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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172022
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】減肉検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089433
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】520479629
【氏名又は名称】株式会社CAST
(71)【出願人】
【識別番号】518042833
【氏名又は名称】株式会社ソラリス
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中妻 啓
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 智季
(72)【発明者】
【氏名】梅田 清
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩太
(72)【発明者】
【氏名】内田 千春
(72)【発明者】
【氏名】横山 和也
(72)【発明者】
【氏名】風間 祐人
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BA03
2G047BC18
2G047GA05
(57)【要約】
【課題】既設の配管であっても管の減肉検査を可能とする減肉検査装置を提供する。
【解決手段】管の減肉を検査する減肉検査装置であって、流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、
管内壁に向けて超音波を発信し、発信した超音波の反射波を受信することにより、管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段とを備え、前記検知手段は、前記アクチュエータが管径方向に拡径したときに管内壁に接触し、管内壁に直接的に超音波を発信することにより、管の肉厚についての情報を取得する構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の減肉を検査する減肉検査装置であって、
流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、
管内壁に向けて超音波を発信し、発信した超音波の反射波を受信することにより、管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、
前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段と、
を備え、
前記検知手段は、前記アクチュエータが管径方向に拡径したときに管内壁に接触し、管内壁に直接的に超音波を発信することにより、管の肉厚についての情報を取得することを特徴とする減肉検査装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記アクチュエータが拡径し、管内壁面に押圧されたときに管の内壁面の形状に沿って変形し、密着可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の減肉検査装置。
【請求項3】
管の減肉を検査する減肉検査装置であって、
流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、
コイルに電圧を印加することにより管に渦電流を生じさせコイルのインピーダンスの変化に基づいて管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、
前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段と、
を備え、
前記検知手段は、
前記アクチュエータが管径方向に拡径し、管内壁に接触した状態でコイルに電圧が印加されることにより、管の肉厚についての情報を取得することを特徴とする減肉検査装置。
【請求項4】
管の減肉を検査する減肉検査装置であって、
流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、
X線源からX線を管に向けて照射し、管を透過したX線を検出器により検出することにより管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、
前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段と、
を備え、
前記検知手段は、
前記アクチュエータが管径方向に拡径したときに、前記X線源が管内壁に接触し、管外に設けられた検出器によりX線源から照射されたX線を受光することにより、管の肉厚についての情報を取得することを特徴とする減肉検査装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、管内を移動可能に構成された移動手段に接続されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の減肉検査装置。
【請求項6】
前記移動手段は、
流体の供給により管径方向に膨張するとともに管軸方向に収縮し、
流体の排出により管径方向に収縮するとともに管軸方向に伸長する膨縮体を複数連結して構成され、
複数の膨縮体がミミズの蠕動運動を模すように膨縮することにより移動可能とされた移動手段に接続されたことを特徴とする請求項5に記載の減肉検査装置。
【請求項7】
前記移動手段は、
流体の供給により管径方向に膨張し、流体の排出により管径方向に収縮する膨縮体と、
流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮体と、を備え、
