(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172107
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】回転体への対象物挿入方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089629
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】田口 誠
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS12
3C707BS15
3C707BS26
3C707BT06
3C707CT05
3C707CV06
3C707CX01
3C707CX03
3C707DS01
3C707ES03
3C707FS01
3C707FS06
3C707HS27
3C707HT25
3C707HT26
3C707KS34
3C707KS35
3C707KT01
3C707KW03
3C707KX07
(57)【要約】
【課題】回転体の回転を止めることなく対象物の挿入作業を効率よく行い得る回転体への対象物挿入方法およびロボットシステムを提供すること。
【解決手段】ロボットアームを備えるロボットを用い、前記ロボットアームに把持されている対象物を、回転している回転体の被挿入部に挿入する方法であって、前記ロボットが、前記回転体の回転に前記対象物を追従させる追従制御により、前記対象物を移動させる動作を行いながら、前記対象物が前記回転体から受ける力に基づく力制御により、前記対象物を前記被挿入部に挿入する動作を行うことを特徴とする回転体への対象物挿入方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを備えるロボットを用い、前記ロボットアームに把持されている対象物を、回転している回転体の被挿入部に挿入する方法であって、
前記ロボットが、前記回転体の回転に前記対象物を追従させる追従制御により、前記対象物を移動させる動作を行いながら、前記対象物が前記回転体から受ける力に基づく力制御により、前記対象物を前記被挿入部に挿入する動作を行うことを特徴とする回転体への対象物挿入方法。
【請求項2】
前記力制御は、前記被挿入部の被挿入軸に平行な方向の並進力が一定になるように、前記対象物を前記回転体に押し付ける定荷重制御を含む請求項1に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項3】
前記力制御は、前記被挿入部の被挿入軸に交差する方向の並進力がゼロに近づくように、前記対象物を前記被挿入部に倣わせる第1倣い制御を含む請求項1に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項4】
前記力制御は、前記対象物が受けるトルクがゼロに近づくように、前記対象物を前記被挿入部に倣わせる第2倣い制御を含む請求項1に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項5】
前記被挿入部の被挿入軸は、前記回転体の回転軸に対して交差している請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項6】
前記回転体は、複数の前記被挿入部を備えており、
前記被挿入部の被挿入軸と前記回転軸との交差角度は、前記被挿入部同士で互いに異なっている請求項5に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項7】
前記対象物を挿入する動作は、前記対象物が受ける力に基づいて、前記対象物の挿入が完了したことを検出する処理を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項8】
前記対象物の挿入軸に直交する平面による前記対象物の断面形状は、非等方形状である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回転体への対象物挿入方法。
【請求項9】
回転している回転体の被挿入部に対象物を挿入するロボットシステムであって、
前記対象物を把持する把持部、前記対象物が前記回転体から受ける力を検出する力検出部および前記把持部が取り付けられているロボットアームを備えるロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記回転体の回転に前記対象物を追従させる追従制御により、前記対象物を移動させる追従制御部と、
前記対象物が前記回転体から受ける力に基づく力制御により、前記対象物を前記被挿入部に挿入させる力制御部と、
