(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017212
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】切断システム及び切断方法
(51)【国際特許分類】
B23D 53/06 20060101AFI20240201BHJP
B23D 53/04 20060101ALI20240201BHJP
B23D 55/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B23D53/06
B23D53/04
B23D55/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119710
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和秀
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA17
3C040BB03
3C040DD18
3C040DD23
3C040JJ03
(57)【要約】
【課題】大型の対象物を効率よく切断する。
【解決手段】帯状の鋸刃を有し、鋸刃が駆動により第1進行方向に動く箇所である第1切断部と、鋸刃が駆動により第1進行方向に対向する第2進行方向に動く箇所である第2切断部とを含む帯鋸部と、第1切断部及び第2切断部よりも一方側に設けられて、帯鋸部が掛けられる第1回転体と、第1切断部及び第2切断部よりも他方側に設けられて、帯鋸部が掛けられる第2回転体と、帯鋸部、第1回転体、及び第2回転体の、切断する対象物に対する相対位置を、帯鋸部の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させる駆動部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の鋸刃を有し、前記鋸刃が駆動により第1進行方向に動く箇所である第1切断部と、前記鋸刃が駆動により前記第1進行方向に対向する第2進行方向に動く箇所である第2切断部とを含む帯鋸部と、
前記第1切断部及び前記第2切断部よりも一方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第1回転体と、
前記第1切断部及び前記第2切断部よりも他方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第2回転体と、
前記帯鋸部、前記第1回転体、及び前記第2回転体の、切断する対象物に対する相対位置を、前記帯鋸部の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させる駆動部と、
を有する、
切断システム。
【請求項2】
前記駆動部は、前記対象物に対する前記第1回転体の相対位置を移動させる第1駆動部と、前記対象物に対する前記第2回転体の相対位置を移動させる第2駆動部と、
を有する、
請求項1に記載の切断システム。
【請求項3】
前記第1駆動部は、前記移動方向における前記第2回転体の位置に応じて、前記第1回転体の移動を制御する、請求項2に記載の切断システム。
【請求項4】
前記第1回転体と前記第2回転体とを接続する接続部材を更に有する、
請求項1又は請求項2に記載の切断システム。
【請求項5】
前記第1切断部と前記第2切断部とは、所定の距離を介して、互いに反対方向に進行するように配置され、
前記接続部材は、前記第1切断部及び前記第2切断部に対して前記移動方向の反対側に位置して、厚みが前記所定の距離未満となっている、請求項4に記載の切断システム。
【請求項6】
前記帯鋸部は、前記第1切断部を含む第1帯鋸刃と、前記第2切断部を含む第2帯鋸刃と、を有する、
請求項1又は請求項2に記載の切断システム。
【請求項7】
帯状の鋸刃を有し、前記鋸刃が駆動により第1進行方向に動く箇所である第1切断部と、前記鋸刃が駆動により前記第1進行方向に対向する第2進行方向に動く箇所である第2切断部とを含む帯鋸部と、
前記第1切断部及び前記第2切断部よりも一方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第1回転体と、
前記第1切断部及び前記第2切断部よりも他方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第2回転体と、を含む切断システムを用いた切断方法であって、
前記帯鋸部、前記第1回転体、及び前記第2回転体の、切断する対象物に対する相対位置を、前記帯鋸部の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させるステップを含む、
