(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172092
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20241205BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20241205BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 480
G06F3/041
G06F3/0354 453
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089613
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
(72)【発明者】
【氏名】三浦 農
(72)【発明者】
【氏名】宮里 宏治
(72)【発明者】
【氏名】土谷 真一
(72)【発明者】
【氏名】繁成 拓渡
(72)【発明者】
【氏名】柴田 淳一
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AB12
5B087BC12
5E555AA08
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC01
5E555CA15
5E555CB16
5E555CB55
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】せん断力によって情報を入力する際の入力装置の操作性を向上させる。
【解決手段】入力面21は、面内方向のせん断力を受ける。せん断力センサー10は、入力面21が受けるせん断力を検出して、せん断力のベクトルに応じた信号を出力する。バイブレータ30は、入力面21に振動を生じさせる。コントローラ40は、せん断力センサー10の信号を受信し、第1タイムにベクトルから入力情報を得る。コントローラ40は、第1タイムの近傍の第2タイムに、ベクトルの大きさと向きのうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御し、入力情報を装置外の機器に与える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内方向のせん断力を受ける入力面と、
前記入力面が受けるせん断力を検出して、せん断力のベクトルに応じた信号を出力するせん断力センサーと、
前記入力面に振動を生じさせるバイブレータと、
前記せん断力センサーの前記信号を受信し、第1タイムに前記ベクトルから入力情報を得るコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1タイムの近傍の第2タイムに、前記ベクトルの大きさと向きのうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、前記入力面に生じさせるように前記バイブレータを制御し、
前記入力情報を装置外の機器に与える、入力装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ベクトルの大きさに応じた第1情報と前記ベクトルの方向に応じた第2情報を前記入力情報として得て、前記第1情報及び前記第2情報を前記機器に与える、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記入力面において定義された複数の入力方向について、前記ベクトルの前記複数の入力方向のそれぞれにおける成分の大きさに応じて前記第1タイムに前記入力情報を前記複数の入力方向のそれぞれについて得て、前記第2タイムに、前記複数の入力方向のうちの少なくとも一つについて前記成分の大きさ及び前記成分の方向のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、前記入力面に生じさせるように前記バイブレータを制御する、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記入力面において定義された入力方向が3つ以上であり、前記第2タイムに、3つ以上の入力方向について前記成分の大きさ及び前記成分の方向のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、前記入力面に生じさせるように前記バイブレータを制御する、
請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記入力面にせん断力を加える物体が前記入力面に接触または近傍に位置したことの検知を行い、前記コントローラに前記検知を伝達するタッチセンサーをさらに備え、
前記コントローラは、前記タッチセンサーにおける前記検知に応じて前記複数の入力方向の入力を切り換える、
請求項3に記載の入力装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第2タイムに断続してまたは連続して前記入力面に振動を生じさせ、前記第2タイムの期間のうち開始時点及び終了時点を除く期間中に生じさせる振動の特性とは異なる特性の振動を、前記第2タイムの前記開始時点及び前記終了時点の少なくとも一方で生じさせるように前記バイブレータを制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第2タイムに断続してまたは連続して前記入力面に振動を生じさせ、生じる振動の特性を期間中にランダムまたは所定のルールに従って変更する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項8】
前記入力面にせん断力を加える物体が前記入力面に接触または近傍に位置したことの検知を行い、前記コントローラに前記検知を伝達するタッチセンサーをさらに備え、
前記コントローラは、前記タッチセンサーにおける前記検知に応じて前記第1タイムを開始及び/または終了する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第2タイムに、前記ベクトルの向きの第1特定範囲では振動を前記入力面に生じさせ、前記ベクトルの向きの第2特定範囲では振動を前記入力面に生じさせないように前記バイブレータを制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第2タイムに、前記ベクトルの向きの値のみに応じて、振動を前記入力面に生じさせるように前記バイブレータを制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
入力面に加えるせん断力により入力を行う入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1(特許第7035102号公報)に記載されているように、タッチパネル表面などの入力面に加えられるせん断力を、情報入力装置に用いることが行われている。例えば指で入力面にせん断力を加える場合、タッチパネルのように指をスライドさせる必要が無く、指を入力面上の1点に固定した状態で入力できる。そのため、せん断力で情報を入力する入力装置は、手の位置を移動し難い状況での入力に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、入力面に指を当てて、指から入力面にせん断力を加えても、せん断力の大きさとせん断力の向きを認識するのは難しく、適切に入力できたかどうかが指で判断できない。例えば、タッチパネルを用いて視覚で入力状況を確認できれば、せん断力を認識できなくても、入力を適切に行うことができる。このように従来のせん断力を用いる入力装置には、指を入力面上の1点に固定した状態で入力するため、入力面から受ける触感と入力の認識とが結びつき難く、操作性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、せん断力によって情報を入力する入力装置の操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る入力装置は、せん断力センサーと、入力面と、バイブレータと、コントローラとを備える。入力面は、面内方向のせん断力を受ける。せん断力センサーは、入力面が受けるせん断力を検出して、せん断力のベクトルに応じた信号を出力する。バイブレータは、入力面に振動を生じさせる。コントローラは、せん断力センサーの信号を受信し、第1タイムにベクトルから入力情報を得る。コントローラは、第1タイムの近傍の第2タイムに、ベクトルの大きさと向きのうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面に生じさせるようにバイブレータを制御し、入力情報を装置外の機器に与える。
【0007】
このように構成された入力装置は、入力面にせん断力を加えて入力を行う者に対して、入力面に生じる振動によって情報の入力に関する認知を行わせることで、操作し易くなっている。その結果、入力装置は、せん断力によって情報を入力する際の操作性が向上する。