を有することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体への対象物挿入方法およびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の生産現場においてロボットの導入が検討されている。例えば、特許文献1に記載の飛出し玩具は、飛出し部材と、飛出し部材の装填部および複数の差込み孔が設けられた筐体と、差込み孔に差し込まれる差込み物と、を備える玩具である。この玩具は、複数の差込み孔のうち、所定の1つに差込み物を差し込んだとき、飛出し部材が飛び出すように構成されている。このため、玩具の製造、検査、展示、販売等の各過程では、差込み孔に差込み物を差し込む作業が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボット等を用いて上記の差し込む作業を自動化することは、各過程の作業効率を高める上で有用である。しかしながら、特許文献1に記載の玩具では、差込み孔に対して差込み物を正対させる必要がある。したがって、ロボット等に保持させた差込み物を大きく移動させる必要があり、作業に時間がかかる。
【0005】
一方、特許文献1に記載の飛出し玩具では、筐体が樽状をなしている。そして、筐体の周壁の円周方向において所定の間隔で差込み孔が設けられている。このため、差込み孔に差込み物を差し込む作業は、筐体を中心軸まわりに回しながら行えば、作業効率を容易に高められる。ところが、このように回転している筐体に対して差込み物を差し込む作業を自動化することは、これまで検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の適用例に係る回転体への対象物挿入方法は、
ロボットアームを備えるロボットを用い、前記ロボットアームに把持されている対象物を、回転している回転体の被挿入部に挿入する方法であって、
前記ロボットが、前記回転体の回転に前記対象物を追従させる追従制御により、前記対象物を移動させる動作を行いながら、前記対象物が前記回転体から受ける力に基づく力制御により、前記対象物を前記被挿入部に挿入する動作を行う。
【0007】
本発明の適用例に係るロボットシステムは、
回転している回転体の被挿入部に対象物を挿入するロボットシステムであって、
前記対象物を把持する把持部、前記対象物が前記回転体から受ける力を検出する力検出部および前記把持部が取り付けられているロボットアームを備えるロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記回転体の回転に前記対象物を追従させる追従制御により、前記対象物を移動させる追従制御部と、
前記対象物が前記回転体から受ける力に基づく力制御により、前記対象物を前記被挿入部に挿入させる力制御部と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るロボットシステムの構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すロボットシステムを用いて回転している回転体に対象物を挿入する方法(実施形態に係る回転体への対象物挿入方法)を説明するための平面図である。
【
図3】
図1に示すロボットシステムの機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る回転体への対象物挿入方法の構成を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための平面図である。
【
図6】
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための平面図である。
【
図7】
図2の断面図であって、
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための断面図である。
【
図8】
図5の断面図であって、
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための断面図である。
【
図9】
図6の断面図であって、
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための断面図である。
【
図10】第1変形例に係る回転体への対象物挿入方法を説明するための側面図である。
【
図11】第2変形例に係る回転体への対象物挿入方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の回転体への対象物挿入方法およびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
1.ロボットシステム
まず、実施形態に係るロボットシステムについて説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るロボットシステム100の構成の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すロボットシステム100を用いて回転している回転体8に対象物82を挿入する方法(実施形態に係る回転体への対象物挿入方法)を説明するための平面図である。
【0012】
なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸としてX軸、Y軸およびZ軸を設定している。各軸を矢印で表し、矢印の先端側を「プラス」、矢印の基端側を「マイナス」とする。以下の説明で、例えば「X軸方向」とは、X軸のプラス方向およびマイナス方向の双方を含む。Y軸方向およびZ軸方向も同様である。また、以下の説明では、特に、Z軸プラス側を「上方」ともいい、Z軸マイナス側を「下方」ともいう。
【0013】
図1に示すロボットシステム100は、回転台9上に載置された回転体8に対し、対象物82を挿入する作業を行う。
図1および
図2に示す回転体8は、Z軸と平行な中心軸を有する円柱状をなしている。なお、回転体8の形状は、円柱状に限定されず、いかなる形状であってもよい。例えば、回転体8の外側面が湾曲して樽のような形状をなしていてもよいし、底面の形状が六角形、八角形のような各種の多角形であってもよいし、底面の形状が楕円、長円のような各種の円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、回転体8は、柱状以外の形状、例えば、内部が空洞な筒状であってもよいし、円錐、角錐のような錐状であってもよいし、内部が空洞な錐状であってもよい。
【0014】
回転体8の外側面80には、複数の被挿入部81が設けられている。
図1および
図2に示す被挿入部81は、被挿入軸AX2に沿って延在し、外側面80に開口する円柱状の穴である。被挿入軸AX2とは、被挿入部81に対象物82を挿入するとき、対象物82を沿わせる軸を指す。開口の形状は、円である。ロボットシステム100は、被挿入部81の被挿入軸AX2に沿って、対象物82を挿入する。以下、対象物82を挿入する作業を「対象物挿入作業」という。被挿入部81の開口は、外側面80の周方向に沿って等間隔に並んでいる。なお、被挿入部81の形状や配置は、特に限定されない。例えば、被挿入部81は、後述するように、円柱状以外の形状をなしていてもよい。また、被挿入部81は、
図2に示す有底の穴の他、貫通孔であってもよい。さらに、
図1に示す被挿入部81の開口は、閉じた形状(円形)になっているが、これに限定されず、一部が開いた形状になっていてもよい。また、被挿入部81の配置は、不等間隔であってもよいし、周方向だけでなく、軸方向にも並んでいてもよい。
【0015】
図1に示すロボットシステム100は、ロボット1と、カメラ4と、制御装置5と、を備える。ロボット1は、把持部17、力覚センサー3(力検出部)およびロボットアーム10を備える。カメラ4は、回転台9によって回転させられる回転体8の外側面80を撮像する。制御装置5は、ロボット1の動作を制御し、前述した対象物挿入作業を行わせる。具体的には、ロボットアーム10に取り付けられた把持部17に対象物82を把持させた状態で、力覚センサー3が検出した力の向きや大きさに基づいてロボットアーム10の姿勢を変化させることにより、対象物82が被挿入部81に挿入される。
【0016】
回転台9上に載置された回転体8は、その中心軸が回転軸AX1となって、例えば
図1に矢印R0で示すように回転する。このため、回転体8の外側面80のうち、ロボットシステム100が対象物挿入作業を行い得る角度範囲を「作業範囲R1」とするとき、回転体8の回転に伴って、異なる被挿入部81が次々と作業範囲R1に入ることになる。したがって、作業範囲R1に入った被挿入部81に対してロボットシステム100が対象物挿入作業を行うことにより、ロボットアーム10の姿勢変化を少なく抑えることができる。これにより、対象物挿入作業のサイクルタイムの短縮を図り、対象物挿入作業を効率よく行うことができる。
【0017】
回転台9は、所定の回転速度で回転する回転テーブル91と、回転テーブル91の回転速度を検出するエンコーダー93と、を備える。エンコーダー93は、例えば、回転テーブル91の回転軸やモーター等に取り付けられたロータリーエンコーダーである。エンコーダー93で検出された回転速度等の回転情報は、制御装置5に出力される。制御装置5は、回転情報に基づいて、回転テーブル91上に載置されている回転体8の被挿入部81の位置を推定する。なお、回転台9は、必要に応じて設けられればよく、回転体8自体が回転する機能を有している場合には、省略されていてもよい。また、回転台9は、例えば回転体8を上方から吊り下げた状態で回転させる機器等でも代替可能である。
【0018】
1.1.ロボット
図1に示すロボット1は、一例として、6軸の垂直多関節ロボットである。なお、ロボット1は、水平多関節ロボット(スカラロボット)であってもよいし、双腕型の多関節ロボットであってもよい。
【0019】
図1に示すロボット1は、基台110と、ロボットアーム10と、把持部17と、力覚センサー3(力検出部)と、を備える。
【0020】
基台110は、ロボットアーム10を設置箇所に取り付ける部分である。本実施形態では、基台110が床に設置されている。なお、基台110の設置箇所は、床等に限定されず、例えば、壁、天井、架台上、移動可能な台車上等であってもよい。
【0021】
