(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172131
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G05F1/56 320C
G05F1/56 320U
G05F1/56 310N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089662
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】坂本 忠之
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC05
5H430EE04
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG08
5H430HH03
5H430LA01
5H430LA21
5H430LB02
5H430LB03
(57)【要約】
【課題】出力トランジスタに生じるリーク電流に起因する出力電圧の変動を抑制できる電源回路を提供する。
【解決手段】電源回路1は、出力トランジスタ10と、出力トランジスタ10を駆動する駆動回路20と、出力トランジスタ10の第2の主電極T2に接続されている電流調整素子30と、電流調整回路40を備える。出力トランジスタ10の第1の主電極T1に入力信号が入力される入力端子INが接続され、第2の主電極T2に出力電圧Voutが出力される出力端子OUTが接続されている。駆動回路20は、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの差に応じて出力トランジスタ10を駆動する。電流調整回路40は、出力トランジスタ10の周囲温度Taを検出し、周囲温度Taが設定温度Tsに達した場合に、出力トランジスタ10から電流調整素子30を介して電流を流す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が入力される入力端子に第1の主電極が接続され、出力電圧が出力される出力端子に第2の主電極が接続されている出力トランジスタと、
前記出力電圧と基準電圧との差に応じて前記出力トランジスタを駆動する駆動回路と、
前記出力トランジスタの前記第2の主電極に接続されている電流調整素子と、
周囲温度が設定温度に達した場合に、前記出力トランジスタから前記電流調整素子を介して電流を流す電流調整回路と
を備える、電源回路。
【請求項2】
前記設定温度が、前記出力トランジスタにリーク電流が発生する前記周囲温度に対応して設定されている、請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記電流調整素子が抵抗素子を含む、請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記電流調整素子が定電流源を含む、請求項1に記載の電源回路。
【請求項5】
前記電流調整回路が、
前記電流調整素子と直列接続されている電流調整トランジスタと、
前記周囲温度が前記設定温度に達した場合に、前記電流調整トランジスタを導通状態にする調整信号を出力する電流制御回路と
を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項6】
前記電流制御回路が、
前記周囲温度に応じた検出電圧を生成する温度センサと、
前記検出電圧が入力する反転入力端、および、前記設定温度に応じた設定電圧が入力する非反転入力端を有する第1コンパレータと
を備え、
前記第1コンパレータが、前記周囲温度が前記設定温度を超えた場合に、前記電流調整トランジスタの制御電極に前記調整信号を出力する、請求項5に記載の電源回路。
【請求項7】
前記温度センサが、
定電流源と、
前記定電流源の出力する電流が順方向に流れるダイオードと
を備え、
前記第1コンパレータの反転入力端が前記ダイオードと前記定電流源の接続点に接続されている、請求項6に記載の電源回路。
【請求項8】
前記検出電圧が入力する反転入力端、および所定の上限温度に応じた上限電圧が入力する非反転入力端を有する第2コンパレータを更に備え、
前記第2コンパレータが、前記周囲温度が前記上限温度を超えた場合に過熱保護信号を出力し、
前記過熱保護信号に応答して前記駆動回路が前記出力トランジスタをオフ状態に設定する、
請求項6に記載の電源回路。
【請求項9】
