(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172109
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】媒体供給装置及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/12 20060101AFI20241205BHJP
B65H 1/14 20060101ALI20241205BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20241205BHJP
B65H 29/52 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65H3/12 310A
B65H1/14 322A
B65H3/48 310
B65H29/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089631
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 宏文
【テーマコード(参考)】
3F101
3F343
【Fターム(参考)】
3F101FB01
3F101FC01
3F101FC12
3F101LA01
3F101LB03
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC00
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343HD02
3F343HD14
3F343JB05
3F343JD27
3F343JD28
3F343KB04
3F343KB17
3F343LA04
3F343LA11
3F343LC19
3F343LC22
3F343LD07
3F343MB04
3F343MB13
3F343MC16
(57)【要約】
【課題】媒体に記録を行う際の生産性の低下を抑制することが可能な媒体供給装置及び記録装置を提供する。
【解決手段】媒体供給装置20は、載置台31に積載された用紙Pを浮上させる送風部21と、浮上した用紙Pを吸着させて-Y方向に搬送する吸着搬送部22と、±X方向から見て吸着搬送部22と重なる位置に設けられ、吸着搬送部22の外側に向けて突出可能な回転体50と、を備え、吸着搬送部22は、上流側プーリー41と、下流側プーリー42と、上流側プーリー41及び下流側プーリー42に巻き掛けられる搬送ベルト43と、用紙Pを吸引して搬送ベルト43の下面に吸着させる吸引部46と、を備え、上流側プーリー41及び下流側プーリー42が+R方向に回転することによって、搬送ベルト43の下面に吸着した用紙Pを-Y方向に搬送し、回転体50は、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後に、搬送ベルト43の下面より下方の位置まで突出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の媒体が積載される載置部と、
前記載置部に積載された前記複数の媒体のうち、少なくとも最上位の媒体を浮上させる送風部と、
前記送風部によって浮上した前記最上位の媒体を吸着させて搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向に交差する媒体幅方向から見て前記搬送部と重なる位置に設けられ、前記媒体幅方向から見て前記搬送部の外側に向けて突出可能な突出部と、を備え、
前記搬送部は、第1プーリーと、前記第1プーリーよりも前記搬送方向の下流に設けられる第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに巻き掛けられる無端ベルトと、前記媒体を吸引して前記無端ベルトの下面に吸着させる吸引部と、を備え、前記第1プーリー及び前記第2プーリーが第1方向に回転することによって、前記無端ベルトの下面に吸着した前記媒体を前記搬送方向に搬送し、
前記突出部は、前記搬送部が前記媒体を搬送した後に、前記無端ベルトの下面より下方の位置まで突出することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体供給装置であって、
前記突出部は、
前記媒体幅方向から見て前記第2プーリーと重なる位置で、前記第2プーリーとともに回転可能に設けられ、
前記搬送部が前記媒体を搬送した後に、前記第2プーリーとともに前記第1方向とは反対の方向に回転することによって前記無端ベルトより下方の位置まで突出することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体供給装置であって、
前記突出部は、
前記無端ベルトに取り付けられ、前記無端ベルトの外側に突出可能であり、
前記搬送部が前記媒体を搬送した後に、前記無端ベルトの外側に突出した状態で、前記無端ベルトとともに、前記媒体を前記搬送方向に搬送する際の周回方向とは反対の方向に周回することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の媒体供給装置であって、
前記突出部は、
前記媒体幅方向から見て前記第1プーリーと重なる位置から前記第2プーリーに向かって延出する部材であり、
前記搬送部が前記媒体を搬送した後に、前記媒体幅方向から見て前記第1プーリーと重なる位置を回動中心として回動することによって前記無端ベルトの下面より下方の位置まで突出することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体供給装置であって、
前記搬送部よりも前記搬送方向の下流に配置され、前記媒体を案内するガイド部材を備え、
前記ガイド部材には、前記突出部との接触を回避するための凹部が形成されていることを特徴とする媒体供給装置。
【請求項6】
請求項1に記載の媒体供給装置であって、
前記突出部は、
前記媒体幅方向から見て前記第2プーリーと重なる位置に設けられ、
前記第2プーリーが前記第1方向に回転して、前記搬送部が前記媒体を前記搬送方向に搬送する際には回転せず、
前記搬送部が前記媒体を搬送した後に、前記第2プーリーとともに前記第1方向とは反対の方向に回転することによって前記無端ベルトより下方の位置まで突出することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項7】
請求項1に記載の媒体供給装置であって、
外装を構成する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、前記載置部と、前記載置部に積載された前記媒体とを収容する媒体収容部と、を備え、
前記媒体収容部は、前記筐体から引き出し可能であることを特徴とする媒体供給装置。
【請求項8】
請求項1に記載の媒体供給装置であって、
前記搬送部は、前記媒体を搬送した後に、前記第1プーリーを回動中心として回動することにより、前記第2プーリーを前記載置部に近づけることを特徴とする媒体供給装置。
