(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172147
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蛍光ホイール、ホイールデバイスおよび発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20241205BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241205BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B5/20
G03B21/00 D
G03B21/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089687
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】市川 美咲
【テーマコード(参考)】
2H148
2K203
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA01
2H148AA19
2H148AA26
2H148AA27
2K203FA07
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA44
2K203FA45
2K203GA35
2K203HA30
(57)【要約】
【課題】軽量化された蛍光ホイール、ホイールデバイスおよび発光装置を提供する。
【解決手段】蛍光ホイール10であって、回転軸を中心として回転可能なハブ22と、前記ハブ22から径方向に放射状に伸びた複数のスポーク24と、により形成された基材20と、前記基材20に支持され、特定範囲の波長の光を他の波長の光に変換する蛍光体層30と、を備え、前記蛍光体層30は、前記スポーク24の前記ハブ22とは反対側の先端部で支持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光ホイールであって、
回転軸を中心として回転可能なハブと、前記ハブから径方向に放射状に伸びた複数のスポークと、により形成された基材と、
前記基材に支持され、特定範囲の波長の光を他の波長の光に変換する蛍光体層と、を備え、
前記蛍光体層は、前記スポークの前記ハブとは反対側の先端部で支持されることを特徴とする蛍光ホイール。
【請求項2】
前記基材は、前記スポークの前記ハブとは反対側の先端部に設けられたリムをさらに有し、
前記蛍光体層は、前記リムを介して前記スポークによって支持されることを特徴とする請求項1記載の蛍光ホイール。
【請求項3】
前記リムの外径は、前記蛍光体層の外径より小さいことを特徴とする請求項2記載の蛍光ホイール。
【請求項4】
発光装置に用いられるホイールデバイスであって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の蛍光ホイールと、
前記蛍光ホイールを回転させるモーターと、を備えることを特徴とするホイールデバイス。
【請求項5】
前記特定範囲の波長の光を発する光源と、
前記光源からの前記特定範囲の波長の光が照射される請求項4記載のホイールデバイスと、
画像を表示する表示デバイスと、
前記ホイールデバイスから射出された光を用いて前記表示デバイスに表示された画像を外部に投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ホイール、ホイールデバイスおよび発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子としてLEDやLD等の光源から照射された光を、蛍光体粒子を含む層によって、異なる波長の変換光として放出する波長変換部材を用いた発光装置が知られている。発光装置として例えば、プロジェクター等の光学機器は、青色光を発するレーザ光源と、青色光と波長変換部材により波長変換された蛍光との組み合わせによる光が映像としてスクリーンなどに投射される。
【0003】
特許文献1は、光源に紫外光を発光する発光ダイオードを使用し、カラーホイールの光源側の表面に紫外光を透過し可視光を反射する特性を有する可視光反射膜を形成し、カラーホイールの裏面側に紫外光照射によりR、G、Bに対応した可視光をそれぞれ発光する蛍光体層を形成する投写型表示装置が開示されている。
【0004】
特許文献2は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、固体光源からの励起光により励起され固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、固体光源と蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、蛍光体セラミックスの面のうち固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm~30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いる光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-341105号公報