一定の電圧を分圧して、前記設定電圧、および前記設定電圧より低い前記上限電圧を生成する、請求項8に記載の電源回路。
【請求項10】
前記出力トランジスタの前記第2の主電極にそれぞれ接続されている複数の前記電流調整素子と、
複数の前記電流調整素子のいずれかとそれぞれ直列接続されている複数の前記電流調整トランジスタと
を備え、
前記電流制御回路が、前記周囲温度に応じて複数の前記電流調整トランジスタのいずれかをオン状態に設定する、
請求項5に記載の電源回路。
【請求項11】
前記駆動回路が、前記出力電圧を一定に維持するように前記出力トランジスタを駆動する、請求項1に記載の電源回路。
【請求項12】
前記出力トランジスタと前記駆動回路がリニアレギュレータを構成している、請求項11に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路の出力電圧を出力する出力トランジスタのサイズは、電源回路が供給する電流の増大に伴って大きくなっている。出力トランジスタのサイズが大きいほど、出力トランジスタに大きなリーク電流が発生する。電源回路の周囲温度が高いほど、出力トランジスタのリーク電流は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、出力トランジスタに生じるリーク電流に起因する出力電圧の変動を抑制できる電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、出力トランジスタと、出力トランジスタを駆動する駆動回路と、出力トランジスタの第2の主電極に接続されている電流調整素子と、電流調整回路を備える電源回路である。出力トランジスタの第1の主電極に入力信号が入力される入力端子が接続され、第2の主電極に出力電圧が出力される出力端子が接続されている。駆動回路は、出力電圧と基準電圧との差に応じて出力トランジスタを駆動する。電流調整回路は、出力トランジスタの周囲温度を検出し、周囲温度が設定温度に達した場合に、出力トランジスタから電流調整素子を介して電流を流す。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、出力トランジスタに生じるリーク電流に起因する出力電圧の変動を抑制できる電源回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電源回路の構成を示す模式的な回路図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る電源回路の電流調整素子の例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係る電源回路の構成を示す模式的な回路図である。
【
図4】
図4は、第3の実施形態に係る電源回路の構成を示す模式的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであって、構成部品の形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この実施形態は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0010】
第1の実施形態に係る電源回路1は、
図1に示すように、出力トランジスタ10と、出力トランジスタ10を駆動する駆動回路20と、出力トランジスタ10に接続されている電流調整素子30と、電流調整回路40を備える。出力トランジスタ10の第1の主電極T1は、入力信号が入力される入力端子INに接続され、第2の主電極T2は、出力電圧Voutが出力される出力端子OUTに接続されている。駆動回路20は、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの差に応じて出力トランジスタ10を駆動する。電流調整素子30は、出力トランジスタ10の第2の主電極T2に接続されている。電流調整回路40は、電源回路の周囲の温度(以下、「周囲温度Ta」と称する。)を検出する。電流調整回路40は、周囲温度Taが所定の設定温度Tsに達した場合に、出力トランジスタ10から電流調整素子30を介して電流を接地端子(GND)に流す。
【0011】
