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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172038
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】遠隔制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20240101AFI20241205BHJP
【FI】
G05D1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089458
(22)【出願日】2023-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恭裕
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 和男
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 裕樹
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301FF07
5H301GG08
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】モデルのマッチングによる移動体の位置検出にかかる処理時間を短縮させることができる技術を提供する。
【解決手段】遠隔制御装置は、測距装置を用いて測定された3次元点群データを取得する点群データ取得部と、3次元点群データに対して、移動体を示すテンプレート点群をマッチングさせることによって、3次元点群データにおける移動体の位置及び向きの少なくとも一方を推定する位置推定部と、位置推定部によって3次元点群データに対してテンプレート点群のマッチングが開始される開始位置を決定する開始位置決定部と、推定された移動体の位置及び向きの少なくとも一方を用いて、移動体を遠隔制御するための制御指令を生成して移動体に送信する遠隔制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御装置であって、
測距装置を用いて測定された3次元点群データを取得する点群データ取得部と、
前記3次元点群データに対して、移動体を示すテンプレート点群をマッチングさせることによって、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を推定する位置推定部と、
前記位置推定部によって前記3次元点群データに対して前記テンプレート点群のマッチングが開始される開始位置を決定する開始位置決定部と、
推定された前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を用いて、前記移動体を遠隔制御するための制御指令を生成して前記移動体に送信する遠隔制御部と、を備える、
遠隔制御装置。
【請求項2】
前記開始位置決定部は、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置に関する情報を用いて、前記開始位置を決定する、請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の遠隔制御装置であって
前記開始位置決定部は、
前回に前記3次元点群データと前記テンプレート点群とのマッチングが完了した前回マッチング位置を、前記移動体の位置に関する情報として取得し、
取得された前記前回マッチング位置を用いて、前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、
さらに、前回マッチングが完了した時点から今回マッチングを実行するまでの間に前記前回マッチング位置から移動した前記移動体の移動後の位置を推定し、
推定された前記移動後の位置を用いて前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の遠隔制御装置であって、
さらに、前記移動体の位置に関する情報である前記移動体の目標ルートを格納する記憶装置を備え、
前記開始位置決定部は、前記目標ルートのいずれかの位置を前記開始位置として決定する、
遠隔制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、
前回に前記目標ルートにおいて前記3次元点群データと前記テンプレート点群とのマッチングが完了した前回マッチング位置を取得し、
取得された前記目標ルートにおける前記前回マッチング位置を用いて前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、予め定められた物体検出手法によって前記3次元点群データから検出された前記移動体の位置と、前記3次元点群データの背景に対応する点群データと前記移動体に対応する点群データとの差分により検出された前記移動体の位置とのいずれかを、前記移動体の位置に関する情報として用いて、前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、
前記移動体の位置が複数検出された場合に、
さらに、前記移動体を識別するための移動体識別情報を用いて、検出された複数の前記移動体の位置のうち、前記移動体識別情報に対応する前記移動体の位置を用いて、前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間内の物体の位置を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1では、カメラから取得された入力画像から車両の側面形状を示す2次元の投影像が生成され、生成された投影像に対して、メモリに格納された2次元モデルを、2次元の投影像の先頭位置に位置決めしてから順次に走査され、走査位置ごとにマッチングすることにより、車両の位置を認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-259658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、メモリに格納された2次元モデルを、2次元の投影像の先頭位置に位置決めしてから順次に走査するため、マッチングが完了するまでの時間が長くなるといった問題がある。そのため、メモリに格納されたモデルのマッチングにより移動体の位置を検出する技術において、移動体の位置が検出されるまでの時間を短縮するための技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、遠隔制御装置が提供される。この遠隔制御装置は、測距装置を用いて測定された3次元点群データを取得する点群データ取得部と、前記3次元点群データに対して、移動体を示すテンプレート点群をマッチングさせることによって、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を推定する位置推定部と、前記位置推定部によって前記3次元点群データに対して前記テンプレート点群のマッチングが開始される開始位置を決定する開始位置決定部と、推定された前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を用いて、前記移動体を遠隔制御するための制御指令を生成して前記移動体に送信する遠隔制御部と、を備える。
