(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172071
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医療用ラベル、及び医療用ラベルの貼付方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/10 20060101AFI20241205BHJP
A61J 1/14 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
G09F3/10 J
A61J1/14 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089553
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】507395717
【氏名又は名称】株式会社ソルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 幸房
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA27
4C047DD25
4C047DD26
4C047DD27
(57)【要約】
【課題】容量の小さいシリンジに対しても、所定の医療情報が表示されたラベルを確実に貼付することで、薬液の誤投与を防止することができる医療用ラベル、及び医療用ラベルの貼付方法を提供することを目的とする。
【解決手段】医療用ラベル1は、基材10と剥離台紙20から構成されている。剥離台紙20には長辺方向に沿って複数のミシン目が形成され、剥離台紙20を複数の剥離片に分割可能となっている。医療用ラベル1を小児用の小容量タイプのシリンジ30に貼付する場合には、医療用ラベル1の一部の剥離台紙20をミシン目21に沿って剥離し、露出した一部の接着面をシリンジ30に貼付する。以上により、小容量タイプのシリンジ30であっても、医療用ラベル1を明瞭に視認できる状態で貼付することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に所定の医療情報が印刷された印刷層、裏面に対象物に貼付する接着層を有するシート状の基材と、
周縁の所定の位置に剥離代を有するように前記接着層に剥離可能に仮着され、2以上の剥離片に分割して剥離可能なミシン目が形成された剥離台紙と、を備える
医療用ラベル。
【請求項2】
前記ミシン目は、切込み部と非切込み部とのピッチが略0.2mm~0.5mmのマイクロミシン目である
請求項1に記載の医療用ラベル。
【請求項3】
前記剥離台紙と前記基材とは略同一の長方形状であり、
前記ミシン目は、前記剥離台紙の短尺方向であって、一端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置、及び他端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置において長尺方向に沿って形成された
請求項1または請求項2に記載の医療用ラベル。
【請求項4】
前記接着層と前記剥離台紙との間には保護層を有する
請求項1または請求項2に記載の医療用ラベル。
【請求項5】
表面に所定の医療情報が印刷された印刷層、裏面にシリンジに貼付する接着層を有するシート状の基材と、周縁の所定の位置に剥離代を有するように前記接着層に剥離可能に仮着され2以上の剥離片に分割して剥離可能なミシン目が形成された剥離台紙と、を備える医療用ラベルの使用方法において、
前記剥離代を把持して、前記ミシン目に沿って前記基材から前記剥離台紙の一部を剥離する工程と、
前記剥離台紙を剥離することで、露出した一部の接着層をシリンジの胴体部の所定の位置に貼付する工程と、を備える
医療用ラベルの使用方法。
【請求項6】
前記剥離台紙と前記基材とは略同一の長方形状であり、
前記ミシン目は、前記剥離台紙の短尺方向であって、一端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置、及び他端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置において長尺方向に沿って形成され、
前記基材から前記剥離台紙の一部を剥離する工程は、3分割された前記剥離台紙のうち少なくとも一の剥離台紙を剥離する工程を有する
請求項5に記載の医療用ラベルの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ラベル、及び医療用ラベルの貼付方法に関する。詳しくは、容量の小さいシリンジに対しても、所定の医療情報が表示されたラベルを確実に貼付することで、薬液の誤投与を防止することができる医療用ラベル、及び医療用ラベルの貼付方法である。
【背景技術】
【0002】
