(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172087
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蒸気供給システム
(51)【国際特許分類】
F22B 35/00 20060101AFI20241205BHJP
F22B 3/04 20060101ALI20241205BHJP
F22D 1/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F22B35/00 Z
F22B3/04
F22D1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089607
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 真嘉
(72)【発明者】
【氏名】石崎 信行
(72)【発明者】
【氏名】東海 英顯
(72)【発明者】
【氏名】大坂 典子
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA08
3L021BA08
3L021CA08
3L021DA04
3L021EA04
3L021FA28
(57)【要約】
【課題】フラッシュタンクを用いて負圧蒸気を安定的に供給対象へ供給することが可能となる蒸気供給システムを提供する。
【解決手段】供給対象への負圧蒸気供給を行う蒸気供給システムであって、外部から供給される熱媒体との熱交換により水の加熱が可能である第1加熱手段、および、第1加熱手段の下流側に配置され、当該水の加熱が可能である第2加熱手段を有する水加熱装置と、前記水加熱装置によって加熱された前記水から負圧蒸気を生成するフラッシュタンクと、前記フラッシュタンクから前記供給対象へ前記負圧蒸気を流通させる蒸気ラインと、前記フラッシュタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、を備え、前記圧力検出手段の検出値に基づいて、前記水加熱装置における加熱の強さを制御する蒸気供給システムとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給対象への負圧蒸気供給を行う蒸気供給システムであって、
外部から供給される熱媒体との熱交換により水の加熱が可能である第1加熱手段、および、第1加熱手段の下流側に配置され、当該水の加熱が可能である第2加熱手段を有する水加熱装置と、
前記水加熱装置によって加熱された前記水から負圧蒸気を生成するフラッシュタンクと、
前記フラッシュタンクから前記供給対象へ前記負圧蒸気を流通させる蒸気ラインと、
前記フラッシュタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、を備え、
前記圧力検出手段の検出値に基づいて、前記水加熱装置における加熱の強さを制御することを特徴とする蒸気供給システム。
【請求項2】
前記熱媒体が流通するラインとして、第1加熱手段を通る基本ラインと、前記基本ラインにおいて第1加熱手段をバイパスするように配置されたバイパスラインと、を有し、
前記バイパスラインを通る前記熱媒体の流量を調節可能とする第1調節手段と、
第2加熱手段における加熱の強さを調節可能とする第2調節手段と、
前記蒸気ラインにおける前記負圧蒸気の流量を調節可能とする第3調節手段と、を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項3】
前記圧力検出手段の検出値が所定の範囲内に保たれるように、第1調節手段、第2調節手段、および第3調節手段の各調節手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項4】
前記基本ラインにおける前記バイパスラインの合流点よりも後段側の前記熱媒体の温度を検出する温度検出手段が設けられ、
前記温度検出手段の検出値が所定値以上、かつ、前記圧力検出手段の検出値が所定の範囲内に保たれるように、第1調節手段、第2調節手段、および第3調節手段の各調節手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の蒸気供給システム。
【請求項5】
