(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172075
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B23D 29/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B23D29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089588
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】門前 哲也
【テーマコード(参考)】
3C039
【Fターム(参考)】
3C039FA06
(57)【要約】
【課題】使い勝手を向上する。
【解決手段】切断工具10では、ヘッド部70が、ベースヘッド部71と、ベースヘッド部71のメインプレート74に固定される第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90と、を含んで構成されている。そして、ヘッド部70が、軽天材としての加工材W1を支持する第1状態と、軽天材以外の加工材W2を支持する第2状態と、に切替可能に構成されている。具体的には、加工材に応じて、第1支持ヘッド部80又は第2支持ヘッド部90をベースヘッド部71に固定することで、ヘッド部70が第1状態又は第2状態に切替わる。これにより、異なる種類の加工材を切断工具10によって切断することができる。したがって、切断工具10の使い勝手を向上することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工材を支持するヘッド部と、
所定方向に移動可能に構成され、所定方向一方側への移動時に前記ヘッド部と共に前記加工材を挟み込んで前記加工材を切断するブレードと、
を備え、
前記ヘッド部は、
基部と、
前記基部の一部を挟み込む一対のヘッドプレートを有すると共に、前記加工材を支持する支持ヘッド部と、
を含んで構成されており、
前記ヘッド部が、軽天材としての前記加工材を支持する第1状態と、軽天材以外の前記加工材を支持する第2状態と、に切替可能に構成されている作業機。
【請求項2】
前記支持ヘッド部が、前記基部に着脱可能に固定されており、
前記支持ヘッド部を異なる態様の前記支持ヘッド部に交換することで、前記ヘッド部が前記第1状態又は前記第2状態に切替わる請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記支持ヘッド部が、前記軽天材としての前記加工材を支持する第1支持部と、前記軽天材以外の前記加工材を支持する第2支持部と、を有しており、
前記支持ヘッド部を異なる向きに変更することで、前記ヘッド部が前記第1状態又は前記第2状態に切替わる請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記支持ヘッド部は、把持部を有する固定部材によって前記基部に固定されており、
作業者によって、前記把持部を用いて前記固定部材が操作されることで、前記固定部材が前記支持ヘッド部を前記基部に固定する固定状態又は前記支持ヘッド部の前記基部への固定を解除する固定解除状態に切替わる請求項2又は請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記固定部材が蝶ボルトである請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記固定部材は、
前記基部に形成された挿通孔を挿通した状態で一対の前記ヘッドプレートに架け渡された固定軸と、
前記固定軸を軸方向一方側へ付勢する付勢部材と、
前記固定軸の軸方向他方側の端部に移動可能に連結され、前記固定軸の一端側への移動を規制すると共に、前記把持部を有するストッパと、
を含んで構成されており、
作業者によって前記把持部を用いて前記ストッパが移動することで、前記ストッパによる前記固定軸の一端側への移動規制が解除されて、前記固定部材が前記固定状態から前記固定解除状態に切替わる請求項4に記載の作業機。
【請求項7】
前記支持ヘッド部には、前記基部と係合可能に構成された係合部が形成されており、
前記係合部が前記基部に係合することで、前記支持ヘッド部の前記固定部材を中心とする前記所定方向一方側への傾倒を抑制する請求項4に記載の作業機。
【請求項8】
前記第1状態及び前記第2状態では、前記加工材は前記所定方向と交差する交差方向の移動が規制される請求項1に記載の作業機。
【請求項9】
前記ヘッド部は、前記交差方向に開放したC形状に構成される請求項8に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の電動往復動工具(作業機)では、受け板が電動往復動工具の前端部に設けられており、ホルダが受け板の後側に設けられている。ホルダの後側には、ハウジングが設けられており、ハウジングは、前後方向に延在されたモータ室と、モータ室から交差する方向に延在されたハンドルと、を含んで構成されている。そして、加工材としての軽天材を受け板によって支持し、ハンドルのメインスイッチを操作することで、可動刃(ブレード)がホルダから前方へ移動して、可動刃及び受け板によって軽天材を挟み込む。これにより、加工材に対して切断加工を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電動往復動工具では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、上記電動往復動工具では、受け板によって軽天材を支持するが、受け板が軽天材以外の加工材を支持可能に構成されていない。換言すると、上記電動往復工具では、軽天材以外の加工材に切断加工を施すことができず、電動往復工具の使い勝手が低下する可能性がある。