電源回路1は、駆動回路20の動作を制御するコントローラ50と、過熱保護回路60を更に備える。コントローラ50は、出力トランジスタ10をオフ状態に設定させる設定信号Senをイネーブル端子ENから駆動回路20に送信する。過熱保護回路60は、電源回路1が所定の上限温度Tuを超えた場合に過熱保護信号Stsdを出力する。過熱保護回路60は、サーマルシャットダウン回路とも称される。過熱保護回路60の詳細は後述する。
【0012】
電源回路1の入力端子INに、入力電源Vcが接続されている。また、入力端子INに入力コンデンサC1の一方の端子が接続され、入力コンデンサC1の他方の端子は接地端子に接続されている。
【0013】
電源回路1の出力端子OUTに、出力コンデンサC2が接続されている。電源回路1が出力端子OUTに出力電圧Voutを供給している状態(以下において、「動作状態」とも称する。)では、出力コンデンサC2が充電される。電源回路1が動作状態から出力電圧Voutの供給を停止した状態(以下において、「待機状態」とも称する。)に移行する際に、出力コンデンサC2から出力端子OUTを介して電荷が放電される。
【0014】
図1に示す電源回路1では、出力トランジスタ10がP型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である場合を例示的に示した。つまり、第1の主電極T1がドレイン電極、第2の主電極T2がソース電極、制御電極T3がゲート電極である。駆動回路20は、出力トランジスタ10のゲート電極に制御信号Sgを送信する。出力トランジスタ10の導通状態は、制御信号Sgにより制御される。なお、出力トランジスタ10はP型のMOSFETに限られず、例えば出力トランジスタ10はN型のMOSFET又はバイポーラトランジスタであってもよい。
【0015】
駆動回路20は、基準電圧Vrefに基づき、出力端子OUTから出力される出力電圧Voutを一定に維持するように、出力トランジスタ10を制御する。言い換えると、電源回路1は、一定の出力電圧Voutを供給する定電圧電源として機能する。
図1に示した電源回路1では、出力トランジスタ10と駆動回路20がリニアレギュレータを構成している。
【0016】
駆動回路20の反転入力端(-)に、基準電圧Vrefが入力する。駆動回路20の非反転入力端(+)に、第1フィードバック抵抗Rf1と第2フィードバック抵抗Rf2により出力電圧Voutを分圧したフィードバック電圧Vfbが入力する。以下において、第1フィードバック抵抗Rf1と第2フィードバック抵抗Rf2を総称してフィードバック抵抗Rfとも称する。
【0017】
駆動回路20は、出力端子OUTから帰還されるフィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefとの電圧差dVに応じて出力トランジスタ10を駆動する。駆動回路20は、電圧差dV=Vfb-Vref>0ならば制御信号Sgは出力電圧Voutの電位を高くし、電圧差dV=Vfb-Vref<0ならば制御信号Sgは出力電圧Voutの電位を低くする。これにより、電源回路1は、出力電圧Voutを一定に維持するように動作する。
【0018】
出力端子OUTから駆動回路20の非反転入力端(+)に流れるフィードバック電流の大きさは、出力電圧Voutとフィードバック抵抗Rfの抵抗値により決まる。例えば、出力電圧が1Vの場合に、フィードバック抵抗Rfの抵抗値が1MΩであると、フィードバック電流は1μAである。この場合に、フィードバック抵抗Rfに流れる電流が1μAを超えると、出力電圧Voutが上昇する。
【0019】
出力トランジスタ10のサイズが大きいほど、出力トランジスタ10に発生するリーク電流は大きい。特に、周囲温度Taが高いほど、出力トランジスタ10に大きなリーク電流が発生しやすい。フィードバック抵抗Rfに流れる電流の設定値よりも大きいリーク電流が出力トランジスタ10に生じると、リーク電流がフィードバック抵抗Rfに流れることにより出力電圧Voutが上昇する。例えば、出力電圧が1V、フィードバック抵抗Rfの抵抗値が1MΩであるときに、リーク電流が1μAを超えると、出力電圧Voutが上昇する。これに対して、電流調整素子30と電流調整回路40を含む電源回路1は、以下に説明するように、出力トランジスタ10に発生するリーク電流による出力電圧Voutに対する影響を抑制する。
【0020】
電流調整素子30は、出力トランジスタ10に接続され、電流調整回路40に制御されて出力トランジスタ10に発生するリーク電流を出力トランジスタ10から流す。
図1に示した電流調整素子30は、抵抗素子を含む。抵抗素子の抵抗値は、例えば10kΩ~100kΩ程度である。
