(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172068
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】輪止め装置
(51)【国際特許分類】
B60T 3/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B60T3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089550
(22)【出願日】2023-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1)つくばフォーラム2023 (展示日:令和5年5月17日~令和5年5月18日) 2)JECA FAIR 2023(第71回電設工業展) (展示日:令和5年5月24日~令和5年5月26日)
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 政和
(57)【要約】
【課題】車輪に対して正しく設置されているか否かを容易に判断することのできる輪止め装置を提供する。
【解決手段】輪止め装置100は、タイヤ車輪の外周面と当接可能なストッパ部103を有する輪止め部材101と、輪止め部材101のストッパ部103よりも突出する突出位置と当該突出位置から退避する退避位置との間で移動可能な検知バー121と、検知バー121を突出位置に付勢する捩じりバネ115と、検知バー121と連動して突出位置に対応する非報知位置と退避位置に対応する報知位置との間で移動可能な目印部材130とを備え、輪止め部材101をストッパ部103がタイヤ車輪の外周面に当接する位置まで差し込んだとき、検知バー121が捩じりバネ115の付勢力に抗して突出位置から退避位置に押圧されることで、目印部材130が非報知位置から報知位置に移動する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、
前記車両に設けられた車輪の外周面と当接可能なストッパ部を有し、前記車輪と駐車路面との間に差し込まれる輪止め部材と、
前記輪止め部材に設けられて、前記ストッパ部よりも前記車輪の前記外周面との当接方向に突出する突出位置と、前記突出位置から退避する退避位置との間で移動可能な検知部と、
前記検知部を前記突出位置に付勢する付勢部と、
前記検知部と連動して、前記突出位置に対応する非報知位置と、前記退避位置に対応する報知位置との間で移動可能な目印部とを備え、
前記輪止め部材を前記ストッパ部が前記車輪の前記外周面に当接する位置まで差し込んだとき、前記検知部が前記車輪の前記外周面と当接して前記付勢部の付勢力に抗して前記突出位置から前記退避位置に押圧されることで、前記目印部が前記非報知位置から前記報知位置に移動することを特徴とする輪止め装置。
【請求項2】
前記輪止め部材の側面部に沿って長手方向に延びる揺動部材を有し、
前記揺動部材は、前記長手方向の一端側に前記検知部が設けられるとともに、前記長手方向の他端側に前記目印部が設けられて、前記長手方向の中間部に設けられた揺動軸を中心に第1揺動姿勢と第2揺動姿勢との間で揺動可能に構成され、
前記揺動部材が前記第1揺動姿勢であるとき、前記検知部が前記突出位置に位置するとともに、前記目印部が前記非報知位置に位置し、
前記揺動部材が前記第2揺動姿勢であるとき、前記検知部が前記退避位置に位置するとともに、前記目印部が前記報知位置に位置することを特徴とする請求項1に記載の輪止め装置。
【請求項3】
前記輪止め部材の側面部に設けられるカバー部材を有し、
前記輪止め部材の側面部と前記カバー部材との間に前記揺動部材が揺動可能に配置され、
前記揺動部材が第1揺動姿勢であるときは、前記目印部は前記カバー部材により隠蔽され、
前記揺動部材が第2揺動姿勢であるときは、前記目印部が前記カバー部材から突出して露出することを特徴とする請求項2に記載の輪止め装置。
【請求項4】
一対の前記揺動部材を有し、
前記輪止め部材の一方の側面部と他方の側面部とに前記揺動部材がそれぞれ設けられており、
一対の前記揺動部材は、前記揺動軸を中心に独立して揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の輪止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車両の逸走を防止する輪止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの車両においては、車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止めを設置することで車両の逸走防止を図っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輪止めは、車輪に対して正しく設置されていなければ十分な効果を発揮できず、車両が逸走するリスクが残る。しかしながら、従来の技術では、輪止めに対する安全確認として、輪止めが車輪に対して正しく設置されているか否かを容易に判断することが難しいという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車輪に対して正しく設置されているか否かを容易に判断することのできる輪止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る輪止め装置は、駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、前記車両に設けられた車輪の外周面と当接可能なストッパ部を有し、前記車輪と駐車路面との間に差し込まれる輪止め部材と、前記輪止め部材に設けられて、前記ストッパ部よりも前記車輪の前記外周面との当接方向に突出する突出位置と、前記突出位置から退避する退避位置との間で移動可能な検知部(例えば、実施形態における検知バー121)と、前記検知部を前記突出位置に付勢する付勢部(例えば、実施形態における捩じりバネ115)と、前記検知部と連動して、前記突出位置に対応する非報知位置と、前記退避位置に対応する報知位置との間で移動可能な目印部(例えば、実施形態における目印部材130)とを備え、前記輪止め部材を前記ストッパ部が前記車輪の前記外周面に当接する位置まで差し込んだとき、前記検知部が前記車輪の前記外周面と当接して前記付勢部の付勢力に抗して前記突出位置から前記退避位置に押圧されることで、前記目印部が前記非報知位置から前記報知位置に移動することを特徴とする。
【0007】
上記構成の輪止め装置において、前記輪止め部材の側面部に沿って長手方向に延びる揺動部材(例えば、実施形態におけるシーソー部材120)を有し、前記揺動部材は、前記長手方向の一端側に前記検知部が設けられるとともに、前記長手方向の他端側に前記目印部が設けられて、前記長手方向の中間部に設けられた揺動軸(例えば、実施形態における軸部材113)を中心に第1揺動姿勢と第2揺動姿勢との間で揺動可能に構成され、前記揺動部材が前記第1揺動姿勢であるとき、前記検知部が前記突出位置に位置するとともに、前記目印部が前記非報知位置に位置し、前記揺動部材が前記第2揺動姿勢であるとき、前記検知部が前記退避位置に位置するとともに、前記目印部が前記報知位置に位置することが好ましい。
【0008】
また、上記構成の輪止め装置において、前記輪止め部材の側面部に設けられるカバー部
材を有し、前記輪止め部材の側面部と前記カバー部材との間に前記揺動部材が揺動可能に配置され、前記揺動部材が第1揺動姿勢であるときは、前記目印部は前記カバー部材により隠蔽され、前記揺動部材が第2揺動姿勢であるときは、前記目印部が前記カバー部材から突出して露出することが好ましい。
【0009】