この形態の遠隔制御装置によれば、マッチングの開始位置を移動体の近傍に決定することにより、移動体の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングによる移動体の位置検出にかかる処理時間を短縮させることができる。
(2)上記形態の遠隔制御装置において、前記開始位置決定部は、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置に関する情報を用いて、前記開始位置を決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、移動体の位置に関する情報を用いて、テンプレートマッチングの開始位置を決定することにより、移動体の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
(3)上記形態の遠隔制御装置において、記開始位置決定部は、前回に前記3次元点群データと前記テンプレート点群とのマッチングが完了した前回マッチング位置を、前記移動体の位置に関する情報として取得してよく、取得された前記前回マッチング位置を用いて、前記開始位置を決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、今回のマッチング時における移動体の位置の近傍である可能性が高い前回マッチング位置を用いることにより、簡易な処理によりテンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
(4)上記形態の遠隔制御装置において、前記開始位置決定部は、さらに、前回マッチングが完了した時点から今回マッチングを実行するまでの間に前記前回マッチング位置から移動した前記移動体の移動後の位置を推定してよく、推定された前記移動後の位置を用いて前記開始位置を決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、移動後の移動体の位置を推定することにより、マッチングの開始位置を、今回のマッチング時における移動体の位置により近い位置に設定することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間をさらに短縮させることができる。
(5)上記形態の遠隔制御装置において、さらに、前記移動体の位置に関する情報である前記移動体の目標ルートを格納する記憶装置を備えてよく、前記開始位置決定部は、前記目標ルートのいずれかの位置を前記開始位置として決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、移動体が存在する可能性が高い目標ルート上の位置を開始位置に設定することにより、移動体の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
(6)上記形態の遠隔制御装置において、前記開始位置決定部は、前回に前記目標ルートにおいて前記3次元点群データと前記テンプレート点群とのマッチングが完了した前回マッチング位置を取得してよく、取得された前記目標ルートにおける前記前回マッチング位置を用いて前記開始位置を決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、移動体が存在する可能性がより高い目標ルート上の前回マッチング位置を用いることにより、移動体の位置をより早期に検出することができる。
(7)上記形態の遠隔制御装置において、前記開始位置決定部は、予め定められた物体検出手法によって前記3次元点群データから検出された前記移動体の位置と、前記3次元点群データの背景に対応する点群データと前記移動体に対応する点群データとの差分により検出された前記移動体の位置とのいずれかを、前記移動体の位置に関する情報として用いて、前記開始位置を決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、物体検出を利用して移動体の暫定位置を抽出することができ、簡易な方法により、移動体の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
(8)上記形態の遠隔制御装置において、前記開始位置決定部は、前記移動体の位置が複数検出された場合に、さらに、前記移動体を識別するための移動体識別情報を用いて、検出された複数の前記移動体の位置のうち、前記移動体識別情報に対応する前記移動体の位置を用いて、前記開始位置を決定してよい。
この形態の遠隔制御装置によれば、物体検出によって複数の移動体の暫定位置が検出された場合であっても、移動体識別情報を用いることにより、制御対象の移動体の位置を抽出することができる。
本開示は、遠隔制御装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、遠隔制御システム、移動体の移動方法、移動体の製造方法、移動体の検出方法、移動体検出装置、遠隔制御システムの制御方法、遠隔制御装置の制御方法、これらの制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】遠隔制御システムの概略構成を示す説明図。
図2】車両の走行方法を模式的に示す説明図。
図3】遠隔制御による車両の走行処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図4】第1実施形態に係る開始位置決定処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図5】前回マッチング位置からの走行後の車両の推定位置を示す説明図。
図6】第2実施形態に係る遠隔制御装置の内部機能性を示すブロック図。
図7】第2実施形態に係る開始位置決定処理を示すフローチャート。
図8】第2実施形態に係る開始位置決定処理におけるテンプレートマッチングを示す説明図。
図9】第3実施形態に係る遠隔制御装置の全体構成の例を上面視で示す説明図。
図10】第3実施形態に係る遠隔制御装置の内部機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の第1実施形態に係る遠隔制御装置300を含む遠隔制御システム500の概略構成を示す説明図である。遠隔制御装置300は、遠隔制御によって車両100を自動走行させるための制御指令を生成して車両100に送信する。遠隔制御システム500は、例えば、遠隔制御によって走行可能な車両100を製造する工場で用いられる。
【0009】
車両100は、例えば、乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである。車両100は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)であることが好ましい。なお、車両100は、電気自動車に限られず、例えば、ガソリン自動車や、ハイブリッド自動車や、燃料電池自動車でもよい。車両100は、車両通信装置190と、アクチュエータ140と、ECU(Electronic Control Unit)200とを備えている。
【0010】
ECU200は、車両100に搭載され、車両100の各種の制御を実行する。ECU200は、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、光記録媒体、半導体メモリ等の記憶装置220と、中央演算処理装置としてのCPU210と、インタフェース回路230とを備えている。CPU210と、記憶装置220と、インタフェース回路230とは、内部バスを介して、双方向に通信可能に接続されている。インタフェース回路230には、アクチュエータ140、車両通信装置190が接続されている。車両通信装置190は、工場内のアクセスポイント等を介して、遠隔制御装置300など、ネットワークに接続された車両100の外部の装置との無線通信を行う。