【特許文献2】特開2012-064484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロジェクター等の光学機器は構造が複雑であり、使用する部品の点数も多くなる。このような発光装置としては小型化や軽量化が望まれる。しかしながら、特許文献1も特許文献2も、蛍光ホイールの軽量化は考慮していない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、軽量化された蛍光ホイール、ホイールデバイスおよび発光装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の蛍光ホイールは、以下の手段を講じた。すなわち、本発明の適用例の蛍光ホイールは、蛍光ホイールであって、回転軸を中心として回転可能なハブと、前記ハブから径方向に放射状に伸びた複数のスポークと、により形成された基材と、前記基材に支持され、特定範囲の波長の光を他の波長の光に変換する蛍光体層と、を備え、前記蛍光体層は、前記スポークの前記ハブとは反対側の先端部で支持されることを特徴としている。
【0009】
これにより、蛍光ホイールを軽量化でき、ホイールデバイスや発光装置の軽量化もできる。また、蛍光ホイールの軽量化により、蛍光ホイールを回転させるためのモーターの負荷が軽減され、モーターの寿命の向上につながる。また、軽量化によりモーターの小型化への対応も可能となるので、ホイールデバイスや発光装置の小型化にも貢献できる。
【0010】
(2)また、上記(1)の適用例の蛍光ホイールにおいて、前記基材は、前記スポークの前記ハブとは反対側の先端部に設けられたリムをさらに有し、前記蛍光体層は、前記リムを介して前記スポークによって支持されることを特徴としている。
【0011】
これにより、基材の強度をより高めることができ、蛍光ホイールの回転時の振動等の不具合がより抑制される。
【0012】
(3)また、上記(2)の適用例の蛍光ホイールにおいて、前記リムの外径は、前記蛍光体層の外径より小さいことを特徴としている。
【0013】
これにより、基材強度の確保と軽量化を両立することができる。また、透過型の蛍光ホイールを構成する場合でも基材を透過型の基材に限定する必要がなくなり、例えば、サファイアより熱伝導率の高いアルミニウム等の金属基材を使用することが可能となるので、より放熱性を高めることができる。
【0014】
(4)また、本発明の適用例のホイールデバイスは、発光装置に用いられるホイールデバイスであって、上記(1)から(3)のいずれかに記載の蛍光ホイールと、前記蛍光ホイールを回転させるモーターと、を備えることを特徴としている。
【0015】
これにより、軽量化した蛍光ホイールを用いたホイールデバイスを構成でき、ホイールデバイス自体の軽量化ができる。また、モーターの寿命の向上やモーターの小型化も可能となる。
【0016】
(5)また、本発明の適用例の発光装置は、前記特定範囲の波長の光を発する光源と、前記光源からの前記特定範囲の波長の光が照射される上記(4)に記載のホイールデバイスと、画像を表示する表示デバイスと、前記ホイールデバイスから射出された光を用いて前記表示デバイスに表示された画像を外部に投射する投射光学系と、を備えることを特徴としている。
【0017】
これにより、軽量化したホイールデバイスを用いた発光装置を構成でき、発光装置自体の軽量化ができる。また、モーターの小型化をする場合、発光装置のさらなる軽量化や小型化も可能となる。このような発光装置は、蛍光ホイールを回転させて使用するプロジェクターなどに適用できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量化された蛍光ホイール、ホイールデバイス、および発光装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)、(b)は、それぞれ第1の実施形態に係る蛍光ホイールの一例を模式的に表した平面図、および断面図である。
【
図3】(a)から(d)は、それぞれスポークの先端部と蛍光体層の位置関係の変形例を示した模式的な部分断面図である。
【
図4】蛍光ホイールの蛍光体層部分の断面を拡大した模式図である。
【
図5】(a)、(b)は、それぞれ第2の実施形態に係る蛍光ホイールの一例を模式的に表した平面図および断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る蛍光ホイールの基材の変形例を模式的に表した平面図である。
【
図8】(a)から(e)は、それぞれスポークの先端部、リム、および蛍光体層の位置関係の変形例を示した模式的な部分断面図である。
【
図9】本発明のホイールデバイスの一例を表す模式図である。
【
図10】本発明のプロジェクターの一部分の例を表す概念図である。
【
図11】本発明の蛍光ホイールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の蛍光ホイールの製造方法の変形例を示すフローチャートである。
【
図13】実施例の基材を構成する部材のサイズと軽量化割合を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0021】
[蛍光ホイールの構成]