前記膨縮体は伸縮体の両端に連結され、
膨縮体及び伸縮体が尺取虫の推進動作を模すように動作することにより管内を移動することを特徴とする請求項5に記載の減肉検査装置。
【請求項8】
流体の供給により管径方向に膨張するとともに管軸方向に収縮し、
流体の排出により管径方向に収縮するとともに管軸方向に伸長する膨縮体を複数連結して構成され、
複数の膨縮体がミミズの蠕動運動を模すように膨縮することにより移動する移動手段を備え、
前記膨縮体の一部が前記アクチュエータとして機能することを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の減肉検査装置。
【請求項9】
流体の供給により管径方向に膨張し、流体の排出により管径方向に収縮する膨縮体と、
流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮体と、を備え、
前記膨縮体は伸縮体の両端に連結して構成され、
膨縮体及び伸縮体が尺取虫の推進動作を模すように動作することにより移動する移動手段を備え、
前記膨縮体の一部が前記アクチュエータとして機能することを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の減肉検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減肉検査装置に関し、特に、既設の管であっても減肉状態を検査可能な減肉検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管の減肉状態を検査するための技術の一つとして、例えば、特許文献1に開示されるように超音波を利用した減肉検査装置などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-096857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波診断は、管外から超音波センサを当てて計測するため、埋設管には適用することができない。また、管の外周に保護材が巻かれている場合には、それを取り除く手間が発生していた。工場やプラントの配管は高所に設置されているものも多く、足場の設置に加え、それに伴うコストの増加や作業に危険が伴うことになる。
一方、管内から計測する手法として、管内を水で満たし、非接触超音波診断をする方法が考えられるが、管内を水で満たす設備が大がかりで、かつ水を使えない場合もあり、用途が限定されていた。
【0005】
そこで、本願発明は、既設の配管であっても管の減肉検査を可能とする減肉検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための減肉検査装置の構成として、管の減肉を検査する減肉検査装置であって、流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、管内壁に向けて超音波を発信し、発信した超音波の反射波を受信することにより、管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段と、を備え、前記検知手段は、前記アクチュエータが管径方向に拡径したときに管内壁に接触し、管内壁に直接的に超音波を発信することにより、管の肉厚についての情報を取得する構成とした。
本構成によれば、既設の配管であっても容易に管の減肉検査を可能とすることができる。
また、減肉検査装置の他の構成として、前記検知手段は、前記アクチュエータが拡径し、管内壁面に押圧されたときに管の内壁面の形状に沿って変形し、密着可能とする構成とした。
本構成によれば、超音波センサを管の内壁に密着させることができるので水などを用いることなく、管の減肉検査を行うことができる。また、超音波センサが柔軟性を有するので、押圧手段により押圧した時に、管の湾曲した内面にもフィットするため、計測精度の低下を抑制できる。即ち、超音波センサを検査対象の管の内壁に密着させることで、管に対して直接的に超音波を発信し、発信した超音波を受信することができるので、空気や水などの流体を介在させて超音波により管の肉厚を計測するときに比べて管の減肉状態(肉厚)の計測精度を高めることができる。
また、減肉検査装置の他の構成として、管の減肉を検査する減肉検査装置であって、流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、コイルに電圧を印加することにより管に渦電流を生じさせコイルのインピーダンスの変化に基づいて管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段と、を備え、前記検知手段は、前記アクチュエータが管径方向に拡径し、管内壁に接触した状態でコイルに電圧が印加されることにより、管の肉厚についての情報を取得する構成としても良い。
また、減肉検査装置の他の構成として、管の減肉を検査する減肉検査装置であって、流体の供給・排出によって膨張・収縮する弾性体を有し、弾性体が管内において管径方向に拡縮するアクチュエータと、X線源からX線を管に向けて照射し、管を透過したX線を検出器により検出することにより管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得する検知手段と、前記検知手段が取得した情報を処理し、管の肉厚の状態を取得する処理手段と、を備え、前記検知手段は、前記アクチュエータが管径方向に拡径したときに、前記X線源が管内壁に接触し、管外に設けられた検出器によりX線源から照射されたX線を受光することにより、管の肉厚についての情報を取得する構成としても良い。
また、減肉検査装置の他の構成として、アクチュエータは、管内を移動可能に構成された移動手段に接続された構成とした。
本構成によれば、従来はピンポイントでしか実施できなかった減肉検査を、連続的に実施することができる。つまり、超音波センサを管の延長方向に沿って移動させることができるので、管の延長方向に沿う減肉状態を検査することが可能となる。また、検査対象とされる管には、高所に配管されているものもあり、従来必要とされた足場の設置が不要となり、作業員の高所作業といった危険も低減できる。