【0011】
記憶装置220の読み書き可能な領域には、本実施形態において提供される機能の少なくとも一部を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。CPU210がメモリに格納された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、運転制御部212などの機能が実現される。
【0012】
運転制御部212は、車両100の運転制御を実行する。「運転制御」とは、例えば、加速度、速度、ならびに舵角の調整など、車両100の「走る」、「曲がる」、「止まる」の機能を発揮する各アクチュエータ140を駆動させるための種々の制御である。本実施形態では、アクチュエータ140には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する駆動輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。なお、アクチュエータ140には、さらに、車両100のワイパーを揺動させるためのアクチュエータや、車両100のパワーウィンドウを開閉させるためのアクチュエータなどが含まれてもよい。
【0013】
運転制御部212は、車両100に運転者が搭乗している場合に、運転者の操作に応じてアクチュエータ140を制御することにより、車両100を走行させることができる。運転制御部212は、車両100に運転者が搭乗しているか否かにかかわらず、遠隔制御装置300から送信される制御指令に応じてアクチュエータ140を制御することにより、車両100を走行させることもできる。
【0014】
遠隔制御システム500は、遠隔制御装置300とともに、1以上の車両検出器80を備えている。車両検出器80は、車両100の位置と車両100の向きとの少なくともいずれかを推定するために用いられる種々のデータを測定するための装置である。車両検出器80には、車両100の3次元点群データを測定する測距装置であるLiDAR(Light Detection And Ranging)が用いられている。3次元点群データとは、点群の3次元位置を示すデータである。LiDARを用いることにより、高精度の3次元点群データが取得され得る。なお、車両検出器80によって車両100の位置のみを取得し、車両100の経時的な変化等を取得することによって、車両100の向きや走行方向が推定されてもよい。
【0015】
車両検出器80は、遠隔制御装置300と無線通信あるいは有線通信により通信可能に接続されている。遠隔制御装置300は、車両検出器80から3次元点群データを取得することにより、目標ルートRTに対する車両100の相対的な位置および向きをリアルタイムで取得することができる。本実施形態では、車両検出器80の位置は、走行路SRの近傍に固定されており、基準座標系Σrと車両検出器80の装置座標系との相対関係は既知である。基準座標系Σrの座標値と車両検出器80と装置座標系の座標値とを相互に変換するための座標変換行列は、遠隔制御装置300に予め格納されている。
【0016】
遠隔制御装置300は、遠隔制御による車両100の運転制御を実行する。遠隔制御装置300は、例えば、遠隔制御によって車両100を自動走行させることによって、工場内の製造過程における車両100の搬送などを行う。遠隔制御による自動走行を利用した車両100の搬送を、「自走搬送」とも呼ぶ。自走搬送により、クレーンやコンベアなどの搬送装置を用いずに、車両100を移動させることができる。遠隔制御装置300は、さらに、車両100の周囲監視を実行してもよい。
【0017】
遠隔制御装置300は、中央演算処理装置としてのCPU310と、記憶装置340と、インタフェース回路350と、遠隔通信装置390とを備えている。CPU310と、記憶装置340と、インタフェース回路350とは、内部バスを介して、双方向に通信可能に接続されている。インタフェース回路350には、遠隔通信装置390が接続されている。遠隔通信装置390は、ネットワーク等を介して車両100との通信を行う。
【0018】
記憶装置340は、たとえば、RAM、ROM、HDD、およびSSD等である。記憶装置340の読み書き可能な領域には、車両点群データVPと、目標ルートRTと、アクチュエータ駆動履歴ACと、前回マッチング位置BMとが格納されている。目標ルートRTは、予め定められた車両100の走行路SR上の走行経路である。
【0019】
車両点群データVPは、車両100の位置及び向きの少なくとも一方を推定するためのテンプレート点群として機能する。車両点群データVPには、例えば、車両100の3次元CADデータを用いることができる。車両点群データVPには、車両100の向きを特定するための情報が含まれてよい。車両点群データVPを用いたテンプレートマッチングにより、3次元点群データ中の車両100の位置及び向きを高精度で推定することができる。
【0020】
アクチュエータ駆動履歴ACは、車両100の各アクチュエータ140における入出力値の履歴である。アクチュエータ駆動履歴ACは、例えば、遠隔制御装置300から車両100に送信された制御指令値の履歴であってもよく、例えば、車速、舵角、制動力、回転角度などの車両100の検出器から得られた実測値であってもよい。前回マッチング位置BMは、後述するように、位置推定部318によって前回実行された3次元点群データと、車両点群データVPとのテンプレートマッチングが完了した位置の座標値である。
【0021】
記憶装置340には、本実施形態において提供される機能の少なくとも一部を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。記憶装置340に記憶されたコンピュータプログラムがCPU310によって実行されることにより、CPU310は、遠隔制御部312と、点群データ取得部314と、開始位置決定部316と、位置推定部318として機能する。ただし、これらの機能の一部または全部はハードウェア回路によって構成されてもよい。点群データ取得部314は、車両検出器80によって測定された3次元点群データを取得する。
【0022】
開始位置決定部316は、取得された3次元点群データに対して車両点群データVPのマッチングを開始する開始位置を決定する。マッチングを開始する開始位置は、テンプレートマッチングを早期に完了させる観点から、3次元点群データ中の検出対象の車両100の位置、あるいはその近傍の位置であることが好ましい。
【0023】
本実施形態では、開始位置決定部316は、3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報を用いて、テンプレートマッチングの開始位置を決定する。「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」とは、3次元点群データ中の車両100の位置、あるいはその近傍の位置を推定するために利用されるデータである。「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」は、テンプレートマッチングとは異なる方法によって取得され、テンプレートマッチングを実行する前の処理で利用される。「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」は、テンプレートマッチングの処理速度を速めるために、小さい容量のデータ、あるいは簡易な処理によって得られるデータ等であることが好ましい。
