(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172114
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20241205BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20241205BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/00
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089638
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】勝田 巧也
(72)【発明者】
【氏名】越田 崇文
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H611
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D235AA02
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB04
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】小型化を図りながら効率的な熱マネジメントが可能な車両駆動装置を提供する。
【解決手段】車両駆動装置は、駆動回転力を車両の走行系に伝える電動モータ21を少なくとも含む電動車両用駆動ユニット2と、電動モータ21を駆動するための電子回路31を少なくとも含む電子回路ユニット3と、が筐体に内蔵されて一体化された統合ユニット1と、電子回路ユニット3が固定され、内部に冷却流体が流通する冷却プレート36と、電動車両用駆動ユニット2に循環するオイルと冷却流体との間で熱交換を行う第1熱交換器62と、冷暖房用の冷媒と冷却流体との間で熱交換を行う第2熱交換器81と、を備え、第2熱交換器81は、筐体5の外面5Aに固定されており、第1熱交換器62及び第2熱交換器81は、筐体5の壁を隔てて互いに対向する位置に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回転力を車両の走行系に伝える電動モータを少なくとも含む電動車両用駆動ユニットと、前記電動モータを駆動するための電子回路を少なくとも含む電子回路ユニットと、が筐体に内蔵されて一体化された統合ユニットと、
前記電子回路ユニットが固定され、内部に冷却流体が流通する冷却プレートと、
前記電動車両用駆動ユニットに循環するオイルと前記冷却流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
冷暖房用の冷媒と前記冷却流体との間で熱交換を行う第2熱交換器と、を備え、
前記第2熱交換器は、前記筐体の外面に固定されており、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、前記筐体の壁を隔てて互いに対向する位置に配置されている車両駆動装置。
【請求項2】
前記統合ユニットは、前記電動車両用駆動ユニットが配置される第1空間と、前記電子回路ユニットが配置されている第2空間とを区画する区画壁を有し、
前記第1熱交換器から流出する前記冷却流体は、前記区画壁の壁面に沿うように形成された前記区画壁の内部流路を介して前記第2熱交換器へと流れる請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記統合ユニットは、前記冷媒が流れる冷媒流路を含む冷媒マニホールドと前記第2熱交換器とが一体化された冷媒ユニットを有し、
前記冷媒マニホールドは、前記第2熱交換器の上方に位置している請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記統合ユニットは、前記冷媒が流れる冷媒流路を含む冷媒マニホールドを、前記第2熱交換器に対して上方且つ分離した状態で有しており、
前記第2熱交換器は、前記筐体に対して側方側から接続されている請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動回転力を車両の走行系に伝える電動モータを少なくとも含む電動車両用駆動ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電動車両用駆動ユニットは、電動モータとギア部とをハウジングに収容して一体化させることで小型化を図り、電動車両用駆動ユニットに循環するオイルと冷却水との間で熱交換する冷却システムに接続されている。