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る蛍光ホイール10について、
図1(a)、(b)および
図2を参照して説明する。
図1(a)、(b)は、それぞれ第1の実施形態に係る蛍光ホイール10の一例を模式的に表した平面図および断面図である。
図1(b)は、
図1(a)のAA線での断面を示している。
図2は、
図1の基材20を模式的に表した平面図である。
【0022】
蛍光ホイール10は、基材20と、蛍光体層30とを備える。蛍光ホイール10は、光源から照射された励起光を吸収し励起して波長の異なる変換光を発生させ、放射光を射出する。例えば、青色の励起光を吸収し蛍光体層30で変換された青色の励起光と異なる変換光を放射させるとともに、青色の励起光を反射または透過させて、変換光と励起光を合わせて、または、変換光のみを利用し、様々な色の光に変換できる。
【0023】
基材20は、回転軸を中心として回転可能なハブ22と、ハブ22から径方向に放射状に伸びた複数のスポーク24と、により形成される。このように、基材20がハブ22とスポーク24により形成されることで、基材20の体積が減少するため蛍光ホイール10の軽量化を図ることができる。その結果、ホイールデバイス50や発光装置100の軽量化にもつながる。また、蛍光ホイール10の軽量化により、基材20を回転するためのモーター60の負荷が軽減され、モーター60の寿命の向上にもつながる。さらに、軽量化によりモーター60の小型化への対応も可能となり得るので、発光装置100の小型化にも貢献できる。
【0024】
基材20の材料は、アルミニウム、鉄、銅等の金属や、酸化アルミニウム等のセラミックス、ガラス、FRPなど従前に用いられているものを用いることができる。ハブ22とスポーク24は、一体的に作製してもよく、パーツ毎に作製して接合してもよい。また、ハブ22とスポーク24を異なる材料で形成してもよい。
【0025】
ハブ22、スポーク24のそれぞれの寸法については、従前の蛍光ホイールとの比較となるため、その径や厚みは搭載される発光装置100の仕様によって決まる。例えば、基材20の全体の径はφ30mm~100mm、厚みは0.5mm~2.0mmとすることができる。
【0026】
ハブ22の内径は、搭載されるモーター60の軸の径や蛍光ホイール10をモーター60に取り付けるための部材のサイズに依存する。ハブ22の外径は、例えば、φ12mm以上φ20mm以下とすることができる。ハブ22の厚みは、例えば、0.5mm以上2.0mm以下とすることができる。ハブ22の断面形状は、円、楕円、矩形等、どのような形態であってもよい。
【0027】
スポーク24の本数は、蛍光体層30を安定して保持すること、および回転のバランス性を保つため、2本以上、より好ましくは3本以上でハブ22の外周に等配となるように設けることが好ましい。スポーク24の厚みは、例えば、0.5mm以上2.0mm以下とすることができる。スポーク24の幅は、例えば、1.0mm以上5.0mm以下とすることができる。スポーク24の幅は、ハブ22からの距離によって異なっていてもよい。その場合、最小となる位置の幅で1.0mm以上であることが好ましい。スポーク24の長さは、基材20の径方向の中心線の長さで、例えば、15mm以上90mm以下とすることができる。スポーク24の長手方向に垂直な断面形状は、円、楕円、矩形等、どのような形態であってもよい。
【0028】
ハブ22とスポーク24、またはハブ22とスポーク24と後述するリム26の合計の体積は、基材20の強度確保の観点から、同一径・同一厚みの円盤状の基材の体積と比較して、最大で95%までの軽量化に抑えることが好ましい。なお、強度が確保できる範囲でできるだけ軽量化をする方がよいため、下限値はなくてもよいが、同一径・同一厚みの円盤状の基材の体積と比較して、例えば、40%以上軽量化されていることが好ましい。
【0029】
蛍光体層30は、基材20に支持される。蛍光体層30は、スポーク24のハブ22とは反対側の先端部で支持される。蛍光体層30は、基材20の中心(ハブ22の中心)から所定の距離に一定の幅を有する円環状に形成されることが好ましい。蛍光体層30が円環状に形成されることで、励起光の照射部分およびその近傍のみに蛍光体層30が形成されることとなり、蛍光ホイール10の軽量化およびコストの削減ができる。蛍光体層30は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着剤、またはハンダ等によりスポーク24の先端部に接合される。蛍光体層30は、特定範囲の波長の光を他の波長の光に変換する。
【0030】
蛍光ホイール10を反射型とする場合、蛍光体層30の基材20に支持される側の主面にAlやAg等からなる反射層36を設けることが好ましい。反射層36は、スパッタリングやメッキ等で設けることができる。また、蛍光ホイール10を反射型とする場合、蛍光体層30の励起光の入射側の主面に反射防止層を設けてもよい。また、蛍光ホイール10を透過型とする場合、蛍光体層30の基材20に支持される側の主面、または蛍光体層30の励起光の入射側の主面のいずれかまたは両方に反射防止層を設けてもよい。反射防止層は、スパッタリングやメッキ等で設けることができる。
【0031】