ロボットアーム10は、アーム11、アーム12、アーム13、アーム14、アーム15、アーム16を有する。これらアーム11~アーム16は、基端側から先端側に向かってこの順に連結されている。アーム11~アーム16は、隣り合うアームまたは基台110に対して回動可能になっている。アーム16は、円盤状をなし、アーム15に対して軸O6まわりに回動可動になっている。
【0022】
ロボット1は、アーム同士の関節部またはアームと基台110との関節部に設けられた、図示しない駆動部を有する。この駆動部は、モーターおよび減速機等を備える。モーターとしては、例えば、ACサーボモーター、DCサーボモーター等のサーボモーターが挙げられる。減速機としては、例えば、遊星ギア型の減速機、波動歯車装置等が挙げられる。また、ロボット1は、モーターまたは減速機の回転軸の回転角度を検出する、図示しない角度センサーを有する。角度センサーとしては、例えば、ロータリーエンコーダー等が挙げられる。これらの駆動部および角度センサーは、例えば各関節部に設けられている。駆動部の動作は、角度センサーによる検出結果に基づいて、制御装置5により制御される。
【0023】
1.2.把持部
ロボットアーム10には、
図1に示すように、力覚センサー3を介して把持部17が取り付けられている。把持部17は、対象物82を把持する機能を有する。
【0024】
図1に示す把持部17は、一対のチャック171、171を有する。チャック171同士の間隔を調整することにより、把持部17で対象物82を把持することができる。なお、把持部17の構成は、これに限定されず、対象物82を把持可能な任意の構成であればよい。例えば、把持部17は、真空吸着、磁気吸着等の吸着機構によって対象物82を把持するように構成されていてもよい。
【0025】
1.3.力覚センサー
力覚センサー3は、例えば対象物82を介して把持部17に加わる力を検出する。この力には、並進力およびトルク(モーメント)等の力成分が含まれる。力覚センサー3は、例えば、6軸力覚センサーや3軸力覚センサー等で構成される。力覚センサー3が検出した力検出情報は、制御装置5に出力される。制御装置5では、力検出情報に基づいて、把持部17が受ける各方向の力成分を算出する。
【0026】
1.4.カメラ
カメラ4は、回転する回転体8を撮像する。カメラ4は、例えば、被挿入部81の開口を含む平面上に配置されている。なお、カメラ4の配置は、これに限定されない。カメラ4が撮像した画像は、制御装置5に出力される。制御装置5では、画像に基づいて、回転体8における被挿入部81の位置を検出する。
【0027】
なお、カメラ4は、
図1とは異なる場所、例えばロボットアーム10に取り付けられていてもよいし、ロボットアーム10や回転台9から離れた床や壁、天井等に取り付けられていてもよい。
【0028】
カメラ4は、モノクロカメラであっても、カラーカメラであっても、分光カメラであってもよい。また、カメラ4は、深度情報を取得可能な3次元カメラであってもよい。さらに、カメラ4に代えて、被挿入部81を検出可能なセンサー、例えば、近接センサー、距離センサー等の各種物体検出センサーを用いるようにしてもよい。
【0029】
1.5.制御装置
制御装置5は、ロボット1やそれに取り付けられた各部の動作を制御する機能を有する。
【0030】
図3は、
図1に示すロボットシステム100の機能ブロック図である。
図3に示すように、ロボットシステム100が備える制御装置5は、機能部として、ロボット制御部50、被挿入部検出部52および対象物検出部53を有する。
【0031】
ロボット制御部50は、ロボットアーム10の姿勢を制御し、把持部17の位置および姿勢を制御する。ロボット制御部50は、位置制御部501、力制御部502、追従制御部503および把持制御部504を有する。
【0032】
位置制御部501は、把持部17を目標の位置に配置するように、ロボット1の動作を制御する位置制御を行う。位置制御は、目標の位置と、把持部17の現在位置と、に基づいて、ロボット1の動作を制御する制御方式である。
【0033】
力制御部502は、力検出情報に基づいて、ロボット1の動作を制御する力制御を行う。力制御としては、例えば、フォーストリガー制御、インピーダンス制御等がある。
【0034】
このうち、フォーストリガー制御は、例えば定荷重制御を含む。この定荷重制御としては、被挿入部81の被挿入軸AX2に平行な方向の並進力が一定になるように、対象物82を被挿入部81に押し付ける制御方式が挙げられる。この制御方式によれば、対象物82を被挿入部81に挿入するときに必要な荷重を適切に加え続けることができる。これにより、対象物82の挿入作業を効率よく行うことができる。被挿入軸AX2に平行な方向とは、被挿入軸AX2からの離角が10°以下である方向を指す。
【0035】
