(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172060
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】浸水予測システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 31/00 20060101AFI20241205BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20241205BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G08B31/00 B
G08B21/10
G08B25/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089494
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】305001928
【氏名又は名称】光陽無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】宗 聡
(72)【発明者】
【氏名】蒲地 武志
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】川端 純也
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 隆
(72)【発明者】
【氏名】谷生 美奈
(72)【発明者】
【氏名】宮村 和弘
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA12
5C086AA15
5C086CA06
5C086CA25
5C086DA08
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA04
5C087AA09
5C087AA25
5C087BB18
5C087BB73
5C087BB74
5C087DD02
5C087EE05
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG09
5C087GG14
5C087GG19
5C087GG20
(57)【要約】
【課題】浸水検出地点に於ける高精度の浸水予測ができる浸水予測システムの提供。
【解決手段】各浸水予測地点に設置された水位検出センサと、水位検出センサからの水位情報を受信し管理サーバへ送信するゲート基地局を備え、管理サーバは、各時刻で各水位検出センサで検出された水位情報を水位情報記憶手段に保存する水位情報取得手段と、適応フィルタにより、時刻tに於ける各浸水予測地点の水位情報に基づき、時刻(t+Δt)に於ける各浸水予測地点の予測水位情報を算出し予測水位記憶手段に保存する予測水位演算手段と、適応フィルタのフィルタ係数を記憶する適応係数記憶手段と、時刻tに於ける各浸水予測地点の水位情報と同時刻tに於ける各浸水予測地点の予測水位情報に基づき、予測水位演算手段の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数を更新し、適応係数記憶手段に保存する適応係数更新手段を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水予測を行う予測エリア内に分散して位置する、浸水予測を行う各地点を浸水予測地点とし、該予測エリア内の各浸水予測地点における浸水予測を行う浸水予測システムであって、
通信回線に接続された管理サーバと、
前記各浸水予測地点に設置され、該浸水予測地点の水位を検出するとともに、検出した水位情報を送信する水位検出センサと、
前記各浸水予測地点の周辺に設置され、前記水位検出センサから送信される水位情報を受信し、通信回線を介して前記管理サーバへ送信する複数のゲート基地局と、を備え、
前記管理サーバは、
各時刻に於ける、前記各浸水予測地点の前記水位検出センサにより検出される水位情報を格納する水位情報記憶手段と、
各時刻に於ける、前記各浸水予測地点の予測水位を格納する予測水位記憶手段と、
各時刻に於いて、前記各ゲート基地局から送信される前記各水位検出センサにより検出された水位情報を受信し前記水位情報記憶手段に保存する水位情報取得手段と、
適応フィルタにより、前記水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報に基づき、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける前記各浸水予測地点の水位を算出し、予測水位情報として前記予測水位記憶手段に保存する予測水位演算手段と、
前記予測水位演算手段の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数を記憶する適応係数記憶手段と、
前記予測水位記憶手段に保存された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報と、前記水位情報記憶手段に保存された同じ時刻tに於ける前記各浸水予測地点の予測水位情報とに基づき、前記予測水位演算手段の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数を更新し、前記適応係数記憶手段に保存する適応係数更新手段と、
を備えたことを特徴とする浸水予測システム。
【請求項2】
前記管理サーバは、
前記予測エリア及び前記予測エリア周辺の各観測地点で観測又は予測される降雨量を含む気象観測情報を記憶する気象観測情報記憶手段と、