また、上記構成の輪止め装置において、一対の前記揺動部材を有し、前記輪止め部材の一方の側面部と他方の側面部とに前記揺動部材がそれぞれ設けられており、一対の前記揺動部材は、前記揺動軸を中心に独立して揺動可能に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る輪止め装置によれば、検知部が突出位置から退避位置に変位することに基づいて、輪止め部材のストッパ部が車輪の外周面に当接したことを検知するとともに、目印部が検知部に連動して非報知位置から報知位置に変位することにより、輪止め部材が車輪に正しく設置されたことを知らせるように構成したことで、作業者は輪止め部材が車輪に正しく設置されているか否かを目視にて容易に判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認を効果的に支援することができるとともに、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、その結果、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、輪止め部材に付加的に設けた検知部および目印部の存在により、輪止め部材を車輪に正しく設置すること(輪止め部材のストッパ部を車輪の外周面に密着させること)を作業者に対して意識付けすることができるため、ヒューマンエラーを起因とした災害事故を効果的に予防することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る輪止め装置では、検知部と目印部とを一体的に形成して、検知部と目印部とがシーソー状に交互に揺動するように構成したことで、装置全体の部品点数を減らして構造を簡易化することができるため、製造コストを低減させることができるとともに、故障の発生を低減させることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る輪止め装置では、目印部が報知位置にある状態において当該目印部がカバー部材から露出して視認可能となることで、輪止め部材が正しく設置されたことを一目で判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認をより一層効果的に支援することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る輪止め装置では、輪止め部材の両側面部に一対の揺動部材を設けて、一対の検知部が車輪の外周面の幅方向の内外で当該外周面と輪止め部材のストッパ部との当接を検知することで、輪止め部材がタイヤ車輪の幅方向の中央に真っ直ぐ設置されたことを容易に確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】高所作業車の制御系を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の輪止め装置をタイヤ車輪に設置した状態の側面図である。
【
図4】第1実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第1揺動姿勢にある状態)を前方から見た斜視図である。
【
図5】第1実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第2揺動姿勢にある状態)を前方から見た斜視図である。
【
図6】第1実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第1揺動姿勢にある状態)を後方から見た斜視図である。
【
図7】第1実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第2揺動姿勢にある状態)を後方から見た斜視図である。
【
図8】第1実施形態の輪止め装置の分解斜視図である。
【
図9】第1実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第1揺動姿勢にある状態)の側面図である。
【
図10】第1実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第2揺動姿勢にある状態)の側面図である。
【
図11】第2実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第1揺動姿勢にある状態)を前方から見た斜視図である。
【
図12】第2実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第2揺動姿勢にある状態)を前方から見た斜視図である。
【
図13】第2実施形態の輪止め装置の分解斜視図である。
【
図14】第2実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第1揺動姿勢にある状態)の側面図である。
【
図15】第2実施形態の輪止め装置(シーソー部材が第2揺動姿勢にある状態)の側面図である。
【
図16】第3実施形態の輪止め装置(検知ピンが突出位置にある状態)を前方から見た斜視図である。
【
図17】第3実施形態の輪止め装置(検知ピンが退避位置にある状態)を前方から見た斜視図である。
【
図18】第3実施形態の輪止め装置の分解斜視図である。
【
図19】第3実施形態の輪止め装置(カバー部材を外した状態)の側面図である。
【
図20】第3実施形態の輪止め装置(検知ピンが突出位置にある状態)の側面図である。
【
図21】第3実施形態の輪止め装置(検知ピンが退避位置にある状態)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を
図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0016】
高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0017】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0018】
車体2の下部の左右両サイドにおいて、後輪5rとリアジャッキ10rとの間には、輪止め装置100を格納するための輪止め格納部15が設けられている。なお、
図1では、車体2の左側後方の下部に取り付けられた輪止め格納部15のみが表れている。この輪止め格納部15は、上下方向に開放された開口部を有しており、輪止め装置100を2個1組で上方から差し込み可能に構成されている。本実施形態では、車体2には2箇所(左右両サイド)の輪止め格納部15が設けられているため、タイヤ車輪5の個数(4輪)に対応する合計4個の輪止め装置100を格納可能になっている。
【0019】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回作動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0020】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏作動させることができる。
【0021】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(
図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を回転駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り作動(水平旋回作動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0022】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転駆動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮駆動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮駆動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転駆動)などの各作動操作を行うことができる。
【0023】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、
図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを駆動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、ジャッキ装置10及び高所作業装置等を作動させる動力源となる架装部バッテリ59とを備えて構成される。
【0024】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0025】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動するポンプ駆動モータ52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。ポンプ駆動モータ52は、架装部バッテリ59からインバータ54を介して供給される電力により回転駆動される。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、
旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの駆動方向及び駆動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0026】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面(地面)とタイヤ車輪5の外周面(トレッド面)との間に輪止め装置100を設置して、車両の逸走防止を図るようになっている。
【0027】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る輪止め装置100について、
図3~
図8を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、
図4および
図5に示す矢印方向を基準として、輪止め装置100の長さ方向(差し込み方向)を「前後方向」、輪止め装置100の幅方向を「左右方向」、輪止め装置100の高さ方向を「上下方向」と定めるが、輪止め装置100の配置方向を特定するものではない。
【0028】
輪止め装置100は、
図3~
図8に示すように、タイヤ車輪5の外周面5tと駐車路面(「地面」とも呼称する)Gとの間に差し込まれる輪止め部材101と、輪止め部材101に取り付けられる可動機構110(
図8を参照)と、輪止め部材101の左右の両側面に揺動自在に取り付けられる一対のシーソー部材120(120A,120B)と、輪止め部材101の左右の両側面にシーソー部材120(120A,120B)を挟んで取り付けられる一対のカバー部材140(140A,140B)とを備えて構成される。なお、以下では、輪止め装置100(輪止め部材101)の前後方向の向きとして、タイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込まれる側(前端側)を「先端側」と定め、その反対側(後端側)を「基端側」と定める。
【0029】
輪止め部材101は、例えば有色(本実施形態では黄色)の合成樹脂材料を用いて楔形状に形成されている。輪止め部材101は、地面Gに接する底部をなす接地部102と、タイヤ車輪5の外周面5tと対向して配置されるストッパ部103と、最上部を形成する頂部104と、接地部102と頂部104とを繋ぐ背面部105と、左右一対の側面部106とを有している。
【0030】
接地部102には、前後方向に沿って山部と谷部が連続的に形成されることで地面Gに対する滑り止めをなす滑り止め部102aが形成されている。ストッパ部103は、輪止め部材101の先端側から基端側に向けて徐々に高くなるとともに斜め上方に向けて凹となる湾曲面として形成されており、タイヤ車輪5の外周面5tに当接又は近接可能に構成されている。なお、このストッパ部103は、一部もしくは全てが傾斜面により形成されていてもよい。背面部105には、輪止め装置100を持ち運ぶ際などに作業者が把持する断面T字形の取手105aが突出形成されている。
【0031】
側面部106には、
図8に示すように、輪止め部材101の幅方向(左右方向)の外方に向けて開放された凹溝107が形成されている。凹溝107は、略三角形状の溝底面107aと、この溝底面107aの周縁に沿って形成された溝側面107bとを備え、後述のシーソー部材120の揺動ストッパ125を受容可能な溝深さを有して形成されている。溝底面107aの中央には、断面円形のセンタ孔108が左右方向に貫通形成されてい
る。溝側面107bは、ストッパ部103の辺方向に沿って延びる第1溝側面107cと、接地部102の辺方向に沿って延びる第2溝側面107dと、背面部105の辺方向に沿って延びる第3溝側面107eとを有して形成されている。第1溝側面107cは、シーソー部材120の揺動ストッパ125と当接してシーソー部材120の時計回り方向X(
図9を参照)への揺動を規制する第1の規制面として形成されている。第2溝側面107dは、シーソー部材120の揺動ストッパ125と当接してシーソー部材120の反時計回り方向Y(
図10を参照)への揺動を規制する第2の規制面として形成されている。
【0032】
可動機構110は、
図8に示すように、輪止め部材101のセンタ孔108に支持される支持筒111と、この支持筒111に挿入される軸部材113と、支持筒111の左右端部に支持されてシーソー部材120に付勢力を付与する一対の捩じりバネ115とを備えている。
【0033】
支持筒111は、輪止め部材101と同じ色(黄色)の樹脂材料を用いて左右方向に延びる中空の段付き円筒状に形成されている。支持筒111は、輪止め部材101のセンタ孔108に挿入される大径筒部111aと、この大径筒部111aの両端に形成された小径筒部111bとを有している。この支持筒111の大径筒部111aが輪止め部材101のセンタ孔108に挿入された状態では、小径筒部111bはセンタ孔108から左右方向外方に突出して凹溝107内に配置される。小径筒部111bは、後述の捩じりバネ115の巻回部115aを支持する。また、支持筒111の中心には、軸部材113を挿通するための断面円形の支持孔112が左右方向に貫通形成されている。
【0034】
軸部材113は、ボルト軸部114およびボルト頭部(図示せず)を有する六角穴付ボルトから構成されている。ボルト軸部114は、支持筒111の支持孔112に挿通される。このボルト軸部114の先端部は、後述のカバー部材140(140A)の埋込ボルト149に螺着される。
【0035】
捩じりバネ115は、バネ線材を円筒状に巻回してなり、その巻回された部分である巻回部115aと、この巻回部115aの軸方向両端から延出した脚部115b,115cとを有して構成され、その両端の脚部115b,115cが軸回りに変位されることで荷重を受けるようになっている。この捩じりバネ115は、巻回部115aに支持筒111の小径筒部111bを挿入させた状態で、一方の脚部115bが凹溝107の第1溝側面107cに係止され、他方の脚部115cが後述のシーソー部材120に設けられた皿ボルト135に係止されており、これら両脚部115b,115cが自由状態よりも圧縮された状態(互いに近接する方向に変位した状態)で保持されている。そのため、この捩じりバネ115に生じる付勢力(捩りトルク)を利用して、シーソー部材120が
図9の時計回り方向Xに常時付勢される。
【0036】
一対のシーソー部材120(120A,120B)は、輪止め部材101の左右の側面部106と平行に取り付けられる。なお、この一対のシーソー部材120(120A,120B)は、左右対称の構成であるため、同一の構成の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明する。また、本実施形態では、左側のシーソー部材120Aと右側のシーソー部材120Bとを特に区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して、単に「シーソー部材120」と呼称する。
【0037】
シーソー部材120は、軸部材113に支持される検知バー121と、この検知バー121の基端側に連結される目印部材130とを有し、軸部材113を中心に上下方向に揺動自在に構成される。
【0038】
検知バー121は、輪止め部材101と同じ色(黄色)の樹脂材料を用いて全体として
略へ字形の板形状に形成されており、輪止め部材101の側面部106と平行な面内に延びている。検知バー121の長手方向の中間部には、ボルト軸部114を挿通するための断面円形の軸孔122(
図8を参照)が表裏に貫通形成されている。
【0039】
検知バー121の軸孔122よりも先端側寄りの位置には、埋込ナット123が埋設(インサート成形)されている。この埋込ナット123には、検知バー121の内面側(輪止め部材101の側面部106と対向する側)から六角穴付ボルト124が螺着されている。この六角穴付ボルト124のボルト頭部(以下、「揺動ストッパ」と呼称する)125(
図8を参照)は、輪止め部材101の凹溝107内に突出しており、この凹溝107内の第1溝側面107cおよび第2溝側面107dと当接可能となっている。
【0040】
検知バー121の先端部126は、その上面側が略円弧状に丸められており、タイヤ車輪5の外周面5tと当接可能に形成されている。検知バー121は、先端部126がタイヤ車輪5の外周面5tと当接して下方に押圧されることで、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを機械的に検知する。
【0041】