【0024】
位置推定部318は、取得された3次元点群データ中における車両100の位置及び向きを推定する。本実施形態では、位置推定部318は、3次元点群データに対して車両点群データVPを用いたテンプレートマッチングを実行することによって、3次元点群データ中における車両100の位置及び向きを推定する。3次元点群データに対する車両点群データVPのテンプレートマッチングには、例えば、ICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムや、NDT(Normal Distribution Transform)アルゴリズムなどを利用することができる。
【0025】
遠隔制御部312は、推定された車両100の位置及び向きを用いて、遠隔制御のための制御指令を生成して車両100に送信する。この制御指令は、記憶装置340に格納された目標ルートRTに従って車両100を走行させる指令である。制御指令は、駆動力又は制動力と、舵角とを含む指令として生成することができる。あるいは、制御指令を、車両100の位置及び向きの少なくとも一方と、今後の走行ルートとを含む指令として生成してもよい。車両100が遠隔制御の要求を受信すると、ECU200の運転制御部212によって運転制御が実現され、この結果、車両100が自動的に走行する。
【0026】
図2は、車両100の走行方法を模式的に示す説明図である。図2には、車両100を製造する工場FCにおいて、車両100の自走搬送が実行される様子が示されている。工場FCは、第一工程50と第二工程60とを備えている。第一工程50は、例えば、車両100の組み立てが実施される場所であり、第二工程60は、例えば、車両100の検査が実施される場所である。第一工程50と第二工程60とは、車両100が走行可能な走行路SRによって接続されている。工場FC内の任意の位置は、基準座標系Σrのxyz座標値で表現される。
【0027】
遠隔制御装置300は、車両検出器80によって取得される3次元点群データ中の車両100の位置及び向きを所定の時間間隔で推定しながら、車両100を目標ルートRTに沿って走行させる。図3の例では、走行路SRに設定された目標ルートRTは、互いに連続する目標ルートRT1,RT2,RT3を含んでいる。走行路SRの周囲には、目標ルートRT1,RT2,RT3それぞれに対応する車両検出器80A,80B,80Cを含む複数の車両検出器80が設置されている。
【0028】
遠隔制御装置300は、車両100の位置に応じて適宜に車両検出器80を切り替えて車両100の位置及び向きを推定し、車両100を目標ルートRTに沿って走行させる。図3の例では、第一工程50を出発した車両100は、車両検出器80Aによって取得される3次元点群データを用いた遠隔制御によって目標ルートRT1に沿って走行する。車両100が目標ルートRT2に到達すると、車両検出器80Aは、目標ルートRT2を走行する車両100の検出に好適な車両検出器80Bへと切り替えられる。車両100が目標ルートRT3に到達すると、同様に、車両検出器80Bは、車両100の検出に好適な車両検出器80Cへと切り替えられる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る遠隔制御による車両100の走行処理における処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、車両100が走行路SRの走行を開始することによって開始される。本フローは、点群データ取得部314が、制御対象となる車両100の測定を担当する車両検出器80から3次元点群データを新たに取得するたびに繰り返し実行され得る。
【0030】
ステップS100では、点群データ取得部314は、車両検出器80から3次元点群データを取得する。ステップS200では、開始位置決定部316は、開始位置決定処理を実行する。「開始位置決定処理」とは、取得された3次元点群データに対して車両点群データVPのマッチングを開始する開始位置を決定する処理である。
【0031】
ステップS300では、開始位置決定処理により決定された開始位置からテンプレートマッチングが開始される。開始位置で車両点群データVPとのマッチングが完了できない場合には、開始位置を起点とするその周囲などを順次にマッチングする。テンプレートマッチングは、完了するまでマッチング位置を変えながら繰り返し実行される。ステップS400では、位置推定部318は、車両点群データVPを用いたテンプレートマッチングを実行することによって、3次元点群データ中における車両100の位置及び向きを推定する。ステップS500では、遠隔制御部312は、推定された車両100の位置及び向きを用いて、目標ルートRTに従って車両100を走行させる制御指令を生成して車両100に送信する。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る開始位置決定処理の処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本実施形態では、「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」として、前回のマッチング結果があるか否かに応じて、前回に3次元点群データと車両点群データVPとのマッチングが完了した前回マッチング位置BMと、車両100の目標ルートRTとのいずれかが選択的に用いられる。
【0033】
ステップS210では、開始位置決定部316は、前回のテンプレートマッチングによるマッチング結果があるか否かを確認する。前回のマッチング結果があるか否かは、例えば、記憶装置340に記憶された処理履歴に前回のマッチング結果が格納されているか否か、あるいは記憶装置340に前回マッチング位置BMが格納されているか否か等によって、確認することができる。
【0034】
前回のマッチング結果がない場合には(S210:NO)、開始位置決定部316は、処理をステップS250に移行する。この場合には、「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」として、車両100の目標ルートRTが用いられる。ステップS250では、開始位置決定部316は、記憶装置340に格納された目標ルートRTを取得する。
【0035】
ステップS260では、目標ルートRTにおける車両100の走行開始位置を取得する。目標ルートRTにおける車両100の走行開始位置は、例えば、目標ルートRTに対応付けられて記憶装置340に予め格納されている。図2の例では、車両100の走行開始位置は、第一工程50の出口近傍である。
【0036】
ステップS270では、開始位置決定部316は、テンプレートマッチングの開始位置を、取得された目標ルートRTの走行開始位置に決定して、本フローを終了する。前回のマッチング結果がない場合には、車両100の走行が開始されておらず、車両100が走行開始位置に存在している可能性が高い。したがって、前回のマッチング結果がない場合には、目標ルートRTにおける車両100の走行開始位置を開始位置に設定することにより、テンプレートマッチングの処理時間を速めることができる。
【0037】
