(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172064
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】走行経路設計装置及びそれを用いた車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241205BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20241205BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20241205BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/0968
G01C21/34
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089540
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】598088871
【氏名又は名称】株式会社NTTデータオートモビリジェンス研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政彦
(72)【発明者】
【氏名】泉名 克郎
(72)【発明者】
【氏名】謝 薇▲ふぇん▼
(72)【発明者】
【氏名】宇井 健一
(72)【発明者】
【氏名】小西 浩之
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC16
2F129DD53
2F129DD62
2F129EE52
2F129GG04
2F129GG05
2F129GG06
2F129GG17
2F129GG18
3D241BA11
3D241BA42
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5H181AA01
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5H181BB20
5H181CC04
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5H181CC14
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5H181FF14
5H181FF22
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の走行経路をより効率的に決めることのできる走行経路設計装置を提供することである。
【解決手段】対象車両100の道路における走行経路を設計する走行経路設計装置であって、目的地に続く道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける対象車両の行動のコストを表すコストマップ情報を取得するコストマップ取得部(12、13)(14、15)(16、17)と、前記コストマップ情報にて表されるコストに基づいて前記道路における前記対象車両が走行すべき経路を決定する経路決定部18と、を有する構成となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両の道路における走行経路を設計する走行経路設計装置であって、
目的地に続く道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける対象車両の行動のコストを表すコストマップ情報を取得するコストマップ取得部と、
前記コストマップ情報にて表されるコストに基づいて前記道路における前記対象車両が走行すべき経路を決定する経路決定部と、を有する走行経路設計装置。
【請求項2】
前記コストマップ情報は、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにある間隔をもって配列されるウェイポイントのそれぞれに対して定められたコストを表す、請求項1記載の走行経路設計装置。
【請求項3】
前記コストマップ情報は、
前記道路に設定された複数の経路のそれぞれの前記対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報を含む、請求項1記載の走行経路設計装置。
【請求項4】
前記コストマップ情報は、
前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける当該対象車両の対向移動体の移動を塞ぐ行動のコストを表す譲り合いコストマップ情報、及び前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける道路交通規則に基づいた当該対象車両の行動のコストを表す道路交通規則コストマップ情報の少なくともいずれかを含む、請求項3記載の走行経路設計装置。
【請求項5】
前記コストマップ取得部は、
前記対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を取得する前方物体状況取得部と、
前記前方物体状況取得部にて取得された前方物体情報にて表される当該対象車両前方の物体の状況に基づいて、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する障害物コストマップ生成部と、を有する請求項3記載の走行経路設計装置。
【請求項6】
前記障害物コストマップ生成部は、
前記前方物体状況取得部にて取得される前記前方物体情報にて表される状況の物体の前記道路の複数の経路のそれぞれを走行する車両との衝突の有無を予測する衝突予測部を有し、
前記衝突予測部での予測結果に基づいて前記障害物コストマップ情報を生成する、請求項5記載の走行経路設計装置。
【請求項7】
前記衝突予測部は、
前記前方物体状況取得部にて取得される前記前方物体情報にて表される状況の移動体と前記道路の複数の経路のそれぞれを走行する車両とが衝突するか否かをシミュレートするシミュレーション実行部を含み、
前記障害物コストマップ生成部は、前記シミュレーション実行部でのシミュレーションの結果に基づいて前記障害物コストマップ情報を生成する、請求項6記載の走行経路設計装置。
【請求項8】
前記コストマップ取得部は、
前記対象車両の前方所定範囲における道路の状況を表す前方道路情報を取得する前方道路状況取得部と、
前記対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を取得する前方物体状況取得部と、
前記前方道路状況情報にて表される状況の道路における前記前方物体情報にて表される物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて、前記前方道路情報にて表される状況の道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す行動コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する行動コストマップ生成部と、を有する請求項1記載の走行経路設計装置。
【請求項9】
前記コストマップ情報は、
前記道路に設定された複数の経路のそれぞれの前記対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報を含むとともに、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける当該対象車両の対向移動体の移動を塞ぐ行動のコストを表す譲り合いコストマップ情報、及び前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける道路交通規則に基づいた当該対象車両の行動のコストを表す道路交通規則コストマップ情報の少なくともいずれかを含み、
更に、前記コストマップ取得部は、
前記対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を取得する前方物体状況取得部と、
前記前方物体状況取得部にて取得された前方物体情報にて表される当該対象車両前方の物体の状況に基づいて、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する障害物コストマップ生成部と、を有する請求項1記載の走行経路設計装置。
【請求項10】
前記コストマップ取得部は、更に、
前記対象車両の前方所定範囲における道路の状況を表す前方道路情報を取得する前方道路状況取得部と、
前記前方道路情報にて表される状況の道路における前記前方物体情報にて表される物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて、前記前方道路情報にて表される状況の道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す行動コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する行動コストマップ生成部と、を有する請求項9記載の走行経路設計装置。
【請求項11】
対象車両の走行を制御する車両走行制御装置であって、
請求項1乃至10のいずれかに記載の走行経路設計装置と、
前記道路の前記走行経路設計装置にて得られた経路を走行するように前記対象車両の運転制御を行う運転制御部と、を有する車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象車両の道路における走行経路を設計する走行経路設計装置、及びその走行経路設計装置を用いて対象車両の走行を制御する車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この走行制御装置では、センサによって検出される車両の前方の障害物等の状況に応じて当該車両が走行すべき道路上の経路(例えば、車線)が決められる。例えば、センサによって車両の前方に障害物(固定物、速度の遅い他移動体等)が検出されると、当該車両が現在走行している車線に隣接する車線が当該車両の走行すべき経路として決められる。そして、そのように決められた道路上の経路を走行するように、当該車両の運転制御(アクセル制御、操舵制御、制動制御)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際の道路上の車両が走行すべき経路を決めるためには、前述した前方の障害物の状況を含む多くの要素についての検討が必要である。前述した前方障害物の他、例えば、道路交通規則(例えば、道路交通法)に基づいた要素(信号機の状態、交差点、緊急車両の通過等)、交通マナー(譲り合い等)等々を考慮しつつ当該車両が走行すべき経路を決定しなければならない。このような多くの要素について直列的に順次検討して最終的に1つの経路を決定することは、処理の負荷が非常に大きなものになってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両の走行経路をより効率的に決めることのできる走行経路設計装置を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、そのような走行経路設計装置によって決められる経路を走行するように車両を制御する車両走行制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る走行経路設計装置は、対象車両の道路における走行経路を設計する走行経路設計装置であって、目的地に続く道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける対象車両の行動のコストを表すコストマップ情報を取得するコストマップ取得部と、
