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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017206
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】グラス
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/22 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A47G19/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119701
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 正人
(72)【発明者】
【氏名】野中 伸浩
【テーマコード(参考)】
3B001
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001BB10
3B001CC16
3B001DA01
3B001DA02
3B001DB20
(57)【要約】
【課題】希釈用液を注ぐことで、原液と希釈用液とを攪拌しながら混ぜ合わせることができるグラスを提供する。
【解決手段】
リキュール21(原液)と炭酸水(希釈用液)とが順に注がれるグラス1は、底部10を有し、上部を開口させた筒状に形成される胴部11と、底部10の中央領域から上方に向けて突出し、胴部11の高さに比べて低い円錐状に形成される凸部12と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液(21)と希釈用液とが順に注がれるグラス(1)であって、
底部(10)を有し、上部を開口させた筒状に形成される胴部(11)と、
前記底部の中央領域から上方に向けて突出し、前記胴部の高さに比べて低い円錐状または円柱状に形成される凸部(12)と、を備えていることを特徴とするグラス。
【請求項2】
前記凸部と前記胴部との間隔(G)は、立体形状を成す氷(20)の通過を規制し、前記底部と前記氷との間に前記原液および前記希釈用液を流入させる流入室(14)を形成するような寸法とされていることを特徴とする請求項1に記載のグラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液と希釈用液とが順に注がれるグラスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のビール飲み容器は、ガラス等で形成された容器体の内面下方部分(底面)に面状に接合された泡発生手段を備えている。泡発生手段は細かな粒の集合体であるため、表面の細かな凹凸の先端から炭酸ガスが次々と発生し、ビールの泡の層を長時間持続させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-252159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した技術では、容器に注いだ飲料(液体)を攪拌する機能はなかった。例えば、原液と希釈用液とが順に容器に注がれる場合、マドラー等の攪拌用具を用いて攪拌しない限り、2つの液体を混ぜ合わせることが難しかった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、希釈用液を注ぐことで、原液と希釈用液とを攪拌しながら混ぜ合わせることができるグラスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原液と希釈用液とが順に注がれるグラスであって、底部を有し、上部を開口させた筒状に形成される胴部と、前記底部の中央領域から上方に向けて突出し、前記胴部の高さに比べて低い円錐状または円柱状に形成される凸部と、を備えている。
【0007】
この場合、前記凸部と前記胴部との間隔は、立体形状を成す氷の通過を規制し、前記底部と前記氷との間に前記原液および前記希釈用液を流入させる流入室を形成するような寸法とされてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原液が入ったグラスに希釈用液を注ぐことで、原液と希釈用液とを攪拌しながら混ぜ合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るグラスを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るグラスを示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るグラスに氷を入れた状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るグラスの凸部による攪拌作用を説明する断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るグラスの凸部による攪拌作用の他の例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すU、Dは上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
