(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172103
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】記憶装置およびリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J29/38 204
B41J2/175 175
B41J2/175 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089624
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中野 修一
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EB44
2C056KC02
2C056KC22
2C061AQ05
2C061AR01
2C061BB10
2C061BB11
2C061BB19
2C061BB37
2C061CF05
2C061CG03
2C061HH03
2C061HJ10
2C061KK07
2C061KK31
(57)【要約】
【課題】リサイクルが不可能であるか否かを適切に判断できる記憶装置を提供すること。
【解決手段】第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、第1メモリー領域群のそれぞれのメモリー領域に対応付けられた使用可能情報であって、メモリー領域が使用可能状態である場合には第1値に設定され、メモリー領域が使用不可能状態である場合には第2値に設定される使用可能情報が記憶されており、メモリー制御部は、第1メモリー領域群のいずれかのメモリー領域が使用不可能であると判断した場合、使用不可能であると判断したメモリー領域に対応する使用可能情報の値を第1値から第2値に変更する、液体収容容器に搭載される記憶装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容容器に搭載される記憶装置であって、
複数のメモリー領域を有する書き換え可能なメモリーと、
前記メモリーを制御するメモリー制御部と、を有し、
前記複数のメモリー領域は、論理ページに対応付けられた第1メモリー領域群と、前記論理ページに対応付けられていない第2メモリー領域群とを有し、
前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記第1メモリー領域群のそれぞれのメモリー領域に対応付けられた使用可能情報であって、前記メモリー領域が使用可能状態である場合には第1値に設定され、前記メモリー領域が使用不可能状態である場合には第2値に設定される使用可能情報が記憶されており、
前記メモリー制御部は、
前記メモリーへの書き込み動作と前記メモリーからの読み出し動作とのいずれかを行う場合、前記第1メモリー領域群の前記複数のメモリー領域のうち、前記使用可能情報の値が前記第1値である前記メモリー領域に対して書き込みと読み出しとのいずれかを行い、
前記第1メモリー領域群のいずれかのメモリー領域が使用不可能であると判断した場合、使用不可能であると判断した前記メモリー領域に対応する前記使用可能情報の値を前記第1値から前記第2値に変更する、記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置であって、
前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記論理ページと前記第1メモリー領域群とを対応づけるためのバンク情報が記憶されており、
前記バンク情報は、前記論理ページに対応付けられた複数のバンクのそれぞれのバンク番号と、前記第1メモリー領域群のそれぞれのメモリー領域を特定する物理アドレスとの1対1の対応関係を示す情報である、記憶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶装置であって、
前記使用可能情報は、前記バンク番号と対応付けられており、
前記使用可能情報と前記バンク情報の前記物理アドレスとは、前記バンク番号毎に記憶されている、記憶装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記憶装置であって、
前記メモリーはフラッシュメモリーであり、
前記使用可能情報はメモリーセルに記憶されており、前記使用可能情報の値は初期状態において前記第1値に設定されており、
前記メモリー制御部は、前記メモリーセルに対して書き込み動作を行うことによって、前記第1値から前記第2値に変更する、記憶装置。
【請求項5】
請求項2に記載の記憶装置であって、
前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記バンク情報の書き換えを禁止する禁止フラグが記憶されており、
前記メモリー制御部は、前記禁止フラグが記憶されている場合、前記バンク情報の変更を行わない、記憶装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載の記憶装置であって、
前記メモリー制御部は、前記メモリーに書き込む情報と、前記メモリーから読み出す情報とのいずれかの情報の通信を外部装置と行う場合に、前記バンク番号と対応付けられた前記論理ページを複数用い、前記複数の論理ページの番号順に通信する、記憶装置。
【請求項7】
請求項2に記載の記憶装置のリサイクル方法であって、
前記使用可能情報は、前記バンク番号と対応付けられており、
前記バンク情報について、前記使用可能情報の値が前記第2値である前記バンク番号に対応する前記物理アドレスを前記第2メモリー領域群の未使用である前記メモリー領域に対応する前記物理アドレスに変更するとともに、対応する前記使用可能情報の値を前記第2値から前記第1値に変更する情報変更ステップを備える、リサイクル方法。
【請求項8】
請求項7に記載のリサイクル方法であって、
前記情報変更ステップは、第1情報変更ステップであり、
前記バンク情報について、前記使用可能情報の値が前記第1値である前記バンク番号に対応する前記物理アドレスのうち、リサイクル前に書き込み動作と読み出し動作との少なくともいずれか一方が行われた前記メモリー領域に対応する前記物理アドレスを前記第2メモリー領域群の未使用である前記メモリー領域に対応する前記物理アドレスに変更するとともに、対応する前記使用可能情報の値を前記第2値から前記第1値に変更する第2情報変更ステップをさらに備える、リサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記憶装置およびリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
書き換え可能なメモリーは、リサイクルの対象となる。ただし、メモリーの書き換え回数には上限があるため、上限を超えて使用することはできない。そこで、メモリーを適切にリサイクルできるようにするための技術がある(例えば、特許文献1)。特許文献1のフラッシュROMは、リサイクル時に参照するための、プログラムが書き換えられた回数を格納する領域を有している。