前記コストマップ情報にて表されるコストに基づいて前記道路における前記対象車両が走行すべき経路を決定する経路決定部と、を有する構成となる。
【0008】
このような構成により、目的地に続く道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける対象車両の行動のコストを表すコストマップ情報が取得されると、そのコストマップ情報にて表されるコストに基づいて前記道路における対象車両が走行すべき経路が決定される。
【0009】
前記「コスト」は、車両の行動に適さない程度を表す情報を含み、数値、ランク、順位等の情報で表すことができる。そして、前記道路に設定された複数の経路のうち、対象車両の行動に適さない程度(コスト)がより低い経路を、すなわち対象車両の行動に適する程度がより高い経路を、前記対象車両が走行すべき経路として決定することができる。また、前記「行動」は、走行、停止、右折、左折、Uターン、追い越し、車線変更、加速、減速等を含み得る。
【0010】
また、多くの要素(例えば、経路探索により決められた目的地までの経路、障害物の状況、道路交通規則、交通マナー等々)それぞれについて対象車両の行動のコストをコストマップ情報として表すことができる。この場合、多くの要素についてのコストマップ情報を用いて車両が走行すべき経路を決めることができる。
【0011】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ情報は、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにある間隔をもって配列されるウェイポイントのそれぞれに対して定められたコストを表す、構成とすることができる。
【0012】
このような構成により、道路上に二次元的(道路に設定された各経路が延びる方向、複数の経路が配列される方向)に配列された多くのウェイポイントのそれぞれに対して定められたコストに基づいてそれらウェイポイントをつないでなる経路を対象車両が走行すべき経路として決定することができる。
【0013】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ情報は、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれの前記対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報を含む、構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報に基づいて、目的地まで続く道路に設定された複数の経路のいずれかを対象車両が走行すべき経路として決定することができる。
【0015】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ情報は、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける当該対象車両の対向移動体の移動を塞ぐ行動のコストを表す譲り合いコストマップ情報、及び前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける道路交通規則に基づいた当該対象車両の行動のコストを表す道路交通規則コストマップ情報の少なくともいずれかを含む、構成とすることができる。
【0016】
このような構成により、対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報と、当該対象車両の対向移動体の移動を塞ぐ行動のコストを表す譲り合いコストマップ情報及び道路交通規則に基づいた当該対象車両の行動のコストを表す道路交通規則コストマップ情報の少なくともいずれか一方とを含むコストマップ情報に基づいて、対象車両が走行すべき経路を決めることができる。
【0017】
前記譲り合いコストマップ情報は、対向移動体(例えば、対向車両)の移動を対象車両が塞ぐことなく譲るべき程度の高い経路ほど高いコストを、当該対象車両が対向移動体の移動のために譲るべき程度の低い経路ほど低いコストを表すことができる。
【0018】
前記道路交通規則は、日本国の道路交通法、各地域で定められた車両走行のために遵守すべき規則等、車両が道路を走行する際に遵守すべき定めを含み得る。
【0019】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ取得部は、前記対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を取得する前方物体状況取得部と、前記前方物体状況取得部にて取得された前方物体情報にて表される当該対象車両前方の物体の状況に基づいて、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する障害物コストマップ生成部と、を有する構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、前方物体状況取得部により対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報が取得される。そして、その前方物体情報にて表される当該対象車両の前方所定範囲における物体の状況に基づいて、道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報が生成される。このようにして取得された障害物コストマップ情報、及び及び前記対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報を含むコストマップ情報に基づいて、対象車両が走行すべき経路を決めることができる。
【0021】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記障害物コストマップ生成部は、前記前方物体状況取得部にて取得される前記前方物体情報にて表される状況の物体の前記道路の複数の経路のそれぞれを走行する車両との衝突の有無を予測する衝突予測部を有し、前記衝突予測部での予測結果に基づいて前記障害物コストマップ情報を生成する、構成とすることができる。
【0022】
このような構成により、前方物体状況取得部にて取得された前方物体情報にて表される当該対象車両の前方所定範囲における物体の状況下において、道路の複数の経路のそれぞれを走行する車両と前記物体との衝突の有無が予測される。そして、その予測結果に基づいて、前記道路の複数の経路のそれぞれにおける当該対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報が生成される。これにより、衝突するとの予測結果が得られた経路に対して比較的高いコストを、衝突しないとの予測結果が得られた経路に対して比較的低いコストを表すような障害物コストマップ情報が取得され得る。
【0023】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記衝突予測部は、前記前方物体状況取得部にて取得される前記前方物体情報にて表される状況の移動体と前記道路の複数の経路のそれぞれを走行する車両とが衝突するか否かをシミュレートするシミュレーション実行部を含み、前記障害物コストマップ生成部は、前記シミュレーション実行部でのシミュレーションの結果に基づいて前記障害物コストマップ情報を生成する、構成とすることができる。
【0024】
このような構成により、前方物体状況取得部にて取得された前方物体情報にて表される状況の移動体と道路の複数の経路のそれぞれを走行する車両とが衝突するか否かがシミュレートされ、そのシミュレーションの結果に基づいて、前記道路の複数の複数の経路のそれぞれにおける当該対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報が生成される。これにより、移動する移動体と衝突するとのシミュレーション結果が得られた経路に対して比較的高いコストを、移動する移動体と衝突しないとのシミュレーション結果が得られた経路に対して比較的低いコストを表すような障害物コストマップ情報が取得され得る。
【0025】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ取得部は、前記対象車両の前方所定範囲における道路の状況を表す前方道路情報を取得する前方道路状況取得部と、前記対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を取得する前方物体状況取得部と、前記前方道路状況情報にて表される状況の道路における前記前方物体情報にて表される物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて、前記前方道路情報にて表される状況の道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す行動コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する行動コストマップ生成部と、を有する構成とすることができる。
【0026】
このような構成により、対象車両の前方所定範囲における道路の状況を表す前方道路情報が取得され、前記前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報が取得される。そして、前方道路情報にて表される状況の道路における前記前方物体情報にて表される物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて、前記前方道路情報にて表される状況の道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の走行に対するコストを表す行動コストマップ情報が生成される。
【0027】
そして、種々の要素を個別的に考慮することなく、適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて生成された行動コストマップ情報を用いて対象車両が走行すべき経路が決められるので、より効率的にその経路を決めることができる。
