(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172116
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電源モジュール
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241205BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M3/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089640
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山下 貢
(72)【発明者】
【氏名】新田 優
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS13
5H730ZZ01
5H730ZZ04
5H730ZZ07
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H770AA19
5H770AA21
5H770BA02
5H770PA11
5H770PA42
5H770QA02
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】バッテリの入力ポートから効率よく電力を入力できる電源モジュールを提供する。
【解決手段】複数の電子部品で構成されたそれぞれの電子回路32,23を、各別に駆動させる複数のドライブ基板30,21と、複数のドライブ基板30,21を収容するハウジングと、を備え、電子回路32,23に含まれるインバータ32及びDC-DCコンバータ23を各別に駆動させる複数のドライブ基板30、21が同一平面V上に隣り合った状態で配置されており、インバータ32及びDC-DCコンバータ23にバッテリの電力を入力する入力ポート45が、インバータ32とDC-DCコンバータ23との間に設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品で構成されたそれぞれの電子回路を、各別に駆動させる複数のドライブ基板と、
複数の前記ドライブ基板を収容するハウジングと、を備え、
前記電子回路に含まれるインバータ及びDC-DCコンバータを各別に駆動させる複数の前記ドライブ基板が同一平面上に隣り合った状態で配置されており、
前記インバータ及び前記DC-DCコンバータにバッテリの電力を入力する入力ポートが、前記インバータと前記DC-DCコンバータとの間に設けられている電源モジュール。
【請求項2】
前記インバータ及び前記DC-DCコンバータの間であって、前記入力ポートに対向する位置に配置された平滑コンデンサを有する請求項1に記載の電源モジュール。
【請求項3】
前記DC-DCコンバータに直流を入力する交直変換回路を駆動する前記ドライブ基板は、前記同一平面上において、前記DC-DCコンバータを基準として前記インバータとは反対側に配置されている請求項1に記載の電源モジュール。
【請求項4】
前記インバータ及び前記DC-DCコンバータと前記入力ポートとは、それぞれ一対のバスバーによって接続されており、
前記インバータの一対の前記バスバー及び前記DC-DCコンバータの一対の前記バスバーのそれぞれの同極は、前記入力ポートの一対の端子に対してそれぞれ共締めされている請求項1から3のいずれか一項に記載の電源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータやコンバータ等の電子回路が搭載された電源モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電源モジュールは、例えば、商用電源から供給される電力を変換し、変換した電力をバッテリに充電したり、自動車等の車両に搭載されたバッテリから供給される電力を変換し、変換した電力をモータ等の電子機器に供給したりする。
【0003】
特許文献1に記載の電源モジュールでは、ケースが上部空間と下部空間とに区画されており、上部空間にはコンバータが配置され、下部空間にはインバータが配置されている。また、コンバータ及びインバータは、バッテリから夫々電力が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電源モジュールは、コンバータ及びインバータが上下に配置されているため、外形が大きくなりがちである。また、電源モジュールは、バッテリから供給される電力が、バッテリの入力ポートから配線によって上部空間のコンバータと下部空間のインバータとに振り分けられる。このため、電源モジュールは、バッテリの入力ポートとコンバータ及びインバータとの間の配線が複雑になる可能性がある。
