(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172148
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】物品取得装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20241205BHJP
B65G 47/91 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B25J15/08 R
B65G47/91 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089688
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】519205361
【氏名又は名称】株式会社エヌ・クラフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 憲昌
【テーマコード(参考)】
3C707
3F072
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS05
3C707BT01
3C707BT18
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET02
3C707EW03
3F072AA01
3F072KA01
3F072KD01
3F072KD23
3F072KD27
(57)【要約】
【課題】物品を保持しやすい物品取得装置を提供する。
【解決手段】物品取得装置は、物品を保持する保持部と、前記保持部を移動させる移動部と、前記保持部と前記移動部との間に配置され、前記保持部の傾きを変化させる変位部と、を備え、前記変位部は、前記保持部に取り付けられる第1プレートと、前記移動部に取り付けられる第2プレートと、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置される複数のコイルばねと、前記コイルばねと異なる位置に配置され、前記第1プレートを上下方向に案内する規制部と、を有し、前記規制部は、前記第2プレートに固定される棒状部材を含み、前記棒状部材は、前記第1プレートに設けられた貫通孔に挿通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保持する保持部と、
前記保持部を移動させる移動部と、
前記保持部と前記移動部との間に配置され、前記保持部の傾きを変化させる変位部と、
を備え、
前記変位部は、
前記保持部に取り付けられる第1プレートと、
前記移動部に取り付けられる第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置される複数のコイルばねと、
前記コイルばねと異なる位置に配置され、前記第1プレートを上下方向に案内する規制部と、
を有し、
前記規制部は、前記第2プレートに固定される棒状部材を含み、前記棒状部材は、前記第1プレートに設けられた貫通孔に挿通する、
物品取得装置。
【請求項2】
前記コイルばねの直径は、前記第1プレートと前記第2プレートの中間位置が最も大きい、
請求項1に記載の物品取得装置。
【請求項3】
前記物品を搬送する搬送装置をさらに備え、
前記搬送装置は、前記物品が載置されるコンベアと、
前記コンベアを弾性支持するコンベア支持部と、
を有する、
請求項1または2に記載の物品取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物品取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から物品を取得する物品取得装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の物品取得装置は、物品を保持する保持部と、保持部を支持する支持部と、を備える。特許文献1の物品取得装置は、保持部と支持部の間に、保持部と支持部の位置ずれを許容する変位部(特許文献1ではコンプライアンス装置)を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の物品取得装置では、変位部はコイルばねと、一対のブラケットの上下方向の移動を案内するガイドシャフトを有する。特許文献1の変位部は、ガイドシャフトが支持部側のブラケットに対してガイドシャフトと直交する方向に移動することを許容している。このため、保持部がガイドシャフトと直交する方向に移動する場合がある。
【0005】
