(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172134
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体の製造方法、ガスバリア積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241205BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241205BHJP
B65D 65/30 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B65D65/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089666
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐々 志歩
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC11
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA35
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK06D
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4F100AT00
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4F100DC13C
4F100DD21
4F100DD21C
4F100DD40C
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4F100EJ37A
4F100GB16
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4F100JD02
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】モノマテリアル化を実現しつつ、優れた引き裂き性を有し、シーラント層の損傷が抑制されたガスバリア積層体の製造方法、ガスバリア積層体及び包装袋を提供すること。
【解決手段】基材層、中間層、蒸着層及びシーラント層をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体を準備する工程と、ガスバリア積層体にレーザ光を照射してガスバリア積層体の一部を揮発させることで、中間層とシーラント層との間に空隙を有するガスバリア積層体を得る工程と、を備え、基材層が、延伸ポリエチレンフィルムからなり、中間層が、無延伸ポリエチレンフィルムからなり、シーラント層が、ポリエチレン系樹脂を含む、ガスバリア積層体の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層、蒸着層及びシーラント層をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体を準備する工程と、
前記ガスバリア積層体にレーザ光を照射して前記ガスバリア積層体の一部を揮発させることで、前記中間層と前記シーラント層との間に空隙を有するガスバリア積層体を得る工程と、
を備え、
前記基材層が、延伸ポリエチレンフィルムからなり、
前記中間層が、無延伸ポリエチレンフィルムからなり、
前記シーラント層が、ポリエチレン系樹脂を含む、ガスバリア積層体の製造方法。
【請求項2】
延伸ポリエチレンフィルムからなる基材層と、
無延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、
蒸着層と、
ポリエチレン系樹脂を含むシーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体であって、
前記中間層と前記シーラント層との間に空隙を有する、ガスバリア積層体。
【請求項3】
前記シーラント層に含まれるポリエチレン系樹脂が、C4-LLDPEである、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項4】
前記空隙が、当該ガスバリア積層体のMDに沿って直線状に設けられている、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項5】
前記蒸着層が、透明である、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項6】
前記基材層の一方の表面上に印刷層を更に備える、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項7】
当該ガスバリア積層体の全質量を基準として、ポリエチレン系樹脂の合計含有率が、90質量%以上である、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項8】
前記基材層の厚さが、10μm以上50μm以下である、請求項2に記載のガスバリア積層体。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか一項に記載のガスバリア積層体を含む、包装袋。
【請求項10】
前記ガスバリア積層体の前記シーラント層がシールされて形成される包装袋であって、
所定の収容物を収容可能な収容部と、
前記収容部の周りに形成されるシール部と、
開封された際に前記収容物を注出可能な注出口を含む注出部と、
を備え、
前記空隙が、前記注出口の開口を画定する開封予定線となるように設けられている、請求項9に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバリア積層体の製造方法、ガスバリア積層体及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ及び衣料用洗剤等を収容する包装袋が知られている。このような包装袋には、内容物を注出するための注出口が設けられている。このような包装袋を構成する積層体には、引き裂きやすいことが求められる。
【0003】
