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特開2024-172017カスタードクリーム類およびカスタードクリーム類の製造方法
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  • 特開-カスタードクリーム類およびカスタードクリーム類の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172017
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】カスタードクリーム類およびカスタードクリーム類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/20 20160101AFI20241205BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20241205BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
A23L9/20
A23G3/00
A23L29/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089426
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 未来也
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 貴史
(72)【発明者】
【氏名】辰見 嘉隆
(72)【発明者】
【氏名】冨山 脩太朗
(72)【発明者】
【氏名】小山 欽一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 一彦
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK08
4B014GL03
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP14
4B014GQ12
4B025LB25
4B025LD03
4B025LG11
4B025LG26
4B025LG28
4B025LG29
4B025LG33
4B025LG42
4B025LK01
4B025LK02
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP12
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH02
4B041LH10
4B041LH11
4B041LH16
4B041LK08
4B041LK11
4B041LK13
4B041LK18
4B041LK25
(57)【要約】
【課題】 卵黄や乳成分を含まない場合であっても食感や風味が遜色なく、冷解凍を経た後においても食感や風味の劣化が抑制されたカスタードクリーム類を提供する。
【解決手段】 糖類、豆乳類、及びカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類、豆乳類、及びカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とするカスタードクリーム類。
【請求項2】
卵黄を含まないことを特徴とする請求項1に記載のカスタードクリーム類。
【請求項3】
乳成分を含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載のカスタードクリーム類。
【請求項4】
前記カルボキシメチルセルロースは、平均粒子径が70μm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカスタードクリーム類。
【請求項5】
原料の合計量に対する前記カルボキシメチルセルロースの配合量が、固形分相当で0.1~5質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカスタードクリーム類。
【請求項6】
糖類、豆乳類、及び粉末状のカルボキシメチルセルロースを含む原料を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を加熱してクリーム状とした後、冷却する工程とを含むカスタードクリーム類の製造方法。
【請求項7】
前記原料に卵黄を含まないことを特徴とする請求項6に記載のカスタードクリーム類の製造方法。
【請求項8】
前記原料に乳成分を含まないことを特徴とする請求項6又は7に記載のカスタードクリーム類の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程において、加水し濃度調整を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載のカスタードクリーム類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシメチルセルロースを含むカスタードクリーム類、およびカルボキシメチルセルロースを含むカスタードクリーム類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カスタードクリームは、牛乳、砂糖、卵を混ぜて得られたカスタードを、小麦粉やコーンスターチ等を用いてクリーム状にしたものであり、製菓・製パンにおけるフィリング、トッピングなどとして広く使用されている。
【0003】
ところで、近年健康志向が高まっており、より健康的な食生活をもたらすものとして、動物性原材料に代えて植物性原材料を使用した、いわゆるプラントベース食品が脚光を浴びるようになってきた(例えば特許文献1等)。
【0004】
