IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空気入りタイヤ 図1
  • 特開-空気入りタイヤ 図2
  • 特開-空気入りタイヤ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172036
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089456
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友暉
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC47
3D131BC51
3D131GA01
3D131GA03
(57)【要約】
【課題】標章表示部を形成する色ゴムの意図しない露出を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ1のサイドウォール20は、タイヤ子午線面の断面視においてサイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出し、その突出端面に標章面を有する標章表示部60を備える。標章表示部60は、カバーゴム65と、標章表示部60の標章面70に露出する露出部62を有し、当該露出部62以外がカバーゴム65で覆われる色ゴム61と、を含み、さらに標章表示部60は、カバーゴム65で覆われ、標章面70の最外形の輪郭を形成する標章面70の外縁71からサイドウォール20の外表面にわたる外側隅部72を含み、外側隅部72は、標章面70の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径Rが6mm以上10mm以下の湾曲面72aを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されているトレッドと、を備えた空気入りタイヤであって、
前記サイドウォールは、タイヤ子午線面の断面視において前記サイドウォールのプロファイルラインからタイヤ軸方向外側に突出し、その突出端面に標章面を有する標章表示部を備え、
前記標章表示部は、
カバーゴムと、
前記標章面に露出する露出部を有し、当該露出部以外が前記カバーゴムで覆われる色ゴムと、を含み、
さらに前記標章表示部は、
前記カバーゴムで覆われ、前記標章面の最外形の輪郭を形成する当該標章面の外縁から前記サイドウォールの外表面にわたる外側隅部を含み、
前記外側隅部は、前記標章面の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径Rが6mm以上10mm以下の湾曲面を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記外側隅部の裾野の長さは、4mm以上8mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記プロファイルラインから前記標章面までの距離である前記標章表示部の突出高さHに対し、前記曲率半径Rは2.3倍以上である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの外観性を向上させるなどの目的で、標章に応じた突出部をサイドウォールに形成し、その表面に色ゴムを露出させて標章表示部を設けた空気入りタイヤが知られている。色ゴムは、表面が薄肉のカバーゴムによって覆われた状態でサイドウォールに加硫成形された後、標章表示部に対応する部分のカバーゴムをバフ研削等で除去することによって、サイドウォールの表面に露出させられる(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-102407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、タイヤの幅に対してタイヤ断面高さが小さい低扁平の空気入りタイヤに、標章表示部を表示する要望が増えている。低扁平の空気入りタイヤは、タイヤ径方向の標章表示部の長さが短くなることから、全体サイズは自ずと小さくなる。このように標章表示部のサイズが小さくなると、タイヤを加硫成型した後の標章表示部を形成する突出部側面の、色ゴムを覆っているカバーゴムが拡張して引き裂かれやすくなる。このようにカバーゴムが引き裂かれると、色ゴムが意図しない位置において露出し、標章表示部の外観が低下する。
【0005】
本発明は上述事情に鑑みてなされたものであり、標章表示部を形成する色ゴムの意図しない露出を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されているトレッドと、を備えた空気入りタイヤであって、前記サイドウォールは、タイヤ子午線面の断面視において前記サイドウォールのプロファイルラインからタイヤ軸方向外側に突出し、その突出端面に標章面を有する標章表示部を備え、前記標章表示部は、カバーゴムと、前記標章面に露出する露出部を有し、当該露出部以外が前記カバーゴムで覆われる色ゴムと、を含み、さらに前記標章表示部は、前記カバーゴムで覆われ、前記標章面の最外形の輪郭を形成する当該標章面の外縁から前記サイドウォールの外表面にわたる外側隅部を含み、前記外側隅部は、前記標章面の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径Rが6mm以上10mm以下の湾曲面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、標章表示部を形成する色ゴムの意図しない露出を抑制できる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)半断面図である。
図2図3のII-II線に対応する断面図であって、実施形態の標章表示部を示すタイヤ軸方向断面図である。
図3図2のIII矢視図であって、標章表示部の例を示すサイドウォールの一部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)の半断面を示している。図2は、タイヤ1が備えるサイドウォール20の一部拡大断面図であって、実施形態に係る標章表示部60を含む断面を示している。図3は、図2においてIII方向から見た図であって、標章表示部60の例を示す図である。
【0010】