蛍光ホイール10を透過型とする場合、スポーク24を光を透過する材料で形成してもよい。しかし、スポーク24で支持された位置に光源光を照射すると、スポーク24のある位置とない位置で光の透過する距離や材質等が変わり、透過光にムラが生じる虞がある。そのため、スポーク24の蛍光体層30を支持する側の先端部よりも外側に一定の幅だけ蛍光体層30がはみ出していることが好ましい。これにより、蛍光体層30のスポーク24で支持された位置より外側に光源光を照射することができ、ムラの無い透過光とすることができる。また、スポーク24の材料を透過するものに限定する必要がなくなるので、より熱伝導率の高い材料でスポーク24を形成できる。
【0032】
図3(a)から(d)は、それぞれスポーク24の先端部と蛍光体層30の位置関係の変形例を示した模式的な部分断面図である。
図1では、スポーク24の外周側の最先端と蛍光体層30の外周が一致していたが、スポーク24の外周側の最先端と蛍光体層30の外周は、
図3(a)から(d)のように一致していなくてもよい。
図3(a)および(b)は、反射型の蛍光ホイール10の例であり、蛍光体層30に反射層36が設けられている。
図3(c)および(d)は、透過型の蛍光ホイール10の例である。
図3(c)の場合、スポーク24は、透光性を有する材料とする。
【0033】
図4は、蛍光ホイール10の蛍光体層30部分の断面を拡大した模式図である。蛍光体層30は、蛍光体粒子32および透光性を有する結合材34により形成されていてもよい。結合材34は、蛍光体粒子32同士を結合する。また、蛍光体層30は、結晶粒子である蛍光体粒子32のみからなる、または結晶粒子である蛍光体粒子32と透過相となるセラミックス粒子が混合されたセラミックス焼結体で形成されていてもよい。透過相となるセラミックス粒子とは、例えば、酸化アルミニウムである。蛍光体層30は、空隙を含んでいてもよい。
【0034】
蛍光体層30の厚みは、100μm以上1000μm以下であることが好ましい。本実施形態の蛍光体層30は、スポーク24の先端部で支持されるため、蛍光体層30自体にある程度の強度が必要となるためである。また、蛍光体層30の厚みは、厚くなると膜内の比較的広い領域で蛍光変換が起こるようになり、高い発光強度を有するからである。蛍光体層30の厚みは、厚すぎると蓄熱による問題が増加するが、回転ホイール構造による高い放熱性により解決される。
【0035】
蛍光体粒子32を構成する蛍光体は、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)およびルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG系蛍光体)を用いることができる。その他、蛍光体は、発光させる色の設計に応じて以下のような材料から選択できる。例えば、BaMgAl10O17:Eu、ZnS:Ag,Cl、BaAl2S4:EuあるいはCaMgSi2O6:Euなどの青色系蛍光体、Zn2SiO4:Mn、(Y,Gd)BO3:Tb、ZnS:Cu,Al、(M1)2SiO4:Eu、(M1)(M2)2S:Eu、(M3)3Al5O12:Ce、SiAlON:Eu、CaSiAlON:Eu、(M1)Si2O2N:Euあるいは(Ba,Sr,Mg)2SiO4:Eu,Mnなどの黄色または緑色系蛍光体、(M1)3SiO5:Euあるいは(M1)S:Euなどの黄色、橙色または赤色系蛍光体、(Y,Gd)BO3:Eu,Y2O2S:Eu、(M1)2Si5N8:Eu、(M1)AlSiN3:EuあるいはYPVO4:Euなどの赤色系蛍光体が挙げられる。なお、上記化学式において、M1は、Ba,Ca,SrおよびMgからなる群のうちの少なくとも1つが含まれ、M2は、GaおよびAlのうちの少なくとも1つが含まれ、M3は、Y,Gd,LuおよびTeからなる群のうち少なくとも1つが含まれる。なお、上記の蛍光体は一例であり、蛍光ホイール10に用いられる蛍光体が必ずしも上記に限られるわけではない。
【0036】
蛍光体粒子32の平均粒径は、10μm以上60μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることが好ましい。10μm以上とすることで、変換光の発光強度が大きくなり、ひいては蛍光ホイール10の発光強度が大きくなるからである。また、60μm以下なので、蛍光ホイール10を回転させた際の蛍光体粒子32の脱粒を抑制できる。また、個々の蛍光体粒子32の温度を低く維持でき、温度消光を抑制できる。
【0037】
なお、本明細書において平均粒径とは、メジアン径(D50)であるか、または、SEM画像の解析で得られた粒子における平均粒径である。メジアン径(D50)である平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置の乾式測定または湿式測定を用いて計測することができる。また、SEM画像の解析による平均粒径は、以下の手法で計測できる。蛍光体層30の平面方向と垂直な断面について、例えば、1000倍にてSEM画像を取得する。そして、得られたSEM画像に対して、2値化などの画像解析を行ない、画像から蛍光体粒子32と認められる100個以上の粒子の断面積を算出し、その累積分布から平均粒径を求めることができる。画像から蛍光体粒子と認められる100個以上の粒子の断面積を算出するときには、蛍光体層30に含まれる蛍光体粒子32について全体的な平均粒径となるように、蛍光体層30における複数個所の断面画像(例えば3枚以上)を取得することとする。