【0003】
特許文献1に記載の冷却システムは、インバータユニットを電動車両用駆動ユニットに取り付け、インバータユニットからオイルクーラへと循環する冷却水と、電動車両用駆動ユニットに循環するオイルとの間で熱交換を行っている。オイルクーラは、電動車両用駆動ユニットのモータ収容部の下部に取り付けられており、インバータユニットとの間で冷却配管が引き回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却システムは、オイルクーラがハウジングの下部に取り付けられており、冷却配管が露出しているため、この冷却配管で放熱してしまい、熱回収率が低下する。
【0006】
そこで、小型化を図りながら効率的な熱マネジメントが可能な車両駆動装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両駆動装置の特徴構成は、駆動回転力を車両の走行系に伝える電動モータを少なくとも含む電動車両用駆動ユニットと、前記電動モータを駆動するための電子回路を少なくとも含む電子回路ユニットと、が筐体に内蔵されて一体化された統合ユニットと、前記電子回路ユニットが固定され、内部に冷却流体が流通する冷却プレートと、前記電動車両用駆動ユニットに循環するオイルと前記冷却流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、冷暖房用の冷媒と前記冷却流体との間で熱交換を行う第2熱交換器と、を備え、前記第2熱交換器は、前記筐体の外面に固定されており、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器は、前記筐体の壁を隔てて互いに対向する位置に配置されている点にある。
【0008】
本特徴構成では、電動車両用駆動ユニットと電子回路ユニットとを一体化した統合ユニットを備えるため、電動車両用駆動ユニットと電子回路ユニットとを別々に配置した場合に比べて、小型化を図ることができる。また、冷却流体とオイルとの間で熱交換を行う第1熱交換器により、電動車両用駆動ユニットの廃熱を冷却液により回収することができる。また、冷暖房用の冷媒と冷却流体との間で熱交換を行う第2熱交換器により、電子回路ユニットを冷却液により効果的に冷却することができる。
【0009】
さらに、本特徴構成では、第2熱交換器は、筐体の外面に固定されており、第1熱交換器及び第2熱交換器は、筐体の壁を隔てて互いに対向する位置に配置されている。これにより、第1熱交換器及び第2熱交換器を接続する配管長を短くして放熱を抑制し、統合ユニットの外部で冷媒と冷却流体との熱交換を効率的に行うことが可能となり、熱回収率を向上することができる。
【0010】
このように、電動車両用駆動ユニットの廃熱が冷却配管から放熱することを抑制でき、小型化を図りながら効率的な熱マネジメントが可能な車両駆動装置となっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】第1実施形態の車両駆動装置を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態の車両駆動装置を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態の車両駆動装置の回路構成を示す図である。
【
図6】統合ユニットに収容された水冷プレートの側面図である。
【
図7】オイルクーラが装着された水冷プレートの斜視図である。
【
図8】第1実施形態の車両駆動装置の部分斜視断面図である。
【
図9】第1実施形態の車両駆動装置の部分側面図である。
【
図10】第1実施形態の車両駆動装置の部分側面図である。
【
図11】第2実施形態の車両駆動装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、車両駆動装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0013】
電動自動車は、バッテリから供給される電流により車輪を駆動する電動車両用駆動ユニットを備えて構成されている。電動自動車は、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が挙げられる。
【0014】
〔第1実施形態〕
電動自動車は、
図1及び
図2に示される統合ユニット1を備える。統合ユニット1は、電動車両用駆動ユニット2(以下、「車両用駆動ユニット2」と称する)、電子回路ユニット3、及び、冷却モジュール4(冷媒ユニットの一例)を備える。統合ユニット1において、車両用駆動ユニット2及び電子回路ユニット3は、ユニットケース5(筐体の一例)に収容されて一体化されている。冷却モジュール4は、電子回路ユニット3に隣接して配置される。以下の図では、例えば