【0021】
電流調整回路40は、電流調整素子30に直列接続されている電流調整トランジスタ41、および電流調整トランジスタ41を制御する電流制御回路42を含む。電流制御回路42は、周囲温度Taが設定温度Tsに達した場合に、電流調整トランジスタ41を導通状態にする調整信号Scを出力する。
【0022】
電流制御回路42は、温度センサ421、第1コンパレータ422および定電圧源423を含む。温度センサ421は、周囲温度Taに応じた検出電圧Vaを生成する。第1コンパレータ422は、検出電圧Vaが入力する反転入力端(-)、および、設定温度Tsに応じた設定電圧Vsが入力する非反転入力端(+)を有する。
【0023】
温度センサ421は、例えば
図1に示すように、定電流源Isと、定電流源Isの出力する電流が順方向に流れるダイオードDiを含む構成であってよい。定電流源IsとダイオードDiは、電源Vdと接地端子の間に直列に接続されている。温度センサ421は、ダイオードDiの順方向電圧Vfの温度依存性を利用して、ダイオードDiと定電流源Isの接続点から検出電圧Vaを出力する。第1コンパレータ422の反転入力端(-)が、ダイオードDiと定電流源Isの接続点に接続されている。
【0024】
第1コンパレータ422は、検出電圧Vaと設定電圧Vsの電位差に応じて調整信号Scを出力する。具体的には、第1コンパレータ422は、周囲温度Taに応じた検出電圧Vaを、出力トランジスタ10にリーク電流が発生する設定温度Tsに応じた設定電圧Vsと比較し、周囲温度Taが設定温度Tsを超えたか否かを判定する。そして、第1コンパレータ422は、周囲温度Taが設定温度Tsを超えた場合に、調整信号Scを電流調整トランジスタ41の制御電極に出力する。調整信号Scを受信した電流調整トランジスタ41がオン状態になることにより、出力トランジスタ10に発生するリーク電流が電流調整素子30に流れる。
【0025】
上記のように、電流調整回路40は、周囲温度Taが高くなった時に出力トランジスタ10に発生するリーク電流を、出力トランジスタ10から電流調整素子30に流す。その結果、リーク電流がフィードバック抵抗Rfに流れることによる出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0026】
設定温度Tsは、出力トランジスタ10にリーク電流が発生する周囲温度Taに対応して設定してよい。これにより、設定した周囲温度Taで出力トランジスタ10に発生するリーク電流に起因する出力電圧Voutの変動を抑制することができる。
【0027】
図1に示した電源回路1では、電流調整素子30が抵抗素子を含む場合を例示的に示した。しかし、電流調整素子30は、出力トランジスタ10に生じたリーク電流を流す素子であれば、抵抗素子に限られない。例えば、
図2に示すように、電流調整素子30が定電流源であってもよい。
【0028】
図1に示す電源回路1は、周囲温度Taが上限温度Tuを超えた場合に過熱保護信号Stsdを出力する過熱保護回路60を備える。過熱保護回路60は、温度センサ421と第2コンパレータ61を含む。上限温度Tuは、電源回路1を構成する部品が故障したり動作不良を起こしたりする周囲温度Taよりも低く設定される。
【0029】
第2コンパレータ61の反転入力端(-)に周囲温度Taに応じた検出電圧Vaが入力し、非反転入力端(+)に上限温度Tuに応じた上限電圧Vuが入力する。第2コンパレータ61は、検出電圧Vaと上限電圧Vuの電位差に応じた信号を出力する。すなわち、第2コンパレータ61は、周囲温度Taに応じた検出電圧Vaを、電源回路1を保護するための上限電圧Vuと比較し、周囲温度Taが上限温度Tuを超えたか否かを判定する。そして、第2コンパレータ61は、周囲温度Taが上限温度Tuに達した場合に過熱保護信号Stsdを出力する。
【0030】
過熱保護回路60が出力した過熱保護信号Stsdは、コントローラ50のアサート端子TSDに入力される。コントローラ50は、過熱保護信号Stsdを受信すると、イネーブル端子ENから設定信号Senを駆動回路20に送信する。設定信号Senを受信した駆動回路20は、出力トランジスタ10をオフ状態に設定する。出力トランジスタ10がオフ状態になることにより、電源回路1は待機状態となる。これにより、電源回路1の温度上昇が停止し、電源回路1が保護される。
【0031】