ステップS210において、前回のマッチング結果がある場合には(S210:YES)、開始位置決定部316は、処理をステップS220に移行する。この場合には、「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」として、前回に3次元点群データと車両点群データVPとのマッチングが完了した前回マッチング位置BMが用いられる。また、本実施形態では、さらに、前回マッチング位置BMを用いて、今回マッチングを実行する時点における車両100の走行後の位置を推定し、当該走行後の位置が「3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報」として用いられる。
【0038】
ステップS220では、開始位置決定部316は、車両100のアクチュエータ駆動履歴ACを取得する。取得するアクチュエータ駆動履歴ACは、少なくとも前回マッチングが完了した時点から今回マッチングを実行するまでの車両100の走行に関するアクチュエータ140の駆動履歴が含まれている。ステップS230では、開始位置決定部316は、前回マッチングが完了された時点から今回マッチングを実行するまでの間に走行した車両100の走行後の位置を推定する。具体的には、開始位置決定部316は、アクチュエータ140の駆動履歴を用いて、前回マッチング位置BMからの走行経路を推定することにより、走行後の車両100の位置を推定する。ステップS240では、開始位置決定部316は、走行後の車両100の推定位置を、テンプレートマッチングの開始位置に決定して、本フローを終了する。
【0039】
図5は、前回マッチング位置からの走行後の車両100の推定位置を示す説明図である。図5には、車両検出器80から取得された3次元点群データPD1の例が示されている。3次元点群データPD1には、前回マッチング位置BMの一例としての前回マッチング時の車両100の位置BM1と、前回マッチング位置から走行経路ARを走行した後の車両100の位置AMとが模式的に示されている。
【0040】
車両100の走行後の位置AMは、例えば、前回マッチング時の位置BM1を始点として、アクチュエータ駆動履歴ACから得られる車両100の走行経路ARあるいは位置AMを推定することによって取得することができる。他の実施形態としては、開始位置決定部316は、アクチュエータ駆動履歴ACに代えて、車速、舵角、制動力、回転角度などを取得する検出器の出力値から車両100の走行経路ARあるいは位置AMが推定されてもよい。あるいは、車両100の走行後の位置は、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)受信機などから取得された車両100の現在位置を、走行後の車両100の位置AMとして用いられてもよい。
【0041】
開始位置決定部316は、推定された走行後の車両100の位置AMを、テンプレートマッチングの開始位置に決定し、位置推定部318は、車両点群データVPを用いたテンプレートマッチングを位置AMから開始する。車両100の走行後の位置AMをテンプレートマッチングの開始位置とすることにより、車両100の実際の位置あるいはその近傍を開始位置とすることができる。したがって、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。また、位置AMから離れた位置でテンプレートマッチングが開始される場合と比較して、勾配降下法などによる局所解に陥ることで実際の車両100の位置とは異なる位置でマッチングが完了してしまう不具合を抑制でき、車両100の検出精度を向上させることができる。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態の遠隔制御装置300は、車両検出器80を用いて測定された3次元点群データを取得する点群データ取得部314と、3次元点群データに対して車両点群データVPをマッチングさせることによって3次元点群データにおける車両100の位置及び向きを推定する位置推定部318と、位置推定部318によって3次元点群データに対してテンプレートマッチングが開始される開始位置を決定する開始位置決定部316と、推定された車両100の位置及び向きを用いて、車両100を遠隔制御するための制御指令を生成して車両100に送信する遠隔制御部312と、を備えている。本実施形態の遠隔制御装置300によれば、マッチングの開始位置を車両100の近傍に設定することにより、車両100の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
【0043】
本実施形態の遠隔制御装置300によれば、開始位置決定部316は、点群データ取得部314によって取得された3次元点群データにおける車両100の位置に関する情報を用いて、開始位置を決定する。車両100の位置に関する情報を用いて、テンプレートマッチングの開始位置を車両100の位置に設定することにより、車両100の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
【0044】
本実施形態の遠隔制御装置300によれば、開始位置決定部316は、前回マッチング位置BMを取得し、取得された前回マッチング位置BMを用いて、テンプレートマッチングの開始位置を決定する。今回のマッチング時における車両100の位置の近傍である可能性が高い前回マッチング位置BMを用いることにより、簡易な処理によりテンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
【0045】
本実施形態の遠隔制御装置300によれば、開始位置決定部316は、さらに、前回マッチングが完了した時点から今回マッチングを実行するまでの間に前回マッチング位置BMから走行した車両100の走行後の位置AMを推定し、推定された走行後の位置AMをテンプレートマッチングの開始位置として決定する。走行後の車両100の位置を推定することにより、マッチングの開始位置を、今回のマッチング時における車両100の位置により近い位置に設定することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間をさらに短縮させることができる。
【0046】
本実施形態の遠隔制御装置300によれば、前回のマッチング結果がない場合には、開始位置決定部316は、目標ルートRTの走行開始位置を、テンプレートマッチングの開始位置として決定する。車両100が存在する可能性が高い目標ルートRT上を開始位置に設定することにより、車両100の位置を早期に検出することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。特に、前回のマッチング結果がない場合には、車両100が存在する可能性が高い走行開始位置を開始位置に設定することにより、テンプレートマッチングにかかる処理時間をより短縮させることができる。
【0047】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態に係る遠隔制御装置300bの内部機能性を示すブロック図である。本実施形態の遠隔制御装置300bは、第1実施形態の遠隔制御装置300とは、CPU310に代えて、さらに物体検出部322として機能するCPU310bを備える点と、記憶装置340に代えて、さらに車両識別情報VIおよび学習済みモデルLMを格納した記憶装置340bを備える点とにおいて相違し、それ以外の構成は同様である。
【0048】