第1圧力値を前記範囲の上限値とし、第2圧力値を前記範囲の間の所定値とし、第3圧力値を前記範囲の下限値として、
前記圧力検出手段の検出値が第1圧力値より低く第2圧力値以上である場合には、前記各調節手段のうちの第1調節手段を、前記圧力が高くなるように制御し、
前記圧力検出手段の検出値が第2圧力値より低く第3圧力値以上である場合には、前記各調節手段のうちの第1調節手段と第2調節手段を、前記圧力が高くなるように制御し、
前記圧力検出手段の検出値が第3圧力値より低い場合には、前記各調節手段の全てを、前記圧力が高くなるように制御することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
前記フラッシュタンク内の圧力降下速度が規定値以下となるように、前記蒸気ラインにおける前記負圧蒸気の流量を制限する流量制限手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項7】
前記規定値は、前記フラッシュタンク内からのミスト流出が防止される値に設定されていることを特徴とする請求項6に記載の蒸気供給システム。
【請求項8】
前記蒸気ラインを流通する前記負圧蒸気を加熱して、所定温度の過熱蒸気とする蒸気加熱装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の蒸気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給対象へ蒸気を供給する蒸気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気を使用する各種の装置等(供給対象)に対して蒸気を供給する蒸気供給システムが提案されている。例えば特許文献1には、フラッシュタンクを用いた蒸気供給システムの一例が開示されている。なお、負圧蒸気(大気圧よりも圧力の低い蒸気)を使用する供給対象に対しては、負圧蒸気を生成して供給する蒸気供給システムが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシュタンクを用いた蒸気供給システムによれば、フラッシュタンクに水を供給して負圧蒸気を生成し、これを供給対象へ供給することが可能である。但し、負圧蒸気を安定的に供給対象へ供給可能とするためには、フラッシュタンクの圧力が適切に保持される必要がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、フラッシュタンクを用いて負圧蒸気を安定的に供給対象へ供給することが可能となる蒸気供給システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蒸気供給システムは、供給対象への負圧蒸気供給を行う蒸気供給システムであって、外部から供給される熱媒体との熱交換により水の加熱が可能である第1加熱手段、および、第1加熱手段の下流側に配置され、当該水の加熱が可能である第2加熱手段を有する水加熱装置と、前記水加熱装置によって加熱された前記水から負圧蒸気を生成するフラッシュタンクと、前記フラッシュタンクから前記供給対象へ前記負圧蒸気を流通させる蒸気ラインと、前記フラッシュタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、を備え、前記圧力検出手段の検出値に基づいて、前記水加熱装置における加熱の強さを制御する構成とする。
【0007】
本構成によれば、フラッシュタンクを用いて負圧蒸気を安定的に供給対象へ供給することが可能となる。なおここでの「下流側」とは、水加熱装置によって加熱される水の経路(本実施形態の例では、循環ライン12)における下流側のことである。
【0008】