【請求項9】
複数の媒体が積載される載置部と、
前記載置部に積載された前記複数の媒体のうち、少なくとも最上位の媒体を浮上させる送風部と、
前記送風部によって浮上した前記最上位の媒体を吸着させて搬送方向に搬送する搬送部と、を備え、
前記搬送部は、第1プーリーと、前記第1プーリーよりも前記搬送方向の下流に設けられる第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに巻き掛けられる無端ベルトと、前記媒体を吸引して前記無端ベルトの下面に吸着させる吸引部と、を備え、前記第1プーリー及び前記第2プーリーが第1方向に回転することによって、前記無端ベルトの下面に吸着した前記媒体を前記搬送方向に搬送し、
前記搬送部は、前記媒体を搬送した後に、前記第1プーリーを回動中心として回動することにより、前記第2プーリーを前記載置部に近づけることを特徴とする媒体供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の媒体供給装置であって、
前記第1プーリー及び前記第2プーリーは、前記第2プーリーが前記載置部に近づく際に、前記第1方向とは反対の方向に回転することを特徴とする媒体供給装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の媒体供給装置と、
前記媒体供給装置によって搬送された媒体に記録する記録部と、を有することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を供給する媒体供給装置、及びこの媒体供給装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、積載台の上に積載された媒体を、エアの吹き出しにより浮上させ、浮上した最上位の媒体を搬送機構に吸着させて搬送することにより、印刷装置等に媒体を供給する媒体供給装置が知られている。このような媒体供給装置では、エアの吹き出しが停止した後に、浮上した媒体のうち、搬送機構に吸着されなかった媒体が、媒体の積載位置を規制する部材や、搬送をガイドする部材等にもたれ掛かってしまう場合があった。これらの部材に媒体がもたれ掛かると、積載台上の媒体の量を検知するセンサーが、検知を正しく行うことができなくなる。このため、特許文献1に記載の媒体供給装置は、搬送機構による媒体の供給が終了した後、積載台を下降させることにより、もたれ掛かった媒体を正常な位置に戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、もたれ掛かった媒体が正常な位置に戻るまで積載台を下降させた後、積載台を元の位置まで上昇させる必要がある。つまり、次の媒体を供給できる状態になるまでに多くの時間を要してしまうことから、媒体に対して印刷等の処理を行う際の生産性が低下してしまうという問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
媒体供給装置は、複数の媒体が積載される載置部と、前記載置部に積載された前記複数の媒体のうち、少なくとも最上位の媒体を浮上させる送風部と、前記送風部によって浮上した前記最上位の媒体を吸着させて搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向に交差する媒体幅方向から見て前記搬送部と重なる位置に設けられ、前記媒体幅方向から見て前記搬送部の外側に向けて突出可能な突出部と、を備え、前記搬送部は、第1プーリーと、前記第1プーリーよりも前記搬送方向の下流に設けられる第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに巻き掛けられる無端ベルトと、前記媒体を吸引して前記無端ベルトの下面に吸着させる吸引部と、を備え、前記第1プーリー及び前記第2プーリーが第1方向に回転することによって、前記無端ベルトの下面に吸着した前記媒体を前記搬送方向に搬送し、前記突出部は、前記搬送部が前記媒体を搬送した後に、前記無端ベルトの下面より下方の位置まで突出する。
【0006】
媒体供給装置は、複数の媒体が積載される載置部と、前記載置部に積載された前記複数の媒体のうち、少なくとも最上位の媒体を浮上させる送風部と、前記送風部によって浮上した前記最上位の媒体を吸着させて搬送方向に搬送する搬送部と、を備え、前記搬送部は、第1プーリーと、前記第1プーリーよりも前記搬送方向の下流に設けられる第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに巻き掛けられる無端ベルトと、前記媒体を吸引して前記無端ベルトの下面に吸着させる吸引部と、を備え、前記第1プーリー及び前記第2プーリーが第1方向に回転することによって、前記無端ベルトの下面に吸着した前記媒体を前記搬送方向に搬送し、前記搬送部は、前記媒体を搬送した後に、前記第1プーリーを回動中心として回動することにより、前記第2プーリーを前記載置部に近づける。
【0007】
記録装置は、上記の媒体供給装置と、前記媒体供給装置によって搬送された媒体に記録する記録部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るプリンターの概略構成を示す構成図。
【
図2】第1実施形態の媒体供給装置を上方から見た平面図。
【
図3】第1実施形態のプリンターの制御系の構成を示すブロック図。
【
図6】第2実施形態に係るプリンターの媒体供給装置を上方から見た平面図。
【
図9】第3実施形態に係るプリンターの媒体供給装置を上方から見た平面図。
【
図12】第4実施形態に係るプリンターの媒体供給装置を上方から見た平面図。
【
図14】第5実施形態に係るプリンターの媒体供給装置を-X側から見た断面図。
【
図15】第5実施形態に係るプリンターの媒体供給装置を-X側から見た断面図。
【
図16】第6実施形態に係るプリンターの媒体供給装置を-X側から見た断面図。
【
図17】変形例に係るプリンターの媒体供給装置を-X側から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
以下、第1実施形態に係るプリンター1について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るプリンター1の概略構成を示す構成図である。
プリンター1は、記録対象である媒体を搬送しつつ、媒体に対して液体の一例であるインクを吐出することにより、媒体に画像を記録する。プリンター1は、記録装置の一例である。本実施形態のプリンター1は、媒体の一例として、普通紙や厚紙、写真用紙等の用紙Pに画像を記録する。
【0010】