検知バー121の基端側の内側面には、目印部材130を連結するための切欠き部127が形成されるとともに、この切欠き部127と対応する位置に埋込ナット128が埋設(インサート成形)されている。切欠き部127には、目印部材130の端部が皿ボルト135を用いて取り付けられている。この皿ボルト135のボルト軸部(図示せず)は、目印部材130の貫通孔(図示せず)に挿通された後、検知バー121の埋め込みナット128に螺着される。また、皿ボルト135のボルト頭部136は、目印部材130の内面側から突出しており、捩じりバネ115の脚部115cを支持する。また、切欠き部127に目印部材130が皿ボルト135により取り付けられた状態では、検知バー121の内面側と目印部材130の内面側とが略面一となる。
【0042】
目印部材130は、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを視覚的に知らせるための表示板である。この目印部材130は、輪止め部材101と異なる色(赤色)の樹脂材料を用いて全体として略L字形の板形状に形成されており、輪止め部材101の側面部106と平行な面内に延びている。本実施形態では、目印部材130を他の部材(輪止め部材101、検知バー121、カバー部材140など)と異なる素材色(樹脂色)にて形成することで、目印部材130を他の部材と識別し易くしている(後述のカバー部材140から露出したときに目立ち易くしている)。また、目印部材130の表面および裏面には、例えば「OK」の文字が白色で表示された標識部131が設けられている。そのため、目印部材130は、自身の素材色(赤色)とOKの文字との視覚的効果により、後述のカバー部材140から露出したときに高い視認性および顕示性が得られる。なお、標識部131は、文字に限定されず、例えば、記号、図形、色彩又はこれらの組合せを表示したものでもよい。
【0043】
一対のカバー部材140(140A,140B)は、輪止め部材101の側面部106との間にシーソー部材120を挟んだ状態で取り付けられる。この一対のカバー部材140(140A,140B)は、軸部材113との連結部分以外は左右対称の構成であるため、同一の構成の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明し、異なる構成の部分(軸部材113との連結部分)のみを別々に説明する。なお、左側のカバー部材140Aと右側のカバー部材140Bとを特に区別する必要がない場合には、末尾の記号A,Bを省略して、単に「カバー部材140」と呼称する。
【0044】
カバー部材140は、輪止め部材101と同じ色(黄色)の樹脂材料を用いて全体として扁平なケース形状に形成されている。このカバー部材140は、輪止め部材101の側面部106の基端側を部分的に覆い隠すカバー本体部141と、輪止め部材101の取手
105aの側面全体を覆い隠す取手カバー部142とを有している。カバー本体部141は、輪止め部材101の側面部106の基端側に対応する形状に形成され、取手カバー部142は、取手105aの側面部分に対応する形状に形成されている。カバー本体部141の下方部には、装置全体の軽量化を図るとともに、組立性、異物排出用として矩形の側面開口141aが形成されている。
【0045】
カバー部材140の内面側には、
図8に示すように、輪止め部材101の側面部106側に突出する上壁面部143と下壁面部144とが形成されており、この上下の壁面部143,144の間にシーソー部材120の基端側を収容するための収容凹部145が区画されている。上下の壁面部143,144は、輪止め部材101の側面部106と当接する。収容凹部145は、シーソー部材120の揺動範囲に応じた上下幅を有しており、シーソー部材120の上下方向の揺動を許容する。収容凹部145の前端側には、輪止め部材101の側面部106との間で、検知バー121の先端部126を収容凹部145から前方に突出させるための前側開口146が形成されている。収容凹部145の後端側には、輪止め部材101の側面部106との間で、シーソー部材120の揺動に応じて、目印部材130をカバー部材140の外部方向(上方向)または内部方向(下方向)に通過させるための後側開口147が形成されている。
【0046】
右側のカバー部材140Bの前端側には、軸部材113のボルト軸部114を挿通するための連結孔148が表裏に貫通形成されている。そのため、右側のカバー部材140Bは、軸部材113のボルト頭部(図示せず)が配置される側のカバー部材140となる。左側のカバー部材140Aの前端側には、右側のカバー部材140Bの連結孔148と左右方向に対応する位置に、埋込ナット149が埋設(インサート成形)されている。この埋込ナット149には、右側のカバー部材140Bの連結孔148、右側のシーソー部材120Bの軸孔122、支持筒111の支持孔112、左側のシーソー部材120Aの軸孔122に挿通されて突出したボルト軸部114の先端部が螺着される。詳細には、軸部材113のボルト軸部114は、右側のカバー部材140Bの連結孔148、右側のシーソー部材120Bの軸孔122、支持筒111の支持孔112、左側のシーソー部材120Aの軸孔122の順に挿通されて、最終的には左側のカバー部材140Aの埋込ナット149に螺着されることで、輪止め装置101の各構成部品を一体的に連結する。
【0047】
かかる構成の輪止め装置100において、シーソー部材120は、左右のカバー部材140に跨って支持された軸部材113を中心に、揺動ストッパ125が輪止め部材101の凹溝107の第1溝側面107cに当接する第1揺動姿勢(
図4、
図6等を参照)と、揺動ストッパ125が輪止め部材101の凹溝107の第2溝側面107dに当接する第2揺動姿勢(
図5、
図7等を参照)との間で上下方向に揺動可能(姿勢変形可能)に構成されている。このシーソー部材120は、捩じりバネ115の付勢力を受けて、第1揺動姿勢の方向(時計回り方向X)に常時付勢されている。シーソー部材120が第1揺動姿勢にある状態では、検知バー121の先端部126は輪止め部材101のストッパ部103よりも上方に突出した突出位置に位置し、目印部材130はカバー部材140に覆い隠された非報知位置に位置する。この目印部材130が非報知位置にあるときは、目印部材130の標識部131はカバー部材140と輪止め部材101の側面部106との間に隠蔽されて外部から目視不能又は目視困難となる。一方、シーソー部材120が第2揺動姿勢にある状態では、検知バー121の先端部126は接地部102側に退避した退避位置に位置し、目印部材130はカバー部材140の後側開口147から上方に突出する報知位置に位置する。目印部材130が報知位置にあるときは、目印部材130の標識部131が露出して外部から視認可能(目視可能)となる。
【0048】
次に、第1実施形態の輪止め装置100を設置する手順について
図9~
図10を追加参照しながら説明する。ここで、
図9はシーソー部材120が第1揺動姿勢にある状態の輪
止め装置100の側面図であり、
図10はシーソー部材120が第2揺動姿勢にある状態の輪止め装置100の側面図である。
【0049】
まず、輪止め装置100を車体2の輪止め格納部15から取り出して、この輪止め装置100を設置対象のタイヤ車輪5の近くまで持っていく。このとき、シーソー部材120は、
図9に示すように、捩じりバネ115の付勢力により時計回り方向Xに付勢されて揺動ストッパ125が第1溝側面107cに当接した第1揺動姿勢に保持されている。シーソー部材120が第1揺動姿勢にある状態では、検知バー121の先端部126が輪止め部材101のストッパ部103よりも上方に突出した突出位置に位置する。また、シーソー部材120が第1揺動姿勢にある状態では、目印部材130全体がカバー部材140と輪止め部材101の側面部126との間で覆い隠された非報知位置に位置する。
【0050】
続いて、輪止め装置100を対象のタイヤ車輪5の近傍(地面G)に載置して、輪止め部材101の先端がタイヤ車輪5の外周面5tを向いた姿勢にする。続いて、輪止め部材101の幅方向の中心とタイヤ車輪5の幅方向の中心とを位置合わせして、輪止め部材101の先端部をタイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込む。輪止め部材101の先端部をタイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込むと、輪止め部材101のストッパ部103よりも検知バー121の先端部126の方がタイヤ車輪5の外周面5tに先に当接して、検知バー121の先端部126がタイヤ車輪5の外周面5tとの当接により下方に押圧されることで、シーソー部材120が捩じりバネ115の付勢力に抗して反時計回り方向Yに揺動する。