前記移動手段は、例えば、流体の供給により管径方向に膨張するとともに管軸方向に収縮し、流体の排出により管径方向に収縮するとともに管軸方向に伸長する膨縮体を複数連結して構成され、複数の膨縮体がミミズの蠕動運動を模すように膨縮することにより移動可能としたり、流体の供給により管径方向に膨張し、流体の排出により管径方向に収縮する膨縮体と、流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮体と、を備え、前記膨縮体は伸縮体の両端に連結され、膨縮体及び伸縮体が尺取虫の推進動作を模すように動作することにより管内を移動可能としたりする構成としても良い。
また、減肉検査装置の他の構成として、流体の供給により管径方向に膨張するとともに管軸方向に収縮し、流体の排出により管径方向に収縮するとともに管軸方向に伸長する膨縮体を複数連結して構成され、複数の膨縮体がミミズの蠕動運動を模すように膨縮することにより移動する移動手段を備え、前記膨縮体の一部が前記アクチュエータとして機能する構成としたり、流体の供給により管径方向に膨張し、流体の排出により管径方向に収縮する膨縮体と、流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮体と、を備え、前記膨縮体は伸縮体の両端に連結して構成され、膨縮体及び伸縮体が尺取虫の推進動作を模すように動作することにより移動する移動手段を備え、前記膨縮体の一部が前記アクチュエータとして機能する構成としたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】減肉検査装置の概略構成図である。
図2】超音波センサの構成を示す平面図及び断面図である。
図3】押圧手段の軸方向に沿う断面図である。
図4】押圧手段を構成する外筒の径方向断面図である。
図5】押圧手段の動作を示す図である。
図6】超音波センサを備えたアクチュエータが収縮状態にあるときの平面図及び軸方向図である。
図7】超音波センサを備えたアクチュエータが膨張状態にあるときの平面図及び軸方向図である。
図8】超音波センサを備えたアクチュエータによる計測動作を示す図である。
図9】アクチュエータによる押圧前後の超音波センサにより得られた波形を示す図である。
図10】減肉検査装置の他の形態を示す図である。
図11】移動体による移動動作を示す図である。
図12】超音波センサの他の形態を示す図である。
図13】超音波センサの他の取り付け形態を示す図である。
図14】超音波センサの他の取り付け形態を示す図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る減肉検査装置1の概略構成図である。減肉検査装置1は、超音波を利用して管Zの減肉状態を検査する装置であって、例えば、図1に示すように構成することができる。
【0010】
図1に示すように、減肉検査装置1は、超音波を発信及び受信可能に構成された超音波センサ200と、超音波センサ200が取り付けられ、該超音波センサ200を管内壁に向けて押圧する押圧手段300と、押圧手段300が超音波センサ200を管内壁面に押圧した状態で、超音波センサ200から発信した超音波及び発信した超音波の反射波に基づいて管の肉厚についての情報を取得する処理装置400とを備えた構成とされる。
【0011】
図2は、超音波センサの構成を示す平面図及び断面図である。本実施の形態に係る超音波センサ200は、受信した超音波を電気信号に変換したり、電気信号を超音波に変換して発信したりする機能が一体化されたプローブとして構成されている。
【0012】
超音波センサ200は、センサ基板202と、センサ基板202の上面202aの一部に設けられた圧電膜部204と、圧電膜部204の表面204aに設けられた電極部206と、電極部206に電気的に接続された信号線208Aと、センサ基板202の上面202aに電気的に接続されたアース線208Bと、圧電膜部204や電極部206を保護する保護材210とを備える。
即ち、超音波センサ200は、センサ基板202及び電極部206で圧電膜部204を挟んだ柔軟性を有する超音波探触子として形成されている。
【0013】
以下の説明では、超音波センサ200を構成するセンサ基板202、圧電膜部204及び電極部206の順に積層され、その積層方向を厚み方向といいセンサ基板202側を下側、電極部206側を上側という。
【0014】
センサ基板202は、平面視において円形と矩形とを組み合わせた複合形状に形成された平板状の部材である。本実施形態では、円形部分(以下円形部という)が実質的なセンサ部として構成されている。センサ基板202は、例えば、導電性を有する素材を用いることができる。センサ基板202の素材には、例えばチタンやステンレス等の金属、導電性を有するプラスチック等の非金属素材を用いることができる。センサ基板202の厚みは、超音波センサ200が構成されたときに柔軟性を有するように素材に応じて設定すると良い。
【0015】
圧電膜部204は、超音波の送受信を可能とする薄膜状の圧電素子として機能する。圧電膜部204は、センサ基板202の円形部に積層され、平面視でセンサ基板202の円形部よりも小径の円形状に形成されている。
【0016】
圧電膜部204は、例えば、センサ基板202の上に多孔質圧電セラミック膜として形成されている。これは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)・チタン酸ビスマス(BiT)・ニオブ酸リチウムなどのセラミック粉体と、PZT・BiTチタン酸などの前駆体であるゾルゲル溶液との混合物をゾルゲルスプレー法などによって塗布・焼結し作製することができる。そして、焼結後に所定の電圧(例えば、100μm当たり、30kV程度)を印加してダイポールを揃えて分極処理されている。なお、分極は、膜厚に応じて適宜電圧を変更してもよい。