【0006】
そこで、外形がコンパクトであり且つ配線が簡素な電源モジュールが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電源モジュールの特徴構成は、複数の電子部品で構成されたそれぞれの電子回路を、各別に駆動させる複数のドライブ基板と、複数の前記ドライブ基板を収容するハウジングと、を備え、前記電子回路に含まれるインバータ及びDC-DCコンバータを各別に駆動させる複数の前記ドライブ基板が同一平面上に隣り合った状態で配置されており、前記インバータ及び前記DC-DCコンバータにバッテリの電力を入力する入力ポートが、前記インバータと前記DC-DCコンバータとの間に設けられている点にある。
【0008】
本構成では、電源モジュールにおいて、インバータ及びDC-DCコンバータを各別に駆動させる複数のドライブ基板が同一平面上に隣り合った状態で配置されている。これにより、電源モジュールは、嵩高さを小さくでき、外形をコンパクトに構成できる。また、バッテリの電力を入力する入力ポートがインバータとDC-DCコンバータとの間に設けられていると、入力ポートはインバータ及びDC-DCコンバータの両方に近接させることができるので、入力ポートからインバータ及びDC-DCコンバータまでの配線を短くできる。これにより、電源モジュールは配線を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電源モジュールを含む冷却システムの回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、電源モジュールの実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0011】
〔冷却回路の構成〕
図1に示されるように、電源モジュール100を含む冷却回路Aは、冷却流体により、電源モジュール100を冷却している。冷却流体とは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。本実施形態では、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水やフッ素系不活性液体等の電気絶縁性の高い液体を用いることが好ましく、絶縁油で構成される冷却液でもよい。冷却回路Aは、外部からの電力でバッテリ(不図示)を充電する車両に搭載されている。
【0012】
冷却回路Aは、電源モジュール100、水冷コンデンサ1、オイルクーラ2、ウォータポンプ3、三方弁4、ラジエータ5とで構成されている。電源モジュール100を冷却することにより加熱された冷却流体は、電源モジュール100から流出した後、水冷コンデンサ1で冷媒と熱交換されて加熱され、その後オイルクーラ2で潤滑油と熱交換されて更に加熱される。その後、冷却流体は、ウォータポンプ3で圧送され、三方弁4によりラジエータ5に送られる場合とラジエータ5に送られない場合とに切替えられる。冷却流体がラジエータ5に送られた場合には、冷却流体はラジエータ5で冷却され、再度電源モジュール100に流入する。冷却流体がラジエータ5に送られない場合には、冷却流体は冷却されることなく、加熱された状態で再度電源モジュール100に流入する。
【0013】
〔第1実施形態〕
〔電源モジュールの構成〕
図2に示されるように、電源モジュール100は、少なくともOBC(On Board Charger)用のドライブ基板20と、モータ駆動用のドライブ基板30と、ドライブ基板20とドライブ基板30を制御する制御基板40とをハウジング10に収容して構成されている。電源モジュール100は、第1空間11を有している。ドライブ基板20とドライブ基板30と制御基板40はそれぞれ別の基板で、互いに平行な姿勢で第1空間11に収容されている。以下の図では、例えば
図1に示されるように、車両の進行方向(車両前後方向)をX方向とし、車両の幅方向(車両左右方向)をY方向とし、車両の高さ方向をZ方向とする。また、車両の進行方向前側をX1側、進行方向後側をX2側とし、車幅方向左側をY1側、車幅方向右側をY2側とする。
【0014】
図3は、ドライブ基板20、ドライブ基板30、及び制御基板40の板面に垂直な方向で切断した断面を示している。以下、ドライブ基板20の板面に垂直な方向を「垂直方向」と称する。また、
図3における、垂直方向に沿うドライブ基板20及びドライブ基板30から制御基板40を見た方向を「上側」等と称し、制御基板40からドライブ基板20、ドライブ基板30を見た方向を「下側」等と称する。
【0015】
