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  • 特開-車両バックドア開口部補強構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172033
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両バックドア開口部補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20241205BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B62D25/08 K
B62D25/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089452
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】新谷 亮太
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA03
3D203AA04
3D203BB56
3D203BB59
3D203BB77
3D203CA53
3D203CB04
3D203CB09
3D203DA36
3D203DA39
(57)【要約】
【課題】ステーが接続されるトルーフの剛性向上および浸水に配慮した車両バックドア開口部補強構造を提供する。
【解決手段】トルーフ106は、リアピラー104のアウタパネル134の後端138から車両前方に屈曲する外側壁部106aと、外側壁部106aの前端から車幅方向内側に屈曲する前側壁部106bと、前側壁部106bの車幅方向内側の端部から車両後方に屈曲してリアピラー104のインナパネル136の後端140に接合される内側壁部106cを有する。補強構造100は、トルーフ106の外側壁部106aに設けられてステー110が接続されるステー接続部112と、リアピラー104の内側にてトルーフ106のステー接続部112を含む範囲に接合される補強部材116を備える。補強部材116は、トルーフ106の外側壁部106a、前側壁部106b、および内側壁部106cに沿って接合される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドア開口部の側縁を形成するリアピラーと、該リアピラーのうちバックドアに覆い隠される部分に設けられる車両前方に窪んだトルーフと、一端が該トルーフ内に接続され他端が該バックドアに接続されるステーとを備える車両バックドア開口部補強構造において、
前記リアピラーは、
車外側のアウタパネルと、
前記アウタパネルの車内側に配置されるインナパネルを有し、
前記トルーフは、前記アウタパネルの後端と前記インナパネルの後端との間に配置され、
前記トルーフはさらに、
前記アウタパネルの後端から車両前方に屈曲して延びる外側壁部と、
前記外側壁部の前端から車幅方向内側に屈曲して延びる前側壁部と、
前記前側壁部の車幅方向内側の端部から車両後方に屈曲して延び前記インナパネルの後端に接合される内側壁部を有し、
当該車両バックドア開口部補強構造はさらに、
前記外側壁部に設けられて前記ステーの一端が接続されるステー接続部と、
前記リアピラーの内側にて前記トルーフの前記ステー接続部を含む範囲に接合される補強部材を備え、
前記補強部材は、前記外側壁部、前記前側壁部、および前記内側壁部に沿って接合されることを特徴とする車両バックドア開口部補強構造。
【請求項2】
前記補強部材は、
前記外側壁部と前記前側壁部とに沿った第1部材と、
前記第1部材に結合され前記前側壁部と前記内側壁部とに沿った第2部材を有し、
前記第1部材および前記第2部材は、前記前側壁部に共に接合されることを特徴とする請求項1に記載の車両バックドア開口部補強構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記トルーフとの間に1または複数の閉断面を形成し、
前記1または複数の閉断面は、前記トルーフに沿って上下方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載の車両バックドア開口部補強構造。
【請求項4】