カスタードクリームについても、牛乳や卵等を使用しないプラントベースの商品の提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-56671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
卵黄に含まれるレシチンには乳化作用を促進する効果があるため、原料に卵黄を含まない場合には、得られるカスタードクリームの安定性に欠けるという問題があった。この問題を解決するために、カラギナン及びキサンタンガムを配合した場合は、冷解凍した際に食感や風味が損なわれる問題があった。
【0007】
そこで本発明は、卵黄や乳成分を含まない場合であっても食感や風味が遜色なく、冷解凍を経た後においても食感や風味の劣化が抑制されたカスタードクリーム類、及びこのカスタードクリーム類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる目的を達成するため鋭意検討した結果、カルボキシメチルセルロース(CMC)を配合することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は以下を提供する。
(1) 糖類、豆乳類、及びカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とするカスタードクリーム類。
(2) 卵黄を含まないことを特徴とする(1)に記載のカスタードクリーム類。
(3) 乳成分を含まないことを特徴とする(1)又は(2)に記載のカスタードクリーム類。
(4) 前記カルボキシメチルセルロースは、平均粒子径が70μm未満であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のカスタードクリーム類。
(5) 原料の合計量に対する前記カルボキシメチルセルロースの配合量が、固形分相当で0.1~5質量%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のカスタードクリーム類。
(6) 糖類、豆乳類、及び粉末状のカルボキシメチルセルロースを含む原料を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を加熱してクリーム状とした後、冷却する工程とを含むカスタードクリーム類の製造方法。
(7) 前記原料に卵黄を含まないことを特徴とする(6)に記載のカスタードクリーム類の製造方法。
(8) 前記原料に乳成分を含まないことを特徴とする(6)又は(7)に記載のカスタードクリーム類の製造方法。
(9) 前記混合工程において、加水し濃度調整を行うことを特徴とする(6)又は(7)に記載のカスタードクリーム類の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、卵黄や乳成分を含まない場合であっても食感や風味が遜色なく、冷解凍を経た後においても食感や風味の劣化が抑制されたカスタードクリーム類を提供することができる。また、このカスタードクリーム類の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1~3及び比較例1の冷解凍前後のサンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「~」は端値を含む。すなわち「X~Y」はその両端の値XおよびYを含む。
【0013】
(カスタードクリーム類)
本発明のカスタードクリーム類は、糖類、豆乳類、及びカルボキシメチルセルロースを含む。一般に、カスタードクリームは、卵黄、牛乳等の乳成分、砂糖などの糖類、小麦粉やコーンスターチ等のでん粉を含有し、加熱によりトロ味がつけられたものを指す。本発明のカスタードクリーム類は、上記の一般的なカスタードクリームを含み、卵黄や牛乳等の乳成分を含まないカスタードクリーム様食品についてもカスタードクリーム類に含むものとする。
【0014】
(糖類)
本発明のカスタードクリーム類に用いる糖類としては特に制限はなく、例えばグラニュー糖、上白糖、三温糖、黒砂糖、きび糖、てんさい糖、メープルシュガー、和三盆糖、オリゴ糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、麦芽糖、乳糖などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。糖類の性状は特に制限はなく、粉体状、液体状等の様々な性状の糖類を用いることができる。また、本発明において、カスタードクリーム類の原料の合計量に対する糖類の配合量は、好ましくは8~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。これらの糖類は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(豆乳類)
本発明において、豆乳類とは、大豆や小豆などの豆類に水分を含ませた後にすり潰し、加熱、濾過して得られる乳状物のことを指す。上記の豆乳類としては、より具体的にいうと、1)大豆を水に浸漬して膨潤させた後にすり潰し、水を加えて煮つめ、濾過しておからを除去したものや、2)大豆を蒸煮した後に磨砕、濾過しておからを除去したものや、3)大豆を原料とする市販の豆乳などが挙げられる(いわゆる無調整豆乳)。また、そのほかの豆乳類としては、先に列挙した無調整豆乳を飲みやすい味や香りに調製したもの(調製豆乳)や、無調整豆乳に果汁やその他の成分を添加したもの(豆乳飲料)などが挙げられる。本発明のカスタードクリーム類に用いる豆乳類として特に制限はなく、無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料のいずれを用いてもよい。また、本発明において、カスタードクリーム類の原料の合計量に対する豆乳類の配合量は、好ましくは25~45質量%、より好ましくは30~40質量%である。これらの豆乳類は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(カルボキシメチルセルロース)