切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切断システム及び切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切断装置には、例えば、鋸刃を用いたものがある。例えば、特許文献1には、駆動プーリと従動プーリとの間に帯状の鋸刃を掛けた切断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された切断装置は、冷凍食品や小枝等の小さな対象物を切断する装置であり、大型の対象物を切断することは困難である。また、特許文献1の切断装置を用いて大型の対象物を切断する場合、効率よく切断することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、大型の対象物を効率よく切断可能な切断システム及び切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る切断装置は、帯状の鋸刃を有し、前記鋸刃が駆動により第1進行方向に動く箇所である第1切断部と、前記鋸刃が駆動により前記第1進行方向に対向する第2進行方向に動く箇所である第2切断部とを含む帯鋸部と、前記第1切断部及び前記第2切断部よりも一方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第1回転体と、前記第1切断部及び前記第2切断部よりも他方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第2回転体と、前記帯鋸部、前記第1回転体、及び前記第2回転体の、切断する対象物に対する相対位置を、前記帯鋸部の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させる駆動部と、を有する。
【0007】
本開示に係る切断方法は、帯状の鋸刃を有し、前記鋸刃が駆動により第1進行方向に動く箇所である第1切断部と、前記鋸刃が駆動により前記第1進行方向に対向する第2進行方向に動く箇所である第2切断部とを含む帯鋸部と、前記第1切断部及び前記第2切断部よりも一方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第1回転体と、前記第1切断部及び前記第2切断部よりも他方側に設けられて、前記帯鋸部が掛けられる第2回転体と、を含む切断システムを用いた切断方法であって、前記帯鋸部、前記第1回転体、及び前記第2回転体の、切断する対象物に対する相対位置を、前記帯鋸部の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させるステップを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、大型の対象物を効率よく切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る切断システムの模式図である。
【
図5】
図5は、制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1変形例の駆動ユニットの概略上面図である。
【
図7】
図7は、第1変形例の切断装置を複数台用いた場合の概略上面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例の模式的な側面図である。
【
図9】
図9は、第2変形例の駆動ユニットの概略上面図である。
【
図10】
図10は、第2変形例の切断装置を複数台用いた場合の概略上面図である。
【
図11】
図11は、第2変形例の切断装置を複数台用いた場合の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
[第1実施形態]
<切断システム>
図1から
図3を用いて、第1実施形態に係る切断システム1について説明する。
図1は、第1実施形態に係る切断システムの模式図である。
図2は、第1実施形態に係る切断装置の概略上面図である。
図3は、帯鋸部を説明するための図である。
【0012】
切断システム1は、例えば、船舶、発電所の設備等、大型の対象物を切断して解体するものである。なお、切断システム1は、解体に限られず、製品の製造過程において、大型の材料を切断する装置として、部品を製造するものであってもよい。第1実施形態において、切断システム1は、複数の切断装置10と、制御装置50とを有する。
図1及び