【0051】
続いて、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接する位置まで差し込むと、
図10に示すように、シーソー部材120が更に反時計回り方向Yに揺動して揺動ストッパ125が第2溝側面107dに当接した第2揺動姿勢となる。シーソー部材120が第1揺動姿勢から第2揺動姿勢に姿勢変化すると、検知バー121の先端部126が下方に押し下げられた退避位置に位置する。また、シーソー部材120が第2揺動姿勢にある状態では、目印部材130が報知位置に移動して、この目印部材130の標識部131がカバー部材140から上方に突出した状態(露出した状態)となることで、この目印部材130の標識部131を作業者が視認可能となる。作業者は、目印部材130の標識部131(目印部材130が報知位置に移動したこと)を視認することにより、輪止め部材101のストッパ部103をタイヤ車輪5の外周面5tに当接(密着)させたこと(輪止め部材101をタイヤ車輪5に正しく設置したこと)を容易に判断することができる。また、作業者は、一対の目印部材130が報知位置にそれぞれ移動したことを視認することで(一対の目印部材130の標識部131を同時に視認することで)、タイヤ車輪5の幅方向の中央に輪止め部材101が左右に傾くことなく真っ直ぐ設置されたことを確認することができる。すなわち、左右のシーソー部材120A,120Bは、軸部材113を中心に、それぞれ独立して揺動可能に取り付けられており、タイヤ車輪5の外周面5tに対して輪止め部材101のストッパ部103が左右に傾いて当接した場合には、左右のシーソー部材120A,120Bのうち、一方のシーソー部材120の先端部126のみがタイヤ車輪5の外周面に当接して退避位置側に押圧されるため、左右の目印部材130が共に報知位置に達した否か(左右の目印部材130の標識部131を同時に視認可能となったか否か)を確認することで、輪止め部材101がタイヤ車輪5の外周面5tに対して真っ直ぐに設置されたかどうかを容易に判断することができる。
【0052】
以上、第1実施形態の輪止め装置100によれば、検知バー121の先端部126が突出位置から退避位置に変位することに基づいて、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを検知するとともに、目印部材130が検知バー121に連動して非報知位置から報知位置に変位することに基づいて、輪止め部材101がタイヤ車輪5に正しく設置されたことを知らせるように構成したことで、作業者は輪
止め部材101がタイヤ車輪5に正しく設置されているか否かを目視にて容易に判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認を効果的に支援することができるとともに、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、その結果、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、輪止め部材101に付加的に設けた検知バー121および目印部材130の存在により、輪止め部材101をタイヤ車輪5に正しく設置すること(輪止め部材101のストッパ部103をタイヤ車輪5の外周面5tに密着させること)を作業者に対して意識付けすることができるため、ヒューマンエラーを起因とした災害事故を効果的に予防することが可能となる。
【0053】
また、第1実施形態の輪止め装置100では、検知バー121と目印部材130とを一体的に形成して、検知バー121と目印部材130とがシーソー状に交互に揺動するように構成したことで、装置全体の部品点数を減らして構造を簡易化することができるため、製造コストを低減させることができるとともに、故障の発生を低減させることが可能となる。
【0054】
また、第1実施形態の輪止め装置100では、目印部材130が報知位置にある状態において当該目印部材130(標識部131)がカバー部材140から露出して視認可能となることで、輪止め部材101が正しく設置されたことを一目で判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認をより一層効果的に支援することが可能となる。
【0055】
また、第1実施形態の輪止め装置100では、輪止め部材101の両側面部106に一対のシーソー部材120を設けて、一対の検知バー121がタイヤ車輪5の外周面5tの幅方向の内外で当該外周面5tと輪止め部材101のストッパ部103との当接を検知することで、輪止め部材101がタイヤ車輪5の幅方向の中央に真っ直ぐ設置されたことを容易に確認することが可能となる。
【0056】
なお、上記第1実施形態では、目印部材130がカバー部材140から突出したこと(外部に露出したこと)をより一層強調するために、目印部材130に標識部131を設けているが、目印部材130には必ずしも標識部131を設ける必要はない。つまり、上記第1実施形態では、目印部材130の素材色(樹脂色)を他の部材の素材色(樹脂色)と異ならせることで、目印部材130がカバー部材140から突出したこと(外部に露出したこと)を素材色の違いからのみでも認識することができるようになっている。
【0057】
また、上記第1実施形態では、検知バー121が退避位置にある状態(シーソー部材120が第2揺動姿勢にある状態)において、検知バー121の先端部126が輪止め部材101のストッパ部103よりも僅かに上方に突出した位置に位置するようになっている。その理由として、タイヤ車輪5(特に高内圧の空気入りタイヤ車輪5)の外周面5tについては、一般的に、当該タイヤ車輪5の外周面の幅方向の中央部(トレッド中央部)が膨らむ傾向にあるからであり、この膨らみの分だけ、検知バー121の先端部126を輪止め部材101のストッパ部103よりも上方に突出させて、両者がタイヤ車輪5の外周面5tと当接するときの高さ位置を調節している。但し、検知バー121が退避位置にある状態(シーソー部材120が第2揺動姿勢にある状態)において、検知バー121の先端部126が輪止め部材101のストッパ部103と面一の状態となるように構成してもよい。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る輪止め装置200について、
図11~
図13を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0059】
輪止め装置200は、前述の輪止め部材101と、輪止め部材101に取り付けられる可動機構110と、輪止め部材101の左右の両側面に揺動自在に取り付けられる一対のシーソー部材220とを備えて構成される。なお、輪止め部材101および可動機構110については、前述の第1実施形態等と同様の構成であるため、ここでは重複説明を省略する。なお、この輪止め装置200には、前述の第1実施形態のカバー部材140に対応する部材は設けられておらず、シーソー部材220は外部に常時露出している。
【0060】
一対のシーソー部材220(220A,220B)は、輪止め部材101の左右の側面部106と平行に取り付けられる。なお、この一対のシーソー部材220(220A,220B)は、左右対称の構成であるため、同一の構成の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明する。また、本実施形態では、左側のシーソー部材220Aと右側のシーソー部材220Bとを特に区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して、単に「シーソー部材220」と呼称する。
【0061】
シーソー部材220は、輪止め部材101と異なる色(赤色)の樹脂材料を用いて全体として前後方向に延びる板形状に形成されている。本実施形態では、シーソー部材220を輪止め部材101と異なる素材色(樹脂色)にて形成することで、シーソー部材220(後述の目印部230)を輪止め部材101と識別し易くしている。シーソー部材220の長手方向の中間部には、軸部材113のボルト軸部114を挿通させるための軸孔222(
