(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172127
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20241205BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20241205BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/02
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089655
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC23
3D235AA01
3D235BB02
3D235BB13
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC12
3D235DD12
3D235DD13
3D235FF32
5H609BB01
5H609BB16
5H609BB19
5H609PP02
5H609QQ05
5H609RR12
5H609SS22
(57)【要約】
【課題】 2つのオイルポンプの一方で異常が生じた場合でも、2つの電動機を冷却する。
【解決手段】 駆動装置であって、車両の左車輪を駆動する第1電動機と、前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、第1オイル供給路を介して前記第1電動機にオイルを供給する第1オイルポンプと、第2オイル供給路を介して前記第2電動機にオイルを供給する第2オイルポンプと、前記第1オイル供給路と前記第2オイル供給路とを接続する連結流路と、前記連結流路に設置されているとともに前記第1オイルポンプと前記第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に前記連結流路にオイルが流れることを許容する流量調節装置、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置であって、
車両の左車輪を駆動する第1電動機と、
前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、
第1オイル供給路を介して前記第1電動機にオイルを供給する第1オイルポンプと、
第2オイル供給路を介して前記第2電動機にオイルを供給する第2オイルポンプと、
前記第1オイル供給路と前記第2オイル供給路とを接続する連結流路と、
前記連結流路に設置されており、前記第1オイルポンプと前記第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に前記連結流路にオイルが流れることを許容する流量調節装置、
を有する駆動装置。
【請求項2】
前記流量調節装置が前記連結流路の中央に配置されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1電動機の駆動力を前記左車輪に伝達する第1ギヤセットと、
前記第2電動機の駆動力を前記右車輪に伝達する第2ギヤセットと、
前記第1ギヤセットと前記第2ギヤセットを収容するギヤ収容室、
をさらに有し、
前記第1電動機を通過したオイルが前記ギヤ収容室へ流れ、
前記第2電動機を通過したオイルが前記ギヤ収容室へ流れる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記流量調節装置がオリフィスである、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記流量調節装置が弁であり、
前記第1オイルポンプと前記第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に前記弁を開く弁制御装置をさらに有する、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、駆動装置に関する。
【0002】
特許文献1には、左車輪と右車輪とを別の電動機で駆動する電動車両が開示されている。この電動車両の駆動装置は、第1電動機と第2電動機を有している。第1電動機の駆動力は左車輪へ伝えられ、第2電動機の駆動力は右車輪へ伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両では、電動機にオイルを供給するオイルポンプが設けられる。電動機にオイルが供給されることで、電動機が冷却される。第1電動機と第2電動機を有する駆動装置においては、第1電動機にオイルを供給する第1オイルポンプと第2電動機にオイルを供給する第2オイルポンプとを独立して設けることができる。このように第1オイルポンプと第2オイルポンプが設けられると、第1電動機に供給されるオイルの流量と第2電動機に供給されるオイルの流量とが個別に制御され得る。したがって、第1電動機の温度と第2電動機の温度とが適切に制御され得る。