【0028】
前記機械学習処理は、コンピュータ(機械)によってあるアルゴリズムに従って大量のデータを解析してその大量のデータの背景にあるルールを獲得する処理であって、教師あり学習、教師なし学習、強化学習のいずれであってもよい。例えば、試行錯誤を繰り返す強化学習処理において得られる失敗例や成功例を機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様とすることができる。
【0029】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ情報は、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれの前記対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報を含むとともに、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける当該対象車両の対向移動体の移動を塞ぐ行動のコストを表す譲り合いコストマップ情報、及び前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける道路交通規則に基づいた当該対象車両の行動のコストを表す道路交通規則コストマップ情報の少なくともいずれかを含み、更に、前記コストマップ取得部は、前記対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を取得する前方物体状況取得部と、前記前方物体状況取得部にて取得された前方物体情報にて表される当該対象車両前方の物体の状況に基づいて、前記道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する障害物コストマップ生成部と、を有する構成とすることができる。
【0030】
このような構成により、対象車両の目的地までの走行に対して予め定めた基礎コストを表すベースコストマップ情報とともに、当該対象車両の対向移動体の移動を塞ぐ行動のコストを表す譲り合いコストマップ情報及び道路交通規則に基づいた当該対象車両の行動のコストを表す道路交通規則コストマップ情報の少なくともいずれか一方、及び対象車両の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報に基づいた前記対象車両の行動のコストを表す障害物コストマップ情報に基づいて、当該対象車両が走行すべき経路を決めることができる。
【0031】
本発明に係る走行経路設計装置において、前記コストマップ取得部は、更に、前記対象車両の前方所定範囲における道路の状況を表す前方道路情報を取得する前方道路状況取得部と、前記前方道路情報にて表される状況の道路における前記前方物体情報にて表される物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて、前記前方道路情報にて表される状況の道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける前記対象車両の行動のコストを表す行動コストマップ情報を前記コストマップ情報として生成する行動コストマップ生成部と、を有する構成とすることができる。
【0032】
このような構成により、前述した少なくとも3種のコストマップ情報の他、前方道路情報にて表される状況の道路における前方物体情報にて表される物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて生成される、前記前方道路情報にて表される状況の道路において設定された複数の経路のそれぞれの前記対象車両の行動のコストを表す行動コストマップ情報に基づいて、対象車両が走行すべき経路を決めることができる。
【0033】
本発明に係る車両走行制御装置は、対象車両の走行を制御する車両走行制御装置であって、前述したいずれかの走行経路設計装置と、前記道路の前記走行経路設計装置にて得られた経路を走行するように前記対象車両の運転制御を行う運転制御部と、を有する構成となる。
【0034】
このような構成により、コストマップ情報にて表される目的地に続く道路に設定された複数の経路のそれぞれのコストに基づいて対象車両が走行すべき経路が決定される。そして、その決定された経路を目的地に向けて走行するように前記対象車両の運転制御が行われる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る走行経路設計装置によれば、実際の道路上の車両が走行すべき経路を決めるために考慮すべき要素が多数あったとしても、目的地に続く道路に設定された複数の経路のそれぞれにおける対象車両の行動のコストを表すコストマップ情報という統一的な情報に基づいてその道路における対象車両が走行すべき経路が決定されるので、当該対象車両の走行経路をより効率的に決めることができる。
【0036】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、上記のように効率的に決めることのできた経路を対象車両が目的地に向けて走行するように当該対象車両を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両走行制御装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す車両走行制御装置に含まれる本発明の実施の形態に係る走行経路設計装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、道路に設定される複数の経路(R-2~R+4)の一例と、その複数の経路のそれぞれに配置されたウェイポイントの一例とを示す図である。
【
図4】
図4は、対象車両が走行する道路に展開されたベースコストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、対象車両が走行する道路に展開された譲り合いコストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、対象車両が走行する道路に展開された道交法コストマップ情報(道路交通規則コストマップ情報)の一例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、対象車両が走行する道路に展開された静止障害物に基づく障害物コストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、ベースコストマップ情報、譲り合いコストマップ情報、道交法コストマップ情報及び障害物コストマップ情報の4層で構成された多層コストマップ情報の構造を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、
図4に示すベースコストマップ情報、
図5に示す譲り合いコストマップ情報、
図6に示す道交法コストマップ情報、及び
図7に示す障害物コストマップ情報にて構成される多層(4層)コストマップ情報を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す多層コストマップ情報を用いて決定される対象車両が走行すべき経路の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、対象車両が走行する道路に展開された静止障害物及び移動障害物(対向車両)に基づく障害物コストマップ情報の一例(その1)を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、対象車両が走行する道路に展開された静止障害物及び移動障害物(対向車両)に基づく障害物コストマップ情報の一例(その2)を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、対象車両が走行する道路に展開された静止障害物及び移動障害物(対向車両)に基づく障害物コストマップ情報の一例(その3)を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、
図4に示すベースコストマップ情報、
図5に示す譲り合いコストマップ情報、
図6に示す道交法コストマップ情報、及び
図11に示す障害物コストマップ情報にて構成される多層(4層)コストマップ情報を用いて決定される対象車両が位置すべきウェイポイントの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、
図4に示すベースコストマップ情報、
図5に示す譲り合いコストマップ情報、
図6に示す道交法コストマップ情報、及び
図12に示す障害物コストマップ情報にて構成される多層(4層)コストマップ情報を用いて決定される対象車両が位置すべきウェイポイントの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、
図4に示すベースコストマップ情報、
図5に示す譲り合いコストマップ情報、
図6に示す道交法コストマップ情報、及び
図13に示す障害物コストマップ情報にて構成される多層(4層)コストマップ情報を用いて決定される対象車両が位置すべきウェイポイントの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、対象車両が走行する道路の状況及びその道路に存在する移動体の状況の他の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、対象車両が走行する道路とその道路に交差する道路に展開されたベースコストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、対象車両が走行する道路とその道路に交差する道路に展開された譲り合いコストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、対象車両が走行する道路とその道路に交差する道路に展開された道交法コストマップ情報(道路交通規則コストマップ情報)の一例を模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、対象車両が走行する道路とその道路に交差する道路に展開された移動障害物(他車)に基づいた障害物コストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図22】
図22は、
図18に示すベースコストマップ情報、
図19に示す譲り合いコストマップ情報、
図20に示す道交法コストマップ情報、及び
図21に示す障害物コストマップ情報にて構成される多層(4層)コストマップ情報を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、強化学習のシステムの原理を示す図である。
【
図24A】
