(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172032
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】制御プログラム、制御方法、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20241205BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q10/0631
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089450
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水島 彰宏
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】管理者等は業務効率化または人員配置の最適化の具体的な施策を把握できる。
【解決手段】看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(S11)と、時間帯毎に、基準業務量と、設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(S12、S13)と、入居者の生活リズム情報、または、複数のエリアにおける業務情報に基づき、差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(S14、S15)と、ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(S16)と、を含む処理を実行する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(a)と、
時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(b)と、
前記入居者の生活リズム情報、または、複数の前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(d)と、を含む、処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【請求項2】
前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量である、請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項3】
前記基準業務量は、前記設計業務量を複数の時間帯で平準化したものである、請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項4】
前記対応策は、前記入居者の前記生活リズム情報に基づいて、該入居者に対するケアの実施タイミングをシフトさせることである、請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項5】
前記生活リズム情報は、1日における、前記入居者の睡眠、食事、および排泄の少なくともいずれかのタイミングに基づいて判定したものである、請求項4に記載の制御プログラム。
【請求項6】
前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量であり、
前記業務情報は、時間帯毎の前記エリア毎の差分業務量であり、
前記対応策は、同じ時間帯において、前記差分業務量が多い前記エリアを担当するスタッフを、前記差分業務量が少ないまたは無い前記エリアへの担当にシフトすることである、請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項7】
前記設計業務量は、前記入居者に対して実施されるケアの種類と、当該ケアの種類それぞれへの対応に要する所要時間に基づいて算出される、請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項8】
看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(a)と、
時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(b)と、
前記入居者の生活リズム情報、または、前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(d)と、を含む処理を実行する制御方法。
【請求項9】
前記対応策は、前記入居者の前記生活リズム情報に基づいて、該入居者に対するケアの実施タイミングをシフトさせることである、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量であり、
前記業務情報は、時間帯毎の前記エリア毎の差分業務量であり、
前記対応策は、同じ時間帯において、前記差分業務量が多い前記エリアを担当するスタッフを、前記差分業務量が少ないまたは無い前記エリアへの担当にシフトすることである、請求項8、または請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出する第1算出部と、
時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出する第2算出部と、
前記入居者の生活リズム情報、または、前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定する決定部と、
前記決定部が決定した対応策をレコメンド情報として出力する出力部と、を備える情報処理装置。
【請求項12】
前記対応策は、前記入居者の前記生活リズム情報に基づいて、該入居者に対するケアの実施タイミングをシフトさせることである、請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量であり、
前記業務情報は、時間帯毎の前記エリア毎の差分業務量であり、
前記対応策は、同じ時間帯において、前記差分業務量が多い前記エリアを担当するスタッフを、前記差分業務量が少ないまたは無い前記エリアへの担当にシフトすることである、請求項11、または請求項12に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御プログラム、制御方法、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活水準の向上、衛生環境の改善、および医療水準の向上等により、長寿命化が顕著となっている。このため、出生率の低下と相まって、高齢化率が高い高齢化社会になっている。このような高齢化社会では、病気、怪我、および加齢などにより、介護や看護等のケアを必要とする要介護者および要看護者等のケア対象者が増加し、今後、ケアを実施するケアスタッフ等の人員が介護施設において不足することが想定される。このことから、ケアスタッフが行うケア業務の効率化およびケアスタッフの人員配置の適切化が重要になっている。