医療分野における薬剤の投与方法としては、従来よりシリンジ(注射器)による方法が広く用いられている。ところで、患者に薬液を投与する場合には、薬液の誤投与を確実に防止しなければならない。そのため、シリンジ内の薬液を患者へ投与する際、患者の氏名や薬液名などの医療情報を確認する手段として、医療情報の一部を手書きしたり、或いは医療情報が記載されたラベルをシリンジ本体部に貼付したりしている。
【0003】
このようなラベルは基材が紙や合成紙樹脂フイルム等で、一方に印刷面、他方に接着面を設けた3層タイプを使用することが多い(特許文献1)。そして、医師や看護師は、シリンジに充填された薬液を患者に投与する際には、ラベルを台紙から剥離し、剥離したラベルをシリンジの本体部に貼付し、ラベルに表示されている医療情報を確認したうえで薬液投与を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成人患者用のシリンジは、一度に投与する薬液量が多く、シリンジの容積も比較的大きいため、ラベルをシリンジの胴部に周回させて貼付することが可能である。一方で、小児用のシリンジ等、一度に投与する薬液量が少ない場合に使用するシリンジは、その容積が小さく、ラベルをシリンジの胴部に周回させて貼付することができない。
【0006】
そのため、容積の小さなシリンジにラベルを周回して貼付できるように、ラベルの表面積を小さくすることも考えられるが、その場合、通常の大きさのラベルと同程度の医療情報を確保するためには、ラベルに印字する医療情報の各文字を小さくする必要がある。しかしながら、医療情報の各文字が小さくなると、外部から認識し難くなるため、医師や看護師はラベルに表示されている医療情報を見落とす可能性もあり、誤投与を招く虞がある。
【0007】
一方で、文字の大きさを一定の大きさとする場合には、小スペース内に全ての医療情報を印字することは不可能であり、表示する医療情報を取捨選択する必要がある。この場合、通常のラベルに印字される医療情報よりも少ない医療情報しか表示されないため、やはり誤投与を招く虞がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、容量の小さいシリンジに対しても、所定の医療情報が表示されたラベルを確実に貼付して誤投与を防止することができる医療用ラベル、及び医療用ラベルの貼付方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明に係る医療用ラベルは、表面に所定の医療情報が印刷された印刷層、裏面に対象物に貼付する接着層を有するシート状の基材と、周縁の所定の位置に剥離代を有するように前記接着層に剥離可能に仮着され、2以上の剥離片に分割して剥離可能なミシン目が形成された剥離台紙とを備える。
【0010】
ここで、基材の表面に所定の医療情報が印刷された印刷層を有することで、該印刷層には、対象物に充填されている薬液の種類、当該薬液を投与する患者の氏名等の医療情報を印字することができる。そして、基材の裏面は対象物に貼付する接着層を有するため、基材を対象物であるシリンジ等に貼付して使用することで、薬液の取り違え等を未然に防止することができる。
【0011】
また、周縁の所定の位置に剥離代を有するように接着層に剥離可能に仮着された剥離台紙を備えることにより、使用時には剥離代を把持して基材の接着層に仮着された剥離台紙を剥離し、露出した接着層を対象物に容易に貼付することができる。
【0012】
このとき、剥離台紙は、2以上の剥離片に分割して剥離可能なミシン目が形成されていることにより、剥離台紙のうち一部の剥離片だけを剥離し、露出した一部の接着層を対象物に貼付することができる。これにより、例えば貼付面積に制約のある対象物についても、医療用ラベルを確実に貼付することができる。
【0013】
また、ミシン目は、切込み部と非切込み部とのピッチが略0.2mm~0.5mmのマイクロミシン目である場合には、剥離台紙から一の剥離片だけを容易に剥離することができる。また、ロール紙状態の医療用ラベルの印刷層に、印刷機で所定の医療情報を印刷する場合にも、印刷機内での紙詰まりを未然に防止することができる。
【0014】
また、剥離台紙と基材とは略同一の長方形状であり、ミシン目は、剥離台紙の短尺方向であって、一端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置、及び他端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置において長尺方向に沿って形成されている場合には、剥離台紙を所定の幅で3分割することができる。従って、例えば貼付する対象物の貼付面積が小さい場合には、3分割された剥離台紙の何れか一つの剥離片を剥離することで対象物に医療用ラベルを貼付することができる。
【0015】