前記気象観測情報を提供する気象情報配信サーバから、通信回線を介して送信される前記気象観測情報を受信し前記気象観測情報記憶手段に保存する気象観測情報取得手段と、
を備え、
前記予測水位演算手段は、
適応フィルタにより、前記水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報、及び前記気象観測情報取得手段で受信された時刻tに於ける各観測地点の前記気象観測情報に基づき、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける前記各浸水予測地点の水位を算出し、予測水位情報として前記予測水位記憶手段に保存するものであることを特徴とする請求項1記載の浸水予測システム。
【請求項3】
前記管理サーバは、
前記予測エリア及び前記予測エリア周辺の海岸の各観測地点で観測される潮位、又は前記予測エリア及び前記予測エリア周辺の河川の各観測地点で観測される河川水位の情報である潮位・河川水位情報を記憶する潮位・河川水位情報記憶手段と、
前記潮位・河川水位情報を提供する潮位・河川水位情報配信サーバから、通信回線を介して送信される前記潮位・河川水位情報を受信し前記潮位・河川水位情報記憶手段に保存する潮位・河川水位情報取得手段と、
を備え、
前記予測水位演算手段は、
適応フィルタにより、前記水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報、及び前記潮位・河川水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける各観測地点の前記潮位・河川水位情報に基づき、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける前記各浸水予測地点の水位を算出し、予測水位情報として前記予測水位記憶手段に保存するものであることを特徴とする請求項1記載の浸水予測システム。
【請求項4】
前記各浸水予測地点、及び前記予測水位演算手段により算出される予測水位情報を地図上に示した浸水予測図を生成する水位予測出力手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の浸水予測システム。
【請求項5】
前記適応係数記憶手段に記憶された各フィルタ係数に基づき、前記各浸水予測地点間の相関を算出し、前記各浸水予測地点、及び前記各浸水予測地点間の相関を地図上に示した浸水予測地点間相関図を生成する相関図出力手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の浸水予測システム。
【請求項6】
前記予測水位演算手段に用いられる適応フィルタは、ニューラルネットワーク型の適応フィルタであることを特徴とする請求項1記載の浸水予測システム。
【請求項7】
コンピュータに読み込ませて実行することにより、該コンピュータを、請求項1乃至6の何れか一記載の浸水予測システムに於ける前記管理サーバとして機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨時の道路、建物などの浸水を検出し及び浸水を予測する浸水予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
降雨時の道路、建物などの浸水を検出や予測を行う技術としては特許文献1~12に記載のものが公知である。
【0003】
特許文献1,2には、浸水を検出する各地点(浸水検出地点)に、水位レベルを検出するRFセンサを設置し、RFセンサから送信される信号強度等を浸水検出装置1で測定し、浸水レベルを検出することで、大雨の際に浸水検出エリア内で浸水が発生したことを報知する技術が記載されている。
【0004】
特許文献3には、浸水検出地点に、非浸水時に非導通状態となり浸水時に導通状態となる一対の電極を有する浸水センサを設置し、大雨の際に浸水検出エリア内で浸水が発生したことを報知する技術が記載されている。
【0005】
特許文献4には、河川の各所に河川の水位を計測する水位センサを設置して、ネットワークを介して情報処理装置(管理サーバ)に河川水位を送信し、情報処理装置は、河川各所の河川水位から水位状況を地図上に表示すると共に、河川水位の時間変化から所定時間後(T分後)の予測水位を推定計算し、基準水位到達率を算出して算出される、基準水位到達率に応じて水防団待機,氾濫注意,避難指示等の情報を発出する防災情報出力システムが記載されている。また、特許文献5にも、同様に、水位センサで検出した河川水位の時間変化に基づき、河川水位を予測する水位予測システムが記載されている。
【0006】
特許文献6には、浸水を検出する浸水検出エリア内の各所に、ポール型水感知センサを設置し、ポール型水感知センサから無線送信される水感知信号をエッジサーバで受信し収集するとともに該水感知信号に基づいて水位検出情報を生成し、リアルタイム解析の結果として水位検出情報を表示部に表示する水位検出システムが記載されている。また、この水位検出システムでは、水位検出情報をクラウドサーバに送信してクラウドサーバで表紙させたり、さらにユーザ端末のモニタを表示部として、水位検出情報を確認できるようにしている。また、特許文献7にも、ポール型の水感知センサ(浸水監視標尺)を用いた同様の浸水監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2020/218258号パンフレット
【特許文献2】特開2019-087251号公報
【特許文献3】特開2007-183874号公報
【特許文献4】特開2021-085741号公報