図1を含む複数の図には、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸が示されている。典型的には、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸に平行な±X方向は、プリンター1の設置面に平行であり、プリンター1の前後方向に対応する。Y軸に平行な±Y方向は、プリンター1の設置面に平行であり、プリンター1の左右方向に対応する。Z軸に平行な±Z方向は、プリンター1の設置面に垂直であり、プリンター1の上下方向に対応する。また、各図において、+X方向は、プリンター1の前面から背面に向かう方向であり、+Y方向は、プリンター1の前面に向かって左方向であり、+Z方向は、上方向、即ち鉛直方向上方である。なお、±X方向は、プリンター1内における用紙Pの幅方向、即ち媒体幅方向にも対応する。プリンター1内において、用紙Pは、媒体幅方向と交差する方向に搬送される。つまり、媒体幅方向に対応する±X方向は、用紙Pの搬送方向と交差する方向である。
【0011】
図1に示すように、プリンター1は、外装を構成する筐体2を備えている。また、プリンター1は、筐体2の内部に、複数の用紙Pを収容可能な用紙収容カセット4を備えている。用紙収容カセット4は、筐体2の下側に配置されており、筐体2の前面側から着脱可能に構成されている。具体的には、用紙収容カセット4は、筐体2から前方へ引き出し可能である。用紙収容カセット4は、媒体収容部の一例である。
【0012】
筐体2には、用紙収容カセット4の上方に、記録が実行された後の用紙Pが排出される排出口5と、排出口5から排出された用紙Pが載置される排出媒体載置部6とが形成されている。また、
図1では図示を省略しているが、プリンター1の前面側には、操作パネル7(
図3参照)が配置されている。操作パネル7には、液晶パネル等の表示手段と、プリンター1に対して各種指示等を入力するための入力手段とが含まれる。
【0013】
プリンター1は、筐体2の内部に、ラインヘッド10と搬送経路11とを備えている。ラインヘッド10は、外部の装置等から入力される印刷データに基づいて、インクを用紙Pに吐出することにより、印刷データに基づく画像を用紙Pに記録する。ラインヘッド10は、記録部の一例である。
【0014】
搬送経路11は、用紙Pが搬送される経路であり、上流側から順に、給送経路12と、ストレート経路13と、フェイスダウン排出経路14とを備えている。給送経路12は、用紙収容カセット4から用紙Pをピックアップしてラインヘッド10に向けて搬送する経路である。ストレート経路13は、給送経路12に接続され、ラインヘッド10によって記録が行われる経路である。フェイスダウン排出経路14は、ストレート経路13に接続され、記録が実行された用紙Pを排出口5まで搬送する経路である。用紙Pの搬送は、搬送駆動部17(
図3参照)が備えるモーター等の駆動源によって駆動される。
【0015】
プリンター1は、用紙Pの両面への記録、所謂、両面記録を実行可能である。具体的には、プリンター1は、ラインヘッド10の下流側においてストレート経路13から分岐するスイッチバック経路15と、スイッチバック経路15に接続され、用紙Pの表裏を反転させる反転経路16とを備えている。反転経路16は、ラインヘッド10の上流側において、用紙Pをストレート経路13に戻す。両面記録を行う場合、一方の面に記録が行われた用紙Pは、スイッチバック経路15及び反転経路16を経由して、ストレート経路13に戻され、反対の面への記録が行われる。
【0016】
給送経路12には、媒体供給装置20と、搬送ローラー対19とが設けられている。
媒体供給装置20は、上述した用紙収容カセット4と、送風部21と、吸着搬送部22と、ガイド部材18と、を備え、用紙収容カセット4に収容された複数の用紙Pのうち、一番上の用紙Pをピックアップして-Y方向に搬送する。つまり、媒体供給装置20による用紙Pの搬送方向は、-Y方向である。
【0017】
送風部21は、用紙収容カセット4に収容されている用紙Pに空気を吹き付ける。吸着搬送部22は、空気が吹き付けられることによって浮き上がった用紙Pのうち、一番上の用紙Pを吸着して-Y方向に搬送する。ガイド部材18は、吸着搬送部22よりも搬送方向の下流に配置され、搬送方向のさらに下流に位置する搬送ローラー対19に向けて用紙Pを案内する。媒体供給装置20の詳細については、後述する。
【0018】
搬送ローラー対19は、搬送駆動部17により回転駆動される駆動ローラーと、駆動ローラーとの間で用紙Pをニップする従動ローラーとを備えている。搬送ローラー対19は、媒体供給装置20でピックアップされた用紙Pをストレート経路13に向けて搬送する。給送経路12は、搬送ローラー対19からストレート経路13までの間で、用紙Pの搬送方向を略180°転回させる。
【0019】
ストレート経路13は、直線状に延びる経路として構成され、ストレート経路13において、用紙Pは、+Y方向に搬送される。ストレート経路13には、搬送ローラー対23、媒体支持部24、及びラインヘッド10が配置されている。
【0020】
搬送ローラー対23は、ラインヘッド10及び媒体支持部24よりも、搬送方向の上流に位置しており、給送経路12から給送された用紙Pを媒体支持部24上に搬送する。搬送ローラー対23は、搬送駆動部17によって回転駆動される駆動ローラーと、駆動ローラーとの間で用紙Pをニップする従動ローラーとを備え、用紙Pを+Y方向に搬送する。
【0021】
媒体支持部24は、ラインヘッド10の下方に配置されている。ラインヘッド10の下面であるノズル面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されており、媒体支持部24は、ラインヘッド10のノズル面に対向するように配置されている。媒体支持部24は、インクの吐出を受ける用紙Pを、インクが吐出される記録面の反対側から支持する。
【0022】
ラインヘッド10は、媒体支持部24上の用紙Pの記録面にインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド10は、複数のノズルが用紙Pの全幅をカバーするように構成された記録ヘッドであり、用紙Pの幅方向への移動を伴わないで用紙Pの幅全体に記録が可能である。なお、プリンター1は、ラインヘッド10の代わりに、用紙Pの幅方向に往復移動しながら用紙Pにインクを吐出して記録を行うシリアル型の記録ヘッドを備えていてもよい。
【0023】
フェイスダウン排出経路14は、用紙Pの搬送方向を略180°転回させる経路であり、ラインヘッド10によって記録された用紙Pが、記録面を下にして排出口5から-Y方向に排出されるように用紙Pを搬送する。フェイスダウン排出経路14に入った用紙Pは、複数の搬送ローラー対30により搬送され、排出口5から排出される。そして、排出された用紙Pは、記録面を下にして排出媒体載置部6に載置される。複数の搬送ローラー対30のそれぞれは、搬送駆動部17によって回転駆動される駆動ローラーと、駆動ローラーとの間で用紙Pをニップする従動ローラーとを備える。
【0024】