保持部がガイドシャフトと直交する方向に移動すると、保持部が物品を保持し損ねるおそれがある。本開示の課題は、物品を保持しやすい物品取得装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る物品取得装置は、物品を保持する保持部と、前記保持部を移動させる移動部と、前記保持部と前記移動部との間に配置され、前記保持部の傾きを変化させる変位部と、を備え、前記変位部は、前記保持部に取り付けられる第1プレートと、前記移動部に取り付けられる第2プレートと、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配置される複数のコイルばねと、前記コイルばねと異なる位置に配置され、前記第1プレートを上下方向に案内する規制部と、を有し、前記規制部は、前記第2プレートに固定される棒状部材を含み、前記棒状部材は、前記第1プレートに設けられた貫通孔に挿通する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、物品を保持しやすい物品取得装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態による物品取得装置のシステム図。
【
図2】本開示の実施形態による変位部を示す正面図。
【
図3】本開示の実施形態による変位部を示す下面概略図。
【
図4】本開示の実施形態による変位部を示す上面概略図。
【
図5】本開示の実施形態による搬送装置を示す断面図。
【
図6】本開示の実施形態による物品取得装置の作動状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すように、物品取得装置1は、保持部2と、移動部4と、変位部6と、搬送装置8と、を備える。本実施形態の物品取得装置は、搬送装置8によって搬送される廃棄物X(物品の一例)を取得するための装置である。しかし、物品取得装置は、このような廃棄物に限らず、例えば加工後のワーク(物品の一例)を取得する装置であってもよい。なお、以下明細書および図面において、廃棄物Xの搬送方向Fが前後方向であり、搬送方向Fに対して右側を右、左側を左、上側を上、下側を下と記す。
【0011】
保持部2は、物品を保持するための装置である。本実施形態の保持部2は、廃棄物Xを挟んで保持するチャックである。保持部2は、二つの爪部2aおよび爪部2bと、ベース部2cと、を有する。爪部2aおよび爪部2bは、ベース部2cに揺動可能に保持される。保持部2は、爪部2aおよび爪部2bを互いに近づく方向に揺動させることによって、廃棄物Xを挟んで保持する。一方、保持部2は、爪部2aおよび爪部2bを互いに離れる方向に揺動させることによって、廃棄物Xを保持した状態から解放する。
【0012】
移動部4は、保持部2を上下方向、左右方向、および前後方向に移動させるための装置である。本実施形態では、移動部4は、変位部6を介して保持部2が吊り下げられたガントリー型のロボットである。しかし、移動部4は、ガントリー型のロボットに限らず、例えばロボットアームであってもよい。移動部4は、変位部6を支持する支持部4aと、支持部4aを左右方向に移動可能に支持する第1支柱4bと、第1支柱4bを前後方向に移動させる一対の第2支柱4cと、を有する。支持部4aは、変位部6を、軸4d(
図2参照)を中心として回転させる。これによって、爪部2aおよび爪部2bの向きが廃棄物Xの形状に合わせて回転する。これによって、爪部2aおよび爪部2bが廃棄物Xを把持しやすい向きに変化する。
【0013】
図1および
図2に示すように、変位部6は、保持部2と移動部4との間に配置され、保持部2の上下方向に対する傾きを変化させる装置である。変位部6は、第1プレート10と、第2プレート12と、複数のコイルばね14と、規制部16と、を有する。
【0014】
第1プレート10は、保持部2のベース部2cに取り付けられる板状部材である。本実施形態では、第1プレート10は、鉄またはアルミなどの金属によって形成された、円形の板状部材である。
図3に示すように、第1プレート10は、複数の第1貫通孔10aと、複数の第2貫通孔10bと、を含む。本実施形態では、第1貫通孔10aが120度毎に3つ設けられる。第2貫通孔10bは、第1貫通孔10aと異なる位置に、120度毎に3つ設けられる。本実施形態では、3つの第2貫通孔10bは、3つの第1貫通孔10aと約60度ずれた位置に形成される。第1貫通孔10aの直径は、第2貫通孔10bの直径よりも大きい。
【0015】
第2プレート12は、移動部4の支持部4aに取り付けられる板状部材である。本実施形態では、第2プレート12は、鉄またはアルミなどの金属によって形成された、円形の板状部材である。