過熱保護回路60は、温度センサ421を含む。つまり、電流制御回路42と過熱保護回路60は、温度センサ421を共有している。電流制御回路42の一部と過熱保護回路60の一部を共通とすることにより、電源回路1の面積の増大を抑制できる。なお、電源回路1が過熱保護回路60を含まなくてもよい。
【0032】
第1コンパレータ422の非反転入力端(+)に入力する設定電圧Vsは、第2コンパレータ61の非反転入力端(+)に入力する上限電圧Vuよりも高い。このため、第2コンパレータ61が過熱保護信号Stsdを出力する周囲温度Taよりも低い周囲温度Taで、第1コンパレータ422が調整信号Scを出力する。
【0033】
例えば、出力トランジスタ10にリーク電流が発生する設定温度Tsを110℃と設定した場合に、設定電圧Vsを110℃に応じた電圧に設定する。設定温度Tsは任意に設定可能である。例えば、低消費電力のために出力トランジスタ10がオフである電源回路1の待機状態における周囲温度Taなどに応じて、設定温度Tsを設定してよい。また、電源回路1を温度上昇による破損から保護するための上限温度Tuも任意に設定可能である。例えば、上限温度Tuを150℃に設定する場合には、上限電圧Vuを150℃に応じた電圧に設定する。
【0034】
上記のように、1つの定電圧源423により、設定電圧Vsと上限電圧Vuを生成することができる。このため、電源回路1の省電力化と共に、チップ面積の増大を抑制できる。
【0035】
なお、設定温度Tsは、出力トランジスタ10のゲートサイズ又は電源回路1の用途などに応じて設定してよい。例えば、トランジスタのゲート幅Wが10μm、ゲート長Lが0.55μmの場合に、周囲温度Taが100℃のときに1nA程度のリーク電流が流れることが想定される。出力トランジスタ10のゲート幅Wは一般に10μmより広いため、出力トランジスタ10に発生するリーク電流は1nAよりも更に大きい。フィードバック抵抗Rfが50kΩ程度の場合は、リーク電流の出力電圧Voutに対する影響は小さい。しかし、低消費電力が重要な用途に電源回路1を使用にする場合などには、フィードバック抵抗Rfを例えば1MΩ以上にする必要があり、設定温度Tsも低い温度にする必要がある。
【0036】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る電源回路1は、出力トランジスタ10の周囲温度Taを検出し、出力トランジスタ10に発生するリーク電流を電流調整素子30に流す。その結果、電源回路1によれば、フィードバック抵抗Rfにリーク電流が流れることに起因する出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電源回路1は、例えば
図3に示すように、出力トランジスタ10の第2の主電極T2にそれぞれ接続されている複数の電流調整素子30と、電流調整素子30のいずれかとそれぞれ直列接続されている複数の電流調整トランジスタ41を備える。電流制御回路42は、周囲温度Taに応じて複数の電流調整トランジスタ41の少なくともいずれかをオン状態に設定する。
【0038】
図3に示す電源回路1は、第1電流調整素子301と第2電流調整素子302を含む。第1電流調整素子301に第1電流調整トランジスタ411が直列に接続され、第2電流調整素子302に第2電流調整トランジスタ412が直列に接続されている。以下において、第1電流調整素子301と第2電流調整素子302のそれぞれを限定しない場合は、電流調整素子30とも表記する。また、第1電流調整トランジスタ411と第2電流調整トランジスタ412のそれぞれを限定しない場合は、電流調整トランジスタ41とも表記する。
【0039】
第2の実施形態に係る電源回路1は、電流調整素子30と電流調整トランジスタ41を複数備えることが、第1の実施形態に係る電源回路1と異なる。電流制御回路42は、第1電流調整トランジスタ411と第2電流調整トランジスタ412に対してそれぞれ異なる周囲温度Taにおいて調整信号Scを出力する。
【0040】
電流制御回路42は、第1電流調整トランジスタ411の動作を制御する第1コンパレータ422(「コンパレータ422A」と表記)と、第2電流調整トランジスタ412の動作を制御する第1コンパレータ422(「コンパレータ422B」と表記)をそれぞれ含む。
【0041】
コンパレータ422Aとコンパレータ422Bのそれぞれの反転入力端(-)に検出電圧Vaが入力する。コンパレータ422Aの非反転入力端(+)に、第1の設定温度Ts1に応じた第1の設定電圧Vs1が入力する。コンパレータ422Bの非反転入力端(+)に、第2の設定温度Ts2に応じた第2の設定電圧Vs2が入力する。以下では、第1の設定温度Ts1よりも、第2の設定温度Ts2の方が高い場合について説明する。