【0003】
ケア業務の効率化およびケアスタッフの人員配置の適切化を、容易に行うための技術として特許文献1では、設計業務量と業務キャパシティを算出し、これを同時に表示する技術が開示されている(
図9、段落0051参照)。設計業務量とは、時間帯ごとに予定されたケアの種類ごとの所要時間に基づいて算出した業務量(目標値)のことである。業務キャパシティは、スタッフの人数と時間を乗じることにより算出した時間帯ごとの工数である。そして、特許文献1では、時間帯ごとの設計業務量と業務キャパシティを同時に比較できるように表示することで、設計業務量に対して業務キャパシティが過不足しないように、業務効率化や人員配置の最適化等の業務改善のための適切な業務量および配置人員の目標値の設定を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、設計業務量と業務キャパシティとを表示することで、業務キャパシティに余裕がある時間帯や、逆に業務キャパシティが不足している時間帯を抽出し、表示することは可能である。しかしながら、余裕がある時間帯や不足している時間帯の業務に対して、具体的に業務や人員をどのようにスライドさせるかということまでのレコメンドは行えず、具体的な対応策の導出は、ケア業務を管理する管理者等の経験や能力に依存している。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、管理者等の経験や能力に依存せずに、管理者等が業務効率化または人員配置の最適化の具体的な施策を把握できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(a)と、
時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(b)と、
前記入居者の生活リズム情報、または、複数の前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(d)と、を含む、処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【0009】
(2)前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量である、上記(1)に記載の制御プログラム。
【0010】
(3)前記基準業務量は、前記設計業務量を複数の時間帯で平準化したものである、上記(1)に記載の制御プログラム。
【0011】
(4)前記対応策は、前記入居者の前記生活リズム情報に基づいて、該入居者に対するケアの実施タイミングをシフトさせることである、上記(1)に記載の制御プログラム。
【0012】
(5)前記生活リズム情報は、1日における、前記入居者の睡眠、食事、および排泄の少なくともいずれかのタイミングに基づいて判定したものである、上記(4)に記載の制御プログラム。
【0013】
(6)前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量であり、
前記業務情報は、時間帯毎の前記エリア毎の差分業務量であり、
前記対応策は、同じ時間帯において、前記差分業務量が多い前記エリアを担当するスタッフを、前記差分業務量が少ないまたは無い前記エリアへの担当にシフトすることである、上記(1)に記載の制御プログラム。
【0014】
(7)前記設計業務量は、前記入居者に対して実施されるケアの種類と、当該ケアの種類それぞれへの対応に要する所要時間に基づいて算出される、上記(1)に記載の制御プログラム。
【0015】
(8)看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(a)と、
時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(b)と、
前記入居者の生活リズム情報、または、前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(d)と、を含む処理を実行する制御方法。
【0016】
(9)前記対応策は、前記入居者の前記生活リズム情報に基づいて、該入居者に対するケアの実施タイミングをシフトさせることである、上記(8)に記載の制御方法。
【0017】
(10)前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量であり、
前記業務情報は、時間帯毎の前記エリア毎の差分業務量であり、
前記対応策は、同じ時間帯において、前記差分業務量が多い前記エリアを担当するスタッフを、前記差分業務量が少ないまたは無い前記エリアへの担当にシフトすることである、上記(8)、または上記(9)に記載の制御方法。
【0018】
(11)看介護施設における入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出する第1算出部と、
時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出する第2算出部と、
前記入居者の生活リズム情報、または、前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定する決定部と、
前記決定部が決定した対応策をレコメンド情報として出力する出力部と、を備える情報処理装置。
【0019】
(12)前記対応策は、前記入居者の前記生活リズム情報に基づいて、該入居者に対するケアの実施タイミングをシフトさせることである、上記(11)に記載の情報処理装置。
【0020】
(13)前記基準業務量は、前記エリア毎に、時間帯毎の前記エリアを担当するスタッフの人数に基づいて算出される提供可能な業務量であり、
前記業務情報は、時間帯毎の前記エリア毎の差分業務量であり、