図2の例では、切断システム1は、切断装置10として、2つの切断装置10A及び10Bを有する。本例では、切断装置10Aは、切断装置10Bよりも外側に配置され、切断装置10Bは、切断装置10Aの内側に配置されるが、それぞれの切断装置の配置の仕方、大きさ、及び数は任意であってよい。なお、切断システム1が有する切断装置10の数は、任意であってよい。詳しくは後述するが、1つの切断装置10が、第1切断部24と第2切断部26を有するものであれば、切断システム1は、1つの切断装置10のみを有するものであってもよい。
【0013】
以下、切断システム1の所定の位置を基準とした座標系における一方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0014】
<切断装置>
図1及び
図2に示すように、切断装置10は、土台ユニット12と、駆動ユニット20とを有する。
【0015】
(土台ユニット)
土台ユニット12は、駆動ユニット20を支持する機構である。例えば、土台ユニット12は、地面に対して位置が固定された状態で、駆動ユニット20を、後述する移動方向であるZ方向に移動可能となるよう支持する。
図1に示すように、土台ユニット12は、土台部14と、支柱部16と、ガイド18と、を有する。
【0016】
土台部14は、地面に接する土台となる箇所である。土台部14は、X方向における一方側と他方側にそれぞれ設けられる。
【0017】
支柱部16は、それぞれの土台部14からZ方向に向けて延在する柱状の部材である。
【0018】
ガイド18は、支柱部16に設けられ、後述する駆動ユニット20がZ方向に移動可能に取り付けられる機構である。例えば、ガイド18は、駆動ユニット20を移動させるレールであってよく、H鋼と、H鋼に嵌合する部材とを組合わせて駆動ユニット20を摺動させる機構であってよい(
図6参照)。なお、ガイド18は、ラックとピニオンとで構成された機構であってもよく、構造は、任意であってよい。
【0019】
(駆動ユニット)
駆動ユニット20は、対象物Wを切断する機構である。駆動ユニット20は、帯鋸部22と、第1回転体28と、第2回転体32と、駆動部40と、を有する。
【0020】
駆動ユニット20は、X方向において一方の支柱部16と他方の支柱部16との間に配置されて、それぞれの支柱部16に対して、Z方向に移動可能に支持される。本実施形態の例では、駆動ユニット20は、X方向の一方側及び他方側に接続部30、34が設けられている。駆動ユニット20は、接続部30が、X方向の一方側のガイド18に対して、Z方向に移動可能に取り付けられ、接続部34が、X方向の他方側のガイド18に対して、Z方向に移動可能に取り付けられる。
【0021】
(回転体)
第1回転体28は、駆動ユニット20のX方向における一方側に設けられている。第1回転体28には、Z方向に延在する第1回転軸29を有し、第1回転軸29を回転中心として回転する。より詳しくは、第1回転体28は、駆動ユニット20に設けられたモーターMの動力によって、Z方向を軸方向とした場合の周方向に回転する。なお、
図1及び
図2の例では、第1回転体28及び第1回転軸29は、接続部30のZ方向側に設けられており、モーターMは、接続部30に内蔵されている。ただし、第1回転体28、第1回転軸29、及びモーターMの配置はそれに限られず任意であってよい。また、本実施形態の例では、第1回転体28は、駆動ユニット20のX方向における一方側に2つ設けられているが、第1回転体28の数はそれに限られず任意であってよい。
【0022】
第2回転体32は、駆動ユニット20のX方向における他方側に設けられている。第2回転体32には、帯鋸部22が掛けられる。第2回転体32は、Z方向に延在する第2回転軸33を有し、第2回転軸33を回転中心として回転する。より詳しくは、第2回転体32は、駆動ユニット20に設けられたモーターMの動力によって、Z方向を軸方向とした場合の周方向に回転する。なお、
図1及び
図2の例では、第2回転体32及び第2回転軸33は、接続部34のZ方向側に設けられおり、モーターMは、接続部34に内蔵されている。ただし、第2回転体32、第2回転軸33、及びモーターMの配置はそれに限られず任意であってよい。また、本実施形態の例では、第2回転体32は、駆動ユニット20のX方向における他方側に2つ設けられているが、第2回転体32の数はそれに限られず任意であってよい。また、第2回転体32は、モーターMを有さず、第1回転体28の回転を、帯鋸部22を介して伝達することで回転してもよい。
【0023】
(帯鋸部)
