(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172019
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】透析時の抜針による漏血検知用シート
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61M1/36 145
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089428
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000225290
【氏名又は名称】内外特殊染工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303062440
【氏名又は名称】株式会社東洋レーベル
(74)【代理人】
【識別番号】100088948
【弁理士】
【氏名又は名称】間宮 武雄
(72)【発明者】
【氏名】岩見 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英和
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077HH04
4C077HH20
4C077HH21
4C077KK17
(57)【要約】
【課題】透析治療中における抜針による患者の腕からの漏血を確実にかつ速やかに検知し、患者の腕からの発汗が原因となって起こる漏血検知装置の誤作動を防止することができ、構成が簡単で製造も比較的容易である漏血検知用シートを提供する。
【解決手段】綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維からなる不織布10の表面に一対の電極体12a、12bを、間隔を設けて対向するように形設し、不織布の裏面側に防水材18をコーティングし、電極体の表面に、樹脂材で形成され電極体の線幅から食み出る線幅を持つ点線状の皮膚当接部材16a、16bを被着して、患者の皮膚が電極体に直に接触しないようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート面内に細幅実線状の一対の電極体が間隔を設けて対向するように配設され、シート面上に血液が存在するときに前記一対の電極体間が電気的に導通し、その導通状態の有無を検出して透析時の抜針による漏血を検知するのに用いられる漏血検知用シートにおいて、
綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維からなる不織布の表面に前記一対の電極体を形設し、
前記不織布の裏面側に防水材をコーティングし、
前記各電極体の表面に、樹脂材で形成され電極体の線幅から食み出る線幅を持つ点線状の皮膚当接部材をそれぞれ被着して、患者の皮膚が前記電極体に直に接触しないようにしたことを特徴とする、透析時の抜針による漏血検知用シート。
【請求項2】
シート面内に細幅実線状の一対の電極体が間隔を設けて対向するように配設され、シート面上に血液が存在するときに前記一対の電極体間が電気的に導通し、その導通状態の有無を検出して透析時の抜針による漏血を検知するのに用いられる漏血検知用シートにおいて、
綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維からなる不織布の表面に前記一対の電極体を形設し、
前記不織布の裏面側に防水材をコーティングし、
前記各電極体の表面に、樹脂材で形成され電極体の線幅より細い線幅で実線状の皮膚当接部材をそれぞれ被着して、患者の皮膚が前記電極体に直に接触しないようにしたことを特徴とする、透析時の抜針による漏血検知用シート。
【請求項3】
シート面内に細幅実線状の一対の電極体が間隔を設けて対向するように配設され、シート面上に血液が存在するときに前記一対の電極体間が電気的に導通し、その導通状態の有無を検出して透析時の抜針による漏血を検知するのに用いられる漏血検知用シートにおいて、
綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維からなる不織布の表面に前記一対の電極体を形設し、
前記不織布の裏面側に防水材をコーティングし、