上述の入力装置は、コントローラが、ベクトルの大きさに応じた第1情報とベクトルの向きに応じた第2情報を入力情報として得て、第1情報及び第2情報を装置外の機器に与えるように構成できる。このように構成された入力装置は、ベクトルの大きさ(第1情報)及び向き(第2情報)のうちの少なくとも一方に応じて、せん断力の加えられる入力面に振動を生じるように、コントローラがバイブレータを制御するものになる。その結果、入力装置の操作者は、第1情報及び第2情報のうちの少なくとも一方の入力を、入力面に生じる振動によって認知することができ、操作し易くなる。
上述の入力装置は、コントローラが、入力面において定義された複数の入力方向において、ベクトルの複数の入力方向のそれぞれにおける成分の大きさに応じて第1タイムに入力情報を複数の入力方向のそれぞれについて得て、第2タイムに、複数の入力方向のうちの少なくとも一つについて成分の大きさ及び成分の方向のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面に生じさせるようにバイブレータを制御するように構成することができる。このように構成された入力装置のコントローラは、第2タイムに、入力方向のうちの少なくとも一つの成分の大きさ及び成分の入力方向のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面に生じさせるようにバイブレータを制御するものとなる。その結果、入力装置の操作者は、振動を生じさせた入力方向の成分の大きさ及び成分の入力方向のうちの少なくとも一方の入力を、入力面に生じる振動によって認知することができ、操作し易くなる。
上述の入力装置のコントローラは、入力面において定義された入力方向が3つ以上であり、第2タイムに、3つ以上の入力方向について成分の大きさ及び成分の方向のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面に生じさせるようにバイブレータを制御するように構成することができる。このように構成された入力装置は、1つのせん断力センサーにより3種類以上の入力が容易に行えるようになり、狭い場所で多くの入力を受け付けることができるようになる。
上述の入力装置は、入力面にせん断力を加える物体が入力面に接触または近傍に位置したことの検知を行い、コントローラに検知を伝達するタッチセンサーをさらに備え、コントローラが、タッチセンサーにおける検知に応じて複数の入力方向の入力を切り換えるように構成できる。このように構成された入力装置は、入力面の面内方向における複数の入力方向の入力を確実に切り換えて確実に区別しながら、せん断力センサーにより入力することができる。
上述の入力装置のコントローラが、第2タイムに断続してまたは連続して入力面に振動を生じさせ、第2タイムの期間のうち開始時点及び終了時点を除く期間中に生じさせる振動の特性とは異なる特性の振動を、第2タイムの開始時点及び終了時点の少なくとも一方で生じさせるようにバイブレータを制御するように構成することができる。このように構成された入力装置の操作者は、第2タイムの開始時点または終了時点に入力面に生じる振動により、入力が受け付けられた瞬間及び入力が終了した瞬間の少なくとも一方を、より容易に認知できる。その結果、操作者は、入力装置の入力を、止めたり、再開したりし易くなる。
【0008】
上述の入力装置のコントローラは、第2タイムに断続してまたは連続して入力面に振動を生じさせ、生じる振動の特性を期間中にランダムまたは所定のルールに従って変更するように構成することができる。このように構成された入力装置は、機械的で単調な振動を避けることができるように、第2タイムに発生させる振動の特性をランダムにまたは所定のルールに従って変え、入力時に操作者が入力面の振動から感じる不快感を軽減することができる。
上述の入力装置は、入力面にせん断力を加える物体が入力面に接触または近傍に位置したことの検知を行い、コントローラに検知を伝達するタッチセンサーをさらに備え、コントローラは、タッチセンサーにおける検知に応じて第1タイムを開始及び/または終了する、ように構成することができる。
上述の入力装置のコントローラは、第2タイムに、ベクトルの向きの第1特定範囲では振動を入力面に生じさせ、ベクトルの向きの第2特定範囲では振動を入力面に生じさせないようにバイブレータを制御するように構成できる。このように構成された入力装置は、第2特定方向では振動が生じないので、ベクトルの向きの第1特定範囲の入力を振動で区別して確かめ易くなる。
上述の入力装置のコントローラは、第2タイムに、ベクトルの向きの値のみに応じて、振動を入力面に生じさせるようにバイブレータを制御するように構成できる。このように構成された入力装置は、ベクトルの向きの入力を区別し易くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の入力装置は、せん断力によって情報を入力する際の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る入力装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1の入力装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】入力面に加えられるせん断力とベクトルとの関係を説明するための図である。
【
図4】地図上のカーソルの移動を説明させるための図である。
【
図5】ベクトルの大きさと向きと振動パターンNo.1の振動の関係を示すグラフである。
【
図6】振動パターンNo.2の振動を説明するためのグラフである。
【
図7】振動パターンNo.3の振動を説明するためのグラフである。
【
図8】振動パターンNo.4の振動を説明するためのグラフである。
【
図9】振動パターンNo.5の振動を説明するためのグラフである。
【
図10】振動パターンNo.6の振動を説明するためのグラフである。
【
図11】ベクトルの大きさと向きと振動パターンNo.1の振動と振動パターンNo.7の振動の関係を示すグラフである。
【
図12】ハンドルに適用された入力装置の外観を示す部分拡大正面図である。
【
図14】入力面に加えられるせん断力と入力方向のベクトルの成分との関係を説明するための図である。
【
図15】ベクトルの成分の大きさと音量と振動パターンNo.11の振動の関係を示すグラフである。
【
図16】振動パターンNo.12の振動を説明するためのグラフである。
【
図17】振動パターンNo.13の振動を説明するためのグラフである。
【
図18】振動パターンNo.14の振動を説明するためのグラフである。
【
図19】振動パターンNo.15の振動を説明するためのグラフである。
【
図20】振動パターンNo.16の振動を説明するためのグラフである。
【
図21】2つのベクトルの成分の大きさと音量とトレブルと振動パターンNo.11の振動と振動パターンNo.17の振動の関係を示すグラフである。
【
図22】第3実施形態の入力装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図23】第3実施形態の入力装置の構成の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(1)入力装置の構成
図1には、第1実施形態に係る入力装置1の外観が示されている。
図1の入力装置1の主な構成要素が、
図2に示されている。
入力装置1は、せん断力センサー10と、入力面21を有する操作パネル20と、バイブレータ30と、コントローラ40とを備えている。入力装置1は、さらに、せん断力センサー10と操作パネル20とバイブレータ30とコントローラ40とを収容する筐体2を備えている。
入力面21は、面内方向のせん断力を受ける面である。入力面21には、例えば指100でせん断力が与えられる。操作パネル20は、直接的にまたは間接的にせん断力センサー10に接続されている。そのため、入力面21が受けたせん断力と同じせん断力が操作パネル20を介してせん断力センサー10に伝達される。せん断力センサー10は、筐体2に固定されているので、入力面21が受けるせん断力がせん断力センサー10に加わり、入力面21が受けるせん断力を検出することができる。操作パネル20の入力面21は、筐体2に固定されておらず面内方向に移動可能な状態なので、入力面21の面内方向のせん断力をせん断力センサー10に伝えることができる。操作パネル20は、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、金属、ガラスで構成される。
【0012】
バイブレータ30は、入力面21に振動を生じさせるデバイスである。バイブレータ30は、直接的にまたは間接的に操作パネル20に接続されている。
図2に示されている入力装置1においては、バイブレータ30は、筐体2の内部に収容され、筐体2の内面に直接接続されている。そのため、バイブレータ30で発生した振動は、筐体2に伝わる。筐体2にせん断力センサー10が直接的にまたは間接的に接続されている。