図1に示されるように、車両の進行方向(車両前後方向)をX方向とし、車両の幅方向(車両左右方向)をY方向とし、車両の高さ方向をZ方向とする。また、車両の進行方向前側をX1側、進行方向後側をX2側とし、車幅方向左側をY1側、車幅方向右側をY2側とする。
【0015】
冷却モジュール4は、後述するチラー86、水冷コンデンサ81、アキュムレータ82、及び弁やポンプ等の補機類と、冷却流路B及び冷媒流路Dの一部がモジュール化されてユニットケース5に組付けられている。
図2では、冷却モジュール4のうち、冷媒流路Dを含む冷媒マニホールド4aのみが示されている。以下に示す本実施形態における車両駆動装置Aは、車両用駆動ユニット2と、電子回路ユニット3と、冷媒マニホールド4aとがユニットケース5に収容された例を示すが、統合ユニット1の形状や構造は特に限定されない。
【0016】
車両用駆動ユニット2は、駆動回転力を車両の走行系に伝える電動モータ21を少なくとも含んでいる。具体的には、車両用駆動ユニット2は、電動モータ21、減速機構を有するギア22等を有する。電子回路ユニット3は、電動モータ21等を駆動するための電子回路31を少なくとも含んでいる。電子回路ユニット3は、ユニットケース5に収容されて電源モジュール100を構成している。
【0017】
図2に示されるように、統合ユニット1は、ユニットケース5において、車両用駆動ユニット2が下方に配置され、電子回路ユニット3が上方に配置されている。
図3及び
図4に示されるように、統合ユニット1は、車両用駆動ユニット2が配置される第1空間11と、電子回路ユニット3が配置されている第2空間12と、第1空間11と第2空間12とを区画する区画壁Sを有する。すなわち、統合ユニット1は、区画壁Sによって下部の第1空間11と上部の第2空間12に区画される。
【0018】
電子回路ユニット3は、ユニットケース5の上部に配置されて、区画壁Sに固定されている。車両用駆動ユニット2は、区画壁Sの下方に配置されている。
図3に示されるように、冷却モジュール4は、電子回路ユニット3に隣接して配置されている。具体的には、ユニットケース5の上部には冷媒マニホールド4aが配置され、ユニットケース5の側面5A(外面の一例)には水冷コンデンサ81が装着されている。このように、統合ユニット1は、冷媒が流れる冷媒流路Dを含む冷媒マニホールド4aと水冷コンデンサ81とが一体化された冷却モジュール4を有する。冷却モジュール4において、冷媒マニホールド4aは水冷コンデンサ81の上方に位置している。
【0019】
図4に示されるように、ユニットケース5の側面5Aには、弁ユニット6が配置されている。本実施形態では、ユニットケース5の側面5Aにおいて、水冷コンデンサ81が前側(X1方向の側)の左側(Y1方向の側)に位置し、弁ユニット6が前側(X1方向の側)の右側(Y2方向の側)に位置する。なお、弁ユニット6は、冷却流路Bに配置されており、ウォータポンプ51と弁52とを含んでいる。
【0020】
図2~
図4に示されるように、電子回路31としてオンボードチャージャ(OBC)32(電圧変換回路)やインバータ(INV)33を構成する複数の電子部品が基板35に実装されている。インバータ33は、バッテリ87から電動モータ21に供給される電流を制御する。オンボードチャージャ32は、少なくともバッテリ87に充電する電圧を制御する。本実施形態では、インバータ33が電子回路ユニット3の上部に配置され、オンボードチャージャ32が電子回路ユニット3の上部及び下部に配置されている。
【0021】
このように、電子回路ユニット3に含まれる電子回路31に、インバータ33だけでなく、オンボードチャージャ32も含めることで、車両駆動装置Aは更に小型化を図ることができる。なお、
図2~
図4に示される電子回路ユニット3に実装される電子回路31の配置は一例であって、電子回路31の配置は適宜変更可能である。基板35に実装された電子部品(電子回路31)は、その内部に後述する冷却流路Bの第2流路55の一部を構成する冷却プレート36により冷却される。これにより、電子回路ユニット3(電源モジュール100)は、冷却流路Bを流れる冷却流体によって冷却可能に構成されている。
【0022】
図3~