このため、上記電動往復工具では、使い勝手を向上するという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、使い勝手を向上することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、加工材を支持するヘッド部と、所定方向に移動可能に構成され、所定方向一方側への移動時に前記ヘッド部と共に前記加工材を挟み込んで前記加工材を切断するブレードと、を備え、前記ヘッド部は、基部と、前記基部の一部を挟み込む一対のヘッドプレートを有すると共に、前記加工材を支持する支持ヘッド部と、を含んで構成されており、前記ヘッド部が、軽天材としての前記加工材を支持する第1状態と、軽天材以外の前記加工材を支持する第2状態と、に切替可能に構成されている作業機である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記支持ヘッド部が、前記基部に着脱可能に固定されており、前記支持ヘッド部を異なる態様の前記支持ヘッド部に交換することで、前記ヘッド部が前記第1状態又は前記第2状態に切替わる作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記支持ヘッド部が、前記軽天材としての前記加工材を支持する第1支持部と、前記軽天材以外の前記加工材を支持する第2支持部と、を有しており、前記支持ヘッド部を異なる向きに変更することで、前記ヘッド部が前記第1状態又は前記第2状態に切替わる作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記支持ヘッド部は、把持部を有する固定部材によって前記基部に固定されており、作業者によって、前記把持部を用いて前記固定部材が操作されることで、前記固定部材が前記支持ヘッド部を前記基部に固定する固定状態又は前記支持ヘッド部の前記基部への固定を解除する固定解除状態に切替わる作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定部材が蝶ボルトである作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記固定部材は、前記基部に形成された挿通孔を挿通した状態で一対の前記ヘッドプレートに架け渡された固定軸と、前記固定軸を軸方向一方側へ付勢する付勢部材と、前記固定軸の軸方向他方側の端部に移動可能に連結され、前記固定軸の一端側への移動を規制すると共に、前記把持部を有するストッパと、を含んで構成されており、作業者によって前記把持部を用いて前記ストッパが移動することで、前記ストッパによる前記固定軸の一端側への移動規制が解除されて、前記固定部材が前記固定状態から前記固定解除状態に切替わる作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記支持ヘッド部には、前記基部と係合可能に構成された係合部が形成されており、前記係合部が前記基部に係合することで、前記支持ヘッド部の前記固定部材を中心とする前記所定方向一方側への傾倒を抑制する作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第1状態及び前記第2状態では、前記加工材は前記所定方向と交差する交差方向の移動が規制される作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ヘッド部は、前記交差方向に開放したC形状に構成される作業機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、使い勝手を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る切断工具の内部を示す右側から見た断面図である。
【
図2】
図1に示される切断工具のヘッド部の外観を示す右側から見た側面図である。
【
図3】
図2に示される第1支持ヘッド部のメインプレートへの固定状態を示す下側から見た断面図(
図2の3-3線断面図)である。
【
図4】
図1に示されるヘッド部において第1支持ヘッド部を第2支持ヘッド部に交換して、ヘッド部を第1状態から第2状態に切替えた状態を示す
図1に対応する断面図である。
【
図5】
図2に示されるヘッド部を、第1支持ヘッド部をメインプレートから取外した状態で示す側面図である。
【
図6】(A)は、
図3に示される第1支持ヘッド部のメインプレートへの固定方法の変形例を示す
図3に対応する断面図であり、(B)は、(A)に示される固定軸ユニットによる第1支持ヘッド部のメインプレートへの固定状態を示す前側から見た断面図(
図6(A)の6B-6B線断面図)である。
【
図7】
図6(A)に示される固定軸ユニットによる第1支持ヘッド部のメインプレートへの固定状態を解除する手順を説明するための説明図である。
【
図8】(A)は、
図1に示されるヘッド部の変形例の第1状態を示す断面図であり、(B)は、(A)のヘッド部の変形例における支持ヘッド部のメインプレートへの固定状態を示す下側から見た断面図(
図8(A)の8B-8B線断面図)である。
【
図9】(A)は、
図8(A)に示されるヘッド部の変形例を第1状態から第2状態に切替えた状態を示す断面図であり、(B)は、(A)のヘッド部の変形例における支持ヘッド部のメインプレートへの固定状態を示す下側から見た断面図(
図9(A)の9B-9B線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としての切断工具10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印RHは、それぞれ切断工具10の上側、前側、及び右側を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、切断工具10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0018】
図1~
図4に示されるように、切断工具10は、建物の吊り天井に用いられる軽天材としての加工材W1や軽天材以外の加工材W2(本実施の形態では、
図4に示される樹脂製の管材)に切断加工を施す電動工具として構成されている。加工材W1は、長尺柱状に形成されており、その長手方向から見て、略U字形状に形成されている。加工材W2は、長尺状に形成され、その長手方向から見て、略円環状に形成されている。切断工具10は、ハウジング20と、モータ40と、送りネジ機構50(広義には、移動機構として把握される要素である)と、ブレード60と、コントローラ64と、ヘッド部70と、を含んで構成されている。以下、切断工具10の各構成について説明する。
【0019】
(ハウジング20について)
図1に示されるように、ハウジング20は、切断工具10の前端部を除く外郭を構成しており、全体として前後方向に延在されている。ハウジング20は、ハウジング20の前部を構成するハンドルハウジング部20Aと、ハウジング20の後部を構成するモータハウジング部20Bと、を含んで構成されている。ハンドルハウジング部20Aは、前後方向に延在された略矩形筒状に形成されている。ハンドルハウジング部20Aの前端部には、上下方向両側へ張り出された一対の張出部20Cが形成されている。
【0020】
ハンドルハウジング部20Aの下側には、ハンドルガード20Dが設けられている。ハンドルガード20Dは、前後方向に延在された略矩形筒状に形成されている。ハンドルガード20Dの前端部は、上側へ屈曲されて下側の張出部20Cに接続されており、ハンドルガード20Dの後端部は、上斜め後方側へ屈曲されて、ハンドルハウジング部20Aの後端部に接続されている。そして、ハンドルハウジング部20Aにおけるハンドルガード20Dの前端部と後端部との間の部分が、作業者が把持する把持部20Eとして構成されている。