図2に示されているせん断力センサー10は、筐体2の内面に直接接続されている。そのため、筐体2を介して、バイブレータ30の振動がせん断力センサー10に伝えられる。せん断力センサー10に、直接的にまたは間接的に操作パネル20が接続されている。
図2に示されているせん断力センサー10は、操作パネル20に直接接続されている。そのため、筐体2を介して、バイブレータ30の振動がせん断力センサー10に伝えられる。つまり、筐体2及びせん断力センサー10を介して、バイブレータ30の振動が操作パネル20の入力面21に伝えられる。このように、
図2に示されている入力装置1では、最終的に、バイブレータ30が、操作パネル20の入力面21に振動を生じさせることができる。
【0013】
コントローラ40は、せん断力センサー10の信号を受信し、第1タイムに、入力面21に加えられたせん断力を示すベクトルから入力情報を得る。この第1実施形態では、入力情報を得るトリガーもせん断力センサー10から得る。例えば、後述するように、せん断力センサー10にしきい値TH以上のせん断力が加えられる事象をトリガーとする。しかし、トリガーの設定は、しきい値TH以上のせん断力が加えられる事象に限られるものではない。例えば、しきい値TH以上のせん断力が所定時間以上加えられる事象をトリガーとしてもよい。しきい値TH以上のせん断力が所定時間以上加えられる状態は、例えば、ボタンの長押しに類似する状態と考えられる。
コントローラ40は、第1タイムの近傍の第2タイムに、ベクトルの大きさと向きのうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御する。第1タイムは、入力情報を得る時点または期間である。例えば、第1タイムが入力情報を得る時点であるとすると、入力面21に振動が生じるにはタイムラグが生じる場合が多い。そのため、ここでは、第1タイムに振動を入力面21に生じさせるとは表現せずに、第1タイムの近傍の第2タイムに振動を生じさせると表現している。従って、第1タイムと第2タイムが一致するものであってもよい。入力面21を使って入力している操作者に情報取得を伝えるには、第1タイムと第2タイムの相違について、例えば、入力情報の入力完了と振動の発生がほぼ同時に行われると操作者が感じる程度の相違であるのが好ましい。
コントローラ40は、入力情報を装置外の機器に与える。装置外の機器は、例えば、コンピュータ、自動車のオーディオシステム、カーナビゲーションシステム、機械の制御装置がある。コントローラ40は、例えばマイクロコンピュータチップとメモリーチップとを用いて構成することができる。
【0014】
(2)せん断力と振動
図3に示されているように、以降の説明では、入力面21に加えられるせん断力を示すベクトルVfの大きさを|F|と表し、ベクトルVfの向きをθと表す。ベクトルVfの向きθは、基準方向Dr0と一致するときが0度である。基準方向Dr0は入力装置1の態様に応じて任意の向きに適宜設定することができる。ここでは、パーソナルコンピュータの表示画面に表示されたカーソルを移動させる場合、またはカーナビゲーションの地図の表示範囲をスクロールさせる場合を例に挙げて説明する。
図4には、パーソナルコンピュータまたはカーナビゲーションシステムの表示画面に表示される地図が示されている。
図4の地図上のカーソルC1の移動速度と移動方向が、入力面21に加えられるせん断力の大きさ|F|と向きθによって決まる。カーナビゲーションの地図の表示範囲をスクロールさせる場合には、スクロールの距離と方向が、入力面21に加えられるせん断力の大きさ|F|と向きθによって決まる。
【0015】
(2-1)振動パターンNo.1
図5には、ベクトルVfの大きさ|F|を示すグラフと、向きθを示すグラフと、ベクトルVfの大きさ|F|に応じた振動パターンを示すグラフが示されている。大きさ|F|及び向きθは、グラフの上に行くほど大きくなるように表記されている。入力面21に加わるせん断力の大きさ|F|がしきい値TH以上になると、コントローラ40は、大きさ|F|と向きθを入力情報として得る。例えば、コントローラ40は、入力情報をアナログデータとして取得して、アナログデータとして入力情報を出力する。コントローラ40からアナログデータを受け取ったパーソナルコンピュータは、例えば、一定のインターバルで大きさ|F|と向きθをデジタルデータとして取り込み、カーソルC1の移動方向と移動速度を決定する。あるいは、例えば、コントローラ40は、入力情報を一定のインターバルでデジタルデータとして取得して、デジタルデータとして入力情報を出力する。コントローラ40からデジタルデータを受け取ったパーソナルコンピュータは、大きさ|F|と向きθを示すデジタルデータに応じて、カーソルC1の移動方向と移動速度を決定する。せん断力の大きさ|F|がしきい値TH未満になると、コントローラ40は、情報の取得を停止する。情報の取得の停止に応じて、コントローラ40は、バイブレータ30の振動の発生を停止させる。ベクトルVfの大きさ|F|がしきい値TH以上になっていてコントローラ40が入力情報を得ている期間が第1タイムであり、コントローラ40がバイブレータ30に振動を発生させている期間が第2タイムである。第1タイムは、離散的に入力情報を繰り返し得るデジタル入力期間または連続して入力情報を得るアナログ入力期間のいずれであってもよい。
【0016】
装置外の機器であるパーソナルコンピュータは、例えば、向きθが0度であれば、東方向にカーソルC1を移動させ、向きθが45度であれば、北東方向にカーソルC1を移動させる。例えば、ベクトルVfの大きさ|F|が、しきい値THのときの移動速度を「1」とすると、大きさ|F|がしきい値THの2倍になれば、移動速度を「2」とする。ただし、ベクトルVfの大きさ|F|と移動速度の関係は任意に設定することができる。
図5に示されている振動パターンNo.1で振動を発生させるコントローラ40は、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVfの大きさ|F|に応じて変化させる。パルス状の振動とは、1つのパルス波振動若しくは10~400Hzの波の数周期分の振動など、1~100ミリ秒程度の短い期間の振動である。パルス状の振動が入力面21に発生すると、入力面21に例えば指を当てている操作者は、クリック感を感じることができる。例えば、しきい値THと同等の大きさ|Fth|のせん断力が加えられたときにパルス状の振動が単位時間あたりに発生する回数を「n1」とすると、しきい値THの2倍の大きさ|Fth|×2のせん断力が加えられたときにパルス状の振動が単位時間あたりに発生する回数を「n1」×2とする。ただし、ベクトルVfの大きさ|F|とパルス状の振動の回数の関係は任意に設定することができる。
操作者は、パルス状の振動の回数が少ないと、弱いせん断力によってカーソルC1をゆっくり動かしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の回数が多いと、強いせん断力によってカーソルC1を速く動かしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
【0017】
(2-2)振動パターンNo.2
図6に示されている振動パターンNo.2で振動を発生させるコントローラ40は、振動の振幅を、ベクトルVfの大きさ|F|に応じて変化させる。振動パターンNo.2では、パルス状の振動ではなく、入力面21に一定の周波数で連続して繰り返される振動が生じる。一定の周波数で連続して繰り返される振動は、例えば、正弦波振動である。正弦波振動が入力面21に発生すると、入力面21に例えば指を当てている操作者は、常に振動を感じることができるように設定することが好ましい。例えば、しきい値THと同等の大きさ|Fth|のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「0」とし、しきい値THの2倍の大きさ|Fth|×2のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「am1」とし、しきい値THの1.5倍の大きさ|Fth|×1.5のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「am1」×0.5とする。ただし、ベクトルVfの大きさ|F|と正弦波振動の振幅の関係は任意に設定することができる。例えば、しきい値THと同等の大きさ|Fth|のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「am1」に設定し、しきい値THの1.5倍の大きさ|Fth|×1.5のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「am1」+「am1」×0.5となるように設定してもよい。
操作者は、正弦波振動の振幅が小さいと、弱いせん断力によってカーソルC1をゆっくり動かしていることを触感によって認知でき、正弦波振動の振幅が大きいと、強いせん断力によってカーソルC1を速く動かしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