【特許文献5】特開2021-092530号公報
【特許文献6】特開2021-060268号公報
【特許文献7】特開2020-106547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3,6,7に記載の技術は、何れも、一定のエリア内の各所に配置された浸水検出地点に於ける現在の浸水レベルを検出し、これをリアルタイムで配信することにより避難等に役立てるものである。しかし、実際の浸水被害の状況を鑑みると、浸水が始まった時に避難や被害防止措置などの行動を開始したのでは、既に手遅れであるケースもある。例えば、大雨により駐車場が浸水した場合、駐車場に駐車している車両を避難させる必要があるが、既に浸水が始まっていると避難させることができないケースもある。また、店舗や地下道などでは、大雨により浸水が開始する前に土嚢などにより水の浸入を防止する措置をとる必要があるが、既に浸水が始まっているとそれらの措置が遅きに失するケースもある。従って、さらに浸水検出地点の各所に於いて、将来的にどの程度の浸水が予測されるのかの浸水予報に関する情報を得ることができれば、より迅速な避難等の被害拡大防止措置に繋げることができると考えられる。
【0009】
一方、特許文献4,5では、河川水位を河川の各所に設け、これらの水位センサで計測される水位の時間変化から所定時間後(T分後)の予測水位を推定計算し、水防団待機,氾濫注意,避難指示等の情報を発出するものである。これは、比較的広域での浸水予報に関する情報を得ることができるものと考えられる。
【0010】
然し乍ら、実際には、各地点の標高差、各地点の周辺の水路,側溝,下水道の有無、各地点の周辺の排水能力、各地点の周辺の塀や建物の有無等の様々な条件により、同じ河川水位であっても浸水被害が生じ易い地点とそうでない地点とがある。また、或る地点Aが浸水した場合、次はその周囲の或る値点Bが浸水するといった、地点間の浸水発生の相関があることも、経験上知られている場合もある。従って、より細かく具体的な浸水被害が生じる地点のリアルタイムの浸水予報情報や、各地点間の浸水発生の相関の情報が分かれば、より効果的な避難誘導や被害拡大防止措置に繋げることができる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、一定のエリア内の各所に配された浸水検出地点の其々に於ける具体的な精度の高い浸水予測が可能であり、各地点間の浸水発生の相関の情報を具体的に検出することが可能な浸水予測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る浸水予測システムの第1の構成は、浸水予測を行う予測エリア内に分散して位置する、浸水予測を行う各地点を浸水予測地点とし、該予測エリア内の各浸水予測地点における浸水予測を行う浸水予測システムであって、
通信回線に接続された管理サーバと、
前記各浸水予測地点に設置され、該浸水予測地点の水位を検出するとともに、検出した水位情報を送信する水位検出センサと、
前記各浸水予測地点の周辺に設置され、前記水位検出センサから送信される水位情報を受信し、通信回線を介して前記管理サーバへ送信する複数のゲート基地局と、を備え、
前記管理サーバは、
各時刻に於ける、前記各浸水予測地点の前記水位検出センサにより検出される水位情報を格納する水位情報記憶手段と、
各時刻に於ける、前記各浸水予測地点の予測水位を格納する予測水位記憶手段と、
各時刻に於いて、前記各ゲート基地局から送信される前記各水位検出センサにより検出された水位情報を受信し前記水位情報記憶手段に保存する水位情報取得手段と、
適応フィルタにより、前記水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報に基づき、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける前記各浸水予測地点の水位を算出し、予測水位情報として前記予測水位記憶手段に保存する予測水位演算手段と、
前記予測水位演算手段の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数を記憶する適応係数記憶手段と、
前記予測水位記憶手段に保存された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報と、前記水位情報記憶手段に保存された同じ時刻tに於ける前記各浸水予測地点の予測水位情報とに基づき、前記予測水位演算手段の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数を更新し、前記適応係数記憶手段に保存する適応係数更新手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、各浸水予測地点の水位検出センサから得られる水位情報に基づき、予測水位演算手段により、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける各浸水予測地点の予測水位が算出される。これにより、予測エリア内の各所の浸水検出地点の其々に於ける具体的な浸水予測が可能となる。そして、予測水位演算手段として用いられる適応フィルタの各フィルタ係数は、該適応フィルタの現在のフィルタ係数により算出される予測水位情報と、同時刻に各水位検出センサで実測される水位情報に基づき更新され、適応フィルタの学習が行われる。これにより、各浸水予測地点の標高、各浸水予測地点の周辺の水路,側溝,下水道の有無、各浸水予測地点の周辺の排水能力、各浸水予測地点の周辺の塀や建物の有無等の様々な条件に適応して、各浸水予測地点に於ける浸水レベルの予測精度が向上してゆくことになる。
