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特開2024-172062処理装置、衛星航法補強システム、処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172062
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】処理装置、衛星航法補強システム、処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/07 20100101AFI20241205BHJP
   G01S 19/08 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089533
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】井上 恵一
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB03
5J062CC07
5J062EE02
(57)【要約】
【課題】衛星を利用して測位される位置情報を補強するシステムに対して、可用性を向上させることが可能な処理装置等を提供することを目的の一つとする。
【解決手段】本開示の一態様にかかる処理装置は、航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置であって、電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する決定手段と、決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する算出手段と、算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成する生成手段と、生成された前記補強情報を発信する発信手段と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置であって、
電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する決定手段と、
決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する算出手段と、
算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成する生成手段と、
生成された前記補強情報を発信する発信手段と、を備える、
処理装置。
【請求項2】
前記最悪ケースのレンジ誤差は、時間帯ごとに予め算出され、
前記決定手段は、前記測位が行われる時間帯に基づいて、前記最悪ケースのレンジ誤差を決定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記最悪ケースのレンジ誤差は、季節に応じた時間帯ごとに予め算出され、
前記決定手段は、前記測位が行われる季節及び時間帯に基づいて、前記最悪ケースのレンジ誤差を決定する、
請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
所定の時期ごとの電離圏の状態を表す電離圏モデルに基づいて、前記電離圏モデルのそれぞれに応じた前記最悪ケースのレンジ誤差を算出するレンジ誤差算出手段をさらに備え、
前記決定手段は、算出された前記最悪ケースのレンジ誤差のうち、前記測位を行う時期に応じた前記最悪ケースのレンジ誤差を決定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記算出手段は、
決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位に利用し得る衛星ごとの、前記測位信号の遅延量を特定し、
前記測位に利用し得る衛星のうち、二以上の衛星のセットごとに、特定された遅延量に基づく、前記測位を行った場合の位置情報の誤差値を算出し、
算出された当該誤差値のそれぞれが、最大誤差値を超えるか否かに応じて、前記インテグリティパラメータを算出する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の処理装置と、
前記航空機に搭載される装置であって、
前記インテグリティパラメータに基づいて、前記測位に基づく位置情報の誤差範囲を示す保護レベルを算出する、保護レベル算出手段を備える、機上装置と、
を備える、衛星航法補強システム。
【請求項7】
航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置において、
電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定し、
決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出し、
算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成し、
生成された前記補強情報を発信する、
処理方法。
【請求項8】
航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置において、
電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する処理と、
決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する処理と、
算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成する処理と、
