IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用アンダーカバー 図1
  • 特開-車両用アンダーカバー 図2
  • 特開-車両用アンダーカバー 図3
  • 特開-車両用アンダーカバー 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172045
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両用アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089468
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】生駒 恭平
(72)【発明者】
【氏名】武田 数馬
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正喜
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203BB04
3D203BC10
3D203DA22
3D203DB05
3D203DB07
(57)【要約】
【課題】空気抵抗を増大させることなく排気・排水機能を高めることが可能な車両用アンダーカバーを提供する。
【解決手段】車両用アンダーカバー100は、電気自動車102のフロア下に配置されたモータ108の側面および下面をそれぞれ覆う側壁100Aおよび下壁100Bを備える。アンダーカバー100はさらに、側壁100Aに上下方向にわたって窪むように形成された複数の凹部120と、複数の凹部120の各々の前面に上下方向にわたって開口したスリット130とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア下に配置された駆動装置の側面および下面をそれぞれ覆う側壁および下壁を備える車両用アンダーカバーにおいて、当該車両用アンダーカバーはさらに、
前記側壁に上下方向にわたって窪むように形成された複数の凹部と、
前記複数の凹部の各々の前面に上下方向にわたって開口したスリットとを備えることを特徴とする車両用アンダーカバー。
【請求項2】
前記凹部は、側面視において、下方にゆくほど前後方向の寸法が増す台形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用アンダーカバー。
【請求項3】
前記側壁は、下方にゆくほど車幅方向内側にゆくよう傾斜していて、さらに下端近傍では下端に向かうほど車幅方向外側にゆくよう傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンダーカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車体の下側を覆うアンダーカバーを開示していて、アンダーカバーの下面に水抜き孔が設けられている。車両走行中にアンダーカバーの下を流れる空気は、この水抜き孔を通ってアンダーカバー内へ流れ込み難く、むしろアンダーカバー内の空気が車両走行中に水抜き孔を通って下へ吸い出される傾向となるので、アンダーカバー内に水などが浸入し難くなり、かつ高い排水効率が得られる、と特許文献1は述べている。
【0003】
一方、例えば電気自動車(EV; Electric Vehicle)の場合、車両後部のフロア下に駆動装置であるモータが設けられ、これがアンダーカバーで下側から覆われて保護される。EV車が水たまりなどを走行したときには、アンダーカバー内に水が入ってしまうため、モータを保護する観点からも、EV車においてアンダーカバーの排気・排水機能をより高めることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-18852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアンダーカバーに設けられた水抜き孔は、車両走行中の空気抵抗を生じる可能性があり、空気抵抗を低減するというアンダーカバーの本来の効果が損なわれるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み、空気抵抗を増大させることなく排気・排水機能を高めることが可能な車両用アンダーカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両のフロア下に配置された駆動装置の側面および下面をそれぞれ覆う側壁および下壁を備える車両用アンダーカバーにおいて、当該車両用アンダーカバーはさらに、側壁に上下方向にわたって窪むように形成された複数の凹部と、複数の凹部の各々の前面に上下方向にわたって開口したスリットとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空気抵抗を増大させることなく排気・排水機能を高めることが可能な車両用アンダーカバーを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による車両用アンダーカバーの実施例を適用した車両の底面図である。
図2図1のアンダーカバーを矢印Zの方向から見た矢視図である。
図3図2のアンダーカバーのA-A断面図である。
図4図2のアンダーカバーのB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態は、車両のフロア下に配置された駆動装置の側面および下面をそれぞれ覆う側壁および下壁を備える車両用アンダーカバーにおいて、当該車両用アンダーカバーはさらに、側壁に上下方向にわたって窪むように形成された複数の凹部と、複数の凹部の各々の前面に上下方向にわたって開口したスリットとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、各スリットは、アンダーカバーの側壁の各凹部の前面に、車両後方に向かって開口することとなる。走行中にアンダーカバーの車幅方向外側には風が流れて負圧を生じることから、アンダーカバー内の空気も上記のスリットを通して積極的に吸い出される。これによって効率的に排気を行うことができる。またアンダーカバー内に浸入した水も、上記の負圧によってスリットを通して効率的に排水できる。
【0012】
また本発明によれば、車両走行中にアンダーカバーの外側から内側へ水が浸入することも防止されている。すなわちスリットは車両後方に向かって開口しているので、車両走行中にアンダーカバー外を車両後方に向かって流れる水・空気が入り難い構造となっている。
【0013】
以上のように本発明によれば、アンダーカバーの排水・排気機能が高まり、アンダーカバーの換気・排熱ができ、アンダーカバーで覆われた駆動装置の被水が回避される。
【0014】
他方、本発明による各スリットは、アンダーカバーの側壁の各凹部の前面に開口していて、車両後方に向かって開口しているものである。したがって、例えばアンダーカバーの下壁に設けられた水抜き孔に比較すると、本発明による各スリットが生じる空気抵抗は格段に小さくなる。
【0015】
上記の凹部は、側面視において、下方にゆくほど前後方向の寸法が増す台形状であるとよい。