前記対応策は、同じ時間帯において、前記差分業務量が多い前記エリアを担当するスタッフを、前記差分業務量が少ないまたは無い前記エリアへの担当にシフトすることである、上記(11)、または上記(12)に記載の情報処理装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、前記看介護施設における前記入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(a)と、時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(b)と、前記入居者の生活リズム情報、または、複数の前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(c)と、前記ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(d)と、を含む処理を実行する。これにより、看介護施設の管理者等の経験や能力に依存せずに、管理者等が業務効率化または人員配置の最適化の具体的な施策を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】情報処理装置、およびこれを含む情報システムの全体構成を示す図である。
【
図2】対象者の部屋に設置された検出部の例を示す図である。
【
図4】撮影画像から判定したシルエットを示す模式図である。
【
図6】情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】エリアに所属する入居者と、スタッフを示すリストの例である。
【
図8】居室外ケアの入力に用いられる操作画面の例である。
【
図9】端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】各データの蓄積処理を示すフローチャートである。
【
図11】レコメンド情報の生成処理を示すフローチャートである。
【
図12】第1の手法におけるステップS11の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【
図14】第2の手法におけるステップS11の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【
図15A】ステップS01-S03の処理により生成された時間帯毎の業務量を示すグラフである。
【
図15B】
図15Aのデータにおいて5-8時の時間帯のスタッフ毎の業務量を示すグラフである。
【
図16】ステップS14の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【
図17】生活リズム情報からケアの実施タイミングをシフトさせる対応策を説明する図である。
【
図18】生活リズム情報からケアの実施タイミングをシフトさせる対応策を説明する図である。
【
図19】生活リズム情報からケアの実施タイミングをシフトさせる対応策の出力例である。
【
図20】ステップS15の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【
図21】フロア間でスタッフをシフトさせる対応策の出力例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
図1は本実施形態に係る情報処理装置20、およびこの情報処理装置20を含む情報処理システム1(見守りシステムともいう)の全体構成を示す図である。情報処理装置20は、サーバーである。情報処理装置20は、看介護施設に各種サービスを提供するサービス提供者が運用するサービス管理用のサーバーであってもよい。情報処理装置は、看介護施設の建物内に配置される、または、サービス提供者の社屋に配置されたオンプレミスサーバーである。また、情報処理装置20は、商用のクラウドサービスを利用したクラウドサーバーであってもよい。
【0025】
図1に示すように、看介護施設で用いられる情報処理システム1は、複数の検出部10、情報処理装置20、端末装置30、1つ以上のスタッフ端末40、複数のNFCタグ45を備える。これらは、有線や無線によって、LAN(Local Area Network)、電話網またはデータ通信網等のネットワーク50を介して、相互に通信可能に接続される。ネットワーク50は、通信信号を中継するリピーター、ブリッジ、ルーターまたはクロスコネクト等の中継機を備えてもよい。
【0026】
図1に示す例では、検出部10、情報処理装置20、端末装置30、およびスタッフ端末40は相互に、アクセスポイント51を含む無線LAN等(例えばIEEE802.11規格に準拠したLAN)のネットワーク50によって、通信可能に接続されている。端末装置30は、例えばPCである。スタッフ端末40は、勤務時においてスタッフ80に携帯して用いられる端末であり、タブレット型コンピューター、スマートフォンまたは携帯電話等の、持ち運び可能な通信端末機器によって構成できる。NFCタグ45は、Felica(登録商標)等のNFC(近距離無線通信)方式を用いたNFCタグであり、アンテナ、IC、およびメモリを有する。NFCタグ45は、間接業務、および居室外ケアの開始、終了の時間(時刻)の記録に用いられる。NFCタグ45は、居室外ケアが行われる食堂、トイレ、浴室等の共用設備の入口または内部に配置される。またNFCタグ45は、施設内において間接業務を行うナースステーション等の設備の入口または内部に配置される。それぞれのNFCタグ45のメモリには、配置位置に応じた動作情報が記憶されている。例えば、スタッフ80は、NFC機能対応のスタッフ端末40を、NFCタグ45にかざす(10cm程度の近傍に近づける)ことにより、スタッフ端末40は、NFCタグ45のメモリ内の動作情報読み出す。これによりスタッフ端末40上のケア記録用のアプリが作動し、および、NFCタグの配置位置に応じた種類の業務(居室外ケア、間接業務)の入力初期画面が立ち上がる(後述の
図8参照)。
【0027】
看介護施設には、複数の居室が配置され、また、それぞれの居室には入居者70(ケア対象者または被介護者ともいう)が入所している。スタッフ80は、入居者70のケア、看護を行う介護士、看護師等である。
【0028】
(検出部10)
図2は、入居者70の部屋のベッド60周辺に設置された検出部10の例を示す図である。
【0029】
検出部10は、入居者70の観察領域であるそれぞれの居室に配置される。
図1に示す例では、4つの検出部10が入居者70であるA様、B様、C様およびD様の居室にそれぞれ配置されている。検出部10の観察領域(撮影領域)にはベッド60が含まれている。入居者70に対して看護または介護を行うスタッフ80(ケアスタッフ、または介護スタッフともいう)は、それぞれ携帯端末であるスタッフ端末40を持ち歩いている。
【0030】
図3は検出部10の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、検出部10は、制御部11、通信部12、カメラ13、体動センサー14、およびケアコール部15を備え、これらはバスによって、相互に接続されている。