当該車両バックドア開口部補強構造はさらに、前記内側壁部、前記補強部材、および前記インナパネルの後端を挟持した状態に取り付けられて前記バックドアに接触するウェザストリップを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両バックドア開口部補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両バックドア開口部補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のバックドア開口部の周辺は、バックドアの開閉時や走行中などに生じ得る応力に耐えられるよう、剛性の確保が求められている。例えば、特許文献1の技術では、段落0021および図2等に記載されているように、バックドアとバックドア開口部とを連結するダンパステー4が結合される部位に、補強用のリテーナ10が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、ダンパステー4およびリテーナ10は、バックドア開口部の上部コーナー部3Aに設けられている。しかしながら、バックドアのステーはコーナー部に配置されるとは限らない。また、バックドア開口部の付近は雨水の排水経路を形成することがあり、錆等の対策も求められている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、ステーが接続されるトルーフの剛性向上および浸水に配慮した車両バックドア開口部補強構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両バックドア開口部補強構造の代表的な構成は、車両のバックドア開口部の側縁を形成するリアピラーと、リアピラーのうちバックドアに覆い隠される部分に設けられる車両前方に窪んだトルーフと、一端がトルーフ内に接続され他端がバックドアに接続されるステーとを備える車両バックドア開口部補強構造において、リアピラーは、車外側のアウタパネルと、アウタパネルの車内側に配置されるインナパネルを有し、トルーフは、アウタパネルの後端とインナパネルの後端との間に配置され、トルーフはさらに、アウタパネルの後端から車両前方に屈曲して延びる外側壁部と、外側壁部の前端から車幅方向内側に屈曲して延びる前側壁部と、前側壁部の車幅方向内側の端部から車両後方に屈曲して延びインナパネルの後端に接合される内側壁部を有し、当該車両バックドア開口部補強構造はさらに、外側壁部に設けられてステーの一端が接続されるステー接続部と、リアピラーの内側にてトルーフのステー接続部を含む範囲に接合される補強部材を備え、補強部材は、外側壁部、前側壁部、および内側壁部に沿って接合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステーが接続されるトルーフの剛性向上および浸水に配慮した車両バックドア開口部補強構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る車両バックドア開口部補強構造を示す図である。
図2図1(a)とは異なる方向からステー接続部の付近を示した図である。
図3図2(b)の補強部材の斜視図である。
図4図2(b)の補強構造のA-A断面における断面斜視図である。
図5図1(a)とは異なる方向からリアピラーを見て示した図である。
図6図5(b)のトルーフを詳しく示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両バックドア開口部補強構造は、車両のバックドア開口部の側縁を形成するリアピラーと、リアピラーのうちバックドアに覆い隠される部分に設けられる車両前方に窪んだトルーフと、一端がトルーフ内に接続され他端がバックドアに接続されるステーとを備える車両バックドア開口部補強構造において、リアピラーは、車外側のアウタパネルと、アウタパネルの車内側に配置されるインナパネルを有し、トルーフは、アウタパネルの後端とインナパネルの後端との間に配置され、トルーフはさらに、アウタパネルの後端から車両前方に屈曲して延びる外側壁部と、外側壁部の前端から車幅方向内側に屈曲して延びる前側壁部と、前側壁部の車幅方向内側の端部から車両後方に屈曲して延びインナパネルの後端に接合される内側壁部を有し、当該車両バックドア開口部補強構造はさらに、外側壁部に設けられてステーの一端が接続されるステー接続部と、リアピラーの内側にてトルーフのステー接続部を含む範囲に接合される補強部材を備え、補強部材は、外側壁部、前側壁部、および内側壁部に沿って接合されることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、バックドア開口部の中でも力がかかりやすいステー接続部の周囲の剛性を向上させ、これによってスポット溶接等の溶接打点における亀裂の発生等も防ぐことが可能になる。特に、補強部材は、トルーフの凹形状に沿ってこれに接合するため、トルーフを効率よく補強してバックドア開口部の剛性を向上させることができる。
【0011】