図1および図2を参照して、一実施形態に係るグラス1について説明する。図1はグラス1を示す斜視図である。図2はグラス1を示す断面図である。図3はグラス1に氷20を入れた状態を示す断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、グラス1は、例えば、透明なソーダガラス製で、背の高い(例えば、150mm程度)タンブラー型のコップである。グラス1は、底部10を有する胴部11を含んでいる。底部10は略円形状(略円柱状)に形成され、胴部11は上部を開口(上面開口11U)させた略円筒状に形成されている。詳細には、胴部11の外径は、底部10から全高の1/5程度の高さまで徐々に縮径した後、上面開口11Uに向かって徐々に拡径している。一方で、胴部11の内径は、底部10から全高の1/5程度の高さまでは底部10と同一径とされた後、上面開口11Uに向かって徐々に拡径している(図2参照)。上面開口11Uの直径(胴部11の最大内径)は、底部10(底面10A)の内径よりも大きく設定されている。なお、グラス1の厚みは下方から上方に向けて徐々に薄く形成されており(図2参照)、最も薄い部分(上面開口11Uの近傍)は例えば約2mmとされている。
【0013】
グラス1には、原液の一例としてのリキュール21(後述する図4参照)と、希釈用液の一例としての炭酸水(図示せず)とが順に注がれ、ソーダ割り(希釈液)が作られる。リキュール21は、炭酸水よりも高い濃度(比重)となっている。また、図3に示すように、グラス1には、リキュール21を注ぐ前に、複数の氷20が入れられることが一般的である。氷20は、立体形状を成しており、例えば、業務用の製氷機で製造される所謂キューブアイスである。氷20は、例えば、W1=28mm、W2=30mm、H=30mmとなる略四角錘台状に形成されている。なお、本明細書では、説明の便宜上、リキュール21と炭酸水とをまとめて「液体」と呼ぶこともある。
【0014】
ところで、ソーダ割りをつくるためには、リキュール21と炭酸水とを攪拌して混ぜ合わせることが必要になる。仮に、底部10(グラス1の底面10A)が平面である場合、氷20が底部10に面接触するため、液体が底部10と氷20との間に入り込み難い。この場合、リキュール21を入れたグラス1に炭酸水を注ぐと、炭酸水は主に底部10上に置かれた氷20に当たることになり、リキュール21をかき混ぜるような対流は発生し難い。このため、リキュール21を注いだ後に攪拌用具を用いて液体を攪拌して混ぜ合わせる作業が必要になる。そこで、本実施形態に係るグラス1は、リキュール21が入ったグラス1に炭酸水を注ぐことで、液体を攪拌しながら混ぜ合わせるための構造を備えている。
【0015】
<凸部>
図1および図2に示すように、グラス1は、液体を攪拌しながら混ぜ合わせるための構造として、底部10(底面10A)の中央領域から上方に向けて突出した凸部12を備えている。凸部12は、胴部11の高さに比べて十分に低い略円錐状に形成されている。具体的な一例として、凸部12は上端部を丸めた略円錐状に形成され、凸部12の高さは底部10(底面10A)から10mm程度に設定されている。底部10に凸部12が突設されることで、胴部11と底部10と凸部12とによって囲まれる領域に、相対的に円環状に窪んだ窪み部13が形成されている。なお、底部10は厚みを均一化するように形成されており、底部10の下面(グラス1の接地面)の中央領域は凸部12に対応して凹んでいる(図2参照)。
【0016】
図2に示すように、凸部12(の外周面12A)と胴部11(の内周面11A)との間隔Gは、氷20の大きさよりも小さく設定されている。言い換えれば、図3に示すように、当該間隔Gは、氷20の(下方への)通過を規制し、底部10(底面10A)と氷20との間に液体を流入させる流入室14を形成するような寸法とされている。当該間隔Gは、例えば、凸部12の頂点から胴部11の内周面11Aに水平に延ばした線の長さであって、氷20の最も短い辺(W1=28mm)よりも短く(例えば、25mm程度)設定されている。流入室14は、グラス1に氷20を入れた場合に、氷20が窪み部13の上面開口を概ね塞ぐことで区画される空間である。つまり、氷20が流入室14を区画する仕切りとなっている。なお、当該間隔Gが「氷20の通過を規制」するとは、氷20全体が当該間隔Gを通過しないことを意味しており、氷20の一部分(例えば角部分)が当該間隔Gを通過して底部10(底面10A)に接触することは許容される。
【0017】
なお、グラス1は、一般的なプレス・アンド・ブロー法で製造される。簡単に説明すると、グラス1は、溶解したガラスを成型用の金型に入れてプレスし、そのプレスされたガラスを仕上げ用の金型に入れて空気を吹き込みながら成型される。凸部12は仕上げ用の金型で底部10と一体に成型される。
【0018】
[攪拌作用]
次に、図4および図5を参照して、グラス1の凸部12による攪拌作用について説明する。図4および図5はグラス1の凸部12による攪拌作用を説明する断面図である。
【0019】
ユーザは、グラス1に(複数の)氷20を入れ、所定量のリキュール21を注ぐ。氷20は、胴部11と凸部12とに干渉し、窪み部13を仕切って流入室14を形成する(図3参照)。リキュール21は、胴部11や凸部12と氷20との隙間を通って流入室14に流れ込み、流入室14(窪み部13)を含むグラス1の底側に貯留される(図4参照)。
【0020】
ユーザは、グラス1に炭酸水を注ぐ。一例として、図4に太い実線矢印で示すように、炭酸水が胴部11の内周面11Aに沿って注がれた場合、炭酸水は当該内周面11Aに沿って流下して流入室14に流れ込む。炭酸水は、リキュール21と混ざりながら底面10A(流入室14)に沿って径方向の中央側に流れた後、凸部12の外周面12Aに沿って上方に流れ、流入室14の上側で径方向の中央側から外側に渦を巻くような対流を形成する。なお、図4に太い破線で示す矢印は炭酸水と攪拌されるリキュール21の流れを示している。また、胴部11の内周面11Aに沿って炭酸水を注ぐ場合には、グラス1を傾けるとよい(図示せず)。
【0021】