搬送経路11に沿って配置される複数の搬送ローラー対19,23,30の駆動ローラーは、搬送駆動部17に備わるモーター等の駆動源によって回転駆動される。搬送駆動部17は、複数の駆動源を含んでおり、複数の駆動ローラーを連動させて駆動したり、複数の駆動ローラーを個別に駆動したりすることができる。
【0025】
次に、媒体供給装置20について詳述する。
用紙収容カセット4は、上方に開口する箱状の部材である。用紙収容カセット4には、昇降駆動部36(
図3参照)の駆動によって昇降が可能な載置台31が設けられており、用紙収容カセット4に収容される複数の用紙Pは、載置台31上に積載される。つまり、用紙収容カセット4は、載置台31と、載置台31上に積載された用紙Pとを収容する。載置台31は、載置部の一例である。用紙収容カセット4の内部において、用紙Pは、-Y側に寄せて積載される。そして、用紙Pは、用紙収容カセット4の-Y側の側壁32により、-Y方向への移動が規制されている。
【0026】
また、用紙収容カセット4の外側には、載置台31上の用紙Pの量を検知するための用紙センサー33が配置されている。用紙センサー33は、例えば、反射型の光センサーによって構成され、反射光の受光の有無に基づいて、用紙センサー33が配置されている高さにおける用紙Pの有無を検知可能である。載置台31の昇降は、例えば、載置台31上に積載されている複数の用紙Pのうち、最上位の用紙Pの高さが、用紙センサー33が配置されている高さと等しくなるように制御される。
【0027】
送風部21は、第1送風部34と、第2送風部35とを含む。第1送風部34及び第2送風部35は、それぞれ送風ファンを備えており、用紙収容カセット4の-Y側から載置台31上の用紙Pに向けて空気を吹き付ける。具体的には、第1送風部34は、用紙収容カセット4の側壁32に設けられている図示しない開口部を通して、斜め上方に空気を吹き付け、載置台31上に積載された複数の用紙Pのうち、少なくとも最上位の用紙Pを浮上させる。第2送風部35は、浮上した用紙Pにさらに空気を吹き付けることにより、最上位の用紙Pを他の用紙Pと分離させる。これにより、最上位の用紙Pは、吸着搬送部22に到達し、吸着搬送部22によって吸着される。
【0028】
図2は、第1実施形態の媒体供給装置20を上方から見た平面図である。なお、以降の各図において、媒体供給装置20が有する用紙収容カセット4、送風部21及びガイド部材18の図示を省略する場合がある。
図1及び
図2に示すように、吸着搬送部22は、±X方向に離間して配置された2組のベルト搬送機構40と、吸引部46とを備えており、送風部21によって浮上した用紙Pを吸着させて-Y方向に搬送する。吸着搬送部22は、搬送部の一例である。各ベルト搬送機構40は、上流側プーリー41と、下流側プーリー42と、搬送ベルト43とを有している。下流側プーリー42は、上流側プーリー41よりも搬送方向の下流に配置され、±Z方向において、上流側プーリー41と同じ高さに設けられている。搬送ベルト43は、無端ベルトであり、上流側プーリー41及び下流側プーリー42に巻き掛けられている。上流側プーリー41は、第1プーリーの一例であり、下流側プーリー42は、第2プーリーの一例である。
【0029】
2つの上流側プーリー41は、±X方向に延在する共通の上流側回転軸44に回転可能に装着されており、上流側回転軸44を回転中心として回転可能である。また、2つの下流側プーリー42は、±X方向に延在する共通の下流側回転軸45に固定されており、下流側回転軸45を回転中心として回転可能である。下流側回転軸45は、搬送駆動部17に接続されており、搬送駆動部17の駆動により回転する。そして、下流側回転軸45とともに下流側プーリー42が回転すると、搬送ベルト43が周回し、搬送ベルト43の周回に従動して上流側プーリー41が回転する。
【0030】
上流側プーリー41及び下流側プーリー42に巻き掛けられた搬送ベルト43は、上流側プーリー41と下流側プーリー42との間の区間において、略平坦な姿勢となる。具体的には、搬送ベルト43は、上流側プーリー41及び下流側プーリー42よりも上側、即ち+Z側に位置する上側平坦部と、上流側プーリー41及び下流側プーリー42よりも下側、即ち-Z側に位置する下側平坦部とを含む。下流側プーリー42の回転により、下側平坦部が-Y方向に移動するとき、上側平坦部は+Y方向に移動する。また、搬送ベルト43の全域には、表裏を貫通する図示しない複数の開口部が形成されている。
【0031】
吸引部46は、吸引ファンを備えており、搬送ベルト43に形成されている開口部を介して、送風部21の送風によって浮上した用紙Pを吸引する。具体的には、吸引部46は、搬送ベルト43のうち、上流側プーリー41及び下流側プーリー42よりも下側に位置する下側平坦部の開口部を介して用紙Pを吸引する。これにより、用紙Pは、搬送ベルト43の下側平坦部の下面に吸着される。つまり、吸引部46は、用紙Pを吸引して搬送ベルト43の下面に吸着させる。そして、吸着した用紙Pは、搬送ベルト43が周回することによって-Y方向に搬送される。
【0032】
図3は、第1実施形態のプリンター1の制御系の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、プリンター1は、制御部100を有している。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリー等の記憶装置と、各種インターフェイスとを含み、プリンター1の各種動作を制御する。制御部100は、記憶装置に記憶されている制御プログラムに従って、ラインヘッド10と、搬送駆動部17と、吸引部46と、送風部21と、昇降駆動部36と、操作パネル7とを制御する。そして、制御部100は、搬送駆動部17を介して、上述した搬送ローラー対19,23,30の駆動ローラーの回転を制御するとともに、ベルト搬送機構40の下流側プーリー42の回転を制御する。また、制御部100は、昇降駆動部36を介して、上述した載置台31の昇降を制御する。さらに、制御部100には、上述した用紙センサー33の検知結果が入力される。制御部100は、載置台31が昇降する過程における用紙センサー33の検知結果に基づいて、載置台31上の用紙Pの量を検知することができる。
【0033】
以上のように構成されたプリンター1では、媒体供給装置20で用紙Pを搬送する際、送風部21によって浮上した用紙Pのうち、吸着搬送部22に吸着されなかった用紙Pが元の位置に戻らないことが生じ得る。具体的には、吸着されなかった用紙Pの下流側端部が、ガイド部材18や、用紙収容カセット4の-Y側の側壁32にもたれ掛かってしまう場合がある。このような状況になると、用紙センサー33は、載置台31上の用紙Pの量を正しく検知できなくなる。このため、本実施形態の媒体供給装置20は、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを元の位置に戻すための回転体50(
図2参照)を備えている。回転体50は、突出部の一例である。
【0034】
図4及び
図5は、
図2におけるA-A断面図である。A-A断面は、YZ平面に平行で、吸着搬送部22の±X方向における略中央を通る断面である。