多くの車両では雨水はルーフから上記トルーフの前側壁部に相当する箇所を伝って流れ落ちるところ、上記外側壁部はトルーフのなかでも前側壁部等に比べて雨水に触れ難い部位となっている。そのため、上記構成であれば、外側壁部にステー接続部を設けることで、錆等の発生を抑えることが可能になる。ここで、ステー接続部を設けるトルーフの外側壁部は、車両前後方向に延びているため、バックドアを閉めた際に剥離を誘発するせん断方向の力がかかり得る。この点においても、上記構成であれば、補強部材が外側壁部およびその前端から車幅方向内側に屈曲した前側壁部にわたって連続してつながるため、当該せん断方向の力を抑制することが可能になっている。
【0012】
上記の補強部材は、外側壁部と前側壁部とに沿った第1部材と、第1部材に結合され前側壁部と内側壁部とに沿った第2部材を有し、第1部材および第2部材は、前側壁部に共に接合されるとよい。
【0013】
上記構成によれば、第1部材と第2部材とをトルーフの前側壁部に共に接合させることで、接合箇所の増加を抑えつつ、トルーフの剛性を効率よく高めることが可能になる。また、補強部材を第1部材と第2部材とで構成することで、よりトルーフに沿った形を作ることが可能になる。
【0014】
上記の補強部材は、トルーフとの間に1または複数の閉断面を形成し、1または複数の閉断面は、トルーフに沿って上下方向に延びていてもよい。
【0015】
上記閉断面を形成することで、トルーフの剛性を効率よく向上させることが可能になる。
【0016】
当該車両バックドア開口部補強構造はさらに、内側壁部、補強部材、およびインナパネルの後端を挟持した状態に取り付けられてバックドアに接触するウェザストリップを備えてもよい。
【0017】
上記構成によれば、ウェザストリップをより剛性の高い部位に設置することが可能になる。そして、このウェザストリップによってバックドアを受けることで、バックドアを閉めるときに生じる荷重を効率よく吸収すると共に、走行中においてもバックドアの振動を防ぎ、応力集中を回避してバックドア開口部の耐久性能の低下を抑えることが可能になる。
【実施例0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る車両バックドア開口部補強構造(以下、補強構造100)を示す図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0020】
図1(a)は、補強構造100の概要を示した図である。図1(a)は、車両の後部を右側上方から示している。当該補強構造100は、車体のバックドア開口部102の剛性向上を目的としていて、特にリアピラー104のステー接続部112の付近を補強している。
【0021】
リアピラー104は、車両の後部にてバックドア開口部102の側縁を形成している。リアピラー104のうち、不図示のバックドアに覆い隠される部分には、雨どいの役割をするトルーフ106が配置されている。トルーフ106は、車両前方に窪んだ形状になっていて、バックドア開口部102の上縁を形成するルーフレール108から雨水が流れ落ちる。
【0022】
図1(b)は、図1(a)のステー110の付近の拡大図である。ステー110は、バックドアを支える棒状の部材であって、バックドアの開き量に応じて伸縮する構成になっている。ステー110は、一端がリアピラー104のトルーフ106内に接続され、他端がバックドアに接続される。
【0023】
トルーフ106には、ステー110の一端が接続されるステー接続部112が設けられている。ステー接続部112は、例えばボルトやナットなどの締結具114によってステー110が接続される部位であって、トルーフ106の外側壁部106aに設けられている。
【0024】
図2は、図1(a)とは異なる方向からステー接続部112の付近を示した図である。図2(a)は、図1(a)のステー接続部112の付近を車幅方向内側から示した図である。
【0025】
ステー接続部112が設けられる外側壁部106aは、断面凹形状のトルーフ106の車幅方向外側の壁部を形成している。本実施例では、ステー接続部112には、締結具114(図4参照)が車幅方向に挿し込まれてステー110の一端が接続される。
【0026】
図2(b)は、図2(a)のトルーフ106を透過してリアピラー104の内部を示した図である。当該補強構造100では、リアピラー104の内部に補強部材116が設けられている。
【0027】
補強部材116は、リアピラー104の内側からトルーフ106を補強する部材であって、特にステー接続部112を含む範囲にスポット溶接等によって接合される。補強部材116は、ステー110から入力される荷重を吸収し、トルーフ106の変形等を防ぐ。
【0028】
図3は、図2(b)の補強部材116の斜視図である。図3(a)は、補強部材116をトルーフ106側から見て示した図である。補強部材116は、第1部材118と、第2部材120とから構成されている。
【0029】