帯鋸部22は、帯状の鋸刃である。帯鋸部22は、帯状に延在する延在方向と直交する幅方向(鋸刃の幅に沿った方向)がZ方向に沿うように、第1回転体28及び第2回転体32に掛けられる。言い換えれば、帯鋸部22は、内側の面が第1回転体28及び第2回転体32の外周面に接し、後述する切断刃23がZ方向において対象物Wが設けられる側に向くように、第1回転体28及び第2回転体32に掛けられる。帯鋸部22は、第1回転体28と第2回転体32とが回転することにより、これらの回転体と共に回動して、帯状に延在する延在方向に沿って進行する。帯鋸部22は、回動することで、X方向において対向する一対の支柱部16の間に配置された対象物Wを切断できる。対象物Wは、支柱部16との間に配置される。
【0024】
なお、帯鋸部22は、帯状に延在する延在方向に沿って進行することで、第1回転体28と第2回転体32に対する延在方向における位置は変化するが、Z方向における位置は、第1回転体28及び第2回転体32に対して固定されることが好ましい。これにより、帯鋸部22は、第1回転体28及び第2回転体32と一体でZ方向に移動可能となる。なお、帯鋸部22を第1回転体28及び第2回転体32に対して固定する構造は任意であってよいが、例えば、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向の両端部に、帯鋸部22がZ方向に外れてしまうことを抑制する壁が形成されていてもよい。
【0025】
帯鋸部22は、鋸刃が駆動により第1進行方向Aに動く箇所である第1切断部24と、鋸刃が駆動により第1進行方向Aに対向する第2進行方向Bに動く箇所である第2切断部26とを含む。言い換えれば、帯鋸部22は、幅方向(Z方向)に直交する第1進行方向Aに進行する第1切断部24と、幅方向(Z方向)に直交して第1進行方向Aと対向する第2進行方向Bに進行する第2切断部26とを含む。上述のように、帯鋸部22は、回転体の回転により、帯状に延在する延在方向に沿って進行するため、第1進行方向A及び第2進行方向Bは、帯鋸部22の延在方向に沿っているともいえる。本実施形態では、切断装置10Aと切断装置10Bとは、第1回転体28及び第2回転体32の回転方向が逆となるように駆動されるため、切断装置10Aの第1帯鋸刃22Aと切断装置10Bの第2帯鋸刃22Bとは、進行方向が逆となる。そのため、本実施形態においては、切断装置10Aの第1帯鋸刃22Aが、第1進行方向Aに進行する第1切断部24を含み、切断装置10Bの第2帯鋸刃22Bが、第2進行方向Bに進行する第2切断部26を含むといえる。このようにすることで、切削反力を低減でき、大型の部材を適切に切断することができる。また、2本の帯鋸刃を用いることで、1本の帯鋸刃が切れなくなった場合においても、もう1本の帯鋸刃で切断できる。なお、
図2の例では、第1進行方向Aと第2進行方向Bとは、互いに反対方向であるが、それに限られず、第1進行方向Aと第2進行方向Bとは対向していればよい。また、
図2の例では、第1進行方向Aと第2進行方向Bとは、X方向に沿っているが、それに限られず、例えばY方向に沿っていてもよい。
【0026】
図3に示すように、具体的に、帯鋸部22の鋸刃は、例えば、厚さが50mm以上の対象物を切断可能なサイズであることが好ましい。また、帯鋸部22の鋸刃は、強靭ばね鋼からなることが好ましい。また、切断刃23は、切断する材料に応じて変更することが好ましく、例えば、ハイス、超硬合金、ダイヤモンド等からなり、刃先に窒化チタン等のコーティングを施してもよい。帯鋸部22は、両辺に切断刃23を有していてもよい。また、水中で切断する場合には、錆びない材料であることが好ましい。なお、帯鋸部22の材料や大きさは、適宜変更可能である。
【0027】
(駆動部)
駆動部40は、Z方向における、対象物Wに対する駆動ユニット20の相対位置を移動させる機構である。ここで、帯鋸部22は、幅方向がZ方向に沿うように配置されるため、駆動部40は、対象物Wに対する駆動ユニット20の相対位置を、帯鋸部22の幅方向に沿った移動方向に移動させるとも言える。本実施形態では、駆動部40は、駆動ユニット20をZ方向に移動させることで、対象物Wに対する駆動ユニット20の相対位置を移動させる。ただしそれに限られず、駆動部40は、対象物WをZ方向に移動させることで、対象物Wに対する駆動ユニット20の相対位置を移動させてもよい。
【0028】
駆動部40は、例えば、駆動ユニット20をガイド18に沿ってZ方向に移動させるアクチュエーターであってよい。すなわち、駆動部40は、アクチュエーターの動力により、駆動ユニット20を移動させてよい。なお、
図1の例では、駆動部40は、支柱部16に内蔵されるが、設けられる位置はそれに限られず任意であってよい。
【0029】