図24Aは、車両が走行する道路に交差する道路を他車両がその交差点に向かって走行する状況での前記車両の走行態様を決めるための強化学習(機械学習)の過程において経験的に得られた前記車両の走行態様の一例(その1:交差点手前で停止する)を示す図である。
【
図24B】
図24Bは、車両が走行する道路に交差する道路を他車両がその交差点に向かって走行する状況での前記車両の走行態様を決めるための強化学習の過程において経験的に得られた前記車両の走行態様の一例(その2:交差点内で停止する)を示す図である。
【
図24C】
図24Cは、車両が走行する道路に交差する道路を他車両がその交差点に向かって走行する状況での前記車両の走行態様を決めるための強化学習の過程において経験的に得られた前記車両の走行態様の一例(その3:交差点から交差する道路に進む)を示す図である。
【
図24D】
図24Dは、車両が走行する道路に交差する道路を他車両がその交差点に向かって走行する状況での前記車両の走行態様を決めるための強化学習の過程において経験的に得られた前記車両の走行態様の一例(その4:交差点を通過して交差点に進入する他車両を退避する)を示す図である。
【
図25】
図25は、対象車両が走行する道路とその道路に交差して他車両が走行する道路に展開された当該対象車両についての行動コストマップ情報の一例を模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、
図25に示す行動コストマップ情報を用いて決定される対象車両が走行すべき経路の一例を模式的に示す図である。
【
図27】
図27は、対象車両が
図26のように決定された経路を進んだ(退避した)後に、他車両が交差点を通過する状況を模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、
図27に示すように他車両が交差点を通過した後に、
図25に示す行動コストマップ情報を用いて決定される対象車両が走行すべき経路の一例を模式的に示す図である。
【
図29】
図29は、対向車両が
図28に示すように決定された経路を進んだ後に、
図18に示すベースコストマップ情報、
図19に示す譲り合いコストマップ情報、及び
図20に示す道交法コストマップ情報にて構成される多層コストマップ情報を用いて決定される対象車両が走行すべき経路の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0039】
本発明の実施の一形態に係る車両走行制御装置は
図1に示すように構成される。
【0040】
図1において、車両走行制御装置50は車両に搭載されており、その車両(以下、対象車両という)の道路における走行経路を設計する走行経路設計装置10と、走行経路設計装置10にて得られた経路を走行するように対象車両の運転制御を行う運転制御部30とを有している。走行経路設計装置10及び運転制御部30のそれぞれは、全体として、種々のハードウェア及びソフトウェアを含むコンピュータシステムによって構成される。
【0041】
対象車両は、外部装置あるいは車載ナビゲーション装置(図示略)から提供される地図情報を格納する地図情報格納部21、当該対象車両の位置に応じた検出信号を出力するGPSユニット22、対象車両の状態(車速、加速度等)に応じた検出信号を出力する車両センサ23、対象車両の所定周辺領域を撮影して周辺画像情報を生成するカメラ装置24、対象車両の周辺障害物に応じた信号を出力するレーダ装置25、及び当該対象車両に対する種々の環境物を検出するセンサ群26を備えている。そして、走行経路設計装置10は、これら地図情報格納部21、GPSユニット22、車両センサ22、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの信号や情報を取り込むことができる。また、これらの信号及び情報は運転制御部30にも提供され得る。走行経路設計装置10には、対象車両が走行すべき目的地までの道路を特定する目的地ルート情報が、例えば、ナビゲーション装置(図示略)等から提供される。
【0042】
対象車両が走行すべき目的地に続く道路Wに対して、例えば、
図3に示すように、当該道路Wの幅方向に所定間隔をもって配列される複数の経路R-2、R-1、R0、R+1、R+2、R+3、R+4(この場合、7つの経路)が設定される。複数の車線(車両通行帯)が規定されている道路Wでは、各車線を1つの経路として設定することができる。また、経路設計の要求される精度等に基づいて隣接する経路の間隔を決めることができる。車線が設定されていない道路では、隣接する径路の間隔は、例えば、10センチメートル程度に決めることができる。走行経路設計装置10は、道路Wに設定された複数の経路R-2~R+4から、各時点での状況に応じて対象車両が実際に走行すべき経路を決定する。
【0043】
運転制御部30は、前述した地図情報格納部21、GPSユニット22、車両センサ22、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの信号や情報を取り込みながら、目的地に向かう道路Wにおいて走行経路設計装置10によって決定された経路を走行するように、対象車両の運転制御を行う。この運転制御は、対象車両に搭載された操舵機構31、アクセル機構32及び制動機構33を制御することにより行われる。
【0044】
走行経路設計装置10は、
図2に示すように構成される。
【0045】
図2において、走行経路設計装置10は、情報収集部11、コスト演算モジュール12、コストマップジェネレータ13、障害物衝突シミュレータ14、障害物コストマップジェネレータ15、機械学習経験モジュール16、行動コストマップジェネレータ17、及び経路設計モジュール18を有する。走行経路設計装置10を構成するこれら情報収集部11、コスト演算モジュール12、コストマップジェネレータ13、障害物衝突シミュレータ14、障害物コストマップジェネレータ15、機械学習経験モジュール16、行動コストマップジェネレータ17、及び経路設計モジュール18は、前述したように、全体として、種々のハードウェア及びソフトウェアを含むコンピュータシステムによって構成される。
【0046】
情報収集部11は、対象車両が走行すべき目的地までの道路を特定する目的地ルート情報を取り込むとともに、地図情報格納部21、GPSユニット22、車両センサ22、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの信号や情報を収集する。コスト演算モジュール12は、車両走行ルール(例えば、キープレフトのルール、譲り合いルール、道路交通規則(例えば、道交法)に規定されたルール、悪路での走行ルール等)を規定したルールベースを備えている。コスト演算モジュール12は、所定周期にて、情報収集部11にて収集される各種情報(地図情報、目的地ルート情報、走行位置情報等)を取り込む。コスト演算モジュール12は、前記ルールベースとともに、取り込んだ各種情報に基づいて、対象車両の現在位置から目的地に続く道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4:
図3参照)のそれぞれにおける当該対象車両の前方所定範囲での行動(走行、停止、右折、左折、Uターン、追い越し、車線変更、加速、減速等)のコストを演算する。コストは、車両の行動に適さない程度を表す情報を含み、数値、ランク、順位等の情報で表すことができる。
【0047】
道路Wの複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれには、
図3に示すように、ある間隔をもって配列されるウェイポイントWP(
図3における黒丸点)が設定されている。各経路におけるウェイポイントWPの間隔は、経路設計において要求される精度に基づいて決めることができ、例えば、1メートル程度に設定することができる。コストマップジェネレータ13は、コスト演算モジュール12にて得られた目的地に続く道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)におけるコストに基づいて、当該各経路(R-2~R+4)上の各ウェイポイントWPのそれぞれにコストが対応づけられた形式のコストマップ情報を生成する。コスト演算モジュール12及びコストマップジェネレータ13は一体となってコストマップ情報を取得するためのコストマップ取得部を構成する。
【0048】
コスト演算モジュール12及びコストマップジェネレータ13によって生成されるコストマップ情報は、例えば、ベースコストマップ情報、譲り合いコストマップ情報、及び道交法コストマップ情報(道路交通規則コストマップ情報)を含み得る。ベースコストマップ情報は、目的地に続く道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれの対象車両の目的地に向かう走行(行動)に対して予め定めた基礎コストを表す。譲り合いコストマップ情報は、道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれにおける対象車両の対向移動体(例えば、対向車両)の移動を塞ぐ行動のコストを表す。道交法コストマップ情報は、道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれにおける道路交通法(道路交通規則)に基づいた対象車両の行動のコストを表す。例えば、目的地に続くセンターラインの無い比較的狭い道路Wに対して、例えば、
図4に模式的に示すようなベースコストマップ情報CMPbaseが生成され得、例えば、
図5に模式的に示すような譲り合いコストマップ情報CMPcomが生成され得、また、例えば、
図6に模式的に示すような道交法コストマップ情報CMPlowが生成され得る。
【0049】
図4に示すベースコストマップ情報CMPbaseは、センターラインの無い道路Wにおいて、歩行者の通りを確保しつつ対象車両100のキープレフトの走行を促すように、目的地に向かって左側の所定幅となる左ベースコスト領域Pbase1(斜線領域)のコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)と、目的地に向かって右側の前記左ベースコスト領域Pbase1より広い所定幅となる右ベースコスト領域Pbase2(斜線領域)のコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)とが、比較的高く(対象車両100の走行に適さない程度が比較的高く)なるように決められる。
図5に示す譲り合いコストマップ情報CMPcomは、センターラインの無い道路Wにおいて、目的地に向かって右側の領域を塞いで対向移動体の移動(例えば、対向車両の走行)を遮らないような対象車両100の走行を促すために、目的地に向かって右側の所定幅となる譲り合いコスト領域Pcom(斜線領域)のコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)が比較的高く(対象車両100が塞いでしまうような走行に適さない程度が高く)なるように決められている。