【0031】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、およびRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、等のメモリにより構成され、プログラムにしたがって検出部10の各部の制御および演算処理を行う。なお、制御部11は、メモリとして、さらにHDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。
【0032】
通信部12は、ネットワーク50を介して、例えば、情報処理装置20、端末装置30またはスタッフ端末40等の、他の装置と通信するためのインターフェース回路(例えばLANカード等)である。
【0033】
カメラ13は、例えば居室の天井、または壁の上部に配置され、観察領域として真下にある入居者70のベッド60を撮影し、撮影画像(画像データ)を出力する。この撮影画像には、静止画および動画を含む。カメラ13は近赤外線カメラであるが、これに換えて可視光カメラを用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0034】
体動センサー14は、ベッド60に対してマイクロ波を送受信して入居者70の体動(例えば呼吸動)によって生じたマイクロ波のドップラシフトを検出するドップラシフト方式のセンサーである。
【0035】
ケアコール部15は、ベッド60の周辺に配置される。押しボタン式のスイッチを含み、スイッチが入居者70によって押されることでケアコールを検知する。押しボタン式のスイッチに換えて、音声マイクによりケアコールが検知されてもよい。
【0036】
制御部11は、カメラ13が撮影した撮影画像、または、これとともに体動センサー14による検出データから、入居者70の状態を判定する。なお、この判定は、撮影画像を受信した情報処理装置20側で行うようにしてもよい。この判定する状態情報の種類には、ベッド60から起き上がる「起床」、ベッド60から離れる「離床」、ベッド60から転落する「転落」、床面等に転倒する「転倒」、および「睡眠状態」が含まれる。
【0037】
図4は、撮影画像から判定したシルエットを示す模式図である。同図では、カメラ13で撮影した撮影画像131の一部が示されている。制御部11は、複数の撮影画像(動画像)から入居者70の全身のシルエット1A(以下、「人シルエット」と称する)を検出する。また、人シルエット1Aとともに、またはこれに代えて頭部シルエット(図示せず)を用いてもよい。人シルエット1Aは、例えば、撮影時刻が前後する画像を差分する時間差分により差分が相対的に大きい画素の範囲を抽出することで検出され得る。人シルエット1Aは、撮影画像から背景画像を差分する背景差分法により検出されてもよい。
【0038】
起床、離床、転倒、転落の別は、検出した人シルエット1Aから入居者70の姿勢(例えば立位、座位および横臥等)、およびベッド60等の居室内の設置物との相対的な位置から認識される。例えば、起床は、予め設定された、ベッド60の四隅を頂点とする、上方視の四角形の任意の辺を人シルエット1Aが横切る幅が増加して20cm以上となったことにより認識され得る。また、例えば、離床は、人シルエット1Aの、当該四角形の内部に対する外部の面積の割合が増加して80%以上となったことにより認識され得る。
【0039】
睡眠状態としては、少なくともベッド内で睡眠している「睡眠」の状態が含まれていればよいが、この「睡眠」に加えて、居室内には居るがベッド60から離床している「不在」、ベッド60内に居る(在床)が睡眠していない「覚醒」が含まれることが好ましい。睡眠の判定は、撮影画像により人シルエット1A、および/または頭部シルエットを検出し、その位置の変化、または変化の頻度により判定する。ベッド60内において位置の変化がほとんどない場合には、睡眠と判定し、寝返り等により位置の変化が多ければ覚醒していると判定する。
【0040】
これらの認識は、制御部11のCPUが処理するプログラムにより行ってもよく、組み込み型の処理回路により行うようにしてもよい。また、これに限られず情報処理装置20側でこれらの認識の全部またはほとんどの処理を行うようにし、制御部11では情報処理装置20への撮影画像の送信のみを行うようにしてもよい。
【0041】
なお、睡眠状態の判定については、以下に説明するように、制御部11が、さらに体動センサー14の検出データにより判定するようにしてもよい。
【0042】
睡眠の際は入居者70の動きは小さな、わずかな動きが見られる。このようなことから、この体動センサー14を用いた睡眠状態の検知としては、制御部11は、例えば動きの大きさに関する大小2つの閾値を設定する。そして、制御部11は、大きい側の第1閾値を超えた場合には「覚醒」、小さい側の第2閾値を下回った場合には「不在」、第1閾値以下、第2閾値以上であれば「睡眠」と判定する。この体動センサー14は、異常検知としても用いることができる。例えば、入居者70の呼吸動作に伴う胸部の体動(胸部の上下動)を検出し、その胸部の体動における周期の乱れや予め設定された閾値以下である前記胸部の体動における振幅を検知すると、微体動異常であると認識する。この体動センサー14を、カメラ13と併用することで、入居者70の各睡眠状態(不在、睡眠、覚醒)を判定できる。
【0043】
図5は、検出部10の検出データにより判定された入居者の睡眠状態の例を示す図である。
図5に示す例では、24時間連続で判定している睡眠状態のうち、1週間分(5/21~5/27)の睡眠状態を示している。
【0044】
(情報処理装置20)
図6は、情報処理装置20の概略構成を示すブロック図である。情報処理装置20は、制御部21、通信部22、および記憶部23を備える。制御部21は、CPUおよびRAM、ROM等のメモリにより構成され、プログラムにしたがって検出部10の各部の制御および演算処理を行う。通信部22は、ネットワーク50を介して、他の装置と通信するためのインターフェース回路である。記憶部23は、HDD等の大容量記憶装置で構成される。
【0045】
制御部21は、単体でまたは通信部22と協働することで、第1算出部211、第2算出部212、決定部213、および出力部214として機能する。記憶部23は、データベースとして機能し、入居者リスト、スタッフリスト、ケア設計情報、勤務情報、ケア記録、睡眠状態情報等が記憶されている。最初に記憶部23に記憶されている各情報について説明し、制御部21の各機能についてはその後に説明する。
【0046】
図7は、エリアに所属する入居者と、スタッフを示すリストの例である。各エリアには、入居者70がそれぞれ居る複数の居室が配置されており、各エリアには、エリア内の複数の入居者70(入居者ユニットともいう)と、この複数の入居者へのケアを行う複数のスタッフ(スタッフユニットともいう)が紐付けられている。