本実施形態では、駆動部40は、対象物Wに対する第1回転体28の相対位置を移動させる第1駆動部A1と、対象物Wに対する第2回転体32の相対位置を移動させる第2駆動部A2と、を有する。第1駆動部A1は、制御装置50に制御されることで、Z方向における第2回転体32の位置に応じて、第1回転体28の位置を制御する。第1駆動部A1は、Z方向における第1回転体28の位置がZ方向における第2回転体32の位置に対して所定の長さの範囲内となるように(好ましくは同じ位置になるように)、第1回転体28の位置を制御することが好ましい。同様に、第2駆動部A2は、制御装置50に制御されることで、Z方向における第1回転体28の位置に応じて、第2回転体32の位置を制御する。第2駆動部A2は、Z方向における第2回転体32の位置がZ方向における第1回転体28の位置に対して所定の長さの範囲内となるように(好ましくは同じ位置になるように)、第2回転体32の位置を制御することが好ましい。
【0030】
(制御装置)
図4は、制御装置の模式的なブロック図である。制御装置50は、情報処理を行うコンピュータであり、切断システム1の駆動ユニット20の移動の制御を行う装置である。
図4に示すように、制御装置50は、記憶部54と通信部56と制御部58とを有する。
【0031】
本実施形態においては、それぞれの切断装置10は、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置を検出する位置検出センサ52を有している。位置検出センサ52は、第1回転体28と、第2回転体32とに取り付けられる(
図1参照)。位置検出センサ52は、回転体に取り付けられることが好ましいが、接続部30、34もしくは駆動部40に内蔵されていてもよく、取付け位置は任意であってよい。
【0032】
記憶部54は、制御部58の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つを含む。
【0033】
通信部56は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。制御装置50は、無線通信で外部の装置と通信を行うが、有線通信でもよく、通信方式は任意であってよい。
【0034】
制御部58は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部58は、位置取得部60と位置制御部62と回転体制御部64とを含む。制御部58は、記憶部54からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、位置取得部60と位置制御部62と回転体制御部64とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部58は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、位置取得部60と位置制御部62と回転体制御部64との処理の少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0035】
位置取得部60は、位置検出センサ52によって検出された第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置を取得する。位置取得部60は、位置検出センサ52に検出された第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置を、記憶部54に記憶させてよい。
【0036】
位置制御部62は、駆動部40を制御することで、駆動ユニット20をZ方向に移動させる。具体的には、位置制御部62は、記憶部54から、第1回転体28のZ方向における位置を読み出し、第1回転体28のZ方向における位置に基づいて、第2駆動部A2を制御することで、第2回転体32をZ方向における移動を制御する。位置制御部62は、第1回転体28のZ方向における位置と、第2回転体32をZ方向における位置とが、所定の長さの範囲内となるように(好ましくは同じ位置になるように)、第2回転体32の位置を制御することが好ましい。また、位置制御部62は、記憶部54から、第2回転体32のZ方向における位置を読み出し、第2回転体32のZ方向における位置に基づいて、第1駆動部A1を制御することで、第1回転体28をZ方向における移動を制御する。位置制御部62は、第1回転体28のZ方向における位置と、第2回転体32をZ方向における位置とが、所定の長さの範囲内となるように(好ましくは同じ位置になるように)、第1回転体28の位置を制御することが好ましい。言い換えれば、位置制御部62は、第2回転体32と第1回転体28の位置が同期するように、第1回転体28及び第2回転体32の移動を制御する。このようにすることで、対象物Wを切断中に、帯鋸部22が切断面に対して傾斜しても帯鋸部22を水平にすることができる。なお、本実施形態の例では、位置制御部62は、第1回転体28及び第2回転体32の両方の位置を、相手側の回転体の位置に応じて制御するが、それに限られず、第1回転体28及び第2回転体32の一方のみを、相手側の回転体の位置に応じて制御してもよい。
