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  • 特開-消火システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172098
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A62C27/00 507
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089619
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】飯野 浩輔
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189FA01
2E189FB01
2E189FB03
2E189FB09
(57)【要約】
【課題】火災監視対象となる防災施設の天井面に張り巡らされる配管を削減することのできる消火システムを得る。
【解決手段】防災施設における火災監視エリアを走行可能な走行ロボットと、統括制御部とを含む消火システムであって、統括制御部は、火災受信機から火災発生エリアの情報を含む火災信号を受信することで、走行ロボットに対して、火災発生エリアの情報を含む消火指令を出力し、走行ロボットは、縦配管に一端が接続されたホースと、ホースの他端に接続されたノズルとを有し、縦配管およびホースを介して供給される水をノズルから放水可能な放水機構部と、消火指令に基づいて、火災発生エリアに向かって走行ロボットを自動走行させる走行制御を実施するとともに、火災発生エリアにおいて放水機構部を作動させることで水をノズルから放水させる放水制御を実施する消火作業制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災監視対象となる防災施設における火災監視エリアを走行可能な走行ロボットと、
前記走行ロボットを利用した消火作業に関する制御を実行する統括制御部と、
を含み、火源の消火作業を行う消火システムであって、
前記統括制御部は、前記防災施設に設置された自動火災報知システムから火災発生エリアの情報を含む火災信号を受信することで、前記走行ロボットに対して、前記火災発生エリアの情報を含む消火指令を出力し、
前記走行ロボットは、
前記防災施設において各階床をつなぐ配管設備である縦配管に一端が接続されたホースと、前記ホースの他端に接続されたノズルとを有し、前記縦配管および前記ホースを介して供給される水を前記ノズルから放水可能な放水機構部と、
前記消火指令に基づいて、前記火災発生エリアに向かって前記走行ロボットを自動走行させる走行制御を実施するとともに、前記火災発生エリアにおいて前記放水機構部を作動させることで前記水を前記ノズルから放水させる放水制御を実施する消火作業制御部と
を備える消火システム。
【請求項2】
前記走行ロボットは、
前記火災発生エリアを撮像するカメラと、
前記火災監視エリアにおいて炎の発生有無を感知する炎感知器と
をさらに備え、
前記消火作業制御部は、前記カメラによる撮像結果および前記炎感知器による感知結果に基づいて前記火災発生エリアにおける消火すべき位置を特定し、特定した前記位置に向けて前記走行制御を実施するとともに、前記水を前記ノズルから放水させるように前記放水制御を実施する
請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記走行ロボットは、
炎が出ていない燻煙火災の消火に適した消火剤が貯蔵された消火剤タンクと、前記消火剤を噴霧可能な噴霧ノズルとを有する消火剤噴霧機構部
をさらに備え、
前記消火作業制御部は、前記カメラによる撮像結果および前記炎感知器による感知結果に基づいて前記火災発生エリアにおいて前記炎が発生しているか否かを判断し、
前記炎が発生していると判断した場合には、前記放水機構部を用いて前記放水制御を実施し、
前記炎が発生していないと判断した場合には、前記放水機構部を用いて前記放水制御を実施する代わりに、前記消火剤噴霧機構部を用いて前記消火剤による噴霧制御を実施する
請求項2に記載の消火システム。
【請求項4】
前記放水機構部は、前記走行ロボットの本体に搭載されている状態から手動操作によって切り離して持ち運び可能な構成を有している
請求項1から3のいずれか1項に記載の消火システム。
【請求項5】
前記走行ロボットは、前記放水機構部から分岐され、前記走行ロボットの本体を冷却する散水を行う散水ノズルを有する散水機構部をさらに備え、
前記消火作業制御部は、前記放水制御を実施する際に前記散水機構部による散水制御を実施する
請求項1から3のいずれか1項に記載の消火システム。
【請求項6】
前記走行ロボットは、自動走行時に移動中であることを周知させるための報知部をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の消火システム。
【請求項7】