前記各電極体の表面に、樹脂材で形成され電極体の線幅から食み出る線幅を持つ点線状の第1の皮膚当接部材、および、樹脂材で形成され電極体の線幅より細い線幅で実線状の第2の皮膚当接部材をそれぞれ被着して、患者の皮膚が前記電極体に直に接触しないようにしたことを特徴とする、透析時の抜針による漏血検知用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液透析の治療中に抜針による穿刺部からの血液の漏れを検知する漏血検知装置において、そのセンサ部分として患者の腕に巻かれるなどして使用される漏血検知用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析の治療中に患者の腕から透析針が抜けて穿刺部から出血すると、重大な失血事故につながる。この種の医療事故は、特に認知症を患った患者や意識障害のある患者の透析治療において往々にして起こる虞がある。このような事故の発生を、巡回看護師の目視等に頼ることなく未然に防ぐ方法として、通常は開状態にあり血液で濡れると閉状態となって通電される回路からなる回路部品、および、回路部品の端子に電気配線により接続されたセンサ本体を備えた透析抜針漏血感知センサを使用し、回路部分を透析針の近傍に粘着テープなどで固定しておき、抜針による血液の流出で回路部品の表面が濡れて回路が通電すると、センサ本体のブザーで医師や看護師にそれを知らせ、また、センサ本体からの信号で透析装置のポンプを停止させる、といった技術が周知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、透析治療には長時間を要することから、その治療中に患者の腕から発汗することもある。上記したような漏血感知センサの回路部分が患者の腕に巻かれた状態で発汗を生じると、回路部品の表面が汗で濡れて、穿刺部からの出血がないのにも拘わらず回路が閉状態となって通電され、漏血感知センサが誤作動を起こす懸念がある。このような透析治療中における発汗によるセンサの誤作動を防止する技術として、水分センサにより、その水分センサ上に載置された患者の腕から血液が漏れた場合にそれを検知し、水分センサにコネクタを介して連結された報知器のブザーが鳴るようにした人工透析用血液検知装置において、乾燥状態で絶縁性を呈し水分を含んだ状態で導電性を呈する電極シートと、この電極シートの上に配置され撥水性を有するとともに多数の小孔を備えたフィルターシートと、このフィルターシートの上に配置され透水性および一定の保水性を備えた通水性シートとから水分センサを構成し、フィルターシートの小孔の大きさや小孔の密度を適切に設定することにより、汗がフィルターシートの小孔を通過させないようにし、血液だけがフィルターシートの小孔を通過して電極シートの方へ流れるようにし、また、通水性シートが汗等の水分を保持すると同時に気体として発散させることにより、フィルターシートに水分を送り込まないようにし、汗が原因となる水分センサの誤作動を防止するようにした血液検知装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-55588号公報(第4頁、
図1-
図4)
【特許文献2】特開2012-196293号公報(第7-8、11-12頁、
図2、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている水分センサの構成によれば、透析治療中に患者の発汗が原因となって血液検知装置が誤作動を起こすことを防止することが可能である。しかしながら、水分センサの構成要素であるフィルターシートの設計・製作において、汗を通過させずに血液だけを通過させるような小孔の大きさや小孔の密度に調整するのは、それほど簡単なことではない。フィルターシートの小孔は、一定量の水分が存在したときにこれを通過させる大きさや密度に設定されるが、汗が存在してもこれを通過させない程度に小孔を小さくすると、また、小孔の密度を小さくし過ぎると、患者の腕から比較的少量の血液が漏れた程度ではその漏血を検知することができず、実際に漏血を生じていてもその検知が遅れるといった恐れがある。また、フィルターシートの上に配置される通水性シートは、血液に対してはその一部を保持または分散させるバッファー効果を発揮し、汗等の水分に対してはそれを保持すると同時に気体として発散させてフィルターシートに水分を送り込まないようにする、といった機能を果たすものであるが、この通水性シートを備えているために、患者の腕から比較的少量の血液が漏れ始めたぐらいではその漏血を検知することができず、漏血の検知が遅れるといった心配がある。このように、特許文献2に開示されているような水分センサの構成では、汗が原因となる水分センサの誤作動を確実に防止することと、比較的少量の漏血でも速やかに検知して検知の遅れを生じないこととを両立させるセンサを製造することは難しい。