ハウジング10は、第1空間11と区画された第2空間12及び第3空間13を有している。第1空間11に対して、第2空間12と第3空間13は下側に位置している。第2空間12にはドライブ基板30により駆動されるモータ6が収容され、第3空間13にはモータ6の回転を減速して出力するギア機構7が収容されている。ハウジング10は、第1空間11の上側に開口10aを有しており、ドライブ基板20、ドライブ基板30、制御基板40、及び冷却プレート50は、開口10aから第1空間11内に収容される。開口10aは蓋14(
図2参照)により閉じられており、第1空間11は閉空間になっている。第2空間12は、側方からモータ6を収容しており、不図示のボルトで締結されたモータカバー15で閉じられて閉空間になっている。モータ6からは回転軸に沿って両側にモータシャフト6aが延出しており、一方のモータシャフト6aはモータカバー15を貫通してハウジング10の外部に露出している。他方のモータシャフト6aは、第3空間13にまで貫通している。第3空間13は、側方からギア機構7を収容しており、不図示のボルトで締結されたギアカバー16で閉じられて閉空間になっている。ギア機構7には、第2空間12から延出した他方のモータシャフト6aが連結され、モータ6の回転がモータシャフト6aを介して入力される。ギア機構7は、モータ6の回転を減速させてギアシャフト7aから出力している。ギアシャフト7aは、ギアカバー16を貫通してハウジング10の外部に露出している。
【0016】
〔冷却プレート〕
図2及び
図3に示されるように、ハウジング10の第1空間11には、電力変換器23の発熱部品23a、電力変換器24の発熱部品24a及び電力変換器32の発熱部品32aを冷却する冷却プレート50が収容されている。冷却プレート50は、アルミ等の熱伝導率の高い金属からなり、板状の下プレート50aと上プレート50bとを溶着等の方法により接合することにより一体形成されている。冷却プレート50は、内部(下プレート50aと上プレート50bとの間)に空間が形成されており、その空間を冷却流体が流通する。発熱部品23a,24aはドライブ基板20の下側の面に実装され,発熱部品32aはドライブ基板30の下側の面に実装されている。そして、発熱部品23a,24aと発熱部品32aは、いずれも冷却プレート50に当接するように配置されており、発熱部品23a,24a,32aと冷却流体との間で熱交換を行うことにより、発熱部品23a,24a,32aの温度を低下させると共に、冷却流体の温度を上昇させる。発熱部品23a,24aと発熱部品32aが、いずれも冷却プレート50に固定されて配置されていてもよい。
【0017】
図2~
図6に示されるように、ドライブ基板20は、第1ドライブ基板21及び第2ドライブ基板22が連結されて構成されている。第1ドライブ基板21には電力変換器23(電子回路の一例)が搭載されており、電力変換器23は第1ドライブ基板21によって駆動される。第2ドライブ基板22には電力変換器24(電子回路の一例)が搭載されており、電力変換器24は第2ドライブ基板22によって駆動される。
【0018】
電力変換器23は、直流電圧を不図示のバッテリの充電に適した直流電圧に変換するDC-DCコンバータである。電力変換器24は、外部から入力された交流を直流に変換するAC-DCコンバータ(交直変換回路の一例)である。電力変換器24(AC-DCコンバータ)は、例えば電力変換器23(DC-DCコンバータ)に直流を入力するように構成されている。DC-DCコンバータ及びAC-DCコンバータの構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
ドライブ基板30には、電力変換器32(電子回路の一例)が搭載されている。電力変換器32には、少なくともモータ6を駆動する駆動電流を制御するインバータが含まれている。インバータの構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。また、制御基板40には、電力変換器23,24及び電力変換器32を制御する制御回路41が搭載されている。このように、電源モジュール100は、複数の電子部品で構成されたそれぞれの電力変換器23,24、32を各別に駆動させる複数のドライブ基板21,22,30と、複数のドライブ基板21,22,30を収容するハウジング10と、を備える。
【0020】
図2、
図3及び