【0003】
ところで、書き換え可能なメモリーにおいて、複数のメモリー領域を備えるメモリーがある。1つのメモリー領域が寿命により書き換えが不可能となった場合には、別のメモリー領域を使用することにより、メモリーの寿命を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術を複数のメモリー領域を備えるメモリーに適用した場合、使用可能なメモリー領域があるにもかかわらず、リサイクルが不可能であると判断されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、液体収容容器に搭載される記憶装置が提供される。この記憶装置は、複数のメモリー領域を有する書き換え可能なメモリーと、前記メモリーを制御するメモリー制御部と、を有し、前記複数のメモリー領域は、論理ページに対応付けられた第1メモリー領域群と、前記論理ページに対応付けられていない第2メモリー領域群とを有し、前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記第1メモリー領域群のそれぞれのメモリー領域に対応付けられた使用可能情報であって、前記メモリー領域が使用可能状態である場合には第1値に設定され、前記メモリー領域が使用不可能状態である場合には第2値に設定される使用可能情報が記憶されており、前記メモリー制御部は、前記メモリーへの書き込み動作と前記メモリーからの読み出し動作とのいずれかを行う場合、前記第1メモリー領域群の前記複数のメモリー領域のうち、前記使用可能情報の値が前記第1値である前記メモリー領域に対して書き込みと読み出しとのいずれかを行い、前記第1メモリー領域群のいずれかのメモリー領域が使用不可能であると判断した場合、使用不可能であると判断した前記メモリー領域に対応する前記使用可能情報の値を前記第1値から前記第2値に変更する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】論理ページと、バンクと、物理アドレスとの対応関係を示す図。
【
図5】バンク制御情報におけるバンクの割り当てについて説明する図。
【
図6】値が格納された状態のバンク制御情報を説明する図。
【
図9】リサイクルシステムの概略構成を示す説明図。
【
図11】情報変更処理における物理アドレスの変更を説明する図。
【
図12】リサイクル後の論理ページと、バンクと、物理アドレスとの対応関係を示す図。
【
図13】リサイクル方法の比較例における論理ページと、バンクと、物理アドレスとの対応関係を示す図。
【
図14】リサイクル方法の比較例のバンクカウンタ情報を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
A1.印刷システムの構成:
図1は、印刷システム1概略構成を示す説明図である。
図2は、液体収容容器としてのカートリッジ100の斜視図である。印刷システム1は、外部装置としての印刷装置20と、印刷装置20に着脱可能に装着される複数のカートリッジ100とを備えている。印刷装置20は、液体としてのインクを印刷媒体に吐出して印刷を行うインクジェットプリンターである。印刷装置20は、装置側制御部30と、搬送部32と、吐出ヘッド34と、装置側I/F部36とを有する。搬送部32は、印刷媒体を搬送する。吐出ヘッド34は、搬送部32により搬送された印刷媒体にインクを吐出する。装置側I/F部36は、装着されたカートリッジ100の後述する端子121aと接触する、図示しない端子を有する。装置側制御部30は、搬送部32、吐出ヘッド34などを制御する。また、装置側制御部30は、装置側I/F部36を介して、カートリッジ100の後述する回路基板120と通信する。
【0009】
カートリッジ100は、液体収容部150を有する。カートリッジ100には、記憶装置としての回路基板120が搭載されている。
図2に示すように、カートリッジ100は、さらに、カートリッジ筐体100aを有する。カートリッジ筐体100aの中に液体収容部150が収容されている。液体収容部150に収容されているインクは、図示しない流路を通じて、印刷装置20に提供される。
【0010】
A2.回路基板の構成:
図1に示すように、回路基板120は、メモリーIC130を有する。メモリーIC130は、IC(Integrated Circuit)で実現され、I/F部131と、メモリー制御部132と、不揮発性メモリー140とを有する。
図2に示すように、回路基板120は、カートリッジ筐体100aの外面に取り付けられている。回路基板120は、さらに、基板120aを有する。基板120aは、例えばプリント基板である。基板120aの表面には、メモリーIC130のI/F部131に接続される複数の端子121aが形成されている。基板120aの裏面には、メモリーIC130が実装されている。複数の端子121aと、メモリーIC130とは、互いに、プリント配線およびスルーホールなどにより電気的に接続されている。
【0011】
カートリッジ100が印刷装置20に装着された場合に、複数の端子121aは、印刷装置20の装置側I/F部36が備える端子と接触する。これにより、装置側制御部30は、回路基板120と電気信号の送受信、すなわち通信を行うことができる。
【0012】
メモリーIC130のI/F部131は、印刷装置20から出力された電気信号をメモリー制御部132に入力し、メモリー制御部132から出力された電気信号を印刷装置20に入力する。電気信号は、詳細には、XRST信号と、SCK信号と、SDA信号とを含む。なお、印刷装置20から、回路基板120に、図示しない電源電圧が供給される。
【0013】
メモリー制御部132は、不揮発性メモリー140の動作を制御する。具体的には、メモリー制御部132は、印刷装置20から送信されたコマンドに応じて不揮発性メモリー140に情報を書き込む書き込み動作を行う。また、メモリー制御部132は、印刷装置20から送信されたコマンドに応じて、不揮発性メモリー140から情報を読み出す読み出し動作を行う。
【0014】
本実施形態において、不揮発性メモリー140は、NAND型のフラッシュメモリーである。なお、他の実施形態として、不揮発性メモリー140は、NOR型のフラッシュメモリーやEEPROMなどのメモリーであってもよい。NAND型のフラッシュメモリーは、MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型でもよい。
【0015】
不揮発性メモリー140は、複数のメモリー領域を有する。複数のメモリー領域のそれぞれには、各メモリー領域を一義に特定するための物理アドレスが付与されている。
【0016】