また、他の例として、図5に太い実線矢印で示すように、炭酸水が底部10の略中央(凸部12の頂点付近)に注がれた場合、炭酸水は凸部12の外周面12Aに沿って流下して流入室14に流れ込む。炭酸水は、リキュール21と混ざりながら底面10Aに沿って径方向の外側に流れた後、胴部11の内周面11Aに沿って上方に流れ、流入室14の上側で径方向の外側から中央側に渦を巻くような対流を形成する。なお、図5に太い破線で示す矢印は炭酸水と攪拌されるリキュール21の流れを示している。
【0022】
以上のように、注がれた炭酸水が対流を形成することによって(図4および図5の太い実線矢印参照)、リキュール21と炭酸水とが攪拌されて混ぜ合わされる。なお、炭酸水を注ぐだけで、2つの液体は概ね混合した状態となるが、炭酸水を注いだ後、攪拌用具で更に攪拌してもよい。
【0023】
[攪拌作用の試験]
なお、出願人は、本実施形態に係るグラス1について、攪拌作用の試験を行った。本試験は、本実施形態に係るグラス1の他に、比較例として、凸部12が無く、底面10Aが平面とされた通常のグラスについても実施された。本試験は、本実施形態に係るグラス1と比較例に係るグラスとに氷20およびリキュール21を入れ、炭酸水を一定の流量で注ぐ様子を複数の観察者が目視で観察し、2つの液体の混ざり具合を判定する官能試験である。なお、氷20の数や液体の量は同一とされている。
【0024】
複数の観察者が目視で観察した結果、炭酸水を注いでいる間も、炭酸水を注ぎ終わったときも、本実施形態に係る凸部12を備えたグラス1の方が、比較例に係るグラスに比べて、2つの液体が良く混ざり合っている(2つの液体が分離している領域が少ない)と判定された。以上より、本実施形態に係るグラス1は、比較例に係るグラスよりも、強い攪拌作用を発揮することが確認された。
【0025】
以上説明した本実施形態に係るグラス1では、底部10に突設された凸部12によって円環状の窪み部13が形成されていた。この構成によれば、注がれた炭酸水は、窪み部13に沿って流れて渦を巻くような対流を形成し、窪み部13に溜まったリキュール21と共に攪拌される。これにより、リキュール21が入ったグラス1に炭酸水を注ぐことで、リキュール21と炭酸水とを攪拌しながら混ぜ合わせることができる。その結果、攪拌用具を用いて攪拌せずとも、2つの液体が概ね混合した状態とすることができ、攪拌用具を用いた攪拌作業を簡素にする(または省略する)ことができる。
【0026】
また、本実施形態に係るグラス1では、氷20(キューブアイス)が窪み部13に進入せず、底部10と氷20との間に液体を流入させる流入室14が形成されていた。この構成によれば、注がれた炭酸水は氷20の下側に位置する窪み部13に流れ込むことができるため、攪拌に必要な対流を形成することができる。これにより、氷20を入れた状態であっても、リキュール21が入ったグラス1に炭酸水を注ぐことで、2つの液体を攪拌しながら混合することが可能になる。
【0027】
なお、本実施形態に係るグラス1では、凸部12が、略円錐状に形成されていたが、これに限らず、下端から上部まで概ね同一径となる略円柱状に形成されてもよい(図示せず)。また、凸部12の高さや直径等は、グラス1の製造上可能な範囲で自由に変更してもよい。
【0028】
また、本実施形態に係るグラス1は、全体的に上方に向かって拡径する円筒状に形成されていたが、これに限らず、全体的に上方に向かって縮径する円筒状に形成されてもよいし、下端(底部10)から上端まで同一径となる円筒状に形成されてもよい(図示せず)。また、本実施形態に係るグラス1では、底部10が円形状に形成され、胴部11が円筒状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、底部が略四角形状に形成され、胴部が角筒状に形成されてもよい(図示せず)。また、例えば、底部が円形状(または四角形状)に形成され、胴部が下方から上方に向かって円形状(または四角形状)から四角形状(または円形状)になる筒状に形成されてもよい(図示せず)。つまり、グラス1は、有底の筒形状でありさえすればよい。また、グラス1(底部10、胴部11)の高さ、外径、内径、厚さ等は、グラス1の製造上可能な範囲で自由に変更してもよい。
【0029】
なお、本実施形態に係るグラス1は、ソーダガラス製に限らず、クリスタルガラス製や硼珪酸ガラス製であってもよい。グラス1は、透明であったが、着色されてもよい。
【0030】
また、本実施形態に係るグラス1には、リキュール21と炭酸水とが注がれていたが、本発明はこれに限定されない。原液の他の例として、ウィスキー等の他の酒類であってもよいし、清涼飲料の濃縮液等であってもよい。また、希釈用液の他の例として、水、果汁または清涼飲料等であってもよい。
【0031】
また、本実施形態では、氷20が、所定サイズの略四角錘台状に形成されていたが、これに限定されない。氷20のサイズは、凸部12と胴部11との間隔Gを通過不能とされるサイズであれば自由に変更してもよい。また、氷20の形状は、略四角錘台状に限らず、例えば、直方体状等の多面体形状であってもよいし、球状であってもよい(図示せず)。なお、氷20が「立体形状を成す」とは、多面体形状や球形状を成していることを意味しており、例えば、フレークアイス、チップアイスおよびクラッシュアイス等、凸部12と胴部11との間隔Gを通過してしまうような小さな粒状を成す氷を除外する意味である。また、不要であれば、グラス1に氷20を入れなくてもよい(図示せず)。
【0032】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係るグラスを示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0033】
1 グラス
10 底部
11 胴部
12 凸部
14 流入室
20 氷
21 リキュール(原液)
G 間隔
図1
図2
図3
図4
図5