図5に示されるように、ドライブ基板20及びドライブ基板30は、仮想平面V(同一平面の一例)上に全て配置されており、ドライブ基板20のうちの第1ドライブ基板21とドライブ基板30とが隣り合っている。すなわち、電子回路に含まれる電力変換器32(インバータ)及び電力変換器23(DC-DCコンバータ)を各別に駆動させる複数のドライブ基板30,21が同一平面(仮想平面V)上に隣り合った状態で配置されている。本実施形態の仮想平面VはX方向及びY方向に沿う平面であるが、仮想平面VはX方向及びY方向の一方又は両方に沿わない平面であってもよい。第2ドライブ基板22は、第1ドライブ基板21に対してドライブ基板30とは反対の側に配置されている。すなわち、第2ドライブ基板22は、仮想平面V(同一平面)上において、第1ドライブ基板21の電力変換器32(インバータ)とは反対側に配置されている。なお、上述の「同一平面」とは、ドライブ基板30,21,22が完全に同一の平面である場合だけでなく、ドライブ基板30,21,22が上下方向に夫々若干(例えば1cm程度)ずれている場合も含まれる。
【0021】
電力変換器23(DC-DCコンバータ)には発熱部品23a(電子部品の一例)が含まれており、電力変換器24(AC-DCコンバータ)には発熱部品24a(電子部品の一例)が含まれている。電力変換器32(インバータ)には発熱部品32a(電子部品の一例)が含まれている。電力変換器23,24には、発熱部品23a,24aとして、リアクトル(電子部品の一例)、トランス(電子部品の一例)、ダイオード(電子部品の一例)、スイッチング素子(電子部品の一例)等が含まれる。電力変換器32には、発熱部品32aとして、ダイオード(電子部品の一例)やスイッチング素子(電子部品の一例)等が含まれる。これらの電子部品は高さが異なっている。
【0022】
本実施形態では、上述の通り、ドライブ基板20とドライブ基板30とは垂直方向で同じ高さに位置している。制御基板40は、垂直方向に沿って見たときに(垂直方向視)、ドライブ基板20及びドライブ基板30と重複するように配置されている。ドライブ基板20と制御基板40との接続、及びドライブ基板30と制御基板40との接続には、第1コネクタ42が用いられている。本実施形態においては、ドライブ基板20とドライブ基板30とは垂直方向に対して同じ高さに位置しているので、一種類の第1コネクタ42を二個用いてドライブ基板20と制御基板40との接続、及びドライブ基板30と制御基板40との接続を行うことができる。このように構成することで、ドライブ基板20とドライブ基板30とに対する制御基板40の組付けが容易になると共に、種類の異なるコネクタを用いる必要が無いので、組立性にも優れている。
【0023】
〔平滑コンデンサ〕
上述したように、ドライブ基板20とドライブ基板30とは別基板である。本実施形態においては、
図2に示されるように、ドライブ基板20とドライブ基板30との間に平滑コンデンサ26(電子部品の一例)が配置されている。平滑コンデンサ26は、電力変換器32(インバータ)の平滑用と、電力変換器23(DC-DCコンバータ)の二次側の平滑用の両方に用いられる。すなわち、平滑コンデンサ26は二種類の平滑の用途を兼ねている。
【0024】
平滑コンデンサ26は、垂直方向で、冷却プレート50の上プレート50b近傍から制御基板40近傍に亘る高さを有している。すなわち、平滑コンデンサ26の垂直方向の高さは、ドライブ基板20に実装された発熱部品23a,24aを含む電子部品やドライブ基板30に実装された発熱部品32aを含む電子部品の垂直方向の高さよりも大きい。そのため、ドライブ基板30の周囲は、制御基板40、平滑コンデンサ26、ハウジング10の壁面に囲まれることとなり、ドライブ基板20の周囲とは区画されている。そのため、ドライブ基板30の電力変換器32で発生した熱がドライブ基板20の側に伝達されるのを抑制することができる。
【0025】
図3に示されるように、上プレート50bには、メタルベース基板27が配置されている。メタルベース基板27には、平滑コンデンサ26と不図示のバッテリからの直流電圧が入力される第1入力ポート45(バッテリの入力ポートの一例、
図4参照)が取付けられている。第1入力ポート45は、バッテリに接続されて電力変換器(インバータ)32及び電力変換器(DC-DCコンバータ)23にバッテリの電力を入力する。
図4~
図6に示されるように、第1入力ポート45は、X2側に配置されており、電力変換器23と電力変換器32との間に設けられている。なお、
図5及び
図6に示される電源モジュール100では、制御基板40が省略され、後述の第1出力ポート46と第1ドライブ基板21との接続形態、及び、後述の第3入力ポート49とドライブ基板30との接続形態が省略されている。
【0026】
図4~
図6に示されるように、電源モジュール100は、第1入力ポート45と同じX2側に、例えば直流12Vの第1出力ポート46、例えば交流100Vの第2出力ポート47、例えば交流200Vの第2入力ポート48、及び、制御信号用の第3入力ポート49を備える。第1出力ポート46は、例えば補機用のバッテリ(不図示)に接続される。第2入力ポート48は外部の交流電源等に接続可能であり、電力変換器24は第2入力ポート48から供給される交流を充電可能な交流充電器として構成することができる。第2出力ポート47は、交流電源によって動作可能な機器が接続されて当該機器に給電するために用いられる。