【0016】
上記構成によれば、スリットは下方にゆくほど前方にゆくよう傾斜した姿勢で車両後方を向いて開口する。かかるスリットの姿勢により、走行中にアンダーカバー内へ水が浸入することや異物が侵入することを、より低減することができる。
【0017】
上記の側壁は、下方にゆくほど車幅方向内側にゆくよう傾斜していて、さらに下端近傍では下端に向かうほど車幅方向外側にゆくよう傾斜しているとよい。
【0018】
上記構成によれば、アンダーカバーの側壁のうち、下方にゆくほど車幅方向内側にゆくよう傾斜した部位によって、付着した泥や雪等が落下しやすくなる。またアンダーカバーの側壁のうち、下端近傍の、下端に向かうほど車幅方向外側にゆくよう傾斜している部位によって、アンダーカバーの下壁の面積が拡大されるため、空力性能の低下を低減することができる。
【実施例0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明による車両用アンダーカバーの実施例を適用した車両の底面図である。図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
【0021】
(アンダーカバー)
図1に示すように、本実施例に係るアンダーカバー100は、電気自動車(EV; Electric Vehicle)102に適用されたものである。図1は電気自動車102の左後輪(図示省略)を覆うホイールアーチ104の付近を下から見た図である。電気自動車102は、車両前後方向における中央部のフロア下にバッテリー106を搭載している。
【0022】
アンダーカバー100は、車両後部のフロア下に配置されたモータ(駆動装置)108の側面および下面をそれぞれ覆う側壁100Aおよび下壁100Bを備えている。下壁100Bの前端および後端は、それぞれ、バッテリー106の下面およびリアバンパ110の下面に一部が重なっていて、これらと実質的に連続した構造になっている。
【0023】
図2図1のアンダーカバー100を矢印Zの方向から見た矢視図である。アンダーカバー100の側壁100Aは、車両前後方向の途中で一旦途絶えている。図1に示したように、アンダーカバー100は、側壁100Aが途絶えた箇所よりも後方でモータ108を覆っている一方、その前方ではサスペンション装置(図示省略)を覆っている。
【0024】
アンダーカバー100は、側壁100Aを含む左右両側の側壁によってモータ108の両側を覆っているが、2つの側壁は同様の構成を有するため、以下、アンダーカバー100の特徴を、その左側の側壁100Aを代表して用いて説明する。
【0025】
(凹部)
図3図2のアンダーカバー100のA-A断面図である。図2および図3に示すように、アンダーカバー100は、側壁100Aに上下方向にわたって窪むように形成された複数の凹部を備える。なお複数の凹部は同様の構成を有するため、代表して凹部120を用いて説明を行う。
【0026】
図2に示す側面視において、凹部120は、下方にゆくほど前後方向の寸法が増す台形状になっている。なお下方にゆくほど前後方向の寸法が増す形状であれば、三角形状その他の形状でもよく、台形状に限るものではない。
【0027】
(スリット)
図3に示すように、アンダーカバー100は、凹部120の前面に上下方向にわたって開口したスリット130を備える。このように凹部120の前面に開口したスリット130は、必然的に、車両後方に向かって開口している。
【0028】
電気自動車の走行中、アンダーカバー100の車幅方向外側には、矢印132で示すように風が流れて負圧を生じる。そのため、アンダーカバー100内の空気も矢印134で示すようにスリット130を通して積極的に吸い出される。これによって効率的にアンダーカバー100の排気を行うことができる。またアンダーカバー100内に浸入した水も、上記の負圧によって、スリット130を通して、同じく矢印134で示すように、効率的に排水できる。
【0029】
また本実施例によれば、電気自動車の走行中にアンダーカバー100の外側(図3における車両左側)から内側(図3における車両右側)へ水が浸入することも防止されている。つまり、車両走行中にアンダーカバー100外を車両後方に向かって流れる水・空気が、矢印136で示すように凹部120に入ってきても、凹部120の後面120Aには何ら孔が設けられていないため、後面120Aにぶつかって弾かれるだけである。すなわち凹部120の前面に設けられたスリット130は、水・空気が入り難い構造となっている。
【0030】
以上のように本実施例によれば、アンダーカバー100の排水・排気機能が高まり、アンダーカバー100の換気・排熱ができ、アンダーカバー100で覆われたモータ108の被水が回避される。
【0031】
他方、本実施例によるスリット130は、アンダーカバー100の側壁100Aの凹部120の前面に開口していて、車両後方に向かって開口しているものである。したがって、仮にアンダーカバー100の下壁100B(図1)に水抜き孔を設けた場合と比較すると、本実施例によるスリット130が生じる空気抵抗は格段に小さい。
【0032】
さらに、図2に示したように、凹部120は台形状であるため、凹部120の前面に設けられているスリット130は、下方にゆくほど前方にゆくよう傾斜した姿勢になっている。かかるスリット130の姿勢により、走行中にアンダーカバー100内へ水が浸入することや異物が侵入することを、より十全に防止している。
【0033】
図4図2のアンダーカバー100のB-B断面図である。図4に示すように、アンダーカバー100の側壁100Aは、凹部120も含めて、下方にゆくほど車幅方向内側にゆくよう傾斜した部位138を有する。またアンダーカバー100は、その側壁100Aの下端近傍140では、下端に向かうほど車幅方向外側にゆくよう傾斜している。
【0034】
かかる構成によれば、アンダーカバー100の側壁100Aのうち、下方にゆくほど車幅方向内側にゆくよう傾斜した部位138によって、付着した泥や雪等が落下しやすくなっている。またアンダーカバー100の側壁100Aのうち、下端近傍140すなわち下端に向かうほど車幅方向外側にゆくよう傾斜している部位によって、アンダーカバー100の下壁100Bの面積が拡大する。このため空力性能の低下を低減することができる。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0036】
また本発明は、特許請求の範囲の従属関係に関わらず、請求項および実施例に記載の発明同士を自由に組み合わせて実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両用アンダーカバーに利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 …アンダーカバー
100A …アンダーカバーの側壁
100B …アンダーカバーの下壁
102 …電気自動車
106 …バッテリー
108 …モータ
110 …リアバンパ
120 …凹部
130 …スリット
138 …アンダーカバーの側壁の部位
140 …アンダーカバーの側壁の下端近傍
図1
図2
図3
図4