【0014】
ここで、「適応フィルタ」とは、所定の最適化アルゴリズムに従ってその伝達関数を自己適応させるフィルタをいう。適応フィルタとしては、LMSフィルタ(least mean squares filter),RLSフィルタ(recursive least squares filter),ニューラルネットワーク型フィルタ等を用いることができる。
【0015】
本発明に係る浸水予測システムの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、前記管理サーバは、
前記予測エリア及び前記予測エリア周辺の各観測地点で観測又は予測される降雨量を含む気象観測情報を記憶する気象観測情報記憶手段と、
前記気象観測情報を提供する気象情報配信サーバから、通信回線を介して送信される前記気象観測情報を受信し前記気象観測情報記憶手段に保存する気象観測情報取得手段と、
を備え、
前記予測水位演算手段は、
適応フィルタにより、前記水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報、及び前記気象観測情報取得手段で受信された時刻tに於ける各観測地点の前記気象観測情報に基づき、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける前記各浸水予測地点の水位を算出し、予測水位情報として前記予測水位記憶手段に保存するものであることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、適応フィルタによる各浸水予測地点の予測水位の演算に於いて、各浸水予測地点の水位検出センサで実測される水位情報に加えて、予測エリア及び予測エリア周辺の各観測地点で観測又は予測される降雨量を含む気象観測情報を用いることにより、より精度の高い各浸水予測地点に於ける浸水レベルの予測が可能となる。
【0017】
本発明に係る浸水予測システムの第3の構成は、前記第1の構成に於いて、前記管理サーバは、
前記予測エリア及び前記予測エリア周辺の海岸の各観測地点で観測される潮位、又は前記予測エリア及び前記予測エリア周辺の河川の各観測地点で観測される河川水位の情報である潮位・河川水位情報を記憶する潮位・河川水位情報記憶手段と、
前記潮位・河川水位情報を提供する潮位・河川水位情報配信サーバから、通信回線を介して送信される前記潮位・河川水位情報を受信し前記潮位・河川水位情報記憶手段に保存する潮位・河川水位情報取得手段と、
を備え、
前記予測水位演算手段は、
適応フィルタにより、前記水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける前記各浸水予測地点の水位情報、及び前記潮位・河川水位情報取得手段で受信された時刻tに於ける各観測地点の前記潮位・河川水位情報に基づき、一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける前記各浸水予測地点の水位を算出し、予測水位情報として前記予測水位記憶手段に保存するものであることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、適応フィルタによる各浸水予測地点の予測水位の演算に於いて、各浸水予測地点の水位検出センサで実測される水位情報に加えて、予測エリア及び予測エリア周辺の海岸の各観測地点で観測される潮位、又は予測エリア及び予測エリア周辺の河川の各観測地点で観測される河川水位の情報である潮位・河川水位情報を用いることにより、より精度の高い各浸水予測地点に於ける浸水レベルの予測が可能となる。
【0019】
本発明に係る浸水予測システムの第4の構成は、前記第1の構成に於いて、前記各浸水予測地点、及び前記予測水位演算手段により算出される予測水位情報を地図上に示した浸水予測図を生成する水位予測出力手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、予測水位演算手段により算出される予測水位を地図上に示した浸水予測図を生成することで、システムのユーザは、予測エリアに於ける浸水予測を視覚的に俯瞰して把握することが可能となるため、ユーザは、適確な避難行動又は避難誘導や被害拡大防止措置等の判断を行うことが可能となる。
【0021】
本発明に係る浸水予測システムの第5の構成は、前記第1の構成に於いて、前記適応係数記憶手段に記憶された各フィルタ係数に基づき、前記各浸水予測地点間の相関を算出し、前記各浸水予測地点、及び前記各浸水予測地点間の相関を地図上に示した浸水予測地点間相関図を生成する相関図出力手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、各浸水予測地点間の相関が地図上に示されることで、どのような経路及び過程で浸水が拡がってゆくかを視覚的に俯瞰して把握することが可能となる。従って、システムのユーザは、より適確な避難行動又は避難誘導や被害拡大防止措置等の判断を行うことが可能となる。
【0023】
本発明に係る浸水予測システムの第6の構成は、前記第1の構成に於いて、前記予測水位演算手段に用いられる適応フィルタは、ニューラルネットワーク型の適応フィルタであることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、予測水位演算手段にニューラルネットワーク型の適応フィルタを用いることにより、各浸水予測地点でのより精度の高い浸水予測が可能となる。