【0027】
図4に示されるように、第3入力ポート49は制御基板40に接続される。第3入力ポート49と制御基板40との接続には、第2コネクタ43が用いられている。第3入力ポート49には、例えばCAN(controller area network)等の車内ネットワークを介して車両に係わる各種情報が制御信号として入力され、当該制御信号が制御基板40に送信される。
【0028】
ドライブ基板30には、例えばY2側の端部に、モータ6を駆動するための3相交流の電源端子35が設けられている。電源端子35は、不図示の電線によってモータ6に内蔵されるコイルと接続されている。
【0029】
第1入力ポート45と電力変換器23とは、一対のバスバー28a,28bによって接続され、第1入力ポート45と電力変換器32とは、一対のバスバー38a,38bによって接続されている。一対のバスバー38a,38b及び一対のバスバー28a,28bのそれぞれの同極は、第1入力ポート45の一対の端子45a,45bに対してそれぞれ共締めされている。一対のバスバー28a,28bは、第1ドライブ基板21の端子29b、29bにねじ止めされる。第1入力ポート45の一対の端子45a,45bにおいては、一対のバスバー28a,28bの一端及び一対のバスバー38a,38bの一端が例えばボルト等のねじ部材61によって固定される。電力変換器23に設けられる一対の端子29a,29bには、一対のバスバー28a,28bの他端が例えばボルト等のねじ部材62によって固定される。電力変換器32に設けられる一対の端子(不図示)においては、一対のバスバー38a,38bの他端が例えばボルト等のねじ部材(不図示)によって固定される(
図5参照)。
【0030】
上述したように、ドライブ基板20とドライブ基板30とは垂直方向に対して同じ高さ(仮想平面V上)に位置している(
図3参照)。これを実現するために、本実施形態の電源モジュール100は高さ調整機構を備えている。具体的には、ドライブ基板20に対向する箇所(垂直方向視でドライブ基板20と重複する箇所)における垂直方向の流路高さH1と、ドライブ基板30に対向する箇所(垂直方向視でドライブ基板30と重複する箇所)における垂直方向の流路高さH2とを異ならせることである。本実施形態では、流路高さH1よりも流路高さH2の方が大きい。すなわち、本実施形態の高さ調整機構とは、冷却プレート50の流路高さH1,H2を対向する基板に応じて異ならせることである。
【0031】
本実施形態では、冷却プレート50を構成する下プレート50aと上プレート50bにおいて、下プレート50aは平板状であるが、上プレート50bは、ドライブ基板20に対応する箇所とドライブ基板30に対応する箇所とで高さが異なっている。具体的には、上プレート50bのうちドライブ基板30に対応する箇所の高さが、ドライブ基板20に対応する箇所の高さよりも、下プレート50aに対して高くなっている。上述したように、ドライブ基板20の電力変換器23,24で用いられる発熱部品23a,24aと、ドライブ基板30の電力変換器32で用いられる発熱部品32aは、いずれも冷却プレート50の上プレート50bに当接させることにより冷却している。すなわち、電力変換器23、24の発熱部品23a,24aは実装高さが高く、ドライブ基板30の電力変換器32の発熱部品32aは実装高さが低い。
【0032】
このため、本実施形態の上プレート50bは、発熱部品23a,24aの実装高さと発熱部品32aの実装高さとの差に相当する分だけ、流路高さH2の高さを流路高さH1よりも高くしている。これにより、高背の発熱部品23a,24aと低背の発熱部品32aとを共に上プレート50bに当接させた状態で、ドライブ基板20とドライブ基板30の垂直方向の高さを揃えることができる。
【0033】
また、一般に、ドライブ基板30の電力変換器32の発熱部品32aの発熱量の方が、ドライブ基板20の電力変換器23,24の発熱部品23a,24aの発熱量よりも相対的に大きい。そのため、発熱部品32aが当接する流路高さH2を発熱部品23a,24aが当接する流路高さH1よりも高くすることにより、発熱部品32aが当接する箇所における冷却流体の流路断面積を、発熱部品23a,24aが当接する箇所における冷却流体の流路断面積よりも大きくすることができる。これにより、発熱部品32aを効率よく冷却することができる。
【0034】
〔高背電子部品の配置〕