図5に示されるように、車両駆動装置Aは、車両用駆動ユニット2及び電子回路ユニット3が統合された統合ユニット1と、電子回路ユニット3(電源モジュール100)に冷却流体を循環させる冷却流路Bと、車両用駆動ユニット2にオイルを循環させるオイル流路Cと、車内の冷暖房用の冷媒を循環させる冷媒流路Dと、を備えて構成されている。冷却流路Bには、冷却流体として、例えばエチレングリコール等を主成分とした不凍液、ロングライフクーラント等の冷却水や絶縁油等の冷却液が流通する。冷媒流路Dには、例えばハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒(冷却流体)が流通する。冷却流路Bは、冷却流体として、冷却液の代わりに冷媒を流通させて、オイルと冷媒との間で熱交換してもよい。すなわち、車両駆動装置Aは、冷却流路Bに冷媒を流通させることで、冷却流路B及び冷媒流路Dを流通する冷却流体を冷媒に統一してもよい。
【0023】
冷却流路Bについて説明する。冷却流路Bは、
図5において、電動モータ21の上方に示される流路である。冷却流路Bは、弁ユニット6、電源モジュール100と、後述のオイルクーラ62(第1熱交換器の一例)と、水冷コンデンサ81(第2熱交換器の一例)、ラジエータ53等を流路途中に備える。冷却流路Bは、水冷コンデンサ81からラジエータ53に向かう第1流路54と、ラジエータ53から水冷コンデンサ81に向かう第2流路55とを有する。電子回路ユニット3には、冷却流路Bの第2流路55の一部が冷却プレート36の内部流路として形成されている。冷却流路Bの一部はユニットケース5の内部に配置されている。
【0024】
冷却流路Bは、電源モジュール100(電子回路ユニット3)、オイルクーラ62、水冷コンデンサ81、ラジエータ53の順で冷却液(冷却流体の一例)を循環させる。また、冷却流路Bには、ラジエータ53に冷却液を供給する第1流路54に、ラジエータ53に冷却液を流通させる第1状態と、ラジエータ53への冷却液の流入を遮断して迂回させる第2状態と、に切替可能な弁52が配置されている。これにより、冷却流路Bは、弁52によって、冷却液がラジエータ53を経由して第2流路55に合流する流路56と、冷却液がラジエータ53を経由せずに流れて第2流路55に合流する流路57とに切替えることができる。冷却流路Bにおいて、ウォータポンプ51は弁52及びラジエータ53の下流側に配置されている。また、冷却流路Bは、電子回路ユニット3からオイルクーラ62に向かう流路58と、オイルクーラ62から水冷コンデンサ81に向かう流路59と、を有する。
【0025】
次に、オイル流路Cについて説明する。オイル流路Cは、
図5において、電子回路ユニット3の下方に示される流路である。オイル流路Cは、オイルポンプ61とオイルクーラ62とを流路途中に備え、電動モータ21等にオイルを供給して車両用駆動ユニット2にオイルを循環させる。オイルクーラ62は、冷却流路Bにおいて電源モジュール100(電子回路ユニット3)の下流側に位置し、冷却流路Bを循環する冷却液とオイルとの間で熱交換を行う。
【0026】
次に、冷媒流路Dについて説明する。冷媒流路Dは、
図5において右側に示される流路であり、冷暖房用の冷媒が循環するように構成されている。冷媒流路Dは、車内の暖房用の冷媒を循環させる暖房流路71と、車内の冷房用の冷媒を循環させる冷房流路72と、車両に搭載されたバッテリ87を冷却するために冷媒を循環させるバッテリ冷却流路73と、を備える。暖房流路71は、水冷コンデンサ81、アキュムレータ82、コンプレッサ83、及び、キャビンコンデンサ84(暖房用コンデンサ)が順に配置されて全体としてヒートポンプを構成する。冷媒流路Dは、冷却流路Bを循環する冷却液と熱交換を行う水冷コンデンサ81を流路途中に備える。水冷コンデンサ81は、冷却流路Bにおいてオイルクーラ62の下流側に位置し、冷却流路Bを循環する冷却液と冷媒との間で熱交換を行う。
【0027】
暖房流路71において、水冷コンデンサ81とアキュムレータ82との間の流路74に開閉弁91が配置され、キャビンコンデンサ84と水冷コンデンサ81との間の流路76には第1膨張弁92が配置されている。
図5に示す例では、コンプレッサ83及びキャビンコンデンサ84が、ユニットケース5の外部に配置されている。
【0028】
冷房流路72は、流路74の開閉弁91の上流側から分岐する流路77によって構成されている。流路77は、流路途中に第2膨張弁93とエバポレータ85とを順に備え、流路74の開閉弁91の下流側に合流するように構成されている。つまり、開閉弁91を閉じた状態で第2膨張弁93を駆動させると、流路77に冷媒が流通し、エバポレータ85により車室冷房が実行される。
図5に示す例では、冷房流路72において、エバポレータ85はユニットケース5の外部に配置されている。
【0029】