【0006】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、透析治療中において抜針による患者の腕からの漏血を確実にかつ速やかに検知することができるとともに、患者の腕からの発汗が原因となって起こる漏血検知装置の誤作動を防止することができ、構成が簡単で、その製造も比較的容易である漏血検知用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明では、特許文献2に開示された水分センサのように、患者の腕からの発汗による漏血検知装置の誤作動を防止するために、電極シートの表面全体をフィルターシートで被覆しさらにフィルターシートの表面を通水性シートで被覆する、といった構成を採らずに、通常は電気的に絶縁しており血液が存在すると電気的に導通する一対の電極体を露呈させ、かつ、電極体に直に患者の皮膚が触れないようにする部材を電極体の表面に被着する、といった手段により上記課題を解決した。
すなわち、この発明は、シート面内に細幅実線状の一対の電極体が間隔を設けて対向するように配設され、シート面上に血液が存在するときに前記一対の電極体間が電気的に導通し、その導通状態の有無を検出して透析時の抜針による漏血を検知するのに用いられる漏血検知用シートにおいて、綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維からなる不織布の表面に前記一対の電極体を形設し、前記不織布の裏面側に防水材をコーティングし、前記各電極体の表面に、樹脂材で形成され電極体の線幅から食み出る線幅を持つ点線状の皮膚当接部材、もしくは、樹脂材で形成され電極体の線幅より細い線幅で実線状の皮膚当接部材、または、樹脂材で形成され電極体の線幅から食み出る線幅を持つ点線状の第1の皮膚当接部材、および、樹脂材で形成され電極体の線幅より細い線幅で実線状の第2の皮膚当接部材をそれぞれ被着して、患者の皮膚が前記電極体に直に接触しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る漏血検知用シートは、患者の腕に巻かれるなどして装着され、血液透析の治療中の患者の腕から透析針が抜けて穿刺部から出血すると、綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維からなる不織布に血液が吸収され保持される。このとき、不織布の裏面側には防水材がコーティングされているので、不織布に吸収された血液は、防水材の表面(不織布との接合面)に沿って面状に拡がっていく。不織布の表面には、一対の電極体が形設されており、不織布に血液が保持されて不織布の表面が血液で濡れた状態となることにより、一対の電極体間が電気的に導通する。そして、この検知用シートに回路接続された漏血検知装置によって一対の電極体間の導通状態の有無が検知されることにより、透析時の抜針による漏血が検知される。この場合において、電極体は皮膚当接部材の被着部分以外の部分が露呈しており、また、不織布の表面も露呈した状態であるので、穿刺部から流出した血液は何かに遮られることなくそのまま不織布に吸収され不織布内部を面状に拡がっていく。このため、患者の腕から比較的少量の血液が漏れ始めたぐらいでもその漏血を検知することができ、漏血の検知が遅れる心配が無い。また、穿刺部から比較的大量に血液が流失しても、不織布の裏面側にコーティングされた防水材により、シート外へ血液が染み出ることが防止される。一方、患者の皮膚と電極体との間に皮膚当接部材が介在することにより、患者の皮膚が電極体に直に接触することがないので、透析治療中に患者の腕から発汗し、皮膚の表面が汗で濡れた状態になった場合においても、皮膚表面を濡らす汗によって一対の電極体間が電気的に導通することはない。また、汗が不織布に吸収されても、透析治療中の発汗程度では、不織布の表面が全面的に汗で濡れた状態となることはないので、不織布に吸収された汗によって一対の電極体間が電気的に導通することはない。
したがって、この発明により、透析治療中において抜針による患者の腕からの漏血を確実にかつ速やかに検知することができるとともに、患者の腕からの発汗が原因となって起こる漏血検知装置の誤作動を防止することができる漏血検知用シートを提供し得たものであり、この検知用シートは、構成が簡単で、その製造も比較的容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】請求項1に係る発明の実施形態の1例を示し、透析時の抜針による漏血検知用シートの平面図である。
【
図2】
図1に示した漏血検知用シートの構成要素の1つである皮膚当接部材だけを示す平面図である。
【
図3】
図1に示した漏血検知用シートの一部を拡大して示す平面図であって、各部の寸法を説明するための図である。
【
図5】請求項2に係る発明の実施形態の1例を示す漏血検知用シートの平面図である。
【
図6】
図5に示した漏血検知用シートの一部を拡大して示す平面図であって、各部の寸法を説明するための図である。
【
図7】
図5のVII-VII矢視拡大断面図である。
【
図8】請求項3に係る発明の実施形態の1例を示す漏血検知用シートの平面図である。
【
図9】
図8に示した漏血検知用シートの一部を拡大して示す平面図である。
【
図10】