図3に示されるように、第1空間11は、冷却プレート50により、冷却プレート50より下側に位置する第1領域11aと冷却プレート50より上側に位置する第2領域11bとに区画されている。本実施形態においては、第1領域11aの容積は、第2領域11bの容積よりも小さい。第1空間11において、電力変換器23,24を構成する複数の電子部品(発熱部品23a,24aを含む)、及び電力変換器32を構成する複数の電子部品(発熱部品32aを含む)は、いずれも第1領域11aと第2領域11bとに分かれて配置されている。ドライブ基板20、ドライブ基板30、及び制御基板40は、第2領域11bに配置されている。
【0035】
本実施形態においては、第1領域11aには、電力変換器23,24のリアクトルやトランス、及びオイルクーラ2が配置されている。第2領域11bには、電力変換器23,24及び電力変換器32のダイオードやスイッチング素子等が配置されている。第1領域11aに配置されたリアクトル、トランス、及びオイルクーラ2は、冷却プレート50の下プレート50aに当接しており、第2領域11bに配置されたダイオードやスイッチング素子は上プレート50bに当接している。電子部品のうち、相対的に高さの大きい電子部品が第1領域11aに収容されて配置されており、相対的に高さの小さい電子部品が第2領域11bに収容されて配置されている。
【0036】
第1領域11aは、ハウジング10の壁を介してモータ6が配置された第2空間12及びギア機構7が配置された第3空間13と隣り合っている。すなわち、第1領域11aは、ハウジング10の壁を介してモータ6及びギア機構7に対向している。第1領域11aは、ギア機構7に対向する箇所において第3空間13に向けて窪んだ窪み11cを有している。これにより、第1領域11aのうち窪み11cが形成された箇所は、仮想基準面(冷却プレート50の下プレート50a)から下側(ギア機構7に向かう側)の高さ(深さ)が大きくなっている。
【0037】
第1領域11aに配置される電子部品(リアクトル)23aと電子部品(トランス)24aとでは、電子部品(リアクトル)23aの方が相対的に嵩高い。そこで、本実施形態においては、
図3に示されるように、電子部品(リアクトル)23aを窪み11cとは対向していない箇所に配置し、電子部品(トランス)24aを窪み11cと対向する箇所に配置している。電子部品(トランス)24aについては、一部が窪み11cに入り込む態様で配置されている。電子部品(リアクトル)23aと電子部品(トランス)24aをこのように配置することにより、第1領域11aの窪み11cを有効に活用して、電源モジュール100を小型化することができる。
【0038】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態において、平滑コンデンサ26は、電力変換器32のインバータの平滑用と、電力変換器23のDC-DCコンバータの二次側の平滑用の両方に用いられるように構成されていたが、電力変換器32のインバータの平滑用コンデンサと、電力変換器23のDC-DCコンバータの二次側の平滑用コンデンサとを別々にして、その少なくとも一方を熱遮蔽電子部品として用いてもよい。
【0039】
(2)上記の実施形態では、ドライブ基板20が、DC-DCコンバータに直流を入力する交直変換回路を駆動する第2ドライブ基板22を有する例を示したが、ドライブ基板20は第2ドライブ基板22を有さずに電力変換器23が搭載された第1ドライブ基板21のみであってもよい。
【0040】
(3)上記の実施形態では、第1空間11の第2領域11bに配置された発熱部品23a,24a,32aはいずれも平滑コンデンサ26の高さよりも低い例を示したが、これに限られるものではない。平滑コンデンサ26は、ドライブ基板30の発熱部品32aよりも高ければ発熱部品32aの熱を遮蔽できるので、発熱部品23a,24aの高さが平滑コンデンサ26よりも高くてもよい。
【0041】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
<1>電源モジュール(100)の1つの態様は、複数の電子部品(23a)(32a)で構成されたそれぞれの電子回路(23)(32)を、各別に駆動させる複数のドライブ基板(21)(30)と、複数のドライブ基板(21)(30)を収容するハウジング(10)と、を備え、電子回路(23)(32)に含まれるインバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)を各別に駆動させる複数のドライブ基板(21)(30)が同一平面(V)上に隣り合った状態で配置されており、インバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)にバッテリの電力を入力する入力ポート(45)が、インバータ(32)とDC-DCコンバータ(23)との間に設けられている。