学習済みモデルLMは、予め定められた深層学習を利用した物体検出手法により物体検出を行う機械学習モデルである。学習済みモデルLMは、所定のデータセットを用いて充分に学習済みである。学習済みモデルLMには、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いた種々の手法を用いることができる。物体検出には、特に、R-CNN(Region-Convolutional Neural Networks)、Fast R-CNN、Faster R-CNN、YOKO(You Only Lock Once)の各バージョン、SSD(Single Shot Detector)などの深層学習を利用した手法が好適である。
【0049】
物体検出部322は、学習済みモデルLMを用いて、3次元点群データのアノテーション(Annotation)を実行して、3次元点群データ中の車両の暫定位置を検出する。この場合の「車両」とは、属性(クラス)としての車両を意味し、制御対象となる車両100以外の車両も含まれ得る。具体的には、物体検出部322は、検出された3次元点群データを学習済みモデルLMに入力して物体検出を実行して、車両と認識された領域に対して、3Dバウンディングボックス(Bounding Box)を生成する。「バウンディングボックス」とは、車両の物体領域を最小の直方体で囲うことによって3次元点群データの外部領域から抽出された部分領域を意味する。すなわち、物体検出部322は、バウンディングボックスの形成により、3次元点群データ中において車両が占有する領域を抽出する。
【0050】
車両識別情報VIは、車両100それぞれを識別可能な種々の情報を意味する。車両識別情報VIには、例えば、車両識別番号(VIN:Vehicle Identification Number)などの車両100ごとに与えられるID情報や、車種・色・形状・大きさなどの車両100の仕様情報、仕掛かり中の工程の名称などの車両100の生産管理情報などが含まれる。車両識別情報VIには、検出され得るバウンディングボックスのサイズが含まれてもよい。車両識別情報VIは、例えば、車両100に付されたRF-ID(Radio Frequency-Identification:無線移動識別)タグ等から短距離無線通信などを介して取得することができる。
【0051】
図7は、第2実施形態に係る開始位置決定処理を示すフローチャートである。ステップS600では、物体検出部322は、取得された3次元点群データを用いて物体検出を行い、3次元点群データ中の車両100の暫定位置を取得する。より具体的には、物体検出部322は、取得された3次元点群データを学習済みモデルLMに入力することにより、3次元点群データ中に車両のバウンディングボックスを生成する。
【0052】
ステップS610では、物体検出部322は、制御対象となる車両100の車両識別情報VIを取得する。ステップS620では、物体検出部322は、車両識別情報VIを用いて、制御対象となる車両100に対応するバウンディングボックスを抽出する。物体検出部322は、例えば、制御対象となる車両100の車両識別情報VIに対応付けられたバウンディングボックスのサイズあるいは車両100のサイズと一致するバウンディングボックスを、生成されたバウンディングボックスから抽出する。バウンディングボックスのサイズや車両100のサイズに変えて、車両100の一部あるいは全部の形状、車両100の一部あるいは全部の長さ・車幅・高さなどの車両識別情報VIが用いられてもよい。ステップS630では、開始位置決定部316は、抽出されたバウンディングボックスの位置を、テンプレートマッチングの開始位置に決定して、本フローを終了する。
【0053】
図8は、第2実施形態に係る開始位置決定処理におけるテンプレートマッチングを示す説明図である。図8には、車両検出器80から取得された3次元点群データPD2の例が示されている。3次元点群データPD2には、制御対象である車両100の3次元点群データと、制御対象ではない車両100Rの3次元点群データとが含まれている。物体検出部322は、3次元点群データPD2を学習済みモデルLMに入力することにより、車両として認識された車両100および車両100Rそれぞれに対して、バウンディングボックスBB1,BB2を生成する。
【0054】
次に、物体検出部322は、車両識別情報VIを取得する。この場合の車両識別情報VIとは、サイズの異なる車両100,100Rの区別に便宜な情報として、例えば、車両100,100Rの大きさや幅、あるいはバウンディングボックスのサイズに関する情報であることが好ましい。取得された車両識別情報VIから、バウンディングボックスBB1,BB2のうち、車両100のバウンディングボックスBB1が抽出される。開始位置決定部316は、抽出されたバウンディングボックスBB1の位置を、テンプレートマッチングの開始位置に決定し、位置推定部318は、開始位置としてのバウンディングボックスBB1の位置から、車両点群データVPを用いたテンプレートマッチングを開始する。
【0055】
以上のように、本実施形態の遠隔制御装置300bによれば、開始位置決定部316は、予め定められた深層学習を利用した物体検出手法によって3次元点群データPD2から検出された車両100の位置を、開始位置として決定する。深層学習を利用した物体検出という既知の手法を利用して3次元点群データPD2から車両100の位置を抽出することができる。また、3次元点群データPD2中の車両100の位置を用いることにより、開始位置を車両100の近傍に設定することができ、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
【0056】
本実施形態の遠隔制御装置300bによれば、開始位置決定部316は、複数の車両100,100Rの位置が検出された場合に、さらに、車両100を識別するための車両識別情報VIを用いて、検出された複数の車両100の位置のうち、車両識別情報VIに対応する車両100の位置を用いて、開始位置を決定する。したがって、深層学習を利用した物体検出手法によって複数の車両100,100Rが検出された場合であっても制御対象の車両100の位置を抽出することができる。
【0057】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態に係る遠隔制御装置300cの全体構成の例を上面視で示す説明図である。本実施形態の遠隔制御装置300cは、いわゆるガイドモビリティとも呼ばれる無人搬送車両である。遠隔制御装置300cは、第1実施形態と同様に遠隔制御によって車両100を自動走行させる機能を備えるとともに、遠隔制御装置300cの本体を走行路SR上で自動走行させる機能を備えている。すなわち、遠隔制御装置300cは、走行路SRを自動で走行しながら、遠隔制御によって後続の車両100を自動走行させて誘導する。
【0058】
遠隔制御装置300cは、自走用の駆動輪142と、自走用検出器70と、車両検出器80とを備えている。車両検出器80の機能は、第1実施形態で示した車両検出器80と同様であるので説明を省略する。自走用検出器70は、カメラやLiDARなどの測距装置である。自走用検出器70によって取得されたデータは、遠隔制御装置300cが自動走行するための自己位置推定および環境地図作成の同時実行(SLAM:Simultaneous Localization and Mapping)に利用される。カメラには、ステレオカメラや単眼カメラ、RGB-Dカメラ(深度カメラ)などのカメラが利用され得る。カメラやLiDARに代えて、ToFセンサなどが用いられてもよい。なお、図9の例では、車両検出器80は、遠隔制御装置300cに搭載されるもののみであるが、さらに、走行路SRの周囲に設置されてもよい。
