(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172037
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】タイヤ成形型及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20241205BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20241205BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20241205BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C33/02
B60C13/00 C
B60C13/00 D
B29D30/06
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089457
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 誠章
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友暉
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC47
3D131BC51
3D131GA01
3D131GA03
3D131LA28
4F202AH20
4F202CA21
4F202CU01
4F202CU02
4F202CU20
4F215AH20
4F215VA01
4F215VA13
4F215VC12
4F215VC13
4F215VD09
4F215VL04
4F215VL22
4F215VL27
4F215VP17
4F215VP39
4F501TA01
4F501TA13
4F501TB12
4F501TB13
4F501TC09
4F501TE04
4F501TE17
4F501TE22
4F501TG01
4F501TL16
4F501TL38
4F501TV25
(57)【要約】
【課題】タイヤ最大幅位置23aから離れた端部付近においても色ゴムが明確に露出して標章のぼやけが抑制される標章表示部を形成できるタイヤ成形型及びタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ成形型100のサイドプレート120は、サイドウォール20の外表面23を形成する外表面形成部121と、外表面形成部121に連続し、標章表示部60を形成する凹部122aを含む標章表示部形成部122と、タイヤ最大幅位置23aを形成するタイヤ最大幅位置形成点129と、を備え、標章表示部形成部122は、少なくとも、タイヤ径方向においてタイヤ最大幅位置形成点129から最も離れた第1の端部123に、第1の溝部123aを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロファイルラインに沿った外表面を有するとともに、前記プロファイルラインからタイヤ軸方向外側に突出し、その突出端面に標章面を含む標章表示部を有するサイドウォールを備え、前記標章表示部は、色ゴムと、前記色ゴムを覆うカバーゴムと、を含む空気入りタイヤを、加硫成形するためのタイヤ成形型であって、
前記サイドウォールの前記外表面を形成する外表面形成部と、
前記外表面形成部に連続し、前記標章表示部を形成する凹部を含む標章表示部形成部と、
タイヤ最大幅位置を形成するタイヤ最大幅位置形成点と、を備え、
前記標章表示部形成部は、少なくとも、タイヤ径方向において前記タイヤ最大幅位置形成点から最も離れた第1の端部に、第1の溝部を有する、タイヤ成形型。
【請求項2】
前記標章表示部形成部は、タイヤ径方向において前記タイヤ最大幅位置形成点に最も近い第2の端部に、第2の溝部を有し、
前記第1の溝部の深さは、前記第2の溝部の深さよりも大きい、請求項1に記載のタイヤ成形型。
【請求項3】
前記第1の溝部の深さは、前記第2の溝部の深さの2倍以上4倍以下である、請求項2に記載のタイヤ成形型。
【請求項4】
前記標章表示部形成部は、前記第1の溝部から前記外表面形成部に至る第1の側壁面を有し、
前記第1の側壁面は、前記標章表示部形成部の内部側に凸となる断面円弧状であって、その曲率半径R1が6mm以上10mm以下の第1の湾曲面を有する、請求項1または2に記載のタイヤ成形型。
【請求項5】
前記標章表示部形成部は、前記第1の溝部と前記第1の側壁面とがなす第1の内隅部を有し、
タイヤ軸方向断面視において、前記プロファイルラインに直交して前記第1の内隅部を通る線L1と、前記第1の側壁面と、がなす角度が、10°以上20°以下である、請求項4に記載のタイヤ成形型。
【請求項6】
前記標章表示部形成部は、前記第2の溝部から前記外表面形成部に至る第2の側壁面を有し、
前記第2の側壁面は、前記標章表示部形成部の内部側に凸となる断面円弧状であって、その曲率半径R2が6mm以上10mm以下の第2の湾曲面を有する、請求項2または3に記載のタイヤ成形型。
【請求項7】
前記標章表示部形成部は、前記第2の溝部と前記第2の側壁面とがなす第2の内隅部を有し、
タイヤ軸方向断面視において、前記プロファイルラインに直交して前記第2の内隅部を通る線L2と、前記第2の側壁面とがなす角度が、10°以上20°以下である、請求項6に記載のタイヤ成形型。
【請求項8】
請求項1に記載のタイヤ成形型を用いてタイヤを成形するタイヤの製造方法であって、
色ゴムと、色ゴムの外側のカバーゴムと、を含むゴム層を、前記カバーゴム側から前記標章表示部形成部に充填する状態で加硫成形することにより、前記第1の溝部により形成される第1の凸部を含む前記標章表示部を形成する工程と、
前記カバーゴムを研削して前記色ゴムを露出させて前記標章面を形成する工程と、を含む、タイヤの製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載のタイヤ成形型を用いてタイヤを成形するタイヤの製造方法であって、
色ゴムと、色ゴムの外側のカバーゴムと、を含むゴム層を、前記カバーゴム側から前記標章表示部形成部に充填する状態で加硫成形することにより、前記第1の溝部により形成される第1の凸部及び前記第2の溝部により形成される第2の凸部を含む前記標章表示部を形成する工程と、