なお、ここでは正弦波振動の振幅をせん断力に応じて変える場合について説明したが、正弦波振動の周波数をせん断力に応じて変えてもよい。
【0018】
(2-3)振動パターンNo.3
図7に示されている振動パターンNo.3で振動を発生させるコントローラ40は、振動の振幅を、ベクトルVfの大きさ|F|に応じて変化させる。振動パターンNo.3が振動パターンNo.2と異なる点は、振動の波形である。振動パターンNo.2では、正弦波振動の振幅を変化させたが、振動パターンNo.3ではパルス状の振動の振幅を変化させている。振動パターンNo.3ではパルス状の振動の発生頻度は、しきい値TH以上であればベクトルVfの大きさ|F|に関わらず一定に設定されている。振動パターンNo.3の振幅の変更は、振動パターンNo.2と同様に行われる。ただし、ベクトルVfの大きさ|F|とパルス状の振動の振幅の関係は任意に設定することができる。
操作者は、パルス状の振動の振幅が小さいと、弱いせん断力によってカーソルC1をゆっくり動かしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の振幅が大きいと、強いせん断力によってカーソルC1を速く動かしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
【0019】
(2-4)振動パターンNo.4
図8に示されている振動パターンNo.4で振動を発生させるコントローラ40は、振動の振幅を、ベクトルVfの向きθに応じて変化させる。振動パターンNo.4では、入力面21に一定の周波数で連続して繰り返される振動、例えば、正弦波振動が生じる。正弦波振動が入力面21に発生すると、入力面21に例えば指を当てている操作者は、常に振動を感じることができる。例えば、向きθが「0」のときの正弦波振動の振幅を「0」とし、向きθが45度のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「am2」とし、向きθ倍が90度のせん断力が加えられたときの正弦波振動の振幅を「am2」×2とする。ただし、ベクトルVfの向きθと正弦波振動の振幅の関係は任意に設定することができる。
操作者は、正弦波振動の振幅が小さいと、0度に近い向きのせん断力によってカーソルC1を動かしていることを触感によって認知でき、正弦波振動の振幅が大きくなるに従って、角度の大きな向きθのせん断力によってカーソルC1を動かしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
【0020】
(2-5)振動パターンNo.5
図9に示されている振動パターンNo.5で振動を発生させるコントローラ40は、振動の振幅を、ベクトルVfの向きθに応じて変化させる。振動パターンNo.5が振動パターンNo.4と異なる点は、振動の波形である。振動パターンNo.4では、正弦波振動の振幅を変化させたが、振動パターンNo.5ではパルス状の振動の振幅を変化させている。振動パターンNo.5ではパルス状の振動の発生頻度は、せん断力のベクトルの大きさ|F|がしきい値TH以上であればベクトルVfの向きθに関わらず一定に設定されている。振動パターンNo.5の振幅の変更は、振動パターンNo.4と同様に行われる。ただし、ベクトルVfの向きθとパルス状の振動の振幅の関係は任意に設定することができる。
操作者は、パルス状の振動の振幅が小さいと、0度に近い向きのせん断力によってカーソルC1を動かしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の振幅が大きくなるに従って、角度の大きな向きθのせん断力によってカーソルC1を動かしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
【0021】
(2-6)振動パターンNo.6
図10に示されている振動パターンNo.6で振動を発生させるコントローラ40は、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVfの大きさ|F|に応じて変化させ、振動の振幅を、ベクトルVfの向きθに応じて変化させる。振動パターンNo.6では、パルス状の振動の発生頻度を例えば振動パターンNo.1のように変化させ、パルス状の振動の振幅を例えば振動パターンNo.5のように変化させる。
操作者は、パルス状の振動の回数が少ないと、弱いせん断力によってカーソルC1をゆっくり動かしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の回数が多いと、強いせん断力によってカーソルC1を速く動かしていることを触感によって認知できるまた、操作者は、パルス状の振動の振幅が小さいと、0度に近い向きのせん断力によってカーソルC1を動かしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の振幅が大きくなるに従って、角度の大きな向きθのせん断力によってカーソルC1を動かしていることを触感によって認知できる。そのため、入力装置1の操作性が良くなる。
【0022】
(2-7)振動パターンNo.1とNo.7
図11に示されている振動パターンNo.1と振動パターンNo.7の振動を同時に発生させるコントローラ40は、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVfの大きさ|F|に応じて変化させ且つ、ベクトルVfの向きθが特定の範囲(θaとθbの間)になった時の第1タイムに情報を入力してその近傍の第2タイムに振動を発生させる。振動パターンNo.7の振動をバイブレータ30が発生させるのは、向きθが特定の範囲(θaとθbの間)に入っているときの近傍である。ここでは、向きθが特定の範囲(θaとθbの間)に入っているときに、例えばカーソルC1が上方向に移動すると設定している。振動パターンNo.1は、既に説明したのでここでは説明を省略する。振動パターンNo.7の振動は、振動パターンNo.1の振動とは異なる周波数を持つ正弦波振動である。例えば、振動パターンNo.1の振動が50Hzで、振動パターンNo.7の振動が400Hzとする。ここでは周波数を変更する場合について説明したが、操作者が区別できるように周波数以外の振動の特性を変更してもよい。振動パターンNo.7の振動を感じることで、操作者は例えば地図の上方向(北向き)に操作していることを認識することができる。特定の範囲(θaとθbの間)に入れば上方にカーソルC1が移動するので、操作者は、カーソルC1を上方に直線的に動かしやすくなる。また、向きθの範囲を設定するのは、上方向だけでなくてもよく、例えば、複数方向を特定の範囲(θaとθbの間、θbとθcの間、θdとθeの間、・・・)として設定して、それぞれの範囲で異なる振動を発生させてもよい。そうすることで、操作者が各方向を選択してカーソルを直線的に動かしやすくなる。
【0023】
<第2実施形態>
(3)全体構成
図12には、第2実施形態に係る入力装置1の外観が示されている。
図12の入力装置1の主な構成要素が、
図13に示されている。
入力装置1は、せん断力センサー10と、入力面21を有する操作パネル20と、バイブレータ30と、コントローラ40とを備えている。入力装置1は、さらに、せん断力センサー10と操作パネル20とが取り付けられる支持部材4及び、バイブレータ30とコントローラ40とが取り付けられる筐体2を備えている。支持部材4は、せん断力センサー10を支持する硬質の部材であって、例えば樹脂または金属製の成形品である。操作パネル20は、意匠が印刷されている意匠印刷22を有している。意匠印刷22は、LED(Light Emitting Diode)50から照射される光が部分的に透過する意匠の印刷である。
図13に示されている入力装置1は、LED50を筐体2の中に備えている。LED50を設けることで、暗い環境でも意匠が認識できるようになっている。
図12に示されている意匠印刷22には、光が透過するスピーカーの意匠が含まれている。なお、ここでは説明を簡単にするために、意匠印刷22について、スピーカー以外の意匠が省かれている。バイブレータ30の振動を妨げないように、弾性体3を介して支持部材4に筐体2が取り付けられている。弾性体3は、例えばエラストマー、バネである。エラストマーには、例えばゴムがある。
図12の入力装置1は、ハンドル200に適用されている。操作パネル20は、例えば、樹脂製の板で構成される。操作パネル20の露出している面が入力面21である。運転手は、手でハンドルを握りながら、入力面21に例えば指100でせん断力を与えることで、入力装置1の入力を行える。
【0024】
図13の操作パネル20は、せん断力センサー10に直接接続されている。
図13のせん断力センサー10は、環状の平面形状を有している。