バッテリ冷却流路73は、冷房流路72の流路77の第2膨張弁93の上流側から分岐する流路78によって構成されている。流路78は、流路途中に第3膨張弁94とチラー86とを順に備え、流路77のエバポレータ85の下流側に合流するように構成されている。つまり、開閉弁91を閉じた状態で第3膨張弁94を駆動させると、流路78に冷媒が流通し、チラー86により冷媒と冷却循環路79を循環する冷却液との間で熱交換される。なお、冷媒流路Dにおいて、開閉弁91、第1膨張弁92、第2膨張弁93、第3膨張弁94はモジュール化して冷却モジュール4と一体化することが好ましい。
【0030】
さらに、バッテリ冷却流路73に配置されたチラー86は、バッテリ87に冷却液を循環させる冷却循環路79にも配置されている。冷却循環路79には、流路途中にウォータポンプ88が配置されている。バッテリ87は、バッテリ冷却流路73においてユニットケース5の外部後方に位置する例えば車室床下空間に配置されている。
【0031】
〔冷却プレート〕
図3及び
図4に示されるように、ユニットケース5の第2空間12には、電源モジュール100を冷却する冷却プレート36と電子回路ユニット3とが収容されている。冷却プレート36は、アルミ等の熱伝導率の高い金属からなり、板状の下プレート36aと上プレート36bとを溶着等の方法により接合することにより一体形成されている。冷却プレート36は、内部(下プレート36aと上プレート36bとの間)に空間が形成されており、その空間を冷却液が流通する。電源モジュール100と冷却液との間で熱交換を行うことにより、電源モジュール100の温度を低下させると共に、冷却液の温度を上昇させる。
【0032】
図3及び
図4に示されるように、冷却プレート36の第2流路55は、水平方向に配置されている。本実施形態では、冷却プレート36の流入口37から冷却液が流入し、流出口38から冷却液が流出する。
【0033】
図6及び
図7に示されるように、オイルクーラ62は、例えば電子回路31の側の上面62Aと、電動モータ21の側の下面62Bとを有するボックス形状で形成されている。オイルクーラ62は、上面62Aに冷却液を上方から流入する冷却液流入口63が設けられ、下面62Bにはオイルクーラ62の側方に向けて延出させて冷却液を流出する冷却液流出口64が設けられている。また、オイルクーラ62は、オイルが流入するオイル流入口66と、オイルが流出するオイル流出口67とを、下面62Bに個別に有する。
【0034】
オイルクーラ62は、第2空間12に配置された状態で、冷却プレート36に凹凸係合されている。具体的には、冷却プレート36の下プレート36aに形成された流出口38は、下方に向けて突出した筒状部であり、オイルクーラ62の冷却液流入口63に冷却プレート36の流出口38が挿入されて嵌合する。図示しないが、オイルクーラ62の冷却液流入口63が上方に向けて突出した筒状部で構成され、冷却プレート36の流出口38が開口で構成されてもよい。この場合は、冷却プレート36の流出口38にオイルクーラ62の冷却液流入口63(筒状部)が挿入されて嵌合する。オイルクーラ62は、下面62Bに支持プレートPが接合されており、区画壁Sに対して位置決めされてねじ部材40等によって区画壁Sに締結されている(
図4も参照)。また、冷却プレート36を含む電子回路ユニット3は、同じく区画壁Sに対して位置決めされてねじ部材41等よって区画壁Sに締結されている(
図4も参照)。
【0035】
図7に示されるように、本実施形態では、オイルクーラ62は、冷却プレート36の下プレート36aに沿う平面の投影面上において、冷却液流入口63及び冷却液流出口64と、オイル流入口66及びオイル流出口67とが、夫々対角線上に配置されている。具体的には、冷却プレート36の下プレート36aに沿う平面の投影面上において、冷却液流入口63がX1方向寄り且つY1方向寄りに配置され、冷却液流出口64がX2方向寄り且つY2方向寄りに配置されている。また、同じく下プレート36aに沿う平面の投影面上において、オイル流入口66がX2方向寄り且つY1方向寄りに配置され、オイル流出口67がX1方向寄り且つY2方向寄りに配置されている。
【0036】
図8に示されるように、オイルクーラ62及び水冷コンデンサ81は、ユニットケース5の壁(側面5A)を隔てて互いに対向する位置に配置されている。
図3に示されるように、水冷コンデンサ81は、ユニットケース5の側面5Aのうちオイルクーラ62に近接する位置に取付けられている。冷却液流出口64と水冷コンデンサ81との間には流路部65が設けられている。