前記走行ロボットは、前記各階床において、前記縦配管に前記ホースの一端が接続されるエリアに設けられた格納スペースに格納されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行ロボットを用いた消火システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災感知器とスプリンクラヘッドの両方が作動したときに放水を開始する設備として、予作動式スプリンクラ消火設備がある(例えば、特許文献1参照)。予作動式スプリンクラ消火設備においては、予作動弁の二次側に接続される二次側配管には、平常時には、不活性ガスが充填されており、水が入っていない。
【0003】
従って、予作動式スプリンクラ消火設備は、感知器とスプリンクラヘッドの一方が作動しただけでは放水しない構成となっており、破損あるいは誤作動による水損に対して信頼性の高い設備を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3099233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、ビルなどに設置されている消火システムの多くは、火災監視エリア内の天井面に、スプリンクラから放水を行うための配管を張り巡らせる必要がある。そのため、施工担当者は、配管工事のために、以下の問題点を抱えている。
【0006】
(1)金属配管を大量に消費するため、金属材料の高騰の影響を受けやすい点。
(2)配管作業員の減少による施工能力の衰退が生じている点。
(3)現場における他の作業の施工タイミング遅れにより、後工程である配管施工の遅れによる再調整が必要となってしまう点。
【0007】
(4)配管ルート検討に係る作図、打合せにより、施工担当者の業務時間が圧迫され、残業削減の大きな障害になっている点。
(5)上述した理由に起因して、施工予算の圧迫によって利益が低迷するおそれがある点。
【0008】
従って、天井面に張り巡らされる配管を削減することができれば、現場の進捗状況により工期が大きく左右されてしまうおそれを低減でき、施工時間の削減、材料費削減などの効果が見込まれる。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、火災監視対象となる防災施設の天井面に張り巡らされる配管を削減することのできる消火システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る消火システムは、火災監視対象となる防災施設における火災監視エリアを走行可能な走行ロボットと、走行ロボットを利用した消火作業に関する制御を実行する統括制御部と、を含み、火源の消火作業を行う消火システムであって、統括制御部は、防災施設に設置された自動火災報知システムから火災発生エリアの情報を含む火災信号を受信することで、走行ロボットに対して、火災発生エリアの情報を含む消火指令を出力し、走行ロボットは、防災施設において各階床をつなぐ配管設備である縦配管に一端が接続されたホースと、ホースの他端に接続されたノズルとを有し、縦配管およびホースを介して供給される水をノズルから放水可能な放水機構部と、消火指令に基づいて、火災発生エリアに向かって走行ロボットを自動走行させる走行制御を実施するとともに、火災発生エリアにおいて放水機構部を作動させることで水をノズルから放水させる放水制御を実施する消火作業制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、火災監視対象となる施設の天井面に張り巡らされる配管を削減することのできる消火システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る消火システムの機能ブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る消火システムにより、火源を消火する際の説明図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る消火システムに含まれる走行ロボットに関する詳細構成に関する説明図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る走行ロボットを、火災監視対象となる防災施設の1階から3階に1台ずつ配置した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の消火システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る消火システムは、火災監視対象となる防災施設の縦配管から水の供給を受け、火源位置まで走行していき、消火を行う走行ロボットを活用した構成を備えることで、火災監視対象となる防災施設の天井面に張り巡らされる横配管を不要にできることを技術的特徴とするものである。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る消火システムの機能ブロック図である。本実施の形態1に係る消火システム100は、走行ロボット10と、統括制御部20とを備えて構成されている。