図13の入力装置1を平面視した場合、せん断力センサー10に囲まれたせん断力センサー10の中空部分にバイブレータ30とコントローラ40とLED50が配置されている。入力面21には、例えば指でせん断力が与えられる。入力面21が受けたせん断力と同じせん断力が操作パネル20を介してせん断力センサー10に伝達される。せん断力センサー10は、支持部材4と弾性体3を介して筐体2に固定されているので、入力面21と支持部材4の間に生じるせん断力をせん断力センサー10で検出することができる。
図13に示されているバイブレータ30は、操作パネル20に直接接続されている。従って、バイブレータ30で発生させた振動が、操作パネル20の入力面21に伝わる。操作パネル20は、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形され、意匠印刷22が施される。
コントローラ40は、せん断力センサー10の信号を受信し、第1タイムに、入力面21に加えられたせん断力を示すベクトルから入力情報を得る。この第2実施形態でも、入力情報を得るトリガーもせん断力センサー10から得る。例えば、後述するように、せん断力センサー10の入力方向の成分がしきい値THC以上になるせん断力が加えられることをトリガーとする。しかし、トリガーの設定の仕方はしきい値THCに限られるものではない。例えば、しきい値THC以上のせん断力が所定時間以上加えられることをトリガーとしてもよい。しきい値THC以上のせん断力が所定時間以上加えられる状態は、例えば、ボタンの長押しに類似する状態と考えられる。
コントローラ40は、第1タイムの近傍の第2タイムに、ベクトルの大きさと向きの値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御する。具体的には、入力方向をθnとすると、入力方向の成分の大きさ|F|・cos(θ-θn)及び成分の入力方向θnのうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御する。
【0025】
コントローラ40による入力面21の振動の制御について、複数の入力方向及びベクトルの大きさと向きの値を用いた種々の制御の態様をここで説明する。
複数の入力方向θ1,θ2,・・・を定義した場合、全ての入力方向θ1,θ2,・・・について、成分の大きさと入力方向の両方の値に応じて振動を入力面21に生じさせる態様が考えられる。また、全ての入力方向θ1,θ2,・・・について、成分の大きさの値のみに応じて入力面21に振動を生じさせる態様が考えられ、この態様では、全ての入力方向θ1,θ2,・・・において入力方向θ1、θ2,・・・の値に応じた振動を入力面21に生じさせない。また、全ての入力方向θ1,θ2,・・・について、入力方向θ1,θ2,・・・の値のみに応じて入力面21に振動を生じさせる態様が考えられ、この態様では、全ての入力方向θ1,θ2,・・・において成分の大きさの値に応じた振動を入力面21に生じさせない。
さらに、複数の入力方向θ1,θ2,・・・のうちの少なくとも一つについて、成分の大きさと入力方向の両方の値に応じて振動を入力面21に生じさせる態様が考えられる。この態様では、例えば入力方向θ1のみについて、成分の大きさと入力方向の両方の値に応じて振動を入力面21に生じさせる態様が考えられ、この例では、入力方向θ2,・・・については、成分の大きさと入力方向のいずれの値に応じた振動も入力面21に生じさせない。例えば入力方向θ1のみについて、成分の大きさの値のみに応じて入力面21に振動を生じさせる態様が考えられ、この態様では、入力方向θ1の入力方向θ1の値に応じた振動及び入力方向θ2,・・・については成分の大きさと入力方向のいずれの値に応じた振動も入力面21に生じさせない。また、例えば入力方向θ1,θ2のみについて、入力方向θ1,θ2の値のみに応じて入力面21に振動を生じさせる態様が考えられ、この態様では、入力方向θ1,θ2の成分の大きさの値に応じた振動及び入力方向θ3,・・・については成分の大きさと入力方向のいずれの値に応じた振動も入力面21に生じさせない。
【0026】
(4)せん断力と振動
図14に示されているように、以降の説明では、入力面21に加えられるせん断力を示すベクトルVfの入力方向θnの成分の大きさを|Fn|と表し、ベクトルVfの向きをθと表し、入力方向θnと向きθの差がプラスマイナス90度以下である場合について説明する。入力方向θnと向きθの差がプラスマイナス90度以上となる場合には、入力方向θnと反対の方向の入力方向(-θn)の成分の大きさを定義するものとする。
図14では、第1入力方向θ1に対応する単位ベクトルe1に対して、反対方向(θ1+180度)の第2入力方向θ2に対応する単位ベクトルe2が定義される。
図14のベクトルVf1は、単位ベクトルe1,e3,e5の入力方向の成分の大きさは、e1,e3,e5の入力方向をθ1,θ3,θ5とすると、|F|・cos(θ-θ1)=|F1|,|F|・cos(θ-θ3)=|F3|,|F|・cos(θ-θ5)=|F5|になる。
図14のベクトルVf2については、単位ベクトルe2,e4,e6の入力方向θ2,θ4,θ6の成分|F2|,|F4|,|F6|を使って入力することになる。
【0027】
ここでは、カーオーディオの音量と、トーン(バス、トレブル)とを調整する場合を例に挙げて説明する。バスは低音の調整、トレブルは高音の調整になる。単位ベクトルe1の入力方向θ1の成分の大きさ|F1|によって音量の増加値を入力する。単位ベクトルe2の入力方向θ2の成分の大きさ|F2|によって音量の減少値を入力する。単位ベクトルe3の入力方向θ3の成分の大きさ|F3|によってトレブルの増加値を入力する。単位ベクトルe4の入力方向θ4の成分の大きさ|F4|によってトレブルの減少値を入力する。単位ベクトルe5の入力方向θ5の成分の大きさ|F5|によってバスの増加値を入力する。単位ベクトルe6の入力方向θ6の成分の大きさ|F6|によってバスの減少値を入力する。
例えば、入力方向θ1の成分の大きさ|F1|のみがしきい値THCを超えれば、音量のみを増加させ、入力方向θ1の成分の大きさ|F1|と入力方向θ3の成分の大きさ|F3|がしきい値THCを超えれば、音量と同時にトレブルを増加させるという入力も可能である。以下の説明では、音量の増加値を例に挙げて説明する。
【0028】
(4-1)振動パターンNo.11
図15には、単位ベクトルe1が示す入力方向θ1についてのベクトルVf1の成分の大きさ|F1|を示すグラフと、音量と、成分の大きさ|F1|に応じた振動パターンを示すグラフが示されている。入力面21に加わるせん断力の大きさ|F|と向きθによって、成分の大きさ|F1|がしきい値THC以上になると、コントローラ40は、入力方向θ1の成分の大きさ|F1|を入力情報として得る。例えば、コントローラ40は、入力情報をアナログデータとして取得して、アナログデータとして入力情報を出力する。コントローラ40からアナログデータを受け取ったカーオーディオは、例えば一定のインターバルで成分の大きさ|F1|をデジタルデータとして取り込み、音量の上昇値を決定する。あるいは、例えば、コントローラ40は、入力情報を一定のインターバルでデジタルデータとして取得して、デジタルデータとして入力情報を出力する。コントローラ40からデジタルデータを受け取ったカーオーディオは、成分の大きさ|F1|を示すデジタルデータに応じて、音量の上昇値を決定する。成分の大きさ|F1|が大きい程音量の上昇値を大きくする。成分の大きさ|F1|がしきい値THC未満になると、コントローラ40は、情報の取得を停止する。情報の取得の停止に応じて、コントローラ40は、バイブレータ30の振動の発生を停止させる。ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|がしきい値THC以上になっていてコントローラ40が入力情報を得ている期間が第1タイムであり、コントローラ40がバイブレータ30に振動を発生させている期間が第2タイムである。
なお、音量を下げるときには、単位ベクトルe2の入力方向θ2についてのベクトルVf2の成分の大きさ|F2|を用いて行う。
【0029】
図15に示されている振動パターンNo.11で振動を発生させるコントローラ40は、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。振動パターンNo.11の振動の特性は、振動パターンNo.1の振動の特性と同じであるので、ここでは説明を省略する。
操作者は、パルス状の振動の回数が少ないと、せん断力の入力方向θ1の小さな成分|F1|によって音量をゆっくり大きくしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の回数が多いと、大きな成分|F1|によって音量をすばやく大きくしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
なお、音量を小さくする場合、トレブルを増加する場合、トレブルを減少する場合、バスを大きくする場合及びバスを小さくする場合には、成分の大きさ|F1|に応じてパルス状の振動の発生頻度を変化させたように、成分の大きさ|F2|,|F3|,|F4|,|F5|,|F6|に応じてパルス状の振動の発生頻度を変化させればよい。6つの入力情報である|F1|~|F6|を区別するために、互いに特性の異なる6種類の振動を用いてもよい。