【0017】
電極部206は、センサ基板202の円形部に圧電膜部204の表面204aに積層され、平面視でセンサ基板202の円形部よりも小径の円形状に形成されている。
電極部206は、例えば、スクリーン印刷・蒸着・スパッタリングその他の印刷法により、銀・アルミ・チタン・白金等の導電材料を利用して薄膜状に形成することができる。
【0018】
センサ基板202及び電極部206には、信号線208A及びアース線208Bを有する配線208が接続される。
信号線208Aは、電極部206の表面206aに接続されている。これにより信号線208Aの一端が電極部206に電気的に接続される。
アース線208Bは、センサ基板202の圧電膜部204が形成されていない部分の上面202aに接続されている。これによりアース線208Bの一端がセンサ基板202に電気的に接続される。
信号線208A及びアース線208Bの他端は、処理装置400に接続される。
【0019】
保護材210は、センサ基板202、圧電膜部204及び電極部206の表面を保護するように設けられる。保護材210は、絶縁性及び可撓性を有する、例えば、シリコン、ゴム、セラミック等を素材として形成することができる。好ましくは、保護材210は、硬化後も柔軟性を維持し、センサ部の上面全体を保護可能なものを用いると良い。
本実施形態では、保護材210は、センサ部の全体を被覆するとともに、信号線208A及びアース線208Bを一体化する配線208の外被の一部を含むように形成されている。なお、保護材210が設けられる範囲は、少なくともセンサ部の全体が被覆されていれば良く、適宜設定すれば良い。
【0020】
保護材210は、例えば、センサ基板202の上面202aから保護材210の表面210aが平行となるように所定の厚みで設けると良い。
保護材210の厚みは、保護材210を形成する素材に応じて適宜設定すれば良い。例えば、変形した時のひび割れや可撓性の低下が予測される場合には、可能な限り薄い厚さで形成すれば良い。また、対象へのセンサ部の密着性を考慮する場合には、ある程度の厚みを有するように形成すれば良い。
【0021】
図2に示すように、センサ基板202、圧電膜部204及び電極部206により形成される部分が薄板或いは薄膜状に形成されているため、超音波センサ200は、全体が可撓性及び弾性を有し、該超音波センサが取り付けられた表面や、力が加えられたときに厚み方向に変形可能に構成されている。
【0022】
処理装置400は、超音波センサ200から入力された信号を処理し、管の肉厚の状態を取得するための処理手段である。処理装置400は、所謂コンピュータ等により構成することができる。
処理装置400は、例えば、パルス生成部、受信部と、処理部等により構成することができる。
【0023】
パルス生成部は、超音波センサ200による計測をするためのパルス波を生成する。生成されたパルス波は、電圧として超音波センサ200に出力される。
受信部は、超音波センサ200がパルス波を発振し、超音波センサ200により受振した反射波を受信する。
【0024】
処理部は、例えば、図9(b)に示すように得られた反射波のピーク部分に基づいて管Zの減肉状態を処理する。処理部による減肉状態の処理は、例えば、測定した反射波のピークと、検査対象とされる管Zの使用前の管を超音波センサ200により計測した時の反射波におけるピークや、管Zの他の測定箇所で得られた反射波におけるピークを比較したり、測定した反射波のピーク時刻あるいは隣り合う反射波のピーク時刻の差から測定部における管Zの肉厚を計算したりすることで管の肉厚の状態を取得することができる。
【0025】
[押圧手段の構成]
押圧手段300は、例えば、管内において流体を供給・排出することにより膨張・収縮し、管径方向に拡縮可能に構成されたアクチュエータ320と、アクチュエータ320への流体の供給・排出を制御するアクチュエータ制御装置350とで構成することができる。
【0026】
図3は、アクチュエータの一例を示す軸方向断面図である。
アクチュエータには、弾性体として構成される所謂人工筋肉を利用することができる。本実施形態では、軸方向繊維強化型のものとして説明するがマッキベン、ワルシャワ型などいずれでも良い。
図3に示すように、アクチュエータ320は、例えば、二重管を成すように外筒22の内周側に内筒21を同軸となるように配置し、内筒21の外周面と外筒22の内周面との間を端部部材23で閉鎖することにより閉空間が形成されている。
【0027】
内筒21は、例えば、軸方向への伸縮を許容し、外径が実質的に変化しない気密性を有する筒体を用いることができる。内筒21には、例えば、蛇腹構造を有する筒体の利用が挙げられる。本実施形態では内筒21は、螺旋状の蛇腹構造を有するものとして説明する。
【0028】
図4は、図3中のA1-A1矢視における外筒22の断面図である。なお、外筒22の厚みについて誇張して示してある。
外筒22は、軸方向への伸縮が拘束された気密性を有する筒状弾性体として構成されている。例えば、図4に示すように、外筒22は、シリコーンゴム等の合成ゴム、或いは天然ラテックスゴム等の天然ゴム等の気密性及び伸縮性を有する弾性素材からなる筒本体22Aに、複数の繊維22Bを内挿することにより構成することができる。
【0029】
複数の繊維22Bは、外筒22が軸方向への伸縮を規制することを目的として内挿されている。したがって、繊維22Bの内挿される形態は、外筒22の軸方向への伸縮を規制するものであればいずれであっても良い。例えば、繊維22B一本の長さが外筒22の一端から他端に達するものを軸線に沿って延長させて外筒22の壁厚内において層を成すように配置したり、外筒22の軸方向長さよりも短い繊維を軸方向に重複が得られるように並べて一端から他端まで達するように分布させて層を成すように配置したりすれば良い。
【0030】