図2、
図4及び
図5に示すように、回転体50は、±X方向から見て、吸着搬送部22と重なる位置に設けられている。具体的には、回転体50は、±X方向から見て下流側プーリー42と重なる位置で、±Z方向から見て2つの下流側プーリー42の間に配置されている。回転体50は、円筒状の保持部材51と、複数のシート状部材52とを含んでいる。保持部材51は、下流側プーリー42と同様、下流側回転軸45に固定されている。つまり、回転体50は、下流側回転軸45を回転中心として、下流側プーリー42とともに回転可能である。保持部材51の半径は、下流側プーリー42の半径よりも小さく、その差は、シート状部材52の厚さよりも大きい。
【0035】
複数のシート状部材52の各々は、略矩形であり、1つの辺に対応する一端が保持部材51の外周面に取り付けられている。シート状部材52は、可撓性を有する部材であり、保持部材51の外周面に沿って湾曲している。具体的には、
図4に示すように、シート状部材52は、-X側から見て、保持部材51に取り付けられた一端から、保持部材51の外周面に沿って時計回りの方向に延出している。このように、シート状部材52が保持部材51の外周面に沿った姿勢であることから、用紙Pが-Y方向に搬送される際に、シート状部材52が用紙Pを強く押圧することはない。一方、
図5に示すように、シート状部材52は、保持部材51の外周面に交差するような姿勢になることにより、±X方向から見て吸着搬送部22の外側、即ち搬送ベルト43の外側に向けて突出可能である。具体的には、シート状部材52は、±X方向から見て、搬送ベルト43のうち、下流側プーリー42に巻き掛けられている部位から外側に突出可能である。
【0036】
図4に示すように、吸着搬送部22が用紙Pを-Y方向に搬送する場合、制御部100は、下流側回転軸45を介して、下流側プーリー42及び回転体50を、-X側から見て反時計回りである+R方向に回転させる。+R方向は、第1方向の一例である。下流側プーリー42が+R方向に回転することにより、搬送ベルト43が周回するとともに、搬送ベルト43の周回に従動して上流側プーリー41も+R方向に回転する。このとき、搬送ベルト43は、下側平坦部が-Y方向に移動するように周回し、吸着した用紙Pを-Y方向に搬送する。このように、吸着搬送部22は、上流側プーリー41及び下流側プーリー42が+R方向に回転することにより、搬送ベルト43の下面に吸着した用紙Pを-Y方向に搬送する。これ以降、搬送ベルト43の周回方向のうち、下側平坦部が-Y方向に移動する場合の周回方向、即ち用紙Pを-Y方向に搬送する際の周回方向を順方向と呼び、その反対の周回方向を逆方向とも呼ぶ。
【0037】
図5に示すように、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、制御部100は、下流側回転軸45を介して、下流側プーリー42及び回転体50を、+R方向とは反対の方向である-R方向に回転させる。これにより、搬送ベルト43は、逆方向に周回する。このとき、回転体50のシート状部材52は、空気抵抗により、保持部材51の外周面に沿う姿勢から、外周面に交差する姿勢となり、シート状部材52の他端は、±X方向から見て搬送ベルト43の外側に向けて大きく突出する。つまり、回転体50は、-R方向に回転することにより、搬送ベルト43の下面よりも下方の位置まで突出する。このため、吸着搬送部22に吸着されなかった用紙Pがガイド部材18等にもたれ掛かっている場合、この用紙Pは、シート状部材52によって払い落されて、載置台31上の本来の位置に戻される。制御部100は、回転体50を-R方向に所定の回数回転させた後、回転を停止させる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の媒体供給装置20及びプリンター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0039】
本実施形態によれば、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後に、回転体50の一部が搬送ベルト43の下面より下方の位置まで突出することで、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを払い落とすことが可能となる。つまり、もたれ掛かった用紙Pを正しい位置に戻すために、載置台31を昇降させる必要がないため、用紙Pに記録を行う際の生産性の低下を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、回転体50は、下流側プーリー42とともに-R方向に回転することによって搬送ベルト43より下方の位置まで突出する。このため、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを簡単な構成で払い落とすことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態によれば、昇降可能な載置台31と、載置台31上に積載された用紙Pとを収容した用紙収容カセット4が筐体2の内部に配置されており、用紙収容カセット4は、筐体2から引き出し可能に構成されている。このため、回転体50によって用紙Pのもたれ掛かりが解消されることにより、用紙収容カセット4を引き出す際に、もたれ掛かった用紙Pが筐体2と用紙収容カセット4との間に挟まってしまうことを抑制できる。
【0042】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態に係るプリンター1について、図面を参照して説明する。
第2実施形態に係るプリンター1は、媒体供給装置20が、回転体50の代わりに、複数のフラップ60を備えている点で、第1実施形態と異なっており、それ以外の構成については、第1実施形態と共通である。フラップ60は、突出部の一例である。
【0043】
図6は、第2実施形態に係るプリンター1の媒体供給装置20を上方から見た平面図であり、
図7及び
図8は、
図6におけるB-B断面図である。B-B断面は、YZ平面に平行で、一方のベルト搬送機構40の±X方向における略中央を通る断面である。
図6、
図7及び
図8に示すように、本実施形態の搬送ベルト43には、周回方向に沿って複数のフラップ60が取り付けられている。つまり、フラップ60は、±X方向から見て、吸着搬送部22と重なる位置に設けられている。フラップ60は、薄い平板状の板状部61と、板状部61の一端に設けられ、板状部61を搬送ベルト43に対して回動可能に支持する支持部62と、板状部61から搬送ベルト43の内側に突出するストッパー63とを備えている。搬送ベルト43には、板状部61に対応する図示しない孔が設けられており、フラップ60は、板状部61でこの孔を塞ぐように配置されている。板状部61は、支持部62を回転中心として回動することにより、±X方向から見て吸着搬送部22の外側、即ち搬送ベルト43の外側に突出可能である。また、ストッパー63は、搬送ベルト43の内面に当接することにより、板状部61の回動範囲を制限する。