【0042】
図3に示す定電圧源423は、電源端子Vbと接地端子の間を分圧して、第1の設定電圧Vs1、第2の設定電圧Vs2、および上限電圧Vuを生成する。定電圧源423は、電源端子Vbと接地端子の間に、第1分圧抵抗素子Rd1、第2分圧抵抗素子Rd2、第3分圧抵抗素子Rd3および第4分圧抵抗素子Rd4が直列に接続されている。電源端子Vbに接続している第1分圧抵抗素子Rd1と第2分圧抵抗素子Rd2との接続点から、第1の設定電圧Vs1が取り出される。第2分圧抵抗素子Rd2と第3分圧抵抗素子Rd3との接続点から、第2の設定電圧Vs2が取り出される。第3分圧抵抗素子Rd3と接地端子に接続する第4分圧抵抗素子Rd4との接続点から、上限電圧Vuが取り出される。
【0043】
コンパレータ422Aは、周囲温度Taに応じた検出電圧Vaと第1の設定電圧Vs1の電位差に応じた信号を出力する。すなわち、コンパレータ422Aは、検出電圧Vaを第1の設定電圧Vs1と比較し、周囲温度Taが第1の設定温度Ts1を超えたか否かを判定する。そして、コンパレータ422Aは、周囲温度Taが第1の設定温度Ts1を超えた場合に、調整信号Scを第1電流調整トランジスタ411の制御電極に出力する。調整信号Scを受信した第1電流調整トランジスタ411がオン状態になることにより、第1の設定温度Ts1において出力トランジスタ10に発生するリーク電流が第1電流調整素子301に流れる。
【0044】
コンパレータ422Bは、周囲温度Taに応じた検出電圧Vaと第2の設定電圧Vs2の電位差に応じた信号を出力する。すなわち、コンパレータ422Bは、検出電圧Vaを第2の設定電圧Vs2と比較し、周囲温度Taが第2の設定温度Ts2を超えたか否かを判定する。そして、コンパレータ422Bは、周囲温度Taが第2の設定温度Ts2を超えた場合に、調整信号Scを第2電流調整トランジスタ412の制御電極に出力する。調整信号Scを受信した第2電流調整トランジスタ412がオン状態になることにより、第2の設定温度Ts2において出力トランジスタ10に発生するリーク電流が第2電流調整素子302に流れる。
【0045】
上記のように、
図3に示した電源回路1は、複数の周囲温度Taにおいて、出力トランジスタ10に生じたリーク電流を電流調整素子30に流すことができる。
【0046】
電源回路1が動作状態にあって周囲温度Taが高い場合には、出力トランジスタ10に電流が流れており、リーク電流の影響は小さい。一方、電源回路1が待機状態であるときは、低消費電力にするためにリーク電流の影響を小さくすることが好ましい。このため、電源回路1が配置された環境の温度に合わせて設定温度Tsを設定してもよい。例えば、周囲の環境の温度が40℃程度までと想定される場合には、設定温度Tsを60℃に設定してもよい。これにより、待機状態であるときの電源回路1の低消費電力化を実現できる。
【0047】
周囲温度Taが高いほど、出力トランジスタ10のリーク電流は大きい。このため、第1の設定温度Ts1を60℃に設定して待機状態の電源回路1の低消費電力化を実現すると共に、周囲温度Taが60℃のときよりもリーク電流がより多く流れる周囲温度Taにおいて、電流調整素子30に大きなリーク電流を流してもよい。例えば、第1の設定温度Ts1を60℃に設定して、第1電流調整素子301の抵抗素子の抵抗値を100kΩに設定する。そして、第2の設定温度Ts2を110℃に設定して、第2電流調整素子302の抵抗素子の抵抗値を10kΩに設定する。
【0048】
図3に示した電源回路1によれば、電流経路の抵抗値が異なる複数の電流調整素子30を備えることができる。例えば、周囲温度Taに依存するリーク電流の大きさに対応させて、それぞれの電流調整素子30の抵抗素子を相互に異なる抵抗値に設定してよい。これにより、電源回路1の低消費電力化を実現できる。
【0049】