生成された前記補強情報を発信する処理と、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衛星航法を補強する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自機の位置情報を取得する方法の一つとして、衛星からの信号を利用した方法がある。例えば、受信機が、GPS(Global Positioning System)衛星等のGNSS(Global Navigation Satellite System)の測位衛星から送信された信号を受信する。そして、受信機が、受信した当該信号を利用して自機の位置情報を測位する。
【0003】
航空機が飛行する際にも、上述のようなGNSSを利用した位置情報の測位が行われる。特に着陸の際には、高精度な位置情報が求められる。そこで、GNSSを利用した着陸を行う際には、精度及び安全性を補強するために地上型衛星航法補強システム(GBAS:Ground Based Augmentation System)といったシステムが利用されることがある。以降、当該システムをGBASと称する。
【0004】
GBASでは、地上側の装置が、GNSSを使用した測位の精度及び安全性を補強するための補強情報を生成する。具体的には、地上側の装置は、衛星からの測位信号の送信時刻、受信時刻、及び伝播速度等に基づいて、自装置と衛星との距離を算出する。この距離を擬似距離と称する。また、予め精密に測量された自装置と衛星との幾何学的距離を、真距離と称する。ここで、擬似距離の算出には各種の誤差が生じる。そのため、擬似距離と真距離とは一致しない。そこで、地上側の装置は、擬似距離と真距離とを比較することにより補正値を算出する。地上側の装置は、算出された補正値を含む補強情報を生成し、生成された補強情報を放送する。航空機に設置された機上装置は、補強情報を受信し、補強情報を利用して、衛星からの信号に基づく位置情報の測位を行う。
【0005】
このとき、機上装置は、衛星からの測位信号と補強情報に含まれる補正値等とを利用して、保護レベルを算出する。保護レベルは、測位において発生し得る誤差の推定値である信頼性限界を示す。例えば保護レベルは、衛星を利用した位置情報の測位における、水平方向及び垂直方向の誤差の範囲を示す。保護レベルが許容値を超えない場合、当該衛星を利用した測位によって取得される位置情報に基づいて、着陸が行われる。保護レベルが許容値を超える場合、当該衛星を利用した測位によって取得される位置情報に基づいた着陸は、行われない。
【0006】
補強情報には、さらにインテグリティパラメータが含まれる。インテグリティパラメータは、測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報である。地上側の装置は、衛星の状況等に基づいて、測位において発生し得る誤差の信頼性を衛星ごとに評価する。誤差が信頼できない場合、地上側の装置は、インテグリティパラメータを増大させる。インテグリティパラメータが増大するほど、保護レベルは大きく算出される。地上側装置は、例えば、誤差が信頼できない場合、保護レベルが許容値を超えるようにインテグリティパラメータを増大させる。このように、GBASは、信頼性の低い衛星による測位を機上装置に行わせないようにすることにより、航空機の安全性を保障する。
【0007】
GBASに関連する技術が特許文献1に開示される。特許文献1には、保護レベルが許容値を超える場合には、使用可能な測位衛星からインテグリティパラメータを著しく増大させる測位衛星を排除して、新たにインテグリティパラメータを算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/002364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関して、発生し得る誤差の一因としては、電離圏による影響が挙げられる。電離圏は、主に、太陽からの紫外線等によって、大気中の分子が電離したことにより生じる。測位信号が電離圏を通過すると、伝播速度が遅くなる。すなわち、測位信号の受信に遅延が生じる。これにより、擬似距離に誤差が発生する。
【0010】
当該誤差は電離圏の状態によって異なる。特に、地上側の装置の場所に対応する電離圏の状態と、機上装置の場所に対応する電離圏の状態と、が異なる場合、地上側の装置において算出された補正値が、機上装置における測位に適さなくなる可能性がある。すなわち、機上装置による測位において、当該補正値が利用されると、測位の誤差が増大する可能性がある。そのため、特許文献1に開示される技術では、機上装置における測位信号の受信に、最も影響を与える場合の電離圏の状態を仮定して、その場合に発生し得る誤差が、最大誤差値を超えるか否かを、地上側の装置が判定することが行われる。このような仮定のもとに、測位信号の受信において生じ得る誤差を、最悪ケースのレンジ誤差と称する。そして、地上側の装置は、最悪ケースのレンジ誤差に関する値が、最大誤差値を超える場合、保護レベルが許容値を超えるようにインテグリティパラメータを増大させる。これにより安全性が図られる。
【0011】
ここで、電離圏の状態は変化する。すなわち、電離圏の状態によって、機上装置による測位に与える影響の大きさが変わる。上述のように、最悪ケースのレンジ誤差が、電離圏の状態が最も厳しい条件で一定に定義されると、保護レベルは大きく計算される。そのため、保護レベルは許容値に達しやすくなる。すると、本来であれば、GBASを利用して着陸が行えるはずであっても、着陸ができなくなってしまう可能性がある。すなわち、GBASの可用性が低くなる虞がある。
【0012】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、衛星を利用して測位される位置情報を補強するシステムに対して、可用性を向上させることが可能な処理装置等を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様にかかる処理装置は、航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置であって、電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する決定手段と、決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する算出手段と、算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成する生成手段と、生成された前記補強情報を発信する発信手段と、を備える。