【0044】
図7に示すように、用紙Pが-Y方向に搬送される際、即ち上流側プーリー41及び下流側プーリー42が+R方向に回転することによって搬送ベルト43が順方向に周回する際に、各フラップ60の板状部61は、搬送ベルト43の外側に大きく突出することはない。具体的には、搬送ベルト43の下側平坦部にある板状部61は、吸引部46が吸引する吸引力により、搬送ベルト43の外側、即ち搬送ベルト43の下面より下方の位置まで突出することが抑制され、略水平な姿勢となる。一方、搬送ベルト43の上側平坦部にある板状部61は、自重により、搬送ベルト43の外側、即ち搬送ベルト43より上方への突出が抑制されている。また、搬送ベルト43のうち、上流側プーリー41及び下流側プーリー42の外周面に沿うように湾曲する部位にある板状部61は、搬送ベルト43の内側に倒れ込む。上流側プーリー41及び下流側プーリー42の±X方向の略中央には、それぞれ周方向に凹部64,65が形成されており、板状部61の倒れ込みが可能となっている。
【0045】
図8に示すように、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、制御部100は、下流側プーリー42を-R方向に回転させるとともに、吸引部46による吸引を停止する。これにより、搬送ベルト43は、逆方向に周回する。また、搬送ベルト43の下側平坦部にある板状部61は、吸引力が低下することによって回動し、搬送ベルト43の外側に突出するように傾斜する。さらに、板状部61は、上側平坦部では、自重の影響を受けるものの、周回に伴う空気抵抗により、搬送ベルト43の外側に突出する姿勢を維持する。つまり、板状部61は、搬送ベルト43の外側に突出した状態で、搬送ベルト43とともに逆方向に周回する。そして、板状部61は、下流側プーリー42の外周面に沿う位置に達すると、搬送ベルト43の下面よりも下方の位置まで突出するように周回する。このため、吸着搬送部22に吸着されなかった用紙Pがガイド部材18等にもたれ掛かっている場合、この用紙Pは、板状部61によって払い落されて、載置台31上の本来の位置に戻される。制御部100は、下流側プーリー42を-R方向に所定の回数回転させた後、回転を停止させる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の媒体供給装置20及びプリンター1によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態によれば、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、搬送ベルト43に取り付けられたフラップ60は、吸引部46の吸引力が低下することにより、±X方向から見て搬送ベルト43の外側に突出する。そして、フラップ60は、搬送ベルト43の外側に突出した状態で、搬送ベルト43とともに、搬送時とは反対の方向に周回することにより、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを払い落とす。このため、吸引部46の吸引力と搬送ベルト43の周回方向を制御することによって、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを容易に払い落とすことが可能となる。
【0048】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態に係るプリンター1について、図面を参照して説明する。
第3実施形態に係るプリンター1は、媒体供給装置20が、回転体50の代わりに、回動可能なアーム部材70を備えている点で、第1実施形態と異なっており、それ以外の構成については、第1実施形態と共通である。アーム部材70は、突出部の一例である。
【0049】
図9は、第3実施形態に係るプリンター1の媒体供給装置20を上方から見た平面図であり、
図10及び
図11は、
図9におけるC-C断面図である。C-C断面は、YZ平面に平行で、吸着搬送部22の±X方向における略中央を通る断面である。
図9、
図10及び
図11に示すように、本実施形態の媒体供給装置20は、上流側回転軸44に取り付けられたアーム部材70を備えている。アーム部材70は、±X方向から見て、吸着搬送部22と重なる位置に設けられている。アーム部材70は、円筒状の保持部材71と、棒状のアーム72とを有している。保持部材71は、±X方向から見て上流側プーリー41と重なる位置に配置され、同じく上流側プーリー41と重なる位置にある上流側回転軸44に対して回動可能に取り付けられている。アーム72は、保持部材71から下流側プーリー42に向かって延出する部材であり、吸引部46の下側に位置している。アーム部材70は、上流側回転軸44を回転中心として回動することにより、搬送ベルト43の下方、即ち±X方向から見て吸着搬送部22の外側に向けて突出可能である。
【0050】
図10に示すように、用紙Pが-Y方向に搬送される際、即ち上流側プーリー41及び下流側プーリー42が+R方向に回転することによって搬送ベルト43が順方向に周回する際に、アーム72は、吸引部46によって吸い寄せられ、略水平な姿勢となる。このとき、アーム72の下面は、搬送ベルト43の下側平坦部の下面よりも上方に位置する。このため、搬送されている用紙Pをアーム72が押圧することはない。
【0051】
図11に示すように、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、制御部100は、搬送ベルト43の周回を停止するとともに、吸引部46による吸引を停止する。この結果、アーム部材70は、アーム72の自重によって、上流側回転軸44を回転中心として回動することにより、搬送ベルト43の下面より下方の位置まで突出する。このため、吸着搬送部22に吸着されなかった用紙Pがガイド部材18等にもたれ掛かっている場合、この用紙Pは、アーム72によって払い落されて、載置台31上の本来の位置に戻される。なお、制御部100は、アーム部材70が回動する過程において、下流側プーリー42を-R方向に回転させることにより、搬送ベルト43を逆方向に周回させるようにしてもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の媒体供給装置20及びプリンター1によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0053】
本実施形態によれば、アーム部材70が、上流側プーリー41と重なる位置を回動中心として回動することによって搬送ベルト43の下面より下方の位置まで突出するため、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを簡単な構成で払い落とすことが可能となる。
【0054】
4.第4実施形態
以下、第4実施形態に係るプリンター1について、図面を参照して説明する。