前記カバーゴムを研削して前記色ゴムを露出させて前記標章面を形成する工程と、を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤを加硫成形するためのタイヤ成形型及びそのタイヤ成形型を用いたタイヤの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外観性を向上させるなどの目的で、標章に応じた突出部をサイドウォールに形成し、その表面に色ゴムを露出させて標章表示部を設けた空気入りタイヤが知られている。色ゴムは、表面が薄肉のカバーゴムによって覆われた状態でサイドウォールに加硫成形された後、標章に対応する部分のカバーゴムをバフ研削等で除去することにより、サイドウォールの表面に露出して標章を形成する(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-8612号公報
【特許文献2】特開2011-46010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような標章表示部にあっては、タイヤ最大幅位置から離れた端部付近において、バフ研削の研削代が不十分であることに起因してカバーゴムが十分に除去されず、色ゴムによる標章にぼやけが生じて外観不良となる場合があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、タイヤ最大幅位置から離れた端部付近においても色ゴムが明確に露出して標章のぼやけが抑制される標章表示部を形成できるタイヤ成形型及びタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤ成形型は、プロファイルラインに沿った外表面を有するとともに、前記プロファイルラインからタイヤ軸方向外側に突出し、その突出端面に標章面を含む標章表示部を有するサイドウォールを備え、前記標章表示部は、色ゴムと、前記色ゴムを覆うカバーゴムと、を含む空気入りタイヤを、加硫成形するためのタイヤ成形型であって、前記サイドウォールの前記外表面を形成する外表面形成部と、前記外表面形成部に連続し、前記標章表示部を形成する凹部を含む標章表示部形成部と、タイヤ最大幅位置を形成するタイヤ最大幅位置形成点と、を備え、前記標章表示部形成部は、少なくとも、タイヤ径方向において前記タイヤ最大幅位置形成点から最も離れた第1の端部に、第1の溝部を有する。
【0007】
本発明に係るタイヤの製造方法は、上記本発明のタイヤ成形型を用いてタイヤを成形するタイヤの製造方法であって、色ゴムと、色ゴムの外側のカバーゴムと、を含むゴム層を、前記カバーゴム側から前記標章表示部形成部に充填する状態で加硫成形することにより、前記第1の溝部を含む前記標章表示部を形成する工程と、前記カバーゴムを研削して前記色ゴムを露出させて前記標章面を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤ最大幅位置から離れた端部付近においても色ゴムが明確に露出して標章のぼやけが抑制される標章表示部を形成できるタイヤ成形型及びタイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るタイヤ成形型により加硫成形された空気入りタイヤの側面図である。
【
図2】
図1に示すタイヤのタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)半断面図である。
【
図4】実施形態のタイヤの標章表示部の例を示すサイドウォールの一部側面図である。
【
図5】実施形態に係るタイヤ成形型によってタイヤを加硫成形する状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】実施形態のタイヤ成形型の標章表示部形成部を示すサイドプレートの断面図であって、タイヤ軸方向断面視に対応する断面を示す。
【
図9】バフ研削機により標章表示部の表層をバフ研削する状態を模式的に示す図であって、タイヤ軸方向半断面に対応する図である。
【
図10】他の例の標章表示部を形成するタイヤ成形型の標章表示部形成部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明はタイヤ成形型及びタイヤの製造方法に関するが、はじめに、実施形態に係るタイヤ成形型及びタイヤの製造方法によって製造された実施形態に係る空気入りタイヤを説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1の全体側面図である。
図2は、タイヤ1のタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)の半断面図であって、
図1のII-II線に沿った部分に対応する半断面図である。
図3は、
図2のIII部拡大図であって、実施形態に係る標章表示部60を含むサイドウォール20の一部拡大断面図である。
図4は、標章表示部60の標章60Aの例を示す図である。
【0012】
なお、
図2の断面図は、タイヤ1を図示しない正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤ軸方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、及びETRTOであれば”Measuring Rim”である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、又は、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0013】
実施形態に係るタイヤ1は、軽自動車やSUV等を含む乗用車用の空気入りタイヤである。なお、実施形態のタイヤ1の構成は、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用の空気入りタイヤにも適用できる。
【0014】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ軸方向(タイヤ子午線面)の断面において左右対称となっている。
図2は、タイヤ1の右半分の断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。