また、印刷層と接着層との間には保護層を有する場合には、対象物からの基材の剥離を容易にするとともに、基材全体の剛性を高めることができる。また、基材を貼付する対象物の表面に水滴などが付いていても、接着層から印刷層への水分の移動を防止し、印刷層を保護することができる。
【0016】
前記の目的を達成するために、本発明に係る医療用ラベルの使用方法は、表面に所定の医療情報が印刷された印刷層、裏面にシリンジに貼付する接着層を有するシート状の基材と、周縁の所定の位置に剥離代を有するように前記接着層に剥離可能に仮着され2以上の剥離片に分割して剥離可能なミシン目が形成された剥離台紙と、を備える医療用ラベルの使用方法において、前記剥離代を把持して、前記ミシン目に沿って前記基材から前記剥離台紙の一部を剥離する工程と、前記剥離台紙を剥離することで、露出した一部の接着層をシリンジの胴体部の所定の位置に貼付する工程とを備える。
【0017】
以上の構成により、医療用ラベルを貼付するシリンジが小容量タイプのもので、医療用ラベルの全体をシリンジに貼付することができない場合でも、剥離台紙の一部の剥離片を剥離することで、シリンジに刻印された目盛等を遮らない位置に医療用ラベルを貼付することができる。
【0018】
また、剥離台紙と基材とは略同一の長方形状であり、ミシン目は、剥離台紙の短尺方向であって、一端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置、及び他端から略4分の1幅から略3分の1幅の位置において長尺方向に沿って形成され、基材から剥離台紙の一部を剥離する工程は、3分割された剥離台紙のうち少なくとも一の剥離台紙を剥離する工程を有する場合には、ミシン目により3分割された剥離台紙のうち、貼付するシリンジの形状や大きさに応じて、何れか一つの剥離台紙を剥離することでシリンジに医療用ラベルを貼付することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る医療用ラベル、及び医療用ラベルの貼付方法は、容量の小さいシリンジに対しても、所定の医療情報が表示されたラベルを確実に貼付することで、薬液の誤投与を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る医療用ラベルであり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る医療用ラベルの背面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る医療用ラベルをシリンジに貼付した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は主にシリンジに貼付する医療用ラベルを前提として説明するが、これは例示であり、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0022】
本発明の実施形態に係る医療用ラベル1は、
図1に示すように、基材10と剥離台紙20から構成されている。基材10は、例えば長辺が略50mm、短辺が略30mmの長方形状であり、保護層11の表面にはシリンジに充填される薬液名、濃度、投与量などの医療情報が印刷される印刷層12が積層され、保護層11の裏面にはシリンジに医療用ラベル1を貼付するための接着層13が積層されている。保護層11は接着層13に対する離型性を有し、基材10を貼付するシリンジからの剥離を容易にすることができる。
【0023】
ここで、必ずしも、基材10の大きさや形状は前記したものに限定されるものではない。用途に応じて様々な大きさ、形状とすることができる。
【0024】
また、必ずしも、医療用ラベル1の印刷層12に印刷される医療情報としては、前記したものに限定されるものではない。例えば薬液を投与する患者の氏名や性別、薬液を投与する時間、担当する専門スタッフの氏名、2次元コードなど、所定の医療情報を適宜追加することができる。
【0025】
基材10の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば紙や樹脂フイルム、樹脂系合成紙など、様々な材質を用いることができる。なお、印刷層12への印刷の容易性、或いはコストの観点からは紙を用いることが好ましい。
【0026】
なお、必ずしも、基材10の印刷層12と接着層13との間には保護層11を介在させる必要はない。但し、保護層11を介在させることで、前記した通り基材10をシリンジに貼付した後に、シリンジからの基材10の剥離を容易にするとともに、基材10全体の剛性を高めることができる。また、基材10を貼付するシリンジの表面に水滴などが付いていても、接着層13から印刷層12への水分の移動を防止し、印刷層12を保護することができる。
【0027】