ところで、異種材質からなるフィルム積層体を用いて形成される包装袋は、ゴミとして回収された後に材質毎に分けて分別することが容易ではない。そのため、リサイクル適性を高めるために、単一素材を使用した包装材料、いわゆるモノマテリアル包材の検討が進められている。
【0004】
特許文献1には、ポリエチレンフィルムを含む基材と、ポリエチレンフィルムを含むシーラント層と、特定の発熱層と、を備える積層体から構成されるパウチであって、ハーフカット線が、基材を貫通する特定の貫通孔を含むパウチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示のパウチは、基材の貫通孔を形成する際にシーラント層が損傷してしまうことが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0007】
本開示は、モノマテリアル化を実現しつつ、優れた引き裂き性を有し、シーラント層の損傷が抑制されたガスバリア積層体の製造方法、ガスバリア積層体及び包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]基材層、中間層、蒸着層及びシーラント層をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体を準備する工程と、
上記ガスバリア積層体にレーザ光を照射して上記ガスバリア積層体の一部を揮発させることで、上記中間層と上記シーラント層との間に空隙を有するガスバリア積層体を得る工程と、
を備え、
上記基材層が、延伸ポリエチレンフィルムからなり、
上記中間層が、無延伸ポリエチレンフィルムからなり、
上記シーラント層が、ポリエチレン系樹脂を含む、ガスバリア積層体の製造方法。
[2] 延伸ポリエチレンフィルムからなる基材層と、
無延伸ポリエチレンフィルムからなる中間層と、
蒸着層と、
ポリエチレン系樹脂を含むシーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体であって、
上記中間層と上記シーラント層との間に空隙を有する、ガスバリア積層体。
[3]上記シーラント層に含まれるポリエチレン系樹脂が、C4-LLDPEである、[2]に記載のガスバリア積層体。
[4]上記空隙が、当該ガスバリア積層体のMDに沿って直線状に設けられている、[2]又は[3]に記載のガスバリア積層体。
[5]上記蒸着層が、透明である、[2]~[4]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[6]上記基材層の一方の表面上に印刷層を更に備える、[2]~[5]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[7]当該ガスバリア積層体の全質量を基準として、ポリエチレン系樹脂の合計含有率が、90質量%以上である、[2]~[6]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[8]上記基材層の厚さが、10μm以上50μm以下である、[2]~[7]のいずれかに記載のガスバリア積層体。
[9][2]~[8]のいずれかのいずれか一項に記載のガスバリア積層体を含む、包装袋。
[10]上記ガスバリア積層体の上記シーラント層がシールされて形成される包装袋であって、
所定の収容物を収容可能な収容部と、
上記収容部の周りに形成されるシール部と、
開封された際に上記収容物を注出可能な注出口を含む注出部と、
を備え、
上記空隙が、上記注出口の開口を画定する開封予定線となるように設けられている、[9]に記載の包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、モノマテリアル化を実現しつつ、優れた引き裂き性を有し、シーラント層の損傷が抑制されたガスバリア積層体の製造方法、ガスバリア積層体及び包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るガスバリア積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のガスバリア積層体の製造方法を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るスタンディングパウチを模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すスタンディングパウチを構成する一対のガスバリア積層体と、底テープとを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すスタンディングパウチの構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示すスタンディングパウチの注出部付近Sを拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る積層体について詳細に説明する。
【0012】
<積層体>
図1は、本実施形態に係るガスバリア積層体(以下、単に積層体ともいう)を模式的に示す断面図である。積層体35は、基材層L1、接着層L5a、中間層L2、蒸着層L4、接着層L5b及びシーラント層L3をこの順序で備える積層構造を有する。積層体35は、蒸着層L4と接着層L5bとの間に空隙Hを有する。基材層L1は、延伸ポリエチレンフィルムからなる。基材層L1は、基材層L1を貫通する貫通孔を有する。
【0013】
積層体35は、モノマテリアル化を実現しつつ、優れた引き裂き性を有し、シーラント層の損傷が抑制されている。このような効果が奏される理由について本発明者らは以下のように推察している。すなわち、積層体35は、基材層L1を貫通する貫通孔を有しつつ、蒸着層L4と接着層L5bとの間に空隙Hを有する。これらが引き裂きの起点となることで積層体35に優れた引き裂き性が付与される。また、基材層に隣接している層がシーラント層である場合には、基材層L1の貫通孔が形成される際にシーラント層が損傷してしまう。他方、積層体35は、中間層を備え、中間層が無延伸ポリエチレンフィルムであることで、シーラント層の損傷を抑制しつつ空隙Hが形成される。
【0014】