【0021】
把持部20Eの前端部には、後述するブレード60の移動開始(切断加工の開始)を指示するためのトリガ30が設けられている。トリガ30は、上側へ引き操作可能に把持部20Eから下側へ突出している。ハンドルハウジング部20Aの前端部には、トリガ30の前端部の下側において、トリガスイッチ32が設けられている。トリガ30が引き操作されることで、トリガスイッチ32が、オフからオンに切替わり、トリガ30への引き操作を解除することで、トリガスイッチ32がオンからオフに切替わる。トリガスイッチ32は、後述するコントローラ64に電気的に接続されており、トリガ30への引き操作に応じた出力信号をコントローラ64に出力する。
【0022】
ハンドルハウジング部20Aの前端部には、支持ガイド34が設けられており、支持ガイド34は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。支持ガイド34の後部が、ハンドルハウジング部20Aに回転可能に支持されており、支持ガイド34の前部は、ハウジング20から前側へ突出している。支持ガイド34の前部には、後述するブレード60を配置するための上下一対のスリット34Aが形成されている。スリット34Aは、前後方向に延在され且つ上下方向に貫通しており、スリット34Aの前端部が、前側へ開放されている。
【0023】
モータハウジング部20Bは、左右方向を厚み方向とする略偏平状に形成されている。モータハウジング部20Bの下端部には、ハンドルガード20Dの後側において、バッテリ装着部20Gが設けられている。バッテリ装着部20Gには、バッテリターミナル22が設けられており、バッテリターミナル22は、後述するコントローラ64に電気的に接続されている。バッテリ装着部20Gには、バッテリ24が着脱可能に装着されており、バッテリ24は、バッテリターミナル22と接続されるコネクタ(図示省略)を有している。これにより、コントローラ64を介して後述するモータ40に電力が供給される。
【0024】
(モータ40について)
モータ40は、ブラシレスモータとして構成されて、モータハウジング部20Bに収容されている。モータ40は、前後方向を軸方向とする駆動軸40Aを有しており、駆動軸40Aの後端部が、ハウジング20に保持されたモータ軸受42に回転可能に支持され、駆動軸40Aの前端側部分が、ハウジング20に保持されたモータ軸受44に回転可能に支持されている。駆動軸40Aの前端部には、ピニオンギヤ40Bが形成されている。モータ40は、コントローラ64に電気的に接続されて、コントローラ64の制御によって駆動する。
【0025】
(送りネジ機構50について)
送りネジ機構50は、伝達ギヤ51と、ドライブシャフト53(広義には、出力軸として把握される要素である)と、リフタ55(広義には、移動部材として把握される要素である)と、リフタ55の初期位置を検出するためのリフタ検出スイッチ58と、を含んで構成されている。
【0026】
伝達ギヤ51は、前後方向を軸方向とする略段付き円柱状に形成されており、伝達ギヤ51の前部の直径が、伝達ギヤ51の後部の直径よりも大きく設定されている。伝達ギヤ51の前面の中央部には、前側へ開放されたギヤ凹部51Aが形成されている。伝達ギヤ51は、モータ40の駆動軸40Aにおける前端部の下側に配置され、伝達ギヤ51の後部が、ハウジング20に保持されたギヤ軸受52によって回転可能に支持されている。伝達ギヤ51の前部の外周部には、ギヤ部51Bが形成されており、ギヤ部51Bが駆動軸40Aのピニオンギヤ40Bに噛合されている。
【0027】
ドライブシャフト53は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。ドライブシャフト53は、ハンドルハウジング部20A内に収容されると共に、伝達ギヤ51の前側で且つ伝達ギヤ51と同軸上に配置されている。そして、ドライブシャフト53の後端部が、伝達ギヤ51のギヤ凹部51A内に一体回転可能に嵌入されており、ドライブシャフト53の後端側部分が、ハウジング20に保持されたシャフト軸受54によって回転可能に支持されている。これにより、モータ40が駆動することで、ドライブシャフト53が回転する。ドライブシャフト53の外周部には、後端部を除く部分において、雄ネジ53Aが形成されている。
【0028】
リフタ55は、全体として前後方向に延在された略長尺状に形成されている。リフタ55は、リフタ本体56と、リフタ55の後端部を構成するナット部57と、を含んで構成されている。ナット部57は、前後方向を軸方向とする略段付き円筒状に形成されている。ナット部57の後部の内周部には、雌ネジ57Aが形成されている。そして、ドライブシャフト53の前部が、ナット部57の内部に挿入され、ドライブシャフト53の雄ネジ53Aとナット部57の雌ネジ57Aとが螺合されている。すなわち、ドライブシャフト53とリフタ55とがネジ嵌合している。
【0029】
リフタ本体56は、後側へ開放された略有底円筒状に形成されている。リフタ本体56の後端部はナット部57の前部内に嵌入されて、リフタ本体56及びナット部57が相対移動不能に連結されている。リフタ本体56の前端部は、支持ガイド34に挿入されて、支持ガイド34によって前後方向に相対移動可能に支持されている。
【0030】
そして、ドライブシャフト53とリフタ55とがネジ嵌合により、ドライブシャフト53が回転することで、リフタ55が前後方向に移動する。具体的には、リフタ55が、初期位置(
図1において実線にて示される位置)と、停止位置(
図1において2点鎖線にて示される位置)と、の間を往復移動する。リフタ55の初期位置では、ドライブシャフト53の前部が、リフタ本体56の内部に相対移動可能に挿入されている。また、ナット部57における後端部の外周部は、被検出部57Bとして構成されている。
【0031】
リフタ検出スイッチ58は、レバー式のマイクロスイッチとして構成されて、ハンドルガード20Dの後端部に収容されている。リフタ検出スイッチ58の上側には、球状のボール59が設けられており、ボール59は、ハンドルハウジング部20Aの外周下端部に形成されたボール用孔部20H内に配置されている。ボール用孔部20Hは、上下方向に貫通しており、ボール用孔部20Hの直径が下側へ向かうに従い大きくなっている。リフタ検出スイッチ58のオフ状態では、ボール59の外周面が、リフタ検出スイッチ58のレバー部及びボール用孔部20Hの内周面に当接している。また、この状態では、ボール59の外周部の一部が、ハンドルハウジング部20A内に配置されるように、ハンドルハウジング部20Aの内周面に対して径方向内側へ突出している。一方、リフタ55の初期位置では、リフタ55の被検出部57Bがボール59を介してリフタ検出スイッチ58のレバー部を下側へ押圧して、リフタ検出スイッチ58がオフからオンに切替わるようになっている。リフタ検出スイッチ58は、コントローラ64に電気的に接続されており、検出信号をコントローラ64に出力する。