【0030】
(4-2)振動パターンNo.12
図16に示されている振動パターンNo.12で振動を発生させるコントローラ40は、前述の振動パターンNo.11と同様に、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。ただし、振動パターンNo.12と振動パターンNo.11が異なるのは、入力開始の時点と入力終了の時点のパルス状の振動の特性である。振動パターンNo.12では、入力開始の時点と入力終了の時点を除く入力検出最中に発生させるパルス状の振動の特性とは異なる特性の振動を、入力開始の時点と入力終了の時点に発生させる。例えば、入力開始の時点のパルス状の振動PV1と入力終了の時点のパルス状の振動PV2に、入力開始の時点と入力終了の時点を除く第2タイムの振動PV3の特性を、それぞれ異ならせる。あるいは、振動PV1,PV2の特性を同じにして、振動PV3の特性と異ならせる。例えば、振動PV1の周波数が200Hz、振動PV2の周波数が100Hz、振動PV3の周波数が50Hzになるように、コントローラ40がバイブレータ30を制御する。振動パターンNo.12のように、入力開始の時点と入力終了の時点のパルス状の振動の特性をそれ以外のパルスの振動の特性と異ならせることによって、操作者は、入力が受け付けられた瞬間、及び入力が終了した瞬間を、より容易に認知できる。その結果、操作者は、入力装置1を、すばやく入力を止めることもでき、すばやく入力を再開することもでき、音量の細かい調整が容易になる。
【0031】
(4-3)振動パターンNo.13
図17に示されている振動パターンNo.13で振動を発生させるコントローラ40は、前述の振動パターンNo.11と同様に、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。ただし、振動パターンNo.13と振動パターンNo.11が異なるのは、振動パターンNo.11ではパルス状の振動の特性が第2タイムの間中全て同じであるのに対し、振動パターンNo.13ではパルス状の振動の特性をランダムに変えている点である。
図17の複数のパルス状の振動PV12(
図17で黒塗りの振動)を、ランダムに、複数のパルス状の振動PV11(
図17で白抜きの振動)と異ならせる。この場合、複数のパルス状の振動PV12同士の特性を異ならせて良い。機械的で単調な振動は人間にとって不快であるため、第2タイムに発生させるパルス状の振動PV12の特性をランダムに変えることで、入力時に操作者が振動から感じる不快感を軽減することができる。あるいは、第2タイムに発生させるパルス状の振動を所定のルールに従って、例えば、周波数を高い周波数、低い周波数、中間の周波数、高い周波数、低い周波数、中間の周波数、・・・・のように、変えてもよい。
図17では、第2タイムに断続して入力面21に振動を生じさせる場合について説明したが、第2タイムに連続して入力面21に振動を生じさせる場合についても特性をランダムにまたは所定のルールに従って変えてもよい。
【0032】
(4-4)振動パターンNo.14
図18に示されている振動パターンNo.14で振動を発生させるコントローラ40は、振動の振幅を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。振動パターンNo.14では、入力面21に一定の周波数で連続して繰り返される例えば正弦波振動が生じる。ただし、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|と正弦波振動の振幅の関係は任意に設定することができる。
操作者は、正弦波振動の振幅が小さいと、せん断力の入力方向θ1の小さな成分|F1|によって音量をゆっくり大きくしていることを触感によって認知でき、正弦波振動の振幅が大きいと、大きな成分|F1|によって音量をすばやく大きくしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
なお、ここでは正弦波振動の振幅を成分の大きさ|F1|に応じて変える場合について説明したが、正弦波振動の周波数を成分の大きさ|F1|に応じて変えてもよい。
【0033】
(4-5)振動パターンNo.15
図19に示されている振動パターンNo.15で振動を発生させるコントローラ40は、前述の振動パターンNo.14と同様に、振動の振幅を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。ただし、振動パターンNo.15と振動パターンNo.14が異なるのは、入力開始の時点と入力終了の時点の振動の特性である。振動パターンNo.15では、入力開始の時点と入力終了の時点で、パルス状の振動を発生させる。振動パターンNo.15のように、入力開始の時点と入力終了の時点でパルス状の振動を発生させることによって、操作者は、入力が受け付けられた瞬間、及び入力が終了した瞬間を、より容易に認知できる。その結果、操作者は、入力装置1を、すばやく入力を止めることもでき、すばやく入力を再開することもでき、音量の細かい調整が容易になる。
【0034】
(4-6)振動パターンNo.16
図20に示されている振動パターンNo.16で振動を発生させるコントローラ40は、振動の振幅を、ベクトルVf1の入力方向θ1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。振動パターンNo.16が振動パターンNo.15と異なる点は、振動の波形である。振動パターンNo.15では、正弦波振動の振幅を変化させたが、振動パターンNo.16ではパルス状の振動の振幅を変化させている。振動パターンNo.16ではパルス状の振動の発生頻度は、しきい値THC以上であればベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に関わらず一定に設定されている。振動パターンNo.16の振幅の変更は、振動パターンNo.15と同様に行われる。ただし、成分の大きさ|F1|とパルス状の振動の振幅の関係は任意に設定することができる。
操作者は、パルス状の振動の振幅が小さいと、せん断力の入力方向θ1の小さな成分|F1|によって音量をゆっくり大きくしていることを触感によって認知でき、パルス状の振動の振幅が大きいと、大きな成分|F1|によって音量をすばやく大きくしていることを触感によって認知できるため、入力装置1の操作性が良くなる。
【0035】
(4-7)振動パターンNo.17
図21には、単位ベクトルe1が示す入力方向θ1についてのベクトルVf1の成分の大きさ|F1|を示すグラフと、音量と、成分の大きさ|F1|に応じた振動パターンを示すグラフと、単位ベクトルe3の入力方向θ3についてのベクトルVf1の成分の大きさ|F3|を示すグラフと、トレブルの増加と、成分の大きさ|F3|に応じた振動パターンを示すグラフとが示されている。なお、ここでは、バスの調整についての説明は省略する。
入力面21に加わるせん断力の大きさ|F|と向きθによって、成分の大きさ|F1|がしきい値THC以上になると、コントローラ40は、入力方向θ1の成分の大きさ|F1|を入力情報として得る。また、成分の大きさ|F3|がしきい値THC以上になると、コントローラ40は、入力方向θ3の成分の大きさ|F3|を入力情報として得る。
図21に示されている振動パターンNo.11で振動を発生させるコントローラ40は、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F1|に応じて変化させる。
図21に示されている振動パターンNo.17で振動を発生させるコントローラ40は、パルス状の振動の発生頻度を、ベクトルVf1の成分の大きさ|F3|に応じて変化させる。
図21の振動パターンNo.11と振動パターンNo.17では、パルス状の振動の特性が異なるように設定されている。そのため、操作者は、振動パターンNo.11のパルス状の振動と振動パターンNo.17のパルス状の振動の両方を感じることができる。両方のパルス状振動を感じることで、音量の増加とトレブルの増加を認知することができる。
振動パターンNo.11と振動パターンNo.17の振動の特性(例えば周波数)が異なるから、
図21には、成分の入力方向θ1、θ3の値に応じて振動の特性を変えている例も示されていることになる。
【0036】
<第3実施形態>
(5)入力装置の構成
図22には、第3実施形態に係る入力装置1の主な構成要素が示されている。
第3実施形態の入力装置1は、
図2に示されている第1実施形態の入力装置1と同様に、せん断力センサー10と、入力面21を有する操作パネル20と、バイブレータ30と、コントローラ40と筐体2を備えている。
図22の入力装置1は、さらに、静電容量式のタッチセンサー60を備えている。