【0025】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに読み込ませて実行することにより、該コンピュータを、前記第1乃至6の何れか一の構成の浸水予測システムに於ける前記管理サーバとして機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、予測エリア内の各所に配された浸水検出地点の水位検出センサの実測値や、予測エリア及び予測エリア周辺の各観測地点で観測又は予測される降雨量を含む気象観測情報に基づき、適応フィルタを用いて、一定の時間後の各浸水検出地点の予測水位の演算を行うと共に、各浸水検出地点で水位検出センサにより検出された水位情報と同時刻の適応フィルタでの予測水位に基づき、適応フィルタのフィルタ係数を更新して自己学習させることにより、各浸水検出地点の其々に於ける具体的な精度の高い浸水予測が可能となる。また、学習によって得られる適応フィルタのフィルタ係数から、各浸水検出地点間の相関を算出し地図上に表示することで、より効果的な避難誘導や被害拡大防止措置に繋げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例1に係る浸水予測システムの全体構成を表す図である。
【
図2】予測エリア内に於ける水位検出センサ3及びゲート基地局4の配置例を示す図である。
【
図3】
図1の水位検出センサ3の具体的な構成例を示す図である。
【
図4】
図1のシステム管理サーバ1の機能構成を表すブロック図である。
【
図5】各観測地点y
iで観測される気象観測情報の例を示す図である。
【
図6】予測水位演算部16に使用される適応フィルタの一例を示す図である。
【
図7】予測水位演算部16に使用される適応フィルタの一例を示す図である。
【
図8】予測水位演算部16に使用される適応フィルタの一例を示す図である。
【
図9】実施例1の浸水予測システムのシステム管理サーバ1の動作を表すフローチャートである。
【
図10】水位予測出力部19により作成される浸水予測図の一例を示す図である。
【
図11】相関図出力部22により作成される浸水予測地点間相関図の一例を示す図である。
【
図12】水位予測出力部19及び相関図出力部22により作成される浸水予測及び浸水予測地点間相関図の一例を示す図である。
【
図13】本発明の実施例2に係る浸水予測システムの全体構成を表す図である。
【
図14】
図13のシステム管理サーバ1の機能構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0029】
図1は、本発明の実施例1に係る浸水予測システムの全体構成を表す図である。
図1に於いて、本実施例の浸水予測システムは、システム全体を管理する施設であるシステム管理センタに設置されたシステム管理サーバ1、気象庁や気象情報提供サービス会社などの気象情報配信センタに設置された気象情報配信サーバ2、浸水予測を行う予測エリア内の各所に分散して複数個設けられた浸水予測地点に設置された水位検出センサ(WLセンサ)3、予測エリア内の各所に複数個設けられたゲート基地局4、浸水予測システムを利用する各ユーザが所持する複数のユーザ端末6を備えている。ここで、「予測エリア」とは、浸水予測を行う対象となる領域をいう。「浸水予測地点」とは、予測エリア内に於いて水位検出及び浸水予測を行う地点をいう。
【0030】
システム管理サーバ1及び気象情報配信サーバ2は、ワークステーション,ラックサーバ,パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータ(汎用性のあるコンピュータ)により構成され、通信回線7に接続されている。また、ユーザ端末6は、パーソナルコンピュータ,ノートパソコン,タブレット,スマートフォンなどのコンピュータ端末装置により構成され、通信回線7に接続されている。水位検出センサ3は、各浸水予測地点に設置され、該浸水予測地点の水位を検出するとともに、検出した水位情報を送信するセンサである。本実施例では、水位検出センサ3には、無線式センサが使用されている。「無線式センサ」とは、センサで検出した情報を無線により外部に送信するセンサをいう。ゲート基地局4は、その周辺に設置された水位検出センサ3から送信される水位情報を受信し、通信回線7を介して管理サーバ1へ送信するアクセスポイント(AP)である。各ゲート基地局4は、すべての水位検出センサ3が何れかのゲート基地局4の受信範囲内にカバーされるように、予測エリア内に複数個設けられている。尚、本実施例では、水位検出センサ3は、検出した水位情報を無線送信する無線式センサを使用する例を示すが、本発明では、水位検出センサ3として、ゲート基地局4と有線接続された有線式センサを使用することもできる。
【0031】
図2は、予測エリア内に於ける水位検出センサ3及びゲート基地局4の配置例を示す図である。
図2に於いて、四角の外枠で囲まれた範囲が、浸水予測を行う予測エリア内の地図を示したおり、道路と主要な河川が示されている。また、予測エリア内に於いて、水位検出センサ3は白丸「○」、ゲート基地局4は白四角「□」により示されている。また、各ゲート基地局4を中心とする半透明の円は、該ゲート基地局4の受信範囲を示している。
【0032】
図2に示すように、水位検出センサ3は、予測エリア内に分散して設置されており、特に浸水検出が必要となる地点(建物や地下道の入口、駐車場、道路等)を含むように配置される。また、それぞれのゲート基地局4は、すべての水位検出センサ3が何れかのゲート基地局4の受信範囲円内に含まれるように、適所に設置されている。
【0033】
図3は、