上記構成としてより具体的には、前記熱媒体が流通するラインとして、第1加熱手段を通る基本ラインと、前記基本ラインにおいて第1加熱手段をバイパスするように配置されたバイパスラインと、を有し、前記バイパスラインを通る前記熱媒体の流量を調節可能とする第1調節手段と、第2加熱手段における加熱の強さを調節可能とする第2調節手段と、前記蒸気ラインにおける前記負圧蒸気の流量を調節可能とする第3調節手段と、を設けた構成としても良い。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記圧力検出手段の検出値が所定の範囲内に保たれるように、第1調節手段、第2調節手段、および第3調節手段の各調節手段を制御する構成としても良い。また当該構成としてより具体的には、前記基本ラインにおける前記バイパスラインの合流点よりも後段側の前記熱媒体の温度を検出する温度検出手段が設けられ、前記温度検出手段の検出値が所定値以上、かつ、前記圧力検出手段の検出値が所定の範囲内に保たれるように、第1調節手段、第2調節手段、および第3調節手段の各調節手段を制御する構成としても良い。また当該構成としてより具体的には、第1圧力値を前記範囲の上限値とし、第2圧力値を前記範囲の間の所定値とし、第3圧力値を前記範囲の下限値として、前記圧力検出手段の検出値が第1圧力値より低く第2圧力値以上である場合には、前記各調節手段のうちの第1調節手段を、前記圧力が高くなるように制御し、前記圧力検出手段の検出値が第2圧力値より低く第3圧力値以上である場合には、前記各調節手段のうちの第1調節手段と第2調節手段を、前記圧力が高くなるように制御し、前記圧力検出手段の検出値が第3圧力値より低い場合には、前記各調節手段の全てを、前記圧力が高くなるように制御する構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記フラッシュタンク内の圧力降下速度が規定値以下となるように、前記蒸気ラインにおける前記負圧蒸気の流量を制限する流量制限手段を設けた構成としても良い。また当該構成において、前記規定値は、前記フラッシュタンク内からのミスト流出が防止される値に設定されている構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記蒸気ラインを流通する前記負圧蒸気を加熱して、所定温度の過熱蒸気とする蒸気加熱装置を備える構成としても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る蒸気供給システムによれば、フラッシュタンクを用いて負圧蒸気を安定的に供給対象へ供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る蒸気供給システムの概略的な構成図である。
【
図2】フラッシュタンクの圧力制御に関する制御系統の説明図である。
【
図3】フラッシュタンクの圧力制御に関する動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る蒸気供給システムについて、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る蒸気供給システム1の概略的な構成図である。本図に示すように蒸気供給システム1は、フラッシュタンク11、循環ライン12、循環ポンプ13、第1熱交換器14a、第2熱交換器14b、循環ライン用バルブ15、蒸気ライン16、蒸気ライン用バルブ17、蒸気加熱装置18、圧力センサ19、第1熱媒体ライン31、三方弁32、温度センサ33、第2熱媒体ライン41、および第2熱媒体ライン用バルブ42を備える。
【0016】
なお以下の説明では、第1熱交換器14aと第2熱交換器14bを合わせて「水加熱装置14」と称することがある。蒸気供給システム1は、供給対象Zへの負圧蒸気Vの供給を行うシステムとなっている。供給対象Zは、本実施形態では一例として、微過熱蒸気とした負圧蒸気Vの供給を要求するものとなっている。
【0017】
フラッシュタンク11は、水加熱装置14によって加熱された水Wから負圧蒸気V(飽和蒸気)を生成する装置である。循環ライン12は、フラッシュタンク11を含む水Wの循環経路を形成するラインであり、上流側端部がフラッシュタンク11の下部(水Wの出口)に連結し、下流側端部がフラッシュタンク11の上部(水Wの入口)に連結している。
【0018】
循環ライン12には循環ポンプ13が配置されている。循環ポンプ13の作用により、フラッシュタンク11に貯留する水W(飽和液)を循環ライン12に流通させ、再度フラッシュタンク11に供給することが可能となっている。なお、循環ライン12により形成される水Wの循環経路には、フラッシュタンク11からの負圧蒸気Vの排出に伴う水Wの減少を補うように、外部から水Wを適宜補給することが可能となっている。
【0019】