図22に示されているタッチセンサー60は、入力面21を有する操作パネル20とせん断力センサー10の間に配置されている。入力面21に加えられるせん断力は、操作パネル20とタッチセンサー60を介してせん断力センサー10に伝えられる。せん断力を伝達するために、タッチセンサー60はフィルム状であってせん断力では実質的に変形しない材料で構成されている。変形しない材料は、例えば樹脂フィルムである。静電容量式のタッチセンサー60は、操作パネル20の入力面21への指の接触を検知できるように構成されている。タッチセンサー60は、入力面21への指の接触の検知をコントローラ40に知らせる。
【0037】
(6)せん断力と振動
第1実施形態及び第2実施形態の入力装置1では、コントローラ40が入力情報の取得を開始するトリガーとして、入力面21が受けるせん断力の大きさ|F|がしきい値TH以上となる場合、せん断力の成分の大きさ|F1|がしきい値THC以上となる場合を例に挙げて説明した。
しかし、入力面21が受けるせん断力から入力情報の取得をコントローラ40が開始するためのトリガーは、第1実施形態及び第2実施形態で説明した方法以外であってもよい。第3実施形態の入力装置1は、タッチセンサー60によって入力情報の取得を開始するトリガーを得ることができる。コントローラ40は、例えば、入力面21を操作者が2回タップしたのを検知して、入力情報の取得の開始(第1タイムの始点)を認知するように構成できる。そして、例えば、入力面21を操作者が3回タップしたのを検知して、入力情報の取得の終了(第1タイムの終点)を認知するように構成できる。入力面21のタップによって入力情報の取得の開始と終了を行うように構成された入力装置1では、第1実施形態及び第2実施形態の入力装置1におけるせん断力のしきい値TH,THCよりも小さなせん断力で入力情報を入力できるように構成することができる。
なお、タッチセンサー60を用いた第1タイムの始点及び終点の検知は他の方法によって行うこともできる。例えば、第1タイムの始点は、操作者の指が入力面21に所定時間以上タッチしていることをタッチセンサー60が検知した時点としてもよい。また、例えば、第1タイムの終点は、操作者の指が入力面21から離れたことをタッチセンサー60が検知した時点としてもよい。
第3実施形態の入力装置1の第2タイムにおける入力面21の振動の発生は、例えば、第1実施形態及び第2実施形態の入力装置1と同様に行うように構成することができる。
【0038】
(7)入力装置による情報入力の例
例えば、
図3に示されているベクトルVfの大きさ|F|による入力と、向きθによる入力とを、タッチセンサー60によって選択できるように構成することができる。例えば、入力面21を操作者が2回タップする毎に、大きさ|F|による入力と、向きθによる入力とを切り換えるように入力装置1を構成する。このように構成すれば、大きさ|F|による入力と、向きθによる入力とを、操作者が分けて入力することが可能になる。例えば、テレビジョンのチャンネルが12個あるとして、それぞれ、30度ずつ割り当てられた12の角度にそれぞれ12個のチャンネルが対応付けられているように構成する。ベクトルVfの大きさ|F|がテレビジョンの音量に対応するように構成する。このように構成することで、操作者は、2回タップして、ベクトルVfの向きθによってテレビジョンのチャンネルを選択し、さらに2回タップしてベクトルVfの大きさ|F|によってテレビジョンの音量を調節することができる。例えば、チャンネルが変わる度に、入力面21に振動が生じるようにコントローラ40がバイブレータ30を制御するように構成することができる。このように構成された入力装置1では、操作者がチャンネルの切り換えを振動によって感知することができる。
あるいは、例えば、
図14に示されている単位ベクトルe1,e2の方向が音量の増減、単位ベクトルe3,e4の方向が前への曲送りと後ろへの曲送り、単位ベクトルe5,e6の方向が早送りと巻き戻しに対応するように、入力装置1を構成する。そして、例えば、入力面21を操作者が2回タップする毎に、音量の増減と、前への曲送りと後ろへの曲送りと、早送りと巻き戻しとを切り換えるように入力装置1を構成する。このように構成すれば、音量の操作と、曲送りと、早送り巻き戻しとを、操作者が混同せずに独立して入力することが可能になる。
【0039】
例えば、入力装置1を用いて、カーエアコンにおいて、風速を、微弱、弱、中、強の4段階に設定する場合について説明する。例えば、1回タップして45度~135度の範囲でしきい値TH以上にせん断力を加えると、微弱から強に向かって一段階風速を強くし、1回タップして225度~315度の範囲でしきい値TH以上にせん断力を加えると、強から微弱に向かって一段階風速を弱くするように、入力装置1を構成する。このように構成された入力装置1では、1段階ずつ風速の程度を変更することができる。この場合、1段階変更するごとに、コントローラ40が入力面21に振動を生じさせるようにバイブレータ30を制御すれば、操作者は風速の変更を確認しながら入力することができる。この場合、コントローラ40が情報を入力する第1タイムは、せん断力がしきい値THを以上となった時点であり、第2タイムは、バイブレータ30が入力面21に振動を生じさせる時点である。なお、0度~45度まで、135度~225度まで、315度~360度までの各範囲は、入力を受け付けない不感範囲として定義される。
【0040】
(8)入力装置の他の構成
図23には、第3実施形態に係る入力装置1の他の構成に係る主な構成要素が示されている。
第3実施形態の入力装置1は、
図13に示されている第2実施形態の入力装置1と同様に、せん断力センサー10と、入力面21と、バイブレータ30と、コントローラ40とLED50と筐体2を備えている。
図23の入力装置1は、さらに、静電容量式のタッチセンサー60を備えている。
図22に示されているタッチセンサー60は、入力面21を有する操作パネル20に貼り付けられて、筐体2の中に収容されている。
図23のタッチセンサー60には、せん断力センサー10に伝えられるせん断力は加わらない。入力面21に加えられるせん断力は、操作パネル20を介してせん断力センサー10に伝えられる。静電容量式のタッチセンサー60は、操作パネル20の入力面21への指の接触を検知できるように構成されている。タッチセンサー60は、入力面21への指の接触の検知をコントローラ40に知らせる。
【0041】
<第4実施形態>
(9)構成
上記第1実施形態から第3実施形態では、せん断力センサー10が、入力面21の面内方向のせん断力を検出し、面に対して垂直な方向の押圧力を検出しない場合について説明した。
しかし、せん断力センサー10は、面内方向のせん断力と同時に面に対して垂直な方向の押圧力も検出することができるように構成することができる。せん断力センサー10が検出する押圧力は、方向の無い大きさだけの力である。
そして、コントローラ40が、押圧力の大きさ|Fp|に応じた入力を可能にし、且つ押圧力の大きさ|Fp|に応じた振動を入力面21に発生させるように、バイブレータ30を制御するように構成することができる。
【0042】
(10)特徴
(10-1)
上述の入力装置1では、入力面21が受ける面内方向のせん断力をせん断力センサー10が検出して、せん断力のベクトルに応じた信号をコントローラ40に出力する。せん断力のベクトルに応じた信号を受信したコントローラ40は、第1タイムにベクトルから入力情報を得る。そして、コントローラ40は、第1タイムの近傍の第2タイムに、ベクトルの大きさと向きのうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御する。
入力面21にせん断力を加えて入力を行っている者は、入力面21に生じる振動によって情報の入力に関する認知を行えて、操作し易くなる。このように、上述の入力装置1は、せん断力によって情報を入力する際の操作性が向上している。
【0043】
(10-2)
第1実施形態の入力装置1では、コントローラ40が、せん断力のベクトルVfの大きさ|F|に応じた第1情報として例えばカーソルC1の移動速度を入力情報として得ている。また、コントローラ40が、ベクトルVfの向きθに応じた第2情報として例えばカーソルC1の移動方向を入力情報として得ている。コントローラ40は、第1情報及び第2情報として、カーソルC1の移動速度と移動方向を、装置外の機器である例えばコンピュータまたはカーナビゲーションシステムに与える。このような第1実施形態の入力装置1によれば、ベクトルVfの大きさ|F|(第1情報)及び向きθ(第2情報)のうちの少なくとも一方に応じて、せん断力が加えられる入力面21に振動を生じるように、コントローラ40がバイブレータ30を制御する。その結果、操作者は、カーソルC1を操作するための大きさ|F|(第1情報)及び向きθ(第2情報)の入力を、入力面21に生じる振動によって認知することができ、カーソルC1を操作し易くなる。
【0044】
(10-3)