図6に示す道交法コストマップ情報CMPlowは、センターラインの無い道路Wにおいて、対象車両100の走行に対して特に道交法に基づいた制限が無いとして、道路W全体が比較的低いコストとなるように決められている。
【0050】
図2に戻って、障害物衝突シミュレータ14は、対象車両100の走行中に情報収集部11によって収集される、地図情報、GPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの信号及び情報に基づいて、その対象車両100の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を生成する(前方物体状況取得部の機能)。そして、障害物衝突シミュレータ14は、前記前方物体情報にて表される状況の物体が存在する道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれを走行する車両が前記物体に衝突するか否かをシミュレートして、その車両が前記物体に衝突するか否かを予測する(衝突予測部(障害物コストマップ生成部)の機能)。障害物コストマップジェネレータ15(障害物コストマップ生成部)は、障害物衝突シミュレータ14により得られた予測結果(シミュレート結果)に基づいて、前記道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれにおける対象車両100の走行のコスト(対象車両100の走行に適さない程度)を計算して、障害物コストマップ情報CMPobsを生成する。障害物コストマップ情報CMPobsは、前述したコストマップ情報(ベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、道交法コストマップ情報CMPlow)と同様に、各経路(R-2~R+4)上の各ウェイポイントWP(
図3参照)のそれぞれにコストが対応づけられた形式を有する。
【0051】
障害物衝突シミュレータ14及び障害物コストマップジェネレータ15は、一体となってコストマップ情報を取得するためのコストマップ取得部を構成し、例えば、目的地に続くセンターラインの無い比較的狭い道路Wに対して、例えば、
図7に模式的に示すような障害物コストマップ情報CMPobsを生成し得る。
【0052】
図7において、対象車両100の前方左側(目的地に向かって左側)に静止した状態の物体200(障害物)が存在している。このような物体200が存在する道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれを走行する車両が物体200に衝突するか否かが障害物衝突シミュレータ14によってシミュレートされる。そして、例えば、道路Wの経路R-2~R+1のそれぞれを走行する車両は物体200に衝突する一方、道路Wの前記経路R-2~R+1より右側の経路R+2~R+4のそれぞれを走行する車両は物体200に衝突しないという予測結果を得ることができる。そして、対象車両100が物体200に衝突しないように、前記予測結果に基づいて、
図7に示すように、経路R-2~R+1が通り物体200を囲む所定広さの障害物コスト領域Pobs(黒塗り)のコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)が特別高くなるような障害物コストマップ情報CMPobsが障害物コストマップジェネレータ15によって生成される。
【0053】
障害物衝突シミュレータ14は、情報収集部11にて収集される各種情報を所定周期(例えば、100ミリ秒)にて取り込んでおり、その取り込んだ情報に基づいて対象車両100の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を更新する。前方物体情報が得られる毎に、障害物衝突シミュレータ14は、道路Wにおける複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれを走行する車両が前記物体(前方物体情報)に衝突するか否かをシミュレートし、その車両が前記物体に衝突するか否かを予測する。そして、予測結果が得られる毎に、障害物コストマップジェネレータ15は、その予測結果に基づいて障害物コストマップ情報CMPobsを更新する。
【0054】
なお、機械学習経験モジュール16及び行動コストマップジェネレータ17については後述する。
【0055】
前述したように生成される、ベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、道交法コストマップ情報CMPlow、及び障害物コストマップ情報CMPobsは、形式的には
図8に示すような構造の多層コストマップ情報CMPmltとして構成される。対象車両100の安全走行の観点から、経路設計における考慮の優先度は、ベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、道交法コストマップ情報CMPlow、及び障害物コストマップ情報CMPobsの順で高くなり、障害物コストマップ情報CMPobsの優先度が最も高い。
【0056】
また、
図4に示すベースコストマップ情報CMPbase、
図5に示す譲り合いコストマップ情報CMPcom、
図6に示す道交法コストマップ情報CMPlow、及び
図7に示す障害物コストマップ情報CMPobsで構成される多層コストマップ情報CMPmltは、
図9に模式的に示される。この多層コストマップ情報CMPmltは、道路Wの左ベースコスト領域Pbase1及び右ベースコスト領域Pbase2と譲り合いコスト領域Pcomとの重なり領域base2/comそれぞれにおける各経路(R-2~R+4:その経路上のウェイポイントWP)において比較的高いコストを表す。また、この多層コストマップ情報CMPmltは、静止した物体200の周囲に設定される障害物コスト領域Pobsにおける各経路(R-2~R+4:その経路上のウェイポイントWP)において非常に高いコストを表す。
【0057】
図2に戻って、経路設計モジュール18(経路決定部)は、前述した多層コストマップ情報CMPmlt(
図8、
図9参照)にて表される対象車両100の走行のコストに基づいて、道路Wにおけるより低いコストのウェイポイントWPをつないだ経路を対象車両100が走行すべき経路として決定する。経路設計モジュール18は、例えば、
図10に示すように対象車両100が走行すべき経路Rdrを決定することができる。
【0058】
図10において、対象車両100(n)が位置する経路R0上のウェイポイントWPnから、コストの非常に高い障害物コスト領域Pobsを避けるように、より低いコストのウェイポイントWPn+1(経路R+1上)、WPn+2(経路R+2上)、WPn+3(経路R+3上)、WPn+4(経路R+3上)、WPn+5(経路R+3上)、WPn+6(経路R+3上)、WPn+7(経路R+3上)、WPn+8(経路R+3上)、WPn+9(経路R+3上)、WPn+10(経路R+2上)、WPn+11(経路R+1上)、及びWPn+12(経路R0上)をつなぐ経路Rdrが、ウェイポイントWPnに位置する当該対象車両100(n)が走行すべき経路として決定される。以後、所定周期にて、同様に、その時点で得られる多層コストマップ情報CMPmltに基づいて、より低いコストのウェイポイントWPをつなぐ経路が対象車両100の走行すべき経路Rrdとして決定される。
【0059】
一体となってコストマップ取得部を構成する障害物衝突シミュレータ14及び障害物コストマップジェネレータ15は、静止した状態の障害物(物体200)だけでなく、移動する障害物(対向車両等)が存在する道路Wの各経路のそれぞれにおける対象車両100の走行のコストを表す障害物コストマップ情報CMPobsを生成することができる。
【0060】
障害物衝突シミュレータ14は、前述したように情報収集部11によって収集される信号や情報に基づいて、対象車両100の前方所定範囲における物体の状況を表す前方物体情報を生成する。この前方物体情報は、例えば、前方所定範囲において対向車両等の移動体が移動する状況を表し得る。障害物衝突シミュレータ14は、前記前方物体情報にて表される状況の対向車両と道路Wの複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれを走行する車両とが衝突するか否かをシミュレートし(シミュレーション実行部の機能)、その車両が移動する前記対向車両に衝突するか否かを予測する。障害物コストマップジェネレータ15は、障害物衝突シミュレータ14にて得られた予測結果(シミュレーション結果)に基づいて前記道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれ(その経路上の各ウェイポイントWP)における対象車両100の走行のコストを計算して、障害物コストマップ情報CMPobsを生成する。
【0061】
障害物衝突シミュレータ14及び障害物コストマップジェネレータ15は、例えば、目的地に続くセンターラインの無い比較的狭い道路Wに対して、例えば、移動する対向車両300(300(1)、300(2)、300(3))の位置に応じて、
図11、
図12、
図13のように変化する障害物コストマップ情報CMPobsを生成し得る。
【0062】
図11において、対象車両100の前方左側に静止した状態の物体200(障害物)が存在するとともに、対象車両100の前方から対向車両300が走行してくる。このような物体200及び対向車両300の存在する道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれを走行する車両が物体200及び対向車両300のそれぞれに衝突するか否かが障害物衝突シミュレータ14によってシミュレートされる。そして、例えば、道路Wの目的地に向かって比較的左側の経路R-2~R+1のそれぞれを走行する車両は物体200に衝突し、道路Wの目的地に向かって比較的右側の経路R+1~R+4のそれぞれを走行する車両は走行する対向車両300に衝突するという予測結果(シミュレーション結果)を得ることができる。そして、対象車両100が静止した物体200及び走行する対向車両300に衝突しないように、前記予測結果(シミュレーション結果)に基づいて、
図11に示すように、経路R-2~R+1が通り物体200を囲む所定広さの静止障害物コスト領域Pobs1(黒塗り)のコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)が特別高くなるとともに、経路R+1~R+4が通り対向車両300(1)の予測移動領域となる移動障害物コスト領域Pobs2(1)(黒塗り)のコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)が特別高くなるような障害物コストマップ情報CMPobsが障害物コストマップジェネレータ15によって生成される。