【0047】
図7では、エリアの例として、1つのエリアが、施設の1つのフロアに対応している。なお、これに限られない、例えば、大規模施設では、1つのフロアが複数のエリアに対応する場合もあり、また小規模施設では、複数のフロアが1つのエリアに対応する場合がある。
図7では、フロア1Fのエリアには、101~110号室の複数の居室および、その居室に入居しているA~J様が、所属する。また、このフロア1Fのエリアは,複数のスタッフ01~07等により交代で、24時間のケアが行われる。
【0048】
「入居者リスト」、および「スタッフリスト」はそれぞれ、入居者70、およびスタッフ80に関する、個人ID(氏名、番号)、居室番号(部屋番号)、スタッフ名、所属するスタッフユニット等が含まれる。
【0049】
「ケア設計情報」は、看介護施設の入居者70に対して計画されたケアの設計情報である。例えば、ケア設計情報は、ケアマネージャー等により計画されたケアのスケジュールである。例えば、ケア設計情報に記載されるケアとしては、起床介助、食事介助、車椅子移乗介助、体位変換介助、水分摂取介助、歩行介助、入浴介助、等が含まれ得る。起床介助は、ケアスタッフ80により入居者70が朝にベッドから起きるときに行う介助であり、食事介助、水分摂取介助は、食事、または水分補給を補助する介助である。車椅子移乗介助は、ベッドから車椅子に移動して、座る動作の介助である。体位変換介助は、褥瘡予防のためにベッドでの体位を変更するための介助である。起床介助(起床ケア、またはモーニングケアともいう)は施設で設定された時間に行われる。起床介助には、洗顔、歯磨き介助、義歯装着、着替え介助等が含まれる。また、「離床」では、車椅子移乗、歩行介助が必要となる場合がある。就寝介助(就寝前ケア、またはイブニングケアともいう)には、洗顔および歯磨き介助、排泄介助、着替え介助、睡眠導入剤の投与等が含まれる。
【0050】
「勤務情報」は、スタッフ80のスケジュールされた勤務のシフト情報、および実際の勤務記録である。勤務記録は、ログイン/ログオフの時刻に対応して記録される。また勤務記録には、休憩時間が記録されてもよい。スタッフ80は、業務開始時、および業務終了時に、割り当てられたスタッフ端末40を通じて、ログイン認証処理、およびログアウト処理をそれぞれ行う。本実施形態においては、ログインしてからログアウトまでの期間、および時間を、勤務期間、および勤務時間と見做す。スタッフ80は、スタッフ端末40のタッチパネル(図示せず)を通じて、スタッフID、パスワードを入力し、これを情報処理装置20に送信する。情報処理装置20は、記憶部23に記憶している認証情報を突き合わせ、スタッフ80の権限に応じた認証結果をスタッフ端末40に送信することで、ログイン認証が終了する。また、スタッフ80は、スタッフ端末40のタッチパネル(図示せず)を通じて、休憩の開始および終了を入力できる。
【0051】
「業務記録」は、スタッフ80による、間接業務の記録である。間接業務には、各種の記録、事務作業、次シフトスタッフへの申し送り、清掃、洗濯等が含まれる。これを記録する際には、各間接業務の種類に応じたNFCタグ45にスタッフ端末40をタッチさせて表示される入力画面により、間接業務の種類および開始、終了時刻が記録されるようにしてもよい。例えば、清掃具を収納するロッカーの近傍に、NFCタグ45を配置し、清掃の開始(清掃具を取り出す際)、および終了(清掃具を戻す際)それぞれで、スタッフ端末40をNFCタグ45にタッチすることで、自動的に間接業務の種類および時間が記録される。
【0052】
「ケア記録」は、各入居者70に対するスタッフ80によるケアの記録である。ケア記録には、NFCタグ45およびスタッフ端末40を用いて記録した居室外ケアに関する記録が含まれる。
【0053】
「居室内ケア」には、起床介助、就寝介助、定期巡回、体位交換介助、おむつ交換介助、ケアコールへの対応による駆けつけ対応が含まれる。これらの介助、対応については、検出部10の検出データにより種類の判定がなされる。また、対応したスタッフ80の識別は、各居室の入口に配置されたNFCタグ45へのスタッフ端末40によるタッチ、または、スタッフ端末40を通じた、ケアコールの通知への対応する旨の入力により識別される。
【0054】
「居室外ケア」には、食事ケア、排泄ケア、入浴ケア等が含まれる。食事ケアには、配膳、食事介助、下膳、服薬介助、食堂と居室間の食事前後誘導、口腔ケアが含まれる。また食事ケアには、朝昼晩以外の間食のお茶、おやつに関するケアも含まれる。入浴ケアは、入浴準備、居室から浴場までの誘導、入浴介助、入浴後対応、浴場から居室までの誘導が含まれる。
【0055】
図8は、スタッフ端末40に表示される、居室外ケアの入力に用いられる操作画面の例である。
図8では、居室外ケアとして食事ケアに用いる操作画面が示されている。スタッフ80は、食堂の入口または食堂内に配置されたNFCタグ45に、自身が使用するスタッフ端末40をタッチする。これにより、NFCタグ45のメモリ内の動作情報を読み出すことで、自動的にアプリが作動し、タッチした時刻が開始時刻として記録され、および入力画面が自動的にポップアップする。
図8(a)のように開始時刻が記録され、
図8(b)に示すような操作画面に自動的に遷移する。
図8(b)では、スタッフ80(スタッフ01と表示)が担当する入居者70が選択可能に表示されている。
図8(b)に示す例では、101~105号室の入居者70(A~E様)のうち、101、102の入居者70(A、B様)が、スタッフ80により選択されている。
【0056】
図8(c)の操作画面では、スタッフ80は、対象の入居者70(A様)が摂取した食事量、水分量を入力する。また、スタッフ80が「次へ」を操作することで、別の入居者70(B様)に関しても同様の操作画面が表示され入力できる。スタッフ80による食堂での食事ケアが終了した後に、再び、スタッフ端末40をNFCタグ45にタッチすることで、終了時刻が記録される。その後、入力によるケア記録の登録が完了した後に、送信ボタンを操作することで、食事ケアの記録は、情報処理装置20に送信され、ケア記録に蓄積される。他の排泄ケア、入浴ケアに関しても同様に、スタッフ80は、トイレ、浴場に配置されたNFCタグ45を、スタッフ端末40でタッチする。これにより、スタッフ端末40によりNFCタグ45のメモリに記録されている動作情報が読み出され、それぞれの場所のケアに応じた操作画面がポップアップ表示される。スタッフ80は、NFCタグ45へのタッチにより、入力操作の手間を低減できる。
【0057】
「睡眠状態情報」は、上述の