図3に電流調整素子30を2つ含む電源回路1を例示的に示したが、電流調整素子30の個数は3以上であってもよい。他は、第2の実施形態は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0050】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、電源回路が1つであるシステムを例示的に説明したが、複数の電源回路を含むシステムにおいて、電流制御回路42と過熱保護回路60を複数の電源回路で共通にしてもよい。複数の電源回路で電流制御回路42と過熱保護回路60を共通にする構成により、個々の電源回路に電流制御回路42と過熱保護回路60を配置する構成よりも、システム全体の面積の増大を抑制することができる。例えば、PMIC(Power management Integrated Circuit)などの複数の電源回路を含むシステムにおいて、電流制御回路42を複数の電源回路で共通にしてもよい。
【0051】
例えば
図4に示すシステムのように、第1電源回路1A、第2電源回路1B、第3電源回路1Cおよび第4電源回路1Dにおいて、電流制御回路42と過熱保護回路60を共通にしてもよい。温度センサ421と定電圧源423は、第1および第2の実施形態に係る電源回路1と同様に、電流制御回路42と過熱保護回路60が共有している。
【0052】
図示を省略するが、第1電源回路1A、第2電源回路1B、第3電源回路1Cおよび第4電源回路1Dは、電流調整素子30および電流調整トランジスタ41をそれぞれ含む。電流制御回路42は、システムの周囲温度Taを検出して、周囲温度Taが設定温度Tsを超えた場合に、調整信号Scを電流調整トランジスタ41に送信する。これにより、システムに含まれる電源回路のそれぞれにおいて出力トランジスタ10のリーク電流が電流調整素子30に流れる。
【0053】
過熱保護回路60は、周囲温度Taが上限温度Tuを超えた場合に、コントローラ50に過熱保護信号Stsdを送信する。コントローラ50は、過熱保護信号Stsdを受信すると、出力トランジスタ10をオフ状態に設定させる設定信号Senをシステムに含まれる電源回路に送信する。これにより、システムに含まれる電源回路のそれぞれが待機状態になる。
【0054】
システムに含まれる電源回路の回路構成は任意である。例えば、
図4に示すシステムにおいて、第1電源回路1Aおよび第2電源回路1Bがリニアレギュレータであり、第3電源回路1Cおよび第4電源回路1Dが降圧レギュレータであってよい。電流制御回路42を複数の電源回路で共通にすることにより、複数の電源回路を含むシステムの面積の増大を抑制し、且つ、出力トランジスタ10のリーク電流の影響を低減することができる。他は、第3の実施形態は、第1および第2の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。例えば、第2の実施形態のように、システムに含まれる電源回路が複数の電流調整素子30をそれぞれ含み、複数の周囲温度Taでリーク電流が電流調整素子30を流れるようにしてもよい。
【0055】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0056】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0057】
(付記1:すべての実施形態、
図1)
電源回路1は、入力信号が入力される入力端子INに第1の主電極T1が接続され、出力電圧Voutが出力される出力端子OUTに第2の主電極T2が接続されている出力トランジスタ10と、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの差に応じて出力トランジスタ10を駆動する駆動回路20と、出力トランジスタ10の第2の主電極T2に接続されている電流調整素子30と、周囲温度Taが設定温度Tsに達した場合に出力トランジスタ10から電流調整素子30を介して電流を流す電流調整回路40を備える。付記1に記載の電源回路1によれば、出力トランジスタ10にリーク電流が発生することに起因する出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0058】
(付記2:すべての実施形態、
図1)
付記1に記載の電源回路1において、設定温度Tsが、出力トランジスタ10にリーク電流が発生する周囲温度Taに対応して設定されている。付記2に記載の電源回路1によれば、設定した周囲温度Taで出力トランジスタ10に発生するリーク電流に起因する出力電圧Voutの変動を抑制することができる。
【0059】
(付記3:すべての実施形態、
図1)
付記1又は2に記載の電源回路1において、電流調整素子30が抵抗素子を含む。
【0060】
(付記4:すべての実施形態、
図2)
付記1又は2に記載の電源回路1において、電流調整素子30が定電流源を含む。