図2中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつ、タイヤ軸方向中心に位置する面である。
【0015】
ここで、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図2における紙面左右方向である。
図2においては、タイヤ軸方向Xとして図示している。タイヤ軸方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図2においては紙面左側である。タイヤ軸方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図2においては紙面右側である。
【0016】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図2における紙面上下方向である。
図2においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図2においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図2においては紙面下側である。
【0017】
また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心とした円弧線であって、タイヤ1の回転方向に沿った方向であり、
図1及び
図4においては円弧線Z方向で示している。
【0018】
実施形態に係るタイヤ1は、
図1及び
図2に示すように、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、を備えている。また、実施形態に係るタイヤ1は、
図2に示すように、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0019】
一対のビード10は、タイヤ軸方向両側、かつ、タイヤ径方向内側の端部に配置されている。
図2に示すように、ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を有している。
【0020】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
【0021】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードコア11のタイヤ径方向外側の面に、ビードフィラー12のタイヤ径方向内側の面が接合されている。
【0022】
チェーハー13は、ビードコア11及びビードフィラー12を囲むカーカスプライ40の外側をさらに囲んでいる。
【0023】
リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0024】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム21と、サイドブロック22と、標章表示部60と、を含む。サイドウォールゴム21、サイドブロック22及び標章表示部60は、タイヤ1の外壁面を構成する。
【0025】
サイドウォールゴム21は、標章表示部60を囲んでおり、
図2においては、標章表示部60のタイヤ径方向の外側と内側とに配置されている。タイヤ径方向内側のサイドウォールゴム21には、リムライン21aが形成されている。
【0026】
サイドブロック22は、サイドウォール20のタイヤ径方向外側の端にブロック状に形成された部分であって、サイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出している。実施形態のサイドブロック22は、サイドウォール20のタイヤ径方向外側の端からトレッド30のタイヤ軸方向外側の端まで延びており、タイヤ径方向内側はサイドウォールゴム21で構成され、タイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム21とは異なるゴム22aで構成されている。サイドブロック22のタイヤ径方向外側のゴム22aは、トレッド30のタイヤ軸方向外側の端を覆っており、このゴム22aのタイヤ径方向外側の部分は、タイヤ1のゴムの色とは異なる色のゴムによる環状ライン22bが形成されている。環状ライン22bは、
図1に示すように、タイヤ周方向の全周にわたって設けられている。
【0027】
サイドウォール20は、プロファイルラインPLに沿った外表面23を有する。ここでの外表面23は、プロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出する標章表示部60及びサイドブロック22の外表面は含まない。サイドウォール20の外表面23は、タイヤ1のタイヤ最大幅位置23aを含む。実施形態のタイヤ最大幅位置23aは、サイドウォール20の外表面23に存在するものであり、標章表示部60のタイヤ軸方向の最も外側の部分ではない。なお、実施形態のタイヤ最大幅位置23aは、プロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出する標章表示部60のタイヤ径方向外側に位置し、プロファイルラインPLに沿ったカバーゴム65の表面に位置している。
【0028】
サイドウォール20は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分である。そのため、通常、サイドウォール20のサイドウォールゴム21は、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。標章表示部60についての詳細は、後述する。
【0029】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を有している。
【0030】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0031】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、タイヤ径方向において外側のベルト311と内側のベルト312と、を有する二層構造である。外側のベルト311及び内側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。なお、ベルト31は二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有していてもよい。