また、このような積層体35を含む包装袋は、シーラント層が露出していないため、デラミネーションの発生が抑えられる。また、このような積層体35を含む包装袋は、落下衝撃や押しつぶされた時の内圧に起因する破袋の発生を抑制できる傾向がある。
【0015】
以下、基材層L1、接着層L5a、中間層L2、蒸着層L4、接着層L5b及びシーラント層L3について詳述する。
【0016】
[基材層L1]
基材層L1は、延伸ポリエチレンフィルムからなる。ここで、無延伸ポリエチレンフィルムとは、成膜時に延伸処理が行われず、ランダムに折りたたまれたポリエチレン分子鎖により構成された10~100μm程度の球状の結晶(球晶)が、非結晶性分子で繋ぎあった構造となっているポリエチレンフィルムをいう。また、延伸ポリエチレンフィルムとは、成膜時に延伸処理が行われ、配列構造となっているポリエチレンフィルムをいう。
【0017】
基材層L1中のポリエチレン系樹脂の含有量は、基材層L1全量を基準として50質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、100質量%であってよい。基材層L1の材料としてポリエチレン系樹脂を用いることは、リサイクル性の観点から好ましい。また、基材層L1中のポリエチレン系樹脂の含有量が高いほど、リサイクル性が向上する。
【0018】
基材層L1に含まれるポリエチレン系樹脂は、ポリエチレンを不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリエチレンであってもよい。
【0019】
基材層L1に含まれるポリエチレン系樹脂の密度は、0.910g/cm3以上であることが好ましく、0.930g/cm3以上であることがより好ましく、0.950g/cm3以上であることが更に好ましい。ポリエチレン系樹脂の密度が0.910g/cm3以上であると、積層体を袋状に形成する際のヒートシール時に、シーラント層L3のみを融着させ易くなるため、製袋適性が良好となる。また、ポリエチレン系樹脂の密度が0.910g/cm3以上であると、基材層L1上に印刷層を形成する場合に、印刷適性が良好となる。また、ポリエチレン系樹脂の密度が0.910g/cm3以上であると、ロール加工中に基材層L1が伸びてシワが入ることを抑制し易い。
【0020】
基材層L1の構成は、密度の異なるポリエチレンをそれぞれ主成分として含む複数の無延伸フィルムを備える多層構成であってもよい。基材層L1は、該基材層L1を構成するフィルムの加工適性、剛性や腰強度、耐熱性、搬送時の粉落ちなどを考慮して適宜多層化してもよい。また、スリップ剤や帯電防止剤などの含有量を各層で変えて積層してもよい。複数の層を備える基材層L1は、押出成型や共押出成型、シート成形、共押出ブロー成型などにより積層してフィルム化することができる。複数の層を備える基材層L1の総厚としては、約10~100μmが好ましく、15~50μmがより好ましい。
【0021】
基材層L1を構成する延伸フィルムは、分子配向度(MOR)が1.07以下であってよく、1.05以下であってよく、1.04以下であってよい。分子配向度が低いほど、フィルムは等方性に優れる。分子配向度が1.07以下であると、積層体中での基材層L1の密着性(耐剥離性)が良好となり易い。分子配向度は、分子配向計により測定することができる。
【0022】
基材層L1は、100℃で15分加熱した後の機械方向(以下、単にMDともいう)及び垂直方向(以下、単にTDともいう)の熱収縮率が3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが更に好ましい。基材層L1の熱収縮率が上記範囲内であると、ロール加工中に基材層L1が伸びてシワが入ることを抑制し易いと共に、基材層L1上に蒸着層L4を設けた場合に、蒸着層L4に割れが生じることを抑制し易い。
【0023】
ここで、上記熱収縮率(%)とは、下記式により算出される値である。
熱収縮率(%)={(加熱前の長さ-加熱後の長さ)/加熱前の長さ}×100
熱収縮率の測定手順は以下のとおりである。
(1)基材層L1を20cm×20cmに切り出して測定サンプルとする。
(2)測定サンプルのMD又はTDに10cmの線を書き込む(加熱前の長さ)。
(3)測定サンプルを100℃で15分間加熱する。
(4)書き込んだ線のMD又はTDの長さを測定する(加熱後の長さ)。
(5)上記式より熱収縮率を算出する。
【0024】
基材層L1の厚さは特に限定されない。用途に応じ、当該厚さを6~200μmとすることができる。基材層L1の厚さは、強度を確保する観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。基材層L1の厚さは、基材層L1を貫通する貫通孔を形成することで引き裂き性が一層優れたものとなることから、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0025】
基材層L1には、隣接する層との密着性を向上させる観点から、その積層面に、バリア性能を損なわない範囲でコロナ処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、薬品処理、溶剤処理、オゾン処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けても構わない。
【0026】
基材層L1は、フィラー、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
[接着層L5a,L5b]
接着層L5a,L5bを形成する接着剤は、接着方法に合わせて選定することができるが、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などを用いることができる。接着層L5a,L5bを設けることで、基材層L1と中間層L2との層間及び中間層L2とシーラント層L3との層間の密着性が高くなりデラミネーションしにくくなり、包装袋としての耐圧性や耐衝撃性を保持することができる。
【0028】