【0038】
結合材34は、透光性を有する材料により構成される。これにより、励起光や変換光を透過させることができる。結合材34は、透光性を有する結晶粒子を主体として構成され、蛍光体層30は、結晶粒子である蛍光体粒子32および結合材34からなるセラミックス焼結体で形成されていてもよい。また、結合材34は、結晶性を有するかどうかを問わない透光性を有する材料により構成されてもよい。結合材34は、例えば、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、リン酸アルミニウム(AlPO4)、ガラス、シリコーン樹脂等で構成される。結合材34は、無機材料からなるものであることが好ましい。結合材34が無機材料からなる場合、レーザダイオード等の高エネルギーの光が照射されても変質しないためである。
【0039】
なお、透光性を有する物質とは、0.5mmの対象物質に対して、可視光の波長領域(λ=380~780nm)で光を垂直に入射したとき、反対側から抜けた光の放射束が入射光の80%を超える特性を有する物質をいう。
【0040】
本実施形態に係る蛍光ホイール10は、基材20をハブ22とスポーク24で構成していることにより、十分な軽量化ができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る蛍光ホイール10について、
図5および
図6を参照して説明する。
図5(a)、(b)は、それぞれ第2の実施形態に係る蛍光ホイール10の一例を模式的に表した平面図および断面図である。
図5(b)は、
図5(a)のBB線での断面を示している。
図6は、
図5の基材20を模式的に表した平面図である。本実施形態に係る蛍光ホイール10は、基材20と、蛍光体層30とを備える。本実施形態に係る蛍光ホイール10は、基本的な構成は第1の実施形態に係る蛍光ホイール10と同様であるので、以下では、異なる点のみ説明する。
【0042】
基材20は、回転軸を中心として回転可能なハブ22と、ハブ22から径方向に放射状に伸びた複数のスポーク24と、スポーク24のハブ22とは反対側の先端部に設けられたリム26と、により形成される。このように、基材20がハブ22とスポーク24とリム26により形成されることで、基材20の強度をより高めることができ、蛍光ホイール10の回転時の振動等の不具合がより抑制される。
【0043】
リム26の材料は、アルミニウム、鉄、銅等の金属や、酸化アルミニウム等のセラミックス、ガラスなど従前に用いられているものを用いることができる。ハブ22、スポーク24、およびリム26は、一体的に作製してもよく、パーツ毎に作製して接合してもよい。例えば、ハブ22とスポーク24を一体的に作製して、別に作製したリム26と接合してもよい。また、ハブ22、スポーク24、またはリム26を異なる材料で形成してもよい。
【0044】
光源光が蛍光体層30に照射された際、その照射位置が最も熱を持つことになるが、蛍光体層30の下面にリム26が形成されることにより、リム26が放熱経路の役割を果たす。これにより、光源のハイパワー化に対応することができる。そのため、リム26の材質としては、形成される蛍光体層30よりも高い熱伝導率を有する材料で構成されることが好ましい。リム26を透光性を有さない材料で形成する場合、熱伝導率の高いアルミニウムで形成することが好ましい。リム26を透光性を有する材料で形成する場合、熱伝導率の高いサファイアで形成することが好ましい。
【0045】
ハブ22、スポーク24、リム26のそれぞれの寸法については、従前の蛍光ホイールとの比較となるため、その径や厚みは搭載される発光装置100の仕様によって決まる。リム26は、基材20の中心から所定の距離に一定の幅を有する円環状に形成されることが好ましい。リム26の厚みは、例えば、0.5mm以上2.0mm以下とすることができる。リム26の断面形状は、矩形であることが好ましい。
【0046】
蛍光体層30は、スポーク24のハブ22とは反対側の先端部でリム26を介して支持される。蛍光体層30は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着剤、またはハンダ等によりリム26に接合されてもよい。また、蛍光体層30は、結合材34が蛍光体粒子32とリム26とを結合していることで接合されることが好ましい。これにより、高エネルギー密度の光の照射に対して、放熱材として機能するリム26と接着剤を介さずに接合しているため効率よく放熱でき、蛍光体の温度消光を抑制できる。なお、蛍光体層30は、結晶粒子である蛍光体粒子32のみからなる、または結晶粒子である蛍光体粒子32と透過相となるセラミックス粒子が混合されたセラミックス焼結体で形成し、接着剤を介してリム26と接合されるものであってもよい。
【0047】
蛍光体層30の厚みは、10μm以上1000μm以下であることが好ましい。本実施形態の蛍光体層30は、リム26を介して支持されるため、蛍光体層30自体の強度は第1の実施形態の蛍光体層30の強度よりも小さくなっても問題ない。蛍光体層30を薄くする場合、蛍光体層30に含まれる蛍光体粒子32の割合を高くすることもできる。
【0048】