【0063】
以後、対向車両300の移動とともに、対象車両100の前方所定範囲の物体の状況を表す前方物体情報が変化し、その変化する物体状態情報に応じて生成される障害物コストマップ情報CMPobsが変化する。障害物コストマップ情報CMPobsは、対向車両300の移動にともなって、例えば、
図12及び
図13に示すように、その対向車両300(2)、300(3)の位置に応じてコストの非常に高い移動障害物コスト領域Pobs2(2)、Pobs(3)が対象車両100に近づくように順次変化する。
【0064】
図4に示すベースコストマップ情報CMPbase、
図5に示す譲り合いコストマップ情報CMPcom、
図6に示す道交法コストマップ情報CMPlow、及び
図11、
図12、
図13に示すように変化する障害物コストマップ情報CMPobsで構成される多層コストマップ情報CMPmltは、
図14、
図15、
図16に模式的に示すように変化する。
図14、
図15、
図16において、多層コストマップ情報CMPmltは、静止した物体200の周囲に設定された静止障害物コスト領域Pobs1における各経路、及び対向車両300の移動(
図14における300(1)、
図15における300(2)、
図16における300(3)参照)とともに変化する移動障害物コスト領域Pobs2(
図14におけるPobs2(1)、
図15におけるPobs(2)、
図16におけるPobs(3)参照)における各経路(各経路上のウエイポイントWP)において非常に高いコストを表す。
【0065】
なお、経路設計において、障害物コストマップ情報CMPobs(静止障害物コスト領域Pobs1、移動障害物コスト領域Pobs2)が、ベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、及び道交法コストマップ情報CMPlowより高い優先度を有している。このため、多層コストマップ情報CMPmltを示す
図14、
図15及び
図16において、コストの特別に高い静止障害物コスト領域Pobs1及び移動障害物コスト領域Pobs2が、それより低いコストの左ベースコスト領域Pbase1及び右ベースコスト領域Pbase2と譲り合いコスト領域Pcomとの重なり領域base2/comより優先的に表されている。
【0066】
走行経路設計装置10における経路設計モジュール18は、
図14、
図15及び
図16のように変化する多層コストマップ情報CMPmltにて表される対象車両100の走行のコストに基づいて、道路Wにおけるより低いコストのウェイポイントWPをつないだ経路を対象車両100が走行すべき経路Rdrとして決定する。
【0067】
図14に示すウェイポイントWPnに位置する対象車両100(n)が走行すべき経路として、
図14とともに
図15及び
図16に示すように、それぞれコストの非常に高い静止した物体200を囲む静止障害物コスト領域Pobs1と走行する対向車両300(300(1)、300(2)、300(3))を囲む移動障害物コスト領域Pobs(1)、Pobs(2)、Pobs(3)とを避けるように、より低いコストのウェイポイントWPn+1(経路R0上)、WPn+2(経路R0上)、WPn+3(経路R-1上)及びWPn+4(経路R-1)をつなぐ経路Rdrが決定される。対象車両100(n+4)が位置するウェイポイントWPn+4の脇を対向車両300が通過するまで、対象車両100(n)が走行すべき経路として前記経路Rdrが維持される。
【0068】
そして、対向車両300がウェイポイントWPn+4の脇を通過した後、そのウェイポイントWPn+4に位置する対象車両100(n+4)の前方所定範囲には対向車両300が存在することなく静止した物体200しか存在しない。このような状況において、その対象車両100(n+4)が走行すべき経路として、例えば、前述した
図10に示すような障害物コスト領域Pobs(
図16における静止障害物コスト領域Pobs1)を避けるように延びる新たな経路Rdrを決定することができる。
【0069】
車両走行制御装置50(
図1参照)における運転制御部30は、地図情報及び、GPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの各種情報に基づいて、上述したように走行経路設計装置10により決定された目的地に続く道路Wにおける経路Rdrを走行するように、対象車両100の操舵機構31、アクセル機構32、及び制動機構33を制御(対象車両100の運転制御)する。その結果、例えば、目的地に続く道路Wにおいて、
図10に示すような経路Rdrが決められると、ウェイポイントWPnの対象車両100は、前方所定範囲に存在する物体200を避けるように、当該道路Wを前記経路Rdrに沿って走行する。また、例えば、目的地に続くWにおいて、
図14、
図15及び
図16に示すように経路Rdrが決められると、ウェイポイントWPnの対象車両100は、当該道路Wを前記経路Rdrに沿って、物体200より手前のウェイポイントWPn+4まで走行する。そして、その時点で、経路Rdrが維持されるので、対象車両100は、その経路Rdrの終端点であるウェイポイントWPn+4で停止した状態となる。その後、対向車両300がウェイポイントWPn+4の脇を通過して、物体200(静止障害物コスト領域Pobs1)を避ける新たな経路(例えば、
図10参照)が決定されると、対象車両100がその新たに決定された経路に沿って走行するように当該対象車両00の運転制御(操舵制御、アクセル制御、制動制御)が行われる。
【0070】
上述したような車両走行制御装置50における走行経路設計装置10によれば、実際の道路W上の対象車両100が走行すべき経路を決めるために考慮すべき要素が多数(目的地までのルート、キープレフトのルール、譲り合いのルール、道路交通規則に規定されたルール、前方障害物の状況等)あったとしても、目的地に続く道路Wに設定された複数の経路(R-2~R+4)のそれぞれにおける対象車両100の行動(走行等)のコストを表すコストマップ情報CMPという統一的な情報に基づいてその道路における対象車両の走行すべき経路が決定されるので、当該対象車両100の走行経路をより効率的に決めることができる。
【0071】
また、そのような走行経路設計装置10を用いた車両走行制御装置50によれば、上記のように効率的に決めることのできた経路Rdrを対象車両100が目的地に向けて走行するように当該対象車両100を制御することができる。
【0072】
ところで、例えば、
図17に示すような道路及び車両の状況を想定することができる。
【0073】
図17において、道路WAに道路WBが交差点INTにおいて斜めに交差している。道路WA及び道路WBのそれぞれは、車両(四輪自動車)がすれ違うことができる程度の幅を有していない。対象車両100が走行すべき目的地までの道路は、道路WAから交差点INTを右折して道路WBに入り、その道路WBを通って前記目的地まで続く。対象車両100が道路WAを交差点INTに向かって走行するとともに、道路WBを車両300が交差点INTに向かって走行する状況である。なお、道路WA及び道路WAのそれぞれには、前述した例と同様に、複数の経路R-2~R+4が設定されており、各経路には、ある間隔をもって配列されるウェイポイントWPが設定されている(
図3参照)。
【0074】
走行経路設計装置10では、上記のような状況において、一体となってコストマップ取得部を構成するコスト演算モジュール12及びコストマップジェネレータ13は、
図18に模式的に示すようなベースコストマップ情報CMPbase、
図19に模式的に示すような譲り合いコストマップ情報CMPcom、及び
図20に示すような道交法コストマップ情報CMPlowを生成する。
【0075】
図18に示すベースコストマップ情報CMPbaseは、センターラインの無い道路WAにおいて、交差点INTまでは、歩行者の通りを確保しつつ対象車両100のキープレフトの走行を促すように、交差点INTに向かって左側の所定幅となる左ベースコスト領域PAbase1のコスト(各ウェイポイントWPのコスト)と、交差点INTに向かって右側の前記左ベース領域PAbase1より広い所定幅となる右ベースコスト領域PAbase2のコスト(各ウエイポイントWPのコスト)と、目的地に向かう道路ではない道路WAの交差点INTを越えた目的地方向外ベースコスト領域PAbase3のコストと、が比較的高くなるように決められる。また、前記ベースコストマップ情報CMPbaseは、センターラインの無い道路WBにおいて、歩行者の通りを確保しつつ対象車両100のキープレフトの走行を促すように、交差点INTから目的地に向かって左側の所定幅となる左ベースコスト領域PBbase1のコスト(各ウェイポイントWPのコスト)と、目的地に向かって右側の前記左ベース領域PBbase1より広い所定幅となる右ベースコスト領域PBbase2のコスト(各ウェイポイントWPのコスト)と、が比較的高くなるように決められる。
【0076】
図19に示す譲り合いコストマップ情報CMPcomは、センターラインの無い道路WAにおいて、右側の領域を塞いで対向移動体の移動(例えば、自転車、オートバイ等の二輪車)を遮らないような対象車両100の走行を促すために、右側の所定幅となる譲り合いコスト領域PAcomのコスト(各ウェイポイントWPでのコスト)が比較的高くなるように決められている。また、前記譲り合いコストマップ情報CMPcomは、道路WBにおいて、交差点INTから離れる方向に向かって右側の所定幅となる譲り合いコスト領域PBcomのコスト(各ウェイポイントWPのコスト)が比較的高くなるように決められる。
【0077】
図20に示す道交法コストマップ情報CMPlowは、交差点INT内での停止が道交法違反となることから、交差点INTにおける交差点道交法コスト領域Pint/lowでの停車のコストが非常に高くなるように決められる。また、交差点INTを除くセンターラインの無い道路WA及び道路WBのそれぞれにおいて、対象車両100の走行に対して特に道交法に基づいた規制が無いとして、交差点INTを除く道路WA及び道路WBが比較的低いコストとなるように前記道交法コストマップ情報CMPlowは決められる。
【0078】
また、走行経路設計装置10では、
図17に示すような道路及び車両の状況において、一体となってコストマップ取得部を構成する障害物衝突シミュレータ14及び障害物コストマップジェネレータ15は、例えば、
図17に示す状況の道路WA及び道路WBに対して、例えば、移動する対向車両300(300(1)、300(2)、300(3))の位置に応じて、
図21のように変化する障害物コストマップ情報CMPobsを生成し得る。
【0079】