接着層L5a,L5bは、塩素を含まないことが好ましい。接着層L5a,L5bが塩素を含まないことで、接着剤やリサイクル後の再生樹脂が着色したり、加熱処理によって臭いが発生したりすることを防ぐことができる。接着層L5a,L5bは、バイオマス材料を使用すると環境配慮の観点から好ましい。また、ポリエチレンにはバイオマスポリエチレンを使用することができる。環境配慮の観点から、接着剤には溶剤を含まないものが好ましい。
【0029】
接着層L5a,L5bの厚さは、例えば、0.1~10μm、0.1~5.0μm、又は0.2~2.0μmであってよい。
【0030】
[中間層L2]
中間層L2は、延伸ポリエチレンフィルムからなる。ポリエチレンフィルムは、1軸延伸であってよく、2軸延伸であってもよい。中間層L2の厚さは、例えば、5~800μmであり、5~500μm又は10~50μmであってよい。
【0031】
中間層L2中のポリエチレン系樹脂の含有量は、中間層L2全量を基準として50質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、100質量%であってよい。中間層L2の材料としてポリエチレン系樹脂を用いることは、リサイクル性の観点から好ましい。また、中間層L2中のポリエチレン系樹脂の含有量が高いほど、リサイクル性が向上する。
【0032】
中間層L2に含まれるポリエチレン系樹脂は、ポリエチレンを不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリエチレンであってもよい。
【0033】
中間層L2の融点は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは125℃以上である。中間層L2を構成するポリエチレンとして、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点から、HDPE及びMDPEで密度が0.925g/cm3以上のものを使用することが好ましい。特に、密度が0.93~0.98g/cm3の範囲の高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0034】
中間層L2は、ポリエチレン系樹脂以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては基材層L1と同様の成分が挙げられる。
【0035】
[シーラント層L3]
シーラント層L3は、ポリエチレン系樹脂を含む。シーラント層L3中のポリエチレン系樹脂の含有量は、シーラント層L3全量を基準として50質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、100質量%であってよい。シーラント層L3の材料としてポリエチレン系樹脂を用いることは、リサイクル性の観点から好ましい。また、シーラント層L3中のポリエチレン系樹脂の含有量が高いほど、リサイクル性が向上する。
【0036】
シーラント層L3の厚さは、例えば、40~150μmであり、20~250μmであってもよい。シーラント層L3の融点は、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは95~110℃である。シーラント層L3は、密度0.925g/cm3未満(より好ましくは0.900~0.920g/cm3)のポリエチレン系樹脂で構成されていることが好ましい。具体例として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。これらのポリエチレンをブレンドして使用してもよい。
【0037】
シーラント層L3を構成するポリエチレン系樹脂は、引き裂き性が一層優れることから、C4-LLDPEであることが好ましい。C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなるLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)の1種であり、エチレン由来のLLDPEの主鎖に、1-ブテン由来の炭素数が4個の側鎖を有する分子構造である。C4-LLDPEは、C6-LLDPEやC8-LLDPEよりも、側鎖が短く、メルトフローレート(MFR)が低いことから、相対的に低い引張衝撃強さや引張強度や引張弾性率を有している。このため、シーラント層L3を構成するポリエチレン系樹脂がC4-LLDPEであることにより、積層体35は、MDの引き裂き性が一層優れたものとなる。
【0038】
シーラント層L3に含まれるポリエチレン系樹脂の一部又は全部として、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレンを用いてもよい。このようなシーラントフィルムは、例えば、特開2013-177531号公報に開示されている。シーラント層L3は、使用済みのポリエチレン製品やポリエチレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリエチレンを含んでもよい。
【0039】
[蒸着層L4]
蒸着層L4の構成材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等の無機酸化物が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。また、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、蒸着層L4は酸化ケイ素を含む層とすることが好ましい。蒸着層L4を用いることにより、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0040】
蒸着層L4のO/Si比は1.7以上であることが好ましい。O/Si比が1.7以上であると金属Siの含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Si比は2.0以下であることが好ましい。O/Si比が2.0以下であるとSiOの結晶性が高くなって蒸着層L4が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。これにより、接着層L5bを積層する際に蒸着層L4にクラックが発生することを抑制することができる。また、包装袋に成形後もボイル処理時の熱により基材層L1が収縮することがあるが、O/Si比が2.0以下であることで蒸着層L4が上記収縮に追従し易く、バリア性の低下を抑制することができる。これらの効果をより十分に得る観点から、蒸着層L4のO/Si比は1.75以上1.9以下であることが好ましく、1.8以上1.85以下であることがより好ましい。