また、インピーダンス制御は、例えば倣い制御を含む。この倣い制御としては、被挿入部81の被挿入軸AX2に交差する方向の並進力がゼロに近づくように、対象物82を被挿入部81に倣わせる制御方式が挙げられる。この制御方式によれば、対象物82を被挿入部81に挿入するとき、両者を円滑に摺動させることができる。これにより、対象物82の挿入作業を効率よく行うことができる。被挿入軸AX2に交差する方向とは、被挿入軸AX2との交差角が0°超である方向であるが、60°以上90°以下である方向が好ましい。また、ゼロに近づける並進力は、好ましくは、被挿入軸AX2と直交する方向の並進力であるのが好ましい。
【0036】
なお、力制御部502は、上記の定荷重制御および倣い制御を併用するように力制御を行ってもよい。この場合、対象物82の挿入作業を特に効率よく行うことができる。
【0037】
追従制御部503は、エンコーダー93から出力される回転情報および被挿入部検出部52から出力される被挿入部検出情報に基づいて、回転している被挿入部81の位置を推定する。そして、追従制御部503は、被挿入部81の回転速度と同じ速度で把持部17を回転軸AX1まわりの周方向に移動させる。これにより、把持部17が把持する対象物82を、被挿入部81に追従させる追従制御を行うことができる。
【0038】
把持制御部504は、対象物検出部53から出力される対象物検出情報に基づいて、把持部17による対象物82の把持動作を制御する。
【0039】
被挿入部検出部52は、カメラ4が撮像した画像に基づいて、被挿入部81の位置を検出する。検出した被挿入部81の位置は、被挿入部検出情報としてロボット制御部50に出力される。
【0040】
対象物検出部53は、カメラ4が撮像した画像に基づいて、対象物82の位置を検出する。検出した対象物82の位置は、対象物検出情報としてロボット制御部50に出力される。
【0041】
なお、制御装置5の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、ストックされている対象物82を把持部17に把持させる機構が設けられている場合には、対象物82の位置を検出する必要がないため、対象物検出部53が省略されていてもよい。
【0042】
2.回転体への対象物挿入方法
次に、実施形態に係る回転体への対象物挿入方法について説明する。なお、以下の説明では、前述したロボットシステム100を用いて回転体8の被挿入部81に対象物82を挿入する方法を例に説明するが、回転体への対象物挿入方法は、ロボットシステム100以外の装置を用いた方法であってもよい。
【0043】
図4は、実施形態に係る回転体への対象物挿入方法の構成を示すフローチャートである。
図5および
図6は、
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための平面図である。
【0044】
図4に示すステップS102では、
図2に示すように、把持部17が対象物82を把持する。制御装置5の対象物検出部53は、
図1に示すようにストックされている対象物82を検出する。この検出は、例えば、カメラ4が取得した画像やその他のセンサーから出力された信号等に基づいて行うことができる。そして、検出した対象物82の位置に基づいて、位置制御部501がロボットアーム10により把持部17を移動させ、把持制御部504が対象物82の1つを把持部17に把持させる。
【0045】
ステップS104では、把持部17が待機位置に移動する。待機位置としては、特に限定されないが、例えば、対象物82がストックされている位置と、把持部17が対象物82の挿入作業を行う作業範囲R1と、の間にある任意の位置が挙げられる。
【0046】
ステップS106では、回転体8の被挿入部81が作業範囲R1に入るまで待機する。なお、被挿入部81の現在位置は、例えばカメラ4が取得した画像に基づいて制御装置5の被挿入部検出部52が検出する初期位置、および、エンコーダー93から出力された搬送情報による初期位置からの回転角度に基づいて算出できる。
【0047】
ステップS108では、
図2に示すように、被挿入部81が作業範囲R1に入ったタイミングで、把持部17が被挿入部81の開口部付近に移動する。なお、把持部17が移動するタイミングは、これに限定されない。例えば、ステップS106における待機位置が開口部付近であってもよい。
【0048】
ステップS110では、
図2に矢印TRで示すように、把持部17で把持している対象物82を被挿入部81に追従させる。そして、
図5に示すように、把持部17が把持している対象物82を被挿入部81に挿入する作業を開始する。なお、対象物82を挿入する作業を開始するよりも前に、被挿入部81に対する対象物82の追従を開始するのが好ましい。これにより、回転体8が回転していて、被挿入部81が移動している最中であっても、対象物82の挿入作業をより円滑に行うことができる。
【0049】
図7、
図8および
図9は、
図2、
図5および
図6の断面図であって、
図4に示す回転体への対象物挿入方法を説明するための断面図である。なお、
図7~
図9では、被挿入軸AX2と平行な軸をz軸とし、互いに直交するとともにz軸と直交する2つの軸をx軸およびy軸とする。そして、x軸、y軸およびz軸と平行な方向の並進力をFx、Fy、Fzとし、x軸まわり、y軸まわりおよびz軸まわりのトルクをTx、Ty、Tzとする。