図3に示す例では、流路部65は、区画壁Sの壁面に沿うように形成された第一部分65aと、下面62Bから上面62Aに向けて屈曲する第二部分65bと、第一部分65aと同方向に延設されてユニットケース5の内外に連続する第三部分65cと、を有して構成される。すなわち、第三部分65cは、ユニットケース5の側面5Aを貫通するように形成されており、水冷コンデンサ81の内部に接続されている。
【0037】
図8に示されるように、流路部65は、オイルクーラ62の冷却液流出口64と水冷コンデンサ81との間に、第二部分65b及び第三部分65cを有さずに区画壁Sに沿う第一部分65aのみを有して構成されてもよい。
【0038】
このように、オイルクーラ62及び水冷コンデンサ81を近接させ、冷却液流出口64と水冷コンデンサ81との間に流路部65が設けられることで、オイルクーラ62に接続される冷却液の配管部(流路部65)がオイルクーラ62の高さ方向において大きく占有することなく、オイルクーラ62を車両用駆動ユニット2と電子回路ユニット3(電源モジュール100)との間に配置した場合でも、統合ユニット1をコンパクトなものにできる。
【0039】
また、
図3及び
図4に示されるように、オイルクーラ62のオイル流出口67には、電動モータ21に向けてオイルを供給する供給部68が接続されており、供給部68から流出されたオイルは、オイルクーラ62の下面62Bから電動モータ21に向かって流出するように配置されている。こうして、オイルがオイルクーラ62の下面62Bから電動モータ21に向かって流出する。
【0040】
図4、
図9及び
図10に示されるように、ウォータポンプ51は、側面視において冷却プレート36の少なくとも一部と重畳する位置でユニットケース5の側面5Aに固定されている。
図4に示されるように、ウォータポンプ51は、統合ユニット1に対してラジエータ53と同じ側に配置されている。
【0041】
図9及び
図10に示されるように、ウォータポンプ51は、冷却液吸入口51aと冷却液吐出口51bとを有し、側面視において、冷却液吐出口51bが少なくとも冷却プレート36の一部と重畳するように配置されている。具体的には、ウォータポンプ51の冷却液吐出口51bが冷却プレート36の上下方向の幅W内に位置している。
【0042】
図4の模式図に示されるように、ウォータポンプ51の冷却液吐出口51bと冷却プレート36の流入口37とは接続流路39によって接続されている。接続流路39は、冷却プレート36の下方に設けられており、冷却プレート36の底面(下プレート36a)に沿って形成されている。
【0043】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、冷媒マニホールド4aと水冷コンデンサ81とが一体となってユニットケース5の外部に配置される例を示した。これに代えて、
図11に示されるように、冷媒マニホールド4aと水冷コンデンサ81とが分割され、統合ユニット1に冷媒マニホールド4a及び水冷コンデンサ81が個別に組み付けられていてもよい。具体的には、
図11に示されるように、統合ユニット1は、冷媒が流れる冷媒流路Dを含む冷媒マニホールド4aを、水冷コンデンサ81に対して上方且つ分離した状態で有し、水冷コンデンサ81はユニットケース5に対して側方側から接続されている。
【0044】
本実施形態のように、水冷コンデンサ81をユニットケース5に対して側方側から接続することで、オイルクーラ62と水冷コンデンサ81との間の配管長を短くすることができ、車両駆動装置Aをコンパクトなものにできる。
【0045】
[その他の実施形態]
(1)上記の実施形態では、冷却流路Bにおいてウォータポンプ51と弁52が一体化されて構成される例を示したが、ウォータポンプ51と弁52が別体で構成されていてもよく、ウォータポンプ51と弁52とが個別のハウジングに収容されていてもよい。
(2)熱交換をする冷却液と冷媒の流通方向、及び、冷却液とオイルの流通方向は同方向及び反対方向のいずれでもよい。
(3)上述した実施形態における統合ユニット1において、車両用駆動ユニット2及び電子回路ユニット3は、ユニットケース5に収容されて一体化されていたが、車両用駆動ユニット2及び電子回路ユニット3は、夫々異なるケースに収容して夫々のケースを連結して構成してもよい。
(4)上記の実施形態では、オイルクーラ62は、冷却液流入口63が上面62Aに設けられ、冷却液流出口64が下面62Bに設けられる例を示した。これに代えて、オイルクーラ62は、冷却液流入口63及び冷却液流出口64の両方が上面62Aに設けられていてもよい。
【0046】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