図1の水位検出センサ3の具体的な構成例を示す図である。水位検出センサ3には、アクティブ無線ビーコンや電極式浸水センサなどが使用される。アクティブ無線ビーコンを使用する場合、ゲート基地局4は、水位検出センサ3から受信される受信信号強度I(t)を検出し、I(t)の一定時間Δt
1,Δt
2内の散布度D(I;[t-Δt
1,t])、正常受信率R([t-Δt
2,t])を検出し、散布度D(I;[t-Δt
1,t])が所定の閾値D
th1以上で且つ正常受信率R([t-Δt
2,t])が所定の閾値R
th2以下となった場合に、水位検出センサ3が浸水したと判定する。また、水位検出センサ3の下に水面があると、水面反射により水位検出センサ3から受信される受信信号強度I(t)が変化するため、ゲート基地局4は、この受信信号強度I(t)の変化から、水位を検出することが出来る(特許文献1参照)。アクティブ無線ビーコンは、単体で用いる場合(
図3(b))や、垂直に複数個並べて用いる場合(
図3(a))がある。また、電極式浸水センサの場合、センサ内に複数の電極があり、水位が上がると、水を媒体に電極間が通電して浸水を検出するものである。電極式浸水センサの場合、
図3(a)のように、電極を垂直に並べて設置することにより、水位検出が可能となる。
【0034】
尚、
図3は、あくまでも水位検出センサ3の一例を示すものであり、本発明では、設置地点の浸水水位を検出可能なセンサであれば、これ以外の公知の水位検出センサを使用してもよい。
【0035】
図4は、
図1のシステム管理サーバ1の機能構成を表すブロック図である。システム管理サーバ1は、水位情報記憶部11、水位情報取得部12、気象観測情報記憶部13、気象観測情報取得部14、入力値取得部15、予測水位演算部16、適応係数記憶部17、予測水位記憶部18、水位予測出力部19、適応係数更新部21、及び相関図出力部22を備えている。これら各部分構成は、システム管理サーバ1に専用のプログラムを読み込ませて実行することにより、システム管理サーバ1内に機能的に構成される。
【0036】
水位情報記憶部11は、各時刻tjに於ける、各浸水予測地点xiの水位検出センサ3により検出される水位情報{h(xi,tj)}を格納する。水位情報取得部12は、各時刻tjに於いて、各ゲート基地局4から、通信回線7を介して送信される各水位検出センサ3により検出された水位情報h(xi,tj)を受信して、水位情報記憶部11に保存する。
【0037】
気象観測情報記憶部13は、各時刻tjに於ける、予測エリア及び予測エリア周辺の各観測地点yiで観測又は予測される降雨量を含む気象観測情報{f(yi,tj)}を記憶する。気象観測情報取得部14は、気象観測情報を提供する気象情報配信サーバ2から、通信回線7を介して送信される気象観測情報f(yi,tj)を受信し気象観測情報記憶部13に保存する。
【0038】
ここで、「観測地点」は、一定の面積を有する地点を指す。浸水予測地点と区別するために、観測地点は記号「y」を用いて記すことにする。また、「気象観測情報」は、実際に観測される降水量(雨量計での直接観測雨量やレーダ観測で観測される解析雨量)に加えて、該降水量からタンクモデルなどを用いて計算される表面雨量指数,土壌雨量指数,流域雨量指数、降水予報、MSM・GSM降水量、MSM・GSMガイダンス、気象特別警報・警報・注意報、大雨警報(土砂災害)危険度分布、大雨警報(浸水害)危険度分布、洪水警報危険度分布、洪水警報危険度分布(流路)、土砂災害危険度判定、浸水害危険度判定、洪水危険度判定などを用いることもできる。また、現在観測された気象観測情報以外にも、一定時間後の未来の気象予報情報(但し、予測水位演算部16による予測時刻t+Δtよりも前の時刻のものに限る。)も用いることができる。
図5に、各観測地点y
iで観測される気象観測情報の例を示す。
図5では、予測エリア及び予測エリア周辺のエリアが、一定の面積の正方形のマス目に区劃されており、各区劃内で観測される前述の気象観測情報(各情報は別画面)をマス目内の色の濃淡で示している。
【0039】
予測水位記憶部18は、各時刻tjに於ける、各浸水予測地点xiの予測水位{he(xi,tj)}を格納する。入力値取得部15は、水位情報記憶部11及び気象観測情報記憶部13に記憶された水位情報{h(xi,tj)}及び気象観測情報{f(yi,tj)}の中から、各浸水予測地点xiの浸水水位の演算に使用する情報を抽出する。予測水位演算部16は、入力値取得部15により抽出された、現在の時刻tjの水位情報{h(xi,tj)}及び気象観測情報{f(yi,tj)}に基づき、現在時刻tから一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける各浸水予測地点xiの水位he(xi,t+Δt)を算出し、予測水位情報として予測水位記憶部18に保存する。
【0040】
ここで、予測水位演算部16では、適応フィルタが使用される。適応フィルタとしては、
図6に示したような、入力層と出力層の2層からなる単純パーセプトロンタイプのニューラルネットワーク型フィルタや、
図7に示したような多層パーセプトロン(MLP)タイプのニューラルネットワーク型フィルタを使用することができる。
図6,
図7に於いて、入力層の各ノードの入力変数x
1,x
2,…,x
K1には、入力値取得部15により抽出された水位情報{h(x
i,t
j)}及び気象観測情報{f(y
i,t
j)}がそれぞれ入力される。また、入力層の各ノードの出力変数y
1
(1),y
2
(1),…,y
K1
(1)には、入力変数x
1,x
2,…,x
K1がそのまま出力される。即ち、y
k
(1)=x
k(k=1,2,…K
1)である。また、入力層の0番目のノードからはy
0