図5に示したような、検出部10(カメラ13、体動センサー14)の検出データの解析により得られる入居者の睡眠状態を示す情報である。睡眠状態は、入居者70毎に記憶部23に記録されている。この睡眠情報、および/または上述のケア記録の食事介助、トイレ(排泄介助)の入居者70それぞれに関する1日における周期は、生活リズム情報として用いられる。より詳細には、睡眠情報、および/または上述のケア記録に基づいて、1日における起床タイミング、就寝タイミング、食事タイミング、排泄タイミングが判定され、これが生活リズム情報として用いられる。
【0058】
(制御部21の各機能)
上述のように制御部21は、第1算出部211、第2算出部212、決定部213,出力部214として機能する。以下、説明する。
【0059】
(第1算出部211)
第1算出部211は、看介護施設における入居者70がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出する。第1算出部211は、以下の説明するように過去のケア履歴により設計業務量を算出してもよく(以下の第1の手法)、または、ケア設計情報(スケジュール)を用いて設計業務量を算出してもよい(以下の第2の手法)。
【0060】
(設計業務量)
ここで業務量とは、時間帯毎に行われた業務、または予定される業務の所要時間の合計である。特に後者の予定される業務量は、設計業務量という。以下においては、時間帯の幅は、60分であるものとして説明するが、任意に設定することが可能である。例えば時間帯の幅は、より短い15分または30分に設定してもよく、あるいはより長い120分に設定してもよい。また、業務量の算出は、時間帯毎において、エリア毎に行われる。例えば、フロア1Fのケア入居者70が10人で、ある時間帯に、所要時間5分のケアが10人それぞれに対して行われた場合には、業務量は50分となる。
【0061】
(第1の手法の設計業務量)
第1の手法(後述の
図12)においては、同じ入居者70に対して日々実施されるケアは、毎日または毎週同じケアが繰り返されるものする。一般的に、ケアマネージャー等が設定したケアプランに沿って毎日同じケアが行われる。例えば、曜日が同じであれば,前の週のケアは、翌週以降も繰り化されるものとして説明する。すなわち、同じ入居者の1週間前のケアの記録を参照することで本日、または明日に行われるケアが見積もれる。見積もったケアの種類毎の件数、およびその実績の平均所要時間を設計業務量として用いる。
【0062】
(第2の手法の設計業務量)
一方で、第2の手法(後述の
図14)においては、スケジュール(ケア設計情報)に基づいて本日、または明日に行われるケアを見積もる。ケアの種類毎の所要時間は、予め設定された所定値を用いてもよく、スタッフ80毎の過去の実績値から算出したケアの種類毎の平均の所要時間を用いてもよい。ケア設計情報に予定されているケアの種類の件数に、その所要時間を乗じることで、設計業務量を算出できる。
【0063】
(第2算出部212)
第2算出部212は、時間帯毎に、以下に説明する第1の基準業務量、または第2の基準業務量から、第1算出部211が算出した設計業務量を減じることで、差分業務量を算出する。
【0064】
(基準業務量)
基準業務量は、設計業務量が適正量か否かを判定する際に用いるものである。第1の基準業務量は、エリア毎に、時間帯毎に提供可能な業務量(以下、単に提供可能業務量ともいう)である。第1の基準業務量は、エリアを担当するスタッフの業務量(労務量)とも言える。この第1の基準業務量は時間帯毎のシフトインスタッフ数を算出し、これを時間帯の時間を乗じることで算出できる。この場合、休憩時間(休憩予定時間)は除かれる。例えば、夜間のある時間帯(例えば23時から24時)のシフトインスタッフ数が2名であれば第1の基準業務量は、2時間となる。シフトインスタッフ数は、勤務情報に記録されているシフト情報および/またはログイン中のスタッフ80の人数により算出できる。第2の基準業務量は、設計業務量を複数の時間帯で平準化したものである。例えば前後1つずつの時間帯で平準化する。
【0065】
(端末装置30)
図9は、端末装置30の概略構成を示すブロック図である。端末装置30は、いわゆるPC(Personal Computer)であり、制御部31、通信部32、表示部33、および入力部34を備え、これらはバスにより相互に接続される。制御部31、通信部32は、検出部10の制御部11、通信部12と同様の構成である。この端末装置30は、ケアステーションのような居室と同じ建物内に設けられてもよく、遠隔地に設けられてネットワークを介して接続可能であってもよい。
【0066】
表示部33は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。表示部33は、例えば、情報処理装置20から出力されたレコメンド情報を表示する。
【0067】
入力部34は、キーボード、テンキー、マウス等を備えており、各種情報の入力が行われる。
【0068】
(各データの蓄積処理)
図10は、情報処理システム1で行われるケア記録、間接業務、睡眠状態のデータの蓄積処理を示すフローチャートである。
【0069】
(ステップS01)
情報処理装置20は、上述のようにケア状況を記録し、記憶部23のケア記録に蓄積する。居室内ケアは、検出部10により自動的にケア記録に記録される。居室外ケアは、NFCタグ45とスタッフ端末40を用いて、スタッフ80により入力され、記録される。
【0070】
(ステップS02)
情報処理装置20は、上述のように間接業務を記録し、記憶部23の業務記録に蓄積する。間接業務は、NFCタグ45とスタッフ端末40を用いて、スタッフ80により入力され、記録される。
【0071】
(ステップS03)
情報処理装置20は、上述のように入居者70の睡眠状態を判定、および記録し、記憶部23の睡眠状態情報に蓄積する。以上で、
図10の処理を終了する。なお、
図10の処理は、基本的には、24時間連続して行われる。
【0072】
(レコメンド情報の生成処理)
次に、
図11から
図22を参照し、本実施形態に係るレコメンド情報の生成処理について説明する。
図11は、レコメンド情報の生成処理を示すフローチャートである。以下においては、1つのエリアは1つのフロアに対応しているものとして説明する。
【0073】
(ステップS11)
情報処理装置20の第1算出部211は、記憶部23に記憶されているケア記録、業務記録を用いて、所定期間における、フロア毎、時間帯毎の設計業務量を算出する。所定期間は、例えば翌日の24時間、または現在の時間帯から24時間あとまでである。また、スタッフ80、エリアのスタッフリーダー、施設の管理者(以下、これらをまとめて管理者等という)が、端末装置30等を通じて所定期間(日時、時間長さ)を設定できるようにしてもよい。
【0074】
図12は、第1の手法におけるステップS11の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【0075】