不揮発性メモリー140は、第1メモリー領域群としての消費量領域141と、第2メモリー領域群としての制御領域142とを有する。消費量領域141は、カートリッジ100の情報が記憶される領域である。具体的には、液体収容部150に収容されている液体の消費量などが記憶される。制御領域142には、メモリー制御部132が消費量領域141に記憶されている情報を適切に読み出すためと、メモリー制御部132が消費量領域141に情報を適切に書き込むための情報であるバンク制御情報142aが記憶されている。消費量領域141は、後述する論理ページに対応付けられている。対して、制御領域142は、論理ページに対応付けられていない。
【0017】
上記したように、装置側制御部30と回路基板120との通信では、XRST信号と、SCK信号と、SDA信号とが用いられる。
図3は、XRST信号と、SCK信号と、SDA信号との波形図である。
図3に示すように、SCK信号は、クロック信号である。XRST信号は、メモリー制御部132に対して動作の許可と禁止とを制御する信号である。本実施形態では、XRST信号がハイレベルの場合に、メモリー制御部132の動作が許可される。SDA信号は、不揮発性メモリー140へ書き込む情報または、不揮発性メモリー140から読み出された情報を含む信号である。SDA信号に含まれる情報の順番は予め定められている。SDA信号に含まれる情報の順番は、先頭から順に、カートリッジ100の識別子であるID、読み出しと書き込みとのいずれかを指定するコマンド、論理アドレスに割り当てられた情報、である。SDA信号は、「1」を示すハイレベルと、「0」を示すローレベルとからなるパルス信号である。本実施形態では、SDA信号の波形は、SCK信号の立ち上がりエッジで、「1」と「0」とのいずれかが確定されるように設定されている。
【0018】
図4は、論理ページと、バンクと、物理アドレスとの対応を示す図である。
図4に示すように、不揮発性メモリー140は、複数の論理ページに区分けされている。論理ページは、装置側制御部30が不揮発性メモリー140に対する書き込み動作または読み込み動作を行う場合の最小単位である。1つの論理ページは、4つの論理アドレスにて構成されている。例えば、論理アドレス「A1」から「A4」までは、論理ページ「P1」に対応している。
図3に示すように、SDA信号に含まれる論理アドレスに割り当てられた情報は、論理アドレスの番号順、詳細には、アルファベット「A」に付加された数字の昇順に書き込み動作または読み込み動作が行われる。
【0019】
図4に示すように、本実施形態では、消費量情報は、論理ページ「P1」と論理ページ「P2」とに記憶されることが予め定められている。
【0020】
図1に示す不揮発性メモリー140は、所謂バンク方式のメモリーである。不揮発性メモリー140は、書き換え回数に上限がある。そこで、不揮発性メモリー140には、1つの論理ページに対して、複数のバンクが予め割り当てられている。本実施形態の不揮発性メモリー140は、1つの論理ページに対して、8つのバンクが予め用意されている。例えば、
図4に示すように、論理ページ「P4」には、バンク番号「P4_BANK1」からバンク番号「P4_BANK8」までの8つのバンクが割り当てられている。
【0021】
なお、バンクの数は、見積もられた情報の書き換え回数の最大値に従って、決定されるとよい。本実施形態では、液体収容部150に収容されているインクが使用されて空となるまでに、数万回程度の書き換えが必要である。また、メモリー領域の書き換えの上限は数千回で程度である。従って、本実施形態では、バンクの数が「8」に決められている。
【0022】
本実施形態では8つのバンクが用意されており、読み書きを行うバンクとして、8つのバンクのうち、1つのバンクが使用される。使用中の1つのバンクの書き換え回数が上限を上回った場合、すなわち使用不可能状態となった場合には、使用不可能状態となったバンクを除く7つのバンクのうちの1つのバンクが、読み書きを行うバンクとして使用される。このように、予め複数のバンクが用意されていることにより、不揮発性メモリー140の寿命を延ばすことができる。なお、使用可能であるか否かは、実際には、メモリー制御部132が、所謂ベリファイ動作を行うことによって判断される。具体的に、ベリファイ動作とは、メモリー制御部132が、対象のバンクに情報を書き込み、その後、対象のバンクから読み出した情報と、書き込んだ情報とを比較する動作である。書き込んだ情報と読み出した情報とが一致する場合には、使用可能状態であると判断される。対して、書き込んだ情報と読み出した情報とが一致しない場合には、使用不可能状態であると判断される。
【0023】
本実施形態では、上記のように、1つの論理ページに対して、8つのバンクが割り当てられている。対象の論理ページに対して、現在、どのバンクが割り当てられているかを示す情報を「ビットアサイン」と呼ぶ。バンク情報としてのビットアサインには、対応付けられている物理アドレスが使用可能状態であるか否かの情報が対応付けられている。使用可能情報か否かを示す情報を「バンクカウンタ」と呼ぶ。そして、ビットアサインと使用可能情報としてのバンクカウンタとを含む情報がバンク制御情報142aである。バンク制御情報142aは、論理ページが割り当てられていない物理アドレスに記憶されている。本実施形態では、物理アドレス「80h」と物理アドレス「81h」とに記憶されている。
【0024】
図5は、バンク制御情報142aにおけるバンクの割り当てについて説明する図である。
図6は、値が格納された状態のバンク制御情報142aを説明する図である。
図5と
図6とを比較することにより、各バンクが、どの物理アドレスに対応付けられているかを知ることができる。例えば、
図5に示すように、物理アドレス「80h」の「行0」の「ビット0」から「ビット7」は、バンク「P1_BANK1」に対応付けられている。そして、
図6に示すように、バンク「P1_BANK1」に対応付けられているビットのうち「ビット0」から「ビット6」には、「40h」を示す値が格納されている。よって、バンク「P1_BANK1」は、物理アドレス「40h」に対応していることがわかる。
【0025】
図5を用いて、バンク制御情報142aにおけるバンクの割り当てについて詳述する。上記のように、バンク制御情報142aは、物理アドレス「80h」と物理アドレス「81h」とに記憶されている。1つの物理アドレスは、「行0」から「行3」までの行番号が付された4行で構成されている。そして、1行は、「ビット0」から「ビット31」までのビット番号が付された32ビットで構成されている。なお、バンク制御情報142aにおける1つのビットは、不揮発性メモリー140の1つのメモリーセルに対応する。
【0026】
物理アドレス「80h」と物理アドレス「81h」とのそれぞれの物理アドレスの4行×32ビットのうち、8ビットが1つのバンクに割り当てられている。物理アドレス「80h」と物理アドレス「81h」とのそれぞれのビットと、バンクとの対応関係は、
図5に示す通りに、予め定められている。
【0027】
なお、バンク番号は、対応する論理ページを示す「P1」から「P4」までのいずれかの文字列と、8つのバンクのいずれかを示す「BANK1」から「BANK8」までのいずれかの文字列との組み合わせで表記されている。