【0042】
本構成では、電源モジュール(100)において、インバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)を各別に駆動させる複数のドライブ基板(21)(30)が同一平面(V)上に隣り合った状態で配置されている。これにより、電源モジュール(100)は、嵩高さを小さくでき、外形をコンパクトに構成できる。また、バッテリの電力を入力する入力ポート(45)がインバータ(32)とDC-DCコンバータ(23)との間に設けられていると、入力ポート(45)はインバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)の両方に近接させることができるので、入力ポートからインバータ及びDC-DCコンバータまでの配線を短くできる。これにより、電源モジュール(100)は配線を簡素化できる。
【0043】
<2>電気モジュール(100)は、インバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)の間であって、入力ポート(45)に対向する位置に配置された平滑コンデンサ(26)を有すると好適である。
【0044】
本構成のように、インバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)の間であって、入力ポート(45)に対向する位置に平滑コンデンサ(26)が配置されれば、インバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)は平滑コンデンサ(26)を共用できる。これにより、電源モジュール(100)は、部品点数を抑制できることができ、外形をよりコンパクトに構成することができる。
【0045】
<3>電源モジュール(100)は、DC-DCコンバータに直流を入力する交直変換回路(24)を駆動するドライブ基板(22)は、同一平面(V)上において、DC-DCコンバータ(23)を基準としてインバータ(32)とは反対側に配置されていると好適である。
【0046】
本構成のように、DC-DCコンバータ(23)に直流を入力する交直変換回路(24)を駆動するドライブ基板(22)が、DC-DCコンバータ(23)を駆動させるドライブ基板(21)やインバータ(32)を駆動させるドライブ基板(30)と同一平面上に配置されれば、電源モジュール(100)に新たなドライブ基板を容易に追加できる。また、当該ドライブ基板(21)が、DC-DCコンバータ(23)を基準としてインバータ(32)とは反対側(Y1側)に配置されているので、電源モジュール(100)において入力ポート(45)とDC-DCコンバータ(23)及びインバータ(32)との間の距離に変化は生じない。したがって、本構成においても、入力ポート(45)とインバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)との間に設けられる夫々の配線を短くできる。
【0047】
<4>インバータ(32)及びDC-DCコンバータ(23)と入力ポート(45)とは、それぞれ一対のバスバー(38a,38b)(28a,28b)によって接続されており、インバータ(32)の一対のバスバー(38a,38b)及びDC-DCコンバータ(23)の一対のバスバー(28a,28b)のそれぞれの同極は、入力ポート(45)の一対の端子(45a,45b)に対してそれぞれ共締めされていると好適である。
【0048】
本構成によれば、バッテリの入力ポート(45)に対し、インバータ(32)の一対のバスバー(38a,38b)と、DC-DCコンバータ(23)の一対のバスバー(28a,28b)とを個別に固定する必要がなく、バッテリの入力ポート(45)に両者をまとめて固定できる。これにより、電源モジュール(100)は、バッテリの入力ポート(45)に対して複数の電子部品が簡易に接続可能になると共に、部品点数を少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電源モジュールに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10:ハウジング、20:ドライブ基板、21:第1ドライブ基板、22:第2ドライブ基板、23:電力変換器(電子回路、DC-DCコンバータ)、23a:発熱部品(電子部品)、24:電力変換器(電子回路、交直変換回路)、24a:発熱部品(電子部品)、26:平滑コンデンサ(電子部品)、28a,28b,38a,38b:バスバー、30:ドライブ基板、32:電力変換器(電子回路、インバータ)、32a:発熱部品(電子部品)、40:制御基板、100:電源モジュール、V:仮想平面(同一平面)