【0005】
第1オイルポンプと第2オイルポンプを有する駆動装置において、2つのオイルポンプの一方で異常が生じると、異常が生じたオイルポンプに対応する電動機を冷却することが困難となる。本明細書では、2つのオイルポンプの一方で異常が生じた場合でも、2つの電動機を冷却することが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する駆動装置は、車両の左車輪を駆動する第1電動機と、前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、第1オイル供給路を介して前記第1電動機にオイルを供給する第1オイルポンプと、第2オイル供給路を介して前記第2電動機にオイルを供給する第2オイルポンプと、前記第1オイル供給路と前記第2オイル供給路とを接続する連結流路と、前記連結流路に設置されているとともに前記第1オイルポンプと前記第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に前記連結流路にオイルが流れることを許容する流量調節装置、を有する。
【0007】
なお、流量調節装置は、第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に連結流路にオイルが流れることを許容する装置であれば、どのような装置であってもよい。例えば、流量調節装置は、第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に連結流路を開放する弁であってもよい。また、流量調節装置は、流路抵抗が高い部材であってもよい。この場合、第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか一方の異常時には、流量調節装置の両側で圧力差が生じることで連結流路にオイルが流れる。
【0008】
この駆動装置では、第1オイル供給路と第2オイル供給路が連結流路によって連結されている。第1オイルポンプと第2オイルポンプの両方が正常に動作している場合には、連結流路にほとんどオイルが流れない。したがって、この場合には、第1オイルポンプから第1オイル供給路を介して第1電動機にオイルが供給され、第2オイルポンプから第2オイル供給路を介して第2電動機にオイルが供給される。第1オイルポンプの異常時には、連結流路にオイルが流れることが許容される。したがって、この場合には、第2オイルポンプが吐出するオイルの一部が第2オイル供給路と連結流路と第1オイル供給路を介して第1電動機へ供給される。このため、第2オイルポンプが吐出するオイルによって第1電動機と第2電動機の両方が冷却される。第2オイルポンプの異常時には、連結流路にオイルが流れることが許容される。したがって、この場合には、第1オイルポンプが吐出するオイルの一部が第1オイル供給路と連結流路と第2オイル供給路を介して第2電動機へ供給される。このため、第1オイルポンプが吐出するオイルによって第1電動機と第2電動機の両方が冷却される。このように、この駆動装置によれば、2つのオイルポンプの一方で異常が生じた場合でも、2つの電動機が冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】制御装置70が実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本明細書が開示する駆動装置の付加的な特徴を列記する。
【0011】
流量調節装置が連結流路の中央に配置されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、連絡流路の抵抗の分布がアンバランスとなることを防止できる。
【0013】
駆動装置が、第1電動機の駆動力を左車輪に伝達する第1ギヤセットと、第2電動機の駆動力を右車輪に伝達する第2ギヤセットと、第1ギヤセットと第2ギヤセットを収容するギヤ収容室、をさらに有していてもよい。第1電動機を通過したオイルがギヤ収容室へ流れ、第2電動機を通過したオイルがギヤ収容室へ流れてもよい。なお、第1ギヤセットを収容する室と第2ギヤセットを収容する室とが互いに繋がっていてもよいし、これらが隔壁によって分離されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、電動機を通過したオイルによってギヤを潤滑させることができる。
【0015】
流量調節装置がオリフィスであってもよい。
【0016】
流量調節装置が弁であってもよい。第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に弁を開く弁制御装置をさらに有していてもよい。