カルボキシメチルセルロースは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部がカルボキシメチル基とエーテル結合した構造を有する。カルボキシメチルセルロースは、塩の形態をとる場合もあり、本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースには、カルボキシメチルセルロースの塩も含まれるものとする。カルボキシメチルセルロースの塩としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などが挙げられる。
【0017】
(カルボキシメチル置換度)
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.20以上であることが好ましく、0.23以上であることがより好ましい。カルボキシメチル置換度が0.20未満であると、ミキサーのような低撹拌力の装置を用いる場合にはカスタードクリーム類に均一に分散させることが困難であり、カスタードクリーム類に添加しても沈殿し、所望の増粘性が得られない。カルボキシメチル置換度の上限値は、好ましくは0.50以下であり、より好ましくは0.48以下であり、さらに好ましくは0.45以下である。カルボキシメチル置換度が0.50を超えると水や豆乳類等の水系媒体への溶解が起こりやすくなり、生地の容器へのべたつきの虞がある。したがって、カルボキシメチル置換度は、0.20以上0.50以下の範囲であることが好ましい。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
【0018】
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
【0019】
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチルセルロースの塩(CMC)をH-CMC(水素型カルボキシメチルセルロース)に変換する。その絶乾H-CMCを1.5~2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH-CMCを湿潤し、0.1N-NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N-H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F'-0.1N-H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H-CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1-0.058×A)
F':0.1N-H2SO4のファクター
F:0.1N-NaOHのファクター。
【0020】
(セルロースI型の結晶化度)
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースにおけるセルロースI型の結晶化度は、特に限定されない。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースにおけるセルロースI型の結晶化度の下限は0である。また、上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
【0021】
カルボキシメチルセルロースのセルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD-6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°~30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する:
Xc = (I002c - Ia) / I002c × 100
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
【0022】
(粘度)
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースの粘度は特に限定されないが、好ましい作業性や成形性の観点から、固形分1質量%の水分散体としたときのB型粘度(条件:回転数30rpm、温度25℃)が、1~400mPa・sであることが好ましく、5~300mPa・sであることがより好ましく、10~200mPa・sであることがさらに好ましい。B型粘度が上記上限値より大きすぎると生地の容器へのべたつきの虞があり、上記下限値より小さすぎると成形性低下の虞がある。
【0023】
(平均粒子径)
本発明において、カスタードクリーム類に配合されるカルボキシメチルセルロースは、粉末状または微粉末状であることが好ましく、水分量10質量%未満の条件における平均粒子径が70μm未満であることが好ましく、10μm以上65μm未満であることがより好ましい。さらに好ましくは、15μm以上60μm未満である。平均粒子径が上記の範囲にあることで、カルボキシメチルセルロースの繊維長や繊維径が細くなりすぎず一定の範囲で保たれ、良好な分散性を有しつつも増粘性(ゲル化)を発揮しやすくなると推測される。平均粒子径が上記上限値より大きすぎると、食感の悪化の虞があり、上記下限値より小さすぎると粉が舞い上がり易いため取扱いが困難となる。
【0024】
本発明における平均粒子径は、体積基準の粒子径分布において最小値から積算して50%が含まれる粒子径である。粒子径分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