リム26の外径は、蛍光体層30の外径より小さいことが好ましい。これにより、基材20の強度の確保と軽量化を両立することができる。また、透過型の蛍光ホイール10を構成する場合でも基材20を透過型の材料に限定する必要がなくなる。例えば、サファイアより熱伝導率の高いアルミニウム等の金属材料を使用することが可能となるので、より放熱性を高めることができる。
【0049】
図7は、第2の実施形態に係る蛍光ホイール10の基材20の変形例を模式的に表した平面図である。
図7に示されるように、リム26は、複数の円弧状の部材からなっていてもよい。このようにすることで、基材20の強度をある程度保ちつつ、円環状のリム26よりも軽量化ができる。また、蛍光体層30をスポーク24に接合する場合と比較して、接合のための面積を大きくできる。
【0050】
図8(a)から(e)は、それぞれスポーク24の先端部、リム26、および蛍光体層30の位置関係の変形例を示した模式的な部分断面図である。
図5では、スポーク24の外周側の最先端とリム26の外周が一致していたが、スポーク24の外周側の最先端とリム26の外周は、一致していてもいなくてもよい。
図8(a)から(c)は、反射型の蛍光ホイール10の例であり、蛍光体層30に反射層36が設けられている。
図8(d)は、反射型の蛍光ホイール10でも透光型の蛍光ホイール10でも適用できる。
図8(e)は、透過型の蛍光ホイール10の例である。
図5や
図8(a)、(b)、(d)を反射型の蛍光ホイール10とする場合、リム26を反射する材料で形成する、またはリム26の表面に反射層を設けることで、蛍光体層30に反射層36を設けなくてもよい。
図8(d)を透過型の蛍光ホイール10とする場合、リム26は、透光性を有する材料とする。
図5を透過型の蛍光ホイール10とする場合、スポーク24およびリム26は、透光性を有する材料とする。
【0051】
本実施形態に係る蛍光ホイール10は、基材20をハブ22とスポーク24とリム26で構成していることにより、十分な軽量化ができると共に基材の強度をより高めることができ、蛍光ホイール10の回転時の振動等の不具合がより抑制される。
【0052】
[ホイールデバイスの構成]
図9は、ホイールデバイス50の一例を表す模式図である。ホイールデバイス50は、蛍光ホイール10およびモーター60を備える。蛍光ホイール10は、上記の蛍光ホイール10である。
【0053】
モーター60は、蛍光ホイール10を回転させ、蛍光ホイール10の蛍光体層30の励起光が照射される位置を変動させる。これにより、蛍光体層30の一部に励起光が照射され続けることがないため、蛍光体層30の発熱を抑制できる。また、回転をしている間は、蛍光体層30または放熱板として機能するリム26に空気があたり続けるため、これによっても蛍光体層30の発熱を抑制できる。
【0054】
[発光装置の構成]
図10は、発光装置100の一部分の例を表す概念図である。発光装置100は、光源110、ホイールデバイス50、表示デバイス120および投射光学系130を備える。
【0055】
光源110は、ホイールデバイス50に用いられる蛍光体を励起する励起光を照射する。光源110が照射する励起光は、青色光、紫色光、または紫外光が好ましい。また、光源110は、レーザダイオードであることが好ましい。
【0056】
ホイールデバイス50は、上記のホイールデバイス50である。ホイールデバイス50は、光源110からの励起光を受け、励起光を吸収し励起して波長の異なる変換光を発生させ、変換光のみまたは変換光と励起光からなる放射光を射出する。
【0057】
表示デバイス120は、発光装置100が投影する画像を表示する。表示デバイス120は、液晶パネル、デジタルミラーデバイス(DMD)などを用いることができる。
【0058】
投射光学系130は、ホイールデバイス50から射出された放射光を用いて表示デバイス120に表示された画像を外部に投射する。投射光学系130は、複数のレンズ131からなり、ズームやピントの調整をする。
【0059】
発光装置100は、上記の構成のほか、レンズ131、ダイクロイックミラー132などにより構成される。また、発光装置100の設計に応じて、図に記載していない、ミラー、ダイクロイックミラー、レンズ、プリズムなどを使用することもできる。発光装置100は、ホイールデバイス50を小型化した小型の装置とすることができる。発光装置は、プロジェクターなどに適用できる。
【0060】
[蛍光ホイールの製造方法]
図11は、蛍光ホイールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図11は、蛍光体層をセラミックス焼結体で形成して、スポークまたはリムに接合する場合のフローを示している。
【0061】
まず、基材を準備する(ステップS1)。例えば、基材を金属で形成する場合、所定の厚みの金属板を所定の形状に切断、打抜き等することで基材を形成することができる。また、例えば、基材をセラミックスで形成する場合、材料となるセラミックスの粉末を造粒し、所定の形状に成形し、焼成することで基材を形成することができる。ハブ、スポーク、またはリムのいずれかを別の部材として形成して、接合することで基材を形成してもよい。このとき、別の部材は、材料が異なっていてもよい。
【0062】
基材の準備とは別に、蛍光体層となるセラミックス焼結体を準備する。まず、セラミックス焼結体の原料粉末を用意する(ステップS2)。ステップS2では、例えば、アルミナ粉末と、反応焼結により蛍光体となる化合物を形成するための粉末を調製し、秤量する。