【0015】
走行ロボット10は、火災監視対象となる防災施設における火災監視エリアを走行可能であるとともに、消火作業を実施する機能を備えている。一方、統括制御部20は、火災監視対象となる防災施設内で火災が感知された際に、火災発生エリアの情報を含む火災信号を受信し、走行ロボットを利用した消火作業に関する統括制御を実行する。
【0016】
火災監視対象となる防災施設は、本開示に係る消火システム100とは別に、火災監視エリアでの火災を検知する自動火災報知設備を備えている。そして、自動火災報知設備には、種々の防災機器を集中制御するために、図1に示した火災受信機1が含まれている。従って、統括制御部20は、火災受信機1から火災発生エリアの情報を含む火災信号を受信することができる。
【0017】
統括制御部20は、防災施設に設置された自動火災報知システムから火災発生エリアの情報を含む火災信号を受信することで、走行ロボット10に対して、火災発生エリアの情報を含む消火指令を出力し、走行ロボット10を利用した消火作業を実行させる。
【0018】
走行ロボット10は、消火作業制御部11、走行機構部12、放水機構部13、消火剤噴霧機構部14、散水機構部15、カメラ16、炎感知器17、および報知部18を備えて構成される。各構成の詳細な機能に関しては、図2および図3を参照ながら説明する。
【0019】
図2は、本開示の実施の形態1に係る消火システムにより、火源を消火する際の説明図である。また、図3は、本開示の実施の形態1に係る消火システムに含まれる走行ロボット10に関する詳細構成に関する説明図である。図3に詳細構成を示した走行ロボット10は、図2中の走行ロボット10に相当する。
【0020】
図1図3を用いて、本実施の形態1に係る走行ロボット10の有する特徴について詳細に説明する。
【0021】
消火作業制御部11は、統括制御部20から受信した消火指令に基づいて、火災発生エリアに向かって走行ロボット10を自動走行させるように走行機構部12の走行制御を実施するとともに、火災発生エリアにおいて放水機構部13を作動させることで放水制御を実施する。
【0022】
図2では、地階に、火災受信機1および統括制御部20が設置された管理センタが配置されており、1階で炎2が発生し、走行ロボット10により炎2の消火を行う場合が例示されている。なお、この図2では、火災監視対象となる防災施設に2階以上も存在するが、1階のみを例示している。
【0023】
火災監視対象となる防災施設には、伝送用信号ラインL1と、配管L2が各階をつなぐように縦方向に配列されている。以下では、配管L2のことを縦配管L2と称することとする。
【0024】
施工時において、縦配管L2は、火災監視エリア内の天井面にスプリンクラを設置した場合に使用される、縦配管とスプリンクラを接続する横配管よりも、早い段階で設置される。そこで、本実施の形態1に係る消火システムは、スプリンクラおよび横配管を不要とする代わりに、火源位置まで走行して消火を行う走行ロボット10を活用している。
【0025】
伝送用信号ラインL1と、配管L2とが縦方向に配設されている各階床では、図2に示したように、走行ロボット10が待機する際に使用される格納スペースAが設けられている。
【0026】
伝送用信号ラインL1から分岐された有線ケーブル11aは、走行ロボット10内の消火作業制御部11に接続されている。従って、消火作業制御部11は、伝送用信号ラインL1および有線ケーブル11aを経由して、統括制御部20から出力された消火指令を受信することができる。
【0027】
走行機構部12は、自身の位置と、火災発生エリアの情報とに基づいて、火災発生エリアに向けて自動走行できる構成を備えている。図3では、複数の車輪がベルト駆動される機構として走行機構部12が示されている。
【0028】
放水機構部13は、ホース13aおよびノズル13bを備えて構成されている。ホース13aの一端は、縦配管L2から分岐されるように接続されている。また、ホース13aの他端には、ノズル13bが接続されている。
【0029】
図2および図3に示したように、ホース13aは、走行ロボット10の本体に巻き付けられて格納されるとともに、炎2に向かって走行ロボット10が走行することに伴って、巻き付けられた状態が徐々に展開され、炎2の近傍において、ノズル13bから放水可能となっている。
【0030】
消火剤噴霧機構部14は、炎が出ていない燻煙火災の消火に適した消火剤が貯蔵された消火剤タンク(図示省略)と、消火剤を噴霧可能な噴霧ノズル14aとを備えている。従って、消火作業制御部11は、必要に応じて、消火剤の噴霧を行うことができる。
【0031】