【0014】
本開示の一態様にかかる処理方法は、航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置において、電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定し、決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出し、算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成し、生成された前記補強情報を発信する。
【0015】
本開示の一態様にかかるプログラムは、航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置において、電離圏が所定の状態である場合の、前記測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する処理と、決定された前記最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、前記測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する処理と、算出された前記インテグリティパラメータをさらに含む前記補強情報を生成する処理と、生成された前記補強情報を発信する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、衛星を利用して測位される位置情報を補強するシステムに対して、可用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態の処理装置を含む衛星航法補強システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図2】第1の実施形態の処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の処理装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図4】第2の実施形態の衛星航法補強システムの構成の一例を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態の電離圏モデルと衛星航法補強システムとの関係を示す図である。
図6】第2の実施形態の衛星航法補強システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
図7】本開示の第1、及び第2の実施形態の衛星航法補強システムを実現するコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の処理装置の概要について説明する。
【0020】
図1は、処理装置を含む衛星航法補強システム1000の構成の一例を模式的に示す図である。衛星航法補強システム1000は、処理装置100と基準局200とアンテナ300と機上装置400とを備える。処理装置100は、基準局200とアンテナ300と無線又は有線のネットワークを介して通信可能に接続される。機上装置400は、アンテナ300から発信される情報を受信する。
【0021】
まず、衛星航法補強システム1000の概要を説明する。本開示において、衛星航法補強システム1000は、衛星による位置情報を利用して、航空機の着陸を支援する。例えば、処理装置100、基準局200及びアンテナ300は、滑走路付近に設置される。なお、処理装置100は、基準局200とアンテナ300と接続可能な範囲に設置されればよい。すなわち、処理装置100は、滑走路付近に設置されなくともよい。
【0022】
基準局200は、衛星からの測位信号を受信する。基準局200は複数存在する。例えば、基準局200は4局存在するが、この例に限られない。基準局200は、受信した測位信号を含む受信データを処理装置100に伝送する。処理装置100は、測位信号に基づいて補強情報を生成する。そして処理装置100は、アンテナ300を利用して、補強情報を発信する。機上装置400は、補強情報を受信する。そして、機上装置400は、衛星からの測位信号を利用して、位置情報の測位を行う。このとき機上装置400は、補強情報を利用して、位置情報の補正を行う。このように、衛星航法補強システム1000は、航空機の機上装置における、衛星からの測位信号を利用して測位された位置情報について、補正を行う。
【0023】
なお、図1の例では、処理装置100、アンテナ300及び機上装置400のそれぞれが、便宜上、一の装置で実現されているよう記載されているが、処理装置100、アンテナ300及び機上装置400の実現方法は、この例に限られない。すなわち、処理装置100、アンテナ300及び機上装置400のそれぞれは、複数の装置によって構成されてよい。また、基準局200の実現方法も図1の例に限られない。
【0024】
次に、処理装置100の機能構成の一例を説明する。図2は、処理装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、処理装置100は、決定部110と算出部120と生成部130と発信部140とを備える。
【0025】
決定部110は、最悪ケースのレンジ誤差を決定する。最悪ケースのレンジ誤差は、電離圏が所定の状態である場合において、衛星からの測位信号を受信する際に生じ得る誤差を示す。所定の状態とは、例えば、位置情報の測位に最も影響を与える状態である。すなわち、最悪ケースのレンジ誤差は、電離圏の状態に基づく誤差であるともいえる。