(ステップS201)
第1算出部211は、フロア毎のケア記録の各時間帯の実績を取得する。より詳細には、例えばフロア1Fに所属する複数の入居者70に関する、前日または、1週間前の同じ曜日のケアの実績をケア記録から取得する。また、複数日のケア記録から、ケアの種類毎の平均所要時間を求め、これを用いてもよい。また、このときに、ケアの種類に応じた平均所要時間の算出は、スタッフ80毎に行ってもよい。例えば、勤務情報を参照し、設計業務量を算出する対象となる所定期間に応じて、その所定期間でのシフト(勤務)が予定されているスタッフ80に関して、過去のケアの種類に応じた平均所要時間を算出し、これを用いる。
図13は、設計業務量の例である。
図13では、一部の情報が示されている。設計業務量は、時間帯毎に予定されているケアの種類毎の件数、その対応に要する1件当たりの所要時間を乗じることで算出される。例えば、
図13に示す例では、時間帯6時台のケアは、Aさんの起床介助が1件予定されており、時間帯6時(6:00~6:59)の設計業務量は40分である。
【0076】
(ステップS202)
フロア毎、時間帯毎に業務量を積み上げて、設計業務量を算出する。以上で、
図12の処理を終了し、
図11に戻り、ステップS12以降の処理を継続する。
【0077】
(第2の手法)
図12に示した第1の手法に変えて、以下に示す第2の手法により設計業務量の算出を行ってもよい。
図14は、第2の手法におけるステップS11の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【0078】
(ステップS301)
第1算出部211は、ケア記録からケアの種類毎の所要時間を算出する。この所要時間は、予め定めた固定値を用いてもよく、スタッフ毎にケアの種類に応じた平均所要時間の算出を行ってもよい。固定値は、管理者等が定めてもよく、管理者等の指示入力により、制御部21が施設毎の過去のケア記録の実績から設定してもよい。
【0079】
(ステップS302)
第1算出部211は、記憶部23からケア設計情報(スケジュール)を取得する。
【0080】
(ステップS303)
第1算出部211は、ケア設計情報と、ケアの種類毎の対応に要する所要時間から、フロア毎、時間帯毎に業務量を積み上げて、設計業務量を算出する。以上で、
図14の処理を終了し、
図11に戻り、ステップS12以降の処理を継続する。
【0081】
(ステップS12)
第2算出部212は、勤務情報を参照し、勤務情報に記述されているシフト情報、ログイン情報に基づいて、フロア毎、時間帯毎に、所定期間におけるスタッフ80による提供可能業務量を算出する。例えば、所定期間に含まれるある時間帯(60分)に、スタッフ80が2人シフトインしていれば、提供可能業務量は120分となる(60分×2人)。
【0082】
(ステップS13)
第2算出部212は、フロア毎、時間帯毎に、提供可能業務量から、設計業務量を減じて、差分業務量を算出する。
図15Aは、ステップS11-S13の処理により生成された、あるフロア(例えばフロア1F)における時間帯毎の業務量を示すグラフである。
図15Aにおいて、横軸は時間帯である。
図15Aにおいて縦軸は業務量(時間(分))である(他の
図15Bのグラフ等も同様)。
図15Aに示すように設計業務量は、居室内ケア、間接業務、居室外ケアの合計時間である。
図15Aでは、提供可能業務量を折れ線グラフ、設計業務量、差分業務量を棒グラフとして示されている。
図15Aに示す例では、5、6、10、11時台の時間帯では、差分業務量が十分あり、余裕があることが示されている。一方、7、8、9時台は、差分業務量がなく、余裕がないことが示されている(後述の「切迫時間帯」に相当)。なお、
図15Aの例では、余裕なしの時間帯でも差分業務量はゼロを下回っていない例をしめしているが、差分業務量はマイナスの値を取り得る。
【0083】
図15Bは、
図15Aのデータにおいて破線枠内の5-8時の時間帯のスタッフ毎の設計業務量を示すグラフである。なお、
図15Bでは、4時間分の時間帯の合計設計業務量を、1時間換算して示されている。
図15B(
図15A)の例では、設計業務量の算出に関し、過去のケアの種類に応じたスタッフ80毎の対応に要する平均所要時間が用いられている。
【0084】
(ステップS14)
決定部213は、対応策Aの可否を判定する。この対応策Aは、生活リズム情報に基づく対応策である。生活リズムは、1日における起床、就寝、トイレ(排泄)、食事の時間等により判定される。このステップS14の詳細は、後述する(
図16)。
【0085】
(ステップS15)
決定部213は、対応策Bの可否を判定する。この対応策Bは、フロア間でのスタッフのシフトによる対応策である。このステップS15の詳細は、後述する(
図20)。
【0086】
(ステップS16)
出力部214は、対応策Aおよび/または対応策Bが実行可と判定された場合、判定結果をレコメンド情報として出力する。例えば、出力部214は、端末装置30にレコメンド情報を送信し、端末装置30は、その表示部33に表示する(後述の
図19、21等)。
【0087】
(対応策A)
(ステップS401)
図16は、
図11のステップS14の処理を示すサブルーチンフローチャートである。決定部213は、差分業務量が第1閾値以下の時間帯を余裕がない時間帯(以下、切迫時間帯ともいう)として抽出する。例えば閾値は、固定値または、比率である。例えば比率であれば、提供可能業務量の5%とした場合、提供可能業務量が120分であれば、閾値は6分となる。例えば、
図15Aの例では、7時、8時の時間帯が、提供可能業務量が無い(ゼロである)ことから、切迫時間帯として抽出される。
【0088】
(ステップS402)
決定部213は、切迫時間帯の前後時間帯(例えば7時に対する6時、8時の時間帯)の差分業務量が第2閾値以上であるか否かを判定する。第2閾値は、第1閾値よりも大きい値であり、固定値または、比率である。例えば比率であれば、提供可能業務量の20%とした場合、提供可能業務量が120分であれば、閾値は24分となる。前後時間帯に差分業務量が第2閾値以上の余裕がある時間帯が存在すれば(YES)、処理をステップS403に進める。一方で、前後時間帯に余裕のある時間帯が存在しなければ(NO)、処理をステップS405に進める。
【0089】
(ステップS403)
決定部213は、同じフロア内の複数の入居者70のうち、どの入居者70のケアの時間をスライドさせるかの判定を行う。具体的には、決定部213は、ケア記録および/または睡眠情報から判定した生活リズムデータから、余裕がある前の時間帯(または後ろの時間帯)にスライドさせる人を決定する。