【0050】
対象物82の挿入作業は、例えば、
図7~
図9に基づき、以下の順序で行う。
まず、被挿入部81の現在位置およびエンコーダー93から出力された搬送情報に基づいて、追従制御部503が、把持部17を被挿入部81に追従させるようにロボット1の動作を制御する。本明細書では、この制御を「追従制御」という。追従制御では、対象物82の位置を変化させるだけでなく、姿勢も変化させることが好ましい。例えば、対象物82が柱状体である場合、その軸と、回転している回転体8の被挿入軸AX2と、が常に平行になるように、対象物82の姿勢を変化させることが好ましい。この追従制御は、ステップS112が終了するまで継続させることが好ましい。
【0051】
次に、位置制御部501が、位置制御により、
図7に示すように、把持部17を被挿入部81に近づける。そして、所定の距離まで近づいたら、力制御部502が、力制御により、
図8に示すように、被挿入部81への対象物82の挿入を開始する。具体的には、前述した定荷重制御により、対象物82を被挿入部81に押し付ける。定荷重制御は、
図8に示す、被挿入軸AX2に平行な方向の並進力Fzが一定になるように、対象物82を回転体8に押し付ける制御である。そうすると、対象物82が被挿入部81に挿入され始める。その後、前述した倣い制御により、対象物82を被挿入部81の内壁面に倣わせる。倣い制御としては、例えば、被挿入軸AX2に交差する方向の並進力Fx、Fyがゼロに近づくように、対象物82を被挿入部81に倣わせる第1倣い制御、および、対象物82が受けるトルクTx、Ty、Tzがゼロに近づくように、対象物82を被挿入部81に倣わせる第2倣い制御が挙げられる。これらの倣い制御により、対象物82の挿入作業を円滑に行うことができる。
【0052】
ステップS112では、力覚センサー3から出力される力検出情報に基づいて、対象物82を挿入する作業を完了する。完了とは、
図6および
図9に示すように、対象物82を目的の位置まで挿入し終えることをいう。具体的には、対象物82を挿入していくと、例えば
図6および
図9に示すように、対象物82の先端が被挿入部81の奥部に突き当たる。本明細書では、この位置を「目的の位置」とする。なお、目的の位置は、これに限定されない。対象物82がこのような目的の位置に到達した場合、対象物82が受ける並進力Fzが大きくなる。したがって、ステップS112では、対象物82が受ける力に基づいて、対象物82の挿入が完了したことを検出する処理を含むことが好ましい。このような処理を行うことにより、対象物82の挿入が確実に完了していることを確認できるので、未完了の状態で作業を終えてしまうおそれがなくなり、作業の成功率を高めることができる。作業が完了したら、把持部17は、対象物82の把持を解除し、待機位置に戻る。
【0053】
以上のような回転体8への対象物82の挿入方法によれば、回転体8の回転を停止することなく、対象物82を被挿入部81に追従させながら、被挿入部81に対する対象物82の挿入作業を行うことができる。このため、作業範囲R1に次々と現れる被挿入部81に対し、対象物82を次々に挿入することができ、作業効率を高めやすい。また、追従制御により、被挿入軸AX2と対象物82の軸とを容易に合わせることができるので、円滑な挿入作業が可能になる。これにより、作業不良の発生を抑制することができる。
【0054】
このような回転体への対象物挿入方法は、例えば、回転体や対象物の検査、回転体や対象物の動態展示、回転体に対する対象物の組み立て等に適用できる。また、回転体や対象物としては、例えば、機械部品、構造部品、電子部品、玩具、工芸品等が挙げられる。
【0055】
3.回転体への対象物挿入方法の変形例
次に、前記実施形態に係る回転体への対象物挿入方法の変形例について説明する。
【0056】
3.1.第1変形例
図10は、第1変形例に係る回転体への対象物挿入方法を説明するための側面図である。なお、
図10において、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0057】
以下、第1変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態と異なる事項について説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0058】
第1変形例に係る回転体への対象物挿入方法は、被挿入部81の形状および対象物82の形状が異なる以外、前記実施形態に係る回転体への対象物挿入方法と同様である。
【0059】
図10に示す被挿入部81は、外側面80に開口する角柱状の穴である。開口の形状は、長方形である。なお、開口の形状は、特に限定されず、前記実施形態における真円の他、楕円、長円のような他の円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形のような多角形、その他の形状であってもよい。
【0060】