第1熱交換器14aは、循環ライン12と第1熱媒体ライン31が通る位置に配置されている。これにより第1熱交換器14aは、循環ライン12を流通する水Wと、第1熱媒体ライン31(より具体的には、後述する基本ライン31a)を流通する第1熱媒体H1との間での熱交換により、水Wを加熱する加熱手段として機能する。
【0020】
蒸気供給システム1は、第1熱媒体H1が流通する第1熱媒体ライン31として、第1熱交換器14aを通る基本ライン31aと、この基本ライン31aにおいて第1熱交換器14aをバイパスするように配置されたバイパスライン31bと、を有する。第1熱媒体H1は、外部から基本ライン31aの上流側端部に流入するようになっている。
【0021】
基本ライン31aにおけるバイパスライン31bの合流点、すなわち、基本ライン31aとバイパスライン31bの下流側端部との接続位置には、三方弁32が配置されている。三方弁32の状態を制御することで、第1熱交換器14aを通る第1熱媒体H1の量を調節することが可能である。基本ライン31aの上流側端部に流入した第1熱媒体H1は、第1熱交換器14aおよびバイパスライン31bの何れかを通った後、基本ライン31aの下流側へ流れることになる。
【0022】
なお本実施形態では、基本ライン31aの下流側端部には、第1熱媒体H1を利用する外部装置Xが配置されており、第1熱媒体ライン31から外部装置Xへ第1熱媒体H1が供給されるようにしている。外部装置Xは、例えば熱源として第1熱媒体H1を利用する装置であり、供給される第1熱媒体H1の温度が所定温度St以上であることを要求する装置となっている。
【0023】
また、基本ライン31aにおけるバイパスラインの合流点よりも後段側の所定位置には、その位置での第1熱媒体H1の温度を検出する温度センサ33が配置されている。温度センサ33によって検出される温度(検出温度Dt)は、外部装置Xに供給される第1熱媒体H1の温度と同等である。
【0024】
第2熱交換器14bは、循環ライン12と第2熱媒体ライン41が通る位置に配置されている。これにより第2熱交換器14bは、循環ライン12を流通する水Wと、第2熱媒体ライン41を流通する第2熱媒体H2との間での熱交換により、水Wを加熱する加熱手段として機能する。第2熱交換器14bは、第1熱交換器14aよりも下流側(循環ライン12での下流側)に配置されている。
【0025】
第2熱媒体H2は、外部から第2熱媒体ライン41の上流側端部に流入し、第2熱交換器14bを通った後、第2熱媒体ライン41の下流側端部から外部へ流出するようになっている。第2熱媒体ライン41における第2熱交換器14aより上流側の位置には、第2熱媒体ライン用バルブ42が配置されている。第2熱媒体ライン用バルブ42の状態を制御することで、第2熱交換器14bを通る第2熱媒体H2の量を調節することが可能である。
【0026】
なお本実施形態では、第1熱媒体H1として、第2熱媒体H2よりも利用コストの低い熱媒体が採用される。例えば、第1熱媒体H1として、外部の工場、その他の施設、或いは装置等において利用済みの排温水が採用され、第2熱媒体H2として、外部のボイラから供給される蒸気が採用される。なお第1熱媒体H1は、第2熱媒体H2としての蒸気を生成するボイラの排温水やドレン水であっても良い。
【0027】
蒸気供給システム1において、熱源として第1熱媒体H1と第2熱媒体H2のどちらを利用しても差し支えない状況では、第1熱媒体H1の方を優先的に利用することが、ボイラの動作負担を必要とせず利用コストを抑えることができる点で望ましい。そのため水加熱装置14は、出来るだけ第1熱媒体H1を利用して水Wを加熱し、これだけでは水Wを加熱するための熱源が不足する場合に、第2熱媒体H2を補助的に利用して水Wを加熱することが望ましい。なお第1熱媒体H1および第2熱媒体H2の具体的な種類などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定されない。
【0028】
循環ライン12における第2熱交換器14bより下流側の位置には、循環ライン用バルブ15が配置され、循環ポンプ13より下流側であって循環ライン用バルブ15より上流側の位置には、不図示の圧力センサが配置されている。循環ライン用バルブ15の状態は、この圧力センサの検出圧力が所定圧力になるように制御される。なお、この所定圧力は、第1熱交換器14aおよび第2熱交換器14b内での沸騰を防止する為に、第2熱交換器14bの出口における水Wの飽和圧力の最高値よりも十分高い圧力に設定するのが良い。また、当該圧力センサの設置位置は、最も圧力が低くなる位置(一般的には第2熱交換器14bの下流の位置)とするのが好ましい。