図8に示した漏血検知用シートの一部を拡大して示す側方から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
この透析時の抜針による漏血検知用シートは、
図1に平面図を示すように、不織布10の表面に一対のパターン状電極体12a、12bを形設して構成されている。
【0011】
一対の電極体12a、12bは、それぞれ直線状部分と円弧状部分とを連続させて形成されており、互いに間隔を設けて平面内で対向するように配設されている。各電極体12a、12bの一端部には、それぞれ電極端子14a、14bが設けられている。電極体12a、12bの形成パターンは図示例のものに限定されず、種々のパターンに電極体12a、12bを形設することができる。
【0012】
不織布10としては、吸水性を持つように綿、レーヨン繊維、パルプ繊維またはセルロース繊維を原料として製造されたものが使用され、綿やレーヨンを原料としたものが好適に使用される。電極体12a、12bは、導電性カーボンブラック、カーボンとグラファイトとの混合物、銀ペーストや銅ペーストなどの導電材料を不織布10の表面にスクリーン印刷することにより形成される。一対の電極体12a、12b間は、不織布10が乾燥した状態であるときは電気的に不通となり、不織布10に血液が吸収され不織布10面が血液で濡れた状態になったときに電気的に導通するようになっている。
【0013】
電極体12a、12bの表面には、樹脂材で形成された点線状の皮膚当接部材16a、16bが被着されている。
図2に、点線状の皮膚当接部材16a、16bだけの平面図を示す。
図3に示すように、点線状の皮膚当接部材16a、16bは、細幅実線状の電極体12a、12bの線幅aから食み出る線幅bを持つ。この皮膚当接部材16a、16bは、漏血検知用シートが患者の腕に巻かれたときに皮膚が電極体12a、12bに直に接触しないように十分な厚みに形成され、例えば電極体12a、12bの厚みの5倍~15倍程度の厚みに形成される。皮膚当接部材16a、16bの形成材料としては、例えばアクリル、ウレタンアクリレートなどの紫外線硬化型樹脂が使用され、また、厚盛りを可能にするためにアゾジカルボンアミド等の発泡剤が添加して使用される。この皮膚当接部材16a、16bは、電極体12a、12bの表面に樹脂材料(UVインク)をスクリーン印刷した後、紫外線を照射することにより電極体12a、12b上に被着形成される。
【0014】
図4に示すように、不織布10の裏面側には防水材18がコーティングされている。防水材18には、撥水剤としてパラフィンが含まれる。不織布10の裏面側に塗布される塗布液の組成の1例を示すと、アクリル酸エステル共重合体を主成分とし、撥水剤として、オクタデシルエチレン尿素、固形パラフィン、ポリエチレンワックスおよび界面活性剤を水に溶解したものを添加し、その他に少量のエチレングリコール(湿潤剤)やアルカリ増粘剤を添加し、それらの混合物を水に均一に分散させて調製される。防水材18のコーティングは、例えば、前記塗布液を不織布10の裏面側に塗布し170℃の温度で40秒間加熱して塗膜を形成し、再度、その塗膜上に前記塗布液を塗布し170℃の温度で40秒間加熱して塗膜を形成し、それら塗膜をさらに180℃の温度で加熱して不織布10の裏面に固定することにより行われる。
【0015】
漏血検知用シートの各部材、各部の寸法例を示すと、不織布10の大きさは、縦が200mm~300mmで横が300mm~400mmであり、一対の電極体12a、12bの間隔が40mm~60mmで、電極体12a、12bの線幅aが3mm~10mm、点線状の皮膚当接部材16a、16bの線幅bが5mm~12mm、皮膚当接部材16a、16bの、点線をなす各ドット20の長さcが4mm~6mm、ドット20のピッチdが10mm~15mmである。また、不織布10の総目付量は、50g/m2~70g/m2(厚みとしては30μm~45μm程度)であり、電極体12a、12bの厚みが10μm~20μm、皮膚当接部材16a、16bの厚みが150μm~250μm、防水材18の厚みが15μm~25μmである。また、漏血検知用シートの製造工程における手順の1例としては、まず、不織布10の裏面側に防水材18をコーティングし、次に、不織布10の表面に一対の電極体12a、12bを形設し、最後に、電極体12a、12bの表面に皮膚当接部材16a、16bを被着する。
【0016】