【0032】
(ブレード60について)
ブレード60は、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。ブレード60の後端部は、リフタ55の前端部にネジ61によって固定されている。これにより、ブレード60が、リフタ55と一体に初期位置(
図1において実線にて示される位置)と停止位置(
図1において2点鎖線にて示される位置)との間を移動する。なお、ブレード60の後端部は、支持ガイド34のスリット34Aに挿入されている。ブレード60の前端部には、刃部60Aが形成されており、刃部60Aは、左右方向から見て、前側へ凸となる略V字形状に形成されている。
【0033】
ここで、加工材W1の切断加工時と加工材W2の切断加工時とでは、異なるブレードが用いられる。これらのブレードを区別するために、以下の説明では、加工材W1の切断加工時に用いられるブレードをブレード60-1(
図1及び
図2参照)とし、加工材W2の切断加工時に用いられるブレードをブレード60-2(
図4参照)と記載する。
【0034】
ブレード60-1(ブレード60-2)の初期位置では、ブレード60-1(ブレード60-2)が、ハウジング20の前側に隣接配置されると共に、加工材W1(加工材W2)の後側に配置される。そして、ブレード60-1(ブレード60-2)が初期位置から前側へ移動することで、後述するヘッド部70と共に加工材W1(加工材W2)を前後方向両側から挟み込んで、加工材W1(加工材W2)に対する切断加工が施される。さらに、ブレード60-1(ブレード60-2)の停止位置では、加工材W1(加工材W2)に対する切断加工が完了する設定になっている。
【0035】
(ヘッド部70について)
図1~
図5に示されるように、ヘッド部70は、切断加工時に加工材W1又は加工材W2を支持する機構部として構成されている。このため、ヘッド部70は、加工材W1を支持する第1状態又は加工材W2を支持する第2状態に切替可能に構成されている。ヘッド部70は、基部としてのベースヘッド部71を有している。そして、ベースヘッド部71には、ヘッド部70を構成する一部品として、支持ヘッド部としての第1支持ヘッド部80、または支持ヘッド部としての第2支持ヘッド部90が取り付け可能となっている。第1支持ヘッド部80と第2支持ヘッド部90とは異なる態様に構成されており、加工材W1の切断加工時に第1支持ヘッド部80をベースヘッド部71に固定し、加工材W2の切断加工時に第2支持ヘッド部90をベースヘッド部71に固定するようになっている。すなわち、切断する加工材に応じて、第1支持ヘッド部80と第2支持ヘッド部90とを交換して、ヘッド部70を第1状態又は第2状態に切替える。以下、ヘッド部70の構成について説明する。
【0036】
ベースヘッド部71は、ブレードホルダ72及びメインプレート74(広義には、固定プレートとして把握される要素である)を有している。ブレードホルダ72は、左右一対のホルダプレート73によって構成されている。ホルダプレート73は、金属板材で構成されると共に、左右方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されている。一対のホルダプレート73は、左右方向に所定の隙間を空けて対向して配置されており、ブレード60-1、60-2が、一対のホルダプレート73の間に配置されている。これにより、ブレードホルダ72によって、ブレード60-1、60-2を左右方向両側から覆って、ドライブシャフト53の回転時におけるリフタ55及びブレード60の回転を制限する共に、ブレード60の前後方向の往復移動をガイドするようになっている。
【0037】
一対のホルダプレート73の上端部同士は、前後一対のボルトBL1によって連結されている。また、一対のホルダプレート73の下端部の間には、後述するメインプレート74が配置されている。そして、前後一対のボルトBL2及びナットNによって、一対のホルダプレート73が、メインプレート74を左右方向外側から挟み込んだ状態で締結固定されている(
図3参照)。ホルダプレート73の上下方向中間部には、ホルダ連結部73A(
図2参照)が形成されており、ホルダ連結部73Aは、前側から見て、左右方向外側へ凸となる略円弧状に形成されている。そして、ホルダ連結部73Aが、支持ガイド34における前部を左右方向外側から挟み込んで、ホルダプレート73が支持ガイド34に相対移動不能に連結されている。すなわち、ヘッド部70が、前後方向を軸方向として、ハウジング20に回転可能に連結されている。なお、ハウジング20の前端部に固定された上下一対のストッパ26が、ホルダプレート73に当接することで、ヘッド部70が保持される。
【0038】
メインプレート74は、金属板材で構成されると共に、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略長尺板状に形成されている。そして、上述のように、メインプレート74の後部が、一対のホルダプレート73の下部の間に配置されており、前後一対のボルトBL2及びナットNによってホルダプレート73に締結固定されている。メインプレート74のブレードホルダ72への固定状態では、メインプレート74がブレード60-1(ブレード60-2)の下側に近接して配置され、メインプレート74の前部が、ブレードホルダ72よりも前側へ突出しており、この突出した部分が固定部74Aとして構成されている。
【0039】
固定部74Aの後端部における下端部には、係合凹部74B(広義には、被係合部として把握される要素である)が形成されており、係合凹部74Bは、左右方向から見て、下側へ開放された凹状に切り欠かれている。固定部74Aの前端部には、円形状の挿通孔74Cが貫通形成されている。
【0040】
第1支持ヘッド部80は、ブレードホルダ72の前側に離間して配置されている。第1支持ヘッド部80は、左右一対のヘッドプレートとしての第1ヘッドプレート81を有しており、第1ヘッドプレート81は、金属板材で構成されると共に、左右方向を板厚方向とする略逆L字形板状に形成されている。具体的には、第1支持ヘッド部80は、上下方向に延在された本体部81Aと、本体部81Aの下端部から後側へ延出されたアーム部81Bと、を含んで構成されている。ヘッド部70は、ブレードホルダ72とメインプレート74と第1支持ヘッド部80によってC形状(コの字)となっており、上下方向(ブレード60の幅方向)に開放されている。この開放領域は、第1支持ヘッド部80に加工材W1を支持させる際に、加工材W1が通過する空間(受け入れ口)となる。加工材W1は、ヘッド部70の開放領域を上下方向に通ることで、ヘッド部70に支持される。
【0041】