【0017】
駆動装置は、第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に、第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか他方の出力を増大させるオイルポンプ制御装置をさらに有していてもよい。
【0018】
駆動装置は、第1オイルポンプと第2オイルポンプのいずれか一方の異常時に、第1電動機の出力と第2電動機の出力を低下させる電動機制御装置をさらに有していてもよい。
【0019】
電動機制御装置は、駆動装置の温度に応じて第1電動機の出力低下量と第2電動機の出力低下量を制御してもよい。
【0020】
電動機制御装置は、第1電動機の出力と第2電動機の出力とを同じ割合で低下させてもよい。
【実施例0021】
図1に示す実施例の駆動装置10は、電動車両に搭載されている。なお、
図1において矢印FRは車両前方向を示しており、矢印RHは車両右方向を示している。駆動装置10は、電動車両の左後輪90と右後輪92を駆動する。
【0022】
駆動装置10は、ケース12を有している。ケース12の内部には、左電動機室13、左ギヤ室14、右電動機室15及び右ギヤ室16が設けられている。左ギヤ室14は左電動機室13の後方に配置されている。右電動機室15は左電動機室13の右側に配置されている。右ギヤ室16は右電動機室15の後方に配置されている。なお、
図1では、左ギヤ室14と右ギヤ室16が繋がっているが、左ギヤ室14と右ギヤ室16が隔壁によって分離されていてもよい。左電動機室13には左電動機20が収容されている。左ギヤ室14には、左電動機20の駆動力を左後輪90に伝えるギヤセットが収容されている。右電動機室15には右電動機40が収容されている。右ギヤ室16には、右電動機40の駆動力を右後輪92に伝えるギヤセットが収容されている。
【0023】
左電動機20は、ロータ20aとステータ20bを有している。ロータ20aは、シャフト20cを有している。ロータ20aは、シャフト20cが電動車両の前後方向に沿って伸びる向きで左電動機室13内に収容されている。ロータ20aは、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に支持されている。シャフト20cは、左電動機室13と左ギヤ室14の間の隔壁を貫通しており、左電動機室13から左ギヤ室14まで伸びている。ステータ20bは、ロータ20aの周囲に配置されている。ステータ20bに電流を流すことで、ロータ20aが回転する。
【0024】
左ギヤ室14内に設けられたギヤセットは、ギヤ22、23、24、25を有する。また、左ギヤ室14内には、カウンタシャフト26と駆動シャフト27が配置されている。カウンタシャフト26は、ロータ20aのシャフト20cと平行に配置されている。カウンタシャフト26は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。駆動シャフト27は、電動車両の左右方向に沿って伸びている。駆動シャフト27は、左ギヤ室14からケース12の左側壁を貫通してケース12の外部まで伸びている。駆動シャフト27の左側の端部には、左後輪90が接続されている。駆動シャフト27は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。ギヤ22は、円柱型の歯車であり、ロータ20aのシャフト20cに固定されている。ギヤ23は、円柱型の歯車であり、カウンタシャフト26に固定されている。ギヤ23は、ギヤ22と係合している。ギヤ24は、円錐台型の歯車であり、カウンタシャフト26に固定されている。ギヤ25は、円錐台型の歯車であり、駆動シャフト27に固定されている。ギヤ25は、ギヤ24と係合している。ギヤ24とギヤ25によってハイポイドギヤが構成されている。
【0025】
左電動機20が駆動することによってロータ20aのシャフト20cが回転すると、ギヤ22が回転し、ギヤ22からギヤ23に駆動力が伝わる。このため、ギヤ23、カウンタシャフト26及びギヤ24が回転する。ギヤ24が回転すると、ギヤ24からギヤ25に駆動力が伝わる。このため、ギヤ25と駆動シャフト27が回転する。その結果、左後輪90が回転する。このように、左ギヤ室14内のギヤセットは、左電動機20の駆動力を左後輪90に伝達する。
【0026】
図2に示すように、左ギヤ室14の底面は左電動機室13の底面よりも下側に配置されている。左ギヤ室14内には、ギヤ25の下部が浸る程度の水位でオイル80が貯留されている。このため、左電動機20の駆動によってギヤ25が回転すると、左ギヤ室14内に貯留されているオイル80がギヤ25によって跳ね上げられる。これによって、左ギヤ室14内にオイルが散布される。左ギヤ室14内に散布されたオイルによって、各ギヤが潤滑される。
【0027】