第1部材118および第2部材120は、共にL字形状の部材であって、互いに結合することでトルーフ106の断面凹形状に沿った形状になることができる。
【0030】
図3(b)は、図3(a)とは反対側から補強部材116を見て示した図である。第1部材118の基部122には、ステー接続部112(図4参照)に重ねられて締結具114が挿し込まれる貫通孔124が設けられている。延長部126は、基部122から屈曲して延び、第2部材120に溶接等によって接合される。
【0031】
図3(a)に示すように、第2部材120は、第1部材118の延長部126に接合される基部128と、基部128から屈曲して延びるフランジ部130を有している。基部128は、トルーフ106に広く接合される部位であって、断面凹形状のトルーフ106を横切るように複数のビード132a~132cが設けられていて、剛性が高められている。フランジ部130は、第1部材118の基部122と向かい合うように屈曲していて、基部122とは反対側からトルーフ106に接合される。
【0032】
図3(c)は、図3(b)の補強部材116を第1部材118の基部122に向かう合う方向から見て示した図である。第1部材118の延長部126は、第2部材120の基部128のうち、両端側に延びる長手のビード132a、132bの間に接合される。第1部材118の延長部126と、第2部材120のフランジ部130との間には、短手のビード132cが差し渡されるように延びている。これらビード132a~132cによって、補強部材116の剛性は効率よく高められている。
【0033】
図4は、図2(b)の補強構造100のA-A断面における断面斜視図である。図4では、リアピラー104の内側から補強部材116およびトルーフ106を示している。
【0034】
リアピラー104は、車外側のアウタパネル134と、アウタパネル134の車内側に配置されるインナパネル136とを有する。トルーフ106は、アウタパネル134の後端138とインナパネル136の後端140との間に配置された状態になっている。
【0035】
トルーフ106の外側壁部106aは、アウタパネル134の後端138から車両前方に屈曲して延びている。トルーフ106の前側壁部106bは、外側壁部106aの前端から車幅方向内側に屈曲して延びている。トルーフ106の内側壁部106cは、前側壁部106bの車幅方向内側の端部から車両後方に屈曲して延び、インナパネル136の後端140に接合されている。
【0036】
補強部材116は、リアピラー104の内側にて、トルーフ106の外側壁部106a、前側壁部106b、および内側壁部106cに沿って接合される。特に、第1部材118は、外側壁部106aと前側壁部106bとに沿ってこれらに接合される。第2部材120は、前側壁部106bと内側壁部106cとに沿ってこれらに接合される。
【0037】
第1部材118および第2部材120は、トルーフ106の前側壁部106bに共に接合される。特に、補強部材116は、ビード132a~132c(図3(b)参照)によって剛性が高められた第2部材120の基部128が前側壁部106bに接合され、これによってトルーフ106を効率よく補強することが可能になっている。
【0038】
図5は、図1(a)とは異なる方向からリアピラー104を見て示した図である。図5(a)は、図1(a)のリアピラー104を車幅方向内側から見て示した図である。
【0039】
リアピラー104の後縁を構成するトルーフ106は、車幅方向内側から見たときに、上方のルーフレール108から後側下方に傾斜して延びる構成になっている。よって、雨水は、ルーフレール108からトルーフ106を伝って後方に流れ落とされる。
【0040】
図5(b)は、図5(a)のトルーフ106のB-B断面図である。図5(b)に示すように、トルーフ106は、車両後方に開口した断面凹形状になっている。トルーフ106の前側壁部106bは、断面凹形状の底部を形成していて、雨水は主に前側壁部106bを伝って流れ落とされる。
【0041】
図6は、図5(b)のトルーフ106を詳しく示した図である。図6(a)は、図5(b)のトルーフ106の拡大図である。
【0042】
トルーフ106の外側壁部106aは、雨水の排水経路を形成するトルーフ106のうち車幅方向外側の壁部であり、当該排水経路の底部を形成する前側壁部106bに比べて、雨水に触れ難い。よって、外側壁部106aに設けられたステー接続部112であれば、雨水が浸入し難く、錆等の発生を抑えることが可能になっている。
【0043】
補強部材116は、外側壁部106aから前側壁部106b、そして内側壁部106cへとわたってトルーフ106に接合されている。このように、補強部材116は、トルーフ106のうちステー接続部112を含む範囲にて、トルーフ106の断面凹形状にわたって接合されている。