一対の第1ヘッドプレート81は、左右方向に対向して配置されており、メインプレート74の固定部74Aが、一対の第1ヘッドプレート81の間に配置されている。本体部81Aの下端部には、メインプレート74の挿通孔74Cに対応する位置において、ネジ部81C(
図3参照)が貫通形成されており、ネジ部81Cの内周部には、雌ネジが形成されている。そして、固定部材としての蝶ボルト100が、第1支持ヘッド部80の左右方向一方側からネジ部81Cに螺合されて、蝶ボルト100によって第1支持ヘッド部80がメインプレート74に固定されている(この状態を蝶ボルト100の固定状態という)。これにより、一対の第1ヘッドプレート81が左右方向に所定の間隔を空けて対向して配置されている。なお、蝶ボルト100による第1支持ヘッド部80への締結固定は、蝶ボルト100の頭部に形成された翼状の把持部100Aを用いて行う。また、一対の第1ヘッドプレート81の上端部は、ボルトBL3によって互いに連結されている。
【0042】
アーム部81Bの先端部(後端部)には、左右方向内側に屈曲された係合部としての係合爪部81D(
図3参照)が形成されており、係合爪部81Dがメインプレート74の係合凹部74B内に配置されている。具体的には、右側の第1ヘッドプレート81の係合爪部81Dが係合凹部74Bの後部内に配置され、左側の第1ヘッドプレート81の係合爪部81Dが係合凹部74Bの前部内に配置されている。係合爪部81Dは、係合凹部74Bの上面の下側に隣接配置されており、係合爪部81Dと係合凹部74Bとが上下方向に係合している。これにより、右側から見て、第1支持ヘッド部80が、蝶ボルト100を中心として時計回りに回転しようとすると、係合爪部81Dと係合凹部74Bとが係合して、第1支持ヘッド部80の前側への傾倒を抑制する構成になっている。
【0043】
本体部81Aの後端部には、メインプレート74よりも上側において、複数(本実施の形態では、4箇所)の第1支持部としての支持凹部81Eが形成されている。支持凹部81Eは、後側へ開放された凹状に切り欠かれており、左右方向に貫通している。加工材W1への切断加工時には、加工材W1の長手方向から見た加工材W1の両端部を支持凹部81Eに挿入して、加工材W1を第1支持ヘッド部80にセットする。これにより、第1支持ヘッド部80が加工材W1を前側から支持する支持部として機能する。
【0044】
図4に示されるように、第2支持ヘッド部90は、ブレードホルダ72の前側に離間して配置され、第1支持ヘッド部80と同様に構成されている。すなわち、第2支持ヘッド部90は、左右一対のヘッドプレートとしての第2ヘッドプレート91を有しており、第2ヘッドプレート91は、金属板材で構成されると共に、左右方向を板厚方向とする略逆L字形板状に形成されている。具体的には、第2支持ヘッド部90は、上下方向に延在された本体部91Aと、本体部91Aの下端部から後側へ延出されたアーム部91Bと、を含んで構成されている。本体部91Aの幅寸法(前後方向の寸法)が、第1支持ヘッド部80の本体部81Aの幅寸法よりも小さく設定されており、アーム部91Bの延出長さが、第1支持ヘッド部80のアーム部81Bの延出長さよりも長く設定されている。
【0045】
一対の第2ヘッドプレート91の下端部は、メインプレート74の左右方向外側にそれぞれ配置される。そして、本体部91Aの下端部には、第1ヘッドプレート81と同様に、メインプレート74の挿通孔74Cに対応する位置において、ネジ部(図示省略)が貫通形成されており、当該ネジ部の内周部に雌ネジが形成されている。そして、蝶ボルト100が、第2支持ヘッド部90の左右方向一方側からネジ部に螺合されて、蝶ボルト100によって第2支持ヘッド部90がメインプレート74に固定される(この状態も蝶ボルト100の固定状態という)。また、一対の第2ヘッドプレート91の上端部は、ボルトBL3によって互いに連結されている。
【0046】
アーム部91Bの先端部(後端部)には、左右方向内側に屈曲された係合部としての係合爪部91Dが形成されている。そして、右側の第2ヘッドプレート91の係合爪部91Dが係合凹部74Bの後部内に配置され、左側の第2ヘッドプレート91の係合爪部91Dが係合凹部74Bの前部内に配置されている。係合爪部81Dと係合凹部74Bとが係合して、第2支持ヘッド部90の前傾を抑制する構成になっている。
【0047】
本体部91Aの後端部には、メインプレート74よりも上側において、第2支持部としての支持凹部91Eが形成されている。支持凹部91Eは、後側へ開放された凹状に切り欠かれており、左右方向から見て、加工材W2の外形に対応する略円弧状に形成されている。加工材W2への切断加工時には、加工材W2の長手方向から見た加工材W2の前端部を支持凹部91Eに挿入して、加工材W2を第2支持ヘッド部90にセットする。これにより、第2支持ヘッド部90が加工材W2を前側から支持する支持部として機能する。また、第2状態においても、ヘッド部70は、ブレードホルダ72とメインプレート74と第2支持ヘッド部90によってC形状(コの字)となっており、上下方向(ブレード60の幅方向)に開放されている。
【0048】
(コントローラ64について)
図1に示されるように、コントローラ64は、ハウジング20のモータハウジング部20Bの後端部に収容されて、ハウジング20に保持されている。コントローラ64には、トリガスイッチ32、モータ40、及びリフタ検出スイッチ58が電気的に接続されている。コントローラ64は、リフタ検出スイッチ58の検出信号に基づいて、リフタ55の初期位置を検知する。また、コントローラ64は、トリガスイッチ32及びリフタ検出スイッチ58からの出力信号に基づいて、モータ40を駆動制御する。そして、コントローラ64がモータ40を正転駆動させることで、リフタ55(ブレード60-1、60-2)が前方側へ移動する。一方、コントローラ64がモータ40を逆転駆動させることで、リフタ55(ブレード60-1、60-2)が後方側へ移動する。
【0049】
また、モータ40の正転駆動中にトリガ30の操作が解除されてトリガスイッチ32がオンからオフに切替わったときには、コントローラ64がモータ40を逆転駆動させるようになっている。さらに、コントローラ64は、モータ40の駆動軸40Aの回転数を検出するモータ駆動検出部を有している。モータ駆動検出部からの検出信号によって、モータ40が初期位置から何回転したかを、コントローラ64が検知する。これによって、コントローラ64は、リフタ55の初期位置を起点としたモータ40の回転数に基づいてリフタ55(ブレード60)の停止位置を検知する。さらに、コントローラ64は、リフタ55(ブレード60)の停止位置を検知すると、モータ40の駆動を停止するようになっている。
【0050】
(作用効果)
次に、本実施の形態の切断工具10の作用効果について説明する。
【0051】