図4に示すように、第2プレート12は、複数の第3貫通孔12aと、複数の第4貫通孔12bと、を含む。本実施形態では、第3貫通孔12aが120度毎に3つ設けられる。第4貫通孔12bは、第3貫通孔12aと異なる位置に、120度毎に3つ設けられる。本実施形態では、3つの第4貫通孔12bは、3つの第3貫通孔12aと約60度ずれた位置に形成される。第3貫通孔12aの直径は、第4貫通孔12bの直径よりも大きい。
【0016】
図2に示すように、複数のコイルばね14は、第1プレート10と第2プレート12との間に配置される。コイルばね14は、端部が第1プレート10および第2プレート12と接し、第1プレート10および第2プレート12によって圧縮される圧縮コイルばねである。本実施形態のコイルばね14は、同一線形で形成される。また、本実施形態のコイルばね14は、上下方向の中間位置のコイル直径(コイル平均径)が最も大きい。より具体的には、コイルばね14は、第1プレート10側から中間位置に向かうにつれてコイル直径が徐々に大きくなり、中間位置でコイル直径が最も大きくなる。コイルばね14は、中間位置から第2プレート12側に向かうにつれて、コイル直径が徐々に小さくなる。これによって、中間位置付近のばね定数が小さくなる。このため、コイルばね14の第1プレート10側の端部付近、および第2プレート12側の端部付近では、コイルばね14の変形が小さく、中間位置付近でコイルばね14の変形が大きくなる。
【0017】
本実施形態では、コイルばね14は、第1貫通孔10a、および第3貫通孔12aの数と同じく、120度毎にひとつずつ、合計3つ配置される。具体的には、コイルばね14は、3つの第1貫通孔10aの周囲に、それぞれに1つずつ配置される。コイルばね14のコイル内には、ロッド14aが配置される。ロッド14aは、コイルばね14の付勢力によって第1プレート10と第2プレート12とが上下に開くことを防止するとともに、コイルばね14の左右、前後方向の位置ずれを防止するための部材である。ロッド14aの下端は、第1貫通孔10aに挿通する。ロッド14aの上端は、第3貫通孔12aに挿通する。ロッド14aは、両端にねじ溝が形成され、第1貫通孔10aを貫通し、ロッド14aの第1プレート10の下面まで突き出た部分にナット14bが締結される。本実施形態では、ナット14bはダブルナットによって形成され、ナット14bの緩みが抑制されている。また、ロッド14aの上端は、第3貫通孔12aを貫通し、ロッド14aの第2プレート12の上面まで突き出た部分にナット14cが締結される。ロッド14aは、第1貫通孔10aの直径よりも小さい直径で形成される。これによって、第1プレート10が保持部2によって上方に押された際に、ロッド14aと干渉することなく第1プレート10が上方に移動する。
【0018】
規制部16は、コイルばね14と異なる位置に配置され、第1プレート10を上下方向に案内する部材である。本実施形態では規制部16は、上下方向に延びる円柱形状の金属部材(棒状部材の一例)である。規制部16は、上下の両端にねじ溝が形成される。規制部16の下端は、第1プレート10の第2貫通孔10bに挿通される。規制部16の上端は、第2プレート12の第4貫通孔12bに挿通される。規制部16は、規制部16の下端の第1プレート10の下面まで突き出た部分にナット16aが締結される。規制部16の上端は、第2プレート12に固定される。本実施形態では、第2プレート12を規制部16の端部に締結された2つのナット16bによって、第2プレート12を上下に挟み込むことによって、規制部16を第2プレート12に固定する。
【0019】
本実施形態では、規制部16は、第2貫通孔10b、および第4貫通孔12bの数と同じく、120度毎にひとつずつ、合計3つ配置される。規制部16の直径は、第2貫通孔10bの直径よりも僅かに小さい。規制部16は、第1プレート10が保持部2によって上方に押された際に、規制部16の表面と第2貫通孔10bの内周面とが接触しながら第1プレート10を上方に案内するとともに、第1プレート10の左右、前後方向の移動を規制する。
【0020】
図1に示すように、搬送装置8は、廃棄物Xを搬送方向Fに搬送する装置である。
図5に示すように、搬送装置8は、コンベア20と、コンベア20を支持しながらコンベア20を移動させる複数のローラ22と、コンベア20を、ローラ22を介して弾性支持する一対のコンベア支持部24と、コンベア支持部24を保持する一対のレール26と、を有する。
【0021】
コンベア20は、廃棄物Xが載置される。本実施形態ではコンベア20は、複数のローラ22に支持されながら、複数のローラ22の端部に配置されるローラ22に巻きついて折り返されるベルトコンベアである。
【0022】