図21において、例えば、道路WBを交差点INTに向かい、左折しながら交差点INTを通過し、道路WAに進入して道路WAを対象車両100に向かう方向に進む車両300(300(1)、300(2)、300(3))が存在する状況において、道路WA及び道路WBのそれぞれに設定される複数の経路R-2~R+4のそれぞれを目的地に向かって(WA→INT→WB)走行する車両が前記車両300に衝突するか否かがシミュレートされる。そのシミュレーションから、どの経路を走行する車両も、前記車両300に衝突するという予測結果(シミュレーション結果)が得られる。そのような予測結果に基づいて、道路WBを交差点INTに向かう状態の車両300(1)を囲む第1移動障害物コスト領域Pobs(1)のコスト、この第1移動障害物コスト領域Pobs(1)に続き、左折しながら交差点INTを通過する状態の車両300(2)を囲む第2移動障害物コスト領域Pobs(2)のコスト、及びその第2移動障害物コスト領域Pobs(2)に続き、道路WAに進入して道路WAを対象車両100に向かう方向に進む300(3)を囲む第3移動障害物コスト領域Pobs(3)のコストが特別高くなるような障害物コストマップ情報CMPobsが生成され得る。
【0080】
図18に示すベースコストマップ情報CMPbase、
図19に示す譲り合いコストマップ情報CMPcom、
図20に示す道交法コストマップ情報CMPlow、及び
図21に示す障害物コストマップ情報CMPobsで構成される多層コストマップ情報CMPmltは、
図22に模式的に示すように構成される。
図22において、多層コストマップ情報CMPmltは、車両300(300(1)、300(2)、300(3))の移動とともに変化する第1移動障害物コスト領域Pobs(1)、第2移動障害物コスト領域Pobs(2)、及び第3移動障害物コスト領域Pobs(3)における各経路(各経路上のウェイポイントWP)において非常に高いコストを表す。
【0081】
なお、経路設計において、障害物コストマップ情報CMPobsが、ベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、及び道交法コストマップ情報CMPlowより高い優先度を有している。このため、前述した例(
図14、
図15、
図16参照)と同様に、多層コストマップCMPmltを示す
図22において、コストの特別に高い第1移動障害物コスト領域Pobs(1)、第2移動障害物コスト領域Pobs(2が)及び第3移動障害物コスト領域Pobs(3)は、より低いコストの他の領域より優先的に表示されている。
【0082】
ここで、走行経路設計装置10における経路設計モジュール18は、
図22に示すように変化する多層コストマップ情報CMPmltにて表される対象車両100の行動のコストに基づいて、目的地に向かう道路上の経路を決定することができない。即ち、道路WA、交差点INT、及び道路WBを通って目的地に向かう道路では、対象車両100が車両300に衝突しない経路を決定することができない。また、対象車両100が交差点INTの手前で停止していると、道路WBから交差点INTを左折して道路WAに進入する対向車両300がその対象車両100に衝突してしまう。
【0083】
そこで、他の経路を決定するために、複数の経路のそれぞれを走行する車両の更に異なる走行態様をもって車両300との衝突の有無をシミュレーションすることが考えられる。しかし、対象車両100の走行に際してリアルタイムで経路を決定する際に、各経路を走行する車両の更に異なる走行態様を考慮するために多くのシミュレーションが必要となってしまう。一般に、様々な障害物が存在する環境(物体情報で表される)でその障害物の移動経路を予測して、その障害物が道路Wに設定された複数の経路それぞれを走行する車両と衝突するか否かの判断は、大量なシミュレーションが必要となり、データ処理の負担が膨大なものになり得る。このような点を考慮して、走行経路設計装置10は、
図2に示すように、機械学習経験モジュール16及び行動コストマップジェネレータ17を備えている。
【0084】
機械学習経験モジュール16は、種々の状況の道路における種々の物体(障害物、車両等)の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に係る情報を保持(例えば、記憶部に記憶)している。なお、このような情報を外部システムからネットワーク及び無線システムを介して取得することもできる。
【0085】
機械学習とは、コンピュータ(機械)によってあるアルゴリズムに従って大量のデータを解析してその大量のデータの背景にあるルールを獲得する処理である。その機械学習処理として、例えば、強化学習処理が知られている。この強化学習処理は、試行錯誤を通してある環境において「価値を最大化するような行動」を学習するものである。具体的には、
図23に示すように、エージェント(Agent)が、ある環境(Environment)での行動(Action)を方策(ポリシー)に基づいて決定する。その行動は環境に影響を与え、その行動に影響されて変化した環境からその行動が良かったのかが評価される。その評価結果としての報酬(Reward)がエージェントに与えられる。その報酬に基づいてエージェントにおける方策(ポリシー)が更新される。以後、方策に基づいたエージェントの行動の決定、その行動により影響される環境での当該行動の評価(報酬)、その評価結果に基づいた方策の更新が順次繰り返され、最終的に得られる報酬(評価)が最大となるように順次方策が更新されていく(学習される)。このような学習により得られたエージェント(方策)に基づいて、ある環境下での行動を決定するための装置を構築することができる。
【0086】
道路や物体(移動体、固定物、標識、信号機)を含む様々な環境のもとで車両の適正な行動としての走行態様を得るための強化学習処理において、様々な失敗例や成功例が得られる。例えば、
図17に示す環境のように、互いに交差するそれぞれ車両がすれ違うことができる程度の幅を有していない道路WAと道路WBにおいて、交差点INTを右折して道路WBに進もうとする対象車両100が道路WAを交差点INTに向かって走行するとともに、他の車両300が道路WBを道路WAの対象車両100の方向に左折する意思(方向指示)をもって交差点INTに向かって走行する状況(環境)のもとでの適正な対象車両100の走行態様を決めるための強化学習処理では、例えば、
図24A、
図24B及び
図24Cのそれぞれに示す失敗例や、
図24Dに示すような成功例が得られ得る。
【0087】
図24Aに示す例では、道路WAを走行する対象車両100が交差点INTの手前で停止する。この場合、道路WBを走行する他の車両300が交差点INTを左折して道路WAに進むことができず、対象車両100と他の車両300とがお見合い状態になってしまう(失敗)。
図24Bに示す例では、道路WAを走行する対象車両100が交差点INT内で停止し、道路WBから交差点INTを左折して道路WAに進もうとする他の車両300に道を譲る。この場合、対象車両100の交差点INT内での停止が道路交通法違反になってしまう(失敗)。
図24Cに示す例では、道路WAを走行する対象車両100が交差点INTを右折して道路WBに進もうとする。この場合、道路WBが車両がすれ違うことができる程度の幅を有していないので、対象車両100は、道路WBから交差点INTに向かう他の車両300に衝突してしまう(失敗)。
【0088】
一方、
図24Dに示す例では、道路WAを走行する対象車両100が交差点INTを通り越して停止(退避)する。この場合、道路WBを走行する他の車両300が交差点INTを左折して道路WAを進むことができる(成功)。更に、この場合、対象車両100は交差点INTの手間まで後進し(戻り)、その後、交差点INTを右折して道路WBを進むことができる(成功)。
【0089】
機械学習経験モジュール16は、前述したように、種々の状況の道路における種々の物体の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための機械学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様(成功例、失敗例)に係る情報を保持している。その走行態様に係る情報として、例えば、前記強化学習処理にて得られた、
図24Aに示すような状況においける失敗例としての対象車両100の交差点INT手前での停止行動(走行態様)の情報、
図24Bに示すような状況における失敗例としての対象車両100の交差点INT内での停止行動(走行態様)の情報、
図24Cに示すような状況における失敗例としての対象車両100の交差点INTを右折して道路WBを進む行動(走行態様)の情報、及び
図24Dに示すような状況における成功例としての対象車両100の交差点INTを越えての停止(退避)行動(走行態様)の情報を含み得る。
【0090】
機械学習経験モジュール16は、情報収集部11によって収集される、地図情報、GPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの信号及び情報に基づいて、対象車両100の前方所定範囲における道路の状況を表す前方道路情報を生成する(前方道路状況取得部の機能)とともに、その対象車両100の前方所定範囲にける物体の状況を表す前方物体情報を生成する(前方物体状況取得部の機能)。例えば、
図17に示す道路及び物体(車両300)の状況において、道路WAを走行する対象車両100から交差点INTを通した道路WBの見通しが良い場合、カメラ装置300からの画像情報(前方物体情報)に基づいて、道路WBを左折の方向指示を行いつつ交差点INTに向かう車両300を認識することができる。また、
図17に示す状況において、交差点INTにカーブミラーが設置されている場合、カメラ装置24からの車両300が映るそのカーブミラーを含む画像情報(前方物体情報)に基づいて、道路WBを左折の方向指示を行いつつ交差点INTに向かう車両300を認識することができる。
【0091】
図17に示す状況では、例えば、前記前方道路状況は、「互いに交差(交差点INT)するそれぞれ車両がすれ違うことができる程度の幅を有していない道路WAと道路WBとが存在する」いう対象車両100の前方所定範囲の道路の状況を表す。また、前記前方物体情報は、「車両300が道路WBを左折する方向指示を行いつつ交差点INTに向かっている」という対象車両100の前方所定範囲における物体(車両300)の状況を表す。そして、機械学習経験モジュール16は、前述したように保持している種々の状況の道路における種々の物体(障害物、車両等)の状況のもとでの適正な車両の走行態様を決めるための強化学習処理(機械学習処理)の過程において経験的に得られている車両の様々な走行態様に係る情報から、特に、前記前方道路状況にて表される状況の道路(
図17参照)における前記前方物体情報にて表される車両300の状況(
図17参照)のもとでの車両(対象車両100)の走行態様に係る情報を探索する。その結果、例えば、
図24A~
図24Dに示すような失敗例に係る走行態様の情報や成功例に係る走行態様の情報を得ることができる。
【0092】
行動コストマップジェネレータ17(