【0028】
図6を用いて、値が格納されている状態のバンク制御情報142aについて説明する。上記のように、各バンクに対応する8ビットのうち、7ビットは、ビットアサインのために使用される。ビットアサインとして使用される7ビットには、物理アドレスの値が格納される。そして、各バンクに対応する8ビットのうち、1ビットは、バンクカウンタのために使用される。バンクカウンタとして使用される1ビットには、使用可能状態であることを示す第1値としての「1」と、使用不可能状態であることを示す第2値としての「0」とのいずれかの値が格納される。このように、1つのバンクに対応する8ビットには、バンクアサインと、バンクカウンタとが互いに対応付けられた情報が格納されている。
【0029】
図6に示すように、バンク制御情報142aにおいて、バンクカウンタと、物理アドレスとはバンク番号毎に記憶されている。ここで、「バンク番号毎に記憶されている」とは、バンクカウンタと、物理アドレスとが、同じ物理アドレスの連続するビットに記憶されていることをいう。このように、バンクカウンタと、物理アドレスとがバンク番号毎に記憶されていることにより、後述するリサイクルのための情報変更処理において、バンク制御情報142aの情報を効率的に変更することができる。
【0030】
上記のように、バンクカウンタの値が「1」の場合には、対応する物理アドレスは、使用可能状態であることを示す。バンクカウンタの値が「0」の場合には、対応する物理アドレスは、使用不可能状態であることを示す。従って、回路基板120が新品であり、未使用の初期状態では、
図6に示すように、全てのバンクカウンタの値は「1」に設定されている。
【0031】
メモリー制御部132は、バンク制御情報142aを読み出す場合に、行については、行番号の昇順に、1行においては、ビット番号の昇順に読み出すように予め定められている。具体的には、メモリー制御部132は、「行0」の「ビット0」から「ビット31」に向かって読み出し、次に「行1」の「ビット0」から「ビット31」に向かって読み出し、次に「行2」の「ビット0」から「ビット31」に向かって読み出し、次に「行3」の「ビット0」から「ビット31」に向かって読み出す。
【0032】
メモリー制御部132は、バンク制御情報142aを読み出した場合に、バンクカウンタの値が「1」である、対応する物理アドレスのうち、最初に読み出した物理アドレスを、現在使用している物理アドレスであると判断する。初期状態では、バンクカウンタは全て「1」であるため、論理ページ「P1」の現在使用しているバンクは、「P1_BANK1」であり、使用する物理アドレスは「40h」であると判断される。
【0033】
各バンクと、物理アドレスとの対応関係は、ビットアサインで規定されている。このため、ビットアサインの物理アドレスを書き換えることにより、バンク単位で、対応する物理アドレスを変更することができる。よって、後に詳述するように、回路基板120をリサイクルする場合に、未使用の物理アドレスを無駄なく使用することができる。
【0034】
A3.読み出し処理:
図7は、メモリー制御部132が、不揮発性メモリー140から情報を読み出す読み出し動作の手順を示す、読み出し処理のフローチャートである。装置側制御部30は、例えばカートリッジ100の液体収容部150の現在の消費量を取得したい場合に、メモリー制御部132に、不揮発性メモリー140の消費量領域141に記憶されている消費量の情報を読み出すように命令する。具体的には、消費量領域141の読み出しを指示するコマンドをメモリー制御部132に出力する。メモリー制御部132は、コマンドを受け取ると、読み出し処理を行う。
【0035】
ステップS1において、メモリー制御部132は、バンク制御情報142aを読み出す。具体的には、物理アドレス「80h」と物理アドレス「81h」との値を読み出す。ステップS3において、メモリー制御部132は、各論理ページにおいて、バンクカウンタが「1」である物理アドレスのうち、最初に読み出した物理アドレスを取得する。
【0036】
次のステップS13は、各論理ページについて実行される。ステップS13において、メモリー制御部132は、取得した物理アドレスから情報を読み出す。メモリー制御部132は、全ての論理ページについて、読み出しを終了すると、本処理ルーチンを終了する。
【0037】
A4.書き込み処理:
図8は、メモリー制御部132が、消費量領域141を書き込む書き込み動作の手順を示す、書き込み処理のフローチャートである。装置側制御部30は、例えばインクを消費する印刷処理を実行した後、カートリッジ100の液体収容部150に収容されているインクの現在の消費量を推定する。そして、メモリー制御部132に、不揮発性メモリー140の消費量領域141に記憶されている消費量を、推定した、現在の消費量に書き換えるように命令する。具体的には、消費量領域141の書き換えを指示するコマンドと、書き込むインク量とをメモリー制御部132に出力する。メモリー制御部132は、コマンドを受け取ると、書き込み処理を行う。上記の読み出し処理と同じ処理ステップについては、同一の符号を付し、詳細な説明は、適宜省略する。
【0038】
ステップS1において、メモリー制御部132は、バンク制御情報142aを読み出す。ステップS3において、メモリー制御部132は、各論理ページにおいて、バンクカウンタが「1」である物理アドレスのうち、最初に読み出した物理アドレスを取得する。
【0039】
次に実行するステップS11からステップS15は、上記したベリファイ動作である。ステップS11からステップS19の処理ステップは、各論理ページについて実行される。
【0040】
ステップS11において、メモリー制御部132は、対象の論理ページについて、ステップS3にて取得した物理アドレスに情報を書き込む。書き込む情報とは、装置側制御部30から入力された消費量の情報である。ステップS13において、メモリー制御部132は、ステップS3にて取得した物理アドレス、すなわち、ステップS11にて書き込んだ物理アドレスから情報を読み出す。ステップS15において、メモリー制御部132は、ステップS13にて読み出した情報は、ステップ11にて書き込んだ情報と一致しているか否かを判断する。情報が一致していないと判断した場合、ステップS11にて書き込んだ物理アドレスは、使用不可能状態であるため、メモリー制御部132は、ステップS17において、バンクカウンタの値を、「1」から「0」に書き換える。具体的には、メモリー制御部132は、バンク制御情報142aのステップS3にて取得した物理アドレスに対応するバンクカウンタを「0」に書き換える。なお、バンクカウンタは、不揮発性メモリー140のメモリーセルに記憶されている。そして、メモリーセルに書き込み動作を行うことによって、メモリーセルの値は、「1」から「0」に書き換えられる。
【0041】
ステップS19において、メモリー制御部132は、ステップS3にて取得した物理アドレスの、ステップS1で読み出した読み出し順における次の物理アドレスに情報を書き込む。