接着層13は接着性を有する材料で構成され、貼付するシリンジから基材10を剥離可能なものであればよい。具体的には基材10の材質に応じて、アクリル系、ホットメルト系、シリコーン系等の各種粘着剤を基材10の裏面に塗布して形成される。
【0028】
剥離台紙20は、基材10と同一の長方形状であって、その表面全体にシリコーン系剥離剤が塗布されており、保管時には接着層13を保護し、使用時に接着層13から剥離される。なお、使用時の作業性を考慮して、剥離台紙20は基材10よりも一回り大きいサイズであり、基材10からはみ出した部分が剥離台紙20を剥離する際に把持する剥離代23となっている。
【0029】
図2に示すように、剥離台紙20は複数のミシン目21が形成されている。ミシン目21は、短辺方向に一端E1から略4分の1幅から略3分の1幅の位置、及び他端E2から略4分の1幅から略3分の1幅の位置であって、長辺方向に沿って形成されることで、剥離台紙20を3つの剥離片22a~22cに分割して剥離することが可能となる。従って、ユーザーは剥離台紙20を剥離する際には、基材10を貼付するシリンジの大きさに応じて、3つの剥離片22a~22cのうち何れか1つか2つ、或いは3つの全てを剥離してシリンジに貼付することができる。
【0030】
ここで、必ずしも、ミシン目21は剥離台紙20を剥離片22a~22cの3分割とするために2ヶ所に形成されている必要はない。剥離台紙20は2分割、或いは4分割以上の剥離片に分割できるように、適宜ミシン目21の位置を調整することができる。
【0031】
なお、医療用ラベル1は、一般的には長方形状であり、印刷層12に印字される文字列は基材10の長辺方向に沿って印字される。そして、貼付するシリンジ30も横長の形態であるため、基材10の長辺をシリンジの長さ方向に沿って貼付するのが一般的であるため、ミシン目についても剥離台紙20の長辺に沿って形成されている。但し、貼付するシリンジの形態によっては、ミシン目21を短辺方向に沿って形成するようにしてもよい。
【0032】
剥離台紙20に形成されたミシン目21は、
図2の拡大図に示すように、切込み部211と非切込み部212とのピッチが略0.2mm~0.5mmの範囲であるマイクロミシン目である。
【0033】
ここで、必ずしも、剥離台紙20に形成されたミシン目はマイクロミシン目である必要はないが、マイクロミシン目を形成することで、剥離台紙20をミシン目に沿って直線状に確実に切り取ることができ、作業効率を向上させることができる。一方、通常のミシン目(例えば、切込み部211が3mm~6mmで非切込み部212が1mm~2mm程度)の場合には、剥離台紙20をミシン目に沿って直線状に切り取る際に剥離台紙20が破れる等、破損する虞があり、作業効率が悪化する。
【0034】
また、マイクロミシン目とすることで、複数の医療用ラベル1が連なったロール紙の状態で、ラベル印刷機で印刷層12に印刷を行う際に、紙詰まりを起こすことなく円滑に印刷することができる。一方、切込み部211の長さが比較的長くなる通常のミシン目の場合には、印刷機内において紙詰まりを起こす可能性がある。
【0035】
以上が本発明の実施形態に係る医療用ラベル1の構成である。次に、本発明の実施形態に係る医療用ラベル1を小児用等の容量の小さいシリンジ30に貼付する際の使用方法を説明する。
【0036】
[STEP1]
まず、ユーザーは、シリンジに充填された薬液に対応する医療情報が印刷された医療用ラベル1を選択する。
【0037】
[STEP2]
次に、医療用ラベル1のミシン目21により3分割されている剥離台紙20のうち、端部側の剥離片22aをミシン目21に沿って剥離する。
【0038】
[STEP3]
STEP2で、剥離台紙20のうち一の剥離片22aを剥離させたら、露出した接着層13をシリンジ30の胴部に長さ方向に沿って貼付する(
図3参照)。このときシリンジ30に刻印されている目盛り隠れないように接着層13をシリンジ30の胴部の一部に貼付する。
【0039】
そして、
図3に示す状態のように、一部の剥離台紙20を剥離させた状態の医療用ラベル1をシリンジ30に貼付することで、シリンジ30が小容量タイプのものであっても、医療用ラベル1の印刷層12に印刷されている内容が明瞭に視認できるとともに、シリンジ30に刻印されている目盛りや充填されている薬液の状態も視認できる状態となるため、薬液の誤投与を防止することができる。
【0040】
以上、本発明に係る医療用ラベル、及び医療用ラベルの使用方法は、容量の小さいシリンジに対しても、所定の医療情報が表示されたラベルを確実に貼付することで、薬液の誤投与を防止することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0041】
1 医療用ラベル
10 基材
11 保護層
12 印刷層
13 接着層
20 剥離台紙
21 ミシン目
211 切込み部
212 非切込み部
22a、22b、22c 剥離片
23 剥離代
30 シリンジ