【0037】
回転体制御部64は、第1回転体28と第2回転体32との回転速度を制御する。具体的に、回転体制御部64は、対象物Wの切断開始時、切断終了時に回転体の回転の開始と終了を制御する。回転体制御部64は、帯鋸部22の切り込み深さに応じて、切断時に、回転体の回転速度を制御する。なお、回転体制御部64は、各々の回転体を独立して制御してもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、位置検出センサ52を用いて、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置を制御していたが、力センサを用いて、反力を取得し、取得した反力に基づいて、Z方向における位置を制御してもよく、位置検出センサ52と力センサとを組合わせて制御してもよい。
【0039】
(処理フロー)
図5は、制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0040】
制御装置50は、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置を取得する(ステップS10)。位置取得部60は、位置検出センサ52が検出した、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置を取得する。
【0041】
制御装置50は、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置に基づいて、第1回転体28及び第2回転体32のZ方向における位置が所定の長さ以内となるように、第1回転体28及び第2回転体32をZ方向に移動させる(ステップS12)。このようにすることで、対象物Wの切断中に、帯鋸部22が切断面に対して傾斜しても、帯鋸部22を水平にすることができる。ただし、このように第1回転体28と第2回転体32との位置を同期する制御は必須ではない。
【0042】
[第1変形例]
図6は、第1変形例の駆動ユニットの概略上面図である。第1変形例において第1実施形態と同様の箇所は、詳細な説明を省略する。
【0043】
第1変形例に係る切断システム1は、切断装置10Cを有する。第1変形例においては、1つの切断装置10Cの帯鋸部22が、第1進行方向Aに進行する第1切断部24と、第2進行方向Bに進行する第2切断部26とを含む点で、第1実施形態とは異なる。
【0044】
切断装置10Cは、第1回転体28を1つ有し、第2回転体32を2つ有する。そのため、切断装置10Cの帯鋸部22は、Z方向から見た場合に、それぞれの回転体を頂点とする略三角形状に掛けられることになる。そして、切断装置10Cの帯鋸部22は、1つの第2回転体32から第1回転体28までの区間が、第1進行方向Aに進行する第1切断部24となり、第1回転体28からもう1つの第2回転体32までの区間が、第2進行方向Bに進行する第2切断部26となる。
【0045】
以上のように、第1変形例のような1つの切断装置10の帯鋸部22が第1切断部24と第2切断部26とを含んでいてもよいし、第1実施形態のように、複数の切断装置10で第1切断部24と第2切断部26とを構成してもよい。いずれのケースにおいても、互いに進行方向に対向するベクトル成分を含む方向に進行する第1切断部24及び第2切断部26により対象物Wを切断できるので、反力を抑制して適切に切断することができる。
【0046】
なお、
図6の例では、帯鋸部22は、Z方向から見て略三角形状であったが、それに限られず、第1切断部24と第2切断部26とを含むものであれば、任意の形状であってもよい。
【0047】
図7は、第1変形例の切断装置を複数台用いた場合の概略上面図である。
【0048】
図7に示すように、複数の切断装置10Cを配置して切断システムとしてもよい。
図7の例に示す切断システムにおいては、それぞれの切断装置10Cの第1回転体28と、第2回転体32とを、対象物Wを挟んで対峙するように配置して、対象物Wを切断する。このようにすることで、対象物Wの異なる切断箇所を同時に切断できる。また、切断装置10Cを複数台用いて同時に駆動することで、複数箇所を同時に切断することができる。これにより、効率よく切断を行うことができる。
