレータMG1およびMG2を含む共にエンジン10に連結される動力伝達装置としてのトランスアクスル20と、図示しないインバータ等を介してトランスアクスル20のモータジェネレータMG1およびMG2と電力をやり取りする図示しないバッテリとを含む前輪駆動式のハイブリッド車両である。エンジン10は、図示しないインジェクタから噴射される炭化水素系燃料と空気との混合気を複数の燃焼室内で燃焼させ、混合気の燃焼に伴うピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動へと変換する内燃機関である。
【0011】
トランスアクスル20は、図1に示すように、モータジェネレータMG1およびMG2に加えて、プラネタリギヤ30と、デファレンシャルギヤ39と、これらの要素を収容するケース40とを含む。モータジェネレータMG1(第1の電動機)は、ステータS1およびロータR1を含む同期発電電動機(三相交流電動機)であり、主に負荷運転されるエンジン10からの動力の少なくとも一部を電力に変換する発電機として作動する。モータジェネレータMG2(第2の電動機)は、ステータS2およびロータR2を含む同期発電電動機(三相交流電動機)であり、主にバッテリおよびモータジェネレータMG1の少なくとも何れか一方からの電力により駆動されて駆動トルクを発生する電動機として作動する。
【0012】
プラネタリギヤ30は、サンギヤ(第1回転要素)31と、リングギヤ(第2回転要素)32と、複数のピニオンギヤ33を回転自在に支持するプラネタリキャリヤ(第3回転要素)34とを含む差動回転機構である。図1に示すように、サンギヤ31は、中空のロータシャフトRSを介してモータジェネレータMG1のロータR1に連結される。プラネタリキャリヤ34は、キャリヤシャフトCSに同軸に固定されており、当該キャリヤシャフトCSおよびダンパ機構25を介してエンジン10のクランクシャフトに連結される。リングギヤ32は、出力部材としてのカウンタドライブギヤ35と一体化されており、両者は、同軸かつ一体に回転する。
【0013】
カウンタドライブギヤ35は、当該カウンタドライブギヤ35に噛合するカウンタドリブンギヤ36、当該カウンタドリブンギヤ36と一体に回転するドライブピニオンギヤ(ファイナルドライブギヤ)37、ドライブピニオンギヤ37に噛合すると共にデファレンシャルギヤ39のデフケースと一体に回転するデフリングギヤ39r、デファレンシャルギヤ39およびドライブシャフトDSを介して左右の車輪(駆動輪)Wに連結される。トランスアクスル20のギヤ機構、すなわちプラネタリギヤ30およびカウンタドライブギヤ35からデファレンシャルギヤ39までのギヤ列は、エンジン10とモータジェネレータMG1とを互いに連結すると共に、動力発生源としてのエンジン10の出力トルクの一部をドライブシャフトDSおよび車輪Wに伝達する。
【0014】
また、モータジェネレータMG2のロータR2には、モータシャフトMSを介してドライブギヤ38が一体回転するように連結(固定)される。当該ドライブギヤ38は、カウンタドリブンギヤ36よりも少ない歯数を有し、当該カウンタドリブンギヤ36に噛合する。これにより、モータジェネレータMG2は、ドライブギヤ38、カウンタドリブンギヤ36、ドライブピニオンギヤ37、デフリングギヤ39rおよびデファレンシャルギヤ39を介して左右のドライブシャフトDSおよび車輪Wに連結される。すなわち、モータジェネレータMG2は、単独あるいはエンジン10と協働して、ドライブシャフトDSおよび車輪Wに駆動トルク(駆動力)を出力する動力発生源として機能すると共に、車両1の制動に際して回生制動トルクを出力する。
【0015】
トランスアクスル20のケース40は、第1ケース41、第2ケース42およびカバー(第3ケース)45を含む。第1および第2ケース41,42並びにカバー45は、何れも例えばアルミ合金あるいは鋼材等により形成された鋳造品である。第1ケース41は、図1および図2に示すように、複数のボルトを介してエンジン10のエンジンブロック(シリンダブロック)110に車両1の幅方向に隣り合うように締結(結合)される。第2ケース42は、複数のボルトを介して第1ケース41に車両1の幅方向に隣り合うように締結(結合)され、当該第1ケース41と共にケース本体を構成する。カバー45は、第2ケース42の第1ケース41側とは反対側の開放端を覆うように複数のボルトを介して当該第2ケース42に締結(結合)される。
【0016】
また。第2ケース42は、ケース40(ケース本体)の内部を2つに仕切る隔壁42wを有する。これにより、ケース40の内部には、隔壁42wのエンジン10側にギヤ室Cgが画成されると共に、隔壁42wのカバー45側にモータ室Cmが画成される。図1に示すように、ギヤ室Cgには、ギヤ機構、すなわちプラネタリギヤ30やカウンタドライブギヤ35からデファレンシャルギヤ39までのギヤ列が配置される。モータ室Cmには、図1および図2に示すように、モータジェネレータMG1,MG2と、モータジェネレータMG1,MG2およびバッテリに接続される電力機器50とが配置される。
【0017】
電力機器50は、第1インバータや、第2インバータ、昇圧コンバータ、フィルタコンデンサ、平滑コンデンサ、DC/DCコンバータ、電子制御装置等を含む。第1インバータは、モータジェネレータMG1を駆動し、第2インバータは、モータジェネレータMG2を駆動する。昇圧コンバータは、バッテリからの電力を昇圧すると共にモータジェネレータMG1、MG2側からの電力を降圧する。DC/DCコンバータは、バッテリと昇圧コンバータとを結ぶ電力ラインと、補機バッテリおよび複数の補機と接続され、バッテリおよび昇圧コンバータ側の電力を目標電圧になるように降圧して補機バッテリや補機に供給する。電子制御装置は、マイクロコンピュータや、各種駆動回路等を含み、第1および第2インバータや昇圧コンバータを制御する。