散水機構部15は、放水機構部13から分岐された水を、走行ロボット10の本体を冷却するために散水する散水ノズル15aを有している。消火作業制御部11は、炎2の影響で走行ロボット10が加熱されることを防止するために、放水機構部13による放水制御を実施する際に、散水機構部15による散水制御を実施することができる。
【0032】
なお、消火作業制御部11は、必要に応じて、放水機構部13による放水制御を実施していない際に、散水機構部15による散水制御を単独で実施することも可能である。
【0033】
カメラ16は、走行ロボット10に搭載されており、走行ロボット10が移動した位置に応じた火災発生エリアを撮像することで、消火すべき位置(火源位置)を探査することができる。また、炎感知器17は、走行ロボット10に搭載されており、走行ロボット10が移動した位置に応じた火災監視エリアにおいて炎の発生有無を感知することができる。
【0034】
従って、消火作業制御部11は、カメラ16による撮像結果および炎感知器17による感知結果に基づいて、火災発生エリアにおける火源位置を特定し、特定した火源位置に向けて走行機構部12による走行制御を実施するとともに、所望の位置に水をノズル13bから放水させるように放水機構部13による放水制御を実施することができる。
【0035】
また、消火作業制御部11は、カメラ16による撮像結果および炎感知器17による感知結果に基づいて、火災発生エリアにおいて炎2が発生しているか否かを判断することもできる。
【0036】
消火作業制御部11は、炎2が発生していると判断した場合には、放水機構部13を用いて放水制御を実施する。一方、消火作業制御部11は、炎2が発生していないと判断した場合には、放水機構部13を用いて放水制御を実施する代わりに、消火剤噴霧機構部14を用いて消火剤による噴霧制御を実施することができる。
【0037】
この結果、燻煙火災などのように、炎が出ていない小規模火災の場合には、消火剤を噴射し、放水による水損を抑えることが可能となる。
【0038】
報知部18は、走行ロボット10が自動走行時の移動中において、防災施設内にいる人との接触などによる2次災害を防止するために、回転灯、音響などにより、走行中であることを周知させるための報知を行う。
【0039】
なお、図1に示した走行ロボット10内の構成は、すべての機能をフル装備した場合に相当している。走行ロボット10は、消火指令に基づいて、火災発生エリアに走行して、放水を行うためには、最小構成として、消火作業制御部11、走行機構部12、および放水機構部13を備えていればよい。
【0040】
また、カメラ16をさらに備える構成を採用することで、消火作業制御部11は、火源位置を高精度に特定して、走行制御および放水制御を実行することができる。
【0041】
なお、カメラ16により撮像された画像は、有線ケーブル11aおよび伝送用信号ラインL1を経由して、管理センタ内の統括制御部20に送信する構成とすることも可能である。このような構成を採用した場合には、管理センタ内にいるオペレータは、火災発生エリアの状況を画像として視認でき、取り残された人がいないか、迅速に実施すべき作業はないか、などを、遠隔から迅速に判断することができる。
【0042】
なお、図1図3を用いて説明した走行ロボット10は、火災監視対象となる防災施設におけるそれぞれのフロアごとに、1台以上として設置することが可能である。同一フロアに複数台の走行ロボット10が設置されている場合には、統括制御部20は、火災発生エリアに最も近い走行ロボット10だけを急行させることができ、また、必要に応じて、複数の走行ロボット10に対して消火指令を出力することもできる。
【0043】
次に、階床ごとに1台ずつ設置された複数台の走行ロボット10を統括制御部20により制御する場合の具体例を、図4を用いて説明する。
【0044】
図4は、本開示の実施の形態1に係る走行ロボットを、火災監視対象となる防災施設の1階から3階に1台ずつ配置した場合の説明図である。図4では、地階に、火災受信機1と、統括制御部20を備えた制御盤と、消火ポンプ31と、消火水槽32とが設置されている場合を例示している。
【0045】
また、図4では、火災監視対象となる防災施設が1階~3階を有して構成され、1階の格納スペースA(1)に走行ロボット10(1)が配備され、2階の格納スペースA(2)に走行ロボット10(2)が配備され、3階の格納スペースA(3)に走行ロボット10(3)が配備されている場合を例示している。
【0046】
火災受信機1は、各階に設置されている火災感知器3(1)~3(3)と配線L4で接続され、それぞれの火災感知器3(1)~3(3)の感知結果に基づいて、防災施設を監視している。
【0047】
図4に示すように、3階に設置された火災感知器3(3)による火災監視エリアで炎2が発生した場合には、火災受信機1は、炎2が発生した火災発生エリアの情報を含む火災信号を、配線L4を介して火災感知器3(3)から受信する。
【0048】