【0032】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0033】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、トレッド30の外表面であるトレッド面34を構成する部材である。
【0034】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる不図示の複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ軸方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。そのカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0035】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部40Aと、プライ本体部40Aからビードコア11で折り返される一対の屈曲部40Bと、屈曲部40Bのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部40Cと、を有する。プライ本体部40A、屈曲部40B及び折り返し部40Cは、ビードフィラー12及びビードコア11を囲んでいる。ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の部分の折り返し部40Cは、プライ本体部40Aに重ね合わされている。
【0036】
実施形態のカーカスプライ40は、トレッド30の部分においてタイヤ径方向外側の第1カーカスプライ41と、タイヤ径方向内側の第2カーカスプライ42と、を含む二層構造である。カーカスプライ40としては、このように二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有していてもよい。
【0037】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部40Bを含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40の折り返し部40Cの、タイヤ軸方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム21で覆われている。
【0038】
インナーライナー50は、タイヤ1の内面を構成する部材であって、カーカスプライ40のプライ本体部40Aの内面及び一対のビード10のチェーハー13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。実施形態のタイヤ1のインナーライナー50は、外側インナーライナー51と内側インナーライナー52との二層により構成されているが、インナーライナー50としては、一層構造であってもよい。
【0039】
図2及び
図3に示すように、標章表示部60は、サイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出している。標章表示部60は、その突出端面に、平坦な標章面70を有する。
図1に示すように、標章表示部60は、タイヤ周方向で互いに180°離れた2箇所に配置されている。
【0040】
標章表示部60は、色ゴム61と、カバーゴム65と、を有するゴム層69を含む。色ゴム61は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置される。カバーゴム65は、色ゴム61を覆う状態でタイヤ径方向外側に配置される。標章表示部60は、タイヤ1を側面から見た場合において、
図4に示すように、「T」を意匠的に描いて表示した部分である。
【0041】
カバーゴム65の色は、タイヤ1と同色の黒色が好ましい。色ゴム61の色としては、黒色とのコントラストが明確となる白色が好適であるが、これに限定はされず、例えば黄色、緑色、赤色等も選択される。
【0042】
図3及び
図4に示すように、標章表示部60において実質的に標章60Aとして視認される部分、すなわち「T」として視認される部分は、サイドウォール20の表面から突出してサイドウォール20の側面に露出する色ゴム61の露出部62と、色ゴム61を囲むように配置されているカバーゴム65による縁取り66と、によって形成される。色ゴム61の露出部62及びカバーゴム65の縁取り66の各表面は、平坦な同一面を形成している。すなわち標章60A(文字「T」)は、平坦な単一面で構成される。
【0043】
図2に示すように、カバーゴム65は比較的薄いゴム膜であって、色ゴム61のタイヤ外表面側に配置され、色ゴム61の露出部62以外の部分を覆っている。
【0044】
標章表示部60は、タイヤ1を加硫成形する際に、サイドウォール20のタイヤ周方向の一部に、サイドウォール20のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出するように形成される。タイヤ1が加硫成形された後は、色ゴム61は全体がカバーゴム65で覆われ、露出部62は形成されていない。タイヤ1の加硫成形後に、標章60Aに対応する部分のカバーゴム65がバフ研削等の手段で研削除去されることにより、色ゴム61が露出して、色ゴム61による露出部62及びカバーゴム65による縁取り66からな標章60Aが露出する。標章表示部60の研削面が、標章60Aの平坦な単一面である標章面70を構成する。
【0045】
図3及び
図4に示すように、標章表示部60は、標章面70の最外形の輪郭を形成する外縁71からサイドウォール20の外表面23に沿ったプロファイルラインPLにわたる外側隅部72をさらに含む。外側隅部72は、標章60Aの外形の全周にわたって形成されている。
図3に示すように、外側隅部72は、標章表示部60の標章面70の側に凹となる断面円弧状の湾曲面72aを含む。
【0046】
以上が実施形態に係るタイヤ1の構成である。次いで、
図5~
図9を参照しながら、タイヤ1を加硫成形するためのタイヤ成形型と、このタイヤ成形型を用いてタイヤ1を製造する製造方法について説明する。
【0047】