<1>車両駆動装置(A)の1つの態様は、駆動回転力を車両の走行系に伝える電動モータ(21)を少なくとも含む電動車両用駆動ユニット(2)と、電動モータ(21)を駆動するための電子回路(31)を少なくとも含む電子回路ユニット(3)と、が筐体(5)に内蔵されて一体化された統合ユニット(1)と、電子回路ユニット(3)が固定され、内部に冷却流体が流通する冷却プレート(36)と、電動車両用駆動ユニット(2)に循環するオイルと冷却流体との間で熱交換を行う第1熱交換器(62)と、冷暖房用の冷媒と冷却流体との間で熱交換を行う第2熱交換器(81)と、を備え、第2熱交換器(81)は、筐体(5)の外面(5A)に固定されており、第1熱交換器(62)及び第2熱交換器(81)は、筐体(5)の壁を隔てて互いに対向する位置に配置されている。
【0047】
本構成では、車両駆動装置(A)は、電動車両用駆動ユニット(2)と電子回路ユニット(3)とを一体化した統合ユニット(1)を備えるため、電動車両用駆動ユニット(2)と電子回路ユニット(3)とを別々に配置した場合に比べて、小型化を図ることができる。また、冷却流体とオイルとの間で熱交換を行う第1熱交換器(62)により、電動車両用駆動ユニット(2)の廃熱を冷却流体により回収することができる。また、冷暖房用の冷媒と冷却流体との間で熱交換を行う第2熱交換器(81)により、電子回路ユニット(3)を冷却流体により効果的に冷却することができる。
【0048】
さらに、本構成では、第2熱交換器(81)は、筐体(5)の外面(5A)に固定されており、第1熱交換器(62)及び第2熱交換器(81)は、筐体(5)の壁(5A)を隔てて互いに対向する位置に配置されている。これにより、第1熱交換器(62)及び第2熱交換器(81)を接続する配管長を短くして放熱を抑制し、統合ユニット(1)の外部で冷媒と冷却流体との熱交換を効率的に行うことが可能となり、熱回収率を向上することができる。
【0049】
このように、電動車両用駆動ユニット(3)の廃熱が冷却配管から放熱することを抑制でき、小型化を図りながら効率的な熱マネジメントが可能な車両駆動装置(A)となっている。
【0050】
<2>統合ユニット(1)は、電動車両用駆動ユニット(2)が配置される第1空間(11)と、電子回路ユニット(3)が配置されている第2空間(12)とを区画する区画壁を有し、第1熱交換器(62)から流出する冷却流体は、区画壁(S)の壁面に沿うように形成された区画壁(S)の内部流路(65a)を介して第2熱交換器(81)へと流れると好適である。
【0051】
本構成のように、第1熱交換器(62)から流出する冷却流体が、区画壁(S)の壁面に沿うように形成された区画壁(S)の内部流路(65a)を介して第2熱交換器(81)へと流れれば、車両駆動装置(A)は更なる小型化を図ることができる。
【0052】
<3>統合ユニットは、冷媒が流れる冷媒流路(D)を含む冷媒マニホールド(4a)と第2熱交換器(81)とが一体化された冷媒ユニット(4)を有し、冷媒マニホールド(4a)は、第2熱交換器(81)の上方に位置していると好適である。
【0053】
本構成のように、冷媒が流れる冷媒流路(D)を含む冷媒マニホールド(4a)と第2熱交換器(81)とが一体化された冷媒ユニット(4)を有し、冷媒マニホールド(4a)が第2熱交換器(81)の上方に位置することで、車両駆動装置(A)はコンパクトなものにできる。
【0054】
<4>統合ユニット(1)は、冷媒が流れる冷媒流路(D)を含む冷媒マニホールド(4a)を、第2熱交換器(81)に対して上方且つ分離した状態で有しており、第2熱交換器(81)は、筐体(5)に対して側方側から接続されていると好適である。
【0055】
本構成のように、冷媒マニホールド(4a)を、第2熱交換器(81)に対して上方且つ分離した状態で第2熱交換器(81)を筐体(5)に対して側方側から接続することで、第1熱交換器(62)と第2熱交換器(81)との間の配管長を更に短くすることが可能となり、車両駆動装置(A)をコンパクトなものにできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、電動車両の車両駆動装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:統合ユニット、2:電動車両用駆動ユニット、3:電子回路ユニット、4:冷却モジュール(冷媒ユニット)、4a:冷媒マニホールド、5:ユニットケース(筐体)、5A:側面(外面)、11:第1空間、12:第2空間、21:電動モータ、31:電子回路、36:冷却プレート、62:オイルクーラ(第1熱交換器)、65:流路部、65a:第一部分(内部流路)、81:水冷コンデンサ(第2熱交換器)、A:車両駆動装置、D:冷媒流路、S:区画壁