図13を参照)が表裏に貫通形成されている。そのため、軸部材113のボルト軸部114は、右側のシーソー部材220Bの軸孔222、支持筒111の支持孔112、左側のシーソー部材220Aの軸孔222の順に挿通されて、最終的にはナット249に螺着されることで、輪止め装置200の各構成部品を一体的に連結する。また、シーソー部材の軸孔222よりも先端側寄りの位置には、六角穴付ボルト224がナット223により螺着されて取り付けられている。この六角穴付ボルト224のボルト頭部225(以下、「揺動ストッパ」と呼称する)は、輪止め部材101の凹溝107内に突出しており、この凹溝107内の第1溝側面107cおよび第2溝側面107dと当接可能となっている。前述の第1実施形態と同様に、第1溝側面107cは、シーソー部材220の揺動ストッパ225と当接してシーソー部材220の時計回り方向X(
図14を参照)への揺動を規制する第1の規制面として形成されている。第2溝側面107dは、シーソー部材220の揺動ストッパ225と当接してシーソー部材220の反時計回り方向Y(
図15を参照)への揺動を規制する第2の規制面として形成されている。また、シーソー部材220の軸孔222よりも基端側寄りの位置には、皿ボルト235がナット228により螺着されて取り付けられている。この皿ボルト235のボルト頭部236は、輪止め部材101の凹溝107内に突出しており、捩じりバネ115の脚部115cを支持する。
【0062】
シーソー部材220は、軸部材113に支持される検知バー部221と、この検知バー部221の基端側に一体的に形成された目印部230とを有し、軸部材113を中心に上下方向に揺動自在に構成される。
【0063】
検知バー部221の先端部226は、その上面側が略円弧状に丸められており、タイヤ車輪5の外周面5tと当接可能に形成されている。検知バー部221は、先端部226がタイヤ車輪5の外周面5tと当接して下方に押圧されることで、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを機械的に検知する。
【0064】
また、検知バー部221は、輪止め装置200の幅方向(左右方向)から見た側面視において、輪止め部材101のストッパ部103の外形に一致する形状を有する第1外面部221aと、輪止め部材101の頂部104の外形に一致する形状を有する第2外面部221bと、輪止め部材101の背面部105の外形に一致する形状を有する第3外面部2
21cとを備えている。つまり、検知バー部221の上半部分は、輪止め部材101の上半部分に一致する形状(対応する形状)に形成されており、シーソー部材220が後述の第2揺動姿勢にあるときに、検知バー部221の上半部分の外形と輪止め部材101の上半部分の外形とが全体的に重なり合った状態(外形同士が揃った状態)となる(
図12等を参照)。
【0065】
目印部230は、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを視覚的に知らせるための表示部である。この目印部230は、輪止め装置200の幅方向(左右方向)から見た側面視において、取手105aの外形に一致する形状を有しており、シーソー部材220が後述の第2揺動姿勢にあるときに、目印部230の外形と輪止め部材101の取手の外形とが全体的に重なり合った状態(外形同士が揃った状態)となる(
図12等を参照)。なお、この目印部230においても、前述の第1実施形態と同様に、文字等を表示した標識部を設けてもよい。例えば、この標識部として「CHECK」等の文字を表示することで、作業者が目視確認する部分(チェックする部分)を分かり易くしてもよい。
【0066】
かかる構成の輪止め装置200において、シーソー部材220は、軸部材113を中心に、揺動ストッパ225が輪止め部材101の凹溝107の第1溝側面107cに当接する第1揺動姿勢(
図11を参照)と、揺動ストッパ225が輪止め部材101の凹溝107の第2溝側面107dに当接する第2揺動姿勢(
図12を参照)との間で上下方向に揺動可能(姿勢変形可能)に構成されている。このシーソー部材220は、捩じりバネ115の付勢力を受けて、第1揺動姿勢の方向(
図14の時計回り方向X)に常時付勢されている。シーソー部材220が第1揺動姿勢にある状態では、検知バー部221の先端部226は輪止め部材101のストッパ部103よりも上方に突出した突出位置に位置し、目印部230は輪止め部材101の取手105aと部分的に重なり合う非報知位置に位置する。一方、シーソー部材220が第2揺動姿勢にある状態では、検知バー部221の先端部226は接地部102側に退避した退避位置に位置し、目印部230は輪止め部材101の取手105aと全体的に重なり合う報知位置に位置する。
【0067】
次に、第2実施形態の輪止め装置200を設置する手順について
図14~
図15を追加参照しながら説明する。ここで、
図14はシーソー部材220が第1揺動姿勢にある状態の輪止め装置200の側面図であり、
図15はシーソー部材220が第2揺動姿勢にある状態の輪止め装置200の側面図である。
【0068】
まず、輪止め装置200を車体2の輪止め格納部15から取り出して、この輪止め装置200を設置対象のタイヤ車輪5の近くまで持っていく。このとき、シーソー部材220は、
図14に示すように、捩じりバネ15の付勢力を受けて時計回り方向Xに付勢されることで揺動ストッパ225が第1溝側面107cに当接した第1揺動姿勢に保持されている。シーソー部材220が第1揺動姿勢にある状態では、検知バー部221の先端部226が輪止め部材101のストッパ部103よりも上方に突出した突出位置に位置する。また、シーソー部材220が第1揺動姿勢にある状態では、目印部230が取手105aに対して下方にずれた状態(取手105aと部分的に重なり合う状態)で位置する。
【0069】
続いて、輪止め装置200を対象のタイヤ車輪5の近傍(地面G)に載置して、輪止め部材101の先端がタイヤ車輪5の外周面5tを向いた姿勢にする。続いて、輪止め部材101の幅方向の中心とタイヤ車輪5の幅方向の中心とを位置合わせして、輪止め部材101の先端部をタイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込む。輪止め部材101の先端部をタイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込むと、輪止め部材101のストッパ部103よりも検知バー部221の先端部226の方がタイヤ車輪5の外周面5tに先に当接して、検知バー部221の先端部226がタイヤ車輪5の外周面5tとの当
接により下方に押圧されることで、シーソー部材220が捩じりバネ115の付勢力に抗して反時計回り方向Yに揺動する。
【0070】
続いて、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接する位置まで差し込むと、
図15に示すように、シーソー部材220が更に反時計回り方向Yに揺動して揺動ストッパ225が第2溝側面107dに当接した第2揺動姿勢となる。シーソー部材220が第1揺動姿勢から第2揺動姿勢に姿勢変化すると、検知バー部221の先端部226が下方に押し下げられた退避位置に位置する。また、シーソー部材220が第2揺動姿勢にある状態では、目印部230が報知位置に移動して、この目印部230の外形が取手105aの外形と揃った状態(全体的に重なり合った状態)となる。作業者は、目印部230の外形が取手105aの外形と揃ったこと(目印部230が報知位置に移動したこと)を視認することにより、輪止め部材101のストッパ部103をタイヤ車輪5の外周面5tに当接(密着)させたこと(輪止め部材101をタイヤ車輪5に正しく設置したこと)を容易に判断することができる。また、作業者は、一対の目印部230が報知位置にそれぞれ移動したことを視認することで(一対の目印部230の外形が取手105aの外形と揃ったことを同時に視認することで)、タイヤ車輪5の幅方向の中央に輪止め部材101が左右に傾くことなく真っ直ぐ設置されたことを確認することができる。すなわち、左右のシーソー部材220A,220Bは、軸部材113を中心に、それぞれ独立して揺動可能に取り付けられており、タイヤ車輪5の外周面5tに対して輪止め部材101のストッパ部103が左右に傾いて当接した場合には、左右のシーソー部材220A,220Bのうち、一方のシーソー部材220の先端部226のみがタイヤ車輪5の外周面5tに当接して退避位置側に押圧されるため、左右の目印部230が共に報知位置に達した否か(左右の目印部230の外形が共に取手105aの外形と揃ったか否か)を確認することで、輪止め部材101がタイヤ車輪5の外周面5tに対して真っ直ぐに設置されたかどうかを容易に判断することができる。
【0071】