また、開口の形状が、真円のような等方形状ではなく、正方形や長方形のような非等方形状である場合、被挿入部検出部52は、被挿入部81の位置だけでなく、開口の形状も検出するようになっていてもよい。検出した被挿入部81の開口の形状は、被挿入部検出情報としてロボット制御部50に出力される。
【0061】
図10に示す対象物82は、その挿入軸AX3を、被挿入部81の被挿入軸AX2に対して平行にした状態で、挿入作業に供される。挿入軸AX3は、対象物82の例えば長軸である。
図10では、挿入軸AX3に直交する平面による対象物82の断面形状が、長方形である。なお、この断面形状は、特に限定されず、前記実施形態における真円の他、楕円、長円のような他の円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形のような多角形、その他の形状であってもよい。
【0062】
また、断面形状が、真円のような等方形状ではなく、正方形や長方形のような非等方形状である場合、対象物検出部53は、対象物82の形状も検出するようになっていてもよい。検出した対象物82の形状は、対象物検出情報としてロボット制御部50に出力される。
【0063】
本変形例では、ロボットアーム10を用いることで、被挿入部81の開口の形状に合わせて、対象物82の姿勢を変化させることができる。このため、被挿入部81の開口の形状や対象物82の断面形状によらず、被挿入部81に対する対象物82の挿入作業を効率よく行うことができる。
【0064】
3.2.第2変形例
図11は、第2変形例に係る回転体への対象物挿入方法を説明するための断面図である。なお、
図11において、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0065】
以下、第2変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態と異なる事項について説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0066】
第2変形例に係る回転体への対象物挿入方法は、被挿入部81の配置が異なる以外、前記実施形態に係る回転体への対象物挿入方法と同様である。
【0067】
図11に示す被挿入部81は、回転体8の周方向だけでなく、軸方向にも並ぶように配置されている。また、軸方向に並ぶ被挿入部81は、被挿入軸AX2と回転軸AX1との交差角度θが、被挿入部81同士で互いに同じであってもよいが、
図11に示すように互いに異なっていてもよい。
図11に示す被挿入部81aの被挿入軸AX2と回転軸AX1との交差角度θは、90°である。
図11に示す被挿入部81bは、回転軸AX1の軸方向に沿って被挿入部81aの上方に位置している。被挿入部81bの被挿入軸AX2と回転軸AX1との交差角度θは、90°未満である。
図11に示す被挿入部81cは、回転軸AX1の軸方向に沿って被挿入部81aの下方に位置している。被挿入部81cの被挿入軸AX2と回転軸AX1との交差角度θは、90°超である。
【0068】
本変形例では、ロボットアーム10を用いることで、対象物82の姿勢を容易に変化させることができる。このため、交差角度θによらず、被挿入部81に対する対象物82の挿入作業を効率よく行うことができる。
以上のような変形例においても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
4.前記実施形態およびその変形例が奏する効果
以上のように、前記実施形態およびその変形例に係る回転体への対象物挿入方法は、ロボットアーム10を備えるロボット1を用い、ロボットアーム10に把持されている対象物82を、回転している回転体8の被挿入部81に挿入する方法である。この回転体8への対象物82の挿入方法は、ロボット1が、追従制御により、対象物82を移動させる動作を行いながら、力制御により、対象物82を被挿入部81に挿入する動作を行う。追従制御は、回転体8の回転に対象物82を追従させる制御方式である。力制御は、対象物82が回転体8から受ける力に基づく制御方式である。
【0070】
このような構成によれば、回転体8の回転を止めることなく、対象物82を被挿入部81に追従させながら、被挿入部81に対する対象物82の挿入作業を行うことができる。このため、作業範囲R1に次々と現れる被挿入部81に順次、対象物82の挿入作業を行うことができるので、作業効率を容易に高めることができる。
【0071】
また、力制御は、被挿入部81の被挿入軸AX2に平行な方向の並進力が一定になるように、対象物82を回転体8に押し付ける定荷重制御を含んでいてもよい。
【0072】
このような構成によれば、対象物82を被挿入部81に挿入するときに必要な荷重を適切に加え続けることができる。これにより、対象物82の挿入作業を効率よく行うことができる。
【0073】
また、力制御は、被挿入部81の被挿入軸AX2に交差する方向の並進力がゼロに近づくように、対象物82を被挿入部81に倣わせる第1倣い制御を含んでいてもよい。
このような構成によれば、対象物82の挿入作業を円滑に行うことができる。
【0074】