【0059】
図10は、第3実施形態に係る遠隔制御装置300cの内部機能構成を示すブロック図である。遠隔制御装置300cの内部機能構成は、第1実施形態の遠隔制御装置300とは、CPU310に代えて、さらにSLAM部328および自動運転制御部330として機能するCPU310cを備える点と、記憶装置340に代えて、さらにガイド車両ルートGRが格納されている記憶装置340cを備える点とにおいて相違し、それ以外は同様である。ガイド車両ルートGRは、遠隔制御装置300cが走行すべき予め定められた目標ルートである。
【0060】
アクチュエータ360は、遠隔制御装置300cの自動走行用の駆動装置、操舵装置、および制動装置それぞれのアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および走行用モータにより回転する駆動輪142が含まれる。
【0061】
SLAM部328は、自走用検出器70が検出したデータを用いたSLAMを実行して、遠隔制御装置300cの自動走行用のマップの生成等を実行する。自動運転制御部330は、アクチュエータ360を制御することにより、遠隔制御装置300cを自動走行させる。具体的には、自動運転制御部330は、SLAM部328によって生成されたマップを用いて、記憶装置340cに格納されたガイド車両ルートGRに従って遠隔制御装置300cを自動走行させる。
【0062】
図9に示すように、遠隔制御装置300cがガイド車両ルートGRに沿って走行すると、車両100は遠隔制御装置300cの遠隔制御によって誘導されて、遠隔制御装置300cと同様の走行経路を走行する。本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、車両検出器80から取得された3次元点群データに対するテンプレートマッチングが行われ、開始位置決定部316は、テンプレートマッチングの開始位置を決定するための開始位置決定処理を実行する。このように、本実施形態のように、自動走行する遠隔制御装置300cにおいても第1実施形態と同様に、車両100の位置に関する情報を用いて、テンプレートマッチングの開始位置を、車両100の近傍に設定することにより、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
【0063】
D.他の実施形態:
(D1)上記第2実施形態では、深層学習を利用した物体検出手法によって車両のバウンディングボックスを生成し、生成されたバウンディングボックスを利用して抽出された車両100の位置を開始位置として決定する例を示した。これに対して、物体検出部322は、バウンディングボックスの生成に代えて、取得された3次元点群データから、静止物を表す背景点群データを除去する前処理を実行するようにしてもよい。当該前処理は、「背景差分処理」とも呼ばれる。この場合には、開始位置決定部316は、3次元点群データの背景に対応する点群データと、検出対象としての車両100に対応する点群データとの差分により検出された車両100の暫定位置を、テンプレートマッチングの開始位置として決定する。このように構成された遠隔制御装置300によれば、背景差分という簡易な処理により開始位置を決定することができる。
【0064】
(D2)上記第1実施形態では、前回のマッチング結果がない場合には、開始位置決定部316が目標ルートRTにおける車両100の走行開始位置を開始位置に設定する例を示した。これに対して、開始位置決定部316は、前回のマッチング結果の有無にかかわらず、目標ルートRTにおける車両100の走行開始位置を開始位置に設定してもよい。また、目標ルートRTの走行開始位置に代えて、目標ルートRTのいずれかの位置を開始位置として決定してもよい。この場合には、図4で示したステップS260を省略することができる。この形態の遠隔制御装置300によれば、車両100が存在する可能性が高い目標ルートRT上を開始位置とすることにより、テンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。この場合において、開始位置で車両100が検出できなかった場合には、目標ルートRTに沿ってテンプレートマッチングが実行されることが好ましい。
【0065】
また、開始位置決定部316は、前回に目標ルートRTにおける前回マッチング位置BMを取得し、取得された目標ルートRTにおける前回マッチング位置BMを用いて開始位置を決定してもよい。この形態の遠隔制御装置300によれば、車両100が存在する可能性がより高い目標ルートRT上の前回マッチング位置BMを用いることにより、簡易な方法でテンプレートマッチングにかかる処理時間をより短縮させることができる。
【0066】
(D3)上記各実施形態では、車両100が乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである例を示した。ただし、車両100は、これらに限らず、二輪車、四輪車などの種々の自動車や電車などを含んでもよい。また、車両100以外の種々の移動体であってもよい。「移動体」とは、移動し得る物体を意味する。移動体は、例えば、電動垂直離着陸機(いわゆる空飛ぶ自動車)、船舶、航空機、ロボット、リニアモーターカーなどが含まれる。この場合には、本開示における「車両」「車」との表現を、適宜に「移動体」に置き換えることができ、「走行」との表現を、適宜に「移動」に置き換えることができる。
【0067】
(D4)車両100は、遠隔制御により移動可能な構成を備えていればよい。例えば、以下に述べる構成を備えるプラットフォームの形態であってもよい。具体的には、車両100は、遠隔制御により「走る」、「曲がる」、「止まる」の機能を発揮するため構成を備えていればよい。すなわち、「遠隔制御により移動可能な車両100」とは、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、バンパーやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、ボディシェルが装着されていなくてもよい。この場合、車両100が工場から出荷されるまでの間に、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよく、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されていない状態で、車両100が工場から出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよい。
【0068】
(D5)上記第1実施形態では、開始位置決定部316がさらに、前回マッチング位置BMから走行した車両100の走行後の位置AMを推定する例を示した。これに対して、開始位置は、走行後の位置AM以外の位置であってよく、例えば、前回マッチング位置BMを用いてもよい。車両100の位置の近傍である可能性が高い前回マッチング位置BMを用いることにより、簡易な処理によりテンプレートマッチングにかかる処理時間を短縮させることができる。
【0069】