火災受信機1と統括制御部20とは、配線L3によって接続されている。火災受信機1は、火災信号を受信した場合には、3階に配備された走行ロボット10(3)を用いた消火作業を実施させるために、配線L4を介して統括制御部20に対して火災信号を転送する。
【0049】
各階に配備された走行ロボット10(1)~10(3)内にそれぞれ設けられている消火作業制御部11は、伝送用信号ラインL1によって、統括制御部20と通信可能となるように有線接続されている。
【0050】
各階に配備された走行ロボット10(1)~10(3)内にそれぞれ設けられている放水機構部13は、消火ポンプ31が駆動されることで消火水槽32から配管設備を経由した水が、縦配管L2から分岐されてホース13aに供給されるように接続されている。なお、消火ポンプ31は、火災信号を受信した火災受信機1あるいは統括制御部20からの駆動指令により駆動される。
【0051】
3階の火災感知器3(3)が設置されたエリアを火災発生エリアの情報として含む火災信号を受信した統括制御部20は、3階に配備されている走行ロボット10(3)の消火作業制御部11に対して消火指令を出力する。
【0052】
この結果、3階の格納スペースA(3)で待機していた走行ロボット10(3)内の消火作業制御部11は、消火指令に基づいて走行機構部12の走行制御を実施することで、炎2の発生エリアに向かって走行ロボット10(3)を移動させる。
【0053】
さらに、走行ロボット10(3)内の消火作業制御部11は、火災発生エリアにおいて放水機構部13を作動させることで放水制御を実施する。
【0054】
なお、上述したように、走行ロボット10(3)は、必要に応じて、以下のような機能を実施することができる。
【0055】
機能1:カメラ16および炎感知器17を活用することで、火災発生エリアにおける火源位置を特定して走行制御および放水制御を実施できる。
【0056】
機能2:消火剤噴霧機構部14、カメラ16、および炎感知器17を活用することで、放水機構部13を用いた水による放水制御と、消火剤噴霧機構部14を用いた消火剤による噴霧制御とを切り替えることができる。
【0057】
機能3:散水機構部15を活用することで、走行ロボット10の本体を冷却するための散水を行い、炎などの影響により走行ロボット10が加熱されてしまうことを防止することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態1に係る消火システムによれば、このような機能1~機能3を実現できるとともに、火災監視エリア内の天井面において、スプリンクラから放水を行うための配管を張り巡らせる必要がなくなる。この結果、現場の進捗状況により工期が大きく左右されてしまうおそれを低減でき、施工時間の削減、配管材料費の削減の効果を実現できる。
【0059】
また、ホース13aおよびノズル13bから構成された放水機構部13を手動により走行ロボット10の本体に搭載されている状態から切り離して持ち運び可能な構成とすることで、火源の近傍において、人手により所望の位置に向けて放水する手動操作が可能となる。
【0060】
同様に、消火剤噴霧機構部14に関しても手動により走行ロボット10の本体に搭載されている状態から切り離して持ち運び可能な構成とすることで、火源の近傍において、人手により所望の位置に向けて消火剤を噴霧する手動操作が可能となる。
【0061】
すなわち、本実施の形態1に係る消火システムは、必要に応じて、手動操作を併用することが可能となる。この結果、放水あるいは消火剤噴霧に必要な機構を、走行ロボット10を利用して火源の近傍まで容易に移動させた後に、手動操作を可能とすることで、ホース13aなどの重量物を持ち運ぶ作業負担を軽減することができる。
【0062】
また、火災発生エリアで炎の発生を確認した作業者が、ホース13aが格納されている場所まで戻る必要がなく、火災発生エリアでできる作業を実施中に、走行ロボット10が駆けつけ、適切な消火作業を直ちに実行することが可能となる。
【0063】
以上のように、実施の形態1に係る消火システムによれば、システムの設置時においては、火災監視対象となる施設の天井面に張り巡らされる配管を削減し、施工時間の削減、材料費削減の効果を実現できる。
【0064】
さらに、実施の形態1に係る消火システムによれば、システムの運用時においては、火源の近傍に急行して適切な消火作業を実施することができるとともに、必要に応じて手動操作による消火作業を併用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 火災受信機、2 炎、3 火災感知器、10 走行ロボット、11 消火作業制御部、11a 有線ケーブル、12 走行機構部、13 放水機構部、13a ホース、13b ノズル、14 消火剤噴霧機構部、14a 噴霧ノズル、15 散水機構部、15a 散水ノズル、16 カメラ、17 炎感知器、18 報知部、20 統括制御部、31 消火ポンプ、32 消火水槽、100 消火システム、L1 伝送用信号ライン、L2 配管(縦配管)、L3、L4 配線。
図1
図2
図3
図4