以上、第2実施形態の輪止め装置200によれば、検知バー部221の先端部226が突出位置から退避位置に変位することに基づいて、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを検知するとともに、目印部230が検知バー部221に連動して非報知位置から報知位置に変位することに基づいて、輪止め部材101がタイヤ車輪5に正しく設置されたことを知らせるように構成したことで、作業者は輪止め部材101がタイヤ車輪5に正しく設置されているか否かを目視にて容易に判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認を効果的に支援することができるとともに、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、その結果、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、輪止め部材101に付加的に設けた検知バー部221および目印部230の存在により、輪止め部材101をタイヤ車輪5に正しく設置すること(輪止め部材101のストッパ部103をタイヤ車輪5の外周面5tに密着させること)を作業者に対して意識付けすることができるため、ヒューマンエラーを起因とした災害事故を効果的に予防することが可能となる。
【0072】
また、第2実施形態の輪止め装置200では、検知バー部221と目印部230とを一体的に形成して、検知バー部221と目印部230とがシーソー状に交互に揺動するように構成したことで、装置全体の部品点数を減らして構造を簡易化することができるため、製造コストを低減させることができるとともに、故障の発生を低減させることが可能となる。
【0073】
また、第2実施形態の輪止め装置200では、目印部230が報知位置にある状態において当該目印部230の外形が取手105aの外形と揃った状態(全体的に重なり合った状態)となることで、輪止め部材101が正しく設置されたことを一目で判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認をより一層効果的に支援する可能となる。
【0074】
また、第2実施形態の輪止め装置200では、輪止め部材101の両側面部106に一対のシーソー部材220を設けて、一対の検知バー部221がタイヤ車輪5の外周面5tの幅方向の内外で当該外周面5tと輪止め部材101のストッパ部103との当接を検知することで、輪止め部材101がタイヤ車輪5の幅方向の中央に真っ直ぐ設置されたことを容易に確認することが可能となる。
【0075】
なお、上記第2実施形態では、前述の第1実施形態と同様に、検知バー部221が退避位置にある状態(シーソー部材220が第2揺動姿勢にある状態)において、検知バー部221の先端部226が輪止め部材101のストッパ部103よりも僅かに上方に突出した位置に位置するようになっているが、この構成に限定されるものではなく、検知バー部221の先端部226が輪止め部材101のストッパ部103と面一の状態となるように構成してもよい。
【0076】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る輪止め装置300について、
図16~
図19を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0077】
輪止め装置300は、
図16~
図19に示すように、前述の輪止め部材101と、輪止め部材101のストッパ部103から進出自在に取り付けられる検知ピン310と、輪止め部材101の側面部106に揺動自在に取り付けられるシーソー部材320と、輪止め部材101の側面部106にシーソー部材320を挟んで取り付けられるカバー部材340とを備えて構成される。
【0078】
輪止め部材101には、検知ピン310が挿通されるピン挿通孔109aと、検知ピン310を付勢するための後述のコイルバネ313が支持されるバネ止め孔109bとが同軸上に形成されている。ピン挿通孔109aは、ストッパ部103の表面から斜め下方に延びてセンタ孔108の内周面まで貫通する貫通孔として形成されている。バネ止め孔109bは、センタ孔108の内周面から斜め下方に延びて接地部102を貫通しない有底孔として形成されている。また、輪止め部材101には、左右の側面部106に跨って貫通される一対の連通孔109cが形成されている。この連通孔109cには、輪止め部材101の左側の側面部106にカバー部材340を取り付けるための六角ボルト347のボルト軸部348が挿通される。
【0079】
検知ピン310は、輪止め部材101と異なる色(赤色)の樹脂材料を用いて輪止め部材101のストッパ部103と略直交する方向に延出する中空の段付き円筒状に形成されている。検知ピン310は、ピン挿通孔109aに挿通されるピン本体部311と、ピン本体部311の底面側に一体的に形成されたバネ支持部312とを有して構成される。ピン本体部311の先端部311aは、略半球状に丸められており、タイヤ車輪5の外周面5tと当接可能に形成されている。また、ピン本体部311は、ピン挿通孔109aの孔径よりも僅かに小径に形成されており、ピン挿通孔109aの内周面に沿って摺動自在に挿入されている。ピン本体部311の外周面の基端側には、後述の連結棒314を固定するための固定孔311b(
図18を参照)が形成されている。バネ支持部312は、ピン本体部311よりも小径の円筒状に形成されており、後述のコイルバネ313の端部が取り付けられる。
【0080】
コイルバネ313は、バネ線材を円筒状に巻回して形成された圧縮コイルバネである。このコイルバネ313は、軸方向の一端部がバネ支持部312の外周面に支持され、軸方
向の他端部がバネ止め孔109b(
図20を参照)の内周面に支持されている。このコイルバネ313は、検知ピン310のピン本体部311が輪止め部材101のストッパ部103から突出する方向に付勢する。
【0081】
連結棒314は、長尺状に延びる金属製の丸棒から構成されており、検知ピン310とシーソー部材320とを連結(リンク結合)する。連結棒314の長手方向の一端部は、検知ピン310の固定孔311bに挿入されて固定される。連結棒314の長手方向の他端部は、シーソー部材320の先端側に形成された後述の長孔321に挿入される。
【0082】
シーソー部材320は、輪止め部材101と異なる色(赤色)の樹脂材料を用いて全体として細長い板形状に形成されており、輪止め部材101の側面部106と平行な面内に延びている。シーソー部材320の長手方向の先端側には、当該長手方向に延びて連結棒314が挿通される長孔321が表裏に貫通形成されている。この長孔321に挿通された連結棒314は、当該長孔321に沿って移動可能であり、検知ピン310とシーソー部材320とをリンク結合する。
【0083】
シーソー部材320の長手方向の中間部には、軸部材323が挿通される断面円形の軸孔322が表裏に貫通形成されている。軸部材323は、ボルト軸部324を有する六角ボルトから構成されている。ボルト軸部324の先端部には、シーソー部材320およびカバー部材340を抜け止めするためのナット325が螺着される。なお、輪止め部材101の溝底面107aとシーソー部材320の内面との間には、ボルト軸部324が挿通される中空の円筒部材326(
図18を参照)が介装されている。この円筒部材326は、シーソー部材320の内面側を支持することで、シーソー部材320の振れやバタつきを防止している。
【0084】
シーソー部材320の長手方向の基端側には、目印部330が形成されている。この目印部330は、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを視覚的に知らせるための表示部である。この目印部330には、例えば「OK」の文字が白色で表示された標識部331が設けられている。そのため、目印部310は、自身の素材色(赤色)とOKの文字との視覚的効果により、後述のカバー部材340から露出したときに高い視認性および顕示性が得られる。なお、標識部331は、文字に限定されず、例えば、記号、図形、色彩又はこれらの組合せを表示したものでもよい。
【0085】
カバー部材340は、輪止め部材101と同じ色(黄色)の樹脂材料を用いて全体として扁平なケース形状に形成されている。このカバー部材340は、輪止め部材101の側面部106の基端側を部分的に覆い隠すカバー本体部341と、輪止め部材101の取手105aの側面全体を覆い隠す取手カバー部342とを有している。カバー本体部341は、輪止め部材101の側面部106の基端側に対応する形状に形成され、取手カバー部342は、取手105aの側面部分に対応する形状に形成されている。カバー本体部341の下方部には、装置全体の軽量化を図るとともに、組立性、異物排出用として矩形の側面開口341aが形成されている。