【0061】
(付記5:すべての実施形態、
図1)
付記1乃至4のいずれかに記載の電源回路1において、電流調整回路40が、電流調整素子30と直列接続されている電流調整トランジスタ41と、周囲温度Taが設定温度Tsに達した場合に電流調整トランジスタ41を導通状態にする調整信号Scを出力する電流制御回路42を含む。付記5に記載の電源回路1によれば、周囲温度Taが設定温度Tsに達したときに発生するリーク電流を電流調整素子30に流すことができる。
【0062】
(付記6:すべての実施形態、
図1)
付記5に記載の電源回路1において、電流制御回路42が、周囲温度Taに応じた検出電圧Vaを生成する温度センサと、検出電圧Vaが入力する反転入力端(-)、および、設定温度Tsに応じた設定電圧Vsが入力する非反転入力端(+)を有する第1コンパレータ422を備える。第1コンパレータ422が、周囲温度Taが設定温度Tsを超えた場合に、電流調整トランジスタ41の制御電極に調整信号Scを出力する。
【0063】
(付記7:すべての実施形態、
図1)
付記6に記載の電源回路1において、温度センサ421が、定電流源Isと、定電流源Isの出力する電流が順方向に流れるダイオードDiを備える。第1コンパレータ422の反転入力端(-)がダイオードDiと定電流源Isの接続点に接続されている。
【0064】
(付記8:すべての実施形態、
図1)
付記6に記載の電源回路1において、検出電圧Vaが入力する反転入力端(-)、および所定の上限温度Tuに応じた上限電圧Vuが入力する非反転入力端(+)を有する第2コンパレータ61を更に備える。第2コンパレータ61が、周囲温度Taが上限温度Tuを超えた場合に過熱保護信号Stsdを出力し、過熱保護信号Stsdに応答して駆動回路20が出力トランジスタ10をオフ状態に設定する。付記8に記載の電源回路1によれば、電源回路1の温度上昇が一定の温度で停止し、電源回路1が保護される。更に、電流制御回路42と過熱保護回路60が温度センサ421を共有することにより、電源回路1の面積の増大を抑制できる。
【0065】
(付記9:すべての実施形態、
図1)
付記8に記載の電源回路1において、一定の電圧を分圧して設定電圧Vsおよび設定電圧Vsより低い上限電圧Vuを生成する。付記9に記載の電源回路1によれば、1つの定電圧源423により、設定電圧Vsと上限電圧Vuを生成することができる。このため、電源回路1の省電力化と共に、チップ面積の増大を抑制できる。
【0066】
(付記10:第2の実施形態、
図3)
付記5乃至9のいずれかに記載の電源回路1において、出力トランジスタ10の第2の主電極T2にそれぞれ接続されている複数の電流調整素子30と、複数の電流調整素子30のいずれかとそれぞれ直列接続されている複数の電流調整トランジスタ41を備える。電流制御回路42が、周囲温度Taに応じて複数の電流調整トランジスタ41のいずれかをオン状態に設定する。付記11に記載の電源回路1によれば、複数の周囲温度Taにおいて、出力トランジスタ10に生じたリーク電流を電流調整素子30に流すことができる。更に、それぞれの電流調整素子30の電気抵抗をリーク電流の大きさに合わせた抵抗値に設定して、電源回路1の低消費電力化を実現できる。
【0067】
(付記11:すべての実施形態、
図1)
付記1乃至10のいずれかに記載の電源回路1において、駆動回路20が、出力電圧Voutを一定に維持するように出力トランジスタ10を駆動する。付記11に記載の電源回路1によれば、定電圧電源である電源回路1において、出力トランジスタ10のリーク電流に起因する出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0068】
(付記12:すべての実施形態、
図1)
付記11に記載の電源回路1において、出力トランジスタ10と駆動回路20がリニアレギュレータを構成している。付記12に記載の電源回路1によれば、低い入出力間電位差でも動作するリニアレギュレータにおいて、出力トランジスタ10のリーク電流に起因する出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 電源回路
10 出力トランジスタ
20 駆動回路
30 電流調整素子
40 電流調整回路
41 電流調整トランジスタ
42 電流制御回路
50 コントローラ
60 過熱保護回路
61 第2コンパレータ
421 温度センサ
422 第1コンパレータ
423 定電圧源