図1の断面図は、タイヤ1を図示しない正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤ軸方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、及びETRTOであれば”Measuring Rim”である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、又は、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0011】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ軸方向(タイヤ子午線面)の断面において左右対称となっている。図1は、タイヤ1の右半分の断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつ、タイヤ軸方向中心に位置する面である。
【0012】
ここで、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ軸方向Xとして図示している。タイヤ軸方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては紙面左側である。タイヤ軸方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては紙面右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては紙面下側である。
【0014】
また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心とした円弧線であって、タイヤ1の回転方向に沿った方向であり、図3においては円弧線Z方向で示している。
【0015】
図1に示すように、実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0016】
一対のビード10は、タイヤ軸方向両側、かつ、タイヤ径方向内側の端部に配置されている。ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を有している。
【0017】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
【0018】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードコア11のタイヤ径方向外側の面に、ビードフィラー12のタイヤ径方向内側の面が接合されている。
【0019】
チェーハー13は、ビードコア11及びビードフィラー12を囲むカーカスプライ40の外側をさらに囲んでいる。
【0020】
リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0021】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム21と、サイドブロック22と、標章表示部60と、を含む。サイドウォールゴム21、サイドブロック22及び標章表示部60は、タイヤ1の外壁面を構成する。
【0022】
サイドウォールゴム21は、標章表示部60を囲んでおり、図1においては、標章表示部60のタイヤ径方向外側と内側とに配置されている。タイヤ径方向内側のサイドウォールゴム21には、リムライン21aが形成されている。
【0023】
サイドブロック22は、サイドウォール20のタイヤ径方向外側の端にブロック状に形成された部分であって、サイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出している。実施形態のサイドブロック22は、サイドウォール20のタイヤ径方向外側の端からトレッド30のタイヤ軸方向外側の端まで延びており、この部分はサイドウォールゴム21とは異なるゴムで構成されている。
【0024】
サイドウォール20は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分である。そのため、通常、サイドウォール20のサイドウォールゴム21は、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。標章表示部60についての詳細は、後述する。
【0025】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を有している。
【0026】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0027】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、タイヤ径方向において外側のベルト311と内側のベルト312と、を有する二層構造である。外側のベルト311及び内側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。なお、ベルト31は二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有していてもよい。
【0028】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0029】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、トレッド30の外表面であるトレッド面34を構成する部材である。
【0030】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる不図示の複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ軸方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。そのカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0031】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部40Aと、プライ本体部40Aからビードコア11で折り返される一対の屈曲部40Bと、屈曲部40Bのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部40Cと、を有する。プライ本体部40A、屈曲部40B及び折り返し部40Cは、ビードフィラー12及びビードコア11を囲んでいる。ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の部分の折り返し部40Cは、プライ本体部40Aに重ね合わされている。
【0032】
実施形態のカーカスプライ40は、トレッド30の部分においてタイヤ径方向外側の第1カーカスプライ41と、タイヤ径方向内側の第2カーカスプライ42と、を含む二層構造である。カーカスプライ40としては、このように二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有していてもよい。