【0025】
(カルボキシメチルセルロースの製法)
カルボキシメチルセルロースは、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、得られたマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)と反応させることにより製造することができる。一般的なカルボキシメチルセルロースの製法としては、マーセル化とカルボキシメチル化の両方を水を溶媒として行う方法である水媒法と、マーセル化とカルボキシメチル化の両方を有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法である溶媒法が知られている。本発明に用いるカルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチル置換度と結晶化度の観点から、例えば、マーセル化を、水を主とする溶媒下又は水と有機溶媒との混合溶媒下で行い、その後、カルボキシメチル化を、水と有機溶媒との混合溶媒下で行うことにより製造することが好ましい。
【0026】
(セルロース)
本明細書においてセルロースとは、D-グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ-1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができる。
【0027】
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹、麻、ジュート、ケナフ等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合せた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプ又は未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ(サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ)、ケミカルパルプ(針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)等の亜硫酸パルプ、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)等のクラフトパルプ)等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
【0028】
再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
【0029】
(マーセル化)
原料として前述のセルロースを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を得る。マーセル化反応における溶媒の組成、及びカルボキシメチル化反応における溶媒の組成を調整することにより、特定のカルボキシメチル置換度とセルロースI型の結晶化度を両立するカルボキシメチルセルロースを経済的に得ることができる。
【0030】
例えば、マーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、特定のカルボキシメチル置換度であって、セルロースI型の結晶化度が50%以上のカルボキシメチルセルロースを得ることができる。
溶媒に水を主として用いる(水を主とする溶媒)とは、水を50質量%より高い割合で含む溶媒をいう。水を主とする溶媒中の水は、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。特に好ましくは水を主とする溶媒は、水が100質量%(すなわち、水)である。マーセル化時の水の割合が多いほど、カルボキシメチル基がセルロースにより均一に導入されるという利点が得られる。水を主とする溶媒中の水以外の(水と混合して用いられる)溶媒としては、後段のカルボキシメチル化の際の溶媒として用いられる有機溶媒が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に50質量%未満の量で添加してマーセル化の際の溶媒として用いることができる。水を主とする溶媒中の有機溶媒は、好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
【0031】
マーセル化剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられ、これらのうちいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。マーセル化剤は、これに限定されないが、これらのアルカリ金属水酸化物を、例えば、1~60質量%、好ましくは2~45質量%、より好ましくは3~25質量%の水溶液として反応器に添加することができる。
【0032】
マーセル化剤の使用量は特に限定されないが、カルボキシメチルセルロースにおけるカルボキシメチル置換度を0.20以上にできる量が好ましく、一実施形態において、セルロース100g(絶乾)に対して0.1モル以上2.5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上2.0モル以下であることがより好ましく、0.4モル以上1.5モル以下であることがさらに好ましい。
【0033】
マーセル化の際の溶媒の量は、原料の撹拌混合が可能な量であればよく特に限定されないが、セルロース原料に対し、1.5~20質量倍が好ましく、2~10質量倍であることがより好ましい。
【0034】