なお、繊維22Bは、軸方向への伸縮変化の小さいものが好ましい。例えば、繊維22Bの素材には、アラミド繊維、炭素(カーボン)繊維、ガラス繊維、ナイロン、ポリアミド系繊維やポリオレフィン系繊維、金属繊維等の被伸長性を有するものを用いることができる。
また、繊維22Bは、フィラメント、ヤーン(スパン・ヤーン及びフィラメント・ヤーン)、ストランド等のいずれの形態であっても良く、また、撚りをかけずに収束させた無撚繊維、これらの繊維を複数本撚って作成したものであっても良い。
なお、繊維の種類にもよるが、二種類以上の素材の異なる繊維や形態の異なる繊維を組み合わせても良い。
繊維22Bには、筒本体22Aとの密着性を考慮して、適当なプライマー処理、又は、表面酸化処理等を行うと良い。
【0031】
なお、筒本体22Aを形成する素材は、後述する気密室Sへの圧縮空気の給排によってその形状が変化し得る材質であれば如何なる材質であっても良い。
また、筒本体22Aの厚さや繊維22Bの配置については、外筒22の空気排出時の伸長する力等を考慮して決めれば良い。
【0032】
端部部材23は、例えば樹脂や硬質のゴム、金属等により円筒状に形成された円筒体であって、内筒21を固定するための内筒固定部28や、外筒22を固定するための外筒固定部29を備えた構成とされている。
内筒固定部28は、内筒21の外周を嵌着可能に端部部材23の一端側の内周面に設けられる。
【0033】
本実施形態では、内筒21が螺旋状の蛇腹構造を有するものとしたので、例えば、内筒固定部28は、内筒21の螺旋形状を利用し、内筒21の外周をねじ込み可能な螺旋溝として形成されている。以下、端部部材23において軸方向に内筒固定部28が設けられた側を内側といい、その逆側を外側という。
【0034】
例えば、内筒固定部28を形成する螺旋溝は、内筒21との気密性を考慮し、少なくとも内筒21の外周側において螺旋を描く山部の1ピッチ以上となるように形成すると良い。また、内筒固定部28は、例えば、内筒21の外周面と密着するように形成しておくことにより、内筒21との気密性をより確実なものとすることができる。
【0035】
外筒固定部29は、端部部材23の外周面に形成される。外筒固定部29は、内筒固定部28に固定された内筒21の端面よりも所定距離軸方向外側に位置し、端部部材23の外周を軸方向外側に行くにしたがって外径が漸次小径となるように、例えば球面状やテーパー状等に形成すると良い。
【0036】
外筒22は、端部が外筒固定部29を軸方向外側に過ぎるように外筒22を配置した状態において、端部部材23の軸方向外側からリング状のカシメ部材30を外筒22の外周面側に被せ、さらにカシメ部材30の外側から半円状に形成された一対の固定部材32で端部部材23の外周面に挟み込むように固定することで端部部材23に固定される。
【0037】
このように内筒21及び外筒22の端部を端部部材23;23に固定することにより、アクチュエータ320には、内筒21の外周面と端部部材23の外周面及び外筒22の内周面によって囲まれた閉空間としての気密室Sが形成される。
【0038】
さらに、端部部材23には、連結体40を固定するための図外の固定部と、気密室Sへの空気の給排を可能にする給排孔36が設けられる。
【0039】
給排孔36は、内周側から内筒固定部28と外筒固定部29との間に形成された気密室Sに空気を給排可能に形成される。例えば、給排孔36は、端部部材23の内周面から端部部材23の内側の端面に貫通する貫通孔として形成される。この給排孔36には、気密室Sに空気を供給、気密室Sに供給した空気を排出するためのチューブ5が接続される(図1参照)。
【0040】
図5は、アクチュエータ320の動作を示す図である。アクチュエータ320は、気密室Sに空気を供給することにより、軸方向に長さがx1からx2へと収縮するとともに径方向に外径がd1からd2へと拡径する。また、気密室Sから空気を排出することにより軸方向の長さがx2からx1へと伸長するとともに径方向に外径がd2からd1へと収縮する。
【0041】
アクチュエータ320は、例えば、該アクチュエータ320の軸方向が管Zの管軸方向に沿うように設けられる。
【0042】
以下、配管Zの内壁に外筒22が密着するように気密室Sに空気を供給した状態を膨張状態、気密室Sに供給された空気を気密室Sから排出した状態を収縮状態という。アクチュエータ320は、気密室Sに空気を供給し、膨張させることにより、超音波センサ200を配管Zの内壁に押圧する実質的な押圧手段として機能する。
【0043】
図6は、超音波センサ200を備えたアクチュエータ320が収縮状態にあるときの平面図及び軸方向図である。図7は、超音波センサ200を備えたアクチュエータ320が膨張状態にあるときの平面図及び軸方向図である。
超音波センサ200は、アクチュエータ320を形成する外筒22の外周面に保護材210を向けて、例えば、接着により固定することができる。超音波センサ200は、前述のとおり柔軟性を有することから外筒22の外周面の曲率に沿うように変形して取り付けることができる。
【0044】
超音波センサ200が取り付けられる位置は、例えば、図7に示すように、アクチュエータ320が膨張した時に半径方向に張り出す位置に例えば、アクチュエータ320の円周方向に均等な間隔で取り付けられる。
なお、アクチュエータ320が膨張した時に半径方向に張り出す位置とは、図7に示すように、外筒22が最も半径方向に張り出した位置に限定されず、例えば、アクチュエータ320を膨張させた時に、アクチュエータ320に取り付けられた超音波センサ200が配管Zの内壁に密着可能な範囲であればいずれであっても良い。
また、アクチュエータ320に設けられる超音波センサ200の数量は限定されず、1以上であれば良い。超音波センサ200を複数設ける場合には、前述したように、1つの円周上において均等な間隔で設けることに限定されず、例えば、アクチュエータ320の軸方向に位置ずれした複数の円周上に設けても良く、少なくとも互いの位置関係が特定できていれば良い。
【0045】
アクチュエータ制御装置350は、例えば、コンプレッサー112、レギュレータ114、供給弁116及び排出弁118等により構成することができる。