図17は、生活リズム情報からケアの実施タイミングをシフトさせる対応策を説明する図である。
図17に示す生活リズム情報は、
図5に示した睡眠状態の図と対応する。決定部213は、前の時間帯に余裕がある場合であれば、入居者B様は、起床時間が、同じフロアの他の入居者70に比べて早いため(最も早い)、スライド対象者として決定する。なお、
図17は、切迫時間帯よりも前の時間帯に余裕がある場合の例であり、逆に後ろの時間帯に余裕がある場合であれば、決定部213は、最も起床時間が遅い(起床介助の直前まで睡眠している)入居者70を、スライド対象者として決定する。
【0090】
(ステップS404)
決定部213は、ステップS403で決定したスライド対象者(入居者70)のケア、すなわち切迫時間帯に予定されていたケアを前(または後ろ)の時間帯にシフトさせることを、推奨の対応策Aとして決定する(追加する)。
【0091】
(ステップS405)
全ての切迫時間帯についての判定が完了していなければ(NO)、処理をステップS401に戻し、他の切迫時間帯についても、ステップS402以下の処理を行う。一方で、全ての切迫時間帯の判定が完了すれば、
図16の処理を終了し、
図11の処理に戻す(リターン)。
【0092】
図18、
図19は、生活リズム情報からケアの実施タイミングをシフトさせる対応策Aを説明する図である。
図18では決定部213が決定した対応策Aとして、入居者Bのケアの時間帯のシフトを示してている。
図19では、出力部214により出力され、端末装置30の表示部33に表示されるレコメンド情報の例が示されている。また、
図19では、現在(変更前)の設計業務量と、対応策Aを適用した推奨の設計業務量が対比されて表示されている。
【0093】
(対応策B)
(ステップS501)
図20は、
図11のステップS15の処理を示すサブルーチンフローチャートである。決定部213は、ステップS11~S13で算出した、フロア毎の各時間帯の差分業務量から、第3閾値以下のフロア、時間帯を切迫時間帯として抽出する。第3閾値は、固定値または、比率である。例えば比率であれば、提供可能業務量の5%とした場合、提供可能業務量が120分であれば、閾値は6分となる。
【0094】
(ステップS502)
決定部213は、ステップS501で抽出したフロアの切迫時間帯と同じ時間帯の他のフロアの差分業務量を参照し、他のフロアのうち、最も差分業務量が大きいフロアを抽出する。例えば、フロア1Fの8時の時間帯が切迫時間帯であり、他のフロア2F、3Fのうち、フロア2Fの8時の時間帯の差分業務量を最も大きければ、決定部213は、フロア2Fを抽出する。
【0095】
(ステップS503)
決定部213は、切迫時間帯において、余裕ありフロア(例えばフロア2F)から切迫フロア(例えばフロア1F)へのスタッフ80のシフトを推奨の対応策Bとして決定する。
【0096】
図21は、フロア間でスタッフ80をシフトさせる対応策Bの出力例である。
図21では、出力部214により出力され、端末装置30の表示部33に表示されるレコメンド情報の例が示されている。
図21では、現在の設計業務量、提供可能業務量がグラフで示されている。また、
図21では、レコメンド情報として、9時、12時の時間帯は、フロア1Fが切迫しているので、フロア2Fからフロア1Fへのスタッフ80のシフト(ヘルプ)を推奨することが示されている。また、反対に、10時、11時の時間帯は、フロア2Fが切迫しているので、フロア1Fからフロア2Fへのスタッフ80のシフト(ヘルプ)を推奨することが示されている。
【0097】
図22は、対応策A、Bの出力例である。
図22では、出力部214により出力され、端末装置30の表示部33に表示されるレコメンド情報の例が示されている。
図22では、管理者等によりフロア1F、および期間5/28~5/29(5/28の0時から、5/29の0時まで)が選択され、この選択された条件に関する対応策A、Bが表示されている。また、
図22では、現在(変更前)の設計業務量と、対応策A、Bを適用した推奨の設計業務量が対比されて表示されている。
【0098】
このように本実施形態では、前記看介護施設における前記入居者がそれぞれ居る複数の居室が配置されたエリア毎に、設計業務量を算出するステップ(a)と、時間帯毎に、基準業務量と、前記設計業務量との差分である差分業務量を算出するステップ(b)と、前記入居者の生活リズム情報、または、複数の前記エリアにおける業務情報に基づき、前記差分業務量を低減させるための対応策を決定するステップ(c)と、前記ステップ(c)で決定した対応策をレコメンド情報として出力するステップ(d)と、を含む処理を実行する。このようにすることで、管理者等は、その経験や能力に依存せずに、業務効率化または人員配置の最適化の施策を把握できる。
【0099】
以上に説明した、情報処理装置20の構成は、上述の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上述の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種種改変できる。また、上述した実施形態に係る情報処理装置20における処理は、上記のフローチャート、シーケンスチャートに示したステップ以外のステップを含んでもよく、あるいは、上述したステップのうちの一部を含まなくてもよい。また、ステップの順序は、上述した実施形態に限定されない。さらに、各ステップは、他のステップと組み合わされて一つのステップとして実行されてもよく、他のステップに含まれて実行されてもよく、複数のステップに分割されて実行されてもよい。
【0100】
例えば、
図11のステップS14、またはステップS15の処理は、どちらか一方のみが実行されてもよい。また、
図11に示す処理では、基準業務量として、第1の基準業務量(提供可能業務量)を用いて差分業務量を算出する例を示したが、これに限られず、第2の基準業務量(平準化設計業務量)を用いて、差分業務量を算出してもよい。
【0101】
また、上述した実施形態に係る情報処理装置、または情報処理システムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウエア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、一機能としてその検出部等の装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 情報処理システム
10 検出部
20 情報処理装置
21 制御部
211 第1算出部
212 第2算出部
213 決定部
214 出力部
22 通信部
23 記憶部
30 端末装置
40 スタッフ端末
45 NFCタグ
50 ネットワーク