【0041】
蒸着層L4のO/Si比は、X線光電子分光法(XPS)により求めることができる。例えば、測定装置はX線光電子分光分析装置(日本電子株式会社製、商品名:JPS-90MXV)にて、X線源は非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV-10mA)のX線出力で測定することができる。O/Si比を求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Si2pで0.9の相対感度因子を用いることができる。
【0042】
蒸着層L4の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nm以下であると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加することを抑制し易いため、経済的観点からも好ましい。上記と同様の観点から、蒸着層L4の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0043】
蒸着層L4は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0045】
積層体35は、蒸着層L4と接着層L5bとの間に空隙Hを有する。空隙Hの最大長さは、例えば、20~40mmであってよい。空隙Hは、引き裂き性に一層優れることから、積層体35のMDに沿って直線状に設けられていることが好ましい。シーラント層L3がC4-LLDPEを含む場合には、空隙Hは、積層体35が引き裂き性に一層優れることから、積層体35のMDに沿って直線状に設けられていることが好ましい。
【0046】
積層体35におけるポリエチレン系樹脂の合計含有率は、リサイクル性の観点から、積層体35の全質量を基準として、90質量%以上であることが好ましい。モノマテリアル化をより高度に達成する観点から、積層体35におけるポリエチレン樹脂の含有量は、92質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0047】
以上、一実施形態に係る積層体について詳細に説明したが、本開示の積層体は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、積層体は、基材層、中間層、シーラント層、接着層及び蒸着層に加えてその他の層を更に備えていてもよい。
【0048】
[その他の層]
積層体は基材層L1とシーラント層L3との間にアンカーコート層を備えていてもよい。アンカーコート層は、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層でよく、アンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0049】
積層体は、例えば、印刷層を更に備えていてよい。印刷層は、基材層L1の接着層L5aとは反対側の表面上に設けられていてよく、基材層L1と接着層L5aとの間に設けられていてもよく、接着層L5aと中間層L2との間に設けられていてもよい。積層体が印刷層を備えることで、基材層に形成される貫通孔が大きくなる。それにより、積層体の引き裂き性は、一層優れたものとなる傾向がある。
【0050】
印刷層を設ける場合、印刷インキには塩素を含まないものを用いることが、印刷層が再溶融時に着色したり、臭いが発生したりすることを防ぐ観点から好ましい。また、印刷インキに含まれる化合物にはバイオマス材料を使用することが、環境配慮の観点から好ましい。
【0051】
例えば、積層体は、接着層L5a、L5bを備えていなくてもよい。基材層L1は、貫通孔を有していなくてもよい。
【0052】
以下、本開示の一実施形態に係る積層体の製造方法について詳細に説明する。
【0053】
<積層体の製造方法>
本実施形態に係る積層体の製造方法は、下記の工程(a)及び工程(b)を備える。
工程(a):基材層、中間層、蒸着層及びシーラント層をこの順序で備える積層構造を有するガスバリア積層体を準備する工程
工程(b):ガスバリア積層体にレーザ光を照射してガスバリア積層体の一部を揮発させることで、中間層とシーラント層との間に空隙を有するガスバリア積層体を得る工程
【0054】
[工程(a)]
図2(a)は、工程(a)において準備される積層体の一例を模式的に示す断面図である。積層体30は、基材層L1、接着層L5a、中間層L2、蒸着層L4、接着層L5b及びシーラント層L3をこの順序で備える積層構造を有する。各層は、上述した積層体35と同様であってよい。
【0055】
[工程(b)]
工程(b)では積層体30にレーザ光を照射する。レーザ光が蒸着層に吸収されて蒸着層が発熱する。それにより蒸着層や蒸着層に隣接する層の一部が揮発する。それにより空隙Hが形成される。また、基材層L1が延伸ポリエチレンフィルムであることで空隙の形成に伴い基材層L1に貫通孔が生じる。積層体が中間層を有しない場合には貫通孔の形成過程でシーラント層に損傷が生じる。他方、積層体30は中間層を備え中間層が無延伸ポリエチレンフィルムであるため、シーラント層に損傷が生じづらい。
【0056】
積層体30に照射するレーザ光としては、具体的には、炭酸ガスレーザ又はYAGレーザから出射されるレーザ光が挙げられ、生産性の観点から、炭酸ガスレーザから出射されるレーザ光が好ましい。
【0057】
照射するレーザ光の波長は、例えば、9.2~10.8μmであってよい。
【0058】
照射するレーザ光のスキャンスピードは、100~1000mm/秒であってよい。
【0059】
照射するレーザ光の出力は、20~80Wであってよい。
【0060】
以上、一実施形態に係る積層体の製造方法について詳細に説明したが、本開示の積層体の製造方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【0061】
以下、本開示の一実施形態に係る包装袋について詳細に説明する。
【0062】
<スタンディングパウチ>