この漏血検知用シートは、電極体12a、12bの電極端子14a、14bに漏血検知装置(図示せず)が回路接続され、血液透析の治療に際して穿刺部を覆うように患者の腕に巻かれるなどして装着されて使用される。透析治療中に患者の腕から透析針が抜けて穿刺部から出血するといった事故が起こると、穿刺部から流出した血液が不織布10に吸収され保持される。そして、不織布10の表面が血液で濡れた状態になると、一対の電極体12a、12b間が電気的に導通することになり、この導通状態が漏血検知装置によって検出され、透析時の抜針による漏血が検知される。この場合において、電極体12a、12bは、皮膚当接部材16a、16bの被着部分以外の部分が露呈しており、また、不織布10の表面も露呈した状態であるので、穿刺部から流出した血液は、何かに遮られることなくそのまま不織布に吸収され、不織布10の内部を防水材の表面と不織布との接合面に沿って面状に拡がっていく。このため、患者の腕から比較的少量の血液が漏れ始めたぐらいでも、不織布10表面の、一対の電極体12a、12b間の領域を濡らすのに十分な血液量であれば、その漏血を検知することができる。したがって、漏血の検知が遅れる心配が無い。また、穿刺部から比較的大量に血液が流失しても、不織布10の裏面側にコーティングされた防水材18により、シート外へ血液が染み出ることが防止される。一方、患者の皮膚と電極体12a、12bとの間に皮膚当接部材16a、16bが介在することにより、患者の皮膚は、皮膚当接部材16a、16bの表面および不織布10の表面に接触するが、電極体12a、12bの表面には直に接触しない。このため、透析治療中に患者の腕から多少発汗し、皮膚の表面が汗で濡れた状態になっても、皮膚表面を濡らす汗によって、また、不織布10表面の、一対の電極体12a、12b間の領域を部分的に濡らす汗によって、一対の電極体12a、12b間が電気的に導通することはない。したがって、患者の腕からの発汗が原因となって漏血検知装置の誤作動を起こす心配が無い。
【0017】
次に、
図5ないし
図7に、皮膚当接部材の別の構成例を示す。これらの図において、
図1ないし
図4により説明した各部材、各部については、
図1ないし
図4において使用した符号と同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。
この漏血検知用シートでは、電極体12a、12bの表面に、樹脂材で形成された実線状の皮膚当接部材22a、22bが電極体12a、12bのほぼ全長にわたって被着されている。
図6に示すように、皮膚当接部材22a、22bの線幅eは、電極体12a、12bの線幅aより細くされ、寸法例を示すと、電極体12a、12bの線幅aが3mm~10mmで、皮膚当接部材22a、22bの線幅eが2mm~8mmである。この皮膚当接部材22a、22bは、上記した皮膚当接部材16a、16bと同様に、漏血検知用シートが患者の腕に巻かれたときに皮膚が電極体12a、12bに直に接触しないように十分な厚みに形成され、例えば電極体12a、12bの厚みの5倍~15倍程度の厚みに形成される。皮膚当接部材22a、22bの形成材料や被着形成方法は、上記した皮膚当接部材16a、16bと同様である。この漏血検知用シートでも、
図1ないし
図4に示した漏血検知用シートと同様の上記作用効果が得られる。
【0018】
図8ないし
図10に、皮膚当接部材のさらに別の構成例を示す。これらの図において、
図1ないし
図4により説明した各部材、各部については、
図1ないし
図4において使用した符号と同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。
この漏血検知用シートでは、電極体12a、12bの表面に、
図1ないし
図4に示した上記皮膚当接部材16a、16bと同様の、樹脂材で形成され電極体12a、12bの線幅から食み出る線幅を持つ点線状の第1の皮膚当接部材24a、24b、および、
図5ないし
図7に示した上記皮膚当接部材22a、22bと同様の、樹脂材で形成され電極体12a、12bの線幅より細い線幅で実線状の第2の皮膚当接部材26a、26bが被着されている。第1の皮膚当接部材24a、24bおよび第2の皮膚当接部材26a、26bは、上記した皮膚当接部材16a、16bと同様に、漏血検知用シートが患者の腕に巻かれたときに皮膚が電極体12a、12bに直に接触しないように十分な厚みに形成されている。第1の皮膚当接部材24a、24bおよび第2の皮膚当接部材26a、26bの形成材料や被着形成方法も、上記した皮膚当接部材16a、16bと同様であり、この漏血検知用シートでも、
図1ないし
図4に示した漏血検知用シートと同様の上記作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、血液透析の治療中における抜針による穿刺部からの血液の漏れを検知する漏血検知装置のセンサ部分として使用される漏血検知用シートに係るものであり、繊維加工、印刷、樹脂コーティングなどの技術を取り扱う分野や医療機器を製造する分野などにおいて、有効に利用される。
【符号の説明】
【0020】
10 不織布
12a、12b 電極体
14a、14b 電極端子
16a、16b 点線状の皮膚当接部材
18 防水材
22a、22b 実線状の皮膚当接部材
24a、24b 点線状の第1の皮膚当接部材
26a、26b 実線状の第2の皮膚当接部材