マーセル化処理は、発底原料(セルロース)と溶媒とを混合し、反応器の温度を0~70℃、好ましくは10~60℃、より好ましくは10~40℃に調整して、マーセル化剤の水溶液を添加し、15分~8時間、好ましくは30分~7時間、より好ましくは30分~3時間撹拌することにより行う。これによりマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を得る。
【0035】
マーセル化の際のpHは、9以上が好ましく、これによりマーセル化反応を進めることができる。該pHは、より好ましくは11以上であり、更に好ましくは12以上であり、13以上でもよい。pHの上限は特に限定されない。
【0036】
マーセル化は、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することができる反応機を用いて行うことができ、従来からマーセル化反応に用いられている各種の反応機を用いることができる。例えば、2本の軸が撹拌し、上記各成分を混合するようなバッチ型攪拌装置は、均一混合性と生産性の両観点から好ましい。
【0037】
(カルボキシメチル化)
マーセル化セルロースに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチルセルロースを得る。
【0038】
カルボキシメチル化剤としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸イソプロピルなどが挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさという点でモノクロロ酢酸、またはモノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。
【0039】
カルボキシメチル化剤の使用量は特に限定されないが、有効利用率の観点から、一実施形態において、セルロースの無水グルコース単位当たり、0.5~1.5モルの範囲で添加することが好ましい。上記範囲の下限はより好ましくは0.6モル以上、さらに好ましくは0.7モル以上であり、上限はより好ましくは1.3モル以下、さらに好ましくは1.1モル以下である。カルボキシメチル化剤は、これに限定されないが、例えば、5~80質量%、より好ましくは30~60質量%の水溶液として反応器に添加することができるし、溶解せず、粉末状態で添加することもできる。
【0040】
マーセル化剤とカルボキシメチル化剤のモル比(マーセル化剤/カルボキシメチル化剤)は、カルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムを使用する場合では、0.90~2.45が一般的に採用される。その理由は、0.90未満であるとカルボキシメチル化反応が不十分となる可能性があり、未反応のモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムが残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムによる副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成する恐れがあるため、不経済となる可能性があることにある。
【0041】
カルボキシメチル化反応におけるセルロース原料の濃度は、特に限定されないが、カルボキシメチル化剤の有効利用率を高める観点から、1~40%(w/v)であることが好ましい。なお、カルボキシメチル化剤の有効利用率とは、カルボキシメチル化剤におけるカルボキシメチル基のうち、セルロースに導入されたカルボキシメチル基の割合を指す。
【0042】
カルボキシメチル化剤を添加するのと同時に、あるいはカルボキシメチル化剤の添加の前または直後に、反応器に有機溶媒または有機溶媒の水溶液を適宜添加し、又は減圧などによりマーセル化処理時の水以外の有機溶媒等を適宜削減して、水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、この水と有機溶媒との混合溶媒下で、カルボキシメチル化反応を進行させる。有機溶媒の添加または削減のタイミングは、マーセル化反応の終了後からカルボキシメチル化剤を添加した直後までの間であればよく、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチル化剤を添加する前後30分以内が好ましい。
【0043】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に添加してカルボキシメチル化の際の溶媒として用いることができる。これらのうち、水との相溶性が優れることから、炭素数1~4の一価アルコールが好ましく、炭素数1~3の一価アルコールがさらに好ましい。
【0044】
カルボキシメチル化の際の混合溶媒中の有機溶媒の割合は、水と有機溶媒との総和に対して有機溶媒が20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。有機溶媒の割合が高いほど、均一なカルボキシメチル基の置換が起こりやすいなど、品質の安定したカルボキシメチルセルロースが得られるという利点が得られる。有機溶媒の割合の上限は限定されず、例えば、99質量%以下であってよい。添加する有機溶媒のコストを考慮すると、好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
【0045】
カルボキシメチルセルロースの結晶化度を50%以上等の高い値とする場合は、カルボキシメチル化の際の反応媒(セルロースを含まない、水と有機溶媒等との混合溶媒)は、マーセル化の際の反応媒よりも、水の割合が少ない(言い換えれば、有機溶媒の割合が多い)ことが好ましい。本範囲を満たすことで、得られるカルボキシメチルセルロースの結晶化度を維持しやすくなる。また、カルボキシメチル化の際の反応媒が、マーセル化の際の反応媒よりも水の割合が少ない(有機溶媒の割合が多い)場合、マーセル化反応からカルボキシメチル化反応に移行する際に、マーセル化反応終了後の反応系に所望の量の有機溶媒を添加するという簡便な手段でカルボキシメチル化反応用の混合溶媒を形成させることができる。