ここでは、包装袋の一例としてスタンディングパウチについて説明する。スタンディングパウチは、化粧品、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ及び衣料用洗剤などの詰め替え用パウチとして使用されるものである。本実施形態に係る包装袋は、上記実施形態に係る積層体35を含む。
【0063】
図3は、本実施形態に係るスタンディングパウチを模式的に示す正面図である。
図4は、
図3に示すスタンディングパウチを構成する一対の積層体と底テープとを模式的に示す分解斜視図である。
図5は、
図3に示すスタンディングパウチの構成を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、スタンディングパウチ10(包装袋)は、所定の収容物を収容する(周囲可能な)収容部11と、収容部11の周りに形成されるシール部12と、収容部11内に収容物を注入するための注入口を有する注入部13と、開封された際に収容物を注出可能な注出部20と、を備えている。シール部12は、収容部11の一方の側部(図示の左側の側部)に設けられる第1シール部12aと、収容部11の他方の側部(図示の右側の側部)に設けられる第2シール部12bと、収容部11の底部に設けられる第3シール部12cとを有している。また、注入部13は、収容部11内に収容物を収納した後にはヒートシールして閉じられるようになっている。
【0064】
このようなスタンディングパウチ10では、
図4に示すように、積層体35を所定の形状にカットした積層体35A、35Bが対向するように配置されている。積層体35A、35Bは、それぞれのシーラント層L3を内側にして所定箇所でヒートシールされている。スタンディングパウチ10では、積層体35A、35Bの間の底部側に底テープ40を挟み込むようにヒートシールされている。ヒートシールによるスタンディングパウチの形成は、従来の方法と同様に実施することができる。
【0065】
底テープ40は一つの山折り部41を有する。すなわち、スタンディングパウチ10が自立した状態において、底テープ40は逆V字状に配置されている(
図4及び
図5参照)。スタンディングパウチ10の底部の第3シール部12cは、
図5に示すように、ヒートシール部14とヒートシール部15とによって構成されている。ヒートシール部14は、積層体35Aの底部31aと底テープ40の一方の底部41aとをヒートシールした部分である。ヒートシール部15は、積層体35Bの底部31bと底テープ40の他方の底部41bとをヒートシールした部分である。積層体35A、35B及び底テープ40は、
図3に示されるように、内容物を収容する領域の底部が曲面をなすように、上側が円弧状をなすようにヒートシールされている。
【0066】
スタンディングパウチ10の側部であるシール部12は、上述したように、注出部20側に設けられる第1シール部12aと、第1シール部12aとは水平方向(又はMD)において逆側に設けられる第2シール部12bとを有している。シール部12の第1シール部12a及び第2シール部12bそれぞれの幅は、例えば、5~18mmであり、7~15mmであってもよい。シール部12の各幅が5mm以上であることで十分なシール強度を達成できる傾向にあり、他方、18mm以下であることでスタンディングパウチ10の十分な内容量を確保しやすい傾向にある。
【0067】
図3に示されたとおり、スタンディングパウチ10は、底部(第3シール部12c)の両サイドに融着部16,17をそれぞれ有する。本実施形態においては、スタンディングパウチ10の一方のサイドに二つの融着部16が上下に並んで形成され、他方、他方のサイドにも二つの融着部17が上下に並んで形成されている。融着部16,17は積層体35Aと積層体35Bとを接合している。融着部16,17は、底テープ40に設けられた切欠部44及び切欠部45を通じて積層体35A,35Bのシーラント層L3同士が局所的に融着している箇所である。
図5に示されたように、底テープ40の切欠部44及び切欠部45は、山折り部41と底辺42,43との間の領域であり且つ底テープ40の側部に設けられている。底部の両サイドに融着部16,17が設けられていることで、スタンディングパウチ10の自立性及び落下耐性をより一層向上させることができる。なお、ここでは、底テープ40の一つのサイドに二対の切欠部44及び45を設け、二つの融着部16,17を形成した場合を例示したが、例えば、底テープ40の一つのサイドに一対の切り欠き部を設け、一つの融着部16又は17を形成してもよい。
【0068】
リサイクル性の観点から、スタンディングパウチ10におけるポリエチレン系樹脂の含有量は90質量%以上であることが好ましい。モノマテリアル化をより高度に達成する観点から、スタンディングパウチ10におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、92質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0069】
次に、
図3及び
図6を参照して、スタンディングパウチ10の注出部20について詳細に説明する。
図6は、
図3に示すスタンディングパウチの注出部付近Sを拡大して示す平面図である。
図3及び
図6に示すように、注出部20は、注出口21、把持タブ22、第1注出シール部23、第2注出シール部24、連結シール部25、開封予定線26、及び、ノッチ27を備えている。注出部20は、注入部13のシール部13aに隣接して設けられている。
【0070】
注出口21は、開封予定線26に沿って注出部20が開封された際に開口21aから内容物を注出するための部分であり、収容部11からの流路21bを含む部分である。注出口21は、上下方向に対してやや斜めとなる方向に伸びる第1注出シール部23及び第2注出シール部24によって流路21bを含む部分が画定される。
【0071】
把持タブ22は、収容部11に収容された内容物を移し替えるために注出部20を開封する際に注出部20を引っ張るための把持部分である。把持タブ22は、注出口21側を除いた3方の部分がシールされている。把持タブ22を開封予定線26に沿って矢印Aの方向に引っ張ることで、注出口21の開口21aが開き、注出部20が開封される。把持タブ22は、スタンディングパウチ10の外側に向かって突出する突出部22aを有しており、把持タブ22は外側から内側に向かって引っ張るように設計されている。なお、把持タブ22のシール部分は、第1注出シール部23及び第2注出シール部24に連結している。