図5は、実施形態に係るタイヤ成形型100によってタイヤ1を加硫成形する状態を模式的に示している。
図5は、タイヤ軸方向(タイヤ子午線面)に沿った断面図である。
図6は、
図5のVIで示す部分の拡大図である。なお、
図6では、後述するブラダ140の図示は省略している。
図5及び
図6では、タイヤ1のハッチングを一部省略している。
【0048】
加硫成形前のタイヤ1は、タイヤ成形型100に、タイヤ軸方向が上下方向に沿った状態でセットされる。
図5及び
図6には、
図2と同様に、加硫成形されるタイヤ1のタイヤ軸方向をX、タイヤ径方向をYでそれぞれ示している。以下のタイヤ成形型100の説明においても、加硫成形されるタイヤ1に応じたこれらタイヤ軸方向、タイヤ径方向を適用する。なお、タイヤ成形型100にセットされる際のタイヤ1は、加硫前のいわゆるグリーンタイヤなどと呼ばれる状態であって実質的に加硫成形後のタイヤ1と異なる特性を有するが、ここでは、「加硫成形前のタイヤ1」と称して説明を進める。
【0049】
タイヤ成形型100は、セグメンテッドモールドの構造を備え、不図示のコンテナ内に収容される。
図5に示すように、タイヤ成形型100は、複数のセクターモールド110と、上下一対のサイドプレート120と、上下一対のビードリング130と、を備える。複数のセクターモールド110は主にタイヤ1のトレッド30を形成する機能を有し、一対のサイドプレート120は主にタイヤ1のサイドウォール20を形成する機能を有し、一対のビードリング130は主にタイヤ1のビード10を形成する機能を有する。
【0050】
複数のセクターモールド110は、タイヤ成形型100の開閉時にタイヤ径方向に拡縮変位可能に設けられる。例えば、各セクターモールド110は、型開き状態では放射状に分離し、型閉め状態では互いに当接して環状に組まれる。タイヤ成形型100は、上記コンテナを介して型締め・型開きを行う不図示の駆動装置をさらに備える。また、タイヤ成形型100には、加硫成形時においてタイヤ1を内腔側から膨出させてタイヤ成形型100の内面である成形面に押圧するブラダ140が付属される。
【0051】
図6に示すように、上述したタイヤ1の標章表示部60は、サイドプレート120の成形面120Aによって形成される。サイドプレート120の成形面120Aは、サイドウォール20の外表面23を形成する外表面形成部121と、外表面形成部121に連続し、標章表示部60を形成する標章表示部形成部122と、タイヤ最大幅位置23aを形成するタイヤ最大幅位置形成点129と、を有する。なお、
図6に示すサイドプレート120は、
図5の上側のサイドプレート120であるが、下側のサイドプレート120も、同一の成形面120Aを有する。
【0052】
外表面形成部121は、タイヤ1におけるプロファイルラインPLに沿ったサイドウォール20の外表面23に対応する緩やかな凹面形状を有する。外表面形成部121は、標章表示部形成部122を囲んで形成されており、
図6においては標章表示部形成部122のタイヤ径方向両側に形成されている。タイヤ最大幅位置形成点129は、プロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出する標章表示部形成部122のタイヤ径方向外側であって、標章表示部形成部122に近接する位置に配置されている。
【0053】
図7は、標章表示部形成部122を示すサイドプレート120の断面図であって、タイヤ軸方向断面視に対応する断面を示している。
図8は、
図7のXIII矢視図である。
図7及び
図8に示すように、標章表示部形成部122は、標章表示部60に対応する形状の凹部122aを含む。この凹部122aは、
図8に示すように、実施形態の標章表示部60の標章60Aである「T」が転写された形状の凹みである。
【0054】
図7及び
図8に示すように、標章表示部形成部122は、タイヤ径方向(
図7及び
図8で上下方向)において、タイヤ最大幅位置形成点129から最も離れた第1の端部123を含み、この第1の端部123に、第1の溝部123aが形成されている。第1の溝部123aは、概ねタイヤ周方向に沿う方向に直線状に延びている。
【0055】
また、標章表示部形成部122は、タイヤ径方向においてタイヤ最大幅位置形成点129に最も近い第2の端部124を含み、この第2の端部124に、第2の溝部124aが形成されている。第2の溝部124aは、概ねタイヤ周方向に沿う方向に直線状に延びている。
【0056】
ここで、第1の溝部123aの深さは、第2の溝部124aの深さよりも大きいことが好ましい。その場合、第1の溝部123aの深さは、第2の溝部124aの深さの2倍以上4倍以下であることが好ましい。なお、各溝部123a、124aの深さについてはこれに限定されず、深さは同じであってもよく、逆に、第2の溝部124aの深さが第1の溝部123aの深さより大きくてもよい。なお、第1の溝部123aの深さは、カバーゴム65の厚みよりも大きいことが好ましく、例えば、厚みが0.65mm程度のカバーゴム65に対して、第1の溝部123aの深さは例えば1.5mm程度とされるが、これに限定はされない。
【0057】
さらに
図7により標章表示部形成部122を詳述すると、標章表示部形成部122は、第1の溝部123aからタイヤ径方向内側の外表面形成部121に至る第1の側壁面123bを含む。この第1の側壁面123bは、標章表示部形成部122の内部側に凸となる断面円弧状の第1の湾曲面123cを有する。この第1の湾曲面123cの曲率半径R1は、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0058】
また、標章表示部形成部122は、第1の溝部123aと第1の側壁面123bとがなす第1の内隅部123dを含む。タイヤ軸方向断面視において、プロファイルラインPLに直交して第1の内隅部123dを通る線L1と、第1の側壁面123bとがなす角度θ1は、10°以上20°以下であることが好ましい。
【0059】
上述の第1の側壁面123bは、実質的に一つの曲率半径R1の湾曲面123cにより形成されていることが好ましい。その場合の第1の側壁面123bは、内隅部123dから外表面形成部121まで湾曲して形成された湾曲面123cで構成される。
【0060】