ローラ22は、搬送方向Fに並んで複数配置され、回転しながらベルトコンベアを搬送方向(前後方向)Fに移動させる。ローラ22は、ローラ軸22aによって支持される。
【0023】
一対のコンベア支持部24は、ローラ22に対して上方に向けて付勢力を付加しながら、ローラ軸22aを介してローラ22を弾性支持する。一対のコンベア支持部24は、左右にそれぞれに配置される。コンベア支持部24は、ローラ22の数に合わせて配置される。
【0024】
本実施形態ではコンベア支持部24は、支持プレート24aと、ブラケット24bと、アジャスタボルト24cと、ばね24dと、を有する。
【0025】
支持プレート24aは、上下に延びる第1部分と、左右に延びる第2部分と、を含むL字型に形成され、上下に延びる第1部分がローラ軸22aを回転可能に支持する。左右に延びる第2部分は、ばね24dと接する。左右に延びる第2部分には、ウェルドナットなどによってねじ溝が形成され、ねじ溝にアジャスタボルト24cが締結される。
【0026】
ブラケット24bは、支持プレート24aの左右に延びる第2部分と並行に形成される第3部分と、レール26に溶接固定されるL字型の第4部分と、を含む。第3部分は、ばね24dと接する。第3部分には、アジャスタボルト24cが挿通する貫通孔が設けられる。
【0027】
アジャスタボルト24cは、回転させることによって支持プレート24aとブラケット24bとの上下方向の距離を調整する。これによって、ばね24dの弾性力が変化するとともに、ローラ22の位置を上下させることによってコンベア20の上下方向の位置が調整できる。
【0028】
ばね24dは、支持プレート24aと、ブラケット24bとの間に配置され、支持プレート24aがローラ軸22aから下方におされると圧縮される。本実施形態ではばね24dは、コイルばねである。
【0029】
次に
図6を用いて、物品取得装置1の作動状態について説明する。
【0030】
物品取得装置1は、搬送装置8上に載置された廃棄物Xの中から保持する廃棄物Xを決定すると、移動部4が保持部2をこの廃棄物Xの位置する座標の上部まで移動させる。
【0031】
物品取得装置1は、廃棄物Xを保持する方向を決定すると保持部2および変位部6を回転させる。移動部4は、保持部2を下方に移動させるとともに、保持部2が爪部2aおよび爪部2bを開く。
【0032】
このような状態において、廃棄物Xの形状によっては、爪部2aおよび爪部2bのいずれか一方が先に廃棄物Xまたはコンベア20に接する場合がある。本実施形態では、左側の爪部2bが先に廃棄物Xに接する例について説明する。
【0033】
爪部2bが廃棄物Xに接すると、爪部2bが廃棄物Xから反発力を受け、変位部6の左側のコイルばね14が沈み、保持部2が右下に向けて回転する。これによって、爪部2aが廃棄物Xに近づき、保持部2が廃棄物Xを挟みやすい。このとき、コイルばね14は、中央位置の方が圧縮されやすいため、第1プレート10の位置が左右方向および前後方向にズレにくい。このため、物品取得装置1が決定した廃棄物Xの座標に対して、保持部2の位置がずれることを抑制できる。
【0034】
さらに、搬送装置8のコンベア20は、廃棄物Xから受ける力によって左側のばね24dを圧縮する。これによって、コンベア20が左下方に回転し、左側が沈み込む。この結果、廃棄物Xの右側が上昇しやすくなり、廃棄物Xの右側が爪部2aにさらに近づく。これによって、保持部2が廃棄物Xをさらに挟みやすい。この結果、この物品取得装置1は、廃棄物Xを保持しやすい。
【0035】
以上説明した通り、本開示によれば物品を保持しやすい物品取得装置1を提供できる。
【0036】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0037】
(a)上記実施形態では、120度毎にひとつずつコイルばね14と規制部16を配置し、合計3つのコイルばね14と、合計3つの規制部16と、を有する変位部6の例を説明したが、本開示はこれに限定されない。コイルばね14および規制部16の数は、保持部2、第1プレート10、および第2プレート12の大きさや形状に応じて、適宜変更してもよい。
【0038】
(b)上記実施形態では、コンベア支持部24はばね24dを用いる例について説明したが、本開示はこれに限定されない。コンベア支持部24は、ローラ22を弾性支持できれば、ばね24d以外のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 :物品取得装置
2 :保持部
4 :移動部
6 :変位部
8 :搬送装置
10 :第1プレート
12 :第2プレート
14 :コイルばね
16 :規制部
20 :コンベア
24 :コンベア支持部
24d :ばね
F :搬送方向
X :廃棄物