【0072】
第1注出シール部23は、スタンディングパウチ10の外縁側に設けられた上下方向に延びるシール部であり、上端が把持タブ22に連結し、下端が連結シール部25を介して第1シール部12aに連結されている。第2注出シール部24は、第1注出シール部23よりも内側に設けられて上下方向に延びるシール部であり、上端が把持タブ22に連結し、下端が曲面部を介して注入部13のシール部13aに連結されている。第1注出シール部23及び第2注出シール部24は、第1シール部12a及び第2シール部12bと同様に、積層体35A,35Bのシーラント層L3同士がシールされた部分である。第1注出シール部23及び第2注出シール部24の機械方向における幅は、例えば3mm以上(又は4mm以上)であってもよい。
【0073】
第1注出シール部23は、上述したように、連結シール部25を介して第1シール部12aに連結されている。この際、第1注出シール部23の外縁と連結シール部25の外縁とが為す角度αは、例えば、90度以上180度以下であり、鈍角を形成している。
【0074】
第2注出シール部24は、シール部13aに連結される根元24aから把持タブ22に連結される先端24bまでの距離D2が例えば5mm以上10mm以下となるように短く形成されている。一例として、第2注出シール部24の長さD2は、第1注出シール部23の長さD1の半分より短くてもよい。また、第2注出シール部24は、注入部13のシール部13aに隣接して形成されており、例えば、第2注出シール部24とシール部13aとが対向する箇所での最短の離間距離(互いの外縁同士の距離)が5mm以内であってもよい。
【0075】
開封予定線26は、収容部11に収容された内容物を他の容器に移し替える等のために注出部20を開封する際、注出部20を引き裂いて切断するための線である。開封予定線26は、積層体30にレーザ光を照射して線状に空隙を形成することで形成される。開封予定線26は、実線であってもよく、破線であってもよい。
【0076】
ノッチ27は、開封予定線26の一端に設けられて、注出部20の開封の初端となる部分であり、使用者が注出部20を開封する際の誘導を行う部分である。ノッチ27は、切り込み、切欠き、又は、窪みなどの形状を有してもよい。また、ノッチ27は、図の例では、注出部20の外側の把持タブ22の直ぐ下に設けられているが、開封予定線26に誘導できるようであれば、ノッチ27は他の場所に設けられてもよい。
【0077】
スタンディングパウチ10では、注出部20の開封予定線26の一端にはノッチ27が設けられている。これにより、注出部20の開封作業を誘導させることが可能となり、開封性能を向上することができる。
【0078】
スタンディングパウチ10では、注出部20の第2注出シール部24の根元24aから先端24bへの直線長さは5mm以上10mm以下であってもよい。注出部20における上記の直接長さD2が5mm以上であることにより、注出部20を開封して詰め替え作業を行う際に、詰め替え作業を安定して行うことが可能となる。また、注出部20における上記の直接長さD2が10mm以下であることにより、注出部20を開封してスタンディングパウチ10の注出部20を詰め替え先の容器に差し込んだ場合、注出部20における流路21bが狭くなることがなく、詰め替え作業を迅速に行うことが可能となる。
【0079】
スタンディングパウチ10では、注出口21に沿った外縁と注出口21から第1シール部12aへと繋ぐ連結シール部25の外縁とが為す角度αが鈍角である。この態様によれば、注出部20を開封してスタンディングパウチ10の注出部20を詰め替え先の容器に差し込んだ場合、注ぎ口である注出部20を容器(ボトル等)に嵌め込み易くなり、詰め替え作業をより容易に行うことが可能となる。
【0080】
スタンディングパウチ10では、積層体35のMDにおける腰強度が200mN/15mm以下であってもよい。この場合、積層体35がより柔らかい材料から構成されることになるため、かかる積層体35を用いて形成されたスタンディングパウチ10から収容物を注出する際の搾り出し作業を行い易くなる。
【0081】
スタンディングパウチ10では、注出部20の第1注出シール部23及び第2注出シール部24の機械方向における幅が3mm以上である。この場合、注出部20の注出口21の剛性を高めて、スタンディングパウチ10の注出部20を詰め替え先の容器に差し込んだ場合、注出を安定して行うことができる。これにより、詰め替え作業をより容易に行うことが可能となる。
【0082】
スタンディングパウチ10では、第1注出シール部23がスタンディングパウチ10の外縁側に設けられ、且つ、第2注出シール部24が第1注出シール部23よりも内側に設けられ、第2注出シール部24の長さD2が第1注出シール部23の長さD1の半分よりも短い。そして、第2注出シール部24と注入部13のシール部13aとの最短の離間距離D3が5mm以内である。この場合、ポリエチレン系樹脂のような比較的柔らかい材料を用いた場合であっても、注出部20に剛性を確保して、注出部20による詰め替え作業をより確実に行うことが可能となる。
【0083】
スタンディングパウチ10では、注出部20は、スタンディングパウチ10の使用者が把持可能な把持タブ22を有している。把持タブ22は、スタンディングパウチ10の外側に向かって突出している。これにより、注出部20の開封作業を行い易くなる。
【0084】
スタンディングパウチ10の容量は、例えば、80~800mlであってよい。
【0085】
以上、一実施形態に係る包装袋について詳細に説明したが、本開示の包装袋は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、積層体35の適用対象としてスタンディングパウチを例示したが、実施形態に係る積層体35を他の包装袋の製造に適用してよい。例えば、一枚の積層体35をシーラント層L3が対向するよう二つ折りにした後、三方をシーラントすることによって袋形状としたものであってよく、二枚の積層体35を各シーラント層L3が対向するように重ねた後、四方をヒートシールすることによって袋形状としたものであってもよい。包装袋は、内容物として食品、医薬品等の内容物を収容することができる。包装袋は、ボイル処理などの加熱殺菌処理を施すことができる。