【0029】
フラッシュタンク11には、フラッシュタンク11から供給対象Zへ負圧蒸気Vを流通させる蒸気ライン16が接続されている。フラッシュタンク11において生成・分離された負圧蒸気Vは、蒸気ライン16を介して供給対象Zへ供給可能である。また蒸気ライン16の途中には、上流側から順に、蒸気ライン用バルブ17および蒸気加熱装置18が配置されている。蒸気ライン用バルブ17の状態を制御することにより、蒸気ライン16を流通する負圧蒸気Vの量を調節することが可能である。
【0030】
蒸気加熱装置18は、蒸気ライン16を流通する負圧蒸気Vを加熱して、所定温度の過熱蒸気とする装置である。なおここでの所定温度は、供給対象Zの仕様等に応じて適切に決められる温度である。本実施形態の例では、蒸気加熱装置18として電気式のスーパーヒータが採用されている。蒸気加熱装置18は、フラッシュタンク11側から送られる100℃未満の負圧蒸気Vを、所定温度の微過熱蒸気とするように構成されている。圧力センサ19は、フラッシュタンク11内の圧力を検出するように配置されている。
【0031】
上述した構成の蒸気供給システム1は、循環ライン用バルブ15を適度に開いて適量の水Wをフラッシュタンク11に供給し、当該水Wをフラッシュさせて負圧蒸気Vを生成する。この際、水加熱装置14を用いた加熱によって水Wの温度が高くなっているほど、フラッシュタンク11において負圧蒸気Vが生成され易く、ひいては、フラッシュタンク11の圧力が高くなる。更に蒸気供給システム1は、蒸気ライン用バルブ17を適度に開き、蒸気加熱装置18によって微過熱蒸気とした適量の負圧蒸気Vを供給対象Zへ供給する。
【0032】
図2は、フラッシュタンク11における主な制御系統を概略的に示している。本図に示すように、蒸気供給システム1には制御装置50が設けられており、制御装置50によってフラッシュタンク11の主な制御が実行される。
【0033】
制御装置50は、少なくとも、圧力センサ19の検出値(検出圧力Dp)および温度センサ33の検出値(検出温度Dt)の情報を継続的に取得することが可能となっている。更に制御装置50は、少なくとも、循環ライン用バルブ15、蒸気ライン用バルブ17、三方弁32、および第2熱媒体ライン用バルブ42の状態を制御することが可能となっている。
【0034】
ここで、フラッシュタンク11から蒸気ライン16への負圧蒸気V(フラッシュ蒸気)の供給開始時や供給対象Zの蒸気要求量が急増した時にはフラッシュタンク11の圧力が降下するが、このときの圧力降下速度Vpが大き過ぎると、フラッシュタンク11で保有している水W(飽和液)がフラッシュし、負圧蒸気Vの乾き度が低下する虞がある。そこで制御装置50は、このような問題を解消させるため、運転中は圧力降下速度Vpを常に監視し、圧力降下速度Vpが規定値Svp以下となるように、蒸気ライン用バルブ17を制御する。
【0035】
具体的に説明すると、制御装置50は、蒸気ライン用バルブ17を開く際に圧力センサ19の検出圧力Dpを継続的に監視し、検出圧力Dpの降下速度(単位時間あたりの検出圧力Dpの低下量)が規定値Svpを超えない程度の速度で、蒸気ライン用バルブ17を徐々に開くようにする。これにより、フラッシュタンク11内の圧力降下速度Vpが規定値Svp以下となるように、蒸気ライン16における負圧蒸気Vの流量を制限することが可能となる。
【0036】
なお規定値Svpは、フラッシュタンク11内から蒸気ライン16へのミスト流出が防止される値に設定されていることが望ましい。上述したように蒸気供給システム1には、フラッシュタンク11内の圧力降下速度Vpが規定値Svp以下となるように、蒸気ライン16における負圧蒸気Vの流量を制限する流量制限手段が設けられている。
【0037】
また、上述した負圧蒸気Vの供給開始時に限らず、フラッシュタンク11の圧力が低くなり過ぎると、負圧蒸気Vの乾き度が低下し易く、また、負圧蒸気Vを安定的に供給対象Zへ供給することが難しくなる虞がある。そのため負圧蒸気Vを安定的に供給対象Zへ供給可能とするためには、フラッシュタンク11の圧力が低くなり過ぎないように適切に保持される必要がある。