【0049】
[第2変形例]
図8及び
図9を用いて、第2変形例の切断装置10Dについて説明する。
図8は、第2変形例の模式的な側面図である。
図9は、第2変形例の駆動ユニットの概略上面図である。第2変形例において第1実施形態と同様の箇所は、詳細な説明を省略する。
【0050】
第2変形例に係る切断装置10Dは、第1変形例と同様に、1つの帯鋸部22で、第1切断部24と第2切断部26とを構成している。第2変形例においては、第1切断部24の第1進行方向Aと第2切断部26の第2進行方向Bとが、対向している。第1切断部24と第2切断部26との間の距離Dは、例えば0.5mm以上10mm以下程度とすることが好ましい。
【0051】
図9に示すように、切断装置10Dは、X方向における一方側に、第1切断部24と第2切断部26との間の距離(所定の距離)Dを調整する第1調整回転体28Aを有する。また、切断装置10Dは、X方向における他方側に、第1切断部24と第2切断部26との間の距離Dを調整する第2調整回転体32Aを有する。
【0052】
第1調整回転体28Aは、第1回転体28よりも、X方向における他方側(
図9では左側)に、一対に配置される。それぞれの第1調整回転体28Aは、Y方向に並ぶように配置される。それぞれの第1調整回転体28Aは、Z方向に延在する第1調整回転軸29Aを有し、第1調整回転軸29Aを回転中心として回転可能となっている。それぞれの第1調整回転体28Aは、外周面が、帯鋸部22の外周面に接する。第1調整回転体28Aは、例えば制御装置50の制御により、Y方向における位置を移動可能である。これにより、帯鋸部22の接触している部分をY方向に押し付けたり話したりすることが可能となるため、第1切断部24と第2切断部26との所定の距離Dを調整できる。
【0053】
第2調整回転体32Aは、第2回転体32よりも、X方向における一方側(
図9では右側)に、一対に配置される。それぞれの第2調整回転体32Aは、Y方向に並ぶように配置される。それぞれの第2調整回転体32Aは、Z方向に延在する第2調整回転軸33Aを有し、第2調整回転軸33Aを回転中心として回転可能となっている。それぞれの第2調整回転体32Aは、外周面が、帯鋸部22の外周面に接する。第2調整回転体32Aは、例えば制御装置50の制御により、Y方向における位置を移動可能である。これにより、帯鋸部22の第1切断部24と第2切断部26との所定の距離Dを調整できる。
【0054】
図8に示すように、切断装置10Dの駆動ユニット20は、接続部材70を有する。接続部材70は、板状であり、第1回転体28と、第2回転体32とを接続する。接続部材70は、両端が支持部材72、74に接続する。支持部材72は、駆動ユニット20のX方向における一方側(本例では接続部30)に配置され、支持部材74は、駆動ユニット20のX方向における他方側(本例では接続部34)に配置される。すなわち、接続部材70は、支持部材72を介して、第1回転体28に対してZ方向における位置が固定され、支持部材74を介して、第2回転体32に対してZ方向における位置が固定される。このような接続部材70を設けることで、第1回転体28と第2回転体32とのZ方向における位置がずれ過ぎることを抑制でき、対象物Wを適切に切断できる。
【0055】
接続部材70の形状や設けられる位置は任意であってよいが、本実施形態においては、接続部材70は、帯鋸部22(第1切断部24及び第2切断部26)に対して、Z2方向側に位置している。ここでのZ2方向とは、Z方向に沿う方向であって帯鋸部22から対象物Wに向かう方向とは反対方向を指す。言い換えれば、Z方向に沿う方向であって帯鋸部22から対象物Wに向かう方向をZ1方向とした場合、Z2方向は、Z1方向の反対方向を指す。さらに言えば、接続部材70は、Z方向から見て、第1切断部24と第2切断部26との間の領域に重なるように位置している。また、接続部材70は、第1切断部24から第2切断部26に向かう方向(ここではY方向)における厚みが、距離D未満となっている。このようにすることで、対象物Wの切断時に、接続部材70が、第1切断部24と第2切断部26との間の領域を通ることが可能となり、接続部材70が切断の邪魔をすることを抑制できる。なお、接続部材70の材質は、高靭性のカーボンファイバーであることが好ましいが、任意であってよい。
【0056】
図10及び
図11は、第2変形例の切断装置を複数台用いた場合の概略上面図である。
【0057】
図10及び