【実施例0086】
以下、実施例により本開示を更に詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
<ガスバリア積層体の作製>
(実施例1)
基材層、第1の接着層、中間層、第2の接着層、シーラント層として、下記の材料を準備した。
・基材層…2軸延伸HDPEフィルム(厚さ:15μm、密度:0.948g/cm3、融点:135℃)
・第1の接着層…ウレタン系接着剤
・中間層…無延伸HDPEフィルム(厚さ:32μm、密度:0.948g/cm3、融点:135℃)
・第2の接着層…ウレタン系接着剤
・シーラント層…C4-LLDPE(厚さ:100μm、密度:0.916g/cm3、MFR:4g/10分、融点:104℃)
【0088】
中間層の一方の主面上にシリカ蒸着膜(蒸着層)を真空蒸着により形成した。
【0089】
基材層と、中間層の蒸着層が設けられていない側の表面とを第1の接着層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせた。次いで、蒸着層と、シーラント層とを第2の接着層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせることで積層体を得た。
【0090】
ガスバリア積層体を3つ用意し、それぞれを本体(積層体35A、35B)及び底材(底テープ40)として使用し、
図3に示す構成のスタンディングパウチを作製した(
図4を参照)。パウチサイズは以下のとおりとした。
・天地:230mm
・幅:150mm
・折込幅:40mm
【0091】
スタンディングパウチ10の注出部20では、MDに沿うように開封予定線26を形成した。開封予定線は、スタンディングパウチ10の外側からレーザ光を照射することで形成した。レーザ光の照射条件は以下のとおりとした。
【0092】
・レーザ:LP-430U(商品名、パナソニック株式会社製)
・レーザ光のパワー:80%(24W)
・スキャンスピード:300mm/秒
・レーザ光の波長:10.6μm
【0093】
(実施例2)
基材層として下記の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア積層体及びスタンディングパウチ10を得た。
・基材層…2軸延伸HDPEフィルム(厚さ:25μm、密度:0.95g/cm3、融点:125℃)
【0094】
(実施例3)
基材層として下記の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア積層体及びスタンディングパウチ10を得た。
・基材層…2軸延伸HDPEフィルム(厚さ:40μm、密度:0.95g/cm3、融点:125℃)
【0095】
(実施例4)
基材層として下記の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア積層体及びスタンディングパウチ10を得た。
・基材層…2軸延伸HDPEフィルム(厚さ:55μm、密度:0.95g/cm3、融点:125℃)
【0096】
(比較例1)
実施例2と同様にして基材層、第1の接着層、シーラント層の材料を準備した。基材層とシーラント層とを第1の接着層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせることで積層体を得た。積層体を用いて実施例1と同様にしてスタンディングパウチ10を得た。
【0097】
(比較例2)
実施例2と同様にして基材層、第1の接着層、シーラント層の材料を準備した。基材層の一方の主面上にシリカ蒸着膜(蒸着層)を真空蒸着により形成した。基材層の蒸着層側の主面とシーラントを層とを第1の接着層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせることで積層体を得た。積層体を用いて実施例1と同様にしてスタンディングパウチ10を得た。
【0098】
(比較例3)
蒸着層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にしてガスバリア積層体及びスタンディングパウチ10を得た。
【0099】
(実施例5)
実施例2と同様にして基材層、第1の接着層、中間層、第2の接着層、シーラント層の材料を準備した。基材層の一方の主面上に印刷層を形成した。実施例1と同様にして中間層の一方の主面上に蒸着層を形成した。基材層の印刷層側の主面と、中間層の蒸着層とは反対側の主面と、を第1の接着層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせた。次いで、蒸着層と、シーラント層とを第2の接着層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせることで積層体を得た。積層体を用いて実施例1と同様にしてスタンディングパウチ10を得た。
【0100】
<積層体の断面観察>
(実施例1~5及び比較例1~3)
各実施例及び比較例で作製した積層体の断面を観察した。各実施例のガスバリア積層体は、中間層とシーラント層との間に空隙を有することが確認された。また、各ガスバリア積層体のシーラント層の損傷の有無を確認した。損傷がないものを「A」、あるものを「B」として結果を表1に示した。
【0101】
<引き裂き性の評価>
(実施例1~5及び比較例1~3)
各実施例及び比較例のスタンディングパウチについて、把持タブを手でつまみ開封予定線に沿って引っ張った。引き裂き性を以下の基準で評価した。結果を表1に示した。
A:開封予定線に沿って開封される
B:力を少し入れることで開封予定線に沿って開封される
C:力を強く入れることで開封予定線に沿って開封される
D:開封できない
【0102】
10…スタンディングパウチ(包装袋)、11…収容部、12,13a…シール部、20…注出部、21…注出口、21a…開口、26…開封予定線、H…空隙、L1…基材層、L2…中間層、L3…シーラント層、L4…蒸着層。