【0046】
水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、マーセル化セルロースにカルボキシメチル化剤を投入した後、温度を好ましくは10~40℃の範囲で一定に保ったまま15分~4時間、好ましくは15分~1時間程度撹拌する。マーセル化セルロースを含む液とカルボキシメチル化剤との混合は、反応混合物が高温になることを防止するために、複数回に分けて、または、滴下により行うことが好ましい。カルボキシメチル化剤を投入して一定時間撹拌した後、必要であれば昇温して、反応温度を30~90℃、好ましくは40~90℃、さらに好ましくは60~80℃として、30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化(カルボキシメチル化)反応を行い、カルボキシメチルセルロースを得る。カルボキシメチル化反応時に昇温することにより、エーテル化反応を短時間で効率的に行えるという利点が得られる。
【0047】
カルボキシメチル化の際には、マーセル化の際に用いた反応器をそのまま用いてもよく、あるいは、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することが可能な別の反応器を用いてもよい。
【0048】
反応終了後、残存するアルカリ金属塩を鉱酸または有機酸で中和してもよい。また、必要に応じて、副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去し、乾燥、粉砕、分級してカルボキシメチルセルロース又はその塩としてもよい。乾式粉砕で用いる装置としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等が例示される。湿式粉砕で用いる装置としてはホモジナイザー、マスコロイダー、パールミル等の装置が例示される。
【0049】
本発明において、カルボキシメチルセルロースの配合量は、カスタードクリーム類の原料の合計量に対して、固形分相当で好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.15~4質量%、さらに好ましくは0.20~3質量%、特に好ましくは0.25~2質量%である。カルボキシメチルセルロース配合量が上記の範囲にあることで、好ましい作業性や食感となる。配合量が上記上限値より多すぎると、生地の容器へのべたつきの虞があり、上記下限値より少なすぎると、成形性低下の虞がある。
【0050】
(乳成分)
本発明のカスタードクリーム類は、乳成分を含まない構成とすることができ、プラントベース食品の観点から、乳成分を含まないことが好ましい。本願における乳成分とは、乳由来の成分及び乳素材そのものをいい、例えば牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、加糖粉乳などが挙げられる。
【0051】
(卵黄)
本発明のカスタードクリーム類は、卵黄を含まない構成とすることができ、プラントベース食品の観点から、卵黄を含まないことが好ましい。本願における卵黄としては、殺菌液卵黄、凍結卵黄、乾燥卵黄、加糖卵黄などが挙げられる。
【0052】
(油脂類)
本発明のカスタードクリーム類には、油脂類を用いることができる。その種類に特に限定はなく、コーン油、菜種油、大豆油、ヤシ油、パーム油等の植物性油脂、ラード、牛脂、魚油、乳脂等の動物性油脂、及びそれらの硬化油・エステル交換油などが挙げられる。本発明においては、プラントベース食品の観点から、菜種油、大豆油、パーム油、コーン油等の植物性油脂又はこれらの硬化油・エステル交換油を用いることが好ましい。また、カスタードクリーム類の原料の合計量に対する油脂類の配合量は、好ましくは2~19質量%、より好ましくは4~16質量%である。これらの油脂類は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(でん粉類)
本発明のカスタードクリーム類には、上記した糖類、豆乳類、及びカルボキシメチルセルロースに加えて、保形性の観点からでん粉類を含むことが好ましい。でん粉類としては、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯でん粉、タピオカでん粉、米粉、キャッサバでん粉、甘藷でん粉等の穀物でん粉類、及びそれらの加工でん粉等が挙げられる。本発明のカスタードクリーム類にでん粉類を用いる場合は、でん粉類の配合量は、カスタードクリーム類の原料の合計量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。これらのでん粉類は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明のカスタードクリーム類は、本発明の効果を損なわない限り、乳化剤や、増粘多糖類(ただしカルボキシメチルセルロースを除く)などを適宜配合することができる。
【0055】
(乳化剤)
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、植物ステロール、レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ポリソルベート、キラヤサポニンなどの食品に使用される乳化剤が挙げられる。本発明のカスタードクリーム類に乳化剤を用いる場合は、乳化剤の配合量は、カスタードクリーム類の原料の合計量に対して1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。これらの乳化剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(増粘多糖類)