駆動装置10は、左電動機室13と左ギヤ室14にオイルを循環させる左オイル循環路を有している。左オイル循環路は、オイルポンプ30、オイル供給路31、シャフト流路32、オイル流路33、オイル排出口34及びオイル排出路35を有している。オイル供給路31は、ケース12の外部の配管とケース12の外壁内に設けられた流路によって構成されている。ロータ20aのシャフト20cは、円筒形状を有しており、その中心孔によってシャフト流路32が構成されている。シャフト流路32は、シャフト20cの前端から後端まで伸びている。オイル供給路31は、オイルポンプ30の吐出口とシャフト流路32の前端とを接続している。シャフト20cの外周壁には、複数のオイル散布流路32aが設けられている。オイル流路33は、左電動機室13と左ギヤ室14との間の隔壁を貫通している。オイル排出口34は、左ギヤ室14の底面に開口している。オイル排出路35は、ケース12の外部の配管によって構成されている。オイル排出路35は、オイル排出口34とオイルポンプ30の吸込口とを接続している。
【0028】
オイルポンプ30が動作すると、左ギヤ室14内に貯留されているオイル80がオイル排出口34内に吸い込まれる。オイル排出口34内に吸い込まれたオイルは、オイル排出路35、オイルポンプ30及びオイル供給路31を通ってシャフト流路32へ供給される。シャフト流路32内では、オイルがシャフト流路32の前端から後端に向かって流れる。シャフト流路32内を後端まで流れたオイルは、左ギヤ室14内に吐出される。また、シャフト流路32内を流れるオイルの一部は、オイル散布流路32aから左電動機室13内に散布される。シャフト流路32内を流れるオイル及び左電動機室13内に散布されるオイルによって左電動機20が冷却される。また、左電動機室13内に散布されるオイルによって、ロータ20aが潤滑される。左電動機室13内に散布されたオイルは、オイル流路33を通って左ギヤ室14へ流れる。このように、オイルポンプ30が動作することで、左オイル循環路内にオイルが循環し、左電動機20が冷却される。
【0029】
右電動機室15及び右ギヤ室16内の構造は、左電動機室13及び左ギヤ室14内の構造を左右反転した構造と等しい。右電動機40は、ロータ40aとステータ40bを有している。ロータ40aは、シャフト40cを有している。ロータ40aは、シャフト40cが電動車両の前後方向に沿って伸びる向きで右電動機室15内に収容されている。ロータ40aは、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に支持されている。シャフト40cは、右電動機室15と右ギヤ室16の間の隔壁を貫通しており、右電動機室15から右ギヤ室16まで伸びている。ステータ40bは、ロータ40aの周囲に配置されている。ステータ40bに電流を流すことで、ロータ40aが回転する。
【0030】
右ギヤ室16内に設けられたギヤセットは、ギヤ42、43、44、45を有する。また、右ギヤ室16内には、カウンタシャフト46と駆動シャフト47が配置されている。カウンタシャフト46は、ロータ40aのシャフト40cと平行に配置されている。カウンタシャフト46は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。駆動シャフト47は、電動車両の左右方向に沿って伸びている。駆動シャフト47は、右ギヤ室16からケース12の右側壁を貫通してケース12の外部まで伸びている。駆動シャフト47の右側の端部には、右後輪92が接続されている。駆動シャフト47は、ケース12に設けられた軸受け(図示省略)によって回転可能に指示されている。ギヤ42は、円柱型の歯車であり、ロータ40aのシャフト40cに固定されている。ギヤ43は、円柱型の歯車であり、カウンタシャフト46に固定されている。ギヤ43は、ギヤ42と係合している。ギヤ44は、円錐型の歯車であり、カウンタシャフト46に固定されている。ギヤ45は、円錐型の歯車であり、駆動シャフト47に固定されている。ギヤ45は、ギヤ44と係合している。ギヤ44とギヤ45によってハイポイドギヤが構成されている。
【0031】
右電動機40が駆動することでシャフト40cが回転すると、シャフト40cからギヤ42、43、44、45を介して駆動シャフト47に駆動力が伝わる。これにより、駆動シャフト47が回転し、右後輪92が回転する。このように、右ギヤ室16内のギヤセットは、右電動機40の駆動力を右後輪92に伝達する。
【0032】
図2と同様に、右ギヤ室16の底面は右電動機室15の底面よりも下側に配置されている。右ギヤ室16内には、ギヤ45の下部が浸る程度の水位でオイルが貯留されている。このため、右電動機40の駆動によってギヤ45が回転すると、右ギヤ室16内に貯留されているオイルがギヤ45によって跳ね上げられる。これによって、右ギヤ室16内にオイルが散布される。右ギヤ室16内に散布されたオイルによって、各ギヤが潤滑される。