アクチュエータ制御装置350は、コンプレッサー112により生成された圧縮空気をレギュレータ114により所定の圧力に減圧して一定圧の圧縮空気をアクチュエータ320に供給可能に構成すれば良い。レギュレータ114により調整される圧縮空気の圧力は、アクチュエータ320を膨張させたときに、少なくとも外筒22の外周面が配管Zの内壁に密接可能な圧力よりも高く設定すると良い。
【0046】
供給弁116及び排出弁118は、レギュレータ114からアクチュエータ320への圧縮空気の供給経路上に設けることにより、アクチュエータ320への圧縮空気の供給と、アクチュエータ320に供給した圧縮空気の排出を制御することができる。
【0047】
例えば、レギュレータ114からアクチュエータ320に向かう主流路と、レギュレータ114からアクチュエータ320の途中に大気開放するための分岐流路とを形成し、レギュレータ114から分岐流路に至る主流路に供給弁116を設け、分岐流路に排出弁118を設ければ良い。そして、アクチュエータ320に圧縮空気を供給する場合には、排出弁118を閉じて供給弁116を開き、アクチュエータ320から圧縮空気を排出する場合には、供給弁116を閉じて排出弁118を開けば良い。
【0048】
図8は、超音波センサ200を備えたアクチュエータ320による計測動作を示す図である。
図8(a)に示すように、超音波センサ200を備えたアクチュエータ320は、管Zに配置される。そして、アクチュエータ320に圧縮空気を供給してアクチュエータ320を膨張させることにより、超音波センサ200は、膨張に伴う外筒22の変形に追従して変形しつつ、センサ基板202を管Zの内周面に向けながら移動する。超音波センサ200は、アクチュエータ320の膨張の継続により、センサ基板202の下面202bが管Zの内周面に接触し、さらに外筒22が管Zの内周面の形状に沿って変形するように密着することで、図8(b)に示すように、管Zの内周面に押圧され、管Zの内周面の形状に変形し、センサ基板202の下面202bが密着することとなる。
このように超音波センサ200が管Zの内周面の形状に変形し、密着することにより、管Zに対して超音波を直接的に発信し、超音波の反射波を直接的に受信することができるので、測定位置に関わらず管Zの肉厚の状態を取得することができる。
【0049】
図9は、アクチュエータ320による押圧前後の超音波センサ200により得られた波形を示している。詳細には、図9(a)は、図8(a)に示すようにアクチュエータ320が収縮した状態で超音波センサ200を動作させた時の波形を示し、図9(b)は、図8(b)に示すようにアクチュエータ320を膨張させ、超音波センサ200が管Zの内周面Zaに押圧されたときに超音波センサ200を動作させて計測した時の波形を示している。
超音波センサ200が管Zの内周面に押圧されることにより、図9(a)に示す波形に比べ、図9(b)に示すように、明確なピークが見られている。
即ち、図9(b)に示す波形を処理装置400により所定の処理をすることで管Zの減肉の状態を精度良く得ることができる。
ここで言う所定の処理とは、例えば、ピークは配管Z内を伝搬した超音波反射波を表しており、第1反射波のピーク時刻や、隣り合う反射波間のピーク時刻差から管Zの肉厚を計算し、減肉の状態を精度良く得ることができる。
【0050】
なお、超音波センサ200による検査位置を変更する場合には、アクチュエータ320を収縮させて移動させ、再びアクチュエータ320を膨張させれば良い。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波センサ200を利用して管の減肉検査をするにあたり、超音波センサ200を検査対象の管の内壁に密着させることができ、空気や水などの流体を介在させたときに比べて超音波による肉厚の計測精度を高めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、圧縮空気の供給時にはアクチュエータ320が径方向に膨張するとともに軸方向に収縮し、圧縮空気の排出時にはアクチュエータ320が径方向に収縮するとともに軸方向に伸長するように構成したがこれに限定されない。
【0053】
例えば、アクチュエータ320は、内筒21をなくし、外筒22の両端を軸状の端部部材で閉鎖した構成としても良い。
【0054】
図10は、減肉検査装置1の他の形態を示す図である。
前述のアクチュエータ320は、例えば、図10に示すように、連結体40を介して複数連結することにより、管Z内を移動可能とする移動体(移動手段)2を構成することができる。
以下の説明では、説明の便宜上前述のアクチュエータ320をあえて膨縮体20という。
本実施形態では、移動体2は、7つの膨縮体20と6つの連結体40とを交互に連結して構成されている。
【0055】
連結体40は、所謂ユニバーサルジョイントとして構成され、前後に連結される膨縮体20が管Zに設けられる曲管部分に沿う屈曲を可能としている。
【0056】
移動体2は、連結された複数の膨縮体20の膨張・収縮を移動体制御装置100により個別に制御することにより、管Zにおける移動が可能とすることができる。移動体制御装置100は、例えば、前述のアクチュエータ制御装置350と同様に、コンプレッサー112、レギュレータ114、供給弁116及び排出弁118等を利用することで構成することができる。
【0057】
例えば、レギュレータ114から各膨縮体20(A)~20(G)には独立した圧縮空気の流路を形成し、流路毎に供給弁116と排出弁118とが設けられる。
【0058】
例えば、レギュレータ114から膨縮体20(A)に向かう流路は、レギュレータ114から膨縮体20(A)に延長する主流路と、主流路の途中で分岐して大気開放される分岐流路とで構成される。主流路には、供給弁116が設けられ、分岐流路には、排出弁118が設けられる。そして、レギュレータ114から各膨縮体20(B)~(G)に向かう流路についてもレギュレータ114から膨縮体20(A)に向かう流路と同様に個別に形成される。