図11に示すように、切断システムは、複数の切断装置10Dを設けてもよい。それぞれの切断装置10Dは、切断装置10Dの第1回転体28と、第2回転体32とを、対象物Wを挟んで対峙するように配置して、対象物Wを切断する。このようにすることで、切断時に、切削反力を低減することができる。また、切断装置10Dを複数台用いて同時に駆動することで、複数箇所を同時に切断することができる。これにより、効率よく切断を行うことができる。
【0058】
また、
図11に示すように、切断装置10Cの帯鋸部22が交差するように2台の切断装置10Dを配置することもできる。このように配置する場合、それぞれの切断装置10Dを、Z方向に並ぶように配置する。そして、一方の帯鋸部22を先に駆動させて対象物Wを切断し、先に切断する帯鋸部22を追うように、他方の帯鋸部22を駆動させて切断する。このようにすることで、1台で切断するよりも細かく切断することができる。なお、交差する切断装置10Dは、3台以上であってもよい。
【0059】
なお、切断装置10Dは、第1回転体28もしくは第2回転体32の片側に駆動部40を設けてもよい。このようにすることで、切断装置10Dの簡素化を図ることができる。
【0060】
[効果]
本開示の第1態様に係る切断システム1は、帯状の鋸刃を有し、鋸刃が駆動により第1進行方向Aに動く箇所である第1切断部24と、鋸刃が駆動により第1進行方向Aに対向する第2進行方向Bに動く箇所である第2切断部26とを含む帯鋸部22と、第1切断部24及び第2切断部26よりも一方側に設けられて、帯鋸部22が掛けられる第1回転体28と、第1切断部24及び第2切断部26よりも他方側に設けられて、帯鋸部22が掛けられる第2回転体32と、帯鋸部22、第1回転体28、及び第2回転体32の、切断する対象物Wに対する相対位置を、帯鋸部22の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させる駆動部40と、を有する。本開示によると、反力を低減することができ、大型の対象物Wを効率よく切断できる。また、切断装置10の運搬が容易となる。
【0061】
本開示の第2態様に係る切断システム1は、第1態様に係る切断装置10であって、駆動部40は、対象物Wに対する第1回転体28の相対位置を移動させる第1駆動部A1と、対象物Wに対する第2回転体32の相対位置を移動させる第2駆動部A2と、を有する。本開示によると、大型の対象物Wを効率よく切断できる。
【0062】
本開示の第3態様に係る切断システム1は、第2態様に係る切断装置10であって、第1駆動部A1は、移動方向における第2回転体32の位置に応じて、第1回転体28の移動を制御する。本開示によると、切断時に帯鋸部22が傾斜した際に帯鋸部22を水平にすることができる。
【0063】
本開示の第4態様に係る切断システム1は、第1態様から第3態様のいずれかに係る切断装置10であって、第1回転体28と第2回転体32とを接続する接続部材70を更に有する。本開示によると、大型の対象物Wを効率よく切断できる。
【0064】
本開示の第5態様に係る切断システム1は、第4態様に係る切断装置10であって、第1切断部24と前記第2切断部26とは、所定の距離Dを介して、互いに反対方向に進行するように配置され、接続部材70は、第1切断部24及び第2切断部26に対して移動方向の反対側に位置して、厚みが前記所定の距離D未満となっている。本開示によると、大型の対象物Wを効率よく切断できる。
【0065】
本開示の第6態様に係る切断システム1は、第1態様から第5態様のいずれかに係る切断装置10であって、帯鋸部22は、第1切断部24を含む第1帯鋸刃22Aと、第2切断部26を含む第2帯鋸刃22Bと、を有する。本開示によると、反力を低減することができる。
【0066】
本開示の第7態様に係る切断方法は、帯状の鋸刃を有し、鋸刃が駆動により第1方向に動く箇所である第1切断部24と、鋸刃が駆動により第1方向に対向する第2方向に動く箇所である第2切断部26とを含む帯鋸部22と、第1切断部24及び第2切断部26よりも一方側に設けられて、帯鋸部22が掛けられる第1回転体28と、第1切断部24及び第2切断部26よりも他方側に設けられて、帯鋸部22が掛けられる第2回転体32と、を含む切断装置10を用いた切断方法であって、帯鋸部22、第1回転体28、及び第2回転体32の、切断する対象物Wに対する相対位置を、帯鋸部22の鋸刃の幅方向に沿った移動方向に移動させるステップを含む。本開示によると、反力を低減することができ、大型の対象物Wを効率よく切断できる。
【符号の説明】
【0067】
1 切断システム
10 切断装置
22 帯鋸部
22A 第1帯鋸刃
22B 第2帯鋸刃
24 第1切断部
26 第2切断部
28 第1回転体
32 第2回転体
40 駆動部
70 接続部材
A 第1進行方向
A1 第1駆動部
A2 第2駆動部
B 第2進行方向
W 対象物