【0018】
図2に示すように、第1ケース41は、エンジン10よりも低背に形成されている。また、第2ケース42は、エンジン10よりも低背かつ第1ケース41よりも高背に形成されている。本実施形態において、第2ケース42は、トランスアクスル20が車両1に車体に搭載されたときに、第1ケース41の上面よりも上方(高さ方向)に突出し、第2ケース42の上端部に固定されるコアプレート42pは、少なくともエンジン10のカムシャフト111、より詳細には、当該カムシャフト111を支持すると共にエンジンブロック110に固定されるカムハウジング112よりも下方に位置する。そして、第2ケース42の第1ケース41よりも上方に突出する上部42u内には、上述の電力機器50が収容される。本実施形態では、電力機器50の少なくとも一部は、コアプレート42pに取り付けられ、モータジェネレータMG1およびMG2は、電力機器50の下方に位置するように、第2ケース42の下部42l内に収容される。
【0019】
更に、エンジン10の上部と、第2ケース42の上部42uとの車両1の幅方向における間には、図2に示すように空間が画成され、当該空間には、少なくとも1つのスティフナ(補強材)47が配置される。スティフナ47は、例えば外径10mm程度の丸棒であって、ボルト孔を有する取付部を両端に有する。スティフナ47の一端は、取付部が第1ケース41の上面に当接するように、当該第1ケース41の上部42uにボルトを介して固定される。また、スティフナ47の他端は、取付部が第2ケース42の第1ケース41よりも上方に突出する上部42uの側面に当接するように、当該上部42uにボルトを介して固定される。これにより、スティフナ47は、トランスアクスル20が車両1に車体に搭載されたときに、第1ケース41から第2ケース42に向かうにつれて上方に位置するように斜めに延在する。なお、スティフナ47の第1および第2ケース41,42に対する固定構造としては、任意の構造を採用することができる。
【0020】
上述のように構成されるトランスアクスル20では、電力機器50をケース40に固定するためのブラケットやブッシュ、ボルト、電力機器50を収容するためのケース等を省略することが可能になるので、部品点数を削減すると共に、装置全体を小型化することができる。一方、電力機器50の重量が加算されることでトランスアクスル20全体の重量は増加し、当該トランスアクスルや、電力機器50を収容(支持)する第2ケース42の上部42uの共振周波数が低下する。このため、トランスアクスル20では、エンジン10からの強制力(振動)による共振により、第1ケース41よりも上方に突出する第2ケース42の上部42uがエンジン10に対して接近離間するように振動するおそれがあるが(図2における二点鎖線の矢印参照)、第1ケース41の上面と第2ケース42の上部42uとの間には、上述のようにスティフナ47が設けられている。これにより、第2ケース42の上部(突出部)42uがスティフナ47を介して第1ケース41により支持されるので、当該上部42uがエンジン10に対して接近離間するように振動するのを良好に抑制することが可能になる。
【0021】
また、トランスアクスル20では、電力機器50等のコンパクト化により車載時にコアプレート42pがエンジン10のカムシャフト111やカムハウジング11よりも下方に位置するように第2ケース42が低背化されているので、スティフナ47の軸長を短くして第2ケース42から当該スティフナ47に加えられるモーメントを小さくすることができる。これにより、スティフナ47や両端の取付部の耐久性を良好に確保しつつ、第2ケース42の上部42uがエンジン10に対して接近離間するように振動するのを良好に抑制することが可能になる。更に、車両1のエンジン10が運転されるときには、当該エンジン10から発せられる振動が第1ケース41およびスティフナ47を介して第2ケース42に伝達される。従って、第2ケース42には、エンジン10からの高周波振動が第1ケース41およびスティフナ47で減衰されてから伝搬されることになるので、第2ケース42の上部42u内に配置される電力機器50への振動の影響をより低減化することができる。
【0022】
この結果、トランスアクスル20では、部品点数の削減および小型化を図りつつ、振動や騒音を低減化すると共に電力機器50を良好に保護することが可能になる。なお、トランスアクスル20は、後輪駆動車両や、4輪駆動車両に搭載されるように改変されてもよい。
【0023】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示の発明は、トランスアクスルの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 車両、10 エンジン、111 カムシャフト、112 カムハウジング、20 トランスアクスル、30 プラネタリギヤ、35 カウンタドライブギヤ、36 カウンタドリブンギヤ、37 ドライブピニオンギヤ、38 ドライブギヤ、39 デファレンシャルギヤ、39r デフリングギヤ、40 ケース、41,第1ケース、42 第2ケース、42u 上部、42l 下部、42w 隔壁、45 カバー、47 スティフナ、50 電力機器、MG1,MG2 モータジェネレータ。
図1
図2