【0063】
次に、調製した原料粉末に、有機溶剤と分散剤とを加え、粉砕混合を行う(ステップS3)。粉砕混合は、例えば、ボールミルで行うことができる。次に、粉砕混合によって得られた粉末に、樹脂を混合しスラリーを作製する(ステップS4)。
【0064】
次に、スラリーを用いて、シート成形体を作製する(ステップS5)。シート成形体は、例えば、ドクターブレード法により作製することができる。次に、シート成形体を、脱脂する(ステップS6)。次に、脱脂したシート成形体を焼成してセラミックス焼結体を作製する(ステップS7)。焼成は、例えば、シート成形体に対して圧力が104Pa以上で、かつ、酸素濃度が0.8体積%以上21体積%以下の焼成雰囲気で、所定時間焼成する。なお、蛍光体層となるセラミックス焼結体の製造方法は上記には限定されず、準備した原料粉末と溶媒を粉砕混合した原料スラリーを乾燥および造粒した造粒粉末を、所定の型に入れプレス成形した成形体を、CIP成形した後、焼成する製造方法により作製してもよい。
【0065】
蛍光ホイールを反射型とする場合、セラミックス焼結体の一方の主面に、スパッタリングやメッキ等によって反射層を形成してもよい。また、セラミックス焼結体の他方の主面に、スパッタリング等によって反射防止膜を形成してもよい。蛍光ホイールを透過型とする場合、セラミックス焼結体の一方の主面または両方の主面に、スパッタリングやメッキ等によって反射防止膜を形成してもよい。
【0066】
次に、基材の表面に、セラミックス焼結体を接合し、蛍光体層とする(ステップS8)。接合は、例えば、シリコーン樹脂やアクリル樹脂等の接着剤やハンダ等を用いて行うことができる。
【0067】
蛍光ホイールの製造方法の別の一例を説明する。
図12は、蛍光ホイールの製造方法の変形例を示すフローチャートである。
図12は、蛍光体層をリム上に薄膜として形成する場合のフローを示している。
【0068】
まず、基材を準備する(ステップT1)。基材の準備は、ステップS1とほとんど同様であるが、本製造方法では、リムの一方の主面上に蛍光体層を形成するため、基材は、円環状のリムを有する形状で形成する。
【0069】
基材の準備とは別に、印刷用ペーストを作製する。まず、所定の平均粒径を有する蛍光体粒子を準備する(ステップT2)。次に、準備した蛍光体粒子を秤量し、溶剤に分散させ、無機バインダと混合し、印刷用ペーストを作製する(ステップT3)。混合にはボールミル等を用いることができる。溶剤は、α-テルピネオール、ブタノール、イソホロン、グリセリン等の高沸点溶剤を用いることができる。
【0070】
無機バインダは、エチルシリケート等の有機シリケートであることが好ましい。有機シリケートを用いることで蛍光体粒子が印刷用ペースト全体に分散し、適切な粘度の印刷用ペーストを作製することができる。その他、無機バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、およびアモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含む原料を、常温で反応させるか、または、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものであってもよい。酸化ケイ素前駆体としては、例えば、ペルヒドロポリシラザン、エチルシリケート、メチルシリケートを主成分としたものが挙げられる。
【0071】
印刷用ペーストの作製後、基材のリム上に印刷用ペーストを塗布してペースト層を形成する(ステップT4)。印刷用ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、スプレー法、ディスペンサーによる描画法、インクジェット法を用いることができる。スクリーン印刷法を用いると、厚みの薄いペースト層を安定的に形成できるので好ましい。ペースト層は、円環状に形成することが好ましい。また、ペースト層の厚みは、焼成後に10μm以上1000μm以下になるように調整することが好ましい。
【0072】
そして、ペースト層を形成した基材を大気炉を用いて焼成し、蛍光体層を作製する(ステップT5)。焼成温度は、150℃以上500℃以下であることが好ましく、焼成時間は、0.5時間以上2.0時間以下であることが好ましい。また、昇温速度は、50℃/h以上200℃/h以下であることが好ましい。また、焼成前に乾燥工程を設けてもよい。
【0073】
上記の工程において、無機バインダを樹脂バインダに変更してもよい。その場合、焼成条件を樹脂バインダに応じた条件に変更する。
【0074】
このような製造工程により、軽量化された基材を有する蛍光ホイールを製造できる。
【0075】
[実施例および比較例]
(実施例1)
厚み1mmのアルミニウム製の板状の材料を準備した。これを切断し、外周の半径10mmのハブに、長さ25mm、幅5mmの3本のスポークが等配に配置された基材を形成した。なお、スポークの長さは中心線の長さである。また、ハブの中心に直径10mmのモーターの軸を接続するための貫通孔を開けた。
【0076】
反応焼結でYAG:Ceが焼結体中に60体積%生成するように、Al2O3(平均粒径0.2μm)、Y2O3(平均粒径1.2μm)、CeO2(平均粒径1.5μm)の各粉末材料を秤量した。