【0026】
ここで、電離圏の状態は、時期によって異なる。例えば、電離圏の状態は、時間帯及び季節等によって異なる。そこで、決定部110は、例えば、測位を行う時期において、電離圏の状態が、測位に最も影響を与える状態であると仮定した場合の、最悪ケースのレンジ誤差を決定する。
【0027】
このように、決定部110は、電離圏が所定の状態である場合の、測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する。決定部110は、決定手段の一例である。
【0028】
算出部120は、最悪ケースのレンジ誤差に基づいてインテグリティパラメータを算出する。インテグリティパラメータは、測位において発生し得る誤差の信頼性に関する情報である。例えば、最悪ケースのレンジ誤差に関する値が、許容可能な最大誤差値を超える場合には、算出部120は、保護レベルが許容値を超えるようにインテグリティパラメータを増大させる。
【0029】
このように、算出部120は、決定された最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する。算出部120は、算出手段の一例である。
【0030】
生成部130は、補強情報を生成する。補強情報は、GNSS等の衛星を利用した位置情報の測位を行うシステムの性能を補強する情報である。補強情報は、衛星を使用した測位の精度及び安全性を補強するための情報であるともいえる。補強情報には、例えば、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報が含まれる。このとき、生成部130は、算出部120によって算出されたインテグリティパラメータをさらに含む補強情報を生成する。
【0031】
このように、生成部130は、算出されたインテグリティパラメータをさらに含む補強情報を生成する。生成部130は、生成手段の一例である。
【0032】
発信部140は、生成部130によって生成された補強情報を、アンテナ300を利用して発信する。発信された補強情報は、機上装置400において受信される。そして、機上装置400において、補強情報に基づいて保護レベルが算出される。
【0033】
このように、発信部140は、生成された補強情報を発信する。発信部140は、発信手段の一例である。
【0034】
次に、処理装置100の動作の一例を、図3を用いて説明する。なお本開示において、フローチャートの各ステップを「S1」のように、各ステップに付した番号を用いて表現する。
【0035】
図3は、処理装置100の動作の一例を説明するフローチャートである。決定部110は、電離圏が所定の状態である場合の、測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する(S1)。算出部120は、決定された最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する(S2)。生成部130は、算出されたインテグリティパラメータをさらに含む補強情報を生成する(S3)。発信部140は、生成された補強情報を発信する(S4)。
【0036】
このように、第1の実施形態の処理装置100は、航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置である。処理装置100は、電離圏が所定の状態である場合の、測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する。また、処理装置100は、決定された最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する。そして、処理装置100は、算出されたインテグリティパラメータをさらに含む補強情報を生成し、生成された補強情報を発信する。
【0037】
想定し得る最も厳しい条件で(すなわち、最も測位に影響を与える電離圏の状態を仮定して)、一定の最悪ケースのレンジ誤差が決定されると、保護レベルが大きく計算される。そのため、保護レベルは許容値に達しやすくなる。言い換えると、保護レベルが過大に設定されやすくなる。一方で、電離圏の状態は、時間帯及び季節等、時期によって異なる。そこで、時期に応じて最悪ケースのレンジ誤差が決定されることにより、想定し得る最も厳しい条件で一定の最悪ケースのレンジ誤差が決定される場合と比べて、保護レベルは小さく計算される。これにより、処理装置100は、安全性を担保しつつ、保護レベルが過大に設定されることによるシステムの可用性の低下を抑制することができる。すなわち、処理装置100は、衛星を利用して測位される位置情報を補強するシステムに対して、可用性を向上させることができる。
【0038】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の衛星航法補強システムについて説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した衛星航法補強システム1000に関する更なる例を説明する。なお、第1の実施形態と重複する内容は、一部説明を省略する。
【0039】
第2の実施形態の衛星航法補強システム1000の構成の一例も、図1の例と同様に示される。衛星航法補強システム1000は、GBASを示すものとする。また、測位に使用される衛星は、GPS衛星であるとする。
【0040】
[衛星航法補強システム1000の詳細]
図4は、衛星航法補強システム1000の構成の一例を示すブロック図である。図4の例では、衛星航法補強システム1000は、処理装置100と基準局200とアンテナ300と機上装置400とを備える。処理装置100と基準局200とアンテナ300とは、GBASにおける地上側の装置を構成する。
【0041】