【0042】
ステップS15において、読み出した情報は、書き込んだ情報と一致していると判断した場合、ステップS11にて書き込んだ物理アドレスは使用可能状態であり、情報の書き込みに成功しているため、メモリー制御部132は、ステップS17とステップS19とをスキップする。
【0043】
メモリー制御部132は、すべての論理ページについて、情報の書き込みを終了すると、本処理ルーチンを終了する。
【0044】
ステップS15からステップS19について、
図6を用いて説明を追加する。例えば、論理ページ「P1」に情報を書き込む場合、バンク番号「P1_BANK1」に対応するバンクカウンタの値は「1」である。このため、メモリー制御部132は、ステップS11において、物理アドレス「40h」に情報を書き込む。仮に、メモリー制御部132が、ステップS15において、物理アドレス「40h」は使用不可能状態であると判断した場合には、物理アドレス「40h」に対応するバンクカウンタの値を「0」に書き換える。次に、メモリー制御部132は、次の物理アドレスである物理アドレス「44h」に情報を書き込む。ステップS17にて、バンクカウンタの値は「0」に書き換えられるため、次回の書き込み処理では、読み出し順で、最初にバンクカウンタの値が「1」である、物理アドレス「44h」に情報が書き込まれることになる。
【0045】
A5.リサイクル工程:
図9は回路基板120のリサイクル工程に使用されるリサイクルシステム200を説明する図である。リサイクルシステム200は、情報処理装置210と、回路基板120とを備える。カートリッジ100は、市場で使用された後、リサイクルのために回収される。リサイクル工程において、回収されたカートリッジ100から、回路基板120は取り外される。リサイクル工程において、取り外された回路基板120の不揮発性メモリー140の情報は、情報処理装置210によって書き換えられる。
【0046】
情報処理装置210は、CPU211と、メモリー212と、基板I/F部213とを備えるコンピューターとして構成されている。メモリー212は、RAMやROMである。メモリー212には、後述する情報変更処理のプログラムを含む種々のプログラムが記憶されている。CPU211は、メモリー212に記憶されているプログラムを実行して種々の機能を発揮する。CPU211は、機能部である情報変更部214を有する。情報変更部214は、CPU211が後述する情報変更処理のプログラムを実行することにより実現される。基板I/F部213は、回路基板120が有する端子121aと接触可能な複数の端子を備える。基板I/F部213に回路基板120が装着されることにより、端子121aと基板I/F部213の端子とを通じて電気信号が入出力されることにより、CPU211は、基板I/F部213を介して、回路基板120と通信する。
【0047】
図10は、回路基板120をリサイクルするために行われる、情報変更方法を実現する情報変更処理の手順を示すフローチャートである。上記のように、
図1に示す回路基板120の不揮発性メモリー140の消費量領域141は、複数の物理アドレスに対応する複数のバンクに区分けされている。そして、バンク制御情報142aによって、使用すべき物理アドレスが指定されている。市場において、使用不可能状態であると判断された物理アドレスに対応するバンクカウンタの値は「0」と設定されている。そこで、次に説明する情報変更処理において、対応するバンクカウンタの値が「0」と設定されているバンクについては、新たな物理アドレスを割り当てることにより、リサイクル品である回路基板120についても、各論理ページに対して、8つのバンクを割り当てる。
【0048】
図10のステップS21において、情報変更部214は、基板I/F部213に装着されている回路基板120のバンク制御情報142aを読み出す。ステップS23において、情報変更部214は、読み出したバンク制御情報142aのバンクカウンタの値は全て「1」か否かを判断する。バンクカウンタの値がすべて「1」でないと判断した場合、情報変更部214は、ステップS25において、バンクカウンタの値が「0」である物理アドレスに未使用の物理アドレスを割り当てる。具体的には、情報変更部214は、予め定められて規則に従って、バンクカウンタの値が「0」である物理アドレスを、未使用の複数の物理アドレスのうち、いずれの物理アドレスに変更するかを決定する。ステップS27において、情報変更部214は、バンク制御情報142aのビットアサインを、新しく割り当てた物理アドレスに書き換えるとともに、対応するバンクカウンタの値を「1」に書き換えて、本処理ルーチンを終了する。
【0049】
バンクカウンタの値がすべて「1」であると判断した場合、バンク制御情報142aを書き換える必要はないため、情報変更部214は、ステップS25とステップS27とをスキップして、本処理ルーチンを終了する。
【0050】
ステップS25について、
図11を用いて説明する。
図11は、情報変更処理における物理アドレスの変更を説明する図である。
図11に例示するバンク制御情報142aは、対応するバンクカウンタの値が「0」である物理アドレスは、バンク番号「P1_BANK1」に対応する物理アドレス「40h」と、バンク番号「P2_BANK1」に対応する物理アドレス「41h」である。そこで、ステップS27にて、バンク番号「P1_BANK1」に対応する物理アドレスは「60h」に、バンク番号「P2_BANK1」に対応する物理アドレス「62h」にそれぞれ書き換えられる。このように、バンク番号と物理アドレスとの対応関係は、バンク制御情報142aにて、バンク毎に規定されているため、未使用の物理アドレスを無駄なく使用することができる。
【0051】
情報変更処理が実行された回路基板120は、再び、カートリッジ筐体100aに取り付けられる。情報変更処理が実行された回路基板120が取り付けられた、リサイクル品のカートリッジ100は、市場で使用される。
【0052】
図12は、論理ページと、バンクと、物理アドレスとの対応関係を説明する図である。リサイクル品のカートリッジ100が使用される場合、新品の場合と同様に、装置側制御部30は、論理アドレスの番号に従って、回路基板120の読み出し動作または書き込み動作を行う。メモリー制御部132は、バンク制御情報142aに従って、論理ページ「P1」については、バンク番号「P1_BANK1」に対応する物理アドレス「60h」に対して、読み出しまたは書き込みを行う。また、メモリー制御部132は、バンク制御情報142aに従って、論理ページ「P2」については、バンク番号「P2_BANK1」に対応する物理アドレス「62h」に対して、読み出し動作または書き込み動作を行う。そして、装置側制御部30は、カートリッジ100が新品であるかリサイクル品かに拘わらず、論理アドレス「A1」から順番に読み出し動作または書き込み動作を行う。
【0053】
A6.比較するリサイクル方法:
図13は、上記したリサイクル方法とは異なる、比較するリサイクル方法である、比較例としての比較方法を説明する図である。比較方法は、新品だけではなく、リサイクル品における論理ページとバンクに対応する物理アドレスとが、予め定められている点が、上記した実施形態とは異なる。
【0054】
図13に示すように、新品にて使用される論理ページは、実施形態と同様に、論理ページ「P1」および論理ページ「P2」である。そして、リサイクル品にて使用される論理ページは、論理ページ「P3」および論理ページ「P4」である。なお、理解を容易にするために、リサイクルが複数回行われる場合についての詳細な説明は省略するが、2回目以降のリサイクル品では、論理ページ「P5」以降が使用される。
【0055】
そして、比較方法では、バンク番号と物理アドレスとの対応関係も予め定められており、リサイクル工程において、対応関係を示す情報が書き換えられることはない。詳述すると、実施形態では、制御領域142にバンク制御情報142aが記憶されており、リサイクル工程において、バンク制御情報142aは書き換えられる。これに対して、比較方法では、制御領域142にバンク制御情報142aは記憶されていない。
【0056】
比較方法でも、実施形態と同様に、論理ページに対して、8つのバンクが用意されている。そして、使用しているバンクが使用不可能状態であると判断され場合には、使用可能状態であるバンクが使用される点も実施形態と同じである。ただし、実施形態では、バンクが使用可能であるか否かの判断がバンク制御情報142aを参照して行われるのに対して、比較方法では、
図14に示す形態のバンクカウンタ情報を用いて行われる点が異なる。
【0057】
図14は、比較方法における、バンクカウンタ情報を説明する図である。
図14に示すように、バンクカウンタ情報は、物理アドレス「80h」の1行に格納されている。32ビットのうち、「ビット0」から「ビット7」が、論理ページ「P1」のバンクに対応する。32ビットのうち、「ビット8」から「ビット15」が、論理ページ「P2」のバンクに対応する。32ビットのうち、「ビット16」から「ビット23」が、論理ページ「P3」のバンクに対応する。32ビットのうち、「ビット24」から「ビット31」が、論理ページ「P4」のバンクに対応する。8ビットのそれぞれのビットは、1つの論理ページに対応する8つのバンクのいずれかのバンクに対応付けられている。具体的には、「ビット0」は、論理ページ「P1」の1番目のバンクであるバンク番号「P1_BANK1」に対応し、「ビット1」は、2番目のバンクであるバンク番号「P1_BANK2」に対応し、「ビット7」は、8番目のバンクであるバンク番号「P1_BANK8」に対応する。
【0058】
メモリー制御部132は、実施形態と同様に、「ビット0」から「ビット31」に向かって順に値を読み出す。また、ビットの値が「1」である場合に、対応する物理アドレスが使用可能状態であることを示し、ビットの値が「0」である場合に、対応する物理アドレスが使用不可能状態であることを示す点も、実施形態と同様である。そして、各論理ページついて、メモリー制御部132は、読み出し順において、値が「1」であるビットのうち、最初に読み出したビットに対応するバンク番号に対応する物理アドレスを使用する。なお、バンク番号と物理アドレスとの対応関係は、
図13に示す通りである。具体的に説明すると、
図14では、論理ページ「P1」に対応する8ビットの値のすべてが「1」であるので、「ビット0」に対応するバンク番号「P1_BANK1」に対応する物理アドレス「40h」が使用される。
図14に示す場合と異なり、仮に、バンク番号「P1_BANK1」に対応する「ビット0」の値が「0」であり、バンク番号「P1_BANK2」に対応する「ビット1」の値が「1」である場合には、バンク番号「P1_BANK2」に対応する物理アドレス「44h」が使用される。
【0059】
比較方法では、回路基板120をリサイクルする場合には、
図13に示す論理ページ「P3」および論理ページ「P4」が使用される。具体的には、回路基板120が新品であるか、リサイクル品であるかを示すリサイクル情報が、使用されていない論理アドレスに記憶されている。そして、装置側制御部30が、回路基板120に対して、の書き込み動作または読み出し動作を行う場合には、リサイクル情報が参照されて、リサイクル情報が示す論理ページが使用される。
【0060】
比較方法と実施形態とを比較する。比較方法では、論理ページと、バンクおよび物理アドレスとの対応関係が予め定められており、リサイクル品では、新品に対応する物理アドレスが使用可能状態であるか否かに拘わらず、1つの論理ページにつき、新品に対応付けられた8つの物理アドレスは、リサイクル品では使用されない。この点、実施形態では、新品に対応する物理アドレスのうち、使用不可能状態である物理アドレスについては、リサイクル品では使用されない。つまり、比較方法では、新品にて使用されていた16つの物理アドレスは、リサイクル品では、常に使用されない。なお、新品にて16つの物理アドレスが使用されるのは、新品について、論理ページ「P1」と論理ページ「P2」との2つの論理ページが使用され、1つの論理ページにつき、8つの物理アドレスが用意されているため、2×8で16の物理アドレスが割り当てられているためである。これに対して、実施形態では、1つの論理ページについて、新品にて使用されていた8つの物理アドレスのうち、使用不可能状態となった物理アドレスが使用されない。よって、実施形態では、物理アドレスを無駄なく使用することができる。
【0061】
また、比較方法では、装置側制御部30が、回路基板120に対して、読み出し動作、または書き込み動作を行う場合に、新品かリサイクル品かに応じて、使用する論理ページを変更する必要が生じる。この点、本実施形態では、新品かリサイクル品か拘わらず、論理ページ「P1」および論理ページ「P2」を使用すればよいため、装置側制御部30は制御を変更する必要がない。さらに、比較方法では、リサイクル品の場合には、装置側制御部30は、論理ページ「P3」および論理ページ「P4」を使用すれば良いが、
図3を用いて説明したように、通信における情報の順番は予め定められているため、論理ページの読み出しを行う場合に、装置側制御部30が論理ページ「P3」および論理ページ「P4」だけを読み出したい場合であっても、論理ページ「P1」および論理ページ「P2」を読み出す必要がある。このため、読み出し動作に時間がかかる。書き換え動作の場合も同様である。この点、本実施形態では、リサイクル品についても、装置側制御部30は、論理ページ「P1」および論理ページ「P2」を使用するため、リサイクル品の場合に、新品の場合よりも読み出し動作および書き込み動作に時間がかかることがない。
【0062】