【0044】
補強部材116のうち、第1部材118の基部122は、ステー接続部112を含む外側壁部106aに接合される。第1部材118の延長部126および第2部材120の基部128は、前側壁部106bに接合され、この前側壁部106bでは計3つの部材が重なって接合された状態になる。第2部材120のフランジ部130は、トルーフ106の内側壁部106cとインナパネル136の後端140とに共に接合された状態になる。
【0045】
上記の通り、補強部材116は、第1部材118と第2部材120とで構成されることで、よりトルーフ106に沿った形を作ることが可能になっている。また、補強部材116の第1部材118と第2部材120は、トルーフ106の前側壁部106bに共に接合されていて、これによって接合箇所の増加を抑えつつ、トルーフ106の剛性を効率よく高めることが可能になっている。
【0046】
補強部材116は、リアピラー104の内側から、断面凹形状のトルーフ106に沿ってこれにまたがるように接合され、トルーフ106を効率よく補強する。この構成によれば、バックドア開口部102の中でも力がかかりやすいステー接続部112の周囲の剛性を向上させ、これによってスポット溶接等の溶接打点における亀裂の発生等も防ぐことが可能になる。
【0047】
ステー接続部112を設けるトルーフ106の外側壁部106aは、車両前後方向に延びているため、外側壁部106a上の溶接打点にはバックドア148(図6(b)参照)を閉めた際に剥離を誘発するせん断方向の力がかかり得る。そこで、補強部材116は、外側壁部106aおよびその前端から車幅方向内側に屈曲した前側壁部106bにわたって連続してつながることで、上記せん断方向の力を抑制し、外側壁部106a上の溶接打点における亀裂の発生等を防ぐことが可能になっている。このように、当該構成によれば、バックドア148(図6(b)参照)から受ける荷重を効率よく分散し吸収することが可能になる。
【0048】
本実施例の補強部材116は、トルーフ106との間に、複数の閉断面142、144を形成することが可能になっている。閉断面142、144は、トルーフ106の前側壁部106bの角部付近に沿って形成され、トルーフ106の上下方向に延びていている。補強部材116は、これら閉断面142、144を形成することによっても、トルーフ106の剛性を効率よく向上させることが可能になる。
【0049】
図6(b)は、図5(b)のリアピラー104にバックドア148を追加して示した図である。
【0050】
ウェザストリップ146は、リアピラー104とバックドア148との間を封止する部材である。ウェザストリップ146は、トルーフ106の内側壁部106cと、補強部材116の第2部材120のフランジ部130、およびインナパネル136の後端140の計3部材を挟持した状態に取り付けられて、バックドア148に接触する。
【0051】
本実施例によれば、ウェザストリップ146を、補強部材116が配置されたより剛性の高い部位に設置することが可能になっている。このウェザストリップ146によってバックドア148を受けることで、バックドア148を受けるときに生じる荷重を効率よく吸収すると共に、走行中においてもバックドア148の振動を防ぎ、応力集中を回避してバックドア開口部102の耐久性能の低下を抑えることが可能になる。
【0052】
これらのように、本実施例の補強構造100によれば、2部品で構成された補強部材116を利用することで、例えトルーフ106が複雑な形状であっても、それに対応した形になってトルーフ106を補強することができる。当該補強部材116を利用することで、トルーフ106などの部材の板厚増加を回避しつつ、バックドア開口部102の剛性を効率よく確保することが可能になる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両バックドア開口部補強構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100…補強構造、102…バックドア開口部、104…リアピラー、106…トルーフ、106a…外側壁部、106b…前側壁部、106c…内側壁部、108…ルーフレール、110…ステー、112…ステー接続部、114…締結具、116…補強部材、118…第1部材、120…第2部材、122…基部、124…貫通孔、126…延長部、128…基部、130…フランジ部、132a~132c…ビード、134…アウタパネル、136…インナパネル、138…後端、140…後端、142、144…閉断面、146…ウェザストリップ、148…バックドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6