(1)=1が出力される。また、入力層を第1番目の層として、第m番目(m≧2)の層(出力層又は隠れ層)の各ノードは、
図6(b)に示すように、前の層((m-1)番目の層)の各ノードの出力値y
1
(m-1),…,y
Km-1
(m-1)が入力され、これらの加重和に所定の活性化関数を作用させた以下の値y
k
(m)(k=1,…,K
m)が出力される。
【0041】
【0042】
ここで、Km(m=1,…,n;nは層の数)は第m番目の層(第m層)のノード数、wj
(m,k)は第(m-1)層のj番目のノードから第m層のk番目のノードの入力される入力変数yj
(m-1)に対する重み係数(フィルタ係数)、関数a( )は活性化関数である。活性化関数には、一般に、階段関数a(x)=0(x<xth),1(x≧xth)、シグモイド関数a(x)=1/(1+exp(-αx))、線型関数a(x)=αxなどが用いられる。また、出力層のノード数Knは、水位検出センサ3の総数に等しい。
【0043】
また、通常、近接する浸水予測地点x
i間の水位情報{h(x
i,t
j)}の相関は、気象観測情報{f(y
i,t
j)}との相関に比べて大きいと考えられることから、
図8に示すように、予測水位演算部16の適応フィルタを前段と後段の2段に分けて構成することもできる。ここで、前段の適応フィルタは、入力値を、入力値取得部15により抽出された各浸水予測地点x
iの現時刻t以前の水位情報{h(x
i,t
j)}、出力値は現時刻tから一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける各浸水予測地点x
iの水位の中間推定値h
e0(x
i,t+Δt)とする。後段の適応フィルタは、入力値を前記中間推定値{h
e0(x
i,t+Δt)}及び入力値取得部15により抽出された現時刻t以前の気象観測情報{f(y
i,t
j)}、出力値は現時刻tから一定時間Δtだけ先の時刻(t+Δt)に於ける各浸水予測地点x
iの水位の最終推定値h
e(x
i,t+Δt)とする。
図8では、前段の適応フィルタは、単純パーセプトロンタイプのニューラルネットワーク型フィルタで構成し、後段の適応フィルタは、2層乃至多層パーセプトロンタイプのニューラルネットワーク型フィルタで構成している。このように2段構成とすると、各適応フィルタの重み係数(フィルタ係数)の学習を効率的に行うことが出来ると考えられる。
【0044】
適応係数記憶部17は、予測水位演算部16の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数{wj
(m,k)}を記憶する。予測水位演算部16は、この予測水位演算部16に記憶された各フィルタ係数{wj
(m,k)}を読み出して、式(1a)のフィルタ演算を実行する。
【0045】
適応係数更新部21は、適応係数記憶部17に保存された各フィルタ係数と、予測水位記憶部18に保存された或る時刻tに於ける各浸水予測地点の水位情報と、水位情報取得部12に保存された同じ時刻tに於ける各浸水予測地点の予測水位情報とに基づき、予測水位演算部16の適応フィルタで用いられる各フィルタ係数を更新し、適応係数記憶部17に保存する。
【0046】
水位予測出力部19は、各浸水予測地点、及び予測水位演算部16により算出される予測水位情報を地図上に示した浸水予測図を生成する。相関図出力部22は、適応係数記憶部17に記憶された各フィルタ係数に基づき、各浸水予測地点間の相関を算出し、各浸水予測地点、及び各浸水予測地点間の相関を地図上に示した浸水予測地点間相関図を生成する。
【0047】
以上のように構成された本実施例の浸水予測システムについて、以下、その動作を説明する。
【0048】
図9は、実施例1の浸水予測システムのシステム管理サーバ1の動作を表すフローチャートである。
図9に於いて、気象観測情報取得部14と、水位情報取得部12と、入力値取得部15,予測水位演算部16及び適応係数更新部21と、水位予測出力部19及び相関図出力部22とは、それぞれ独立して並列に動作する。
【0049】
まず、
図9(a),(b)のフローに於いて、気象観測情報取得部14は、気象情報配信サーバ2から気象観測情報が配信される各時刻において、配信された気象観測情報を受信し、気象観測情報記憶部13に格納するという動作を繰り返し行う(ステップS1)。また、水位情報取得部12は、其々のゲート基地局4が各水位検出センサ3で検出された水位情報を送信する各時刻において、送信された各水位検出センサ3の水位情報を受信し、水位情報記憶部11に格納するという動作を繰り返し行う(ステップS2)。これにより、気象観測情報記憶部13には、各時刻に於ける気象観測情報が蓄積されてゆき、水位情報記憶部11には、各時刻に於ける各水位検出センサ3の水位情報が蓄積されてゆく。
【0050】
一方、
図9(c)のフローに於いて、現在の時刻tに於いて、まず、入力値取得部15は、水位情報記憶部11に蓄積された現時刻t以前の水位情報の中から、予測に使用する水位情報{h(x
i,t
j)}を抽出し、気象観測情報記憶部13に蓄積された現時刻t以前の気象観測情報の中から、予測に使用する気象観測情報{f(y
i,t
j)}を抽出する(ステップS11)。ここで、抽出の仕方については、例えば、現時刻から一定時間T1だけ前までの水位情報{h(x
i,t
j)}を抽出する、現時刻から一定時間T2だけ前までの予測エリアを中心とした一定の範囲の気象観測情報{f(y
i,t
j)}を抽出する、等の抽出方法が用いられる。
【0051】
次に、予測水位演算部16は、適応係数記憶部17から適応フィルタの各重み係数(フィルタ係数){wj