(D6)上記第1実施形態では、開始位置決定部316が前回マッチング位置BMを用いて開始位置を決定する例、ならびに目標ルートRTのいずれかの位置を開始位置として決定する例を示した。これに対して、開始位置決定部316は、前回マッチング位置BM以外の位置や、目標ルートRTとは異なる位置を開始位置として決定してもよい。例えば、開始位置決定部316は、車両検出器80とは異なる検出器による検出結果から取得された車両100の暫定位置を開始位置として決定してもよい。
【0070】
(D7)上記第3実施形態では、物体検出部322が、車両識別情報VIを用いて、制御対象となる車両100を抽出する例を示した。これに対して、例えば、ステップS600で単数のバウンディングボックスが生成されている場合、すなわち制御対象の車両100のみのバウンディングボックスが生成されている場合には、車両識別情報VIが用いられなくてもよい。また、車両100の位置などの車両識別情報VI以外の情報を用いて制御対象の車両100を抽出できるような場合も、物体検出部322は、車両識別情報VIを取得しなくてもよい。これの場合には、図7で示したステップS610,S620は省略されてよい。
【0071】
本開示に記載の制御及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0072】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
50…第一工程、60…第二工程、70…自走用検出器、80,80A,80B,80C…車両検出器、100,100R…車両、140…アクチュエータ、142…駆動輪、190…車両通信装置、200…ECU、210…CPU、212…運転制御部、220…記憶装置、230…インタフェース回路、300,300b,300c…遠隔制御装置、310,310b,310c…CPU、312…遠隔制御部、314…点群データ取得部、316…開始位置決定部、318…位置推定部、322…物体検出部、328…SLAM部、330…自動運転制御部、340,340b,340c…記憶装置、350…インタフェース回路、360…アクチュエータ、390…遠隔通信装置、500…遠隔制御システム、AC…アクチュエータ駆動履歴、AM…位置、AR…走行経路、BB1,BB2…バウンディングボックス、BM,BM1…前回マッチング位置、FC…工場、GR…ガイド車両ルート、LM…モデル、PD1,PD2…3次元点群データ、RT,RT1,RT2,RT3…目標ルート、SR…走行路、VI…車両識別情報、VP…車両点群データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御装置であって、
測距装置を用いて測定された3次元点群データを取得する点群データ取得部と、
前記3次元点群データに対して、移動体を示すテンプレート点群をマッチングさせることによって、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を推定する位置推定部と、
前記位置推定部によって前記3次元点群データに対して前記テンプレート点群のマッチングが開始される開始位置を決定する開始位置決定部と、
推定された前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を用いて、前記移動体を遠隔制御するための制御指令を生成して前記移動体に送信する遠隔制御部と、を備え、
前記開始位置決定部は、前記マッチングに用いられた位置に関する情報および前記制御指令に含まれる情報のうち前記移動体に設けられるアクチュエータの駆動履歴に関する情報と、前記制御指令を生成するために用いられる前記移動体の位置及び向きと、前記遠隔制御による前記移動体の移動経路として予め定められた目標ルートとのうち少なくともいずれか一つの情報を用いて前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項2】
前記開始位置決定部は、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置に関する情報を用いて、前記開始位置を決定する、請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の遠隔制御装置であって
前記開始位置決定部は、
前回に前記3次元点群データと前記テンプレート点群とのマッチングが完了した前回マッチング位置を、前記移動体の位置に関する情報として取得し、
取得された前記前回マッチング位置を用いて、前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、
さらに、前回マッチングが完了した時点から今回マッチングを実行するまでの間に前記前回マッチング位置から移動した前記移動体の移動後の位置を推定し、
推定された前記移動後の位置を用いて前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の遠隔制御装置であって、
さらに、前記移動体の位置に関する情報である前記目標ルートを格納する記憶装置を備え、
前記開始位置決定部は、前記目標ルートのいずれかの位置を前記開始位置として決定する、
遠隔制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、
前回に前記目標ルートにおいて前記3次元点群データと前記テンプレート点群とのマッチングが完了した前回マッチング位置を取得し、
取得された前記目標ルートにおける前記前回マッチング位置を用いて前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、予め定められた物体検出手法によって前記3次元点群データから検出された前記移動体の位置と、前記3次元点群データの背景に対応する点群データと前記移動体に対応する点群データとの差分により検出された前記移動体の位置とのいずれかを、前記移動体の位置に関する情報として用いて、前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の遠隔制御装置であって、
前記開始位置決定部は、
前記移動体の位置が複数検出された場合に、
さらに、前記移動体を識別するための移動体識別情報を用いて、検出された複数の前記移動体の位置のうち、前記移動体識別情報に対応する前記移動体の位置を用いて、前記開始位置を決定する、
遠隔制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]
本開示の一形態によれば、遠隔制御装置が提供される。この遠隔制御装置は、測距装置を用いて測定された3次元点群データを取得する点群データ取得部と、前記3次元点群データに対して、移動体を示すテンプレート点群をマッチングさせることによって、前記3次元点群データにおける前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を推定する位置推定部と、前記位置推定部によって前記3次元点群データに対して前記テンプレート点群のマッチングが開始される開始位置を決定する開始位置決定部と、推定された前記移動体の位置及び向きの少なくとも一方を用いて、前記移動体を遠隔制御するための制御指令を生成して前記移動体に送信する遠隔制御部と、を備える。前記開始位置決定部は、前記マッチングに用いられた位置に関する情報および前記制御指令に含まれる情報のうち前記移動体に設けられるアクチュエータの駆動履歴に関する情報と、前記制御指令を生成するために用いられる前記移動体の位置及び向きと、前記遠隔制御による前記移動体の移動経路として予め定められた目標ルートとのうち少なくともいずれか一つの情報を用いて前記開始位置を決定する。