基準局200は、衛星からの測位信号を受信する。測位信号には、測位信号を発信した衛星の軌道情報が含まれる。基準局200は、軌道情報に基づいて、衛星の位置を算出してよい。衛星の位置とは、衛星の仰角及び方位角等の情報であってよい。基準局200は、測位信号、送信時刻、受信時刻、及び衛星の位置等を含む受信データを処理装置100に伝送する。基準局200は、例えば、測位信号を受信するGPS受信機として実現される。
【0042】
アンテナ300は、処理装置100によって生成された補強情報を発信する。アンテナ300は、例えば、VDB(VHF Data Broadcast)アンテナとして実現される。
【0043】
処理装置100は、決定部110と算出部120と生成部130と発信部140とを備える。また、処理装置100は、レンジ誤差算出部111と補正値算出部121とを備えてよい。さらに、処理装置100は、記憶装置190を有してよい。なお、処理装置100は、記憶装置190を有していなくともよい。例えば、記憶装置190は、処理装置100と通信可能に接続される外部の装置であってもよい。
【0044】
レンジ誤差算出部111は、最悪ケースのレンジ誤差を算出する。具体的には、レンジ誤差算出部111は、電離圏モデルに基づいて、対象点における最悪ケースのレンジ誤差を算出する。対象点とは、航空機が着陸する際に通るべき空中の位置である。例えば対象点は、予め定められる、着陸の際の航空機の進入コースに含まれる位置であってもよい。対象点を示す情報は、例えば、記憶装置190に格納される。
【0045】
電離圏モデルは、電離圏の状態をパラメータによりモデル化したものである。電離圏モデルは、例えば、異常状態である電離圏に関する各種のパラメータが示される。電離圏モデルは、電離圏脅威モデルと呼ばれることもある。図5は、電離圏モデルと衛星航法補強システム1000との関係を示す図である。なお、図5では、機上装置の記載を省略している。図5の例では、上空部分に電離圏モデルが示されている。当該電離圏モデルは、電離圏の異常状態を示す。この例では、電離圏モデルには、異常状態である電離圏の、変動を示す勾配S、移動速度V、幅W、変動幅Dが、パラメータとして示されている。なお、電離圏モデルに示されるパラメータはこの例に限られない。電離圏モデルは、電離圏の状態を示すパラメータであればよい。電離圏モデルは、記憶装置190に格納される。
【0046】
ここで、衛星からの測位信号を受信する場所による、電離圏の影響の違いを説明する。図5の例において、衛星が測位信号を発信する。基準局200で受信される測位信号は、電離圏の異常状態の部分を通過しない。一方で、対象点Pにおいて受信される測位信号は、電離圏の異常状態の部分を通過する。測位信号が電離圏を通過すると、測位信号の受信の際に遅延が生じる。これにより、測位信号が受信された場所と衛星との距離として算出される擬似距離に、誤差が発生する。このような、電離圏に基づいて発生する擬似距離の誤差を遅延量と称する。図5の例では、基準局200で受信される測位信号の遅延量と、対象点Pで受信される測位信号の遅延量と、に差分が生じる。処理装置100では、基準局200で受信された測位信号に基づいて、機上装置400における位置情報の測位のための補正値が算出される。そのため、この差分が大きいほど、機上装置400において当該補正値を利用した場合の測位に生じる誤差が大きくなる。最悪ケースのレンジ誤差は、当該測位に生じる誤差が最大となるような、対象点Pで受信される測位信号の遅延量を示す。
【0047】
図5の例のように、対象点Pに対応する位置において異常状態の電離圏が存在する場合に、遅延量が大きくなる。ただし、上述したように電離圏の状態は時期によって異なる。すなわち、時期によって、電離圏のとり得る異常状態は異なる。そこで、レンジ誤差算出部111は、各種の時期に対応する電離圏の異常状態ごとの、最悪ケースのレンジ誤差を算出する。このとき、所定の時期ごとの電離圏の状態を示す電離圏モデルが記憶装置190に格納される。言い換えると、レンジ誤差算出部111は、電離圏モデルのそれぞれに応じた、最悪ケースのレンジ誤差を算出する。
【0048】
例えば、電離圏の状態は、時間帯によって異なる。具体的には、太陽が地平線より上に存在する昼の時間帯(すなわち日没前)と、太陽が地平線より下に存在する夜の時間帯(すなわち日没後)とによって、電離圏の状態は異なる。そこで、日没前にとり得る異常状態を示す電離圏モデルと、日没後にとり得る異常状態を示す電離圏モデルと、が記憶装置190に格納されてよい。また、電離圏の状態は、季節によって異なる。季節は、例えば四季であるが、この例に限られない。季節は、1年が所定の基準で分割された期間であってよい。季節のそれぞれに対応する電離圏モデルが、記憶装置190に格納されてもよい。さらに、季節のそれぞれにおける時間帯ごとの電離圏モデルが存在してもよい。例えば、夏の日没前に対応する電離圏モデル及び夏の日没後に対応する電離圏モデル等が、記憶装置190に格納されてよい。
【0049】
レンジ誤差算出部111は、電離圏モデルに示されるパラメータを網羅的に変化させて、対象点で受信される測位信号の遅延量のシミュレーションを行う。これにより、レンジ誤差算出部111は、上述した、測位に生じる誤差が最大となるような、対象点で受信される測位信号の遅延量を算出する。すなわち、レンジ誤差算出部111は、当該シミュレーションにより最悪ケースのレンジ誤差を算出する。
【0050】
このときレンジ誤差算出部111は、最悪ケースのレンジ誤差を、電離圏モデルのパラメータの関数のテーブルとして算出してよい。テーブルは、例えば、勾配Sを変数として、衛星の位置ごとの、最悪ケースのレンジ誤差が示されてよい。ここで、衛星の位置は、例えば、対象点を基準とした衛星の仰角であってもよい。なお、変数とする電離圏モデルのパラメータはこの例に限られない。
【0051】
レンジ誤差算出部111は、電離圏モデルのそれぞれについて、最悪ケースのレンジ誤差を算出する。すなわち、レンジ誤差算出部111は、所定の時期ごとの、最悪ケースのレンジ誤差を算出する。例えば、レンジ誤差算出部111は、時間帯ごとに最悪ケースのレンジ誤差を算出してよい。また、レンジ誤差算出部111は、季節に応じた時間帯ごとに、最悪ケースのレンジ誤差を算出してよい。