【0038】
そこで制御装置50は、検出温度Dtが所定温度St以上となるようにしながら、フラッシュタンク11の圧力を所定の適正範囲内とする制御を行う。この制御の動作(後述するステップS1~S53の一連の動作)について、
図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0039】
なお、
図3における同じ破線枠内の各動作は、同等の動作となっている。また、上記の適正範囲は、負圧蒸気Vを安定的に供給対象Zへ供給することが可能となる圧力範囲として予め設定されている。後述する圧力値Sp1~Sp3について、圧力値Sp1は当該適正範囲の上限値であり、圧力値Sp2は当該適正範囲の間の所定値であり、圧力値Sp3は当該適正範囲の下限値である。
【0040】
制御装置50は、温度センサ33により検出される現時点の検出温度Dtの情報を取得し、この検出温度Dtが所定温度St以下であるか否かを判別する(ステップS1)。その結果、検出温度Dtが所定温度St以下であれば(ステップS1のYes)、制御装置50は、バイパスライン31bを通る第1熱媒体H1が増加するように三方弁32を動かす制御を行う(ステップS11)。これにより、バイパスライン31bを通る第1熱媒体H1が増加する分、検出温度Dtを所定温度Stに近づけることが可能となる。
【0041】
ステップS11の動作の実行後、或いは、ステップS1の動作において検出温度Dtが所定温度St以下ではなかった場合(ステップS1のNo)には、次に制御装置50は、圧力センサ19により検出される現時点の検出圧力Dpの情報を取得し、この検出圧力Dpが圧力値Sp1以上であるか否かを判別する(ステップS2)。
【0042】
その結果、検出圧力Dpが圧力値Sp1以上である場合には(ステップS2のYes)、制御装置50は、バイパスライン31bを通る第1熱媒体H1が増加するように三方弁32を動かす制御(ステップS21)、第2熱媒体ライン用バルブ42を閉側へ動かす制御(ステップS22)、および、蒸気ライン用バルブ17を開側へ動かす制御(ステップS23)を行った上で、ステップS1の動作を繰り返す。
【0043】
このように、フラッシュタンク11内の圧力が高過ぎる場合(圧力値Sp1以上である場合)には、三方弁32、第2熱媒体ライン用バルブ42、および蒸気ライン用バルブ17の全てを動かして、当該圧力を下げる制御が行われる。
【0044】
一方、検出圧力Dpが圧力値Sp1以上ではない場合には(ステップS2のNo)、次に制御装置50は、検出圧力Dpが圧力値Sp2以上であるか否かを判別する(ステップS3)。
【0045】
その結果、検出圧力Dpが圧力値Sp2以上である場合には(ステップS3のYes)、制御装置50は、検出温度Dt(直近のステップS1の動作で取得した情報)が所定温度Stより高ければ、第1熱交換器14aを通る第1熱媒体H1が増加するように三方弁32を動かす制御(ステップS31)、第2熱媒体ライン用バルブ42を閉側へ動かす制御(ステップS32)、および、蒸気ライン用バルブ17を開側へ動かす制御(ステップS33)を行った上で、ステップS1の動作を繰り返す。
【0046】
ステップS31(後述するS41、S51も同様)の動作では、フラッシュタンク11内の圧力が圧力値Sp1より低い場合には、検出温度Dtが所定温度Stよりも高いことを条件に、第1熱媒体H1を出来るだけ利用して水Wを加熱する制御が行われる。第1熱交換器14aを通る第1熱媒体H1が増加する分、フラッシュタンク11内の圧力を高くすることが可能となる。なお検出温度Dtが所定温度St以下であれば、検出温度Dtが更に下がることのないように、バイパスライン31bを通る第1熱媒体H1が増加するように三方弁32を動かす制御が行われる。
【0047】
またステップS32の動作では、フラッシュタンク11内の圧力が圧力値Sp2以上であれば、第1熱媒体H1だけで水Wを適度に加熱できるとみなし、第2熱媒体H2の利用を抑える制御が行われる。またステップS33(後述するS43も同様)の動作では、フラッシュタンク11内の圧力が圧力値Sp3よりも高い状況であれば、蒸気ライン用バルブ17を開側へ動かして、負圧蒸気Vを供給対象Zへ供給する制御が行われる。このようにステップS31~S33の動作によれば、三方弁32、第2熱媒体ライン用バルブ42、および蒸気ライン用バルブ17のうちの三方弁32のみが、フラッシュタンク11内の圧力が高くなるように制御される。