【0077】
これらの粉末を、適量のイオン交換水と粉末の7重量%のバインダと共にボールミル中に投入し、16時間粉砕混合を行った。得られたスラリーを乾燥・造粒することで造粒粉を得た。
【0078】
得られた粉末をプレス成形し、さらにCIP成形することで成形体を得た。得られた成形体を脱脂後、大気雰囲気中で焼成を行って、セラミックス焼結体(蛍光体層)を作製した。焼成温度を1685℃、保持時間を10時間として焼成を行った。焼成後のセラミックス焼結体は、内周の半径30mm、外周の半径35mm、厚み0.1mmの円環状の形状であった。
【0079】
次に、セラミックス焼結体の一方の主面にスパッタリングによってAgからなる反射層を設けた。そして、反射層を設けたセラミックス焼結体を、準備した基材のスポークの先端部に、同軸となるように接着剤を用いて接合した。このようにして、実施例1の蛍光ホイールを作製した。
【0080】
(実施例2)
実施例2は、スポークの本数を変更した以外、実施例1と同様の条件で蛍光ホイールを作製した。
【0081】
(実施例3)
実施例3は、ハブの外周の半径、スポークの長さおよび幅を変更した以外、実施例1と同様の条件で蛍光ホイールを作製した。
【0082】
(実施例4)
実施例4は、スポークの本数を変更した以外、実施例3と同様の条件で蛍光ホイールを作製した。
【0083】
(実施例5)
実施例5は、アルミニウムに銀コートされた厚み1mmの板状の材料を準備した。これを切断し、内周の半径30mm、外周の半径35mmのリムを形成した。これとは別に、平均粒径15μmの蛍光体粒子(YAG:Ce)を準備した。この蛍光体粒子を秤量し、α-テルピネオール(溶剤)を混合して分散材を作製し、エチルシリケート(無機バインダ)と混合して印刷用ペーストを作製した。
【0084】
次に、印刷用ペーストを焼成後に50μmの厚みになるようスクリーン印刷法を用いてリム上に塗布した。塗布後に100℃で20分乾燥させた後、無機バインダで封孔処理をした。次に、大気炉を用いて150℃/hで350℃まで昇温し、30分焼成してリム上に蛍光体層を形成した。そして、蛍光体層を形成したリムを、実施例1と同一形状のハブおよびスポークからなる基材のスポークの先端部に、同軸となるように接着剤を用いて接合した。このようにして、実施例5の蛍光ホイールを作製した。
【0085】
(実施例6)
実施例6は、スポークの本数を変更した以外、実施例5と同様の条件で蛍光ホイールを作製した。基材のハブおよびスポークは、実施例2と同一形状である。
【0086】
(実施例7)
実施例7は、外周の半径7mmのハブに、長さ23mm、幅2mmの3本のスポークが等配に配置され、スポークの外側に内周の半径30mm、外周の半径32mmのリムが設けられた基材を一体的に形成した。そして、反射層を設けていないセラミックス焼結体を、準備した基材のリムに、同軸となるように接着剤を用いて接合した。蛍光体層は、リムの外周寄り3mm外側にも存在している。すなわち、実施例7の蛍光ホイールは、透過型の蛍光ホイールである。このようにして、実施例7の蛍光ホイールを作製した。
【0087】
(実施例8)
実施例8は、スポークの本数を変更した以外、実施例7と同様の条件で蛍光ホイールを作製した。
【0088】
(実施例9)
実施例9は、ハブの外周の半径、スポークの長さおよび幅を変更した以外、実施例1と同様の条件で蛍光ホイールを作製した。
【0089】
(比較例)
比較例は、外周の半径35mmの基材の中心に直径10mmのモーターの軸を接続するための貫通孔を開けた基材を準備した。それ以外は、実施例1と同様の条件で比較例の蛍光ホイールを作製した。
【0090】
図13は、実施例の基材を構成する部材のサイズと軽量化割合を示す表である。軽量化割合は、比較例の基材に対する値である。
図14は、比較例の基材のサイズを示す表である。実施例の蛍光ホイールは、いずれも比較例の蛍光ホイールと比較して、基材ベースで40%以上の軽量化ができている。
【0091】
(蛍光ホイールの評価方法)
完成した各蛍光ホイールをモーターに固定し、約12000rpmの回転速度で回転させた状態で、1.0Wの入力となるレーザ光を照射しつつ、0.5時間保持した。その後、回転を停止させ、基材の変形、蛍光体層の表面の確認、および基材と蛍光体層の接合状態を目視で確認した。
【0092】
実施例の蛍光ホイールは、いずれも基材の変形、蛍光体層の表面の亀裂等の不具合、および基材と蛍光体層の接合状態の不具合は確認されなかった。よって、実施例の程度まで基材の軽量化をしても、蛍光ホイールとして問題なく使用できることが分かった。ただし、実施例9の蛍光ホイールは、基材がハブおよびスポークのみで形成され、スポークの幅も小さいことから、これ以上の高速回転をさせる用途で使用する場合、回転が不安定になる虞がある。そのため、基材の軽量化は、95%以下とすることが好ましい。
【0093】
以上の結果によって、本発明の蛍光ホイールは十分に軽量化でき、蛍光ホイールとして問題なく使用できることが分かった。
【符号の説明】
【0094】
10 蛍光ホイール
20 基材
22 ハブ
24 スポーク
26 リム
30 蛍光体層
32 蛍光体粒子
34 結合材
36 反射層
50 ホイールデバイス
60 モーター
100 発光装置
110 光源
120 表示デバイス
130 投射光学系