【0033】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部40Bを含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40の折り返し部40Cの、タイヤ軸方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム21で覆われている。
【0034】
インナーライナー50は、タイヤ1の内面を構成する部材であって、カーカスプライ40のプライ本体部40Aの内面及び一対のビード10のチェーハー13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。実施形態のタイヤ1のインナーライナー50は、外側インナーライナー51と内側インナーライナー52との二層により構成されているが、インナーライナー50としては、一層構造であってもよい。
【0035】
図1及び図2に示すように、標章表示部60は、サイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出している。標章表示部60は、その突出端面に、平坦な標章面70を有する。
【0036】
標章表示部60は、色ゴム61と、カバーゴム65と、を有する。色ゴム61は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置される。図2に示す標章表示部60は、タイヤ1を側面から見た場合(図2のIII矢視)において、図3に示すように、「P」を意匠的に描いて表示した部分であり、図2は、図3のII-II線に沿った部分のタイヤ軸方向断面を示している。なお、図2は断面図であるが、寸法線や符号等を明示するために、ハッチングを省略している。
【0037】
カバーゴム65の色は、タイヤ1と同色の黒色が好ましい。色ゴム61の色としては、黒色とのコントラストが明確となる白色が好適であるが、これに限定はされず、例えば黄色、緑色、赤色等も選択される。
【0038】
図2及び図3に示すように、標章表示部60において実質的に標章60Aとして視認される部分、すなわち「P」として視認される部分は、サイドウォール20の表面から突出してサイドウォール20の側面に露出する色ゴム61の露出部62と、色ゴム61を囲むように配置されているカバーゴム65による縁取り66と、によって形成されている。色ゴム61の露出部62及びカバーゴム65の縁取り66の各表面は、平坦な同一面を形成している。すなわち標章60A(文字「P」)は、平坦な単一面で構成される。
【0039】
図2に示すように、カバーゴム65は比較的薄いゴム膜であって、色ゴム61のタイヤ外表面側に配置され、色ゴム61の露出部62以外の部分を覆っている。
【0040】
標章表示部60は、タイヤ1を加硫成型する際に、サイドウォール20のタイヤ周方向の一部に、サイドウォール20のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出するように形成される。タイヤ1が加硫成型された後は、色ゴム61は全体がカバーゴム65で覆われ、露出部62は形成されていない。タイヤ1の加硫成型後に、標章60Aに対応する部分のカバーゴム65がバフ研削等の手段で研削除去されることにより、色ゴム61が露出して、色ゴム61による露出部62及びカバーゴム65による縁取り66からな標章60Aが露出する。標章表示部60の研削面が、標章60Aの平坦な単一面である標章面70を構成する。
【0041】
標章表示部60は、標章面70の最外形の輪郭を形成する外縁71からサイドウォール20の外表面に沿ったプロファイルラインPLにわたる外側隅部72と、をさらに含む。図3に示すように、外側隅部72は、標章60Aの外形の全周にわたって形成されている。図2に示すように、外側隅部72は、サイドウォール20の側面、すなわち標章表示部60の標章面70の側に凹となる断面円弧状の湾曲面72aを含む。実施形態において、この湾曲面72aの曲率半径Rは、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0042】
図2に示すように、標章表示部60の標章面70の外縁71からプロファイルラインPLに直交する線L1と、プロファイルラインPLとの交点P1から、湾曲面72aがプロファイルラインPLに達する点P2までが、外側隅部72の裾野の長さL2である。この裾野の長さL2は、上述した外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rよりも大きいことが好ましく、具体的な裾野の長さL2としては、4mm以上8mm以下であることが好ましく、4mm以上6.5mm以下であることがより好ましい。
【0043】
また、図2に示すように、プロファイルラインPLから標章表示部60の標章面70までの距離Hは、すなわち標章表示部60の突出高さHである。実施形態において、上述した外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rは、この突出高さHよりも例えば2倍程度、あるいはそれ以上の大きさであるとよく、より具体的には、2.3倍以上、すなわち、R≧2.3Hであることが好ましい。
【0044】
本実施形態の標章表示部60が備える外側隅部72は、タイヤ子午線面の断面視において、実質的に一つの曲率半径Rの湾曲面72aにより形成されており、その湾曲面72aの曲率半径Rは、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0045】
標章表示部60は、タイヤ1の加硫成型の際には、成型用の金型に形成されている凹部に、色ゴム61とともにカバーゴム65が流入して形成される。このとき、外側隅部72の湾曲面72aを形成する金型側の凸の湾曲面の曲率半径が小さければ小さいほど、ゴムは流動しにくく、特に薄いカバーゴム65は、強い引っ張り力がかかって拡張し、破れる可能性がある。しかし、実施形態の標章表示部60の外側隅部72は、湾曲面72aの曲率半径Rが6mm以上10mm以下と、比較的曲率半径が大きく曲率が小さい、すなわち、なだらかであるため、加硫成型の際に、標章表示部60を形成する凹部にゴムが流入しやすい。また、流入しやすいことから、カバーゴム65に強い引っ張り力がかかる可能性も低くなる。このため、加硫成型時において、標章表示部60を形成するカバーゴム65が拡張して引き裂かれることが抑制され、色ゴム61及びカバーゴム65は十分、かつ、的確な形状に形成される。その結果、例えば外側隅部72において色ゴム61がカバーゴム65で覆われず露出してしまい、標章表示部60の外観が低下するといったことが抑制される。すなわち、実施形態のタイヤ1によれば、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0046】