また、標章表示部形成部122は、第2の溝部124aからタイヤ径方向外側の外表面形成部121に至る第2の側壁面124bを含む。この第2の側壁面124bは、標章表示部形成部122の内部側に凸となる断面円弧状の第2の湾曲面124cを有する。この第2の湾曲面124cの曲率半径R2は、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0061】
また、標章表示部形成部122は、第2の溝部124aと第2の側壁面124bとがなす第2の内隅部124dを有する。タイヤ軸方向断面視において、プロファイルラインPLに直交して第2の内隅部124dを通る線L2と、第2の側壁面124bとがなす角度θ2は、10°以上20°以下であることが好ましい。
【0062】
上述の第2の側壁面124bは、実質的に一つの曲率半径R2の湾曲面124cにより形成されていることが好ましい。その場合の第2の側壁面124bは、内隅部124dから外表面形成部121まで湾曲して形成された湾曲面124cで構成される。
【0063】
以上が、実施形態に係るタイヤ成形型100の構成である。このタイヤ成形型100によりタイヤ1を加硫成形するには、はじめに、型開き状態としたタイヤ成形型100に、加硫成形前のタイヤ1を、その軸方向が上下方向に沿う状態として、下側のサイドプレート120及びビードリング130の上に載置し、次いで、ブラダ140内に空気を供給して膨張させ、その外周面で加硫成形前のタイヤ1の内腔面を保持する。続いて、不図示の駆動装置によりタイヤ成形型100を型閉めして、タイヤ1の外表面が複数のセクターモールド110、一対のサイドプレート120及び一対のビードリング130により押圧され、かつ、タイヤ1の内腔面がブラダ140により押圧された状態とする。すなわち、加硫成形前のタイヤ1はタイヤ成形型100にプレス成形される。そして、所定の加硫成形温度(例えば、100°~200°)に加熱されて所定の加硫成形時間(例えば、数時間~数十時間)を経過することにより、加硫成形されたタイヤ1を得る。
【0064】
タイヤ成形型100の型締めによるプレス成形時においては、タイヤ1の膨張により、標章表示部60は、色ゴム61と、色ゴム61のタイヤ径方向外側のカバーゴム65と、を含むゴム層69が、カバーゴム65側から標章表示部形成部122の凹部122aに充填される。これにより、標章表示部60が形成される。このとき、
図6に示すように、標章表示部形成部122の第1の溝部123aにゴム層69が充填されて第1の凸部67が形成され、標章表示部形成部122の第2の溝部124aにゴム層69が充填されて第2の凸部68が形成される。加硫成形後のタイヤ1の標章表示部60は、
図6に示すように、タイヤ軸方向外側の外面全面がカバーゴム65で覆われ、色ゴム61は視認できない状態となっている。
【0065】
次に、加硫成形後のタイヤ1に対して、標章表示部60のタイヤ軸方向外側の突出端面の表層をバフ研削して、標章60Aに対応する部分のカバーゴム65を除去し、色ゴム61の露出部62を露出させて標章60Aが表示される状態に加工する。
【0066】
図9は、バフ研削機200により標章表示部60の表層をバフ研削する状態を模式的に示している。
図9は、
図2と同様に、タイヤ軸方向(タイヤ子午線面)半断面を示している。バフ研削機200は、いずれも円筒ローラ状の形状を有するバフ210及びシュー220が同心状に配置され、回転軸230を軸心として回転するように構成されている。タイヤ1は、不図示のリムに装着されて回転軸回りに回転可能に支持される。
【0067】
バフ研削機200は、標章表示部60のタイヤ軸方向外側において、標章表示部60に対して離接可能に配置され、接近することにより標章表示部60をバフ210により研削する。バフ210の回転軸230は、タイヤ子午線面内において、タイヤ径方向外側に向かうにつれてタイヤ軸方向外側にある程度の角度をもって傾斜するように延びている。シュー220は、その外周面がタイヤ1のサイドウォール20に当接し、それによりバフ210の研削深さが規制される。バフ210が標章表示部60の突出端面の表層を研削しながら、タイヤ1は回転させられ、標章表示部60の領域分をタイヤ1が回転することにより、標章表示部60はバフ研削される。
【0068】
バフ研削により、標章60Aに対応する部分のカバーゴム65及び色ゴム61の表層が除去される。このとき、第1の凸部67及び第2の凸部68も除去される。これにより、
図3及び
図4に示すように、色ゴム61の露出部62及びカバーゴム65による縁取り66を含む平坦な標章面70が形成されるとともに、標章60A(文字「T」)が表示される。
【0069】
図3に示すように、タイヤ1の標章表示部60におけるタイヤ径方向内側の外側隅部72の湾曲面72aは、タイヤ成形型100の、第1の湾曲面123cを有する第1の側壁面123bにより形成される。これにより、この部分の外側隅部72の湾曲面72aは、第1の湾曲面123cの曲率半径R1が転写され、曲率半径R1に形成される。
【0070】
また、
図3に示すように、タイヤ1の標章表示部60におけるタイヤ径方向外側の外側隅部72の湾曲面72aは、タイヤ成形型100の、第2の湾曲面124cを有する第2の側壁面124bにより形成される。これにより、この部分の外側隅部72の湾曲面72aは、第2の湾曲面124cの曲率半径R2が転写され、曲率半径R2に形成される。
【0071】
標章表示部60は、タイヤ1の加硫成形の際には、タイヤ成形型100の標章表示部形成部122の凹部122a内に、色ゴム61及びカバーゴム65を含むゴム層69が膨張して充填されることにより形成される。ここで、標章表示部形成部122は、タイヤ最大幅位置形成点129から最も離れた第1の端部123に第1の溝部123aを有することから、この第1の溝部123aにも標章表示部60のゴム層69が充填される。第1の溝部123aに充填されるゴム層69は、タイヤ軸方向外側にさらに突出する第1の凸部67として形成される。これにより、第1の端部123においては、バフ研削後においても色ゴム61が十分に露出するに足る突出高さのゴム層69が充填可能となる。これにより、標章表示部60をバフ研削した後のタイヤ1は、標章表示部60のタイヤ最大幅位置23aから最も離れた端部付近においても色ゴム61が明確に露出し、標章60Aのぼやけが抑制される。
【0072】