【0048】
一方、検出圧力Dpが圧力値Sp2以上ではない場合には(ステップS3のNo)、次に制御装置50は、検出圧力Dpが圧力値Sp3以上であるか否かを判別する(ステップS4)。
【0049】
その結果、検出圧力Dpが圧力値Sp3以上である場合には(ステップS4のYes)、制御装置50は、検出温度Dt(直近のステップS1の動作で取得した情報)が所定温度Stより高ければ、第1熱交換器14aを通る第1熱媒体H1が増加するように三方弁32を動かす制御(ステップS41)、第2熱媒体ライン用バルブ42を開側へ動かす制御(ステップS42)、および、蒸気ライン用バルブ17を開側へ動かす制御(ステップS43)を行った上で、ステップS1の動作を繰り返す。
【0050】
ステップS42(後述するS52も同様)の動作では、フラッシュタンク11内の圧力が圧力値Sp2以上ではない場合には、水Wを適度に加熱するために第1熱媒体H1だけでは不十分であるとみなし、水Wの加熱に第2熱媒体H2をより積極的に利用する制御が行われる。第2熱媒体ライン用バルブ42を開側へ動かして、第2熱交換器14bを通る第2熱媒体H2が増加する分、フラッシュタンク11内の圧力を高くする作用が強くなる。
【0051】
なおステップS41およびS43の動作の趣旨は、それぞれ先述したステップS31およびS33の動作と同等である。このようにステップS41~S43の動作によれば、三方弁32、第2熱媒体ライン用バルブ42、および蒸気ライン用バルブ17のうちの三方弁32と第2熱媒体ライン用バルブ42のみが、フラッシュタンク11内の圧力が高くなるように制御される。
【0052】
一方、検出圧力Dpが圧力値Sp3以上ではない場合には(ステップS4のNo)、制御装置50は、検出温度Dt(直近のステップS1の動作で取得した情報)が所定温度Stより高ければ、第1熱交換器14aを通る第1熱媒体H1が増加するように三方弁32を動かす制御(ステップS51)、第2熱媒体ライン用バルブ42を開側へ動かす制御(ステップS52)、および、蒸気ライン用バルブ17を閉側へ動かす制御(ステップS53)を行った上で、ステップS1の動作を繰り返す。
【0053】
ステップS53の動作では、フラッシュタンク11内の圧力が圧力値Sp3以上ではない場合には、水Wを適度に加熱するために第1熱媒体H1と第2熱媒体H2の両方を利用しても不十分であるとみなし、蒸気ライン用バルブ17を閉じる方向の制御が行われる。これにより、フラッシュタンク11から負圧蒸気Vの出る量が減少する分、フラッシュタンク11内の圧力を高くすることが可能となる。
【0054】
なおステップS51およびS52の動作の趣旨は、それぞれ先述したステップS31およびS42の動作と同等である。このようにステップS51~S53の動作によれば、三方弁32、第2熱媒体ライン用バルブ42、および蒸気ライン用バルブ17の全てが、フラッシュタンク11内の圧力が高くなるように制御される。
【0055】
なお、上述したステップS11~S53の各動作における三方弁32、第2熱媒体ライン用バルブ42、或いは蒸気ライン用バルブ17を動かす制御は、検出温度Dt或いは検出圧力Dpの適切なフィードバック制御(例えばPID制御)が実現されるように、1回の動作ごとに適量を動かす制御(開度を調節する制御)となっている。
【0056】
以上に説明したとおり本実施形態の蒸気供給システム1は、供給対象への負圧蒸気供給を行う蒸気供給システムであって、外部から供給される第1熱媒体H1との熱交換により水Wの加熱が可能である第1熱交換器14a(本発明に係る第1加熱手段の一例)、および、第1熱交換器14aの下流側に配置され、当該水Wの加熱が可能である第2熱交換器14b(本発明に係る第2加熱手段の一例)を有する水加熱装置14を備える。
【0057】
また蒸気供給システム1は、水加熱装置14によって加熱された水Wから負圧蒸気を生成するフラッシュタンク11と、フラッシュタンク11から前記供給対象へ前記負圧蒸気を流通させる蒸気ライン16と、フラッシュタンク11内の圧力を検出する圧力センサ19(本発明に係る圧力検出手段の一例)と、を備える。更に蒸気供給システム1は、先述したステップS1~S7の動作から明らかであるとおり、圧力センサ19の検出値に基づいて、水加熱装置14における加熱の強さを制御する。