第2実施形態の入力装置1のコントローラ40は、入力面21において複数の入力方向として、例えば単位ベクトルe1~e6が向く6つの入力方向θ1~θ6を定義している。コントローラ40は、ベクトルVf1,Vf2の各入力方向θ1~θ6における成分の大きさ|F1|~|F6|に応じて第1タイムに入力情報を入力方向θ1~θ6ごとに得る。そして、コントローラ40は、第2タイムに、入力方向θ1~θ6ごとに成分の大きさ|F1|~|F6|及び成分の入力方向θ1~θ6のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御する。その結果、操作者は、例えば単位ベクトルe1~e6に対応する音量の増減、トーンのトレブルの高低の調整、トーンのバスの高低の調整の入力を、入力面21に生じる振動によって認知することができ、例えばカーオーディオの音量とトーンの調整を行い易くなる。
なお、定義する入力方向の数は、2つ以上の任意の数に設定することができる。
また、入力方向θ1~θ6の値に応じた特性を有する振動の一例としては、
図14の単位ベクトルe5の入力方向θ5では30Hzの周波数で、単位ベクトルe1の入力方向θ1では90Hzの周波数で、単位ベクトルe3の入力方向θ3では150Hzの周波数で、単位ベクトルe6の入力方向θ6では210Hzの周波数で、単位ベクトルe2の入力方向θ2では270Hzの周波数で、単位ベクトルe4の入力方向θ4では330Hzの周波数で振動させるなどである。
また、既に説明したように、入力面21に生じさせる振動の態様としては、第2実施形態の入力装置1の例では、複数の入力方向θ1~θ6の全てにおいて振動を生じさせる場合だけでなく、入力方向θ1~θ6のいずれか一方向、いずれか2つの方向、いずれか3つの方向、いずれか4つの方向または、いずれか5つの方向で、振動を生じさせる態様を設定することができる。また、振動の特性についても、第2実施形態の入力装置1の例では、いずれか一方向を異ならせ他を同じ特性とする態様を設定することができる。いずれか2つの方向、いずれか3つの方向、いずれか4つの方向、いずれか5つの方向、または6つ全ての方向で振動の特性を異ならせることができる。さらには、入力方向θ1~θ6を複数のグループに分けて、グループごとに振動を異ならせるように設定することができる。例えば、入力方向θ1,θ2、入力方向θ3,θ4、入力方向θ5,θ6の3つのグループに分けて、3種類の異なる特性の振動を生じさせ、音量の入力、2種類のトーンの入力が区別できるように設定することができる。
【0045】
(10-4)
上述のように、入力装置1は、入力面21において定義された入力方向が3つ以上である場合、第2タイムに、3つ以上の入力方向θ1,θ2,θ3,・・・について成分の大きさ|F1|,|F2|,|F3|・・・及び成分の方向θ1,θ2,θ3,・・・のうちの少なくとも一方の値に応じた特性を有する振動を、入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御するように構成できる。1つのせん断力センサー10により3種類以上の入力が可能になり、狭い場所で多くの入力を受け付けることができるようになる。
(10-5)
第3実施形態の入力装置1では、タッチセンサー60が、入力面21にせん断力を加える物体が入力面21に接触または近傍に位置したことの検知を行う。そして、タッチセンサー60は、コントローラ40に検知を伝達する。そして、コントローラ40が、タッチセンサー60における検知に応じて複数の入力方向θ1,θ2,・・・の入力を切り換えるように構成できる。タッチセンサー60で入力方向θ1,θ2,・・・の入力を切り換える入力装置1は、入力面21の面内方向についての複数の入力方向θ1,θ2,・・・の入力を確実に切り換えて確実に区別しながら入力することができる。
【0046】
(10-6)
図16のように、コントローラ40は、第2タイムに断続して入力面21に振動を生じさせ、第2タイムの期間のうち開始時点及び終了時点を除く期間中に生じさせる振動の特性とは異なる特性の振動を、第2タイムの開始時点及び終了時点に生じさせるようにバイブレータ30を制御するように構成できる。ただし、前述の異なる特性の振動を、第2タイムの開始時点または終了時点に生じさせるように、バイブレータ30を制御するようにコントローラ40を構成してもよい。
また、
図19のように、コントローラ40は、第2タイムに連続して入力面に振動を生じさせ、第2タイムの期間のうち開始時点及び終了時点を除く期間中に生じさせる振動の特性とは異なる特性の振動を、第2タイムの開始時点及び終了時点に生じさせるようにバイブレータ30を制御するように構成できる。ただし、前述の異なる特性の振動を、第2タイムの開始時点または終了時点に生じさせるように、バイブレータ30を制御するようにコントローラ40を構成してもよい。
このように構成された入力装置1を操作する操作者は、第2タイムの開始時点または終了時点に入力面21に生じる振動により、入力が受け付けられた瞬間、及び入力が終了した瞬間を、より容易に認知できる。その結果、操作者は、入力装置1を、すばやく入力を止めることもでき、すばやく入力を再開することもでき、例えば、入力装置1で音量を調節する場合には、音量の細かい調整が容易になる。
【0047】
(10-7)
図17を用いて説明したように、コントローラ40は、第2タイムに断続して入力面21に振動を生じさせ、生じる振動の特性を期間中にランダムまたは所定のルールに従って変更するように構成できる。あるいは、コントローラ40は、第2タイムに連続して入力面21に振動を生じさせ、生じる振動の特性を期間中にランダムにまたは所定のルールに従って変更するように構成できる。
第2タイムに発生させるパルス状の振動の特性をランダムにまたは所定のルールに従って変えることで、機械的で単調な振動を避け、入力時に操作者が入力面21の振動から感じる不快感を軽減することができる。
(10-8)
第3実施形態の入力装置1は、入力面21にせん断力を加える物体が入力面21に接触または近傍に位置したことの検知を行い、コントローラ40に検知を伝達するタッチセンサー60をさらに備えるように構成されている。そして、コントローラ40は、タッチセンサー60における検知に応じて第1タイムを開始及び/または終了するように構成することができる。例えば、タッチセンサー60で、ベクトルから入力情報を得る第1タイムの始点及び終点の少なくとも一方のトリガーを構成できるので、入力装置1の入力のバリエーションを豊富にすることができ、入力状況に適した入力装置1の使用を行い易くなる。
【0048】
(10-9)
図11に示されている入力パターンNo.7の振動を発生させる入力装置1では、ベクトルの向きが第1特定範囲であるθa~θbの間に在る期間の近傍の第2タイムに、振動を入力面21に生じさせる。しかし、このような入力装置1は、第2特定範囲であるθa~θbの間以外の方向では振動を入力面21に生じさせない。このような入力装置1は、第2特定方向(θa~θbの間以外の方向)では振動が生じないので、ベクトルの向きの第1特定範囲の入力、例えば地図の北方向へカーソルC1を移動させていることを、振動で区別して確かめ易くなる。
(10-10)
例えば、
図8に示されている振動パターンNo.4の振動を発生させる第1実施形態の入力装置1のコントローラ40は、第2タイムに、ベクトルの向きθの値のみに応じて、振動を入力面21に生じさせるようにバイブレータ30を制御する。
また、第2実施形態の入力装置1では、例えば、
図14の単位ベクトルe5の入力方向θ5では30Hzの周波数で、単位ベクトルe1の入力方向θ1では90Hzの周波数で、単位ベクトルe3の入力方向θ3では150Hzの周波数で、単位ベクトルe6の入力方向θ6では210Hzの周波数で、単位ベクトルe2の入力方向θ2では270Hzの周波数で、単位ベクトルe4の入力方向θ4では330Hzの周波数で振動させように構成できる。そして、ベクトルVf1,Vf2の各単位ベクトルe1~e6の方向の成分の大きさの値に関する振動は発生させないようにコントローラ40を構成することができる。この場合、例えば、入力方向θ1のみの入力がある場合には、90Hzの周波数でパルス状の振動を発生させ、入力方向θ1,θ3の入力が同時に在る場合には、90Hzの周波数のパルス状の振動と、150Hzの周波数のパルス状の振動とを交互に発生させるように構成することができる。操作者は、90Hzのパルス状の振動のみを感じる場合には、入力方向θ1のみの入力を行い、90Hzと150Hzのパルス状の振動を交互に感じる場合には、入力方向θ1,θ3の入力を行っていることを認知することができる。このように構成された入力装置1では、ベクトルの向きθの入力を区別し易くなる。
さらに、第3実施形態の入力装置1では、例えば、入力方向θ1~θ6の切り換えを、タッチセンサー60で行うとともに、振動を、入力方向θ1~θ6の値のみに応じて生じさせるように構成することもできる。このように構成された入力装置1では、入力方向θ1~θ6の切り換えを区別し易くなる。
以上、本発明の第1~第3実施形態について説明したが、本発明は上記第1~第3実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 入力装置
10 せん断力センサー
20 操作パネル
21 入力面
30 バイブレータ
40 コントローラ
60 タッチセンサー