第4実施形態に係るプリンター1は、第3実施形態と同様の構成であるが、アーム部材70が有するアーム72の長さが、第3実施形態と異なっている。
【0055】
図12は、第4実施形態に係るプリンター1の媒体供給装置20を上方から見た平面図であり、
図13は、
図12におけるD-D断面図である。D-D断面は、YZ平面に平行で、吸着搬送部22の±X方向における略中央を通る断面である。
図12及び
図13に示すように、本実施形態のアーム部材70は、第3実施形態に比べてアーム72の長さが長くなっている。具体的には、本実施形態のアーム72は、±Z方向から見て、保持部材71からガイド部材18と重なる位置まで延出している。また、ガイド部材18には、アーム72との接触を回避するための凹部73が形成されている。このため、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、アーム部材70は、ガイド部材18に接触することなく、搬送ベルト43の下面より下方の位置まで突出することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の媒体供給装置20及びプリンター1によれば、第3実施形態と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0057】
本実施形態によれば、アーム72との接触を回避するための凹部73がガイド部材18に形成されているため、アーム72の長さを長くすることが可能となる。このため、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを、長いアーム72で確実に払い落とすことが可能となる。
【0058】
5.第5実施形態
以下、第5実施形態に係るプリンター1について、図面を参照して説明する。
第5実施形態に係るプリンター1は、媒体供給装置20が、複数のシート状部材52を有する回転体50の代わりに、突起部82を有する回転体80を備えている点で、第1実施形態と異なっており、それ以外の構成については、第1実施形態と共通である。回転体80は、突出部の一例である。
【0059】
図14及び
図15は、第5実施形態に係るプリンター1の媒体供給装置20を-X側から見た断面図である。
図14及び
図15に示すように、本実施形態の媒体供給装置20は、下流側回転軸45に取り付けられた回転体80を備えている。回転体80は、±X方向から見て、吸着搬送部22と重なる位置に設けられている。具体的には、回転体80は、±X方向から見て下流側プーリー42と重なる位置で、下流側回転軸45に取り付けられている。なお、図示は省略しているが、回転体80は、第1実施形態の回転体50と同様、±Z方向から見て2つの下流側プーリー42の間に配置されている。
【0060】
回転体80は、円筒状の保持部材81と、保持部材81から突出する1つの突起部82とを有している。保持部材81は、図示しないラチェット機構を介して下流側回転軸45に取り付けられており、下流側回転軸45が-R方向に回転する際には、下流側回転軸45及び下流側プーリー42とともに回転する。一方、下流側回転軸45が+R方向に回転する際には、保持部材81は、下流側回転軸45に対して空回りする。つまり、下流側回転軸45が+R方向に回転する際、保持部材81は、下流側回転軸45及び下流側プーリー42とともに回転することはなく、その姿勢を変化させない。突起部82は、±X方向から見て保持部材81から外側に突出しており、回転体80の姿勢によっては、±X方向から見て吸着搬送部22の外側、即ち搬送ベルト43の外側に向けて突出可能である。具体的には、突起部82は、±X方向から見て、搬送ベルト43のうち、下流側プーリー42に巻き掛けられている部位から外側に突出可能である。
【0061】
図14に示すように、吸着搬送部22が用紙Pを-Y方向に搬送する際、即ち上流側プーリー41及び下流側プーリー42が+R方向に回転することによって搬送ベルト43が順方向に周回する際に、下流側回転軸45は、+R方向に回転しているため、回転体80は、回転せずに、同じ姿勢を維持している。このとき、突起部82は、搬送ベルト43の下面よりも上方に位置しており、搬送されている用紙Pを突起部82が強く押圧することはない。
【0062】
図15に示すように、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、制御部100は、下流側回転軸45を-R方向に回転させる。これにより、搬送ベルト43は、逆方向に周回する。このとき、回転体80は、下流側プーリー42とともに-R方向に回転し、突起部82は、回転体80が回転する過程で、±X方向から見て搬送ベルト43の外側に向けて突出する。つまり、回転体80は、-R方向に回転することにより、搬送ベルト43の下面よりも下方の位置まで突出する。このため、吸着搬送部22に吸着されなかった用紙Pがガイド部材18等にもたれ掛かっている場合、この用紙Pは、突起部82によって払い落されて、載置台31上の本来の位置に戻される。制御部100は、回転体80を-R方向に所定の回数回転させた後、回転を停止させる。
【0063】
なお、回転体80は、複数の突起部82を備えていてもよい。この場合、すべての突起部82は、吸着搬送部22が用紙Pを搬送する際に、搬送ベルト43の下面よりも上方に位置している必要がある。また、第4実施形態と同様、突起部82の長さを長くするとともに、ガイド部材18に凹部73を形成するようにしてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の媒体供給装置20及びプリンター1によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態によれば、下流側プーリー42とともに回転体80が-R方向に回転することにより、突起部82が搬送ベルト43より下方の位置まで突出するため、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを簡単な構成で払い落とすことが可能となる。
【0066】
6.第6実施形態
以下、第6実施形態に係るプリンター1について、図面を参照して説明する。
【0067】
図16は、第6実施形態に係るプリンター1の媒体供給装置20を-X側から見た断面図である。
図16に示すように、本実施形態のプリンター1は、吸着搬送部22自体が回動可能である点と、媒体供給装置20が回転体50を備えていない点で第1実施形態と異なっており、それ以外の構成については、第1実施形態と共通である。本実施形態において、吸着搬送部22は、図示しない駆動機構の駆動により、上流側プーリー41、即ち上流側回転軸44を回動中心として回動可能に構成されている。
【0068】
用紙Pが-Y方向に搬送される際、即ち上流側プーリー41及び下流側プーリー42が+R方向に回転することによって搬送ベルト43が順方向に周回する際に、吸着搬送部22は、上側平坦部及び下側平坦部が略水平となるような姿勢を維持している。