【0033】
駆動装置10は、右電動機室15と右ギヤ室16にオイルを循環させる右オイル循環路を有している。右オイル循環路は、オイルポンプ50、オイル供給路51、シャフト流路52、オイル流路53、オイル排出口54及びオイル排出路55を有している。オイル供給路51は、ケース12の外部の配管とケース12の外壁内に設けられた流路によって構成されている。ロータ40aのシャフト40cは、円筒形状を有しており、その中心孔によってシャフト流路52が構成されている。シャフト流路52は、シャフト40cの前端から後端まで伸びている。オイル供給路51は、オイルポンプ50の吐出口とシャフト流路52の前端とを接続している。シャフト40cの外周壁には、複数のオイル散布流路52aが設けられている。オイル流路53は、右電動機室15と右ギヤ室16との間の隔壁を貫通している。オイル排出口54は、右ギヤ室16の底面に開口している。オイル排出路55は、ケース12の外部の配管によって構成されている。オイル排出路55は、オイル排出口54とオイルポンプ50の吸込口とを接続している。
【0034】
オイルポンプ50が動作すると、右ギヤ室16内に貯留されているオイルが、オイル排出口54、オイル排出路55、オイルポンプ50及びオイル供給路51を通ってシャフト流路52へ供給される。シャフト流路52内を前端から後端まで流れたオイルは、右ギヤ室16内に吐出される。また、シャフト流路52内を流れるオイルの一部は、オイル散布流路52aから右電動機室15内に散布される。シャフト流路52内を流れるオイル及び右電動機室15内に散布されるオイルによって右電動機40が冷却される。また、右電動機室15内に散布されるオイルによって、ロータ40aが潤滑される。右電動機室15内に散布されたオイルは、オイル流路53を通って右ギヤ室16へ流れる。このように、オイルポンプ50が動作することで、右オイル循環路内にオイルが循環し、右電動機40が冷却される。
【0035】
ケース12の外壁の内部には、オイル供給路31とオイル供給路51とを接続する連結流路60が設けられている。連結流路60の中央には、流量調節装置62が設置されている。実施例1では、流量調節装置62はオリフィスである。このため、連結流路60の流路抵抗は、オイル供給路31の流路抵抗及びオイル供給路51の流路抵抗よりも大きい。
【0036】
駆動装置10は、オイルポンプ30、50を制御する制御装置70を有している。
図3は、制御装置70が実行する処理を示している。制御装置70は、電動車両の走行中に
図3の処理を繰り返し実行する。
【0037】
(オイルポンプ30、50が正常な場合の動作)ステップS2では、制御装置70はオイルポンプ30、50の両方が正常であるか否かを判定する。オイルポンプ30、50の両方が正常である場合には、制御装置70は、ステップS4においてオイルポンプ30、50を動作させる。オイルポンプ30、50の両方が正常である間は、ステップS2、S4が繰り返し実行され、オイルポンプ30、50が継続して動作する。オイルポンプ30、50が正常に動作している状態では、オイル供給路31内の圧力とオイル供給路51内の圧力が共に高く、オイル供給路31とオイル供給路51の間で高い圧力差は生じない。このため、流路抵抗が高い連結流路60にほとんどオイルが流れない。したがって、オイルポンプ30が吐出するオイルは左電動機20に供給され、オイルポンプ50が吐出するオイルは右電動機40に供給される。このため、左電動機20と右電動機40が適切に冷却される。この場合、制御装置70は、オイルポンプ30、50の出力を独立して制御する。すなわち、左電動機20の状態に応じてオイルポンプ30の出力を制御し、右電動機40の状態に応じてオイルポンプ50の出力を制御する。このように、制御装置70がオイルポンプ30の出力とオイルポンプ50の出力を独立して制御するので、左電動機20と右電動機40の温度がそれぞれ適切に制御される。
【0038】
(オイルポンプ30、50の一方が異常な場合の動作)電動車両の走行中にオイルポンプ30、50で異常が発生すると、制御装置70はステップS2でNOと判定する。すると、制御装置70は、ステップS6でオイルポンプ30、50の一方のみが異常であるか、オイルポンプ30、50の両方が異常であるかを判定する。オイルポンプ30、50の一方のみが異常である場合には、制御装置70は、ステップS8で異常が発生しているオイルポンプを停止させる。
【0039】