また、力制御は、対象物82が受けるトルクがゼロに近づくように、対象物82を被挿入部81に倣わせる第2倣い制御を含んでいてもよい。
このような構成によれば、対象物82の挿入作業を円滑に行うことができる。
【0075】
また、被挿入部81の被挿入軸AX2は、回転体8の回転軸AX1に対して交差していてもよい。
【0076】
このような被挿入部81を有する回転体8は、回転に伴って被挿入部81の開口が移動することになる。前記実施形態またはその変形例に係る回転体への対象物挿入方法によれば、そのような被挿入部81に対しても、追従制御によって対象物82の挿入作業が可能になる。
【0077】
なお、被挿入軸AX2は、必ずしも回転軸AX1と交差していなくてもよい。つまり、回転体への対象物挿入方法は、被挿入軸AX2が回転軸AX1と平行な被挿入部81に対して対象物82を挿入する方法であってもよい。
【0078】
また、回転体8は、複数の被挿入部81を備えていてもよい。この場合、被挿入部81の被挿入軸AX2と回転軸AX1との交差角度θは、被挿入部81同士で互いに異なっていてもよい。
【0079】
前記実施形態またはその変形例に係る回転体への対象物挿入方法は、追従制御および力制御により作業を行うため、上記のような被挿入部81に対する対象物82の挿入作業を効率よく行うことができる。
【0080】
また、対象物82を挿入する動作は、対象物82が受ける力に基づいて、対象物82の挿入が完了したことを検出する処理を含んでいてもよい。
【0081】
このような構成によれば、対象物82の挿入が確実に完了していることを確認できるので、未完了の状態で作業を終えてしまうおそれがなくなり、作業の成功率を高めることができる。
【0082】
また、対象物82の挿入軸AX3に直交する平面による対象物82の断面形状は、非等方形状であってもよい。
【0083】
前記実施形態またはその変形例に係る回転体への対象物挿入方法は、追従制御および力制御により作業を行うため、対象物82の断面形状が上記のような非等方形状であっても、被挿入部81に対する挿入作業を効率よく行うことができる。
【0084】
また、前記実施形態およびその変形例に係るロボットシステム100は、回転している回転体8の被挿入部81に対象物82を挿入するロボットシステムであって、ロボット1と、制御装置5と、を備える。ロボット1は、対象物82を把持する把持部17、対象物82が回転体8から受ける力を検出する力覚センサー3(力検出部)および把持部17が取り付けられているロボットアーム10を備える。制御装置5は、ロボット1の動作を制御する。そして、制御装置5は、追従制御部503と、力制御部502と、有する。追従制御部503は、回転体8の回転に対象物82を追従させる追従制御により、対象物82を移動させる。力制御部502は、対象物82が回転体8から受ける力に基づく力制御により、対象物82を被挿入部81に挿入させる。
【0085】
このような構成によれば、回転体8の回転を止めることなく、対象物82を被挿入部81に追従させながら、被挿入部81に対する対象物82の挿入作業を行い得るロボットシステム100を実現することができる。このようなロボットシステム100によれば、作業範囲R1に次々と現れる被挿入部81に順次、対象物82の挿入作業を行うことができるので、作業効率を容易に高めることができる。
【0086】
以上、本発明に係る回転体への対象物挿入方法およびロボットシステムを図示の実施形態およびその変形例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
例えば、本発明に係る回転体への対象物挿入方法は、前記実施形態またはその変形例に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。また、本発明に係るロボットシステムは、前記実施形態またはその変形例の各部が同様の機能を有する任意の構成物に置換されたものであってもよく、前記実施形態またはその変形例に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…ロボット、3…力覚センサー、4…カメラ、5…制御装置、8…回転体、9…回転台、10…ロボットアーム、11…アーム、12…アーム、13…アーム、14…アーム、15…アーム、16…アーム、17…把持部、50…ロボット制御部、52…被挿入部検出部、53…対象物検出部、80…外側面、81…被挿入部、81a…被挿入部、81b…被挿入部、81c…被挿入部、82…対象物、91…回転テーブル、93…エンコーダー、100…ロボットシステム、110…基台、171…チャック、501…位置制御部、502…力制御部、503…追従制御部、504…把持制御部、AX1…回転軸、AX2…被挿入軸、AX3…挿入軸、Fx…並進力、Fy…並進力、Fz…並進力、O6…軸、R0…矢印、R1…作業範囲、S102…ステップ、S104…ステップ、S106…ステップ、S108…ステップ、S110…ステップ、S112…ステップ、TR…矢印、Tx…トルク、Ty…トルク、Tz…トルク、θ…交差角度