上記のように構成された切断工具10の加工材W1への切断加工時には、ヘッド部70において、第1支持ヘッド部80がメインプレート74に締結固定され、加工材W1を第1支持ヘッド部80にセットする。そして、トリガ30が操作され、トリガスイッチ32がオンされると、コントローラ64の制御によってモータ40が正転駆動する。これにより、送りネジ機構50が作動し、リフタ55によってブレード60が前方側(往路側であり、前後方向の一方側)へ移動する。このため、ブレード60-1が加工材W1に接近し、第1支持ヘッド部80に支持された加工材W1を、ブレード60-1及び第1支持ヘッド部80によって挟み込むことで、ブレード60-1による加工材W1に対する切断加工が施される。コントローラ64が、ブレード60-1の停止位置を検知すると、モータ40の正転駆動を停止させる。これにより、加工材W1に対する切断加工が完了する。
【0052】
切断加工の完了後、モータ40の駆動が自動停止され、再度、トリガスイッチ32がオンされると、コントローラ64の制御によってモータ40が逆転し、送りネジ機構50が再度作動して、送りネジ機構50のリフタ55によってブレード60-1が後側(復路側であり、前後方向の他方側)へ移動する。コントローラ64が、リフタ検出スイッチ58の検出信号に基づいて、リフタ55の初期位置を検知すると、コントローラ64によって、モータ40の駆動が停止される。
【0053】
一方、切断工具10の加工材W2への切断加工時には、ヘッド部70において、第1支持ヘッド部80を第2支持ヘッド部90に交換する。具体的には、作業者によって蝶ボルト100の把持部100Aを把持して、蝶ボルト100による第1支持ヘッド部80への固定状態を解除する。すなわち、蝶ボルト100を固定状態から固定解除状態にする。そして、第1支持ヘッド部80をヘッド部70のメインプレート74から取外して(
図5参照)、第2支持ヘッド部90をメインプレート74に取付ける。具体的には、メインプレート74の固定部74Aを一対の第2ヘッドプレート91の下端部の間に挿入すると共に、係合爪部91Dをメインプレート74の係合凹部74B内に挿入させる。また、第2ヘッドプレート91のネジ部をメインプレート74の挿通孔74Cと同軸上に配置させる。この状態で、蝶ボルト100を第2支持ヘッド部90に対して左右方向一方側から第2支持ヘッド部90のネジ部に螺合させて、第2支持ヘッド部90をメインプレート74に締結固定させる。そして、加工材W2を、ブレードホルダ72と第2支持ヘッド部90との間に挿入し、第2支持ヘッド部90の支持凹部91E内にセットする。そして、上述と同様に、トリガ30を引き操作することで、加工材W2に対する切断加工が施される。
【0054】
以上説明したように、切断工具10では、ヘッド部70が、ベースヘッド部71と、ベースヘッド部71のメインプレート74に固定される第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90と、を含んで構成されている。そして、ヘッド部70が、軽天材としての加工材W1を支持する第1状態と、軽天材以外の加工材W2を支持する第2状態と、に切替可能に構成されている。具体的には、加工材に応じて、第1支持ヘッド部80又は第2支持ヘッド部90をベースヘッド部71に固定することで、ヘッド部70が第1状態又は第2状態に切替わる。なお、第1状態と第2状態は加工材を支持可能な状態であるが、本発明においては加工材の加工方向(切断方向)及び加工方向と交差する方向への移動を抑制した状態を支持状態(第1状態、第2状態)とする。特に、特定方向(左右方向)に延在する加工材を前後方向に切断する場合、加工方向と特定方向の双方に対して直交する方向(上下方向)への移動を抑制する状態を支持状態(第1状態、第2状態)とする。このような支持状態とするには、前後方向に加工材とヘッド部70とを接触させた状態で、上下方向で見て加工材の一部とヘッド部70の一部とが重なるようにすればよい。第1状態では、支持凹部81Eによって加工材W1とヘッド部70とが上下方向に重なっている。支持凹部81Eによって形成される前後方向に延びる平面部が加工材W1と上下方向に接触することで、加工材W1の上下方向の移動が抑制(規制)される。第2状態では、支持凹部91Eによって加工材W2とヘッド部70とが上下方向に重なっている。支持凹部91Eによって形成される傾斜部分が加工材W2と上下方向に接触することで、加工材W2の上下方向の移動が抑制(規制)される。支持状態を実現するには、例えば支持ヘッド部に前方向の凹み(切り欠き)を形成し、この凹み部分に加工材の一部が入り込むようにすればよい。ヘッド部70はC形状となっており、これによって開放領域が形成されるが、支持状態における加工材は、ヘッド部70の開放方向への移動が規制されるように構成すればよい。以上により、本実施形態の切断工具10によれば、異なる種類の加工材を切断工具10によって切断することができる。したがって、切断工具10の使い勝手を向上することができる。
【0055】
また、第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90は、把持部100Aを有する蝶ボルト100によってメインプレート74に着脱可能に固定される。すなわち、作業者が、蝶ボルト100の把持部100Aを用いて蝶ボルト100を操作することで、第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90の交換作業を行うことができる。その結果、ツールレスで第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90の交換作業を行うことができる。したがって、切断工具10の使い勝手を一層向上することができる。
【0056】
また、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)には、メインプレート74の係合凹部74Bと係合可能に構成された係合爪部81D(係合爪部91D)が設けられている。そして、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の係合爪部81D(係合爪部91D)が係合凹部74Bに係合することで、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の蝶ボルト100を中心とする前側への傾倒が抑制される。これにより、蝶ボルト100による第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の交換作業時における作業工数を削減しつつ、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)による加工材W1(加工材W2)への支持状態を良好に維持することができる。
【0057】