【0052】
このように、レンジ誤差算出部111は、所定の時期ごとの電離圏の状態を表す電離圏モデルに基づいて、電離圏モデルのそれぞれに応じた最悪ケースのレンジ誤差を算出する。レンジ誤差算出部111は、レンジ誤差算出手段の一例である。
【0053】
なお、上述の例に限られず、レンジ誤差算出部111は、位置情報の測位を行いたいとき、すなわち、現在の時期に対応する電離圏モデルを選択し、選択された電離圏モデルに基づいて最悪ケースのレンジ誤差を算出してもよい。レンジ誤差算出部111は、算出された最悪ケースのレンジ誤差を記憶装置190に格納する。
【0054】
決定部110は、時期に応じて、最悪ケースのレンジ誤差を決定する。例えば、レンジ誤差算出部111によって、予め、所定の時期ごとの最悪ケースのレンジ誤差が算出されているとする。すなわち、複数の最悪ケースのレンジ誤差が算出されているとする。この場合、決定部110は、算出された最悪ケースのレンジ誤差のうち、位置情報の測位を行う時期に応じた最悪ケースのレンジ誤差を決定する。レンジ誤差算出部111が、位置情報の測位を行いたいときに応じて最悪ケースのレンジ誤差を算出している場合には、決定部110は、当該算出された最悪ケースのレンジ誤差を、測位に利用するものとして決定する。
【0055】
補正値算出部121は、補正値を算出する。具体的には、補正値算出部121は、基準局200から伝送された受信データに基づいて、擬似距離と真距離との差分を算出する。そして、補正値算出部121は、当該差分に基づく補正値を算出する。このとき補正値算出部121は、位置情報の測位に使用される可能性のある衛星ごとに補正値を算出する。このような、補正値を算出する仕組みは、ディファレンシャルGPSと呼ばれることもある。
【0056】
算出部120は、最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、インテグリティパラメータを算出する。インテグリティパラメータは、測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報である。インテグリティパラメータは、機上装置400において保護レベルの算出の際に用いられる。なお、インテグリティパラメータは、国際標準で定められるパラメータである。例えば、インテグリティパラメータは、σpr_gnd及びσvig等として表現される。
【0057】
上述のように、最悪ケースのレンジ誤差は、電離圏モデルのパラメータの関数のテーブルとして表現される。算出部120は、最悪ケースのレンジ誤差を用いて、位置情報の測位に利用し得る衛星ごとの遅延量を特定する。測位に利用し得る衛星は、補正値算出部121によって補正値が算出された衛星であってよい。例えば算出部120は、補正値が算出された衛星の位置の情報と、最悪ケースのレンジ誤差と、を用いて衛星ごとの遅延量を特定してよい。そして、算出部120は、特定された遅延量に基づいて、測位を行った場合の位置情報の誤差値を算出する。
【0058】
ここで、位置情報の測位には、複数の衛星からの測位信号を利用する必要がある。例えば、測位に利用し得る衛星がX個(Xは自然数)存在するとする。また、位置情報を測位するためにn個(X>n、nは自然数)の衛星の測位信号が必要であるとする。このとき、算出部120は、X個の衛星からn個の衛星を選択し、選択された衛星のセットを利用した場合の位置情報の誤差値を算出する。そして、算出部120は、当該誤差値が、予め定められる最大誤差値を超える場合、保護レベルが許容値を超えるようなインテグリティパラメータを算出する。なお、算出部120は、衛星のすべての選択パターンについて、誤差値を算出してよい。すなわち、算出部120は、通りの衛星のセットについて誤差値を算出してよい。そして、算出部120は、算出された誤差値のそれぞれについて最大誤差値を超えるか否か判定し、インテグリティパラメータを算出してよい。なお、インテグリティパラメータの算出方法はこの例に限られない。
【0059】
なお、算出部120は、最大誤差値を超える誤差値が算出された、衛星または衛星のセットを除外してもよい。すなわち、算出部120は、最大誤差値を超えない誤差値が算出された衛星のセットを対象として、インテグリティパラメータを算出してもよい。
【0060】
生成部130は、補強情報を生成する。具体的には、補正値算出部121によって算出された補正値と、算出部120によって算出されたインテグリティパラメータと、を含む補強情報を生成する。補強情報は、GBASメッセージと呼ばれることもある。ここで、算出部120によって、最大誤差値を超えない誤差値が算出された衛星のセットを対象として、インテグリティパラメータが算出された場合、生成部130は、除外された衛星に関する補正値を補強情報に含めないようにしてもよい。これにより、機上装置400は、除外された衛星を利用した測位を行わない。すなわち、機上装置400は、測位の際に、保護レベルを超えるような衛星のセットを使用しない。
【0061】
このように、インテグリティパラメータを算出し、保護レベルを超えるような衛星のセットを機上装置において使用させないような仕組みは、ジオメトリスクリーニング処理と呼ばれることもある。
【0062】
発信部140は、生成された補強情報を発信する。具体的には、発信部140は、アンテナ300に補強情報を発信させる。このとき補強情報は、アンテナ300から、対象点の位置を含む範囲に放送される。なお、この例に限られず、発信部140は、上空を飛行する航空機の機上装置400を特定してもよい。すなわち、補強情報は、特定された機上装置400に向けて送信されててもよい。
【0063】