オイルポンプ30を異常により停止させた場合には、オイル供給路31内の圧力が低下する。その結果、オイル供給路51内の圧力がオイル供給路31内の圧力よりも高くなり、オイル供給路51内のオイルの一部が連結流路60を通ってオイル供給路51へ流れる。連結流路60を通ってオイル供給路51へ流れたオイルは、左電動機20のシャフト流路32へ流れる。これによって、左電動機20が冷却される。このように、オイルポンプ30で異常が発生した場合には、オイルポンプ50が吐出するオイルが左電動機20と右電動機40に供給されるようになり、左電動機20と右電動機40の温度上昇が抑制される。また、オイルポンプ50を異常により停止させた場合には、オイルポンプ30が吐出するオイルの一部が連結流路60を通って右電動機40へ供給される。すなわち、オイルポンプ50で異常が発生した場合には、オイルポンプ30が吐出するオイルが左電動機20と右電動機40に供給されるようになり、左電動機20と右電動機40の温度上昇が抑制される。このように、オイルポンプ30、50のいずれか一方で異常が発生した場合でも、左電動機20と右電動機40が冷却される。
【0040】
なお、流量調節装置62(すなわち、オリフィス)は、連結流路60の中央に配置されている。したがって、連結流路60内をオイル供給路51へ向かってオイルが流れる場合と、その逆向きにオイルが流れる場合とで、連結流路60の流路抵抗が略等しい。したがって、オイルポンプ30、50のいずれが停止した場合でも、好適に電動機20、40を冷却できる。
【0041】
次に、ステップS10で、制御装置70は、正常なオイルポンプの出力を増加させる。これによって、一方のオイルポンプの停止によって低下した冷却性能が補われる。次に、制御装置70は、ステップS12で、左電動機20と右電動機40の出力制限が必要であるか否かを判定する。左電動機20と右電動機40に対する出力指令値がオイルポンプの冷却性能に対して大きすぎる場合には、制御装置70は、ステップS12でYESと判定する。ステップS12でYESの場合には、制御装置70は、ステップS14で左電動機20と右電動機40の出力を制限する。これによって、左電動機20と右電動機40が過熱となることが防止される。なお、ステップS14では、制御装置70は、左電動機20の出力と右電動機40の出力とを同じ割合で低下させる。これにより、左電動機20の出力と右電動機40の出力がアンバランスとなって電動車両の進行方向が変化することが防止される。また、ステップS14では、制御装置70は、駆動装置10の温度(例えば、駆動装置10の内部温度や、循環するオイルの温度)に応じて左電動機20の出力低下量と右電動機40の出力低下量を制御してもよい。これにより、左電動機20と右電動機40の出力低下量を最低限とすることができる。ステップS12でNOの場合(すなわち、左電動機20と右電動機40の出力制限が必要ない場合)には、制御装置70はステップS18で通常の出力で左電動機20と右電動機40を制御する。
【0042】
(オイルポンプ30、50の両方が異常な場合の動作)オイルポンプ30、50の両方が異常な場合には、制御装置70は、ステップS6でNOと判定し、ステップS16でオイルポンプ30、50の両方を停止させる。その後、制御装置70は、ステップS12、S14、S18において左電動機20と右電動機40を制御する。
【0043】
以上に説明したように、実施例1の駆動装置10では、オイルポンプ30、50の一方で異常が発生した場合に、正常なオイルポンプが吐出するオイルを左電動機20と右電動機40の両方に供給することができる。これによって、左電動機20と右電動機40を冷却することができる。
実施例2では、流量調節装置62が、連結流路を開閉する開閉弁によって構成されている。流量調節装置62は制御装置70によって制御される。実施例2では、オイルポンプ30、50の両方が正常である場合には、制御装置70が、流量調節装置62を閉状態に制御する。この場合、オイルポンプ30が吐出するオイルは左電動機20に供給され、オイルポンプ50が供給するオイルは右電動機40に供給される。また、オイルポンプ30、50の一方が異常である場合には、制御装置70が、流量調節装置62を開状態に制御する。これにより、連結流路60にオイルが流れるようになる。このため、正常なオイルポンプが吐出するオイルが左電動機20と右電動機40の両方に供給され、左電動機20と右電動機40の両方が冷却される。このように、2つのオイルポンプ30、50の一方で異常が生じた場合でも、左電動機20と右電動機40を冷却することができる。
なお、上述した実施例1、2では、ギヤ室14、16がオイルポンプ30、50に供給されるオイルを貯留するオイル貯留室として機能した。しかしながら、ギヤ室14、16とは別にオイル貯留室が設けられていてもよい。
また、上述した実施例1、2では、オイルポンプによって吐出されるオイルがロータのシャフトの内部を流れることで電動機が冷却された。しかしながら、電動機を冷却できればオイルポンプから電動機にどのような形態でオイルが供給されてもよい。例えば、オイル供給路からロータの外周面に向かってオイルが吐出されてもよい。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。