ステップS27を情報変更ステップまたは第1情報変更ステップと呼ぶ。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、メモリー制御部132は、ステップS15において、物理アドレスが使用不可能状態であると判断した場合に、ステップS17において、バンクカウンタの値を、使用不可能状態であることを示す「0」に書き換えて変更する。これにより、バンク制御情報142aのバンクカウンタによって、各物理アドレスについて、使用可能状態であるか否かを管理することができる。よって、複数のメモリー領域を有する不揮発性メモリー140において、複数のメモリー領域のいずれかが使用可能状態である場合に、使用可能状態であるメモリー領域を有する回路基板120をリサイクル品として使用することができる。このように、不揮発性メモリー140の書き換え回数ではなく、複数のメモリー領域のそれぞれの使用可能情報を管理することにより、不揮発性メモリー140をリサイクルできるか否かを適切に判断することができる。
【0064】
また、制御領域142には、バンク番号と物理アドレスとの1対1の対応関係を示す情報であるビットアサインが記憶されている。よって、回路基板120をリサイクルするため情報変更処理において、ビットアサインの使用不可能状態である物理アドレスを未使用の物理アドレスに変更することにより、未使用の物理アドレスを無駄なく利用することができる。
【0065】
また、バンクカウンタは、バンク番号と対応付けられている。そして、バンク制御情報142aにおいて、バンクカウンタとバンクアサインの物理アドレスとは、バンク番号毎に記憶されている。具体的には、同じバンク番号に対応する、バンクカウンタとバンクアサインの物理アドレスとは、バンク制御情報142aの連続するビットに記憶されている。よって、リサイクルするための情報変更処理のステップS27において、互いに連続するバンクカウンタと、物理アドレスとを効率的に書き換えることができる。
【0066】
また、不揮発性メモリー140はフラッシュメモリーであり、ステップS17では、書き込み動作を行うことによって、バンクカウンタの値を「1」から「0」に変更する。一般に、フラッシュメモリーは、値「0」から値「1」に変更する消去動作よりも、書き込み動作の方が、劣化が進む。よって、市場では、バンク制御情報142aの情報を変更する場合に、書き込み動作のみ行われるため、劣化を抑制することができる。
【0067】
また、装置側制御部30は、回路基板120と通信する場合に、複数の論理ページを使用して、論理ページの番号順に通信を行う。このような場合に、リサイクルのための情報変更処理では、バンク制御情報142aの物理アドレスが変更されることにより、論理ページに対応付けられる物理アドレスが変更されるため、装置側制御部30は、新品かリサイクル品かに拘わらず、同じ論理ページを使用することができる。
【0068】
また、情報変更処理では、情報変更ステップおよび第1情報変更ステップとしてのステップS27において、バンクカウンタの値が「1」に変更されるとともに、物理アドレスが未使用の物理アドレスに変更される。これにより、未使用の物理アドレスを無駄なく利用することができる。
【0069】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、リサイクル工程の情報変更処理において、バンクアサインの情報が変更される。また、上記実施形態では、不揮発性メモリー140には、バンクアサインの情報の変更を禁止する禁止フラグは記憶されていない。他の実施形態として、不揮発性メモリー140に、バンクアサインの情報の変更を禁止する禁止フラグを記憶させてもよい。そして、メモリー制御部132は、禁止フラグが記憶されている場合には、バンクアサインの情報の変更する書き込み動作を禁止するようにしてもよい。これにより、市場におけるバンクアサインの情報の誤った変更を抑制することができる。
【0070】
(B2)上記実施形態では、情報変更処理において、バンクカウンタの値が「0」である物理アドレスが未使用の物理アドレスに変更される。これに加えて、リサイクル前に書き込み動作と読み出し動作との少なくとも何れか一方が行われた物理アドレスについても、未使用の物理アドレスに変更してもよい。具体的には、情報変更処理において、バンク制御情報142aの読み出し順において、バンクカウンタの値が「0」である物理アドレスの次に読み出された、バンクカウンタの値が「1」である物理アドレスを未使用の物理アドレスに変更する第2情報変更ステップを行ってもよい。なお、バンクカウンタの値が「0」の物理アドレスが無い場合には、1番目のバンク番号に対応する物理アドレスを未使用の物理アドレスに変更する。これにより、リサイクル品の回路基板120にて、消費量領域141として、使用済みの物理アドレスが使用されることがないため、リサイクル後の不揮発性メモリー140における消費量などの情報の書き換え回数を適切に確保することができる。
【0071】
上記の第2情報変更ステップについて、より具体的に説明する。上記実施形態における情報変更処理のS27では、
図11に例示された場合では、バンク番号「P1_BANK1」に対応する物理アドレスが物理アドレス「60h」に変更される。読み出し動作の読み出し順において、次の物理アドレスである物理アドレス「44h」のバンクカウンタの値は「1」であるため、使用可能状態であるが、市場において使用済みの物理アドレスである。そこで、第2情報変更ステップでは、バンク番号「P1_BANK2」に対応する物理アドレス「44h」を未使用の物理アドレスに変更する。これにより、リサイクル品の回路基板120にて、消費量領域141として使用される物理アドレスは、すべて未使用の物理アドレスとなるため、消費量領域141の書き換え回数を適切に確保することができる。
【0072】
(B3)上記実施形態では、リサイクルシステム200において、回路基板120は、カートリッジ100から取り外された状態で不揮発性メモリー140に記憶されている情報の書き換えが行われる。他の実施形態として、回路基板120は、カートリッジ100に取り付けられた状態で、不揮発性メモリー140の情報の書き換えが行われてもよい。
【0073】
(B4)本開示は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の印刷装置及びそのカートリッジにも適用することができる。例えば、以下のような各種の印刷装置及びそのカートリッジに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材を噴射する印刷装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材を噴射する印刷装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する印刷装置
(5)精密ピペットとしての試料印刷装置
(6)潤滑油の印刷装置
(7)樹脂液の印刷装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する印刷装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する印刷装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する印刷装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える印刷装置