機上装置400は、保護レベル算出部410と測位部420とを備える。保護レベル算出部410は、インテグリティパラメータを用いて保護レベルを算出する。測位部420は、位置情報の測位を行う。より具体的には、保護レベルが、予め定められる許容値を超えない場合、測位部420は、位置情報の測位を続ける。このとき、測位部420は、補強情報に含まれる補正値を利用して、測位された位置情報の補正を行う。すなわち、航空機は、着陸コースへの進入を継続する。保護レベルが許容値を超える場合、航空機は、衛星を利用した位置情報に基づく着陸コースへの進入を回避する。
【0064】
[衛星航法補強システム1000の動作例]
次に、衛星航法補強システム1000の動作の一例を、図6を用いて説明する。
【0065】
図6は、衛星航法補強システム1000の動作の一例を示すシーケンス図である。処理装置100のレンジ誤差算出部111は、最悪ケースのレンジ誤差を算出する(S101)。このとき、レンジ誤差算出部111は、例えば、時期に応じた電離圏モデルごとに、最悪ケースのレンジ誤差を算出してよい。
【0066】
基準局200は、複数の衛星からの測位信号を受信する(S102)。そして、測位信号等の情報を含む受信データを処理装置100に伝送する(S103)。
【0067】
処理装置100の決定部110は、時期に応じて、最悪ケースのレンジ誤差を決定する(S104)。例えば、レンジ誤差算出部111によって複数の最悪ケースのレンジ誤差が算出されている場合、決定部110は、位置情報の測位を行いたいときに対応する最悪ケースのレンジ誤差を決定する。
【0068】
補正値算出部121は、補正値を算出する(S105)。例えば、補正値算出部121は、基準局200から伝送された受信データに基づいて、擬似距離と真距離との差分を算出する。そして、補正値算出部121は、当該差分に基づく補正値を衛星ごとに算出する。
【0069】
算出部120は、最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、インテグリティパラメータを算出する(S106)。例えば、算出部120は、測位に利用し得る衛星のセットのそれぞれについて、測位される位置情報の誤差値を算出する。そして、算出部120は、算出された誤差値のそれぞれが最大誤差値を超えるか否かを判定し、インテグリティパラメータを算出する。
【0070】
生成部130は、算出された補正値及びインテグリティパラメータを含む補強情報を生成する(S107)。発信部140は、アンテナ300に補強情報を発信させる(S108)。アンテナ300は、補強情報を発信する(S109)。
【0071】
機上装置400の保護レベル算出部410は、補強情報に含まれるインテグリティパラメータを用いて、保護レベルを算出する(S110)。保護レベルが許容値を超えない場合、測位部420は、衛星に基づく測位を続ける(S111)。保護レベルが許容値を超える場合は、航空機は着陸コースの進入を一時的に回避する。この場合には、機上装置400は、航空機の操縦士等に向けて、保護レベルが許容値を超えている旨を示す通知を行ってよい。
【0072】
なお、本動作例は、あくまで一例である。すなわち、衛星航法補強システム1000の動作例はこの例に限られない。図6で説明した処理は、適宜順番が異なってもよい。例えば、S101の処理は、S104の処理の前であればよい。
【0073】
このように、第2の実施形態の処理装置100は、航空機の機上装置に対して、衛星からの測位信号を利用した位置情報の測位に関する誤差を補正するための情報を含む補強情報を発信する装置である。処理装置100は、電離圏が所定の状態である場合の、測位信号の受信において生じ得る誤差を示す最悪ケースのレンジ誤差を、時期に応じて決定する。また、処理装置100は、決定された最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、測位において生じ得る誤差の信頼性に関する情報であるインテグリティパラメータを算出する。そして、処理装置100は、算出されたインテグリティパラメータをさらに含む補強情報を生成し、生成された補強情報を発信する。
【0074】
最悪ケースのレンジ誤差は、時間帯ごとに予め算出されてよい。この場合には、処理装置100は、測位が行われる時間帯に基づいて、最悪ケースのレンジ誤差を決定してよい。また、最悪ケースのレンジ誤差は、季節に応じた時間帯ごとに予め算出されてよい。この場合には、処理装置100は、測位が行われる季節及び時間帯に基づいて、最悪ケースのレンジ誤差を決定してよい。
【0075】
また、処理装置100は、所定の時期ごとの電離圏の状態を表す電離圏モデルに基づいて、電離圏モデルのそれぞれに応じた最悪ケースのレンジ誤差を算出してよい。このとき、処理装置100は、算出された最悪ケースのレンジ誤差のうち、測位を行う時期に応じた最悪ケースのレンジ誤差を決定する。
【0076】
また、処理装置100は、インテグリティパラメータを算出する際に、以下のような処理を行ってよい。具体的には、処理装置100は、決定された最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、測位に利用し得る衛星ごとの、測位信号の遅延量を特定する。また、処理装置100は、測位に利用し得る衛星のうち、二以上の衛星のセットごとに、特定された遅延量に基づく、測位を行った場合の位置情報の誤差値を算出する。そして、処理装置100は、算出された当該誤差値のそれぞれが、最大誤差値を超えるか否かに応じて、インテグリティパラメータを算出する。
【0077】
想定し得る最も厳しい条件で、一定の最悪ケースのレンジ誤差が決定されると、保護レベルが大きく計算される。そのため、保護レベルが過大に設定されやすくなる。一方で、電離圏の状態は、時間帯及び季節等、時期によって異なる。そこで、時期に応じて最悪ケースのレンジ誤差が決定されることにより、想定し得る最も厳しい条件で一定の最悪ケースのレンジ誤差が決定される場合と比べて、保護レベルは小さく計算される。これにより、処理装置100は、安全性を担保しつつ、保護レベルが過大に設定されることによるシステムの可用性の低下を抑制することができる。すなわち、処理装置100は、衛星を利用して測位される位置情報を補強するシステムに対して、可用性を向上させることができる。