【0086】
このカバー部材340の内面側には、シーソー部材320を収容するための収容凹部343が形成されている。収容凹部343は、シーソー部材320の揺動範囲に応じた上下幅を有しており、シーソー部材320の上下方向の揺動を許容する。収容凹部343の前端側には、輪止め部材101の側面部106との間で、前側開口344が形成されている。また、収容凹部343の後端側には、輪止め部材101の側面部106との間で、シーソー部材320の揺動に応じて、目印部330をカバー部材340の外部方向(上方向)または内部方向(下方向)に通過させるための後側開口345が形成されている。
【0087】
カバー部材340の略中央には、軸部材323のボルト軸部324を挿通するための連結孔345が表裏に貫通形成されている。また、このカバー部材340の上端側および下端側には、一対の取付孔346が表裏に貫通形成されている。この取付孔346には、カバー部材340を輪止め部材101の側面部106に取り付けるための六角ボルト347のボルト軸部348が挿通される。このボルト軸部348の先端部には、カバー部材340を抜け止めするためのナット349が螺着される。
【0088】
かかる構成の輪止め装置300において、検知ピン310は、コイルバネ313の付勢力により輪止め部材101のストッパ部103よりも斜め上方に突出した突出位置と、コイルバネ313の付勢力に抗してストッパ部103側に押し込まれた退避位置との間で進退自在(往復移動自在)に構成されている。また、シーソー部材320は、軸部材323を中心として、検知ピン310の突出位置に対応する第1揺動姿勢と、検知ピン310の退避位置に対応する第2揺動姿勢との間で上下方向に揺動可能(姿勢変形可能)に構成されている。具体的には、検知ピン310が突出位置にある状態では、シーソー部材320の先端側が連結棒314により持ち上げられることで、シーソー部材320は時計回り方向X(
図20を参照)に揺動した第1揺動姿勢となる。この第1揺動姿勢では、目印部330はカバー部材340に覆い隠された非報知位置に位置する。一方、検知ピン310が退避位置にある状態では、シーソー部材320の先端側が連結棒314により押し下げられることで、シーソー部材320は反時計回り方向Y(
図21を参照)に揺動した第2揺動姿勢となる。この第2揺動姿勢では、目印部330はカバー部材340の収容凹部343から上方に突出(露出)した報知位置に位置する。
【0089】
次に、第3実施形態の輪止め装置300を設置する手順について
図20~
図21を追加参照しながら説明する。ここで、
図20はシーソー部材320が第1揺動姿勢にある状態の輪止め装置300の側面図であり、
図21はシーソー部材320が第2揺動姿勢にある状態の輪止め装置300の側面図である。
【0090】
まず、輪止め装置300を車体2の輪止め格納部15から取り出して、この輪止め装置300を設置対象のタイヤ車輪5の近くまで持っていく。このとき、検知ピン310は、
図20に示すように、コイルバネ313の付勢力を受けて、輪止め部材101のストッパ部103よりも斜め上方に突出した突出位置に保持されている。検知ピン310が突出位置にある状態では、シーソー部材320の先端側が連結棒314により持ち上げられることで、シーソー部材320は第1揺動姿勢でとなる。シーソー部材320が第1揺動姿勢にある状態では、目印部330全体がカバー部材340と輪止め部材101との間で覆い隠された非報知位置に位置する。
【0091】
続いて、輪止め装置300を対象のタイヤ車輪5の近傍(地面G)に載置して、輪止め部材101の先端がタイヤ車輪5の外周面5tを向いた姿勢にする。続いて、輪止め部材101の幅方向の中心とタイヤ車輪5の幅方向の中心とを位置合わせして、輪止め部材101の先端部をタイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込む。輪止め部材101の先端部をタイヤ車輪5の外周面5tと地面Gとの間に差し込むと、輪止め部材101のストッパ部103よりも検知ピン310の先端部の方がタイヤ車輪5の外周面5tに先に当接して、検知ピン310がタイヤ車輪5の外周面5tとの当接によりコイルバネ313の付勢力に抗して斜め下方(ストッパ部103側)に押圧される。それにより、この検知ピン310に連結した連結棒314がシーソー部材320の先端側を下方に押し下げることで、シーソー部材320が軸部材323を中心に反時計回り方向Yに揺動する。
【0092】
続いて、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接する位置まで差し込むと、
図21に示すように、検知ピン310がコイルバネ313の付勢力に抗して退避位置まで押し込まれる。検知ピン310が退避位置まで押し込まれると、連
結棒314がシーソー部材320の先端側を更に押し下げることで、シーソー部材320が軸部材323を中心に更に反時計回り方向Yに揺動して第2揺動姿勢となる。シーソー部材320が第2揺動姿勢となると、目印部330が報知位置に到達してカバー部材340から上方に突出した状態(露出した状態)となることで、この目印部330の標識部331を作業者が視認可能となる。作業者は、目印部330の標識部331(目印部330が報知位置に移動したこと)を視認することにより、輪止め部材101のストッパ部103をタイヤ車輪5の外周面5tに当接(密着)させたこと(輪止め部材101をタイヤ車輪5に正しく設置したこと)を容易に判断することができる。
【0093】
以上、第3実施形態の輪止め装置300によれば、検知ピン310が突出位置から退避位置に変位することに基づいて、輪止め部材101のストッパ部103がタイヤ車輪5の外周面5tに当接したことを検知するとともに、目印部330が検知ピン310に連動して非報知位置から報知位置に変位することに基づいて、輪止め部材101がタイヤ車輪5に正しく設置されたことを知らせるように構成したことで、作業者は輪止め部材101がタイヤ車輪5に正しく設置されているか否かを目視にて容易に判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認を効果的に支援することができるとともに、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、その結果、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、輪止め部材101に付加的に設けた検知ピン310および目印部330の存在により、輪止め部材101をタイヤ車輪5に正しく設置すること(輪止め部材101のストッパ部103をタイヤ車輪5の外周面5tに密着させること)を作業者に対して意識付けすることができるため、ヒューマンエラーを起因とした災害事故を効果的に予防することが可能となる。
【0094】
また、第3実施形態の輪止め装置300では、目印部330が報知位置にある状態において当該目印部330(標識部331)がカバー部材340から露出して視認可能となることで、輪止め部材101が正しく設置されたことを一目で判断することができるため、作業者の輪止めに対する安全確認をより一層効果的に支援する可能となる。
【0095】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0096】
上記実施形態では、本発明に係る車両(作業車両)として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーン車などの他の作業車両や、ダンプトラックなどの運搬車両等に適用してもよい。また、上記実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 高所作業車
2 車体
5 タイヤ車輪
5t 外周面
15 輪止め格納部
100 輪止め装置(第1実施形態)
101 輪止め部材
102 接地部
103 ストッパ部
105 背面部
105a 取手
106 側面部
107 凹溝
107c 第1溝側面
107d 第2溝側面
113 軸部材(揺動軸)
115 捩じりバネ(付勢部)
120 シーソー部材(揺動部材)
121 検知バー(検知部)
130 目印部材(目印部)
131 標識部
140 カバー部材
200 輪止め装置(第2実施形態)
220 シーソー部材(揺動部材)
221 検知バー部(検知部)
230 目印部
300 輪止め装置(第3実施形態)
310 検知ピン(検知部)
313 コイルバネ(付勢部)
320 シーソー部材
330 目印部
331 標識部
G 地面(駐車路面)