図2参照:行動コストマップ生成部)は、機械学習経験モジュール16にて得られた前記強化学習処理の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様に基づいて、具体的には、
図24A~
図24Dに示すような対象車両100の行動としての走行態様に基づいて、道路WA及び道路WBのそれぞれに設定された複数の経路のそれぞれにおける対象車両100の行動のコストを表す行動コストマップ情報を生成する。
図17に示す道路及び物体の状況において生成される行動コストマップ情報CMPactは、例えば、
図25に模式的に示される。この行動コストマップ情報CMPactは、交差点INTの領域と道路WAにおける交差点INTの対象車両100の進行方向直前領域とを含む交差点行動領域Pact1における各経路(各経路上のウェイポイントWP)において停止に係る高いコストを表すとともに、道路WAにおける交差点INTを越えての移動を規制する目的地方向外行動領域Pact2における各経路(各経路上のウェイポイントWP)及び交差点INTから続く道路WBへの移動を規制する目的地方向行動領域Pact3における各経路(各経路上のウェイポイントWP)のそれぞれにおいて非常に高いコストを表す。
【0093】
図22に示す多層コストマップ情報CMPmlt(ベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、道交法コストマップ情報CMPlow、障害物コストマップCMPobs)に基づいて
図17に示す状況における対象車両100が走行すべき経路を決めることができなかった経路設計モジュール18は、
図25に示す行動コストマップ情報CMPactに基づいて対象車両100が走行すべき経路を決める。具体的には、
図26に示すように、ウェイポイントWPnに位置する対象車両100(n)の走行すべき経路が、停止コストの高い交差点行動領域Pact1内で停止することなく、また、コストの非常に高い道路WAの目的地方向外行動領域Pact2や道路WBの目的地方向行動領域Pact3に進入することなく、交差点INTを越えるように、経路R0上のウェイポイントWPnから、それぞれ同じく経路R0上のウェイポイントWPn+1、WPn+2、WPn+3、WPn+4、WPn+5、WPn+6、WPn+7、WPn+8、及び交差点INTを越えたウェイポイントWPn+9をつないでなる経路Rdr1に決められる。
【0094】
車両走行制御装置50(
図1参照)における運転制御部30は、前述したのと同様に、地図情報及び、GPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの各種情報に基づいて、走行経路設計装置10(経路設計モジュール18)により得られた前記経路Rdr1を走行するように、対象車両100の操舵機構31、アクセル機構32、及び制動機構33を制御(対象車両100の運転制御)する。その結果、道路WAにおいて、
図26に示すようにウェイポイントWPnの対象車両100(n)は、道路WAを前記経路Rdr1のウェイポイントWPn+1(対象車両100(n+1))から順次ウェイポイントWPをたどるように、交差点INTを越えたウェイポイントWPn+9(対象車両100(n+9))まで走行する。以後、経路Rdr1が維持されている間、対象車両100(100(n+9))は、その経路Rdr1の終端点であるウェイポイントWPn+9で停止した状態を維持する。
【0095】
その後、カメラ装置24及びレーダ装置25からの情報に基づいて、
図27に示すように、車両300が道路WBから交差点INTを通って道路WAを進むことが認識されると、経路設計モジュール18は、前記行動コストマップ情報CMPactに基づいて対象車両100が走行すべき経路を決める。具体的には、
図28に示すように、ウェイポイントWPn+9に位置する対象車両100(n+9)の走行すべき経路が、停止コストの高い交差点行動領域Pact1で停止することなく、また、コストの非常に高い道路WBの目的地方向行動領域Pact3に進入することなく、交差点INTを超えるように、経路R0上のウェイポイントWPn+9から、それぞれ同じく経路R0上のウェイポイントWPn+10、WPn+11、WPn+12、WPn+13、WPn+14、WPn+15、WPn+16、及び交差点INTを超えたウェイポイントWPn+17をつないでなる経路Rdr2に決められる。
【0096】
すると、車両走行制御装置50(
図1参照)における運転制御部30は、前述したのと同様に、地図情報及び、GPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの各種情報に基づいて、決定された前記経路Rdr2を後進走行するように、対象車両100の操舵機構31、アクセル機構32、及び制動機構33を制御(対象車両100の運転制御)する。その結果、道路WAにおいて、
図28に示すように、ウェイポイントWPn+9の対象車両100(n+9)は、道路WAを前記経路Rdr2のウェイポイントWP順次をたどるように、交差点INTを越えたウェイポイントWPn+17(対象車両100(n+17))まで後進走行する。以後、経路Rdr2が維持されている間、対象車両100(100(n+17))は、その経路Rdr2の終端点であるウェイポイントWPn+17で停止した状態を維持する。
【0097】
対象車両100(100(n+17))がウェイポイントWPn+17に達した時点で、道路WBを交差点INTに向かって進んでいた車両300(障害物)は既に存在しない。このような状況において、経路設計モジュール18は、前記行動コストマップ情報CMPact(
図25参照)に代えて、
図18に示すように決められたベースコストマップ情報CMPbase、
図19に示すように決められた譲り合いコストマップ情報CMPcom、及び
図20に示すように決められた道交法コストマップ情報CMPlowにより構成される多層コストマップ情報CMPmltに基づいて、対象車両100(100(17))の走行すべき経路Rdr3を決める。具体的には、
図29に示すように、走行経路Rdr3が決められる。
【0098】
図29において、対象車両100(n+17)が位置する道路WAにおける経路R0上のウェイポイントWPn+17から、より低いコストのウェイポイントWPを通るとともに、停止コストの高い交差点INTの交差点道交法領域Pint/lowで終端とならないように、道路WAにおける経路R0上のウェイポイントWPn+18及びWPn+19、交差点INT(道交法領域Ping/low)内のウェイポイントWPn+20及びWPn+21、更に道路WBにおける経路R0上のウェイポイントWPn+22及びWPn+23をつなぐ経路Rdr3が、当該対象車両100(n+17)が走行すべき経路として決定される。
【0099】
そして、運転制御部30は、前述したのと同様に、地図情報及び、GPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの各種情報に基づいて、決定された前記経路Rdr3を走行するように、対象車両100の操舵機構31、アクセル機構32、及び制動機構33を制御(対象車両100の運転制御)する。その結果、ウェイポイントWPn+17の対象車両100(n+17)は、前記経路Rdr3のウェイポイントWPをたどるようにして、道路WAを進んで交差点で右折して道路WBを通って目的地に向かうように走行する。
【0100】
以後、同様に、走行経路設計装置10が、ある周期をもって、その時点で得られる多層コストマップ情報CMPmltまたは行動コストマップCMPactに基づいて、より低いコストのウェイポイントWPをつなぐ経路を対象車両100の走行すべき経路Rdrとして決定する。そして、運転制御部30が、走行経路設計装置10にて得られた経路Rdrを走行するように対象車両100の運転制御(操舵機構31、アクセル機構32及び制動機構34の制御)を行う。
【0101】
上述した走行経路設計装置10によれば、複数の経路のそれぞれを走行する車両の更に異なる多くの走行態様(多くの要素)をもって車両300との衝突の有無をシミュレーションすることなく、適正な車両の走行態様を決めるための強化学習処理(機械学習処理)の過程において経験的に得られている車両の行動としての走行態様(
図24A~
図24D参照)に基づいて生成された行動コストマップ情報CMPactを用いて対象車両100が走行すべき経路が決められるので、より効率的にその経路を決めることができる。
【0102】
なお、上述した道交法コストマップ情報CMPlowは、前述したものに限定されず、道交法(道路交通法)で定められる種々の規制に基づいたコストを表すことができる。例えば、一時停止の標識が設置された道路の停止線の手前における通過コストを高く(停止コストを低く)、信号機の設置場所においてその信号機が「赤」のときに通過コストをきわめて高く(停止コストを低く)、信号機が「青」の時に通過コストを低く、信号機が「黄」のときに通過コストを比較的高く、また、救急車両が後方から近づく状況では、緊急車両が走行する経路の走行コストを高く、等するように道交法コストマップ情報CMPlowを決めることができる。
【0103】
コストマップ情報は、前述したベースコストマップ情報CMPbase、譲り合いコストマップ情報CMPcom、道交法コストマップ情報CMPlow、障害物コストマップ情報CMPobsに限定されない。道交法以外の道路交通規則、譲り合い以外の走行マナー等、種々の基準に基づいて車両行動についてのコストを表すコストマップ情報を用いることができる。
【0104】
前述した実施の形態では、走行経路設計装置10は、対象車両100に搭載されていたが、これに限定されない。走行経路設計装置10は、対象車両100以外の場所、例えば、クラウド上に配置することも可能である。この場合、目的地ルート情報、地図情報をはじめ、対象車両100に搭載されたGPSユニット22、車両センサ23、カメラ装置24、レーダ装置25及びセンサ群26からの信号及び情報は、無線通信及びネットワークを介して対象車両100から走行経路設計装置10に提供することができ、また、走行経路設計装置10にて得られた経路の情報も、無線通信及びネットワークを介して対象車両100の運転制御部30に提供することができる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る走行経路設計装置は、車両の走行経路をより効率的に決めることのできるという効果を有し、対象車両の道路における走行経路を設計する走行経路設計装置として有用である。
【符号の説明】
【0107】
10 走行経路設計装置
11 情報収集部
12 コスト演算モジュール
13 コストマップジェネレータ
14 障害物衝突シミュレータ
15 障害物コストマップジェネレータ
16 機械学習経験モジュール
17 行動コストマップジェネレータ
18 経路設計モジュール
21 地図情報格納部
22 GPSユニット
23 車両センサ
24 カメラ装置
25 レーダ装置
26 センサ群
30 運転制御部
31 操舵機構
32 アクセル機構
33 制動機構