【0078】
[変形例1]
レンジ誤差算出部111は、決定部110に含まれる構成であってもよい。また、補正値算出部121は、算出部120に含まれる構成であってもよい。
【0079】
[変形例2]
インテグリティパラメータの算出方法は上述の例に限られない。例えば、算出部120は、最悪ケースのレンジ誤差に基づいて、測位に利用し得る衛星のうち一の衛星のセットについて、位置情報の誤差値を算出する。また、算出部120は、初期値が設定されたインテグリティパラメータに基づいて、当該衛星のセットについて保護レベルを算出する。算出された誤差値が、当該保護レベルを超えている場合、算出部120は、保護レベルが誤差値を超えるようにインテグリティパラメータを増大させる。そして、算出部120は、測位に利用し得る衛星のうちの、すべての衛星のセットについて当該処理を繰り返すことにより、インテグリティパラメータを算出する。
【0080】
[変形例3]
衛星航法補強システム1000には、IFM(Ionospheric Field Monitor)が導入されていてもよい。IFMは、異常状態である電離圏の変動を示す勾配を監視するための技術である。この場合、図5の例において、IFM局が、滑走路付近であって、基準局200よりも対象点Pに近い位置に設置される。すなわち、IFM局は、滑走路に対する、航空機の着陸コースに向けて設置される。IFM局において監視された情報は、処理装置100に伝送される。
【0081】
この場合、レンジ誤差算出部111は、IFMにより監視された電離圏の勾配の情報に基づいて、最悪ケースのレンジ誤差を算出する。これにより、最悪ケースのレンジ誤差の確度を向上させることができる。
【0082】
<衛星航法補強システムのハードウェアの構成例>
上述した第1、及び第2の実施形態の衛星航法補強システムを構成するハードウェアについて説明する。図7は、各実施形態における衛星航法補強システムを構成するコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。コンピュータ装置90において、各実施形態及び各変形例で説明した、処理装置及び処理方法が実現される。例えば、各実施形態及び各変形例で説明した処理装置、及び機上装置等のそれぞれが、図7に示すハードウェア構成を有していてよい。
【0083】
図7に示すように、コンピュータ装置90は、プロセッサ91、RAM(Random Access Memory)92、ROM(Read Only Memory)93、記憶装置94、入出力インタフェース95、バス96、及びドライブ装置97を備える。なお、処理装置、及び機上装置は、複数の電気回路によって実現されてもよい。
【0084】
記憶装置94は、プログラム(コンピュータプログラム)98を格納する。プロセッサ91は、RAM92を用いて本申請支援システムのプログラム98を実行する。具体的には、例えば、プログラム98は、図3、及び図6等に示す処理をコンピュータに実行させるプログラムを含む。プロセッサ91が、プログラム98を実行することに応じて、本衛星航法補強システムの各構成の機能が実現される。プログラム98は、ROM93に記憶されていてもよい。また、プログラム98は、記憶媒体80に記録され、ドライブ装置97を用いて読み出されてもよいし、図示しない外部装置から図示しないネットワークを介してコンピュータ装置90に送信されてもよい。
【0085】
入出力インタフェース95は、周辺機器(キーボード、マウス、表示装置、及び通信機器など)99とデータをやり取りする。入出力インタフェース95は、データを取得または出力する手段として機能する。このとき入出力インタフェース95は、外部の図示しないネットワークを介したデータのやり取りを行ってもよい。バス96は、各構成を接続する。
【0086】
なお、衛星航法補強システムの実現方法には様々な変形例がある。例えば、衛星航法補強システムに含まれる各構成は、それぞれ専用の装置として実現することができる。また、衛星航法補強システムは、それぞれ複数の装置の組み合わせに基づいて実現することができる。
【0087】
各実施形態の機能における各構成を実現するためのプログラムを記憶媒体に記録させ、該記憶媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記憶媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記憶媒体、及びそのプログラム自体も各実施形態に含まれる。
【0088】
該記憶媒体は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disc)-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、またはROMであるが、この例に限られない。また該記憶媒体に記録されたプログラムは、単体で処理を実行しているプログラムに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS(Operating System)上で動作して処理を実行するプログラムも各実施形態の範疇に含まれる。
【0089】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0090】
また、上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 処理装置
110 決定部
111 レンジ誤差算出部
120 算出部
121 補正値算出部
130 生成部
140 発信部
190 記憶装置
200 基準局
300 アンテナ
400 機上装置
410 保護レベル算出部
420 測位部
1000 衛星航法補強システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7