【0059】
そして、各膨縮体20(A)~(G)に対応して設けられた供給弁116及び排出弁118を図外の制御手段(CPU上で動作する制御プログラム)により開閉を制御するように移動体制御装置100を構成すれば良い。
【0060】
図11は、移動体2による移動動作を示す図である。図11に示すように、移動体2は、図11(a)から図11(b)、図11(b)から図11(c)に、図11(c)から図11(d)、図11(d)から図11(e)、図11(e)から図11(f)、図11(f)から図11(g)、図11(g)から図11(a)に示すように、膨張状態とされる膨縮体20が進行方向後方へと順次2つずつ移動することによりミミズの蠕動運動を模した推進方法により管Z内を移動することができる。
【0061】
したがって、進行方向先頭の膨縮体20(A)に超音波センサ200を前述のように取り付けることで、膨縮体20(A)が超音波センサ200を管Zの内壁に押圧するアクチュエータとして機能する。つまり、先頭の膨縮体20(A)は、移動体2の一部を形成するとともに超音波センサ200を管Zの内壁に押圧するアクチュエータとして機能する。
【0062】
そして、超音波センサ200を備える膨縮体20(A)が膨張する毎に、超音波センサ200が管Zの内壁に押し付けられ、このときに超音波による管Zの厚さ計測を行うことで、管Z内を移動しながら管Zの減肉検査を行うことができる。
【0063】
なお、超音波センサ200を備える膨縮体20は、先頭の膨縮体20(A)に限定されない。例えば、全ての膨縮体20(A)~(G)が超音波センサ200を備えた構成としても良く、膨縮体20(A)~(G)の中から選択的に超音波センサ200を備える構成としても良い。
【0064】
なお、図示しないが、前述の移動体2は、膨縮体20(アクチュエータ320)を連結体40により連結するものとして説明したが、例えば、流体の供給により軸方向にのみ伸長し、供給された流体を排出することにより軸方向に短縮する伸縮体により連結するようにしても良い。
【0065】
このように移動体を構成した場合、移動体が尺取虫を模した推進動作をするように膨縮体20と伸縮体を動作させることにより管Z内を移動することができる。
尺取虫を模した推進動作は、例えば、以下のように膨縮体20と伸縮体を動作させれば良い。
まず、伸縮体の進行方向前方に連結された膨縮体20を収縮、伸縮体を短縮状態とし、伸縮体の進行方向後方に連結された膨縮体20を膨張させる(S1)。
次に、伸縮体の進行方向前方に連結された膨縮体20の収縮状態、及び、伸縮体の進行方向後方に連結された膨縮体20の膨張状態を維持したまま、伸縮体を伸長させる(S2)。
次に、伸縮体の進行方向後方に連結された膨縮体20の膨張状態及び伸縮体の伸長状態を維持したまま伸縮体の進行方向前方に連結された膨縮体20を膨張させる(S3)。
次に、伸縮体の進行方向前方に連結された膨縮体20の膨張状態を維持したまま、伸縮体の進行方向後方に連結された膨縮体20を収縮及び伸縮体を短縮させる(S4)。
次に、伸縮体の進行方向前方に連結された膨縮体20の膨張状態及び伸縮体の短縮状態を維持したまま、伸縮体の進行方向後方に連結された膨縮体20を膨張させる(S5)。
そして、伸縮体の短縮状態及び伸縮体の進行方向後方に連結された膨縮体20の膨張状態を維持したまま伸縮体の進行方向前方に連結された膨縮体20を収縮させる(S6)。つまりS6により移動体は、S1の状態に戻る。
【0066】
したがって、伸縮体の進行方向前後に連結された膨縮体20に超音波センサ200を前述のように取り付けることで、前後の膨縮体20を、管Zの内壁に超音波センサ200を押圧するアクチュエータとして動作させることができる。
【0067】
このように移動体を構成しても管Zの延長方向に沿って超音波センサ200を移動させながら減肉検査をすることができる。
【0068】
また、弾性素材で構成されたアクチュエータ320により押圧することにより、管Zに設けられた屈曲部などであっても、超音波センサ200が可撓性を有するように構成されていることから、超音波センサ200が管Zの内周面の形状に沿うように変形し、管Zの内周面に超音波センサ200を密着させることができ、管Zの全体について同じ精度で減肉検査をすることができる。
【0069】
なお、移動体2には、前述のような超音波センサ200に加え、例えば、管Zの内周面の状態を視覚的に取得できるカメラを搭載すると良い。
【0070】
また、移動体2において超音波センサ200を備えるアクチュエータ320は、例えば、IMU等のアクチュエータ320が移動した履歴やアクチュエータ320の姿勢の履歴を取得するセンサを備えることで、超音波センサ200による計測の位置の履歴を取得することができ、その履歴から管Zに異常があった位置を容易に特定することができる。
【0071】
図12は、超音波センサ200の他の形態を示す図である。
上記実施形態では、超音波センサ200を構成するにあたり、導電性を有する素材でセンサ基板202を構成し、このセンサ基板202の上に圧電膜部204、圧電膜部204の上に電極部206を積層して構成するものとして説明したがこれに限定されない。
【0072】
例えば、センサ基板202は、絶縁体の素材で構成しても良い。この場合、図12に示すように、センサ基板202、センサ基板202の上に下部電極部203、下部電極部203の上に圧電膜部204、圧電膜部204の上に電極部206を積層して構成するようにしても良い。
センサ基板202の厚みやその素材は、超音波センサ200が構成されたときに柔軟性を有するように選択すれば良い。
なお、下部電極部203は、センサ基板202を導体として構成したときの素材、例えばチタンやステンレス等の金属、導電性を有するプラスチック等の非金属素材を用いることができる。
【0073】
図13図14は、超音波センサの他の取り付け形態を示す図である。