【0074】
なお、「液滴」とは、印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0075】
C.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0076】
(1)本開示の一形態によれば、液体収容容器に搭載される記憶装置が提供される。この記憶装置は、複数のメモリー領域を有する書き換え可能なメモリーと、前記メモリーを制御するメモリー制御部と、を有し、前記複数のメモリー領域は、論理ページに対応付けられた第1メモリー領域群と、前記論理ページに対応付けられていない第2メモリー領域群とを有し、前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記第1メモリー領域群のそれぞれのメモリー領域に対応付けられた使用可能情報であって、前記メモリー領域が使用可能状態である場合には第1値に設定され、前記メモリー領域が使用不可能状態である場合には第2値に設定される使用可能情報が記憶されており、前記メモリー制御部は、前記メモリーへの書き込み動作と前記メモリーからの読み出し動作とのいずれかを行う場合、前記第1メモリー領域群の前記複数のメモリー領域のうち、前記使用可能情報の値が前記第1値である前記メモリー領域に対して書き込みと読み出しとのいずれかを行い、前記第1メモリー領域群のいずれかのメモリー領域が使用不可能であると判断した場合、使用不可能であると判断した前記メモリー領域に対応する前記使用可能情報の値を前記第1値から前記第2値に変更する。この形態によれば、各メモリー領域について、使用可能であるか否かを使用可能情報にて管理することができるため、メモリーをリサイクルできるか否かを適切に判断することができる。
【0077】
(2)上記形態の記憶装置において、前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記論理ページと前記第1メモリー領域群とを対応づけるためのバンク情報が記憶されており、前記バンク情報は、前記論理ページに対応付けられた複数のバンクのそれぞれのバンク番号と、前記第1メモリー領域群のそれぞれのメモリー領域を特定する物理アドレスとの1対1の対応関係を示す情報であってもよい。この形態によれば、記憶装置をリサイクルする場合に、バンク情報の物理アドレスを使用済みの物理アドレスから未使用の物理アドレスに変更することによって、未使用のメモリー領域を無駄なく利用することができる。
【0078】
(3)上記形態の記憶装置において、前記使用可能情報は、前記バンク番号と対応付けられており、前記使用可能情報と前記バンク情報の前記物理アドレスとは、前記バンク番号毎に記憶されていてもよい。この形態によれば、記憶装置をリサイクルする場合に、バンク番号を用いて、使用可能情報とバンク情報の物理アドレスとを効率的に書き換えできる。
【0079】
(4)上記形態の記憶装置において、前記メモリーはフラッシュメモリーであり、前記使用可能情報はメモリーセルに記憶されており、前記使用可能情報の値は初期状態において前記第1値に設定されており、前記メモリー制御部は、前記メモリーセルに対して書き込み動作を行うことによって、前記第1値から前記第2値に変更してもよい。この形態によれば、メモリー領域が使用可能か否かを管理するために必要な使用可能情報の更新を、書き込み動作を行って達成できるため、消去動作を行う場合よりもメモリーセルの寿命を長くすることができる。
【0080】
(5)上記形態の記憶装置において、前記第2メモリー領域群のいずれかのメモリー領域には、前記バンク情報の書き換えを禁止する禁止フラグが記憶されており、前記メモリー制御部は、前記禁止フラグが記憶されている場合、前記バンク情報の変更を行わなくてもよい。この形態によれば、バンク情報の不要な書き換えを抑制することができる。
【0081】
(6)上記形態の記憶装置において、前記メモリー制御部は、前記メモリーに書き込む情報と、前記メモリーから読み出す情報とのいずれかの情報の通信を外部装置と行う場合に、前記論理ページを複数用い、前記バンク番号と対応付けられた前記複数の論理ページの番号順に通信してもよい。この形態によれば、論理ページとバンク番号とを対応付け、記憶装置をリサイクルする場合には、バンク情報のバンク番号に対応付けられている物理アドレスを変更することにより、外部装置は、記憶装置が新品かリサイクル品かに拘わらず、同じ手順で、所望の情報を読み出しまたは書き込みすることができる。また、頻繁に情報の通信が行われる情報を論理ページの最初のページに対応付けることにより、外部装置による、読み出し動作または書き込み動作の所要時間が長くなることを抑制することができる。
【0082】
(7)上記形態の記憶装置のリサイクル方法であって、前記使用可能情報は、前記バンク番号と対応付けられており、前記バンク情報について、前記使用可能情報の値が前記第2値である前記バンク番号に対応する前記物理アドレスを前記第2メモリー領域群の未使用である前記メモリー領域に対応する前記物理アドレスに変更するとともに、対応する前記使用可能情報の値を前記第2値から前記第1値に変更する情報変更ステップを備えていてもよい。この形態によれば、メモリー領域毎に物理アドレスを変更できるため、使用済みの物理アドレスを未使用の物理アドレスに変更することにより、未使用のメモリー領域を無駄なく利用することができる。
【0083】
(8)上記形態のリサイクル方法において、前記情報変更ステップは、第1情報変更ステップであり、前記バンク情報について、前記使用可能情報の値が前記第1値である前記バンク番号に対応する前記物理アドレスのうち、リサイクル前に書き込み動作と読み出し動作との少なくともいずれか一方が行われた前記メモリー領域に対応する前記物理アドレスを前記第2メモリー領域群の未使用である前記メモリー領域に対応する前記物理アドレスに変更するとともに、対応する前記使用可能情報の値を前記第2値から前記第1値に変更する第2情報変更ステップをさらに備えてもよい。この形態によれば、市場において使用されていたメモリー領域を、リサイクル後に使用しないことにより、リサイクル後の記憶装置における情報の書き換え回数を適切に確保することができる。
【0084】
本開示は、上記形態の他に、カートリッジ、カートリッジのリサイクル方法などの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…印刷システム、20…印刷装置、30…装置側制御部、32…搬送部、34…吐出ヘッド、36…装置側I/F部、100…カートリッジ、100a…カートリッジ筐体、120…回路基板、120a…基板、121a…端子、130…メモリーIC、131…I/F部、132…メモリー制御部、140…不揮発性メモリー、141…消費量領域、142…制御領域、142a…バンク制御情報、150…液体収容部、200…リサイクルシステム、210…情報処理装置、211…CPU、212…メモリー、213…基板I/F部、214…情報変更部