一方、標章表示部形成部122は、タイヤ最大幅位置形成点129に最も近い第2の端部124に第2の溝部124aを有することから、この第2の溝部124aにも標章表示部60のゴム層69が充填される。第2の溝部124aに充填されるゴム層69は、タイヤ軸方向外側にさらに突出する第2の凸部68として形成される。これにより、第2の端部124においても、バフ研削後において色ゴム61が十分に露出するに足る突出高さのゴム層69が充填可能となる。これにより、標章表示部60をバフ研削した後のタイヤ1は、標章表示部60のタイヤ最大幅位置23aに最も近い端部付近においても色ゴム61が明確に露出し、標章60Aのぼやけが抑制される。
【0073】
なお、標章表示部60においては、タイヤ最大幅位置23aからタイヤ径方向外側に離れるほど、バフ研削時にバフ210が届きにくく、色ゴム61が露出しにくい場合がある。このため、タイヤ最大幅位置形成点129から最も離れた第1の端部123側の第1の溝部123aの深さを、タイヤ最大幅位置形成点129に最も近い第2の端部124側の第2の溝部124aの深さよりも大きくすることにより、加硫成形後の第1の凸部67の突出の度合いが大きくなる。このため、標章表示部60のタイヤ最大幅位置23aからタイヤ径方向外側に離れた端部付近でもバフ研削時においてバフ210が十分に届き、色ゴム61を標章面70に露出させやすい。
【0074】
タイヤ成形型100の、第1の溝部123aから外表面形成部121に至る第1の側壁面123bが含む第1の湾曲面123cは、曲率半径が小さければ小さいほど、ゴム層69は流動しにくく、標章表示部形成部122に流入しにくくなる。また、特に薄いカバーゴム65は、強い引っ張り力がかかって拡張し、破れやすい。これは、第2の湾曲面124cを含む第2の溝部124a側にあっても同様である。
【0075】
ここで、各湾曲面123c、124cのそれぞれの曲率半径R1、R2を、6mm以上10mm以下とした場合、比較的曲率半径が大きく曲率が小さい、すなわち、なだらかになるため、加硫成形の際に、各溝部123a、124aにゴム層69が流入しやすい。また、流入しやすいことから、カバーゴム65に強い引っ張り力がかかる可能性も低くなる。このため、加硫成形時において、標章表示部60を形成するカバーゴム65が拡張して引き裂かれることが抑制され、色ゴム61及びカバーゴム65は十分、かつ、的確な形状に形成される。その結果、外側隅部72において色ゴム61がカバーゴム65で覆われず露出してしまい、標章表示部60の外観が低下するといったことが抑制される。すなわち、実施形態のタイヤ1によれば、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0076】
上記湾曲面123c、124cのそれぞれの曲率半径R1、R2が6mmを下回ると、加硫成形時においてカバーゴム65に引っ張り力がかかって拡張し、破れが生じる可能性が高くなる。一方、曲率半径R1、R2が10mmを上回ると、標章表示部60の立体的な視認性が低下するおそれがある。したがって、各湾曲面123c、124cのそれぞれの曲率半径R1、R2は、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0077】
タイヤ成形型100の、第1の溝部123aから、プロファイルラインPLに沿った外表面形成部121に至る第1の側壁面123bが、プロファイルラインPLに対して垂直あるいはそれに近い角度で直立するような態様であると、ゴム層69は標章表示部形成部122に流入しにくくなる。また、特に薄いカバーゴム65は、強い引っ張り力がかかって拡張し、破れやすい。これは、第2の側壁面124bを含む第2の溝部124a側にあっても同様である。
【0078】
ここで、各溝部123a、124aのそれぞれが含む第1の側壁面123b及び第2の側壁面124bと、プロファイルラインPLに直交してそれぞれの溝部123a、124aの内隅部123d、123dを通る各線L1、L2とがなす角度θ1、θ2を、10°以上20°以下とした場合、各側壁面123b、124bは、プロファイルラインPLに沿う外表面形成部121に対して直立せず、斜めの状態になる。このため、加硫成形の際に、各溝部123a、124aにゴム層69が流入しやすい。また、流入しやすいことから、カバーゴム65に強い引っ張り力がかかる可能性も低くなる。このため、加硫成形時において、標章表示部60を形成するカバーゴム65が拡張して引き裂かれることが抑制され、色ゴム61及びカバーゴム65は十分、かつ、的確な形状に形成される。その結果、外側隅部72において色ゴム61がカバーゴム65で覆われず露出してしまい、標章表示部60の外観が低下するといったことが抑制される。すなわちこれによっても、実施形態のタイヤ1によれば、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0079】
上記角度θ1、θ2が10°を下回ると、加硫成形時においてカバーゴム65に引っ張り力がかかって拡張し、破れが生じる可能性が高くなる。一方、角度θ1、θ2が20°を上回ると、標章表示部60の立体的な視認性が低下するおそれがある。したがって、上記角度θ1、θ2は、10°以上20°以下であることが好ましい。
【0080】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0081】
(1)実施形態に係るタイヤ成形型100は、プロファイルラインPLに沿った外表面23を有するとともに、プロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出し、その突出端面に標章面70を含む標章表示部60を有するサイドウォール20を備え、標章表示部60は、色ゴム61と、色ゴム61を覆うカバーゴム65と、を含む空気入りタイヤ1を、加硫成形するためのタイヤ成形型であって、サイドウォール20の外表面23を形成する外表面形成部121と、外表面形成部121に連続し、標章表示部60を形成する凹部122aを含む標章表示部形成部122と、タイヤ最大幅位置23aを形成するタイヤ最大幅位置形成点129と、を備え、標章表示部形成部122は、少なくとも、タイヤ径方向においてタイヤ最大幅位置形成点129から最も離れた第1の端部123に、第1の溝部123aを有する。
【0082】
これにより、タイヤ最大幅位置23aからタイヤ径方向において最も離れた端部付近においても、色ゴム61が明確に露出して標章60Aのぼやけが抑制される標章表示部60を備えたタイヤを成形できる。