増粘多糖類としては、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、大豆多糖類、タラガム、アラビアガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、寒天、カラギナン、アルギン酸、ゼラチン、セルロース誘導体(ただしカルボキシメチルセルロースを除く)、カラヤガム、カシヤガム、プルランなどの食品に使用される増粘多糖類が挙げられる。本発明のカスタードクリーム類に増粘多糖類を用いる場合は、増粘多糖類の配合量は、カスタードクリーム類の原料の合計量に対して1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。これらの増粘多糖類は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明のカスタードクリーム類は、必要に応じて、例えば、上記以外の増粘剤・香料・着色料、乳化安定剤などを適宜配合することができる。
【0058】
(カスタードクリーム類の製造方法)
本発明のカスタードクリーム類の製造方法は、必須の原料である糖類、豆乳類、及び粉末状のカルボキシメチルセルロースと、必要に応じて用いられるでん粉類、油脂類、乳化剤等の原料とを混合する混合工程と、得られた混合物を加熱してクリーム状とした後、冷却する工程とを含む。
混合工程においては、粘度の観点から、加水し濃度調整を行う工程を設けることが好ましい。このような工程を設ける場合は、加熱前の混合物の濃度が、好ましくは25~70質量%、より好ましくは50~70質量%、さらに好ましくは60~70質量%となるように濃度調整を行うことが好ましい。
混合工程で得られた混合物を加熱し、粘度が上がってきた時点で、香料・着色料等を別途添加・混合する工程を設けても良い。
【0059】
本発明のカスタードクリーム類は、カルボキシメチルセルロースを含むため、卵黄や乳成分を含まない場合であっても、食感や風味が遜色ないものであり、冷解凍を経た後においても、他の増粘多糖類を使用した場合と比較して食感や風味の劣化が抑制されている。
【0060】
本発明のカスタードクリーム類は、洋生菓子のベースクリームとして、あるいはパンのフィリング材として用いることができ、上記洋生菓子としては、例えば、シュークリーム、エクレア、ミルフィーユ、フルーツタルト、クリームブリュレ、ミルクレープ、トライフル等を挙げることができ、また、パン類としては、クリームパン、デニッシュパン等を挙げることができる。そして、用いるケーキやパンの種類によって、原材料等を適宜選択し、配合割合・添加量を変更することができる。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例における各数値の測定/算出方法が特に記載されていない場合には、明細書中に記載されている方法により測定/算出されたものである。
【0062】
(粘度)
実施例で用いたCMC1~3の粘度は、次の通り測定した。まずCMC1~3について、それぞれ水に添加し、カルボキシメチルセルロースの固形分1質量%の水分散液を調製した。得られた固形分1質量%の水分散液について、撹拌機を用い、回転数600rpm、温度25℃の条件で3時間撹拌した。その後、JIS Z 8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用い、回転数30rpm、温度25℃の条件で3分後の粘度を測定した。
【0063】
(平均粒子径)
実施例で用いたCMC1~3の平均粒子径は、体積平均粒子径による粒子径分布から求めた。
【0064】
粒子径分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(マスターサイザー2000E、スペクトリス(株)製)を用いて測定した。測定に当たっては、試料をメタノールに分散させた後、超音波処理を少なくとも1分以上行ったものについて測定を行った。
【0065】
(製造例1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水酸化ナトリウム68部を、水30部とイソプロパノール(IPA)70部との混合溶媒に溶解したものを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつIPA230部と、モノクロロ酢酸80部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、91%であった。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度(DS)0.28、セルロースI型の結晶化度0%、平均粒子径20μm、1%粘度80mPa・s、水分量10%未満のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の微粉末(CMC1)を得た。
【0066】
(製造例2)
粉砕の程度を変更したこと以外は製造例1と同様にして、カルボキシメチル置換度(DS)0.28、セルロースI型の結晶化度0%、平均粒子径50μm、1%粘度80mPa・s、水分量10%未満のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の粉末(CMC2)を得た。
【0067】