すなわち、蝶ボルト100による第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)への固定箇所を1箇所にすることで、蝶ボルト100による固定箇所を2箇所にする場合と比べて、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の交換作業時における作業工数を削減することができる。ここで、加工材W1(加工材W2)に対する切断加工時では、ブレード60-1(ブレード60-2)によって、加工材W1(加工材W2)及び第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)が前側へ押圧される。このため、蝶ボルト100による第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)への固定箇所を1箇所にすると、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)が蝶ボルト100を中心に前側へ傾倒しようとする。ここで、係合爪部81D(係合爪部91D)が係合凹部74Bに係合することで、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の蝶ボルト100を中心とする前側への傾倒が抑制される。したがって、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)による加工材W1(加工材W2)に対する支持状態を良好に維持することができる。以上により、蝶ボルト100による第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の交換作業時における作業工数を削減しつつ、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)による加工材W1(加工材W2)への支持状態を良好に維持することができる。
【0058】
(第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90のメインプレート74への固定方法の変形例について)
次に、
図6(A)及び(B)を用いて、第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90のメインプレート74への固定方法の変形例について説明する。なお、
図6(A)及び(B)では、第1支持ヘッド部80を用いて、第1支持ヘッド部80のメインプレート74への固定方法の変形例を図示しており、第2支持ヘッド部90においても第1支持ヘッド部80と同様に構成される。
【0059】
この図に示されるように、固定方法の変形例では、蝶ボルト100の代わりに固定部材としての固定軸ユニット110を用いて第1支持ヘッド部80をメインプレート74に固定している。また、固定方法の変形例では、第1ヘッドプレート81において、ネジ部81Cに代わりに固定孔81Fが左右方向に貫通形成されており、固定孔81Fがメインプレート74の挿通孔74Cと同軸上に配置される。また、固定孔81F及び挿通孔74Cには、左右方向を軸方向とする円筒状のスリーブ120が挿通されており、スリーブ120の軸方向両側には、それぞれワッシャ121が設けられている。
【0060】
固定軸ユニット110は、固定軸111と、ストッパとしてのスライドプレート112と、を含んで構成されている。固定軸111は、左右方向を軸方向とする略段付き円柱状に形成されており、固定軸111の一端部(右端部)には、拡径の頭部111Aが形成されている。そして、固定軸111がスリーブ120内を挿通すると共に、固定軸111の両端側部分が第1支持ヘッド部80から左右方向外側へ突出している。固定軸111の他端部(左端部)には、上下方向中央部において、後述するスライドプレート112を配置するためのスリット111Bが形成されている。スリット111Bは、上下方向を幅方向とし且つ固定軸111の他端側(左側)へ開放された溝状に形成されると共に、前後方向に貫通している。スリット111B内には、上下方向を軸方向とするピン113が設けられており、ピン113の両端部が固定軸111に支持されている。
【0061】
スライドプレート112は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。スライドプレート112の後端部が、作業者が把持する把持部112Aとして構成されている。スライドプレート112の前部には、左右方向中央部において、スライド孔112Bが貫通形成されており、スライド孔112Bは、前後方向(スライドプレート112の長手方向)に延在された長孔状に形成されている。そして、スライドプレート112が固定軸111のスリット111B内に相対移動可能に挿入されると共に、ピン113がスライド孔112B内に相対移動可能に挿入されている。具体的には、ピン113がスライド孔112Bの後端部内に配置され、スライドプレート112の長手方向両端部が、固定軸111から前後方向外側へ突出すると共に、左側のワッシャ121に隣接配置している。これにより、固定軸111の右側(一端側)への移動が規制されている(以下、固定軸ユニット110におけるこの状態を、固定状態という)。また、スライドプレート112の幅寸法(左右方向の寸法)は、スリーブ120の内径よりも小さく設定されている。スライド孔112Bの前後方向両端部は中央部分よりも拡大されており、凹となった部分にピン113が係合するようになっている。
【0062】
固定軸111の一端側部分には、付勢部材としての保持スプリング114が外挿されている。保持スプリング114は、圧縮コイルスプリングとして構成されている。保持スプリング114の一端部は固定軸111の頭部111Aに係止され、保持スプリング114の他端部が右側のワッシャ121に係止されている。すなわち、保持スプリング114は固定軸111を右側に付勢し、右側のワッシャ121を左側へ付勢している。これにより、右側の第1ヘッドプレート81が右側のワッシャ121を介して左側へ付勢され、左側の第1ヘッドプレート81が固定軸111、スライドプレート112、左側のワッシャ121を介して右側へ付勢されている。この結果、固定軸ユニット110の固定状態が保持されるともに、第1ヘッドプレート81は左右方向の付勢による挟み込み力(クランプ力)が加えられることでメインプレート74に固定されている。
【0063】
そして、固定軸ユニット110による第1支持ヘッド部80のメインプレート74への固定を解除するときには、作業者が固定軸111を左方向に押圧して固定軸111を保持スプリング114からの付勢力に抗して左側へ移動させることで第1支持ヘッド部80(第1ヘッドプレート81)に対するクランプ力を解除し、次にスライドプレート112の把持部112Aを把持し、スライドプレート112を固定軸111に対して後側へスライドさせて、ピン113をスライド孔112Bの前端部内に配置させる(