【0058】
そのため蒸気供給システム1によれば、圧力センサ19の検出値に基づいて、水加熱装置14における加熱の強さを適切に制御し、フラッシュタンク11を用いて生成した負圧蒸気Vを安定的に供給対象Zへ供給することが可能である。更に水加熱装置14は、第1熱交換器14aと第2熱交換器14bの複数の加熱手段を有するため、例えば加熱手段を一つだけ有する場合に比べて安定した水Wの加熱が可能であり、安定した温度の負圧蒸気Vを供給対象Zへ供給することが可能である。
【0059】
また蒸気供給システム1は、第1熱媒体H1が流通するラインとして、第1熱交換器14aを通る基本ライン31aと、基本ライン31aにおいて第1熱交換器14aをバイパスするように配置されたバイパスライン31bと、を有する。
【0060】
更に蒸気供給システム1は、基本ライン31aにおけるバイパスライン31bの合流点よりも後段側の第1熱媒体H1の温度を検出する温度センサ33(本発明に係る温度検出手段の一例)と、バイパスライン31bを通る第1熱媒体H1の流量を調節可能とする三方弁32(本発明に係る第1調節手段の一例)と、第2熱交換器14bにおける加熱の強さを調節可能とする第2熱媒体ライン用バルブ42(本発明に係る第2調節手段の一例)と、蒸気ライン16における負圧蒸気Vの流量を調節可能とする蒸気ライン用バルブ17(本発明に係る第3調節手段の一例)と、が設けられている。
【0061】
また蒸気供給システム1における制御装置50は、温度センサ33の検出値(検出温度Dt)が所定値(所定温度St)以上、かつ、圧力センサ19の検出値(検出圧力Dp)が所定の適正範囲(圧力値Sp3~Sp1)内に保たれるように、三方弁32、第2熱媒体ライン用バルブ42、および蒸気ライン用バルブ17の各調節手段を制御する一連の動作を行う(
図3を参照)。
【0062】
より具体的に説明すると、検出圧力Dpが圧力値Sp1より低く圧力値Sp2以上である場合には、各調節手段のうちの三方弁32を、フラッシュタンク11内の圧力が高くなるように制御し(ステップS31~S33を参照)、検出圧力Dpが圧力値Sp2より低く圧力値Sp3以上である場合には、各調節手段のうちの三方弁32と第2熱媒体ライン用バルブ42を、フラッシュタンク11内の圧力が高くなるように制御し(ステップS41~S43を参照)、検出圧力Dpが圧力値Sp3より低い場合には、各調節手段の全てを、フラッシュタンク11内の圧力が高くなるように制御する(ステップS51~S53を参照)。
【0063】
そのため蒸気供給システム1によれば、外部装置Xの動作等に悪影響を及ぼさない範囲で(検出温度Dtが所定温度Stよりも低くならない範囲で)、できるだけ適切な手順によって、フラッシュタンク11の圧力を適正値に保つことが可能となっている。
【0064】
すなわち制御装置50は、蒸気ライン用バルブ17を制御する場合に比べて、供給対象Zへの負圧蒸気Vの供給に与える影響を抑えながらフラッシュタンク11の圧力を上げることができるように、まずは水加熱装置14における加熱の強さを制御することにより、フラッシュタンク11の圧力を上げるようにする。更に水加熱装置14における加熱の強さを制御するにあたり、第2熱媒体H2よりも第1熱媒体H1の方が利用コストが低いことを考慮して、第2熱媒体ライン用バルブ42よりも三方弁32の方を優先的に制御するようにしている。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、供給対象へ蒸気を供給する蒸気供給システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 蒸気供給システム
11 フラッシュタンク
12 循環ライン
13 循環ポンプ
14 水加熱装置
14a 第1熱交換器
14b 第2熱交換器
15 循環ライン用バルブ
16 蒸気ライン
17 蒸気ライン用バルブ
18 蒸気加熱装置
19 圧力センサ
31 第1熱媒体ライン
31a 基本ライン
31b バイパスライン
32 三方弁
33 温度センサ
41 第2熱媒体ライン
42 第2熱媒体ライン用バルブ
H1 第1熱媒体
H2 第2熱媒体
V 負圧蒸気
W 水
X 外部装置
Z 供給対象