(製造例3)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつIPA230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、70%であった。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度(DS)0.32、セルロースI型の結晶化度71%、平均粒子径50μm、1%粘度30mPa・s、水分量10%未満のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の粉末(CMC3)を得た。
【0068】
(カスタードクリーム類の製造)
表1の配合で実施例1~3、及び比較例1のカスタードクリーム類を製造した。具体的には、ステンレスビーカーに無調整豆乳及び水を投入し、よく混ぜておいた粉体類、すなわちてんさい糖、加工デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン)、グリシン、及び、上記製造例1~3で製造したCMC1~3又は増粘多糖類(カラギナン、キサンタンガム)の混合物をステンレスビーカーへ投入しながら、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)を用いて撹拌した。次に、マーガリン(植物性油脂由来)及び乳化剤を事前に加熱して溶かしておいたものをステンレスビーカーに添加し、TKホモミクサーを用いて撹拌した。得られた混合物を鍋に移し、鍋の内容物を加熱撹拌し、85℃到達後は温度を保持しながら撹拌し、粘度が出てきたら一旦加熱をやめカスタードフレーバー(三栄源エフエフアイ社製)及びクチナシ色素を添加・撹拌した。その後、加熱を再開して、85℃を保持しながら撹拌し、鍋の内容物が加熱前の90質量%となった時点で加熱撹拌を終了し、鍋の内容物を袋に充填し、冷却することにより、カスタードクリーム類の製造を行った。
【0069】
【表1】
【0070】
(冷蔵品の官能評価)
実施例及び比較例で得られたカスタードクリーム類について、外観、匂い、味、食感、総合的なおいしさの項目に対し官能評価を行った。具体的には、200mLビーカーに、冷蔵庫から出したカスタードクリーム類を10g仕込み、これに対してパネラー15人で5段階評価(5点~1点)を行った。比較例1のサンプルと同等の場合を3点とし、これを基準として実施例1~3のサンプルについての点数をつけた。以下に、評価基準を示した。また、平均点をとり、表2に示した。
5点:比較例1より良い
4点:比較例1よりやや良い
3点:比較例1と同等
2点:比較例1よりやや悪い
1点:比較例1より悪い
【0071】
(冷解凍前後における官能評価)
実施例及び比較例で得られたカスタードクリーム類について、冷凍及び解凍を行い、その前後における外観、匂い、味、食感、総合的なおいしさの変化について官能評価を行った。具体的には、200mLビーカーに、冷蔵庫から出したカスタードクリーム類を10g仕込んだサンプル、及び、200mLビーカーに冷蔵庫から出したカスタードクリーム類を10g仕込んだものを、-4℃の冷凍室内で一晩放置することにより冷凍し、その後、室温で8時間自然解凍したサンプルをそれぞれ準備した。これらのサンプルに対してパネラー4人で5段階評価(5点~1点)を行った。冷凍前のサンプルと同等の場合を3点とし、これを基準として、解凍後のサンプルについて点数をつけた。以下に、評価基準を示した。また、平均点をとり、表2に示した。
5点:冷凍前のサンプルより良い
4点:冷凍前のサンプルよりやや良い
3点:冷凍前のサンプルと同等
2点:冷凍前のサンプルよりやや悪い
1点:冷凍前のサンプルより悪い
【0072】
(冷解凍前後における離水率の測定)
実施例及び比較例で得られたカスタードクリーム類について、冷凍及び解凍を行い、その前後における離水率を測定した。具体的には、まず、質量がわかっている200mLビーカーに、冷蔵庫から出したカスタードクリーム類およそ10g仕込んだサンプルを準備した。容器を含めたサンプルの質量を測定した。次に、このサンプルを-4℃の冷凍室内で一晩放置することにより冷凍し、その後、室温で8時間自然解凍した。解凍後のサンプルが離水していればスポイトを用いてビーカーから水を取り除いた。容器を含めた除水後のサンプルの質量を測定した。下式により離水率を求めた。結果を表2に示した。
離水率(%)=(冷解凍前のカスタードクリーム類の質量-冷解凍後のカスタードクリーム類の質量(除水後))/冷解凍前のカスタードクリーム類の質量×100
【0073】
【表2】
【0074】
表2の冷蔵品の評価結果から、実施例1~3のCMCを含むカスタードクリーム類は、CMCを含まない比較例1のカスタードクリーム類と比較して、少なくとも味に優れるものであることがわかる。特にCMC1を用いた実施例1は、外観、味、食感、及び総合的なおいしさの項目において比較例1を上回る良い結果であった。
【0075】
また、表2の冷解凍前後を比較した評価結果から、少なくとも実施例1および2のカスタードクリーム類は、冷解凍後であっても、味、食感、及び総合的なおいしさの項目において、冷解凍前の得点を維持できたことがわかる。一方、比較例1のカスタードクリーム類は、全項目において、冷解凍後の得点が冷解凍前の得点より劣るものであった。
【0076】
図1には、実施例1~3及び比較例1の冷解凍前後のサンプルの写真を示した。図1より、実施例1および実施例2のカスタードクリーム類は、冷解凍後であっても、比較例1のカスタードクリーム類と比較して広がりが少なく、保形性(外観)に優れていることがわかる。なお、表2の離水率の測定結果によれば、実施例3のカスタードクリーム類は、比較例1と比べて冷解凍前後の離水率が若干低いものであった。
【0077】
以上より、糖類、豆乳類、及びカルボキシメチルセルロースを含むカスタードクリーム類は、カルボキシメチルセルロースに代えて増粘多糖類を使用したカスタードクリーム類と比較して、少なくとも味に優れることがわかった。また、冷解凍前後において、食感や風味の劣化が抑制される傾向がみられた。
図1