【0069】
吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後、制御部100は、搬送ベルト43の周回を停止するとともに、下流側プーリー42が下方に移動するように、吸着搬送部22を所定の角度だけ回動させる。言い換えれば、吸着搬送部22は、用紙Pを搬送した後に、上流側プーリー41を回動中心として回動することにより、下流側プーリー42を載置台31に近づける。このため、吸着搬送部22に吸着されなかった用紙Pがガイド部材18等にもたれ掛かっている場合、この用紙Pは、吸着搬送部22によって払い落されて、載置台31上の本来の位置に戻される。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の媒体供給装置20及びプリンター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0071】
本実施形態によれば、吸着搬送部22は、用紙Pを搬送した後に、下流側プーリー42を載置台31に近づけることで、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを払い落とすことが可能となる。つまり、もたれ掛かった用紙Pを正しい位置に戻すために、載置台31を昇降させる必要がないため、用紙Pに記録を行う際の生産性の低下を抑制できる。
【0072】
なお、本実施形態において、制御部100は、吸着搬送部22を回動させて下流側プーリー42を載置台31に近づける際に、上流側プーリー41及び下流側プーリー42を-R方向に回転させて、搬送ベルト43を逆方向に周回させるようにしてもよい。この構成によれば、用紙Pをより確実に払い落とすことが可能となる。
【0073】
7.変形例
上記の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0074】
上記の各実施形態では、媒体供給装置20は、プリンター1の筐体2の内部に配置され、同じく筐体2の内部に配置される用紙収容カセット4から用紙Pをピックアップしてラインヘッド10に向けて供給する構成を示したが、この構成に限定されない。例えば、媒体供給装置20は、プリンター1の筐体2の外部に配置され、同じく筐体2の外部に配置される載置台31から用紙Pをピックアップして筐体2の内部に向けて供給する構成であってもよい。なお、上記の各実施形態のように、媒体供給装置20がプリンター1の筐体2の内部に配置される場合、筐体2は、媒体供給装置20の外装と見なすことができる。
【0075】
上記の第1実施形態では、回転体50は、可撓性を有するシート状部材52を備えているが、用紙Pを強く押圧することがなければ、シート状部材52の代わりに、可撓性を有さない平板状の部材を用いてもよい。
【0076】
上記の第2実施形態において、フラップ60にねじりバネ等の付勢手段を備えて、板状部61が外側に突出する方向に板状部61を付勢するようにしてもよい。このとき、付勢手段の付勢力を吸引部46の吸引力よりも小さくしておけば、板状部61は、下側平坦部において外側への突出が抑制されるため、搬送される用紙Pを強く押圧することはない。また、フラップ60の板状部61は、平板状のゴムのような可撓性を有する部材であってもよい。
【0077】
上記の第3実施形態では、吸引部46の吸引力によってアーム72を水平に保持しており、吸引を停止することによってアーム72を突出させているが、吸引部46の動作に連動してアーム72が突出する構成に限定されない。例えば、搬送ベルト43が逆方向に周回することに連動して、アーム72が突出する構成であってもよい。
【0078】
上記の第3及び第4実施形態では、吸引部46による吸引が停止することによってアーム部材70のアーム72が突出する。また、上記の第5実施形態では、下流側回転軸45が-R方向に回転することに連動して、回転体80の突起部82が突出する。これらの構成に代えて、アーム72を個別に回動させる駆動部、または回転体80を個別に回転させる駆動部を別途備えるようにしてもよい。この場合、制御部100は、吸着搬送部22が用紙Pを搬送した後に、これらの駆動部を制御して、アーム72を回動させたり、回転体80を回転させる。
【0079】
上記の第3及び第4実施形態において、アーム72の先端の下側に、用紙Pを払い落とす際に、用紙Pが滑ることを抑制するための滑り止め部材90を配置するようにしてもよい(
図17参照)。滑り止め部材90は、例えば、ゴム等の弾性部材で構成することが望ましい。また、滑り止め部材90を配置する代わりに、アーム72の先端の下側に、細かな凹凸が形成された領域を設けるようにしてもよい。
【0080】
上記の第1~第5実施形態で示した構成と、上記の第6実施形態で示した構成とを組み合わせてもよい。つまり、第1~第5実施形態における吸着搬送部22を、上流側プーリー41を回動中心として回動可能な構成としてもよい。この場合、吸着搬送部22は、用紙Pを搬送した後に、上流側プーリー41を回動中心として回動することによって下流側プーリー42を載置台31に近づける。この構成によれば、突出部を突出させることに加えて、吸着搬送部22の下流側プーリー42を載置台31に近づけるため、ガイド部材18等にもたれ掛かった用紙Pを、より確実に払い落とすことが可能となる。
【0081】
上記の各実施形態では、下流側回転軸45が、搬送駆動部17に接続され、搬送駆動部17の駆動により回転する構成であるが、搬送駆動部17に接続される回転軸は、上流側回転軸44であってもよい。
【0082】
上記の各実施形態において、プリンター1は、インク以外の他の液体を吐出する装置であってもよい。また、プリンター1は、液体を吐出する液体吐出装置に限定されない。例えば、サーマル式、ドットインパクト式、レーザー式の記録装置であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…プリンター、2…筐体、4…用紙収容カセット、5…排出口、6…排出媒体載置部、7…操作パネル、10…ラインヘッド、11…搬送経路、12…給送経路、13…ストレート経路、14…フェイスダウン排出経路、15…スイッチバック経路、16…反転経路、17…搬送駆動部、18…ガイド部材、19…搬送ローラー対、20…媒体供給装置、21…送風部、22…吸着搬送部、23…搬送ローラー対、24…媒体支持部、30…搬送ローラー対、31…載置台、32…側壁、33…用紙センサー、34…第1送風部、35…第2送風部、36…昇降駆動部、40…ベルト搬送機構、41…上流側プーリー、42…下流側プーリー、43…搬送ベルト、44…上流側回転軸、45…下流側回転軸、46…吸引部、50…回転体、51…保持部材、52…シート状部材、60…フラップ、61…板状部、62…支持部、63…ストッパー、64,65…凹部、70…アーム部材、71…保持部材、72…アーム、73…凹部、80…回転体、81…保持部材、82…突起部、90…滑り止め部材、100…制御部、P…用紙。