上記実施形態では、超音波センサ200をアクチュエータ320に接着するものとして説明したが、接着に限定されない。超音波センサ200は、例えば、取付部材250を利用してアクチュエータ320に取り付けるようにしても良い。取付部材250は、アクチュエータ320の膨張や収縮などの形状の変化に追従可能とすると良い。
【0074】
図13図14に示す取付部材250は、帯状に構成したものを示している。この場合、アクチュエータ320の軸方向に沿って取付部材250が延長するように、アクチュエータ320の外筒22の外周面に配置すれば良い。そして取付部材250の一端側250Aをアクチュエータ320の一方の端部部材23に、他端側250Bを他方の端部部材23にそれぞれ固定すれば良い。
【0075】
取付部材250の端部部材23;23への固定は、アクチュエータ320から取付部材250が容易に脱落しないものであれば良い。取付部材250の端部部材23;23への固定方法は、例えば、取付部材250を構成する素材に応じて好適な固定手段を選択したり、メンテナンス性を考慮して着脱可能としても良い。
【0076】
そしてこの取付部材250に、超音波センサ200が管Zの内壁面に直接接触するように取り付けられていれば良い。即ち、アクチュエータ320が膨張・収縮したときに超音波センサ200が取付部材250からずれないように固定されていれば良い。
【0077】
取付部材250は、例えば、ゴム、樹脂や金属等の素材を用いて構成することができる。
例えば、取付部材250をゴム素材で構成した場合には、ゴムの有する伸縮性を利用して、アクチュエータ320の膨張・収縮したときの外形形状の変形に追従させることができる。これにより、超音波センサ200をアクチュエータ320の外周面の所定の位置に保持したまま管Zの内壁面に接触させることができる。
【0078】
また、取付部材250を樹脂や金属などの素材で構成する場合、ゴムのような伸縮性が得られないため、板ばねのような弾性による変形が得られるように構成することにより、アクチュエータ320の膨張・収縮したときの外形形状の変形に追従させることができる。
【0079】
なお、取付部材250の形状は、帯状に限定されない。取付部材250は、アクチュエータ320が膨張したときに管Zの内壁面への超音波センサ200の接触を可能とし、アクチュエータ320が収縮したときに管Zの内壁面からの超音波センサ200の離間を可能とするものであれば良い。
即ち、取付部材250を構成する素材や形状は、アクチュエータ320の膨張や収縮に追従するように適宜選択すれば良い。
【0080】
なお、超音波センサ200は、柔軟性を有するように構成されたものに限定されず、剛性を有するケースなどに収容されたものであっても良い。この場合、ケースにおいて超音波を発振する発信部や発信した超音波の反射波を受信する受信部が管Zの内壁に対向するようにアクチュエータ320に取り付けると良い。
【0081】
上記実施形態では、管の減肉を検査するための検知手段として超音波センサ200を用いた場合について説明したが、これに限定されない。
例えば、超音波に代えて渦電流やX線を用いて管Zの減肉状態を検査するようにしても良い。
【0082】
渦電流を利用した配管の減肉検査では、センサヘッドの内部設けられたコイルにパルス状の電圧を印加することにより、磁界を発生させるように構成された検知手段が利用される。この渦電流センサを利用した減肉検査では、プローブの内部に設けられたコイルにパルス状の電圧を印加することにより磁界を発生させ、管の表面を通過する磁束の周りに電磁誘導作用によって流れる渦電流の変化にともなうコイルのインピーダンスの変化に基づいて管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得している。
このように渦電流を利用する場合、計測対象に対する距離、具体的には、管Zの内壁面に対する距離が一定であることが好適である。
そこで、前述の超音波センサに代えて渦電流センサをアクチュエータ320に取り付けて検査することにより、測定位置が変わる毎にアクチュエータ320がプローブを管Zの内壁面に接触させるので、測定位置の変化に関わらず均一な精度で管Zの肉厚の状態を検出することができる。
【0083】
また、X線を利用した配管の減肉検査では、X線源と、X線源から照射したX線を検出する検出器とで構成された検知手段が利用される。X線を利用した減肉検査では、X線源と検出器とで検査対象の配管を挟むように配置し、X線源から管に向けて照射したX線を検出器で検出することで管の肉厚についての情報を電気的な信号として取得が可能とされている。しかし、この場合に得られる管の肉厚についての情報は、2つの壁を通したものとなる。
そこで、前述の超音波センサに代えて例えば、X線源をアクチュエータ320に取り付け、これに対向するように検出器を管外に設けてX線を検出すれば良い。
【0084】
なお、超音波センサに代えて渦電流センサや、X線源及び検出器等の検出手段を利用して減肉検査装置を構成する場合には、渦電流センサにより得られた管の肉厚についての情報を電気的な信号、検出器により得られた管の肉厚についての情報を電気的な信号に応じて処理手段を構成すれば良い。
【符号の説明】
【0085】
1 減肉検査装置、2 移動体、5 チューブ、
20,20(320)A~20(320)G 膨縮体、
21 内筒、22 外筒、23 端部部材、36 給排孔、
40 連結体、
100 移動体制御装置、112 コンプレッサー、114 レギュレータ、
116 供給弁、118 排出弁、
200 超音波センサ、202 センサ基板、204 圧電膜部、206 電極部、
208 配線、208A 信号線、208B アース線、210 保護材
300 押圧手段、320 アクチュエータ、350 アクチュエータ制御装置、
400 処理装置、
S 気密室、Z 配管(管)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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