(m,k)}を読み出し、適応フィルタに対し、入力値取得部15が抽出した水位情報{h(xi,tj)}及び気象観測情報{f(yi,tj)}を入力して、式(1a)のようなフィルタ演算を行い、現時刻tから一定時間Δtだけ未来の各浸水予測地点xiの水位の推定値{he(xi,t+Δt)}を出力する。そして、これらの推定値{he(xi,t+Δt)}を推定時刻t+Δtの推定値として、予測水位記憶部18に保存する(ステップS12)。
【0052】
次に、適応係数更新部21は、水位情報記憶部11に保存された各浸水予測地点の水位情報から、現時刻tに最も近い各浸水予測地点の水位情報{h(xi,t)}を抽出する。また、予測水位記憶部18に保存された各浸水予測地点の予測水位情報から、現時刻tに最も近い各浸水予測地点の予測水位情報{he(xi,t)}を抽出する。そして、取得された各浸水予測地点の水位情報{h(xi,t)}及び予測水位情報{he(xi,t)}に基づき、予測水位演算部16の適応フィルタで用いられる現時点の各重み係数(フィルタ係数){wj
(m,k)}を更新し、適応係数記憶部17に保存し(ステップS13)、ステップS11に戻る。
【0053】
ここで、適応係数更新部21による各重み係数{w
j
(m,k)}の更新は、公知の方法を用いることが出来る。例えば、予測水位演算部16の適応フィルタが
図6(a)のような単純パーセプトロンタイプのニューラルネットワーク型フィルタの場合には、単純に最小自乗法により更新を行うことができ、以下の誤差関数E(w)が最小となるように最適な重み係数{w
LS,
j
(m,k)}を求めればよい。
【0054】
【0055】
ここで、Nは、予測エリア内の水位検出センサ3の全個数を表す。式(2a)のkについての和は、全ての浸水予測地点についての和を表す。式(2a)のjについての和は、各浸水予測地点で過去に水位を観測した全ての時刻についての和を表す。
【0056】
また、予測水位演算部16の適応フィルタが
図7のような多層パーセプトロンタイプのニューラルネットワーク型フィルタの場合には、誤差逆伝播(バックプロパゲーション)法などの公知の方法を用いて各重み係数{w
j
(m,k)}の更新を行えばよい。
【0057】
最後に、
図9(d)のフローに於いて、水位予測出力部19は、ユーザ端末6から水位予測情報の配信要求を受信すると(ステップS21)、水位予測出力部19は、各浸水予測地点、及び予測水位演算部16により算出される予測水位情報を地図上に示した浸水予測図を生成し、当該ユーザ端末6に対して配信する(ステップS22)。
【0058】
また、相関図出力部22は、ユーザ端末6から相関情報の配信要求を受信すると(ステップS21)、相関図出力部22は、適応係数記憶部17に記憶された各重み係数(フィルタ係数){wj
(m,k)}に基づき、各浸水予測地点間の相関を算出し、各浸水予測地点、及び各浸水予測地点間の相関を地図上に示した浸水予測地点間相関図を生成し、当該ユーザ端末6に対して配信する(ステップS22)。
【0059】
また、水位予測情報及び相関情報の配信要求を受信すると(ステップS21)、相関図出力部22は、適応係数記憶部17に記憶された各重み係数(フィルタ係数){wj
(m,k)}に基づき、各浸水予測地点間の相関を算出し、水位予測出力部19及び相関図出力部22は、各浸水予測地点、及び予測水位演算部16により算出される予測水位情報、並びに各浸水予測地点間の相関を地図上に示した浸水予測及び浸水予測地点間相関図を生成し、当該ユーザ端末6に対して配信する(ステップS22)。
【0060】
図10は、水位予測出力部19により作成される浸水予測図の一例を示す図である。
図10に於いて、
図2と同様、白丸「○」は、水位検出センサ3が設置された浸水予測地点を表す。また、浸水予測地点を中心とする半透明色の大円は予測水位情報を表す。半透明色の大円の濃度が予測水位が高さを表している。このように、予測される浸水値点と浸水の高さを地図として示すことで、ユーザ端末6のユーザは、予測エリアに於ける浸水予測を視覚的に俯瞰して把握することが可能となるり、ユーザは、適確な避難行動又は避難誘導や被害拡大防止措置等の判断を行うことが可能となる。
【0061】
図11は、相関図出力部22により作成される浸水予測地点間相関図の一例を示す図である。
図11に於いて、
図2と同様、白丸「○」は、水位検出センサ3が設置された浸水予測地点を表す。また、2つの浸水予測地点間を結ぶ線分は、2つの浸水予測地点間の相関の大きさを表す。
図11では、線分の太さが太いほど、相関が大きいことを示している。このように、各浸水予測地点間の相関を地図上に示すことで、ユーザ端末6のユーザは、どのような経路及び過程で浸水が拡がってゆくかを視覚的に俯瞰して把握することが可能となり、より適確な避難行動又は避難誘導や被害拡大防止措置等の判断を行うことが可能となる。
【0062】
図12は、水位予測出力部19及び相関図出力部22により作成される浸水予測及び浸水予測地点間相関図の一例を示す図である。
図12に於いて、白丸「○」、白三角「△」及びバツ印「×」は、水位検出センサ3が設置された浸水予測地点を表す。ここで、白丸「○」は浸水しないと予測される地点、白三角「△」は浸水が予測される地点、バツ印「×」は現在浸水している地点を示す。また、現在浸水している領域は、半透明赤色のグラデーション(
図12はグレースケールのため、半透明濃灰色)で示され、浸水が予想される領域は、半透明黄色のグラデーション(
図12はグレースケールのため、半透明薄灰色)で示されている。また、2つの浸水予測地点間を結ぶ線分は、2つの浸水予測地点間の相関の大きさを表す。
図12では、線分の太さが太いほど、相関が大きいことを示している。