図7の(1)の状態から(2)の状態へ遷移させる)。この状態で、固定軸111を保持スプリング114の付勢力に抗して左側へ若干移動させつつ、下側から見て、スライドプレート112をピン113の軸回りに反時計回りに90度回転させて、固定軸111の軸方向とスライドプレート112の長手方向とを一致させる(
図7(3)の状態を参照)。これにより、スライドプレート112による固定軸ユニット110の右側(一端側)への移動規制が解除されて、固定軸ユニット110が固定状態から固定解除状態に遷移する。そして、作業者によって、固定軸ユニット110を第1支持ヘッド部80及びメインプレート74から取外し、第1支持ヘッド部80をメインプレート74から取外すことで、第1支持ヘッド部80を第2支持ヘッド部90に交換することができる。なお、
図7(1)の状態では、ピン113にクランプ力が作用しているため、ピン113はスライド孔112B両端の凹部分に強く係合しており、スライドプレート112を容易に前後方向にスライドさせることは困難となっている。
【0064】
第2支持ヘッド部90への交換後には、固定解除状態の固定軸ユニット110を右側からスリーブ120内に差し込んで、スライドプレート112を回転且つスライドすることで、固定軸ユニット110を固定状態にすることができる。
【0065】
以上により、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)のメインプレート74への固定方法の変形例においても、ツールレスで第1支持ヘッド部80又は第2支持ヘッド部90の交換作業を行うことができる。したがって、本実施形態と同様に、切断工具10の使い勝手を一層向上することができる。
【0066】
また、固定軸ユニット110は、一端部に頭部111Aを有する固定軸111と、固定軸111の他端部に連結され且つ把持部100Aを有するスライドプレート112と、を含んで構成されている。そして、固定軸111が、第1支持ヘッド部80(第2支持ヘッド部90)の固定孔81F(固定孔)と、メインプレート74の挿通孔74Cと、に挿入されており、把持部100Aを用いてスライドプレート112を操作することで、スライドプレート112が、固定状態又は固定解除状態に切替わる。特に、本変形例では、スライドプレート112をスライド及び回転させることで、スライドプレート112を固定状態又は固定解除状態に切替えることができる。これにより、スライドプレート112に対する簡易な操作で、スライドプレート112を固定状態又は固定解除状態に切替えることができる。
【0067】
また、固定軸111の一端側部分には、保持スプリング114が外挿されており、保持スプリング114が固定軸111を一端側に付勢している。これにより、保持スプリング114によって、固定軸ユニット110の固定状態を良好に維持することができる。
【0068】
(ヘッド部70の変形例について)
次に、ヘッド部70の変形例について
図8及び
図9を用いて説明する。変形例のヘッド部70は、第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90の代わりに、支持ヘッド部130を有しており、支持ヘッド部130の固定形態(向き)を変更することで、ヘッド部70が第1状態又は第2状態に切替わるように構成されている。以下、支持ヘッド部130について説明する。なお、以下の説明では、支持ヘッド部130において、第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90と同様に構成されている部分には同一の符号を付している。
【0069】
図8(A)及び(B)では、ヘッド部70の第1状態を図示している。この図に示されるように、支持ヘッド部130は、第1支持ヘッド部80及び第2支持ヘッド部90と同様に、左右一対のヘッドプレート131を有しており、ヘッドプレート131は、左右方向を板厚方向とする略L字形板状に形成されている。具体的には、ヘッドプレート131は、上下方向に延在された本体部131Aと、本体部131Aの下端部から前側へ突出したアーム部131Bと、を含んで構成されている。
【0070】
ヘッドプレート131の下端部には、3箇所の固定孔131Cが左右方向に貫通形成されており、固定孔131Cは、前後方向に所定の間隔を空けて配置されている。ここで、ヘッド部70の変形例では、前後一対の固定軸ユニット110によって支持ヘッド部130が、メインプレート74に固定されている。すなわち、メインプレート74には、前後一対の挿通孔74Cが貫通形成されており、スリーブ120が挿通孔74C内にそれぞれ挿入されている。このため、メインプレート74では、係合凹部74Bが省略されており、支持ヘッド部130には、係合爪部81D(係合爪部91D)に対応するものは設けられていない。
【0071】
本体部131Aの後端部には、加工材W1を支持するための4箇所の支持凹部81Eが形成されており、本体部131Aの前端部には、上下方向中間部において、加工材W2を支持するための支持凹部91Eが形成されている。
【0072】
図9(A)及び(B)に示されるように、ヘッド部70を第1状態から第2状態へ切替えるときには、固定軸ユニット110による支持ヘッド部130への固定を解除し、支持ヘッド部130を前後方向に反転させて、固定軸ユニット110によってメインプレート74に固定する。これにより、ヘッド部70が第1状態から第2状態に切替わる。
【0073】
以上により、ヘッド部70の変形例では、支持ヘッド部130が、加工材W1を支持するための支持凹部81Eと、加工材W2を支持するための支持凹部91Eと、を有しており、支持ヘッド部130のメインプレート74の固定形態(向き)を変更することで、ヘッド部70が第1状態又は第2状態に切替わる。このため、1つの支持ヘッド部130によって、加工材W1及び加工材W2を支持して、両者に対する切断加工を施すことができる。これにより、切断工具10のコストダウンに寄与することができる。
【0074】
なお、ヘッド部70の変形例においても、固定軸ユニット110の代わりに蝶ボルト100によって支持ヘッド部130を固定してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 切断工具(作業機)
60-1 ブレード
60-2 ブレード
70 ヘッド部
71 ベースヘッド部(基部)
74A 固定部
74C 挿通孔
80 第1支持ヘッド部(支持ヘッド部)
81 第1ヘッドプレート(ヘッドプレート)
81D 係合爪部(係合部)
81E 支持凹部(第1支持部)
90 第2支持ヘッド部(支持ヘッド部)
91 第2ヘッドプレート(ヘッドプレート)
91D 係合爪部(係合部)
91E 支持凹部(第2支持部)
100 蝶ボルト(固定部材)
100A 把持部
110 固定軸ユニット(固定部材)
111 固定軸
112 スライドプレート(ストッパ)
112A 把持部
114 保持スプリング(付勢部材)
130 支持ヘッド部
131 ヘッドプレート
W1 加工材
W2 加工材