標章表示部60において外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rが6mmを下回ると、加硫成型時においてカバーゴム65に引っ張り力がかかって拡張し、破れが生じる可能性が高くなる。一方、外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rが10mmを上回ると、標章表示部60の立体的な視認性が低下するおすれがある。したがって、標章表示部60において外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rは、6mm以上10mm以下であることが好ましく、6mm以上8mm以下であればより好ましい。
【0047】
また、実施形態のタイヤ1は、上述したように、標章表示部60の裾野の長さL2が、4mm以上8mm以下である場合、外側隅部72の湾曲面72aはなだらかである。さらに、実施形態のタイヤ1は、上述したように、外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rは、標章表示部60の突出高さHに対し2.3倍以上である場合にも、外側隅部72の湾曲面72aは同様になだらかである。したがってこれらのことからも、加硫成型時において標章表示部60を形成する色ゴム61及びカバーゴム65は流動しやすく、色ゴム61及びカバーゴム65はよって適正な標章表示部60が形成される。したがって、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0048】
以上説明した実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0049】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されているトレッド30と、を備え、サイドウォール20は、タイヤ子午線面の断面視においてサイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出する標章表示部60を備え、標章表示部60は、カバーゴム65と、標章表示部60の標章面70に露出する露出部62を有し、当該露出部62以外がカバーゴム65で覆われる色ゴム61と、カバーゴム65で覆われ、標章面70の最外形の輪郭を形成する外縁71からサイドウォール20の外表面にわたる外側隅部72と、を含み、外側隅部72は、標章面70の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径Rが6mm以上10mm以下の湾曲面72aを含む。これにより、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0050】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、外側隅部72の裾野の長さL2は、4mm以上8mm以下であることが好ましい。これにより、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0051】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、プロファイルラインPLから標章表示部60の標章面70までの距離である標章表示部の突出高さHに対し、外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rは2.3倍以上であることが好ましい。これにより、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良等を行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0053】
上記実施形態では、標章表示部の例として英文字の「P」を示したが、標章表示部としてはこのような文字の他に、図形、記号、模様等が挙げられ、限定はされない。
【0054】
実施形態に係る構成は、軽自動車やSUV等を含む乗用車用の空気入りタイヤの他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用の空気入りタイヤに適用できる。
【実施例0055】
以下、実施例について説明する。表1に示すように、標章表示部60を備える上述の実施形態のタイヤ1と同様の構成を備え、標章表示部60の外側隅部72における湾曲面72aの曲率半径Rと、標章表示部60の突出高さHを変化させた実施例1~3及び比較例1、2のタイヤを作製した。表1には、標章表示部60の突出高さHに対する湾曲面72aの曲率半径Rの比率として、Hを1とした場合の曲率半径Rの比率を示している。また、表1に示す裾野の長さL2は、湾曲面72aの曲率半径Rと標章表示部60の突出高さHに応じた値である。作製した各タイヤにつき、標章表示部60の色ゴム61が外側隅部72に露出しているか否か、及び外観性について調べ、露出していたり外観性が悪かったりした場合を「×」、色ゴム61が露出しておらずカバーゴム65が適正に形成され、かつ、外観性も良好な場合を「〇」として評価した。その評価の結果を表1に併記する。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、標章表示部60において外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rが6mm、8mm、10mmの実施例1、2、3は、いずれも色ゴム61が外側隅部72で露出しておらず、外観性も良好であった。一方、比較例1は、外側隅部72で色ゴム61が露出しており、これは、加硫成型時において標章表示部60のカバーゴム65に破れが発生したことに起因すると推測された。また、比較例2は、外側隅部72での色ゴム61の露出は認められなかったが、立体的な視認性に欠けており、標章表示部としての機能が不十分であった。以上より、標章表示部60における外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径Rは、6mm以上10mm以下であると、外側隅部72での色ゴム61の露出が抑制されるとともに、標章表示部60の外観性が良好になることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
1…空気入りタイヤ、10…ビード、20…サイドウォール、30…トレッド、60…標章表示部、61…色ゴム、62…露出部、65…カバーゴム、70…標章面、71…標章面の外縁、72…外側隅部、72a…外側隅部の湾曲面、H…標章表示部の突出高さ、L2…外側隅部の裾野の長さ、PL…プロファイルライン、R…外側隅部の湾曲面の曲率半径。
図1
図2
図3