【0083】
(2)実施形態に係るタイヤ成形型100においては、標章表示部形成部122は、タイヤ径方向においてタイヤ最大幅位置形成点129に最も近い第2の端部124に、第2の溝部124aを有し、記第1の溝部123aの深さは、第2の溝部124aの深さよりも大きいことが好ましい。
【0084】
これにより、タイヤ最大幅位置23aに最も近い端部付近においても色ゴム61が明確に露出して標章60Aのぼやけが抑制される標章表示部60を備えたタイヤを成形できる。また、第1の溝部123aにより形成される第1の凸部67の突出の度合いが、第2の溝部124aにより形成される第2の凸部68よりも大きくなるため、特に、標章表示部60のタイヤ最大幅位置23aからタイヤ径方向外側に離れた端部付近において、バフ研削後に色ゴム61を露出させやすい。
【0085】
(3)実施形態に係るタイヤ成形型100においては、第1の溝部123aの深さは、第2の溝部124aの深さの2倍以上4倍以下であることが好ましい。
【0086】
これにより、加硫成形後における標章表示部60においては、第1の溝部123aにより形成される第1の凸部67の突出の度合いが第2の凸部68よりも大きくなる。このため、タイヤ最大幅位置23aからタイヤ径方向外側に離れた端部付近においても、バフ研削後に色ゴム61を露出させやすい。
【0087】
(4)実施形態に係るタイヤ成形型100においては、標章表示部形成部122は、第1の溝部123aから外表面形成部121に至る第1の側壁面123bを有し、第1の側壁面123bは、標章表示部形成部122の内部側に凸となる断面円弧状であって、その曲率半径R1が6mm以上10mm以下の第1の湾曲面123cを有することが好ましい。
【0088】
これにより、第1の溝部123aにゴム層69が流入しやすくなるとともに、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0089】
(5)実施形態に係るタイヤ成形型100においては、標章表示部形成部122は、第1の溝部123aと第1の側壁面123bとがなす第1の内隅部123dを有し、タイヤ軸方向断面視において、プロファイルラインPLに直交して第1の内隅部123dを通る線L1と、第1の側壁面123bと、がなす角度が、10°以上20°以下であることが好ましい。
【0090】
これにより、第1の溝部123aにゴム層69が流入しやすくなるとともに、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0091】
(6)実施形態に係るタイヤ成形型100においては、標章表示部形成部122は、第2の溝部124aから外表面形成部121に至る第2の側壁面124bを有し、第2の側壁面124bは、標章表示部形成部122の内部側に凸となる断面円弧状であって、その曲率半径R2が6mm以上10mm以下の第2の湾曲面124cを有することが好ましい。
【0092】
これにより、第2の溝部124aにゴム層69が流入しやすくなるとともに、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0093】
(7)実施形態に係るタイヤ成形型100においては、標章表示部形成部122は、第2の溝部124aと第2の側壁面124bとがなす第2の内隅部124dを有し、タイヤ軸方向断面視において、プロファイルラインPLに直交して第2の内隅部124dを通る線L2と、第2の側壁面124bとがなす角度が、10°以上20°以下であることが好ましい。
【0094】
これにより、第2の溝部124aにゴム層69が流入しやすくなるとともに、標章表示部60を形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0095】
(8)実施形態に係るタイヤの製造方法は、実施形態に係るタイヤ成形型100を用いてタイヤを成形するタイヤの製造方法であって、色ゴム61と、色ゴム61の外側のカバーゴム65と、を含むゴム層69を、カバーゴム65側から標章表示部形成部122に充填する状態で加硫成形することにより、第1の溝部123aにより形成される第1の凸部67及び第2の溝部124aにより形成される第2の凸部68を含む標章表示部60を形成する工程と、カバーゴム65を研削して色ゴム61を露出させて標章面70を形成する工程と、を含む。
【0096】
これにより、タイヤ最大幅位置23aから離れた端部付近、及びタイヤ最大幅位置23aに最も近い端部付近において、色ゴム61が明確に露出して標章60Aのぼやけが抑制される標章表示部60を備えたタイヤを成形できる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良等を行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0098】
上記実施形態では、標章表示部の例として英文字の「T」を示したが、例えば英文字としては、
図1に示す「R」を標章80Aとする標章表示部80を設けてもよい。この場合のタイヤ成形型は、サイドウォール20を形成する成形面120Aに、
図10に示すように標章表示部形成部122として、標章表示部60の標章60Aである「T」が転写された形状の凹部122aが設けられる。この場合も、標章表示部形成部122は、タイヤ径方向(
図10で上下方向)において、タイヤ最大幅位置形成点から最も離れた第1の端部123に、第1の溝部123aが形成され、タイヤ最大幅位置形成点に最も近い第2の端部124に、第2の溝部124aが形成される。
【符号の説明】
【0099】
1 空気入りタイヤ
20 サイドウォール
23 サイドウォールの外表面
60、80 標章表示部
61 色ゴム
62 露出部
65 カバーゴム
67 第1の凸部
68 第2の凸部
69 ゴム層
70 標章面
71 標章面の外縁
72 外側隅部
72a 外側隅部の湾曲面
100 タイヤ成形型
121 外表面形成部
122 標章表示部形成部
122a 凹部
123 第1の端部
123a 第1の溝部
123b 第1の側壁面
123c 第1の湾曲面
123d 第1の内隅部
124 第2の端部
124a 第2の溝部
124b 第2の側壁面
124c 第2の湾曲面
124d 第2の内隅部
129 タイヤ最大幅位置形成点
PL プロファイルライン